G8 Environment Ministers' Meeting in 2000
過去のG7/G8環境大臣会合(開催実績)
G8環境大臣会合-リーズ城、1998年4月3日~5日
コミュニケ(仮訳)


1. 我々、主要な先進民主主義工業国の大臣及び欧州連合の代表は、4月3日から5日まで、英国ケント州リーズ城に集まり、1997年のマイアミ会合以来の進捗状況について検討を行うとともに、現在世界が直面している5つの主要な環境問題について議論を行った。

2. 我々は、1992年のリオデジャネイロの国連環境開発会議以降の進展及び1997年6月に国連特別総会において策定された持続可能な開発委員会(CSD)の作業計画を想起する。我々は、持続可能な開発についての約束を断固強調する。


気候変動

3. 気候変動は、世界の持続可能な開発、公衆衛生及び将来の繁栄にとって、依然、最大の地球規模の環境上の脅威である。我々は、法的拘束力を有する目標を伴う京都議定書の採択は、温室効果ガスの排出削減の努力を進める上で歴史的な転換点であることを確信する。我々は今京都における約束を現実のものとしなければならない。我々は今後1年間に議定書に署名するとの意志を確認し、必要なさらなる作業を直ちに始めることを決意する。

4. 我々は、我々に気候変動対策をリードする責任があることを認識する。国内的には、我ら諸国は温室効果ガスの相当の削減のための取組に直ちに着手する。我々は、これらの削減が、費用効果的(cost effectively)に成し得るものであり、より清浄な大気、改善された公衆衛生、より持続可能な輸送、より生産的でエネルギー効率の高いクリーンな技術など、現在及び将来の生活の質の改善をもたらすことができるものであることを強く確信する。

5. 国際的には、京都で残された主要な課題についてブエノスアイレスにおいて進展を見ることにより、モメンタムを維持しなければならない。国際的排出量取引、共同実施及びクリーン開発メカニズムのような柔軟メカニズムは、国内措置を補完するものでなければならない。これらのメカニズムは我々の約束を費用効果的に達成するに当たり、不可欠な役割を果たし得る。これらのメカニズムが真に環境に益あるものであることを確保するため、関連の原則、態様、規則及び指針を策定することが優先課題である。これらの柔軟メカニズム、特に、排出量取引については、他の方法によるよりも、全体としてより大きな温室効果ガスの削減に資するようにするようにすることが重要である。規則は、実施可能で(enforceable)、説明できる(accountable)、検証可能な(verifiable)、開かれた(open)、かつ、透明な(transparent)取引システムを確保するものでなければならない。炭素吸収源の取扱いに関する作業も同時に行わなければならない。

6. 京都議定書に基づく法的拘束力を有する約束を支える強力な効率的かつ効果的な遵守確保措置(compliance regime)が必要である。京都議定書の非遵守状態にある締約国に対する拘束力のある措置(binding consequence)を伴う手続き及びメカニズムの検討作業を第4回締約国会議までに開始することが重要である。

7. 開発途上国は気候変動の影響の脅威に最もさらされている国々である。我々は、開発途上国が気候変動に対処し、持続可能な開発を達成することを支援するため、資金的支援と技術移転を行うという条約に基づく約束を再確認する。最近、成功裡に終わった地球環境基金(GEF)の増資はこのために不可欠なものである。我々は、世界銀行及び他の国際金融機関の政策と運営が、気候変動が最大限考慮することを確保しなければならない。クリーン開発メカニズムは、開発途上国を支援して温室効果ガスの排出抑制努力を促進するために、技術移転を強化し、並びに資金及び専門的知見の投入を確保するものでなければならない。国際社会は、温室効果ガスの真に追加的な削減に資することを確保するよう、この新しいメカニズムを実施する方法を、可能な限り早期に合意しなければならない。

8. 我々は次の世紀に入ろうとしており、気候変動に取り組むため、全ての国によるより多くの努力がなされることが必要となろう。これには温室効果ガスの排出の抑制又は削減のための数量目標を設定するプロセスに、地球規模で、より多くの参加を伴うこととなろう。我々は、ブエノスアイレスの第4回締約国会議において法的拘束力を有する目標を有しない国が法的拘束力のある目標を自発的に採択することについて検討すべきであるとの提案に留意する。我々は、この提案や他のオプションを全ての国と議論する意志を有することを強調する。我々は、約束は共通であるが差異のある責任の原則を反映し、客観的なクライテリアに基づかなければならないこと、及び、貧困を根絶し、持続可能な発展を達成するという開発途上国の正当なプライオリティについて十分な考慮が払われなければならないものであることを再確認する。

9. 科学的な分析は京都の成功に寄与し、また、我々の政策決定を支えるために引き続き発展させなければならない。我々は、最近のG8環境及び輸送に関する未来フォーラムでまとめられた勧告を歓迎し、この部門及び他の部門における優良活動(best practice)に関するG8の更なる作業を支持する。

10. 我々は、それぞれの専門家を通じて国内での進捗と、現在進められている国際交渉について情報交換を行う。我々は、来年のG8環境大臣会合において、進展をレビューする。


環境と雇用

11. 我々は、環境政策は公衆衛生と生活の質に大きな改善をもたらすのみならず、経済横断的な雇用創出の機会及び方法をもたらすものであることに合意する。我々は、このメッセージを、バーミンガムのG8サミットの首脳に伝達する。

12. 我々は、環境政策が環境と経済の両目的に適合する都市の土地の再利用やエネルギー効率向上のための投資のような経験を共有した。我々は、関連する教訓を特定した。この価値ある(情報)交換を今後とも継続されるだろう。

13. 我々は、過去にいくつかの環境問題を無視したことが大きな雇用の喪失につながったことを重要視する。現在の精力的な行動により将来の同様の問題を回避し、雇用の機会を生み出すことができる。根本的に、我々が気候変動や持続可能な他の中心的な問題に対処して初めて、我々の子孫の雇用と生活環境を確保することが可能となる。従って、成功する経済とは、よりクリーンで効率的な天然資源の利用へ最もうまく変革する経済であろう。

14. 我々は、この必要な変革を成し遂げるため、政府部内において、産業、労働、その他の組織とのパートナーシップの下に、教育・訓練、投資、調査・研究を行う。地球規模の問題には、標準を改善し、競争による歪みを最小化し、雇用、公衆衛生、生活の質の効用を確保するという地球規模の協力による解決が必要である。

15. 我々は、特定の産業や社会的な弱者に対する環境政策の影響が考慮されなければならいこと、このような状況下では移行期における援助が不可欠であろうことを認識する。しかし、そういうことに拘わらず、環境技術産業を含む多くのセクターにおいて、雇用が創出されるという見通しを最大限考慮しなければならない。環境を改善することは、それを通じて、社会的な結束を促し社会的な便益をもたらす。例えば、劣悪な大気や水質は、均衡を失した形で、子供や貧困者を含む社会的な弱者グループに影響を及ぼす。


海洋生物多様性の保全

16. 海洋の生物多様性は、地球規模の生物多様性の不可欠かつ統合的な部分である。調和のとれた国際的な行動がなければ、脅威に晒されれ続けるであろう。

17. 海洋国際年の今年、海洋の重要な役割について、より大きな国民の関心を喚起する必要がある。政府間海洋学委員会(Intergovernmental Oceanographic Commission)で採択された海洋憲章(the Oceans Charter)は、海洋環境の重要性と海洋環境への脅威に関する知見を要約している。持続可能な観光を推進することは、この理解を広め、同時に、開発途上国の海洋環境の保全を支援する手段を提供する。

18. 地域海間の状況に幅広い違いがあるため、海洋環境保全の行動は、最も効果的な実施が可能な地域レベルのものに特に焦点が当てられる必要がある。従って、我々は、我々が属する地域における海洋環境に与える人の影響の全ての側面にわたった、統一性のある行動計画を策定するためにイニシャティブをとらなければならない。このことは、陸上活動に特に脆弱な閉鎖性及び準閉鎖性の海域や北極海に、とりわけ重要である。我々の国は、これらの海域の多くに接している。我々は、我々の間及び他の地域との間の双方で、経験を共有したいと思う。

19. 地球的規模においては、1999年のCSDが国連機関や他の国際機関の業務をどのように結束させ、地域的な行動を促進させるかの結論を得ることができるよう、海洋環境を管理する方法を改善するために必要な事項を特定するためにイニシャティブ行動をとらなければならない。我々は、ブラティスラバの生物多様性条約締約国会議において、明確な優先性を付した、ジャカルタ・マンデートの下で実施される作業計画が採択され、また、これと持続可能な観光との間の関連を検討することを求める。我々は、CSDの準備となる、1998年12月の第2回ロンドン海洋ワークショップを開催しようという英国の意向を歓迎する。

20. 我々は、海洋のエコ・システムの破壊を逆転させるための国際行動や国際合意を促進し、海洋生物多様性の持続可能な利用と保全を推進し、及び、エコ・システム・アプローチに基づく管理システムを開発するため、新たな、かつ、調整された努力を行うことを行うことを約束する。国連海洋法条約の一般的なフレームワークの下で、これらには、国連環境計画の地域海計画、遡河性魚類や広範囲に移動する魚類に関する国連合意やFAOの責任ある漁業規範(the FAO Code of Conduct for Responsible Fisheries)を含む海洋生物資源の管理や持続可能な利用に関する地球規模や地域レベルの合意、陸上活動から海洋環境を保全するための世界行動計画(the Global Programme of Action to Protect the Marine Environment from Land-Based Activities)、国際珊瑚礁イニシアティブ(the International Coral Reef Initiative)が含まれる。


多国間環境協定の執行

21. 我々は、地球規模で持続可能な開発を実現するため、国際環境協定の重要な役割を認識する。しかし、これらの協定は、効果的に執行されない限り効果を持たない。従って、我々は、国際環境協定の違反に関する増加しつつある状況、特に国際的組織犯罪が含まれることについて強い懸念を表明する。これは、地球環境を害するのみならず、先進国及び開発途上国の国民の健康と生活環境を同様に害するものである。我々は、我々の政府が既存の協定の保護のために行動を起こすべきであり、不正な活動から身を守らなければならないことを認識し、京都議定書に基づく国際的排出量取引のための強力な規則及び執行手続を主張すべきであると信じる。

22. 多国間環境協定(MEAs)の違反による重大な環境影響とこの分野における組織犯罪に対する戦いの重要性を認識し、我々は、

既存の多国間環境協定(特に、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約(CITES)、オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書、有害廃棄物の国境を越える移動及びその処分の規制に関するバーゼル条約)の効果的な実施に対する広範な参加並びに情報交換及び遵守確保のためのメカニズム強く支持する。

オゾン層破壊物質、有害廃棄物及び保護動植物の不法取引と戦うことを継続する。

これらの多国間環境協定の執行のために、高い優先度と適切な資源を割り当てる。

UNEPに対し、これらの多国間協定間の協力を改善するための提案を作成するよう求める(encourage)。

環境法の執行を促進するため、開発途上国との協力を強化する。

23. 我々は、1998年1月、ワシントンで開催された環境法執行担当官会議でなされた作業を支持する。この文脈で、我々は、情報を共有し、国内的及び国際的な法律及び手続きに従い、越境環境法違反を発見し、罰するための協力して努力する。

自発的な情報及び経験の非公式な交換を継続する。

法執行担当官に対する環境法執行に関する訓練のための国際的努力を支援することを含む環境法違反と戦い、執行担当部局及び担当官の能力を強化するための現実の国際的努力を支持する。

環境法の遵守及び執行に関与しているインターポール、世界税関機関、国際海事機関等の国際機関をフルに活用する。

多国間環境協定の違反に対する一般の注意を大きく喚起するための国内的活動を来年行う。

24. 我々は、来年の会合で進捗状況をレビューする。

25. 我々の国は国際的犯罪と戦うためすべての関連国際機関の活動を調整することを進展させた。そして、我々は、我々のリーダー達に、環境犯罪に対しても同様のアプローチをとるよう注意を喚起する。


子供の健康

26. 我々は、一連の環境ハザードに起因して子供たちが直面している重大な脅威について関心を有している。これらの脅威を減らすための行動をとるとの約束を再確認する。昨年の会合以来、我々が合意した提案を実施してきた。さらに、世界保健機関、米州保健機関(the Pan American Health Organisation)及びOECDによる子供の健康を保護対策の改善のための取組を歓迎する。


結論

27. 我々は、議長に対し、バーミンガム・サミットに集まる首脳に対し、この報告書を提出することを求める。我々は、気候変動、環境と雇用、海洋の生物多様性及び子供の健康に関し、新たな重要な理解に達した。我々は、既存の多国間環境協定の違反を減らすために行動することを約束した。我々は、関連多国間フォーラム及び二国間のチャネルを通じ、これらの重要な事項について、さらなる努力を行うことを約束する。

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