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[B−5 熱帯アジアの土地利用変化が陸域生態系からの温室効果ガスの発生・吸収量に及ぼす影響の評価に関する研究]

(5)アジアの農耕地から発生する窒素酸化物の制御技術


エコフロンティア フェロー

 

中国科学院沈陽応用生態研究所

侯愛新

中国安徽省農業科学院

程為国

独立行政法人農業環境技術研究所

 

地球環境部 温室効果ガスチーム

鶴田治雄・秋山博子・須藤重人

化学環境部 栄養塩類研究グループ

中島泰弘


[平成11〜13年度合計予算額]

 平成11〜13年度合計予算額 6,000千円
 (平成13年度予算額 2,000千円)

[要旨]

亜酸化窒素(N2O)は主要な温室効果ガスの一つであり、一酸化窒素(NO)は対流層オゾンの生成と酸性雨に関与している。農耕地への窒素肥料の投入は、これらのガスを大気中に放出するので、今後窒素肥料使用量の増大が予測されるアジア地域で、それらのガスの発生量を減少させる技術の開発が強く要求されている。(1)そこで、肥料として通常肥料と被覆肥料を、また施肥方法として全面全層施肥法と溝状に局所的に施肥する方法を検討対象として、それらの方法が収量およびN2OとNOの放出量に及ぼす影響を明らかにするため、黒ボク土壌の畑圃場で調査を実施した。つくばの農業環境技術研究所の畑圃場(投入窒素量は25gNm-2)で、1999年9月から2000年3月までと2000年9月から12月までの2回にわたり、ハクサイを栽培し密閉チャンバー法を用いて亜酸化窒素(N2O)と一酸化窒素(NO)のフラックスを測定した。処理区は、尿素全面全層施肥区、尿素溝状施肥区、被覆尿素溝状施肥区であり(対照として無施肥区を設定)、2000年秋の調査ではさらに、尿素溝20%減量施肥区と被覆尿素溝20%減量を設定した。これらの調査から、尿素肥料(25gNm-2)の全面全層施肥に対して被覆尿素を溝状にその20%だけ減量して局所施肥すれば、収穫量を減少させずにN2O総発生量を約20%削減できることが明らかになった。またNO発生量は、溝状に施肥すれば、土壌中での吸収により全面全層施肥に比べて50%以上も削減された。さらに、作物の収穫物残さがN2Oの大きな発生源になっていることが明らかになった。(2)アジアの農耕地土壌におけるこれらのガス発生ポテンシャルを解明するために、中国の農耕地土壌の硝化と脱窒能を、室内実験で求めた。中国の畑地と水田から12種類の農耕地土壌を採取して、同一実験条件で各土壌の硝化活性および脱窒活性を比較した。その結果、硝化速度は土壌pHによって大きな影響を受けることが判った。添加されたアンモニウム肥料は、C/N比の高い婁土の土壌試料を除いて、アルカリ土壌(pH≧8)では、最初の1週間に硝化され、また同時にN2OおよびNOを大量に放出した。それにくらべて、酸性土壌(pH〈5.O)では硝化速度は遅かった。酸性水田の赤土を除いて、全ての土壌試料の脱窒活性は、硝化活性と比較すると低かった。硝化実験におけるN2Oの初期1週間内の総放出量は、NOおよびCO2の初期1週間内の総放出量と強い相関がみられたが、2-3週間内の総放出量との間には相関はみられなかった。脱窒実験からのN2O放出量も、CO2放出量と強い相関がみられた。


[キーワード]

 被覆肥料、局所施肥、中国農地土壌、硝化・脱窒、作物残さ