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[B−56 二酸化炭素の海洋固定化に関する研究]

(2)二酸化炭素ハイドレート粒子晶析法による CO2 の海洋処理技術に関する研究


経済産業省 物質工学工業技術研究所

●山崎章弘・小笠原啓一


[平成10〜12年度合計予算額]

24,000千円

(うち平成12年度予算額 8,000千円)

[要旨]

 本サブテーマでは、地球温暖化の原因である二酸化炭素の削減法の一つである「海中ハイドレート晶析法による二酸化炭素の海洋処理法」を提唱し、処理プロセス設計のための基礎データの収得を行った。研究の内容として、(1) 二酸化炭素ハイドレートの生成過程の実験室レベルでの解明、(2) 二酸化炭素ハイドレート海洋投棄時の物質移動挙動の解明、(3) 処理プロセスのエネルギー、コスト評価の三点を行った。(1) に関しては、海中での温度、圧力の条件を模擬できる晶析実験装置を用いて二酸化炭素ハイドレート生成実験を行い、生成過程に及ぼす様々な操作条件の影響を明らかにすると共に、ハイドレート粒子の生成メカニズムについて検討を行った。その結果、二酸化炭素ハイドレート形成には、装置内の撹拌条件が重要な役割を果たしていることが明らかになった。すなわち、形成される二酸化炭素ハイドレートの形状や密度などの物性が、撹拌速度や方法によって大幅に変化することがわかった。(2) に関しては、深海条件を模擬した実験装置を試作し、二酸化炭素の投入模擬実験および投入後の物質移動過程の測定、解析を行った。二酸化炭素の水中への物質移動速度を、水中の二酸化炭素液滴径の変化から物質移動係数の形で算出、整理した。その結果、液滴の表面にハイドレート膜が存在する場合には、そうでない場合に比べて、同一温度、圧力の条件で物質移動係数が1桁小さくなることが確認された。このことは、ハイドレートによる海洋貯留法の方が液体投棄に比べて海洋環境への影響を抑制しうる可能性が高いことを示す。また、周辺の水の流れが物質移動係数のに及ぼす効果についても実験相関式の形で整理し、それに基づき、物質移動のメカニズムについて検討を加えた。以上の実験結果に基づいて、(3) では、海中ハイドレート晶析法による二酸化炭素海洋処理プロセスのコスト、エネルギーの評価を行った。ハイドレート粒子生成に撹拌槽を用いた場合、二酸化炭素 1t あたりの撹拌所要エネルギーは 1.1 MJ (1kWh=15円として 1t あたり 16.5円) となり、全体のプロセスに占める割合は非常に小さくなった。その結果、既存の液体貯留法とほぼ同程度のコスト、エネルギー消費で処理可能であることが明らかになった。


[キーワード]

地球温暖化、二酸化炭素処理、ハイドレート、物質移動、海洋貯留