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[A−4 紫外線の健康影響のリスク評価と効果的な予防法の確立に関する研究]

(3)紫外線の免疫機能と感染症に対する影響のリスク評価に関する研究


厚生労働省国立がんセンター研究所

 

がん情報研究部

山口直人

大阪市立大学

小林和夫

研究協力者

 

大阪市立大学

藤原永年


[要旨]

遅延型過敏反応は細胞性免疫応答であり、分子医学的にマクロファージ−サイトカイン−Th1細胞連関系がその発現に寄与している。紫外線照射は用量依存性に遅延型過敏反応を抑制した。分子機序として、低用量照射(O.5J/cm2/4時間/日、0-10日)による細胞性免疫抑制はTh2応答の増強に、高用量照射(21.6J/cm24時間/日、0−10日)による抑制はTh1応答の減弱に起因していた。高用量照射は、マクロファージ由来炎症性サイトカイン発現を抑制→単球走化性ケモカイン発現抑制→マクロファージ局所集積・活性化抑制→Tb1関連サイトカイン発現抑制→細胞性免疫抑制が考えられる。低用量照射における細胞性免疫抑制はTh2サイトカイン発現増強によるTh1応答の抑制が分子機序である。ヒトの平均的紫外線被曝用量が約40mJ/cm2/日であることから、低用量照射マウスモデルはヒトに近似していると考えられる。すなわち、ヒトにおいて、紫外線による細胞性免疫抑制機序はTh2応答増強→Th1応答抑制が示唆される。細胞性免疫は細胞内寄生病原体感染防御に寄与していることから、その抑制は細胞内寄生病原体(抗酸菌、チフス菌、レーシュマニア、ウイルスなど)に易感染性を惹起することが考えられる。熱帯地方に、多くの細胞内寄生病原体感染症患者が存在する事実は、紫外線による細胞性免疫応答抑制→易感染性を示唆している可能性がある。


[キーワード]

 細胞性免疫、遅延型皮内反応、サイトカイン、T細胞、感染症