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[B−5 熱帯アジアの土地利用変化が陸域生態系からの温室効果ガスの発生・吸収量に及ぼす影響の評価に関する研究]

(3)熱帯土壌からの温室効果ガスの発生・吸収要因の解明


独立行政法人森林総合研究所

 

北海道支所 植物土壌系研究グループ

石塚成宏

(研究協力機関・研究者)

 

独立行政法人農業環境技術研究所

 

化学環境部 栄養塩類研究グループ

中島泰弘

地球環境部 気象研究グループ

米村正一郎・川島茂人

地球環境部 温室効果ガスチーム

須藤重人・鶴田治雄

インドネシア BIOTROP-GCTE-IC-SEA

ダニエル ムルディヤルソ

インドネシア ボゴール農業大学

イスワンディ アナス


[平成11〜13年度合計予算額]

 平成11〜13年度合計予算額 13,641千円
 (うち、平成13年度予算額 4,237千円)

[要旨]

アジア太平洋地域における土地利用の変化によって、炭素・窒素の物質循環や収支,特に温室効果ガスの放出・吸収量が大きく変化して地球温暖化に影響を及ぽしていると推測される。2001年度まで継続調査を行っていたインドネシア・スマトラ島中央部に位置するパシルマヤン試験地において,土地利用の異なる5つの固定試験地で土壌試料を採取し,雨季と乾季における土壌の変化の測定、N2O生成に関与するアンモニア酸化菌、亜硝酸酸化菌、脱窒菌の計数および脱窒活性の測定と、CH4吸収に関与するCH4酸化菌数の計数をおこなった。またCO2発生量に関係があると考えられる土壌糖量を定量し、CO2発生量と比較をおこなった。さらにパシルマヤン試験地周辺地域27地点において同様にガスフラックスの測定と土壌試料の分析をおこなった。パシルマヤン試験地の分析結果から、硝化過程がN2O生成の主過程であるという推論が支持され、硝化速度とN2Oフラックスの間に全球的に通用する関係が見いだされた。アンモニア酸化菌および亜硝酸酸化菌は伐採跡地で検出され、この地点におけるN2Oフラックスが硝化過程で発生しているという仮定と合致した。これらの硝化が従属栄養細菌によると推定された。これは今までに知られていなかった新しい知見である。脱窒菌の生息数は多くなく、脱窒によるN2O生成はそれほど重要ではないと考えられた。また27ヶ所の広域調査の結果、硝化速度に対するN2O生成速度はAndisols土壌で低いことが明らかになり、そのメカニズムの解明が急がれるとともに、Andisols土壌には新しいエミッションファクターを適用する必要があることが明らかになった。CO2フラックスとCH4フラックスは乾燥・湿潤という熱帯特有のサイクルに大きく影響を受け、パシルマヤン試験地では乾燥による微生物活動の阻害がCO2フラックスとCH4吸収フラックスを低下させていると考えられた。パシルマヤン試験地のCH4吸収フラックスは土壌の気相率と正の相関があった。しかし、広域調査の結果ではこの傾向は認められず、その原因は特定できなかったが、シロアリの影響が大きいと考えられる。CH4酸化活性とCH4酸化菌数の関係は明瞭ではなく、CH4フラックスを決定する要因についてはさらに解析が必要だと考えられた。また、土壌糖量を測定した結果から、土壌中の熱水抽出画分がCO2生成に重要な役割を果たしている可能性が示唆された。パシルマヤン試験地のCO2フラックスはリター量との相関が高く、CO2フラックスを森林のバイオマス量から推定する手法に可能性を見いだした。しかし、この関係は広域調査の観測にはあてはまらず、今後さらなる研究が必要と考えられる。


[キーワード]

 温室効果ガス、土地利用変化、熱帯アジア、土壌微生物、硝化活性