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[B−7 北太平洋の海洋表層過程による二酸化炭素の吸収と生物生産に関する研究]

(3)表層炭酸物質の変動と海洋生物生産の影響に関する研究


[農林水産省中央水産研究所]

 海洋生産部物質循環研究室

●佐々木克之、田中勝久、小埜恒夫(科学技術庁特別研究員)


[平成8〜12年度合計予算額]

21,481千円

(うち平成12年度予算額 3,328千円)

[要旨]

 1997 年 1月、5月、8月、1998 年 4月および1999 年 3月と 11月に三陸沖東経 144°を中心とする黒潮域から親潮域にかけて表層の炭酸ガス分圧(pCO2)の連続分布調査を行い、季節変動要因を検討した。 1月と3月は pCO2 は水温と逆相関、5月と 8月は正相関、 11月は 15℃を中心に低温部で逆相関、高温部で正相関、4月は関係が見られない結果が得られた。冬季の鉛直混合による pCO2 の高い水の表層への供給、親潮域のブルーミングおよび春季から夏季の栄養塩の枯渇が pCO2 濃度変化の要因と考えられた。栄養塩とpCO2 の関係では冬季から春季にかけて硝酸塩が1μM減少すると pCO2 が 10ppm減少する関係が見られた。1、5および 8月の全炭酸と pCO2 の関係を調べると、1月と 8月では良い関係が見られたが、5月には見られなかった。同じ海水の pCO2 の季節変化要因を検討すると、冬季から春季は主として植物プランクトンの増殖により pCO2 は減少し、春季から夏季は水温が上昇するにもかかわらず全炭酸の減少によって pCO2 は大きく上昇しないことが示されたが、この時期は栄養塩は枯渇しているので、全炭酸の減少要因を明らかにすることが今後の課題となる。最後に、水温、全炭酸およびアルカリ度の季節変化から pCO2 の変化を予測すると10%の精度で予測することが示された。
 親潮域および混合水域では pCO2 と水温、水温と硝酸塩濃度は良い相関を示した。塩分と水温も良い相関を示したので、同一塩分の水温の 1、5および8月の季節変化から同一塩分の pCO2 変化と硝酸塩濃度変化を求めたところ、1月から 5月にかけてのpCO2 の減少と硝酸塩濃度の減少との関係はほぼ等しい値 (△pCO2/△硝酸塩=10)となり、この間の pCO2 の減少は光合成によることが明らかにされた。水温と硝酸塩濃度との相関を各月で明らかにすることにより硝酸塩濃度の減少量を見積もることにより、冬から春にかけてのpCO2 の減少をリモートセンシングの水温情報から推定できる可能性を示した。春から夏にかけてpCO2 は増加するが、予測手法はまだ確立していない。


[キーワード]

炭酸ガス分圧、親潮域・混合域、表面水温、栄養塩、クロロフィル、全炭酸とアルカリ度