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[C−2 酸性・汚染物質の環境−生命系に与える影響に関する研究]

(1)根圏環境の酸性化が微生物及び養分バランスに与える影響に関する研究


[農林水産省林野庁森林総合研究所]

 森林環境部 養分動態研究室

●赤間亮夫 ・ 溝口岳男 ・ 重永英年 ・ 長倉淳子

 森林生物部 土壌微生物研究室

●岡部宏秋 ・ 赤間慶子 ・ 山中高史 


[平成8〜10年度合計予算額]

29,382千円


[要旨]

 関東平野のスギ林で衰退の見られる地点の土壌を調べたところ、pHの低下とともに硝酸態窒素の集積しているものが認められた。
 そこで、苗木をこのような窒素過剰ないしは酸性化という状況においてその生育を調べたところ、このような養分環境の変化は根圏の微生物に対して影響が大きいことがわかった。また微生物と共生した状態の苗木は、このような窒素過剰状態で地上部と根のバランスに変動を起こしてくることも認められた。さらに窒素過剰が進んだ状態では、伸長成長の減退、針葉の含水率の変動などめ症状も見られた。このような現象は、マグネシウムやカルシウムの不足と関連している可能性も考えられた。
 次に、実際の林地における窒素系酸性化物質の負荷が、林木にどのような影響を及ぼすかを、平地のスギ林において調べた。2年間の処理により、土壌pHは、対照に比べると低下傾向を示していた。土壌水成分では、硝酸イオンの増加(窒素量の増加)にともなってカルシウムやマグネシウム濃度の増加が見られた。これはカルシウムやマグネシウムが水に溶けやすくなっていることを示しており、いずれは水の流れに従ってこのような塩基類が流亡し、その後、土壌の酸性化が急激に進行する可能性がある。林地でも窒素化合物の処理は、短期的には根圏の細菌類の増加をもたらした。また、窒素化合物の処理によりスギの針葉に含まれる様々な成分の一時的な増加が見られたあとに、リンやカリウムの濃度低下が見られた。一方、光合成や蒸散などの生理活性にはほとんど差が認められておらず、このような含有成分の変化がただちに衰退につながるものか否かは今のところはっきりしていない。しかし、さらに反応が進んで土壌中のカルシウムやマグネシウムなどが不足してきた場合には、衰退につながる可能性は高くなるものと考えられた。


[キーワード]

スギ、根圏微生物、硝酸、塩基、酸性雨