G8環境未来フォーラムの結論及び提言(仮訳)


 G8環境未来フォーラムの参加者は、5つの分科会(エネルギー/産業部門、民生(家庭/業務)部門、運輸部門、農業/土地利用/森林部門、部門横断的取組)及び全体討論において、G8諸国及び欧州委員会が気候変動に対処すべく進めている国内対策の優良事例(ベスト・プラクティス)について81の事例を基に討論を行った。討論の内容は次のように、全般的な「結論」及びフォーラムからG8諸国への「提言」という形にまとめられた。

結論

 G8諸国は相当の温室効果ガスの削減をもたらしている数多くのベスト・プラクティスを実施していることを示した。これらの経験はG8の国々のみならずG8以外の国々とも共有することが有益である。我々はG8諸国による行動へのさらなるコミットメントを求めるものである。
 G8諸国の幅広い分野の気候変動に関する政策・措置の実施に当たって、ベスト・プラクティスは、政府または他の社会的主体によって実施されている国内対策のうちで、最善のあるいは最も進んだ取組を代表するものと理解される。フォーラム参加者は気候変動に対処するための将来の取組に結びつけるために、ベスト・プラクティスと考えるものの重要な特徴を明らかにした。主なものは次の通りである。
 ベスト・プラクティスは、気候変動を緩和する上で統合的な方法によって機能を果たす包括的なパッケージである場合が多い。
 ベスト・プラクティスは、単一の成果にとどまらず、多方面にわたる利益をもたらす場合が多い。
 ベスト・プラクティスは、その国の状況に適合したものであり、温室効果ガスの排出削減を達成するものをいう。
 ベスト・プラクティスは、あらゆる利害関係者と様々なレベルで関わるものである。
 ベスト・プラクティスの効果は可能な限り定量可能であるべきである。
 ベスト・プラクティスは、費用効果が高い。
 ベスト・プラクティスは、技術の長期的な変化を反映し、かつ促進することを目指すべきである。

 当フォーラムはまた、ベスト・プラクティスを策定・実施する上での障害として、以下の事項を明らかにした。
 気候変動に対処するための政策・措置を策定する際に、そこから得られる利益を適切に評価することが難しい。
 環境に係る外部費用が市場価格に十分に反映されていない。
 さらに、利害関係者における取組の優先順位は競合しており、また、気候変動の影響及びそれへの対策の効果は直ちに明らかになるものではないことから、気候変動に対する取組を正当化することが難しい場合がある。
 気候変動によってもたらされると考える問題及びそれに取り組む機会についての認識の不足は、さらなる問題を引き起こす。
 利害関係者は、新しい技術やアプローチが気候変動に対処できることが認められるまで、それらを取り入れることに躊躇し、その結果、対応が遅れることとなる。
 消費者に対して、適切なシグナル(例えば、価格づけ、ラベリングなど)が十分に示されていない。
 問題の内容、重要性、アプローチの方法及び解決策に関して、利害関係者間の合意が不足しているために、ベスト・プラクティスの策定及び実施の努力が妨げられる。
 最後に、部門間の協力が不足していることが、ベスト・プラクティスに対する障害を生み出している。

気候変動に対処するための国内措置のさらなる進展のための提言

 気候変動に対処するための革新的で効果的な政策・措置を策定・実施するために、当フォーラムは次のことを提言する。G8諸国はベスト・プラクティスに関する情報交換と評価を継続すべきである。G8諸国は成功例及び失敗例の両者について経験の交流を行うべきである。ベスト・プラクティスを策定する際には、G8諸国は他の国々のベスト・プラクティスに関する経験から学ぶことが勧められる。

 G8諸国は、以下の点を考慮することを提案する。

 G8諸国は包括的かつ統合的な政策アプローチを用いる努力を強化する。
 G8諸国は、実施の費用を削減しながら、単に温室効果ガスの排出削減にとどまらず、多方面にわたる利益を生むような政策・措置を策定し実施する。
 G8諸国の政府は、政策の策定プロセスの早い段階において、あらゆる利害関係者の参加を図るように努める。
 G8諸国は、利害関係者間の協力を促進するとともに、生産者と消費者の対話を促し、新しい市場の創出、市場の拡大に努める。
 G8諸国は、ラベリング、市場へのシグナル、消費者及び消費者と生産者の中間に位置づけられる人々の啓発により、消費者の意思決定に影響を与えることができる。
 G8諸国の政府は、利害関係者の受容性を考慮した実践・措置を立案し、当該利害関係者がそれらの措置を取り入れるようにする。
 G8諸国の政府は、望ましい行動を導くことができるような規制的措置、自主的措置、情報に関する措置及び経済的インセンティブを立案・実施する。
 G8諸国は地域社会に根ざしたアプローチ及び地域のイニシアティブがさらに重視されるように努める。
 G8諸国の政府は、あらゆるレベルで社会に対し、グリーン購入のような領域での建設的な事例を示す。
 G8諸国は、ベスト・プラクティスの特定、評価を容易にするための指標について情報の交換を行うとともに、その開発を継続する。
 G8諸国は情報技術のような革新的な技術の研究開発及び実証 (R&D&D) を積極的に進める。
 G8諸国は、実践可能な場合には常に、関係する国際機関との協力のもと、開発途上国を含め、他の国々との経験の交流、普及及び共有に努める。