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[C−2 酸性・汚染物質の環境生命系に与える影響に関する研究]

(4)環境酸性化の腐朽菌に及ぼす影響に関する研究


[環境庁国立環境研究所]

 水土壌圏環境部      土壌環境研究室

●服部浩之

 地球環境研究グループ  酸性雨研究テーム

●佐竹研一


[平成8〜10年度合計予算額]

14,781千円


[要旨]

 北関東山岳地帯の樹木の立ち枯れの原因の一つとして、ナラタケによる被害が上げられている。本研究では、ナラタケによる被害の実態、酸性雨がナラタケによる被害に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、赤城山、日光のナラタケ被害地の土壌の性質を調べ、さらにこれら山岳地帯のナラタケの性質を調べた。
 赤城山、日光の立ち枯れ樹木の多くにナラタケの根状菌糸束が観察された。土壌pHは植生によって異なったが、健全木と立ち枯れ木の下の土壌のpHは大差なく、広葉樹で約4.5  (赤城山)、約 5.0 (日光)、針葉樹で約4.1 (日光)であり、いずれもナラタケの生長に適したpHであった。また、pHが低い土壌ほど土壌中の糸状菌数/細菌数の比が高くなる傾向にあった。
 日光及び丹沢の立ち枯れ樹木から計11点のナラタケの菌糸を採取し、その培養的性質について検討した結果、これらのナラタケはPDA培地で根状菌糸束を形成せず、培地を着色するなど、感染力の最も強いArmillaria melleaの形状と大きく異なった。また、日光及び丹沢の山岳地帯の立ち枯れ樹木に感染しているナラタケの感染力を調べるため、これらのナラタケの菌糸及びA.melleaの菌糸をカラマツの幼樹を植えたポットの土に接種し、カラマツの症状を観察した。その結果、A.melleaを接種したカラマツは5本中3本が枯れたが、日光や丹沢から採取したナラタケを接種したカラマツは枯れなかった。また、丹沢のナラタケの種を同定するため、子実体を形成させ、形状を調べたが、種の同定には至らなかった。しかし、その子実体の形状がA.melleaの子実体と異なるのは明らかであった。以上のことから、日光や丹沢などの山岳地帯の立ち枯れ樹木に感染しているナラタケは、健全な樹木にも感染するA.melleaではなく、感染力もA.melleaより弱いことから、これらのナラタケは何らかの要因で衰退しつつある樹木に感染しそれらの樹木を枯死させていると推定された。


[キーワード]

酸性化,森林被害,土壌,ナラタケ,腐朽菌