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省エネ改修の実践事例

ビルオーナーによる取組み事例/弁天町共同ビル株式会社

事例5弁天町共同ビル株式会社

オーナー自らが奔走し、テナント等と共に歩んだ三十余年にわたるビルの省エネルギー半生

省エネ改修 成功のポイント

  • ビルオーナー自らが省エネルギーを含めたビルのバリューアップに奔走
  • 1980年代の竣工時よりテナントとの信頼を醸成し、省エネによる便益をシェアする関係を構築
  • 大学や行政など第三者ステークホルダーの協力により、最先端の省エネ技術の導入を実現
この写真は弁天町共同ビル全景です。

ビル全景

この写真は同ビル2009年導入の空冷ヒートポンプチラーです。

2009年導入の空冷ヒートポンプチラー

事業主体 オーナー:弁天町共同ビル株式会社
ビル概要 新潟市中央区弁天1-2-4、1981年竣工、地上13F/地下1F、延床面積12,890m2
省エネ改修内容
  • 2015年の省エネ改修:ボイラの空気比の改善、ポンプの流量制御、外気取り入れ量の削減、デマンド監視装置の導入
  • 2015年の省エネ改修:ボイラの空気比の改善、ポンプの流量制御、外気取り入れ量の削減、デマンド監視装置の導入

1. 改修工事の概要

竣工直後の1980年代前半より、テナント(ホテル)との協業の下、継続的に省エネ改修を実施してきている。省エネ改修の実績は以下の通りである。

1983年
力率改善システム導入
1986年
モーター回転制御、蒸気系配管・バルブの保温導入
1995年
コジェネレーションの導入
2004年
冷温水器発生器、屋上緑化の導入
2005年
太陽光発電(10kW)の導入
2009年
耐震補強工事、空冷ヒートポンプ空調機、ヒートポンプ給湯機導入
2010年
客室廊下LED化
2015年
ボイラの空気比の改善、ポンプ流量制御、外気取り入れ量削減、デマンド監視装置の導入

竣工して間もない1980年代前半頃から、オイルショックが生じたことを背景として、ビルオーナー主導で省エネルギー対策に取り組んできた。これは、テナントビルの収益性を高めるためには、テナントの確保と光熱費の引き下げが大きなポイントになるという意識を、ビルオーナーが強く持っていることが背景にあった。1983年の力率改善システムを皮切りに、1998年までにエネルギー消費量の12%の削減に成功し、その後も断熱効果の向上や、設備更新時の省エネ機器の導入など継続的に省エネに取り組んでいる。

省エネ改修により、空き室率の改善にも効果を発揮している。厳しい経済環境下において入居率を高めるため、テナントに対して光熱費の削減という付加価値を提供するとともに、テナントにとって魅力的なビル内の事業環境の維持を実現できている。

こうした、継続的な省エネルギー対策の実施と、ビルのバリューアップを実現できた理由には、ビルオーナー自身の継続的な取組みと、テナントに加え、行政や教育機関などステークホルダーとのリレーションがあった。

2. 省エネ改修成功のポイント

ビルオーナー自らが省エネルギーを含めたビルの価値向上に奔走

  • ビルオーナーは従業員数わずか5名程度の株式会社である。しかし同社の社長以下従業員は、自ら省エネ関連の展示会に視察に赴くなど、省エネの情報収集に積極的に関与している。
  • そういした中で見えてきたことは、小さな活動の積み重ねが、大きな効果になるということである。少額の投資で大きな省エネ効果を得られる対策は少なく、前述するように、長い時間をかけて、数多くの取組みを実施してきている。
  • こういった地道な取組みは、省エネルギーに留まらず、耐震改修や排水浄化による環境性能の向上といったビルのバリューアップの取組みにも及んでいる。こうした努力から、築30年を超えた今でもホテルテナントを確保し続け、改修に要する銀行からの資金調達にも成功している。

1980年代の竣工時よりテナントとの信頼を醸成し、省エネによる便益をシェアする関係を構築

  • 本サイト「グリーンビル・ナビ」に多く述べられているとおり、テナントビルが省エネに取り組む際には、入居しているテナントとの関係づくりが重要である。本ビルのオーナーは、そのことを1980年代の竣工直後から意識しながら、テナントとの関係を築いてきた。具体的には、テナントであるホテルの要望に応じた、こまめなビル設備のメンテナンスに応じてきた。
  • こうしてテナントとの信頼関係を構築できたことで、省エネルギー対策による光熱費削減のメリットを、オーナーとテナントでシェアする仕組みを導入することができた。具体的には、エネルギー消費量は固定、エネルギー単価は変動としたうえで、ある時点の光熱費よりも下回った光熱費を50%ずつ、オーナーとテナントで享受する仕組みである。
  • 継続的に省エネルギー改修を実施するには、ビルオーナー側も省エネによるメリットを享受することが必要と同ビルオーナーは考えている。しかし、それはテナントとの信頼関係なしには実現することができなかった。省エネルギーの出発点は、テナントとの基本的な良好関係が鍵を握っているともいえよう。

大学や行政など第三者ステークホルダーの協力により、最先端の省エネ技術の導入を実現

  • ビルの省エネルギー対策とバリューアップは容易ではなく、ビルオーナーとテナントだけの力では及ばないこともあった。そうした時に力になったのが、大学や行政であった。
  • 例えばビルの断熱改修には、ビルの造作に応じた施工技術を要するが、大学の協力を得ることで、当ビルの開口部に合う木製二重サッシ技術が開発された。
  • また、省エネルギー対策は、ランニングコストとしてメリットが生じるものの、イニシャルコストの確保が難しい局面もある。そうした時、県から補助金や税制優遇などの制度に関する情報を得ることで、そういった局面を乗り切ることができた。
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