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[G−1 砂漠化の評価と防止技術に関する総合的研究]

(3)西オーストラリアにおける砂漠化防止 ・ 植生回復に関する研究



[農林水産省農業環境技術研究所]

  環境資源部 土壌保全研究室

●谷山一郎

東京大学

●西山雅也・松本 聰・石川祐一・青木卓也

(社)国際環境研究協会

●久保田光雄・平賀義彦・中田禮嘉・星野亨・石川政憲・山口良雄


[平成10〜12年度合計予算額]

43,795千円

(うち、平成12年度予算額 13,833千円)


[要旨]

 要素技術と呼ばれる砂漠化防止に特に有効であると評価された個別の技術を組み合わせ、体系的な砂漠化防止技術として提案することを目的とした。西オーストラリア・カルグーリー地域の鉱山廃鉱埋立地を実証圃場とした。土壌攪乱・塩類集積・低肥沃度を特徴とするこの地域での砂漠化防止技術として以下の4点に着目して対応する技術の開発を試み、以下の結果を得た。
(1)土壌の攪乱からの早急な植生回復・表土固定:裸地からの自然遷移の初期過程を観察し、アカザ科やイネ科に属するAtriplex spp.、 Enneapogon spp.、 Halosarcia spp.など、とくに初期生育が速くパイオニアプラントとして植生の回復・表土の固定および被覆に優れた種を選抜した。
(2)塩類集積の改良: Atriplex spp.等の耐塩性植物を用いた塩類集積土壌の改良法について検討した。耐塩性植物体には最大 44g のナトリウムが蓄積され、根圈域土壌では塩濃度が有意に低下することが認められた。圃場の植生密度から 69.2 〜 128kg・ha-1の塩が除塩されると推定された。
(3)耐塩性の低い種の導入:耐塩性植物−非耐塩性植物間の混植体型を塩害地におけるコンパニオンプラント法として提案し、人為的に再現するための条件を検討した。パクチョイを用いて条件検討の結果、耐塩性植物の周囲 10 〜 20cm 程度で発芽促進が見られた。同様の条件で非耐塩性樹木の導入を試み、ごく少量の灌漑水で樹木を定着させることに成功した。
(4)産業振興につながる種の栽培:家畜排泄物をポット状に成型した堆肥ポットを用いて、野菜の栽培を行い、成長促進効果を確認した。また、現地の有力な輸出品目であるビャクダンの育苗法の基礎として、植物薫蒸水を用いた発芽促進法を開発した。
 汎用性の高い基本要素技術と、現地の実情に合った適応技術の組み合わせによる体系化モデルプランを提案した。将来的にはこのモデルプランが西オーストラリアのみならず、他の砂漠化進行地域にも展開されることが期待できる。


[キーワード]

砂漠化防止、耐塩性植物、体系化、西オーストラリア、要素技術