一般的に冷温水ポンプの冷温水流量は、ビルの規模、用途、冷暖房(ピーク)負荷等から設計・設置され、竣工引渡し時に調整の上、設定されている。
実際の冷暖房運転では100%の負荷率が必要なケースはまれであるため、現状の冷暖房管理、熱源運転で、冷温水流量が過剰流量状態(冷温水往還温度差が小さい)と判断される場合は、流量を調整することにより、ポンプ動力を削減し、搬送エネルギー消費量やCO2排出量の削減を図る。
蓄熱システムは、電力負荷の平準化を目的に昼間の空調に必要な熱量を、夜間に熱源運転し、水、氷や蓄熱体に蓄え、その蓄えた熱量を空調が必要な昼間に放熱するシステムである。 蓄熱槽に熱を蓄えるために熱源機器を夜間に運転することで、空調負荷の変動に影響されず、熱源機器の効率の高い定格運転を連続して行うことで、省エネルギーを図るシステムである。
このため、夜間電力を活用して蓄熱した熱量で昼間の負荷をできるだけ処理して、熱源機の空調運転時間帯を最小限とするように、運転スケジュールを適切に調整し、熱源設備のエネルギー消費量やCO2排出量の削減を図る。
冷(温)水の往還温度差は5℃程度が標準的*であり、温度差が5℃未満の場合は、過剰流量状態となっている可能性がある。
*5℃以上の大温度差を設定している場合あり。
さらに、竣工図書から設計条件の温度差と流量を確認し、現状と比較した上で、流量調整の要否を判断し、過剰流量と判断される場合は、ポンプの吐出バルブの開度を絞ったり、インバータ制御の設定値を変更し、冷温水流量の適正化を図る。
【実施手順】
冷水ポンプの場合を記述(温水ポンプの場合も手順は同様)
①冷凍機の運転状況と計測システム・仕様を確認
※設備の日常運転記録、ビル稼動状況から空調負荷の実態を把握
※冷凍機周りの計測機器指示値の適否や過不足も確認
②冷(温)水の往還温度差の確認
③流量を調整
※ポンプ吐出バルブを絞る前に、空調機コイルバルブにより温度差と自動弁の開閉を確認
蓄熱システムの空調時間帯運転実績や夜間運転実績、シミュレーションなどにより負荷予測を行った上で、必要となる夜間蓄熱量を把握し、空調時間帯運転を最小限とする。さらに、空調機供給水量と出口温度の適正化(冷水の場合は高く、温水の場合は低く)を図り、蓄熱効率や蓄熱槽からの熱損失の改善を図る。
冷凍機性能の問題や成績係数(COP)改善の目的で、冷水送水温度を高くしている場合(概ね8℃以上)や、空調設備の熱交換コイル能力の不足や経年劣化などにより、設計又は設備仕様以上に流量を増やしている場合などは、採用が難しい。
ポンプ吐出バルブの開度と水量は正比例しないため、注意が必要である。例えば冷(温)水量を30%程度削減しようとする場合、バルブの開度を50~60%まで絞り込む必要がある。
建物の運用開始後は、熱源機器の高効率運転による省エネ効果を適切に維持していくために、夜間に定格運転状態で連続的に稼動していることを確認する。
【必須事項】夜間の蓄熱時間帯に蓄熱空調システムの熱源機器が稼動していることを確認する。
【推奨事項】熱源機器が正常に稼動していることを、中央監視設備など計測結果を用いて確認する。
◎:限りなく0年
【参考資料・文献】
「新版 省エネチューニングマニュアル」 経済産業省委託事業/(財)省エネルギーセンター(H20年3月)
「建築物の定期報告の解説(省エネルギーの維持保全状況について)」(財)建築環境・省エネルギー機構
「省エネチューニングガイドブック」(財)省エネルギーセンター(H19年1月)