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[C−2 酸性・汚染物質の環境−生命系に与える影響に関する研究]

(5)集水域の酸中和能力の評価手法の改善と応用


[環境庁国立環境研究所]

 地球環境研究グループ 酸性雨研究チーム

●佐竹研一

 水土壌圈環境部    水環境工学研究室

●井上隆信

北海道大学工学部

●橘 治国


[平成8〜10年度合計予算額]

12,010千円


[要旨]

 現在、酸性雨に関係する陸水の測定項目としては、アルカリ度が一般的に用いられているが、陸水の酸性化による陸水生態系への影響はpHが5.6程度でも現われ、アルカリ度で陸水の酸性雨による影響を評価することは難しい。このため、新たに陸水の酸中和能を評価する手法の開発を行った。まず、酸性雨の影響があらわれやすいと考えられる低導電率のpHの測定について、現在よく用いられている複合型電極と純水測定用の流通形セルの電極の比較検討を行った。その結果、流通形セルのpH計が低導電率の試水を精度よく測定できることが解った。新しい酸中和能の評価手法は、実際の河川でも降雨時に負荷される程度の酸の添加を行いpH値を測定するものであり、滴定操作がないため現地での迅速な測定が行えること、直接pHの値で示すため酸性雨によるpH低下の可能性を直接読み取ることが可能になることなど有効であることを確認した。この測定手法を、下北半島、近畿北西部、国東半島、九州中部、屋久島の河川および赤城小沼・大沼に適用した。調査を行った地域の中では、屋久島の河川や赤城小沼では陽・陰イオン当量が少なく、pHが低くなった。また、0.01Nの酸の添加でpHが4近くまで下がり、0.001Nの酸の添加でもpHは添加前に比べて0.2から0.4低下し、6.0以下になる地点が多かった。段階別酸中和能における0.001Nの酸添加でpHの値が6.0以下になる場合は酸性化の可能性が大きい河川、0.01Nの酸添加でpHが6.0以上になった場合は今のところ酸性化の可能性がない河川、この間の0.001Nの添加でpHが6.0以上、0.01Nの添加でpHが6.0以下の範囲に入る河川は酸性化の可能性がある河川として、3段階に区分し酸性化の評価を行った。酸性化の可能性があると判断された河川は、下北半島、近畿北西部、九州中部、屋久島の渓流河川にみられた。このうち、屋久島では酸性化の可能性が大きいと判断される河川も数多くみられた。また、屋久島の河川の多くはpHが6.5以下と低く、全島的に河川の酸性化が進行している可能性も否定できない結果になった。


[キーワード]

酸性化、陸水生態系、酸中和能、山地渓流河川、山地湖沼