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京都メカニズムに関する検討会(第3回)議事録


1.日  時  平成15年4月24日(木)10:00~12:07
2.場  所  東条インペリアルパレス 曙の間

3.出 席 者

(座   長) 西 岡 秀 三
(委   員) 鮎 川 ゆりか 荒 牧 英 城
大 塚   直 亀 山 康 子
小 林 紀 之 塩 田 澄 夫
高 橋 秀 夫 高 村 ゆかり
新 澤 秀 則 畑 中 邦 夫
波多野 順 治 松 尾 直 樹
山 口 光 恒
4.議  題
京都メカニズムに関する平成14年度後半の国内外の動き(報告)
京都メカニズムに関する平成15年度の政府の施策案(報告)
平成15年度以降における京都メカニズムの活用施策の展開について(討議)

5.配 布 資 料

資料1 議事次第
資料2 委員名簿
資料3 共同実施及びクリーン開発メカニズムに係る事業の承認に関する指針
(平成14年10月16日京都メカニズム活用連絡会決定)
資料4 JI/CDMプロジェクト政府承認審査結果について
資料5 平成14年度CDM認証モデル事業に係る認証機関及び事業案件の公募について
資料6 京都メカニズム国別登録簿システムについて
資料7 平成14年度三重県型CO2排出量取引制度提案事業報告書(案)概要
資料8 京都メカニズムの国際検討状況
(参考) 米国シカゴ気候取引、EU排出量取引の状況
資料9 吸収源CDMに係る国際ルールの検討状況
資料10 京都メカニズムに関する実施に係る支援メニュー
資料11 平成15年度地球温暖化防止のためのクリーン開発メカニズム及び共同実施事業フィージビリティ調査について
資料12 平成15年度環境省温室効果ガス排出量取引試行事業募集要項(案)
資料13 産業構造審議会環境部会地球環境小委員会第4回市場メカニズム専門委員会資料(経済産業省における京都メカニズムに関する施策)
資料14 農林水産省における京都メカニズムに関する施策
資料15 国土交通省における京都メカニズムに関する施策
参考資料 「図説 京都メカニズム 第2版」

 

                             

午前10時00分開会

○熊倉課長補佐 委員の先生でおくれていらっしゃる方もいるようでございますが、定刻となりましたので、予定どおり、ただいまから京都メカニズムに関する検討会の第3回目の会合を開催したいと思います。
 まず、会議に先立ちまして地球温暖化対策課長の清水よりごあいさつ申し上げます。

○清水地球温暖化対策課長 本日はご多忙にもかかわらずご出席いただきまして大変ありがとうございます。
 実は本日、局長が出席する予定でありましたけれども、ただいま国会で、石油特別会計法の改正の審議が行われておりまして、急遽、局長、そちらの審議に呼ばれることになりましたので、この場にご参加できないことになりました。おわびを申し上げるとともに、ご了承いただきたいと思います。
 さて、前回、第2回目の検討会が昨年8月に開催されたわけでありますが、かなりそのときから時間がたっております。大変この間、ごぶさた申し上げて申しわけありませんでした。本日の会合では、まず昨年8月からの動き、国内外における動きというものをご説明していきたいと思います。
 それから、現在、まさに国会審議中の石油特別会計法、これによりまして環境省と経済産業省が石油特別会計を共管となる、というような形での関連法制の改正の審議ということでございますが、環境省といたしましては、今年度後半より、この特別会計に基づきまして、民間事業者の京都メカニズム活用に向けた支援策を大幅に拡充していきたい、というふうに考えております。本日は、そうした今年度の予算、今年度の施策についてご説明申し上げたいというふうに思っております。
 それから、本日、各関係省庁の方々もお見えになっておりまして、関係省庁の方々からもそれぞれの施策についてご説明いただくような機会も設けておりますので、こういうことを踏まえて、今後、京都メカニズム関係について、実際どのように運営し、執行していったらよいのか、活発なご議論を先生の皆様方にはお願いしたいというふうに思います。
 来年度、2004年は、地球温暖化対策推進大綱の見直しの年に当たりますので、環境税を初めとして温暖化対策の全体について大きな議論が巻き起こる、ということが予想されております。しかしながら、この京都メカニズム検討会の方では、京都メカニズムに関する国際的なルール策定の状況などを踏まえて、より専門的、技術的な課題について有識者あるいは専門家としてのお立場からのご検討をお願いしていきたいというふうに考えておりますので、よろしくお願いします。
 本日、非常に限られた時間ではありますけれども、どうぞ忌憚のないご意見初め、どうぞよろしく審議をお願いしたいと思います。
 簡単ではありますが、私からのあいさつにさせていただきます。お願いします。

○事務局 議事に入ります前に、本日の資料の確認をさせていただきます。お配りいたしております配付資料一覧の方に基づきまして資料の確認をさせていただきます。
 資料1が、本日の議事次第でございます。資料2が京都メカニズムに関する検討会の委員名簿でございます。資料3が共同実施及びクリーン開発メカニズムに係る事業の承認に関する指針、と書かれましたホチキスどめされた資料でございます。続きまして、JI/CDMプロジェクト政府承認審査結果について、こちらは資料4でございます。続きまして、平成14年度CDM認証モデル事業に係る認証機関及び事業案件の公募について、こちらは資料5でございます。資料6は横の紙ですが、京都メカニズム国別登録簿システムについて、と書かれたパワーポイントの絵の資料でございます。続きまして資料7ですが、平成14年度三重県型CO2排出量取引制度提案事業報告書(案)概要でございます。続きまして資料8は横紙となっておりますが、京都メカニズムについての国際検討状況というものでございます。続きまして資料8の参考1でございますが、表紙にはシカゴ気候取引についてと書かれたホチキスどめされた紙でございます。続きまして資料9でございますが、吸収源CDMに係る国際ルールの検討状況でございます。続きまして資料10でございますが、京都メカニズムの実施に係る支援メニューでございます。続きまして資料11、平成15年度地球温暖化防止のためのクリーン開発メカニズム及び共同実施事業フィージビリティ調査についての募集要項でございます。続きまして資料12でございますが、平成15年度環境省温室効果ガス排出量取引試行事業募集要項(案)でございます。続きまして資料13でございますが、産業構造審議会環境部会地球環境小委員会の第4回市場メカニズム専門委員会配付資料一覧でございます。続きまして資料14でございますが、農林水産省における京都メカニズムに関する施策でございます。続きまして資料15でございますが、国土交通省における京都メカニズムに関する施策でございます。この後、参考資料といたしまして図説京都メカニズム第2版でございます。もし不足している資料等がございましたら、事務局までお申しつけくださいませ。

○熊倉課長補佐 それでは、早速ですが、議事に入っていきたいと思います。これ以降の進行は西岡座長の方にお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

○西岡座長 それでは、議事に入りたいと思います。
 資料1に本日の議事内容、先ほどご説明がありましたものでございます。きょうの主要なここでの検討事項といいますのは、本年度、平成15年度の政府の施策案について検討いただくということであります。この議題でいきますと、2以降がその項目になっております。その前に、これまで先回ご議論いただいたことがどういうふうに進展しているかということで、1に関する報告があるかと思います。資料でいいますと、資料9までが、これまでの内外の動き等々の報告かと思います。議事といたしましては、当初20分ぐらいの間に、1のこれまでの経過報告をいただき、かつそれに対するご質問をいただきたい。その後、②に関する施策案について報告をいただいた後、約1時間弱、1時間ないと思いますけれども、皆さんのご意見をいただきたい。きょうは、その施策に対するご助言といいましょうか、まだ、その施策は予算はとれて一部はだんだんと執行されている感じはありますけれども、さらによくするためにはどうすればいいか、ということでご議論いただきたいというぐあいに考えております。
 その施策の中には、環境省だけではなく農林水産省、経済産業省あるいは国土交通省の施策についてもご報告があるかと思います。その後半につきましても一括してご議論いただきたいと思います。
 それでは、最初の部分でございますけれども、京都メカニズムに関する平成14年度後半の国内外の動きということでご報告いただきたいと思います。

○熊倉課長補佐 それでは、事務局の方から説明させていただきます。今、座長からご指示がありましたように、平成14年度後半の動きについて非常に簡単にご報告したいと思いますので、そこの点、お許しいただければと思います。
 まず、資料3でございます。JI/CDMに関する事業承認指針ということでありまして、ちょうど、前回、8月の末だったと思いますが、第2回のこの検討会でご議論いただきました政府としてCDM/JIのプロジェクトをどう承認していくかと、その指針についてご議論いただいた結果も踏まえて、昨年10月に政府の京都メカニズム活用連絡会の方で指針という形で決定をいたしました。内容については以前ご議論いただいた方向でつくらせていただいております。
 これに基づきまして具体的なプロジェクトの募集というか、申請受付を開始いたしまして、資料4にございますとおり、現在2件のプロジェクトが申請され、既に承認をされております。1件はJI関係で、カザフスタンにおける省エネプロジェクト、もう一つはCDM関係で、ブラジルにおけるバイオマス利用プロジェクトということでございます。いずれにも経済産業省さんが支援担当省庁ということで連絡会から指定をされておりまして、これから具体的に支援をしていく、という状況でございます。
 それから、資料5でございますが、CDMの認証モデル事業に係る公募の資料がついていると思います。これは昨年12月に公募したので、現在進行中のものでございますが、これの趣旨は、プロジェクトの支援と並行して、それを審査していく第三者認証機関の体制整備というのも必要だろうというご議論があったと思いますが、特に日本の審査機関、まだまだ審査の実績が不足していて、今後、CDMの正式なオペレーショナルエンティティになれるかどうかが、今、非常に課題となっていると思いますが、その実績づくりの一助とするために、環境省の方で具体的な事業案件の方も募集をして、そこに対してモデル的にバリデーションをやっていただくという事業を実施しております。公募の結果、中央青山サステナビリティ研究所、それからJQAの2社が、現在、環境省から委託をしてバリデーションのモデル事業を実施しているという状況でございます。
 それから、資料6でございますが、京都メカニズムに関する国別登録簿システムについてということでございます。これも去年の夏、お話ししたと思いますが、政府の方で事業承認の話と加えて、発行されたクレジットの受け皿たる登録簿の整備、これは経済産業省、環境省の方で共同で進めるというふうになっておりましたが、昨年度、構築に向けたさまざまな作業を進めてきておりまして、昨年度末、ようやくコアとなる部分の機能を開発し終えているところでございます。
 絵の中で、国別登録簿システムという部分がありますが、要は海外とのリンクといういのはまだできておりませんで、国内でクレジットを登録できるようなデータシステムというのを構築し終えた状況でございます。実際に、我々役所側の管理、それから口座を開く法人サイド、それからそれを閲覧する一般国民、いずれについても電子的にアクセスできるような形になっておりまして、今後はCDMレジストリーないしはトランザクションログといった国際的に決まる部分とつなげていくという作業が、今年度から継続して行われるという段取りになっております。
 続きまして、資料7でございますが、平成12年度の三重県型排出量取引制度提案事業報告書(案)概要ということでございます。こちらは、排出量取引の関係でございますが、三重県の方でこういった制度について関心を持たれて、ぜひこういうのを研究して国に提案したいというオファーがあったものですから、環境省としても資金的に協力をして差し上げようということで進めてきたものでございます。報告書そのものは来月中旬ぐらいになって公表ということになろうかと思いますが、きょうは案の概要版ということでお配りいたしました。内容のご説明は時間の関係で省略しますが、基本的にはシミュレーションでございまして、パソコン上に仮想の企業、仮想の排出量データ、仮想の生産量データ等々、いずれも仮想のものでございますが、そういったシミュレーションをやる前提としてどういった制度が考えられるかという、いわゆる政策論議というものを三重県内の30社ほどの企業の方々を集めて、それを最終的には報告書という形で取りまとめるというところに意義があったかなと、我々は考えております。三重県からの報告書を出てくるのを、今待っているという状況でございます。
 あと資料8でございますが、京都メカニズムの国際検討状況ということであります。これは前回の検討会でもお話ししましたように、国連サイドの方ではCDM理事会というものが設置されて、そこでさまざまな指針類を作成しているという状況でございます。その後の状況といたしましては、まず、認定に関するパネルの方で認定に係る指針を作成し、具体的にオペレーショナルエンティティを認定する審査の作業が進んでいる、という状況でございます。現在13社だと思いますが、世界各国から審査機関が応募しており、そのうち一部について、既にこのパネルの文書審査というのが始まっているという状況でございます。
 もう一つ、メソドロジーパネルというCDMのベースライン、モニタリング方法についてガイダンスをつくるというミッションを持ったパネルがございますが、こちらの方では何か特定のガイドラインをつくるということではなくて、個々のプロジェクトごとに、そういったベースライン、モニタリング方法を出してもらって、それをCDM理事会の方でチェックするというやり方で進んでおります。資料の中に、今申し上げた申請しているオペレーショナルエンティティの候補、それからベースラインモニタリング方法で申請がされているプロジェクトの一覧について載せさせていただいております。
 あと、参考というのをつけさせていただきましたが、これは各国の状況でございまして、米国における自主的な排出量取引の試みということで、シカゴ・クライメイト・エクスチェンジの概要、それからEUの計画レベルで、現在、検討が進んでおります排出量取引制度の状況を添付しております。すみませんが、説明は割愛させていただきます。
 とりあえず、地球温暖化対策課の方からのご説明は以上でございます。

○西岡座長 どうもありがとうございました。

○高橋研究調査室長 もう1点、資料9によりまして、吸収源CDMについての国際ルールの検討状況ということで簡単にご説明したいと思います。
 吸収源のCDMにつきましては、COP7においては、第1約束期間において新規植林及び再植林を対象とするということが決まり、またその獲得できるクレジットの上限を排出量の1%とするということが合意されましたけれども、その具体的な定義でありますとか手続につきましては、さらに議論が必要だということで、SBSTAで議論をして、今年のCOP9で採択をする。それをCOP/MOP1で正式に決定をするということが決められております。
 昨年、SBSTAが2回ございまして、いろいろな論点につき意見交換をしてまいりましたけれども、今、事務局の方で具体的なテキスト案を作成しておりまして、それが間もなく出ると思いますが、それをもとに6月のSBSTA、それから12月に議論をされて、具体的な手続を採択しようということになっております。
 きょう、主な論点を簡単にご紹介したいと思いますが、1つは定義の問題がございます。これは、森林あるいは新規植林、こういうものにつきましては、既に国内の吸収源について定義がございますけれども、これと同様のものとするということで、おおむね合意がなされたております。ただ、1つ、再植林の定義をどうするかということについては、議論が少しございまして、先進国の国内の森林につきましては、再植林については1989年末の時点で森林でなかったところに木を植えるのを再植林と定義しておりますけれども、これをそのままCDMで途上国に適用できるかということが議論になっておりまして、カナダ、日本、コロンビア等は、途上国の場合には森林簿等の情報が不足しているということで、1989年末段階では森林であったかどうかということを判定することは難しい、ということで、より最近の、例えば1999年末という時点に変更すべきだという意見があります。これについては途上国あるいはEU、かなり多くの国が国内の吸収源の定義を変えるべきではないという主張をしておりまして、これについては議論が残っております。なかなか国内の森林の定義を変えるということについては、かなり抵抗があるということでございますけれども、引き続き議論をしていきたいと思っております。
 それから、もう一つ、吸収源CDMの非常に特徴的な問題として非永続性という問題がございます。これはCDMとして植林あるいは再植林をした場合に、それがその後、山火事とか伐採等で消失してしまうという場合がありますので、この点が排出削減のCDMとは異なっておりまして、そこの非永続性の問題を対処するということが非常に重要でございます。
 これについては、いろいろな議論がされておりましたが、一応現時点では、おおむね2つの手法が主なオプションとして提案をされております。1つは、2ページ目にございますが、発行されるクレジットを有効期限つきのものにするという方法でございます。これはEU等が提案をしてきております。もう一つはカナダが提案しておりますが、将来の森林喪失に対して保険をかけるという形で、永続性についての担保をするということでございます。これについては、最初のアプローチ、有効期限付のもののみを認めるべきだという主張と、2つのアプローチを実態にあわせて選択できるような柔軟性を持たせるべきだという主張、日本は後者の主張でございますけれども、そういう議論がされているということでございます。
 3ページ目の別記、EU提案というところを見ていただければと思いますが、EUの提案では、吸収源CDMで発生したクレジットについては、当該約束期間において目標達成のために使えますけれども、発行後5年たつと失効してしまう。失効した段階では、失効した量に相当する他のクレジット--これは永続的なクレジットです--で補てんをするという必要があります。ただ、失効した時点で、実際にプロジェクトを行った森林がまだ残っていれば、その炭素蓄積量に応じてCERを再発行できるということでございます。そういうルールでございます。
 いずれにしましても、明らかなことは、吸収源CDMについては、通常の排出削減CDMのようにクレジットが1回発生すれば、そのクレジットは永遠に有効だということではなくて、有効期限をつけて確認をしながら再発行するとか、あるいは保険をかけるというようなことで手当が必要になってくる。そのためのコストなり、あるいはクレジットの市場価格はどうなるかというようなことについて、念頭に置いておく必要があるということでございます。
 あと、それ以外にも、2ページ目にございますベースラインとか、追加性、クレジット発生期間、リーケージあるいは社会経済的・環境的影響について議論がございます。クレジット発生期間については、森林ということで事業に時間がかかるということで、排出源のクレジットに比べると、より長い発生期間を認めるべきだということが意見の大勢にはなっておりますけれども、具体的な年限について議論がございます。
 それから、それ以外の要素については、日本、カナダ等は基本的に排出削減のCDMのルールに準じて行うべきだ、必要最小限の修正にとどめるべきだと主張していますが、途上国あるいはEU等は、特に社会経済的な影響とか追加性等について、より厳しい要件を課す必要があるのではないかという議論をしておりますけれども、この辺については、私どもとしては、排出源CDMと比べて、バランスをとって、吸収源CDMが必要以上に詳細であったり、あるいは制限的なルールにならないように、ということで議論をしていきたいというふうに思っております。
 簡単でございますが、以上でございます。

○西岡座長 どうもありがとうございました。
 昨年10月の指針決定以来、多くのことが事務的に進んでいったということでございまして、2つのプロジェクトが政府承認審査を受けて認証されたということ、それから、オペレーショナルエンティティに関する、いってみればトレーニングの話も進んでおりますし、それからレジストリーをどう設計していくか、国際的な連携はまだとれていないデザインのようですけれども、それが進んだということ、あるいは小規模の取引についてのシミュレーションもやってみてノウハウを蓄積しつつある、そういったことが国の中では進んでいる。その一方で国際的には、特にCDM理事会の活動に基づく幾つかのルール、あるいは仕掛けができつつある、さらにペンディングになっておりました吸収源CDMにかかる国際ルールは、まだ進行中というような報告があったわけです。
 こういうものを受けて、今後、どういう施策を環境省なり国全体で打っていくかということにつきましては、説明とご検討いただくということでございますが、これまでのとろで何かご質問ございましょうか。山口さん、どうぞ。

○山口委員 最後の非永続的というのが、ちょっとよくわからなかったので、もう一度お願いしたいんですが、通常の排出削減でも途中で火事で燃えてしまえば、排出削減はそれ以後なくなりますよね。それとどういうふうに違うのかということを、もう一度教えてください。

○高橋研究調査室長 排出削減につきましては、仮に途中で工場がなくなっても、なくなるまでに発生したクレジットは有効です。ただ、森林の場合は一度発行されたCERがその発行した森林がなくなってしまいますと、過去に発行したCER自体が無効になってしまう。

○山口委員 過去に吸収した分ですか。

○高橋研究調査室長 過去に吸収した分が無効になってしまうというところでございます。そこが大きく違っている。ですから、一度吸収したものが大気中に発生してしまいますから、一度出たクレジットは取り消されていまう。排出源の場合はそういうことはございませんので、そこが大きな違いになっております。

○山口委員 わかりました。

○西岡座長 ほかにございましょうか。どうぞ。

○高村委員 同じくシンクのCDMに関して2点ほどご質問なんですけれども、1点は保険つきのCERというところで、私も余り不勉強で恐縮なんですけれども、この間、環境条約等で保険の利用というのが、いろいろな場面で持ち出されるんですが、保険業界の方にお話を伺うと、なかなか設計するのが難しい、あるいは経営採算がとれるのかどうかというのがよくわからないといったようなお話も聞くものですから、このCDM事業としてのシンク事業についての保険の適用の具体的な可能性について、どういうご議論があるか伺えればというので1点です。
 2つ目が、特にクレジット発生期間と関係してくると思いますけれども、現在交渉されているのは第1約束期間、つまり2012年までのルールについてであるという理解をしております。他方で、事業自身は第一約束期間を超えて継続をするということになるわけですが、第2約束期間といいますか、2013年以降のルール設計と、現在の交渉されている規則が予定している時間的適用範囲を超えた事業があり得るというところの関係について、どういう議論があるか、もし、おわかりになりましたらお願いいたします。

○高橋研究調査室長 いずれも難しい問題なので短時間ではあれですが、1つ、保険の問題につきましては、カナダが提案しておりますけれども、先生おっしゃるとおり、具体的にどういう仕組でこれをやるかということについては、まだまだ議論が必要だろう。例えばクレジットで補てんをするといっても、クレジットを保険会社がどうやって確保できるのかとか、いろいろな問題があります。ただ、私どもとしては、新しいルールでありますので、できるだけ、可能であればオプションを用意して、事業者が柔軟に対応できるようなものが望ましいと思いますので、引き続き、その実効性について議論していきたいと思っております。
 それから、第1約束期間かどうかということですか、これはまさにいろいろ議論がございまして、これは第1約束期間に限るルールだから、それ以降のものについては言及すべきではないという議論もございますけれども、どうしてもこの問題を議論していきますと、さきのお話も念頭に入れて議論をしないと、この吸収源CDMについてはきちんとしたルールができないということでございまして、そういう部分では、第1約束期間以降もそのプロジェクトは続くということを念頭に置きながら、ルール化をしていくという議論が必要なんだろうというふうに思っております。

○西岡座長 ありがとうございました。
 どうぞ、小林委員。

○小林委員 引き続きまして今のシンクに関して若干、私の意見を申し上げたいと思うんですけれども、資料9に出ております我が国政府の対応は、基本的に私はこれでいいのではないかと思います。ただし、CERについて、さらに検討すべき事項があるというふうに私は考えております。
 このEU提案のTCERは、非常に合理的で説得力がある案であるというふうに思います。しかしながら、先ほど少しご説明がありましたように、CERの市場価格等を考えた場合に、通常のCERよりも低いということが想定されています。そういったことで、実際に事業者にとって、この方法が、魅力というか可能な方法であるか、そういったところをよく考える必要があると思います。
 そこで、私はシンクに関しましてもTCERというTつきでなしに、通常のCERで行う、こういった方法が検討できないかというふうに考えております。
 そこで1つ考えられる方法としましては、非常にシンクの場合、問題になるのは伐採ということです。伐採をどう扱うかなんですけれども、初めからPDDで吸収量を計算する場合、もし、その事業が伐採に関するものであるならば、初めから伐採量の排出は、伐採即排出としてマイナスにしておく。そうすると、伐採で将来リスクがあるということは、初めから計算することは回避できるわけです。
 一方、もう一つ、リスクを伴うものは山火事等なんですけれども、これは通常の植林事業であっても当然伴うものになっていますけれども、この分については保険でカバーするということは可能ではないかというふうに考えます。
 まとめていいますと、Tを外して通常のCERとしまして、それで伐採については即排出量、これは基本の考えで計算して、それであとのリスク、山火事については、先ほどのインシュアランスで考える、そういった方法がとれないかどうか、というのが私の考えです。やはりCDMのシンクは、事業者ができるものでなければ、"絵にかいた餅"に終わってしまうのではないかと考えています。
 参考のためなんですけれども、今、第2約束期間についての議論が出ましたけれども、これは皆さんご存じだど思うんですけれども、世界銀行で現在バイオカーボンファンドというのを立ち上げて動き出しております。私自身、その技術諮問委員をしておりますけれども、その中で第2約束期間を踏んまえた仕組みができております。現在の第1約束期間の京都議定書に従ったものがウインドー1となっておりまして、ウインドー2のプロジェクトは第2約束期間をにらんだプロジェクトになっています。特にシンクと小規模、将来を見た両方で私は注目しておいていいのではないかと考えています。
 以上です。

○西岡座長 どうもありがとうございました。
 ほかにご意見ございますか。なければ、今までのお話、そちらで十分取り入れていただきたいと思いますけれども、次に移りまして、15年度における京都メカニズム推進のために実施すべき施策について、皆さんのご意見をいただきたいと思います。
 話によりますと、15年度予算を要求して、ある程度の額を、先ほどちょっとお話にもありましたが、エネルギー特会等々を利用いたしまして確保しているということでございますので、その説明を受けたい。先ほども、私、申し上げましたように、まだ事業といいましょうか、予算もスタートしたところでございますので、皆さんのご意見を入れていろいろと、よりよいものにしていけるのではないかなというぐあいに思っております。事務局からの説明を簡単にいただきまして、その後、皆さんのご意見を一巡いただきたいというぐあいに思っています。それでは、事務局、お願いします。

○熊倉課長補佐 それでは、事務局の方から資料10を使いまして、平成15年度施策として京都メカニズムの実施に係る支援メニューということでご説明をしたいと思います。この内容については、前回8月の第2回検討会において、今後の施策展開についてご議論いただいたと思います。その結果も踏まえまして、財務省要求をいたしまして、一応枠として、今、計上できている予算案のご説明ということになります。ただ、今現在、事務方の方で具体的な執行についての企画をやっているところですので、それについて、先生方のご意見を踏まえて、今年度やっていきたいと思っていますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 それで、目的の部分は置いておいて、主な事業項目というところからのご説明を始めたいと思います。まず、1.ですが、CDM/JI事業案件の発掘ということでございまして、まだまだプロジェクトがたくさん行われているという状況ではないわけでありまして、一体どういうプロジェクトがCDM/JIとして活用できるか、というところを発掘するという、最初のステップが、今、非常に重要かなと考えております。
 それで、最初の「○」でございますが、京都メカニズム相談支援事業ということでありまして、これは新規施策ということで計上しております。内容はいわゆる一般の事業者向けに京都メカニズムの情報提供をするというのが趣旨でございますが、なかなか情報といっても、特にホスト国関係の情報が非常に不足しているなと思っておりまして、この調査費を使って、実際に現地でいろいろヒアリングをする等々、かなり現場に密着した情報を収集し、それをホームページ等を使って広く公表していきたい。さらにこういったものについて事業者の方々からご質問等々ございましたら、それに答えていく、ないしはそれを受けて調査をやっていくというような形を考えております。
 2番目の「○」でございますが、CDM/JI事業調査ということでございます。これはいわゆるフィージビリティ・スタディといわれているものでありまして、これは平成11年度から行っている継続案件でございます。これにつきましては、毎年4月にフィージビリティ・スタディをやりたいという事業者の方を公募しておりまして、実は資料11にございますように4月16日に今年度の公募を始めております。
 その内容なんですけれども、CDM/JIになりそうな案件のアイデアについて募集をし、選定委員会で採択した上で、1年間かけて調査をされる事業者の方に現地調査を含め、具体的にフィージビリティ・スタディをやっていただくということになります。特に環境省のこの事業については、廃棄物バイオマス関係と植林関係というのを中心に置いて進めております。
 それからあと、今年度の特徴として、なかなか事業化につながっていないという過去の経緯を踏まえて、最終的にはプロジェクト設計書の作成まで至るような、調査し放しに終わらないような要件というのをつけさせていただいて、採択に当たって配慮したいと思っております。
 あと、今後、大分、通年フィージビリティ・スタディをやってきたということもあり、そういった内容を取りまとめて、CDM/JIを実施する際の技術的なマニュアルというものも整備していきたいと思っております。
 それから、2.でございますが、CDM/JI事業の立ち上げ支援ということでございます。これはフィージビリティ・スタディ等をやって、ものになりそうだということで、実際に事業に着手をされようとしている事業者の方への支援でございまして、最初の「○」は、設備補助ということで、CDM/JIたらしめるために、必要不可欠な追加的設備についてその費用の3分の1を補助しようという、これは新規事業でございます。これについては、特にどういう対象というのは、今、絞る予定はございませんで、なかなか事業案件がないのが現状でございますので、できるだけ幅広く、いろいろ我々の方も働きかけをして立ち上げを促していきたいと思っております。
 それから、2番目の「○」ですが、京都メカニズム活用ファンドということで、これは財政投融資の方で手当をしているものでございます。これは、いわゆる世銀がやっているカーボンファンドのようなものの日本版でございまして、政府系金融機関も一部出しますが、主として民間企業の方が中心となってファンドを設立し、CDM/JIにかかるクレジットを、要は買い上げるということで、プロジェクトそのものの支援を図っていこうというものでございます。現在、経済産業省さんを中心に、実際の立ち上げに向けた企業への働きかけ勧誘活動等々を詰めているところでございます。
 それから、3.でございます。CDM/JIのインフラ整備ということでありまして、プロジェクトそのものではございませんが、CDM/JIをやっていくための必要不可欠な周辺的な環境整備を進めていこうというものでございます。
 2つ掲げておりますが、1つはCDM認証モデル事業ということで、これは先ほど、14年度にやった事業をご説明しましたが、それの継続ということになります。要はCDM/JI等々、審査をやっていくという、認証機関、オペレーショナルエンティティといわれている機関について、これから認定がなされていくわけですが、そういった認定を、我が国の審査機関が受けられるよう、必要な実績、経験というのを積んでいただこうということで、モデル的に事業案件のバリデーションをやっていただくというものでございます。
 それから、2番目の「○」でございますが、これも先ほどご説明しました国別登録簿の整備ということでありまして、昨年度からの継続でございます。今年度は、もちろん去年つくったものの維持管理というものがありますが、さらに国際的なクレジット移転が可能となるような、国際的な部分との接続について、特にシステムの構築というのに傾注していきたいと思っております。
 それから、4.でございますが、CDM/JIのホスト国のキャパシティビルディングということでございます。前回の検討会でもご意見がありましたように、ホスト国の、いわゆる承認してくれるかどうかというリスクというのは非常に高い、というお話がございましたが、そういったものに対応していくために、そういったホスト国の政府の担当者を対象としまして、例えばワークショップを開くとか、研修員を受け入れる等々、幅広く京都メカニズムに関する基礎的知識ないしはCDM/JIプロジェクトに係る技術的知見といったものを、日本としてできる得る情報提供なり、いろいろご支援というものをさせていただこうと。さらに専門家のような方を、実際、現地ホスト国に派遣をいたしまして、CDM/JIを受け入れるために必要な体制整備、具体的にはホスト国としてのプロジェクトの承認の基準であるとか、手続であるとか、そういったものを実際につくり上げていくという部分に支援をやっていこうというふうに考えております。
 それから、最後、5.でございますが、これまでCDM/JIのお話をしてきましたが、もう一つの、京都メカニズムの仕組みであります排出量取引について研究を進めていきたいと思っております。これについては、国内制度にかかわるものですから、非常に議論が多うございまして、まだまだ日本ではコンセンサスが得られているような、そういった仕組みというのはない状況でございます。したがいまして、2008年の国際取引にどう対応していくかという観点から、とりあえず今は関係の方々と議論をして研究していくということをやっていきたいと思っております。
 その手段として、最初の「○」にありますように、自主的な排出量取引試行事業というものを、今年度実施しようと思っております。これは、内容についてですけれども、企業の方々を公募の形で参加をお願いして、年度前半は参加企業による検討会を開催して、排出量取引にまつわるさまざまな課題、例えば排出量の算定方法であるとか、それの検証方法、さらには取引にかかる移転のやり方、そういったものについて、技術的な研究というのを、企業の実務をやられている方々とご一緒に進めていきたい。そういった検討を受けて、とりあえず1つの排出量取引の試案のようなものをこしらえて、それを前提に試行実験を年度後半、実施するというプランでございます。
 この試行事業の実施については、参加企業の方に何らかの形で削減目標というのを決めていただいて、さらに2003年1年間の排出量の算定、それから第三者検証というのを受けていただく。この目標と実際の排出量の照合を行いまして、削減ができたところについてはクレジット化して移転をやってみる。その移転は、先ほど申し上げた国別登録簿に実験用の機能を拡張いたしまして、国別登録簿の使い勝手を確認するという意味も込めて、そこで取引を実施してみるというプランでございます。ただし、あくまで勉強というか試行実験でございますので、そのクレジットそのものに金銭的価値はつかないと思っております。したがって、取引はかなりバーチャルに近いものになろうかと思っております。
 今回やった実験の成果については、特に企業中心の検討ですので、2005年以降の温暖化対策の議論に、企業サイドではこういった意見があるという形で、参考として供していきたいと思っております。
 それから、最後の「○」でございますが、排出量取引の基盤となる部分になろうかと思いますが、企業レベルないしは工場レベルで排出量の算定ができなければ、そもそも対策の進みようがないわけでございまして、その算定ないしはその検証のやり方について検討して、何らかのガイドラインという形でデータをとりまとめていきたいというふうに考えております。
 あと、右側にございますのが、フロー図でございまして、左側にCDM/JI事業がどうやって進んでいくかというフローがございまして、それの一つ一つに、今回支援策というのを対応させているという形でお示ししたものでございます。
 あと、資料11は、フィージビリティ・スタディの募集要項です。まだ公募中ですので、こういったプロジェクトができそうだ、というようなお考えがある事業者の方には、ぜひ奮ってご応募いただけたらと思います。
 それから、資料12が、最後の方で申し上げた排出量取引の試行実験の募集要項でございます。これはまだ案ということでありますので、ご議論いただけたらと思いますが、でき得れば、明日には公募を始めたいというふうに考えております。
 ポイントなんですけれども、一番後ろにポンチ絵がついていると思いますが、さっきご説明した内容の絵解きなんですけれども、この中のタイプⅠ企業、タイプⅡ参加企業というのが書いてありますが、タイプⅠ参加企業というのは、いわゆる企業工場単位、エンティティレベルの参加ということで、そういった企業、工場における削減目標というのを設定していただいて、その目標達成のための取引をやるというパターンでございます。これとともに、いわゆる目標というのはないけれども、温暖化対策に資する事業、プロジェクトを実施して、そのプロジェクトをやったことによる削減量をクレジット化して取引の対象にするというタイプⅡ参加企業も用意しておりまして、CDM/JI型のやり方というのも取り入れて、削減のためのオプションというのを広げた勉強というのをやっていきたいなと思っております。
 あと、非常に事務的なことで申しわけないんですけれども、このペーパーの後ろから2枚目の資料の裏側の部分で、⑦本事業への参加メリット、と書いてあるんですが、その4番目の「・」で、「タイプⅡ参加企業にあっても」の後が消えていて、これは落丁でございまして、ここは「タイプⅡ参加企業にあっても、検証費用の分についての負担する必要がありません」と書くつもりだったのが落ちておりました。この場をかりておわびして訂正いたします。
 環境省の方からは以上でございます。
 この後、各省の方からもご説明いただけたらと思います。

○西岡座長 ありがとうございました。
 それでは、他省庁の取り組みについてもご紹介いただきたいと思います。順番といたしまして、経産省、農水省、国交省の順でいきたいと思いますが、1省約4分ないし5分程度でご説明いただけるとありがたいと思います。どうぞ。

○関係省庁(経済産業省) 環境政策課の田辺と申します。よろしくお願いします。
 私どもの経済産業省の方では、京都メカニズムの関係で、産構審の市場メカニズム専門委員会というのを開いておりまして、それが前回、第4回は3月13日に開催しております。ここで京都メカニズムの支援の関連、平成15年度の予算計画関連の話等を説明しておりますので、その資料に基づき、ご説明差し上げたいと思います。
 まず、資料3ページ目ですか、経済産業省の方、パワーポイント上の方のページになりますけれども、経済産業省の方でヘルプデスクの方を設けておりまして、具体的なCDM/JI案件のご相談を各事業者さんからいただいております。これが昨年度末時点で、約70件程度、具体的なプロジェクトが集まっておりまして、内訳としては、エネルギー関連のものが大体5割、アジアの関連、CDMというのが大体5割というのが分析の結果であります。
 5ページ目ですけれども、そういうふうにCDM/JIの関連、いろいろご相談いただいているんですけれども、最初にご説明しましたように、実際に政府承認を受けているのは、今、CDM/JIがそれぞれ1件ずつという状況でありまして、ここはCDM/JIに係るリスクの大きさとか、ファイナンス確保の難しさというところがネックになっているという考えのもとから、15年度関係の施策をいろいろご用意しております。
 1つ目、パワーポイント5ページ目の下ですけれども、ファイナンス支援としまして、事業補助というものをご用意しております。これは、エネルギー関連が特別会計の方から約15億円、非エネルギーの関係で4億円という補助金をご用意しております。これは補助率は4分の1となっていて、NEDOの方を通して執行することを予定しております。
 下の方に幾つか論点を書いてあるんですが、基本的に補助金を受けてプロジェクトを実施して得られたクレジットというのは、事業者の方に帰属することが原則だと考えておりますが、ただ、一方で国の予算を使って補助を受けたプロジェクトでありますので、例えばクレジットの海外転売をどうするかとか、あるいは取得したクレジットの一部を、政府の方へ移転するといった制約について、いろいろこの審議会で議論をしました。こうした議論も踏まえながら、今、15年度の予算の執行にあわせて、具体的にどういうルール設定をするかというのを検討しているところであります。
 次のページに参りまして、簡単ではございますが、先ほどもご紹介ありましたファンドの件というので、ここでも取り上げております。これは重複しますので、詳細は割愛しますが、政府系金融機関、国際協力銀行さんとか、政策投資銀行さんの方、ございますけれども、それぞれが別々にやるということではなくて、日本として一つ、日の丸ファンド的なものを用意するという方向で、今、いろいろ事業者さんを含めて話をしているところであると認識しています。
 その下、リスク回避として、まさに、きょう国会審議しておりますが、省エネ・リサイクル支援法という法律、これは我が国の企業の環境対策に対する支援法なんですが、これを改正しましてCDM/JI事業に対する債務保証という措置を追加しております。
 それから、これは貿易保険さんの方になるんですけれども、約款を変更して、一部CDM/JIに関するリスクの方、貿易保険で見れるように運用改善をしているところであります。
 続きまして、7ページ以降になりますけれども、今までのところ、具体的なCDM/JIの、まさに支援というところで、いろいろな支援策をご紹介しましたが、あわせて、実際にCDMで国として支援するところであるんですけれども、そうしたCDM/JIを通じて得られたクレジットが国内に入ってきた場合にどうするかというところが、まだインフラが未整備でありますので、そのあたりのお話を幾つか、本年度も事業としてやろうと思っております。
 時間が短いので主要なところだけですけれども、10ページをごらんいただけますでしょうか。パワーポイントの上の方で、クレジット(排出削減量)取引・移転試行事業というものでご紹介しております。これはまさに昨日からホームページ上、公開しまして、今日から事業者の公募を受付するところでございますが、事業内容としましては、国内でCDMのような形で、企業の方が持ってきたプロジェクトを実施していただきます。これは一部、補助金もありますので、補助がつくプロジェクトと、つかないプロジェクトというのがあるかと思います。それについて、国際的なOEに申請している監査法人であるとか、認証機関というところに、経済産業省の方から委託をしまして、CDM/JIに準じた形で計画のバリデーションであるとか、モニタリングの結果のべリフィケーションというのをしていただきます。そうした結果を踏まえて、そうした結果の排出削減量を、先ほどありました今般開発しております国別登録簿なりに仮に登録して、これを取引移転する中で、いろいろな京都メカニズムに関するインフラを整備するという目的のものであります。
 今朝も新聞報道等で誤解があるようですけれども、市場をつくるということではなくて、例えば登録簿を今、開発しているところであるんですけれども、その口座の開設手続をどうするかとかですとか、あるいは不動産取引であれば、登録簿の話、登記簿というのは公示能力があるんですけれども、例えばクレジットの登記簿についても同じ能力を付す必要があるのかないのかとか、あるいはクレジットが入ってきたときに、企業会計上、どのように処理するかといった、そういうインフラのところが、まだ国内で整備されておりませんので、そうしたことを、こういうトライアルを通じて検討するということを目的とした事業であります。
 この資料は、3月の時点のものでちょっと古いのですが、最新のもの、今、申し上げた経済産業省のホームページに発表してありますので、ご感心ある方、あれば、そちらをごらんいただければと思います。
 経済産業省からは以上でございます。

○西岡座長 どうもありがとうございました。
 それでは、農水省、お願いします。

○関係省庁(農林水産省) 資料14と書いたものでございます。私は林野庁でCDM植林を担当しております海外協力室の佐藤でございます。
 農林水産省林野庁のCDM植林に関するものは幾つかあるのですが、15年度に新規で3本ございます。それから継続ものが幾つかございます。ここにございます15年度新規で始まった3つの事業についてご説明させていただきます。PR版があるのですが、一番最後の世界地図の書いてあるパワーポイントの資料で簡単な説明をしたいと思います。
 ここに書いてあるのは3つの事業ですが、これ以外に関連事項をあげますと、ことしの4月1日にCDM植林、ヘルプデスクというものを立ち上げました。経済産業省がやっておられるのは京都メカニズム全体なんですが、CDM植林については、うちの方でヘルプデスクを立ち上げさせていただいて、また林野庁のホームページのお知らせにおいても、CDM植林の解説書と、CDM植林に関する事業一覧を掲載させていただいております。
 では、この3つの事業をちょっと見ていきたいと思います。まず、これは、京都メカニズムの中のCDM、CDMの中のシンクに関するものに絞ってございます。ここに3つ事業が掲げてございますが、3つとも5年間の事業でございまして、アジアで2年程度、中南米で2年程度、アフリカで1年程度というふうに考えています。情報整備の部分と体制整備の部分とございます。
 まず、情報整備の部分ですが、これは2つございまして、CDM植林ベースライン調査事業というものと、CDM植林技術指針調査事業、この2本です。ベースライン調査事業はどういうものかといいますと、一言でいいますと、ベースライン地図を作成するということでございます。これは、CDMの受け入れ可能性の高い国を、まず選んで、CDMの中でも、CDM一般は受け入れの可能性があるけれども、植林について受け入れ可能性はあったりなかったりするものですから、中でもCDM植林の受け入れ可能性の高い国を、まず選びます。その国の中でも、土地所有権が複雑であったりして植林に適さないところというものがございますので、それは除外いたします。そのような作業を経ましてCDM植林の適地を抽出いたします。そのCDM植林の適地につきましてベースラインマップを作成するというものでございます。ベースラインといいますのは、シンクの場合はプロジェクトが始まる前の植生による吸収量ということでございますので、吸収量の植生マップができるというようなイメージでございます。ただし適格性のことがございまして、森林であるところを森林にしても、これは適格性がございませんので、森林でないところの植生マップ。これは結局、どういうことかといいますと、潅木地はその国の森林の定義によって森林であったり森林でなかったりするわけでございます。適格性のあるところは潅木地と草地となるということでございます。草地というのは、ほとんどベースラインゼロでございましょうから、結局は森林でない潅木地、その植生のマップをつくるといいうようなイメージでございます。
 それから、その下のCDM植林技術指針調査事業。ここにございますように、CDM植林事業者がOEに申請書を出すものでございますが、このOEの有効化審査を通りやすくするためのプロジェクトデザインドキュメントの事例の作成ということでございます。一言でいいますと、PDDのひな型づくりということでございます。これは、アジア、中南米、アフリカの幾つかの典型的な自然的、社会的条件の地域を選びまして、そういった複数のタイプごとにひな型をつくっていこうというような事業でございます。
 体制整備の方に移ります。一言でいいますと、国内外のプロジェクトスタッフを育成ということでございます。これは日本のスタッフもございますし、受入可能性の高い途上国のスタッフもございます。これも現地の研修、国内での研修を行いまして、国内外のプロジェクトスタッフを育成していきたいというふうに思ってございます。
 以上でございます。

○西岡座長 それでは、国土交通省、お願いします。

○関係省庁(国土交通省) 国土交通省の長谷川でございます。よろしくお願いいたします。
 15年度の国土交通省の施策が資料15の方にまとめてございます。15年度から運輸部門、それから海外におけるインフラ整備といった分野のプロジェクトを促進していこう、というための体制整備をやっていこうというふうに考えております。
 3.のところに事業の概要が書いてありますが、一番最初のものは、国土交通分野のプロジェクトに関しても、国内のOEが審査の技術をきちんと持つということを目標にいたしまして調査をすることにしております。今までの先行事例の情報の整理でございますとか、ベースラインの設定上の問題点の抽出でありますとか、あるいは、もしでき得れば具体的なPDDの審査をやっていただいてみたり、というようなことを念頭に置いております。
 それから2番目のところは、特に運輸部門のCDMを進めるために、いろいろ現地のデータというものが必要なんですが、途上国でなかなかそういうものがそろっていないというようなところもありますので、現時点ではタイのバンコクを想定しておりますが、そこで現地調査を行って、例えば自動車交通の運転モードであるとか、そういったものを調査していくということを考えております。
 それから、3番目のところは、海外のインフラ整備、これまでも行われてきましたが、これを環境重視型に変えていこうということで、そのためのガイドラインをつくるということを目標にしております。この中で、海外のインフラ整備事業をCDMとして実施していくためにはどうしたらいいかというような観点から、ガイドラインにCDMとしての実施の仕方というようなものを盛り込んでいければというふうに考えてございます。
 それから、2枚目の紙ですが、こちらは昨年度3月の末に、運輸部門のCDM/JIに関するワークショップというものを開催いたしました。運輸部門については、これまで実施されてきましたパイロットプロジェクトも少なくて、実施可能性調査のようなものもなかなかないという状況で、なかなかプロジェクトが進みづらいという状況にございます。ですので、そういった数少ない調査あるいはパイロットプロジェクトをやっている方々というのを、世界から集めまして、情報交換を行いました。約20名の方が外国から参加していただきまして、国内からも 100名弱の方に出席をいただいております。
 このプログラムに沿ったような格好で、いろいろなプロジェクトの提案がございましたが、詳しいことにつきましては、きょうは時間の関係もございますので省略させていただきますけれども、ここで上がってきたいろいろな問題点というのを整理いたしましたところ、まず1つは運輸部門のプロジェクトというのは、ほとんどがCO2の削減だけではなくて、大気汚染の削減といったような効果があったり、ということであります。そういった観点から、これから、ぜひ推進していかなければならないというような観点であります。
 もう一つは、運輸部門で、車が出すCO2というのが、例えば車検の制度のようなものをきちんと実施していくことで、車の性能を最大限に引き出していけるというようなことでプロジェクトの提案が幾つかあったんですけれども、こういうものを考えましたときに、制度上は、そもそもきちんとした性能を出して車が走るというようなことになっているんだけれども、実態はそうはなっていないというようなときに、ベースラインをどこに置くべきだろうかというようなところが問題点として挙がっております。
 それから、運輸部門につきましては、例えば公共交通機関の利用促進するといったようなソフト面のプロジェクトというのが考え得るわけでありますけれども、こういうものが果たしてCDMとしてなじむかどうかといったような観点からも、問題点として指摘されております。
 それから、運輸部門では、ベースラインの推定というようなものが、ほかの分野のプロジェクトに比べて不確実性が少し大きいというようなことが問題になっておりまして、こういった場合に、ベースラインの算定というのをどこまで正確にやる必要があるのか、あるいは正確にできない場合に、どういったやり方で実施可能なベースラインというようなものをつくっていったらいいか、というようなことが問題点として挙げられております。
 このワークショップの場では、そういった問題点があるので、なるべく国際的な合意形成の場に、こういった問題点を持ち出して、なるべく運輸部門のプロジェクトも進められるように、国際的な合意の形成を図るべきだというような意見の方々が多かったんですが、これから国土交通省といたしましても、そういった国際的な働きかけもしつつ、かつ具体的なプロジェクトを提案していくことによって、こういった問題点というのは一つ一つ解決していく必要もあろうというふうに考えてこざいます。
 以上、簡単ですが……。

○西岡座長 どうもありがとうございました。
 それでは、これから皆さんに、この施策に関するご意見、ご質問をいただきたいと思います。約50分残っておりますが、最初のラウンド、1人3分ずつぐらいで非常にシャープに問題点を提起していきまして、ご意見いただきまして、時間がありましたら、もう1ラウンドと考えております。ご意見のある方は名札をお立ていただきましょうか。これは1ラウンドで、もう1回いきますけれども、それでは、山口委員の方から。

○山口委員 では、2ラウンドがあるということですので……

○西岡座長 それはわかりません。保証はいたしません。(笑い)

○山口委員 1ラウンドしかないとすると、最初に当たると思い当たらないところがあったりしてちょっと……。
 とりあえず、一番基本的な点なんですけれども、先ほど環境省の方から、この委員会というのは技術的なことを検討するんだというお話がありました。一応そういう前提で考えたいんですが、そうはいっても、2013年以降がどうなるかということが、現実には全くわからないわけです。そうすると、現在、CDMをやるというインセンティブは一体何か、いろいろ国の方で制度を進めていただいているわけですけれども、今、一生懸命、時間と労力を使ってCDMをやる。そして、仮にクレジットがとれた。それは一体何なのかということです。2013年に、仮にの話ですけれども、全く違うレジームができてきた場合に、それは死んじゃう可能性があるわけです。そうすると、いろいろ支援策がありますけれども、一応、現在、国がこういう方向で動いているわけですから、その中で、例えば企業が何かをやってクレジットをとった、そういうときには、いずれにしても、そこは何らかの形で国が企業に対して、何といったらいいのかよくわからないんですが、補償するというんですか、その分はきちっと見るよという、何かこれを確約を、もうされているのかどうか、ちょっと僕は知らないんですけれども、もしされていなければ、この確約がないと、なかなか企業は動きにくいなと。これが、まず第1点です。
 第2点としては、今、いろいろな支援策を見て、何十億という非常なお金がかかっているわけです。最近、CDMというのは、ある意味では非常に高いという認識が各国で出てきているんですね。何かというと、取引費用が非常にかかる。排出権取引ですと、購入費用がかかるわけですけれども、買ってくれば、それで終わりになります。しかしCDMについては、政府の支援策、何十億というのは全部ある意味では取引費用にカウントされるわけです。ですから、例えばオペレーショナルエンティティ云々というのがありましたけれども、いろいろやられるときに、今後は運営組織で実際幾らかかるのかというデータを、ぜひ公表していただいて、単にプロジェクトを幾らの投資で、幾らCO2が削減できるから、トン当たり幾らというだけでは現実に物が動かない。そこの取引費用のところに、もっと焦点を当てる必要がある。これが2点です。
 そして3点目ですけれども、先ほど、いろいろ実験をやる、例えば排出量をどうやって計測するか云々という話がありました。恐らく、もちろん環境省はご存じだと思いますけれども、今、その点について、2つ、世界で動きがあるわけです。1つはWBCSD/WRIで、もう一つはISOです。そして、具体的には、例えば日本でこういうふうにはかる。今度はイギリスでこういうふうにはかるといっても、それは全然違うと互換性がなくなるわけです。
 実際に、現在、私、実はISOの国内委員会の委員長なんですけれども、そこで国際的な場面で議論をしています。これは簡単にいうと、エンティティ。エンティティというのは、さっきの企業の話ですけれども、それからプロジェクトです。これはCDM/JIが中心になろうかと思います。それとベリフィケーション、大体この3つで、今、動いているんですけれども、実はISOの場に出ていくと、アメリカが中心なんですけれども、京都レジュームに沿った形の国際ルールづくりというのに徹底的に反対します。それで、結局、京都レジーム以外の、ほかのもの、例えばカリフォルニアの取引だとか、もちろんエンティティの方はヨーロッパのエミッショントレーディングがあるんですけれども、そういうのとコンバーティブルで無ければならない。レジームニュートラルにしなければいけないということで、随分すごいやりとりが、実はありました。ただ、いずれにしても、そういう形で、もう一つはISOとWBCSD/WRIのプロトコール間のコンパーティビリティが、実は最大の論点になっています。
 ですから、そういう形で世界で動いている2つが、割合、統合されてくる中で、国内の制度をどうするかというときに、それと無関係になってしまうと、それは使いものにならない可能性があると思うんです。
 ですから、逆に私の立場からのお願いとしては、政府がこういうものでいろいろやられたら、それをこちらでもインプットしていただいて、それを国際討議の場で、ぜひ出してインターナショナルに整合性のあるものにしていく必要があると、こういうふうに思います。
 以上です。

○西岡座長 どうもありがとうございました。
 松尾委員、お願いします。

○松尾委員 資料12のエミッショントレーディングに関する、試行事業に関する話を中心にして、ちょっとコメントなり質問なりしたいと思いますが、今、山口さんがおっしゃったような形で、ベリフィケーションあるいは企業レベルのインセンティブというのは、非常に重要なイシューでして、三重県の場合も、いろいろとご苦労があったんじゃないかなと思うんですが、その話は、もしよろしかったら教えていただきたいと思います。実際それを踏まえてこの試行事業の中で、そのあたりをどう考えておられるかというのが、まず一点としてあると思います。例えば、ガスカバレージとしてCO2以外は入れるのか入れないのか、CO2にしてもエネルギー以外のCO2もありますよね。そういうところをどういうぐあいに考えておられるのかというのが、さっと読む限りにおいては書いてあったかなかったか、はっきりしなかった。それから、やっぱりポリティカルな話--今言ったのは技術的な話かもしれません--として、目標をどうやって設定するのか、自主的なものだから、どんなものでも置けるかどうかという点ですね。その点が検討会の中で、今後、何らかのクライテリアをつくっていくという考え方で考えられているのか、その辺の考え方が、見にくいのかなという感じがいたします。その辺をちょっとクラリファイしていただければいいのかなということです。
 それから、経済産業省の方でクレジット取引制度の試行、これも実験的なところが大きく実際にまだ動いているわけではありませんけれども、これらの関係ですよね。企業の立場から言えば、何か同じような、ちょっと違いますけれども、2つ動いていると混乱をするわけです。別々の省庁ですから、別々のことでいいのかもしれません。両方ともお金が動かないから比較的やりやすいのかもしれませんが、例えば同じプロジェクトを両方に申し込むことができるかどうかとか、あるいは1つの企業の中で片方、例えば環境省は企業レベルとか、あるいは公共レベルの話、それから、経済産業省は、その中のプロジェクトという形でやるということも可能なのかどうかなどが疑問としてあがってきます。その辺は、まず、省庁間で決めてクラリファイしておいていただいた上で、さて、では、企業としてはどうでしょうかという形になるのではないかなと思います。
 とりあえずそういったことです。

○西岡座長 どうもありがとうございました。
 波多野委員、お願いします。

○波多野委員 環境省の施策について、非常に具体的なところを2つお話させていただきたいんです。1つは、キャパシティビルディングの話です。前にもちょっとお話ししたんですけれども、キャパシティビルディングというのは、非常にペットワードになりやすいんですけれども、実際は行うのは非常に難しい状況にあると思うんです。今年度の予算を拝見しますと、大変大きなお金もついておりますので、よほど工夫していかないと予算のむだ使いになるおそれがあると思うので、幾つかの点を申し上げたいと思います。
 キャパシティビルディングの場合には、まず、相手の国がどこかによって非常にリードが違います。ASEANとか、中国、インドを持っているのか、アフリカを持っているのかによって非常に違います。今、ここの話は、主としてASEANを中心の話で、アフリカは多分違うでしょう。アフリカの場合には、ここにお書きになったように、まず相手の国にCDMは何かとか、そういうニードは非常に高うございます。しかし、ASEANの国なんかだと、そこはさんざんやりましたという人が非常に多くて、そこのところが注意であります。実際、私どものよく知っている人は、マニラにいるんですけれども、今週は3回もワークショップに出さされた、1つはADBで、1つはUNEPで、1つはどこかの政府で、同じ話ばかり聞かされたと、こういうのが非常に多くて、そこの団体は、ある意味では済んでいるし、あるいは飽和しているんです。
 そうすると、何がこれからニードがあるかというと、幾つかの点がありますが、1つ大きなのは、各国で承認するに当たって目線を知りたい。自分のところが、こういうのを承認しちゃって、あれはばかじゃないかと言われては非常に困る。だから、目線のすり合わせをする、そのためのチェックリストとかガイドラインがあればいいし、あるいはそのための意見交換会が欲しい。これが1つです。
 それから、2つ目は、さっきお話があった、これは非常にいいと思うんですけれど、実際の手続の手がない。各国、大体、今、マレーシアが一番進んでいますけれども、ほかの国でもかなり大幅は決まっています。ですから、ナショナルストラテジーなんか、みんな決まってますし、今、どこでも一様にもめているのは、日本とやや同じで申しわけないんですけれども、省庁間でだれがどこをとるかという話が非常にもめておりまして、それが、みんなプライミニスターとか大統領のところへ上がる過程にあります。
 それが済むと、次は、日本でいえば、ちょうど資料2か何かにあったように、実際の受付をどうやってやるかとか、そこに入っていくわけです。ところが、人手がないので、それを書いてくれる人がいない。ですから、さっきおっしゃった専門家を発見して、そういうのをやらせるというのは非常にいい考えだと思います。ただ、これは、向こうに行ってそれをやれる日本側の人材が非常に限られていますから、そこによほど難があります。
 それから、3つ目は、多分合っていると思うんですけれど、各々の国でナショナルオーソリティになるような人たちはこういうふうに言います。自分らもわかっている。だけど、ちょっとここは日本と違いますけれども、ほかの省庁の人は何もわかっていない。その人たちに説明するときに、自分らが言うだけだと余りインパクトがないから、そこに説明をするときに、どういうふうに彼らに役立つかというものを説明にしてほしい。これをぜひ説明してほしい。
 4つ目が一番大きいんですけれど、今、各々、みんな大筋はわかってきています。ですから、個別の話を非常に知りたがっておりまして、例えば、私どもマレーシアでやっている案件だと、ベースラインができたら早く見せてほしいと、向こうから、こっちが申請する前に「見せて見せて、見せて」と、こういう状態なんです。これは、ただ個別案件が日本国は余り、今、ありませんので、ちょっと難しいんですけれども、ことしのいろいろな案件や何かで、そういう話をしてあげるべきで、たまたま、今いったのは例示なんですが、やっぱり相手のニーズをよほどよく注意していかないと、それこそさっき3つあった会が4つになると、ちょっと余り残念かなと思います。
 もう一つは、ここにお書きになっていないことで、1つご検討いただきたいんですけれど、環境NGO、それも気候変動関係の環境NGOの育成というと変なんですけれど、環境NGOの育成の話をこういう場で話すというのは変といえば変なんですけれど、実際上は、ある程度、政府の支援をしてあげないといけないのではないかと思うんです。日本はもともと気候変動関係のNGOは少しで、環境は多いけれども、例えば鮎川さんなんか頑張っていらっしゃるけれども、これも仕事のほんの一部しかない。気候ネットワークも頑張っているけれども、これもいろんなことをやっている。そういうところで話をしますと、多くの場合、排出量取引の方にいってしまうんです。ですから、例えば初期割当をグランドファザリングでやるか、オークションでやるか、そういう話はみんな目の色を変えてやるんですけれど、CDMはとっつきが悪くて、全然国際的なレベルでCDMについて発言できる日本の気候変動のNGOは非常に少しだと思うんです。やっぱりCDMというのは最終的には環境にいいことをやろうとするわけですし、そこら辺でそういうものがもうちょっとあるといいなと思います。
 OEについては各省とも、ものすごく興味があって、猛烈に一生懸命やっているんですけれども、実際上、OEについては数も多くて、どちらかというと日本から余りに申請が多いんじゃないかという議論が巻き起こされる。これに比べて、そっちはオーバープレゼントで、NGOの方は全くアンダープレゼントのままなので、ここについて、もうちょっとバランスをとることがいいのではないか。
 例えばの話ですけれども、OEの研修と環境NGOのノウハウというのは非常に似ているんです。どっちも同じようなところを見ますから。例えば、それをある程度一部は一緒にやるとか、何かそういうことも含めて、日本の環境NGOが、例えばCDMウオッチの人と四つに組んでちゃんと議論ができるとか、それから例えば日本の案件、海外の案件についてコメントが映像できちっと出せるとか、そういうレベルになるように、これはほかの省庁といっても、恐らく環境省が一番近いと思うんですけれども、ぜひお願いできたらなと思います。

○西岡座長 どうもありがとうございました。
 では、新澤委員、お願いします。

○新澤委員 波多野委員の具体的な経験に基づいた発言の後で大変やりにくいんですけれども、シンプルな質問ですが、自主的な排出量取引試行事業というものについてなんですけれども、金銭の授受は伴わないということなんですが、これは投資はどうなんですか。投資自体も計算上の投資で、実際はやらないんですか。単純な質問です。

○西岡座長 今の単純な質問には、すぐに答えられますか。

○熊倉課長補佐 簡単にお答えします。
 環境省の試行実験は、投資については言及していません。したがって、それは各企業の自由ですし、仮に投資をしたとしても、それに対する補助金とかは用意していないという形になります。各省の自主的取り組みということでやっていただくというのを前提に行う事業というようにしています。ただ、経産省さんのやつは一部補助金がつくところが違いとしてございます。

○新澤委員 言及しないというのは、投資をしなくて計算上の削減であっても、このフレームに乗せるということですか。

○熊倉課長補佐 多分2つあると思うんですけれども、タイプⅠの企業レベルでの削減を進めるという試行実験については、当然、その実際の排出量を算定しますので、何か社内でプロジェクトなり何なり削減を取り組んだ上で、その成果が排出量削減につながるというような形で実施されるというふうに考えています。ですから、実際にプロジェクトを投資をしなければ排出量は減らないわけですから、減らないということで、この実験に参加をするということになってしまうので、それは各社それぞれの判断で、何らかの投資をされると思います。ただ、この事業に参加したから初めて投資をするということはないと思います。
 あと、もう一つは、プロジェクトベースのタイプⅡといってるものについては、これは実際にプロジェクトをやっているところの参加が一番望ましいんですけれども、なかなかそういうふうに限ると、企業の方も大変かなと思って、現在計画中のものについても参加可能にして、その計画中のものは、仮にちゃんとできた場合において、どれだけの削減というのが弾き出せるかというのを、そこは仮想的になりますけれども、実施していきたいというふうに思っております。

○西岡座長 さらにご質問がありましたら後ほど……。

○高橋委員 3つだけあります。1つは、これは確認なんですけれども、ご存じの自主行動計画というのをやっていまして、そこで目標をつくっていてバブル的ですけれども、やっています。この排出量取引の試行事業を自主行動計画の関係で、どう理解したらいいかというのは、なかなか難しいところがありますので、端的にいえば、僕は、これは関係ないというふうに理解していますが、関係がどういうふうにあるのかないのか、環境省としてどういうふうに考えているのか、できれば伺っていきたい。
 2番目は、企業としては、多分、国内取引よりは国際取引の方に関心が非常にあるのだろうと思いますので、国内取引に限定した形というのは好ましくないのじゃないかなと思います。特に2ページ目に、上から8行目か9行目に「以上の経験を踏まえて、本格的な国内排出量取引制度を導入する」という書き方をしているんですが、何で本格的な国内排出量取引というのか、よくわからないので、ここは「排出量取引制度を導入する」ぐらいでいいんじゃないかな。「排出量取引制度を導入することの是非」といえば十分足りるんじゃないかなという気がしますので、「国内」は取ってほしいなという気がします。
 3番目は、参加主体が企業団体になっているんですが、企業団体に絞る必要もないので、例えば自治体とか国もいろいろな事業をやっているし、学校もやったり、ビルも管理しているということもありますし、NPOもあるし、公社もあるし、独立行政法人みたいなのも出てくるし、これにも大学が出てくるわけですから、いろいろな事業というのは多様にあるわけですので、企業に限定しないで、もっと幅広く主体を求める、主体を公募する。あるいは積極的に国の一部が参加した方が、私としては好ましいのじゃないかなと思っております。
 以上です。

○西岡座長 どうもありがとうございました。
 それでは、小林委員、お願いします。

○小林委員 2点申し上げたいと思います。
 1点は、先ほど山口さん、松尾さん等からあったと思うんですけれども、各省庁で同じような補助事業で行われるわけですけれども、そういったことの整合性をどういう場で保っていかれるのか。例えば、省庁間の連絡会議とか、そういうところがあるのか、その辺のことをお聞きしたいというのが1点。
 もう1点は、シンクについてお聞きしたいと思うんですが、まず資料7の三重県のケースですけれども、三重県のケースで、今後の課題というところで、⑤に、森林吸収に対するクレジットを付与する。ただし、これは一部留意が必要だということがあります。それから、制度提案事項の⑦で、森林吸収量をクレジットとして認める、ということが書いてあります。一方、資料12の排出量取引試行事業、これはざっと見ただけなんですけれども、どうもこれの中にはシンクのクレジット、これは対象として含まれていないように見えるんですけれども、そのことが聞きたい。
 次に、私なりの意見をちょっと申し上げたいと思います。もし、この試行事業の中にシンクが含まれているのなら、多分、シンクのことをよくご理解していてくれると思うんですけれども、もし入れておられないのなら、私の意見も参考にしていただきたいと思います。私は、こういった試行事業にもかかわらず、日本におけるシンクが重要であるということを、まず最初に申し上げたいと思うんですけれども、ご存じのとおり、6%のうち 3.9が日本はシンクで達成しようとしています。この辺は非常に、EUを初め他の先進国と
は異なる事情にあると思います。
 もう1点、やはり異なる事情なんですけれども、我が国の森林面積のうち民有林の占める割合が非常に高い。特に企業とか個人が持っている森林が占める割合というのは6割弱だったと思います。当然こういった森林はCO2を吸収していくわけでありまして、これをどう扱うかは日本の温暖化対策の全体の制度設計上、避けて通れない問題だというふうに私は考えております。幾つかの事例があるんですけれど、国によってとり方が違うと思うんですけれども、もちろん皆さんご存じのとおり京都メカニズム、京都議定書の中では、このシンクというのを、もちろん条件はありますが認めているわけなんですけれども、こういった面で最も進んでいるオーストラリアでは、炭素権というカーボンシークエストレーションライト(carbon sequestration right)というふうにいっておりますけれども、これをすでに5つの州で認めている、もしくは認められつつある。一部の州では既に法的にフォレストリーアクト法で明確に出ているということがあります。そういったことを、日本として、今後どういうふうに検討していくのか。
 次に、では、排出量取引、試行事業でもいいんですけれども、将来を含めてですけれども、その中に森林のシンクを含めるのかどうかということがあります。仮に含めた場合、では、先ほどいいました私有林、個人とかが所有している森林で吸収したCO2をどう扱うのか。これについてもいろいろと議論のあるところだと思います。私は、基本的には森林が吸収したCO2というのは森林所有者に属すべきだというふうに考えております。
 それから、京都メカニズムの趣旨からいって、当然、国内制度を設計する場合に、森林のシンクというのも含めるべきであろうというふうに考えております。もちろんいろいろな議論があります。この議論の中で、皆さんご存じだと思いますけれども、下川町が既にこういう問題提起をしておりまして、その新聞に、去年の8月24日だったと思うんですけれども、いろいろと先生方のコメントが出ておりました。例えば京都大学の植田先生とか、中央大学の横山先生等がこれを容認するような発言をしていらっしゃいます。
 一方、環境保護団体の方々は違う見解を持っておられると思いますし、最近のあるシンポジウムで、足本さんというNGOの方が、吸収量をお金にかえてするのは違和感があるというふうな発言をしていらっしゃいます。私は、当然こういったふうに受けとめられる市民感情というのも理解すべきであろうと思います。しかしながら、こういったことを考えても、やはり私はシンクの問題というのは、もっと前向きにいろいろな場で検討すべき問題であるというふうに考えております。
 森林経営者にとって、こういったシンクが経営改善とか、技術開発に結びつくようなインセンティブになるような制度設計が必要ではないかというふうに私は思います。単に補助金とかそういうことではなしに、方法はいろいろあると思います。その辺がまさに京都議定書、京都メカニズムの趣旨である市場メカニズムの活用によるインセンティブをどういうふうに考えるかというのが、今後のポイントであろうと思います。
 このような考えを、私が、今、申し上げているのは、あくまで私の考えでありまして、別に業界とか企業を代表して言っているわけではない、ということはお断りしておきたいと思います。
 以上です。

○西岡座長 ありがとうございました。
 荒牧委員、お願いします。

○荒牧委員 私どもの協会は、会員で建設会社なりコンサルタントがおりまして、一体うちの会員で、どういうCDM事業に興味があり、あるいは実際に取り組もうとしているのかということで少し聞いてみたんですけれども、意外なことに建設会社がアジアの国で植林の事業を、これは商社と一緒なんですけれども、やろうということで、いろいろ検討をし出しているということを聞きました。焼き畑農業で荒れた土地に、単なる植林というのは採算性もあれなので、いわゆるお金になる植物、ゴム林などをやってみようかということで考えておるようですけれども、ゴム林になりますと、そこに働く人々のコミュニティができますし、それから、いわゆる大きな、単なる事業だけではなくて、1つの社会ができるわけですので、そういった意味で事業が成り立つためには水も必要になってくる。それから、幹線道路までの取付道路も必要になってくるということで、周辺のインフラも含んだ形になって初めて、CDM事業なるものも成り立つというようなことになるんじゃないかと思います。そういったことを彼らも非常に強調しておったわけですけれども。
 そこで、環境省の資料10で、相当大きなCDM事業を、調査ですとか、あるいは支援の設備の補助とかいうようなものはあるわけですけれども、こういった調査の中で、少し幅広い、いわゆる周辺のインフラも含めてフィージビリティなりをやるというようなことで可能かどうかということをお聞きしたいと思うんです。
 といいますのも、民間である事業ですと、生産性がある部分というのは非常に限られているわけですので、周辺で必要となるインフラというのは、例えば無償協力とか、あるいは環境に関連した借款とかがないと、なかなか成り立たないと思います。調査のテーマが広がってしまうということもあるんですけれども、事業調査あるいは設備事業の調査ということでの対象として、周辺のインフラも一緒に勉強するということが可能なのかどうか、ここを聞きたいと思います。
 そういった意味では、ですから、先ほど小林委員もご指摘になった、ほかの省庁との関連、そういったものも重要になってくるのだろうと思うんですけれども、そういったものもあわせてお聞きできればと思っております。

○西岡座長 ありがとうございました。
 鮎川委員、お願いします。

○鮎川委員 先ほど、波多野委員から環境NGOへの支援のお言葉、ありがとうございます。それで、私としては、現在、環境NGOの中で何がCDMに関して問題になっているかということをまずお話しして、それからあと、さっきの森林吸収源の話もちょっとしたいと思います。
 今、国際的な環境NGOの中でCDMに関して一番問題になっているのは、前回も申し上げたと思いますけれども追加性の問題なんです。結局、今、上がってきている、申請にされているその事業の多くがビジネスアズユージュアルというか、CDMがなかった場合にも起こり得た事業が、CDMに申請されようとしているんです。特にオランダのCERUPT関係の事業が多いんですけれども、もう何年も前から事業が始まっていて、そしてもうすぐ完成しそうな水力発電ダムだとか、バイオマス事業であるとか、そういうような事業がCDMとして改めて認証されるという状況になっています。そうなると、結局は追加性という観点から、すごく問題になってきて、京都議定書がなかったとしても、その事業はあったわけですから、そういう意味で、もしCDMとして認証されて、先進国がその分、排出ができるようになったとすると、世界全体の排出量がふえてしまうということになって、削減にはつながっていかないということがあります。マラケシュアコードにも、CDMと事業として登録されたプロジェクト活動がなかった場合に起こる削減量を追加的削減量と見なす、とありますが、それはもともと計画、実施されていた事業からの削減量は追加性がない、ということを意味するというふうに解釈をするべきだというふうに思っております。
 つまり、こういった事業が多く出ていることによって、途上国のCDMに対する期待感というのが、今、すごく急速に、失われつつあり、期待感が裏切られているという状況があります。それがさまざまな政府関係者との話の中で出てきたり、先日、クアラルンプールで開かれたUNDPと世界銀行によって開かれた会合で行われた、中国の代表からの発言からも見られると言われています。
 それで、日本の京都メカニズム利用ガイドというところもよく見ると、事業の追加性のことには触れられていなくて、その事業がなかった場合と比べての削減量だけが、「追加性」のクライテリアとして述べられています。つまりビジネスアズユージュアルの事業を排除するクライテリアがないわけなんです。
 私としては、日本政府にお願いしたいことは、もっとその点に関して注意を払って、日本からの事業がビジネスアズユージュアルにならないように、そして、そういった事業の追加性ということ、つまり京都議定書があって初めて興された事業であるということが、クライテリアとしてあるようにということを、ぜひお願いしたいと思っております。WWFは、ゴールドスタンダードという進めるべきCDMの基準を提案しているんですけれども、ここでの追加性を測る原則としては、2点、CDMがあって初めて、その事業が興され実施されたのかという点と、プロジェクトがなかった場合に比べて排出量が削減されているという2点でチェックすることにしております。その辺を、ぜひよろしくお願いしたいと思います。
 それともう一つ、先ほど小林委員の方からお話があった吸収源を国内排出量取引に入れるかというお話なんですけれども、環境NGOとしては吸収源で削減したとみなすことに対しては問題だと思っているんですけれども、それをさて置いたとしても、現在、この排出量取引シミュレーションに吸収源が、三重県のシミュレーションに入れられようとしていて、それが今回の試行事業の中に入れられてやってみたような感じがあります。それで、結局、これによって間違ったメッセージが出されているのではないかというふうに、私は非常に懸念しておりまして、つまり、ここの報告書にも書いてありますけれども、「森林で吸収した分、その代替分だけ、京都議定書上の排出削減義務が達成されないことになるため、制度構築に関しては留意が必要です」、というふうに書いてあるんですけれども、日本としては、ぎりぎり3.9%まで吸収源から削減することが大綱に書いてありますし、そういう意味で、どういうふうに計上するのかということを再三お聞きしていますがやっぱり日本の森林全体として、これだけ吸収するのだというふうな計算方法をするというふうに聞いておりますし、個別の森林事業者がどのぐらい削減できているかという、そういう個別な対応はしないというふうに、林野庁の方から聞いています。ですから、その同じ3.9%の範囲の中で、森林吸収源を排出量取引のシミュレーションに入れるとダブルカウンティングが起きるのではないかということを、非常に心配しています。もちろん国が3.9%のすべてを一元管理し、個別の森林業者に対し、何の政策もないまま、お国の3.9%の達成のために森林管理をするよう呼びかけていることは問題だと思います。
 ですから、もし個別の森林の吸収源をシミュレーションに入れるとか、排出吸収量を国内取引の対象にするのであれば、どこまでそれをカウントするということを、はっきり国の方として方向性を出していただいて初めて、それをやっていただきたいと思っています。それをする前に吸収源をカウントするということになると、ダブルカウントになるし、国が全体として計算している吸収源が、別個に売りに出されたりとかして、そして一般の市民としては自分の排出量を森林吸収でオフセットできれば、すごく気分的にいいというような感じで、もし売買されるようなことになると、信頼性のない、存在しない偽の吸収源シンクカーボン市場みたいなマーケットができてしまうのではないかということを、非常に懸念しています。国の政策が明確に出されていない時点で、シミュレーションに吸収源が入っているような、そういうシミュレーションを、環境省が支援するということは、それをオーソライズするということにつながっていくので、間違ったメッセージを出すということで非常に懸念を感じている次第です。

○西岡座長 どうもありがとうございました。
 お約束ですので、30秒ぐらいで今の時点で2ラウンドがもしありましたら……。
 なければ、一応、事務局の応答を聞いてから、もう一度やりたいと思います。
 それでは、今までいろいろと出ましたが、省庁間の協力をどうするか、あるいは企業へのインセンティブを高める方法はどうすればいいんだろうかとか、それから、国内と国際の取引のクレジット等々の関係、さらには具体的な相手国への発掘の方をどうするかとか、それから、今、最後に出ましたように、本当に有効な形でCDMが動けるような制度ができるかといった件で、幾つかのご質問があったと思います。
 では、事務局の方から適宜……。

○熊倉課長補佐 それでは、ご質問等あった点について、事務局の方からお答えしたいと思います。
 まず最初に、山口先生のお話の中で、CDMのクレジットというのは一体何なのか、国が補償するというのを確約できればいいのではないかというお話がありましたが、ここは確かに非常に難しい課題でありまして、まだそこがあいまいなまま、我々も一方で支援をしているというのを認識しつつというところはございます。なぜはっきりできないかというのは、もうご推察されていると思いますが、要するに国が責任を持っているのは京都議定書なわけですけれども、一方で大綱の中では国民各界各層、それぞれ削減の責任があるということはうたっておりまして、その中に産業界というのもあるわけでございまして、こういった企業の方々が、何らかの形で削減をするというためにクレジットを使うということも考え得るわけです。ただ、そこをぎりぎりやると、義務づけの話になるのではないかという憶測を呼んで、また混乱するというような、ちょうど去年か一昨年、京都議定書の批准の際に議論があったと思いますが、そういうところがあるので、ちょっとまだこうなんだと、なかなか明らかにできない、もう少し勉強が必要だなというふうに認識しております。もう少しお時間をいただけたらと思っております。
 それから、松尾先生の試行実験についてのご質問がありましたが、カバレージについては、基本的に各参加企業の自主判断ということで、かつバウンダリーについても、極力企業の実態活動を反映させるように、例えば子会社も含めとか、幅広く考えたいと思っておりますが、ただ、いかんせん、企業の自主参加に基づくものですので、当然企業のご要望に応じてこの工場だけにしたいとか、CO2だけにしたいとか、そういったところは柔軟に応じたいというふうに考えております。ただし、前半の検討会の中で、そういったほかのガスないしはバウンダリーの話、あと、ご指摘のあった目標設定の話は、議論としてはやっていきたいと思っております。ただ、最終的には各社の自己判断において目標設定なりバウンダリーなりを決めた上での試行実験というふうに、あくまで各社の考えを尊重してやっていきたいというふうに思っております。
 それから、あと、経済産業省さんとの試行実験の関係についてなんですけれども、松尾さんおっしゃっていたとおり、環境省は企業、工場というエンティティレベルを中心としてやろうと思っておりますし、経産省さんのはCDM/JIのインフラ整備ということで、プロジェクトベースのものが中心というところで、おおよそ違いというか関係が整理できるのかなと思っております。
 ただ、そういう意味で両方参加されていいのかなと思いますが、企業の方が1つの工場だけで参加する、その工場の中で何か1個、プロジェクトをやるので、それは経産省に参加するというように、そこは各企業の自由ではないかと思っております。
 それからあと、波多野先生からの、まずキャパビルについてのご意見は真摯に受けとめて、今、我々も実際どう進めていくかといてのは非常に悩ましく思っているとろですので、ご意見を踏まえて、また、ご相談をしていきながらやっていきたいと思っております。
 あと、関係NGOの育成の部分ですけれども、まさにご指摘のとおりだと思います。これは別にCDMに限らず一般的にも地球環境問題にNGOがどうかかわっていくか、ないしは、どう知見を高めていくかというのはあろうかと思います。一般的にいえば、地球環境基金のような、通常のNGO支援策を活用しながら、我々、お手伝いしていきたいと思っていますが、1つ言及すると、今年度のCDMのフィージビリティスタディについてですが、廃棄物、バイオマス、植林といった従来のものに加えて、非常に小規模なCDMで地域の住民の福利厚生であるとか、地域の自然を含めた環境改善であるとか、ないしは環境教育的な要素も含めた、いわゆるサスティナブルディベロップメントに、まさに資するというか、そのものが目的のようなプロジェクトについても募集をしようと思っております。これは恐らくNGOが実施するようなプロジェクトを想定しているので、もしそういうところでフィージビリティスタディの支援ということでお手伝いできるのだったら、ぜひご感心のあるところに働きかけて、ご応募いただきたいと思っております。
 それから、高橋本部長からのご指摘があった自主行動計画との関係ですけれども、これについては直接は関係ございません。今回は、企業レベルで参加を呼びかけていますので、その削減目標についても各社が持っていらっしゃるものを使うことにしております。たまたまそれが自主行動計画の業界団体目標に一致することはあるかもしれませんが、それは各社がどういうふうに削減を進めていくか、というところに依存しているものでございます。
 あと、国際取引との関係ですけれども、当然、それは将来的にリンクすべきものであろうかと思います。当然、国内だけでやっていても、なかなかコストの面で十分に取引制度のメリットを活用できないと思いますので、CDM/JIも含めて、国際取引につなげていけるような検討方向にしていきたいと思っております。
 それから、小林さんからのご指摘で、各省庁縦割りであるというものがございましたが、政府としては、内閣官房が主催している京都メカニズム活用連絡会というところが、一応調整の場になっておりますが、そこまで大げさにしなくても、日ごろから各省さんとは連絡しながらやっていますので、特に今回、試行実験の話では経済産業省さんと大分話もさせていただいていますので、一般の企業の方、国民の方にご迷惑にならないように、ちゃんと説明できるようにやっていきたいと思っております。
 それから、鮎川さんの話にも重なるんですけれども、森林国内吸収源のクレジットの話についてですが、まずシンククレジットがだれに所属するか、ちょっと議論があると思いますが、今回、ちょっと置いて、それを取引の対象にするかどうかということについてお話ししたいと思います。今、我々が考えているのは、どちらかというと、鮎川さんの話に近くて、要するにRMUが上限があるわけですし、政府としては上限目いっぱい目標達成に使うということにしていますので、これが取引の対象になって、例えば産業部門とか、民生部門とか、そういったところの排出削減に使われてしまうと、もはや穴埋めができないわけです。日本にとって排出量がふえてしまうということなので、少なくとも今の大綱においては、なかなか取引対象にするのは難しいかなと思います。
 三重県シミュレーションで取引対象になってしまっていてミスリーディングではないかと鮎川さん、おっしゃっていましたが、これはあくまで三重県が国に提案したいという報告書なので、我々も、止めようがないというか、あくまで三重県さんはそう考えているということで、我々はなかなか難しいと思っているので、我々主体でやる今年度の試行実験においてはRMUは対象にしないということでやりたいと思っています。そこは大綱の見直しを2004年、2007年にやりますが、そこで変えない限り、今の状態では難しいかなと思っております。
 荒牧さんのご指摘のあった周辺インフラ整備についてですけれども、フィージビリティスタディという調査の中においては、関連するものとして幅広に調べていただくというのは関連しておりますので、そういった形でご応募いただくのはよろしいかと思っています。ただ、補助金の対象にするかどうかは、ちょっと非常に微妙でありまして、さっき鮎川さん、おっしゃっていたように、本当にCDMにするためだけに、この道路をつくるのかとか、そういったところが非常に問われてくると思うので、それにかなり額の制限された補助金を使うのは、ちょっと私はどうかなと思っていますけれども、そこのところはご意見も踏まえて、引き続き検討をしていきたいと思っております。
 そんなところでしょうか。また何かご意見、ご質問あればお願いしたいと思います。

○西岡座長 大体、出たご意見に関しては対応していただいたと思っておりますが、もう1ラウンド30秒でいきたいと思います。最後に1分だけ締めを残しておいていただきたいと思います。
 こちらから、小林委員。

○小林委員 シンクの問題を再度ですけれども、おっしゃることは一応わかりました。しかしながら、もう繰り返しませんけれども、私はこのシンクの問題をよく検討することは極めて重要だというふうに考えております。私有林もしくは自治体の森林をどう扱うか、今後、ぜひ、いろいろな場で幅広くコメントを願たいというふうに考えております。私は基本的に認めるべきだと考えております。
 あと方法論としてダブルカウントにならないようにとか、いろいろなことがあると思うんですけれども、それは解決できる方法はあるというふうに私は考えています。
 以上です。

○西岡座長 では、高橋委員。

○高橋委員 私も繰り返しませんが、もう一度言いますと、市がやっている市バスの事業とか、簡保がやっているカンポの宿とか、郵政がしている郵政公社とか、東京都のビルとか、どういう管理をしているのかよくわからないところもあるので、郵政公社はどういう目標を置いて、どういうふうに排出量取引をやるのかわからないですけれども、肩たたきをして、ぜひ、そういう人に入っていただいた方が、私は企業に入れ入れというよりも、そっちが入った方がずうっといいんじゃないかなというふうに思っています。コメントです。

○熊倉課長補佐 さっき言い忘れてしまったんですが、高橋本部長のおっしゃったNPOとか自治体とか国とかか入った方がいいんじゃないかという点については、いちおう「団体」という言葉の中に、そこは含めたつもりだったんですけれども、ご指摘を踏まえて、そのあたりも幅広に考えていきたいと思っております。

○新澤委員 シンクについてなんですけれども、私はどちらかというと小林委員的な考え方をしておりまして、シンクが減っていくと日本として大変困るわけです。それをどうやってとめるかという仕組みとして、排出権取引の枠の中に、今話題になっているのは、今年度は試行事業ですけれども、その枠組みの中にシンクを入れていって、土地所有者がシンクを保全することのモチベーションを持ってもらうということが、大変重要なのであって、行政が補助金を投入しても、これはなかなか目的が達成できないと私は思っております。そういう意味で、方向性としては間違っていないし、ただ、手続的にいろいろご意見があるかもしれません。現在の大綱でできないとは思えないです。

○松尾委員 今のシンクの話を含めて、日本は企業にきちんとしたインセンティブがついて排出削減あるいは森林吸収拡大ができるかということは非常に重要な話です。それがいかにできるか。例えば、今回は試行事業をやるわけですが、試行事業なのに、現行の大綱に縛られなければいけないというのは、ちょっと気になるところですね。何のために「試行」を行うか?という根本的問題と言えるかもしれません。ですから、これから、大綱の改正を含めて、いかに企業にインセンティブがきちんとつくか、をきちんと考えて頂きたいと思います。いろいろなことを明らにできないとか、(未決定な段階で)明らかにすると後で変なことが起こる可能性があるとか、そういうことが役所的に懸念されるのは非常によくわかるんですけれども、逆の意味で、明らかにしないことによるデメリットというのもかなり大きい話です。そういうことを含めて、減点主義でない方向で、いろいろこれから考えていただきたいというのが1点あります。
 それから、鮎川さんだけではなくて、皆さんの話ですけれども、CDMのオフィシャルのプロセスは動き出しております。もうCDMのWebサイトを見ていただくと、この間の3月のCDM理事会で新しく導入されたニューメソドロジーのパブコメシステムというのが動き出しております。例えば関係事業の中の、それは企業の方を含めて、今、Webに出ているものがありますが、それに5月の初めぐらまでパブコメできますので、例えばそこでパブコメをする。今言ったメソドロジーではなくて、メソドロジー以外にバリデーションの中でパブコメプロセスがありますので、そういうところで、むしろ政府を通じてなんて言わずに、直接自分でいろいろなことが言える仕組みができあがっているわけです。ロジックがちゃんと通っていれば、必ず、例えばバリデータというのはそれを取り入れなければいけない。ちゃんとそれに対してどういう反応をしたかということを書かなければバリデーションレポートは書けません。そういうことを含めて、企業の方なんかは、今、本物のCDMのPDDがいろいろ出ていますので、それをいろいろ勉強されるには非常にいい機会かなと思っております。

○山口委員 あと20秒ぐらいしかないものですから、実は幾つか申し上げようと思ったんですが1つだけにします。
 さっきの例の環境省の説明で、今度の試行事業、エンティティを中心にと。そして、これもご承知と思うんですけれども、さっきの繰り返しなんですけれども、エンティティについては、例のWBCSD/WRIのGHGプロトコルが出ていますので、あれで現実に動いていて、さっきからバウンダリーだとか、デミニマスとか、あるいは企業の報告の仕方なんかが、一種の国際的なやり方が決まっているわけです。ISOでも恐らくエンティティはそこら辺にフォローすると思うんですね。ですから、ぜひ、そこら辺の整合性をお願いしたい。
 それから、プロジェクトについては、WBCSDのプロジェクトモジュールのロードテストを、今始めるとろです。ですから、そちらとまた違ってきたりすると、二重の負担になります。そこもぜひウオッチいただくと同時に、整合性に気をつけていただきたい。
 以上です。

○西岡座長 どうもありがとうございました。
 塩田委員、お願いします。

○塩田委員 先ほど鮎川委員からご指摘のあった追加性の問題に関連して、運輸の分野では、1つのプロジェクトの開発について長い期間検討されていることが通例で、如何にしてその整備の資金を確保するかということが大きな問題点である場合が多いのです。従って、運輸のプロジェクトがCDMのプロジェクトとして推進されることは、温暖化ガスの抑制に大きな効果があるもとの考えます。
 これに関し、温暖化ガスの抑制量の算定方法、その前提となるベースラインの算定の手法などについて、具体的なプロジェクトに即して国内の考えをまとめ、国際的な理解を得ることが重要であると考えます。国土交通省からご報告があった外国の専門家を集めたワークショップの開催もこの点から有意義であると思います。

○西岡座長 どうもありがとうございました。
 今の追加の意見で、特にリスポンスするようなことがございましょうか。今、皆さん、非常にこれまでのご議論を強調するお話だったと思いますが。

○熊倉課長補佐 あと一言だけ……。
 排出量のエンティティレベルの算定については、現在出ているものとしては、山口先生からご指摘のあったWRIのGHGプロトコールがありますので、今、我々、それをベースにしたやり方で、今回、試行実験をやってみようと思っています。あれもまだまだガイドラインですから、実際使ってみてどうかというところのフィールドワークは必要だと思っておりますので、そういった意味で、国際的な流れにも整合性のとれたやり方を進めていきたいと思ってます。

○西岡座長 どうもありがとうございました。

○清水地球温暖化対策課長 かなり根本的なお話も出たので、ちょっとだけコメントさせていただきます。
 シンクの問題につきましては、こういった排出量取引とか、そこを対象するのは、今、熊倉の方からご説明したように難しいと思いますが、むしろ林野庁さんともいろいろ話しながら、より促進的な方法で何かあるのかということは、よく検討をしていきたいなというふうに思います。
 それから、インセンティブ議論というのは、まさに根本的なところだと思うのです。どういう形での排出権なり帰属なり、国との関係でどういう形で整理するか。これはまだ少し検討に時間がかかると思いますが、先生方のご意見をよく踏まえて、さらに検討を進めていきたいというふうに思います。
 いろいろご意見ありがとうございました。

○西岡座長 どうもありがとうございました。
 本日は非常に建設的な意見をいろいろいただきましてどうもありがとうございました。またほかにも追加のご意見がありましたら、どうぞ事務局の方にメールでもファクスでも適宜お伝え願えれば取り入れられると思いますので、今後とも、ひとつよろしくご協力いただきたいと思います。
 そちらの方で、ごあいさつ、何かございましょうか。

○清水地球温暖化対策課長 今ちょっとお話ししましたので……。
 本日はどうも本当にさまざまな点にわたり、ご議論ありがとうございました。

○西岡座長 それでは、次回の会合の日程、議題等については、きょうご指摘のあった点を踏まえまして、事務局と相談の上、改めてご連絡したいというぐあいに思っています。
 本日は、どうもありがとうございました。

午後0時07分閉会