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G8環境大臣会合・最終コミュニケ

(環境庁地球環境部仮訳)


コミュニケ

G8環境大臣会合、1999年3月26日〜28日、シュヴェリーン

 

    これらの行動は環境大臣会合の以下の結果から導き出される。


  1. 国際経済関係のグローバリゼーションは、世界的規模の環境保護の強化に機会と 課題を提示している。例えば、グローバリゼーションは世界的な繁栄の機会をも たらし、環境にやさしい技術の迅速な普及を促進させうる。しかし、環境に優し い技術を伴うことなしでは、世界的な交通量の増加、様々な経済地域間の競争の 激化、純粋に一国のみで解決できる問題の範囲の狭小化、天然資源の持続不可能 な利用に対する圧力の増加、をもたらす。

  2. 我々は、1992年にリオ・デ・ジャネイロで開催されたUNCEDにおいて、及び それ以降に取り上げられた持続可能な開発を達成するための約束を再確認する。 我々は、多国間協定及び多国間機関の首尾一貫した「地球規模でかつエコロジカ ルに責任ある枠組」がグローバリゼーションが持続可能な開発を支えることを保 証することを確実にするために、努力を進める。また、我々は、地球環境問題に 対処するための主な資金メカニズムとして、地球環境ファシリティ(GEF)を 強く支持することを再確認する。

  3. 我々は、持続可能な開発に向けて、我々の経済の「エコロジカルな近代化」を図 るため努力を払う。新技術及びクリーンな生産プロセス並びに革新的な製品及び サービスは雇用に貢献する。外部コストの内部化は、環境の側面を全ての政策に 統合させることを促すため重要である。資源の浪費や非効率な使用に結びついた 経済活動は避けるべきである。

  4. 世界的競争を環境保護における底を目差すレースにすべきではない。我々は、環 境基準や標準(ノルム)の設立、一般的認知、継続的な改良に関する国際的協力を 促進するため最大限の努力を払う。これは単に適当な法的拘束力のある国際的な 基準や標準(ノルム)のみならず、例えば、環境上の自主的な取組、協定、行動 規範、革新的かつ柔軟なアプローチ、そして、例えば国際標準化機構(ISO)そ の他の機関により行われている標準化作業における環境保全成果、遵守及び公衆 への報告も必然的に含むものである。この文脈において、我々は、UNEPが金融 及び保険部門との協力を強化していることを歓迎する。我々は、世界銀行の新環 境ハンドブックを良き出発点として歓迎し、この基準の継続的な適用及び改善を 求めるとともに、公的及び私的な金融機関に対し、この例に倣うよう奨励する。 さらに、予防原則に照らして、科学的知見の不足が環境行動から逃避する理由に 使われるべきでない。

  5. 世界経済に打撃を与えている近年の危機は、各国政府が政策決定に当たり、長期 的な問題に考慮を払うことの必要性を明らかにした。国際金融機関の構造調整政 策を含む国際的な金融及び経済制度は、エコロジカルかつ社会的次元に大きな考 慮を払うべきである。我々は、国際金融機関(IFIs)に対し、環境保護を彼らの 戦略及び経営方針の不可欠な一要素とし続けることを求める。特に、国際開発銀 行は、例えば、国連との実りある協力を拡大させ、意志決定過程の透明化を図り、 戦略・取組の環境的影響を調査し、首尾一貫した基準を開発すべきである。彼ら はまた、エネルギー効率向上並びに再生可能エネルギー及び代替エネルギー資源 の利用を推進し、そのようなエネルギー源の利用割合の向上に向けた努力を強化 すべきである。我々は、貧困国の債務軽減に向けた取組の範囲の環境保護の係る 潜在性を強調する。これらの取組がもし実施されるならば、貧困国の持続可能な 発展に真に寄与するべきであることを我々は強調する。

  6. 我々は、次期WTO交渉は持続可能な開発に貢献しなければならないという決意 を再確認する。「貿易と環境」は不可欠な問題として盛り込まれるべきで、 WTOの合意全般にわたり環境配慮が十分考慮されることが重要である。同時に、 開発問題についても交渉の不可欠な一部とならねばならない。WTOの透明性を 高めることは、開かれた多国間貿易システムを公衆が引き続き支持する点に貢献 する。また、貿易と環境の課題に対処するため、能力向上の努力を強化する必要 がある。これに関しては、最近開催された貿易と環境及び貿易と開発に関するハ イレベルシンポジウムは価値ある役割を果たした。我々は、個別に、又は共同し て、また、適当な場合には、関心を有する(G8以外)他のWTO加盟国とともに、 次期WTO交渉の早い時期に環境及び持ア可能な開発に関するレビューを検討す る。我々は貿易/経済担当省庁、開発担当省庁及び環境担当省庁との間の政策策 定の統合を継続すること約束するものであり、また、すべてのWTO加盟国に対 しそのようにすることを奨励する。また新たな貿易と環境の課題に対処するため、 能力向上努力を強化することが必要である。環境により責任を有するWTOに向 け取組を進める一方、我々は多国間環境協定の統合を保つ必要性を強調する。 我々は多国間環境協定とWTOの規則の関係が明らかにされるべきことを検討す る。我々は、健康と安全、環境と生物多様性についての保護的基準を設定する国 家の権利について、それらが、恣意性または正当化されない差別を避け、また 我々の多国間での義務と整合的であることを踏まえつつ国際的な基準より厳しい ものであったとしても尊重しなければならない。またラベリング、環境原則、環 境製品、サービス及び技術の自由化、WTO、UNEP、その他の環境に関わる国 際機関及び多国間環境協定事務局との協力は、重要な貿易と環境の問題と考える。 我々は、他の国々、特に途上国にとって関心の高い他の貿易と環境の問題につい て検討する用意がある。世界規模の貿易の自由化と高い環境保護基準は相互に支 持的であるべきである。

  7. 我々は、輸出信用機関の業務への環境配慮の組込を強化する観点からOECDで行 われている作業を歓迎する。国際協調で昨年達成された進展は我々を勇気付ける ものであるが、フォローアップが必要である。我々は、OECD輸出信用グループ がその作業を加速することに合意する。同グループは、一般的な進捗及び、特定 のプロジェクトのための一般機関の行動に関して得られた進展を含めてOECD大 臣に定期的に報告すべきである。


    気候変動


  8. 我々は、持続可能な開発への道を歩む上での核となる要素として、地球気候と生 態系の保護のためのさらなる行動が極めて重要であることを再度表明する。

  9. リーズ城で合意したとおり、昨年の間我々の政府は京都議定書に署名した。我々 は、京都議定書の早期発効が絶対的に重要であることを再確認し、この目的に向 けてあらゆる努力を行うことを決意する。我々は、京都議定書を具体化し、及び 気候変動枠組条約の実施を追求することを目的として、1998年11月にブエノス アイレスにおいて国連気候変動枠組条約第4回締約国会議で採択された、包括的 な作業計画と明確なタイム・テーブルを伴うブエノス・アイレス行動計画を歓迎 する。我々は、この行動計画の中核要素が第6回締約国会議までに決定される必 要があることを強調する。

  10. 第6回締約国会議における、すべての京都メカニズム−共同実施、クリーン開発 メカニズム及び排出量取引−のための関連する原則、方法、規則及び指針に関す る決定は極めて重要である。この決定は、これらのメカニズムが国内措置に対し て補足的なものでなければならないこと、環境上真に有益であること、そしてこ れらのメカニズムを利用しないときよりも温室効果ガスの排出量が削減されるこ ととなることを確保するようなものでなければならない。我々は、作業計画の中 で、クリーン開発メカニズムに優先度を与える。

  11. 我々は、遵守に関する合同作業グループの創設を歓迎するとともに、第6回締約 国会議において、包括的遵守制度に関する決定を行うことが重要であると考える。 我々は、この制度が強力、効率的、効果的及び首尾一貫したものであるとともに、 議定書の非遵守国に対する拘束力のある措置を伴うものであるべきであるという 我々の要請を再度表明する。

  12. 我々は、率先して気候変動に対処し、条約及び京都議定書に基づく義務を果たす ため、国内的に効果的な措置をとることにより排出トレンドを変えるためにあら ゆる努力を行うことを決意する。我々は、温室効果ガスの排出の相当の削減を達 成し、及び2005年までに目に見える形の進展を示すために必要な国内の施策の 策定及び実施について、スタートを切ろうとしている。我々は、そのような削減 が、各国における既存のノー・コスト又はロー・コスト施策の実施可能性を追求 することなどによって、費用対効果上有効に達成し得ることを確信する。特に、 先進国は、より効率的な技術の開発と浸透を進展するためのインセンティブ、情 報、その他の対策の役割を認識するべきである。我々は、議定書の下でこの分野 における協力を促進するため、ブエノス・アイレスで合意された政策措置の「ベ スト・プラクティス」に関する経験の交換に積極的に参加する。次回のG8環境 未来フォーラムはこの問題に具体的に取り組み、来年我々に報告を発表するもの である。

  13. 気候システムに対して危険な人為的干渉を及ぼすこととならない水準において大 気中の温室効果ガスの濃度を安定化させるためには、すべての国によるより大き な努力がなされることが必要である。これには、温室効果ガスの排出を抑制し又 は削減するための定量的約束を設定し、強化するプロセスに対する地球的参加を 徐々に増強していくことが含まれる。我々は、そのようなプロセスは、共通だが 差異のある責任の原則によって導かれるべきであり、また、貧困を克服し、持続 可能な開発を実現するという途上国の正当な優先課題が十分考慮されなければな らないことを再確認する。我々は、途上国が気候変動条約及び議定書の実施にお いて彼らの役割を十分に果たすために援助を行うことの重要性及び資金メカニズ ム、技術移転開発、及び能力向上を通じた効果的な途上国への支援の必要性を強 調する。我々は、途上国で既に行われている取組を歓迎するとともに、彼らのさ らなる取組を支援するものである。我々はまた、ブエノス・アイレスにおいて、 数カ国の途上国によって示された、彼らの温室効果ガスの排出を抑制する更なる 約束を行うとの意思を歓迎する。

  14. エネルギーと資源の生産性と再生可能エネルギー源の使用の拡大は、我々の経済 に大きな好機を提供し、既存の雇用を保持しつつ、新しい将来性を有する雇用を 生み出すことに役立つと同時に環境保全の努力にも合致するものである。我々は、 省エネルギー、太陽エネルギーを含む再生可能なエネルギー資源の使用の拡大及 び合理的かつ効率的なエネルギー使用のための実効的な提案を盛り込んだ持続可 能なエネルギー戦略のCSD9における採択に向け、CSD7が作業を開始すること を望む。

  15.  我々は、来るべき交渉において、すべての事項に関し速やかに進展を図ること及 び緊密な協力を図ることを約束する。我々は、すべての国々と踏み込んで議論す ることに関心を有していることを強調する。


    環境と運輸


  16. 我々は、CO2の排出、特に運輸部門における排出が世界規模で急速に増加を続 けていることに憂慮をもって留意する。従って、我々は、例えば、燃料消費及び 全体の走行距離の削減、より環境上責任ある運輸手段へのモーダルシフト、並び に代替燃料及び推進システムの導入及び拡大によって、運輸部門におけるCO2 の排出の削減の可能性を可能な限り追求することが緊急の必要事項であると考え る。我々は、さらに、財政的及び経済的手段、燃費基準及び交通需要管理などの 施策の適用が、エネルギー効率の改善とCO2排出の抑制及び削減に効果的に貢 献し得ると考える。

  17. 我々は、代替燃料及び技術の開発及び導入並びにそれらの迅速な実施の観点から、 1999年1月25日〜26日にボンで開催されたG8環境未来フォーラムの成果及び勧 告を歓迎する。

  18. 我々は、航空機及び船舶による排出を削減するという京都議定書に基づく約束を 再確認するとともに、国際民間航空機関(ICAO)及び国際海事機関(IMO)に 対し、これらの目的を追求するための一層の努力を行うよう求める。持続可能な 移動のためには、交通の外部コストを内部化する必要がある。従って、ICAOと IMOが航空機燃料及び船舶燃料に対する効果的な政策のレビューについても検 討すべきである。


    バイオセイフティー議定書


  19. バイオセイフティーは解決されていない重要課題として残っている。我々は、カ ルタヘナでバイオセイフティー議定書についてコンセンサスを見出し得なかった ことを遺憾に思う。交渉は延期されたものの、生物多様性特別締約国会合で決定 されたように、2000年5月のパリにおける第5回締約国会議までの合意に向けた 作業に均された基礎を与える重要な進歩があったことに我々は留意する。我々は また、これらの交渉が成功裏に終わるの確実にするため適切な調査や準備を行う 必要を認識する。我々は生物多様性を守る実効的かつ効果的なバイオセイフ ティー議定書を得るために専念し続ける。


    環境分野における国連改革


  20. 我々は、さきのUNEP管理理事会においてなされた国連事務総長報告及び環境及 び人間居住に関する国連タスク・フォース報告に関する決定を、環境分野におけ る国連の活動に係る必要な組織強化に向けた道のりの重要な一歩として歓迎する。 我々は、この重要な事項が国連総会によって迅速に決定されることを確保するた めに最大限の努力を払う。我々は、関連国連機構間のより効率的な協力及び調整 を実現しようとする国連事務総長及びUNEP事務局長の前進している取組を支持 するとともに、UNEP管理理事会決定に示された行動をとることを奨励する。

  21. UNEP −国連システム内で環境問題を専門に扱う第一の機関−の強化は、改革 の焦点であるべきである。我々は、UNEPが主要地球環境機関としての実効性を 強化しその役割を主張することを求める。管理理事会は、1997年のナイロビ宣 言に従い、このような方向性に弾みを付けた。


    環境と安全保障


  22. 環境破壊、資源の欠乏及びその結果生ずる社会−政治的影響は、それらが内戦又 は国家間の紛争を惹起し、又は悪化させるおそれがあるという点で、安全保障に 対する潜在的脅威である。従って、我々は、国際的議論において環境への負荷と 安全保障の間の関係に益々重要性が付与されつつあるということを歓迎する。 我々は、環境に由来する紛争の回避及び減少に関する課題をどのように進めるか 検討する。


    従前のG8環境大臣会合のフォローアップ


  23. 我々は、海洋汚染、沿岸線の改変、持続可能でない漁業活動及びその他の脅威に より、海洋及びその生物多様性が脅威に晒され続けていることに対し深い憂慮を 表する。我々は、国、地域及び地球レベルの施策を講ずることにより、このよう な危険に対抗するための新たな、及び調整のとれた努力を行うこと及び海の生物 多様性の持続可能な利用及び保護を促進することを約束する。我々は、CSDに 対し、このような課題について、より良い調整及び協力を含む世界的レベルでの より良い対応を勧告するよう要請する。世界的な漁船の過剰漁獲能力、過剰漁獲 及び養殖漁業の生物多様性に及ぼす生態系への負の影響を含む非持続的漁業慣行 に対処するため、我々は、FAO及び各国政府に対し、特に地域的及び準地域的 な漁業管理保護機関を通じた活動により、負荷の減少を目指した努力を強化する よう要請する。さらに、1995年の国連公海漁業協定、FAO責任ある漁業実施の ための行動規範、または/もしくは、1993年のFAOコンプライアンス協定につき 批准または加盟しない全ての国々に対し、早急にそうするようCSD7が呼びかけ ることを我々は求める。そのことで、これら合意の早期発効を実現させ、これら 合意に含まれる強力な対策が持続可能な漁業にさらに貢献することを確実にする ものである。我々は、UNEPに対し、UNEP地域海計画を再活性化させること 及びこのために地域海計画の地域事務局を維持するよう要請する。我々は、国際 社会に対し、「陸上活動から海洋環境を保護するための世界行動計画 (GPA)」の厳格な実施を求める。我々は国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI) への指示を表明し、この行動プログラムの実施に対する幅広い支援を呼びかける ものである。

  24. 我々は、多国間環境協定の効果的実施の必要性を再度強調し、違反事例のかつ てない増加に対して深刻な関心を表明する。我々は、これらの協定に規定される 義務を実施することを約束し、その効果的な実施のために用いうる、オゾン層破 壊物質、有害廃棄物及び保護対象野生生物の違法取引に対処するための特別の取 組を含む効果的な手続き及び対策が採択されるよう求める。また、我々は、その 実施を支援するために(G8以外の)国々とともに作業を進めることに強い関心 を有している。従って、我々は、環境条約の実施において、主として途上国の政 策担当者及び執行担当者を支援するために今夏開催されるワークショップに向け たUNEPの重要なイニシャティブに最大限の支援を行う。

  25. 我々は、犯罪組織が多国間環境協定違反に関与していると結論づけたG8国際組 織犯罪上級専門家会合(リヨン・グループ)の活動を支持する。我々は、環境分 野における組織犯罪との効果的な戦いの重要性を確認する。我々は、 INTERPOL、世界関税機構(関税協力理事会)及び環境法の遵守・執行を担当 する地域機関の努力を多とし、これらの機関が、オゾン層破壊物質、有害廃棄物 及び保護野生生物の違法取引に関する環境犯罪の検討課題を強化するよう奨励す る。我々は、G8リヨン・グループが、他の機関と共にこの様な違法活動を行っ ている犯罪組織を特定するための多数機関による活動を調整する共同プロジェク トを行うとの同グループの決定を支持する。

  26. 我々は、環境的脅威に対し子供が社会で最も影響を受けやすい成員であることを 再確認する。我々は1997年のマイアミ宣言以降,子供の環境面での健康に関する 進歩を認める。我々は煙草の煙と子供への健康影響に関するWHOのイニシア ティブに謝意を表するとともに、健康と環境の関係を調査するWHOヨーロッバ の取組を歓迎するものである。我々は環境汚染と悪化から子供の健康を効果的に 守るため、現在の取組と今後さらに行いうることに関する知見のより強固な基盤 を築く。