建築設備の消費エネルギー量の約1/4は空調用のファンとポンプを中心とする搬送用のエネルギーと言われている。また、搬送用エネルギーの約1/3以上を空調機の運転エネルギーが占めている。
近年の急速なOA化の進展による空調負荷密度の増加や空調への要求機能の高度化などに対応するためには、空調機(系統)の分割や高効率空調機への更新などを計画的に進める必要がある。
このため、経年変化によって効率が低下した機器の改善、取替を行い、空調機の運転エネルギーや搬送用エネルギー消費量の削減、CO2排出量の削減を図る。
空調機更新による消費電力の削減には、次の3つの手法が多く用いられる。
①より効率の高い送風機の採用
従来のシロッコファンで静圧効率40%~50%であったものをプラグファン(静圧効率50%~0%)に更新して送風機動力を低減する。
※一般的にプラグファンの効率がシロッコファンを上回るのは約20,000m3/h以上の場合
②楕円管熱交換器
楕円管熱交換器は、パイプが楕円状のため空気流が表面に沿ってスムーズに流れることから熱交換率が高く、空気抵抗を低く抑えることができるため、送風機の搬送動力を低減できる(ただし、対応メーカーが限定される)。
③大温度差送風による風量の削減(「大温度差送風・送水の導入」参照)
・室温と吹出口の温度差を大きくとって(たとえば13℃)送風量を削減する。また、ファンモータを直動とすることにより、ベルトによる伝動ロスを低減できる。
空調機を選定する際は、省エネルギー性能の向上と併せて、以下の点に配慮することが必要である。
①空調機のコンパクト化
負荷の増加による処理能力の向上を要求される。一方、設置スペースの拡張は見込めないなど、設置スペースの制約を受ける。
②分割搬入が可能な構造
既存建物内での搬出入は、制約が大きいため、分割搬入などが必要である。
△:10年超
参考文献
「IBEC NO.133 特集 リニューアルと省エネルギー (H14年2月号)
空調設備/空調機・ファンコイル・パッケージ」(財)建築環境・省エネルギー機構
「建築・都市エネルギーシステムの新技術」(社)空気調和・衛生工学会 発売 丸善株式会社(H19年10月)