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[C−2 酸性汚染物質の環境−生命系に与える影響に関する研究]

(2)アルミニウムの環境中動態に関する研究

①アルミニウムの化学形態と土壌・水−植物系影響機構に関する研究環境中アルミニウムの挙動とスペシエーション


[環境庁 国立環境研究所]

 

 地球環境研究グループ 酸性雨研究チーム

●佐竹研一

群馬大学工学部

●角田欣一

東京大学農学部

●吉村悦郎


[平成8〜10年度合計予算額]

24,069千円


[要旨]

 アルミニウムは土壌成分として数%程度含まれているが、酸汚染によって土壌が酸性化すると溶出し生物活動に影響を与える。その影響は無機態のアルミニウムイオンになると大きいと考えられるが、この他、植物の生長に必須のリン酸と結合して植物によるリンの吸収阻害をおこすことも考えられる。アルミニウムの動植物に対する毒性はその化学形態に強く依存していることが数多くの研究により指摘されているため、酸汚染による森林被害等の発生機構を解明するためには、アルミニウムの総量と共にその化学形態を明らかにすることが重要である。そこで、アルミニウムのスペシエーションの方法を開発し、それらの方法を土壌抽出液の分析に応用し、アルミニウムの土壌中での挙動を明らかにすべく、アルミニウム分析用ポストカラムHPLCシステムを開発した。この方法を用いると、アルミニウム化学種をその電荷により3種類(AlLx<+1、AlLx2+、Al3+) に分離することができる。またアルミニウム化学種の動植物に対する毒性に強く影響を与えると言われているアルミニウム化学種の「反応活性度」(水和Al3+になりやすさ)を評価するために、8-キノリノール抽出速度法を検討するとともに、抽出速度法とHPLC法を組み合わせることによりアルミニウムのさらに詳しいスペシエーションを試みた。一方、こうした方法の問題点として、1)結合型のAlの定量性に疑問が残る、2)アルミニウムの情報しか得られない、3)感度が不十分、等の問題もある。そこで、これらの問題の解決を期待してHPLC-ICP-MS 装置の開発を行った。この方法を用いて宇曽利湖 (pH3.6)、猪苗代湖 (pH5.0) および天竜川 (pH7.7) から採取した水に含まれるアルミニウムのキャラクタリゼーションを行った結果、酸性湖における溶存態アルミニウムの水中での化学形態は無機能のAl3+、有機物と結合しているAlL2+およびAlL<= 1+であり、水中の溶存態アルミニウムの総量は宇曽利湖0.51mgl-1、猪苗代湖で0.05mgl-1、そして天竜川ではO.O1mgl-1以下であること。そして宇曽利湖ではその90%以上がAl3+の形で存在し猪苗代湖ではその大部分がAlL2+の形で存在していることが明らかとなった。


[キーワード]

アルミニウム、化学形態、土壌、水、酸性化