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[B−4 森林の二酸化炭素吸収の評価手法確立のための大気・森林相互作用に関する研究]

(6)インバース・フォワードモデルによる炭素吸収源分布の推定


[環境省国立環境研究所]

 

  大気圏環境部大気物理研究室

●神沢 博・菅田 誠治

  地球環境研究センター

●井上 元・Shamil Maksyutov*          *現在、地球フロンティア研究システム

京都大学理学研究科

●木田 秀次・井口 敬雄

[国土交通省気象庁気象研究所]

  環境・応用気象研究部

●佐藤 康雄・馬淵 和雄・佐々木秀孝・足立 万代

筑波大学生物科学系

●鞠子 茂・及川 武久・伊藤 昭彦


[平成11〜12年度合計予算額]

25,118千円

(うち、平成12年度予算額 12,564千円)

[要旨]

 大陸規模での二酸化炭素濃度観測データと気象データから、大気物質輸送モデルを用いて、炭素吸収源分布を推定する方法の開発を目指した研究を行った。3次元全球輸送モデルを開発して、二酸化炭素濃度分布のシミュレーションを行い、シミュレーション値を観測値と比較することにより全球規模での大気中二酸化炭素収支について検討を行った結果、北半球の植生が二酸化炭素の大きな吸収源になっている可能性が示唆された。別途開発した全球輸送モデルおよびインバースモデルをもって、TransCom (Atmospheric Tracer Transport Model Intercomparison Project)プロジェクトに参加し、インバース法による炭素放出吸収源の推定の不確定性の研究を行った。シベリアの航空機観測による二酸化炭素高度分布のデータが、亜寒帯アジアの吸収源強度の推定の不確定性を約 1/2 にすること、亜寒帯北アメリカの推定の不確定性も減少させることがわかった。東京-シドニー間の定期旅客機による上部対流圈での航空機観測は、地上からはるか離れている観測にもかかわらず、東南アジアの放出源推定へのインパクトがあった。日本列島周辺域を対象とした高分解能局地二酸化炭素循環モデルの水平分解能を 30 km から 60 km にすることによりアジアのほぼ全域を対象とし、1年間について連続積分を行い、大気と陸上生態系との二酸化炭素の交換を直接計算する、いわばフォワードモデルによる炭素吸収源分布の直接推定を試行した。このモデルによる推定がどの程度の精度を有するかについては、フラックス観測値、大気中二酸化炭素濃度観測値との比較による十分な検討が必要である。さらに、地球環境変動に対する生態系の炭素吸収能の応答を予測し、評価する手法を確立するために、陸域生態系モデルを用いて、相異なる気象データが生態系純生産の評価に及ぼす影響を調べた結果、定性的には類似した傾向を示すが、定量的にはかなり大きな違いを生じる事が分かった。


[キーワード]

炭素吸収源分布、炭素収支、大気物質輸送モデル、局地二酸化炭素循環モデル、生態系モデル