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[F−2 アジア太平洋地域における森林及び湿地の保全と生物多様性の維持に関する研究]

(2)ロシア北方林の生物多様性の解析及び共生系に与える森林撹乱の影響評価に関する研究



[農林水産省森林総合研究所]

 

  九州支所   鳥獣研究室

●小泉 透

  北海道支所  天然林管理研究室

●鷹尾 元

  森林生物部  昆虫生態研究室

●長谷川元洋

北海道大学大学院農学研究科

●高橋邦秀 

北海道大学大学院農学研究科

●波多野隆介

北海道大学大学院農学研究科

●柿沢宏昭


[平成10〜12年度合計予算額]

22,915千円

(うち,平成12年度予算額 11,331千円)


[要旨]

 ロシア極東のハバロフスク地方において,森林かく乱の再現とその社会経済的背景,森林かく乱が地球環境に及ぼす影響,森林かく乱が生物群集に及ぼす影響について調査した。森林かく乱は 1980 年代には平野部に近い地域で起きていた。1990 年代に入りかく乱面積は減少していたが奥地でのかく乱が増加していた。ハバロフスク地方では地方政府としての森林政策の枠組みがほぼ整い,実効性を高めるための措置が取られてきたが,プーチン政権のもとで大きな揺れ動きが出てきている。環境保全への取り組みがロシア国内の業界の中からも進み始めているが,山村地域における貧困化はより一層深刻の度合いが増していた。CO2フラックスと土壌温度の間には高い正の相関があり,伐採地は原生林,択伐林より土壌温度が高くフラックスが大きかった。また,原生林のCH4吸収は土壌水分率が上昇しても小さくならないため,伐採地や択伐林よりフラックスは高かった。調査地では人為起源の酸性化物質の流入が大きことが示された。伐採地の土壌はプロトンが蓄積し酸性化しており,林地でも少なからずNO3が排出していたことから、樹木の吸収能を越えたNO3生成が生じており、酸性化とともに富栄養化、窒素飽和状態に近いことがうかがわれた。キノコ類は,択伐後間もない伐採地では原生林に比べ一時的に種数が減少しているが,択伐後 20 年以上経ると種数は原生林並に回復すると考えられた。また,アラゴケベニチャワンタケは長期間かく乱を受けていない林分の指標生物になると考えられた。伐採後1年目では余剰に供給された有機物によって土壌動物個体数は伐採区でやや高かった。伐採後2年目では,伐採による気象の変化や新鮮な資源供給の減少が生じたために土壌動物の個体数が減少傾向に転じたと考えられる。また,落葉の重量減少は現在の所ほぼ同様であったが,今後こうした分解者群集の変化の影響を受ける可能性がある。北方林の主要な構成樹種であるチョウセンゴヨウの種子分散にはシマリスとハントウアカネズミが重要な役割を果たしていたが,これらの種は大規模なかく乱の地の中心部には出現しなかった。


[キーワード]

生物多様性,ロシア北方林,森林かく乱,LANDSAT画像,メタン