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気候変動枠組条約第7回締約国会議(COP7)
(10/29~11/10 (閣僚会合:11/7~11/10)、於:マラケシュ)
(概要と評価)

平成13年11月10日
日 本 政 府 代 表 団

1.全体概要

  • COP7(議長:エルヤズギ・モロッコ国土整備・都市計画・住宅・環境大臣)は、10日(土)朝、関連文書を採択し閉会した。我が国より、川口環境大臣、植竹外務副大臣、朝海地球環境問題等担当大使、浜中環境省地球環境審議官、日下経済産業省産業技術環境局長等が出席した。

  • 今次会議では、本年7月のCOP6再開会合(於:ボン)において達成された「ブエノスアイレス行動計画の実施のための中核的要素」に関する合意(ボン合意)に基づく、法的文書(注)が採択された。これにより、京都議定書の実施に係るルールが決定し、先進諸国等の京都議定書批准が促進される見通し。また、途上国支援のための3つの基金が設立された。

  • 今次会議の最大の焦点は、京都メカニズムに関するルール策定だった。我が国は、京都メカニズムを十分利用できることが、地球規模での効果的且つ持続可能な温暖化対策に繋がるとの主張を行ったところ、種々議論を経て、一定の制約はあるものの、柔軟且つ幅広い利用を可能とし得るルールとなった。

  • ボン会合で争点となった遵守制度(排出削減義務の不遵守の場合の対応)については、ボン合意に基づき、法的拘束力のある措置を課し得る制度にするかどうかについて、京都議定書発効後の議定書締約国会合(COP/moP)第1回会合において措置されることとなった。

  • 会期間にIPCC第三次報告書(TAR)に関するワークショップを開催し、TARに含まれる気候変動対策の効果等の情報の検討を行い、SB16に報告することとなった。

  • CDM理事会及び技術移転専門家グループの設立とメンバー選出、並びに第1回会合が行われ、CDM理事会には岡松(財)地球環境産業技術研究機構顧問がメンバーに選出された。

  • 今次COPが明年9月の「持続可能な開発に関する世界首脳会議」(ヨハネスブルグ・サミット)を前に、右首脳会議開催地と同じアフリカ大陸で初めて開催されることもあって、両共同議長(ロック・スイス大臣及びムーサ南ア大臣)の指導力もあり、サミットへ向けたCOPからのメッセージが発出された。

  • COP8は、来年10月23日から11月1日に開催することが決定されたが、開催場所については、現在インドが関心を表明、検討を行っており、11月24日までに結果を条約事務局長に通報することとなった。

(注)吸収源、遵守、京都メカニズム、政策措置、議定書第5,7,8条に関する決定。ボン会合では途上国支援等に関する10の決定につき合意が成立していた。

2.各論

(1)京都のメカニズム

 今次協議の最大の焦点は、京都メカニズムに関するルール策定だった。我が国は、京都メカニズムが実際に機能し、費用効果的で持続可能な温暖化対策を可能とすることが、地球規模での効率的で持続可能な排出削減に繋がる旨主張し、一定の制約はあるものの、柔軟且つ幅広い利用を可能とし得るルールが作成された。

(2)5/7/8条

 5/7/8条は、各国の排出量や吸収量の推計、報告、専門家によるレビュー等の手続きを定めており、技術的であると同時に削減目標達成に影響しうる問題である。排出割当量の算定や排出枠の移転・獲得手続きを定める第7条4の指針を決定したほか、排出目録上の問題により京都メカニズム参加資格が停止される場合の具体的基準に合意した。また、目標達成にあたっての途上国への悪影響の最小化に関する
報告を毎年行うこととすること等につき、政治決着で合意が得られた。

(3)遵守

 議定書の義務不履行に対する措置を締約国会議の決定で規定するか、法的拘束力を改正議定書で規定するかは、将来のCOP/moP1まで決定を先送りすることとなった。京都メカニズムの参加資格要件(情報の報告義務)の不遵守により、京都メカニズムの参加資格を喪失した締約国について、遵守委員会執行部が、当該国からの要請に従い、依然として問題が未解決であると決定しない限り、当該締約国の参加資格を回復することとなった。また、排出削減目標が未達成の場合に課される結果の一つである排出量取引によるクレジット移転の禁止については、締約国により移転資格回復が要請された場合には、遵守委員会執行部により、次期約束期間における当該国の遵守の見通しが示されていないと決定されない限り、移転の禁止が解除されることとなった。更に、報告義務の不遵守に対する結果に対しては、第5条、第7条遵守行動計画の作成・提出が義務づけられることとなった。但し、遵守委員会執行部による追加的な措置は課されないこととなった。

(4)途上国関連

 途上国参加問題に関しては、UG諸国とも協調しつつ、COP8で今後の協議の進め方に関し議論を開始することをCOP7で決定すべく努力した。しかしながら、途上国は新たなコミットメントに関するプロセスの開始に強く反対し、議題7「条約第4条2(a)(b)の十分性の見直し」に関しては、協議未了のままCOP8に送られることとなった。また、会期間にIPCC第三次報告書(TAR)に関するワークショップを開催し、TARに含まれる情報の検討を行い、SB16に報告することとなった。
 途上国支援問題に関しては、3つの基金、最貧国基金へのガイダンス、最貧国専門家グループの設立及びその役割並びに国別適応行動計画準備のための指針に関する決定文が採択された。

(5)吸収源

 ボン合意では、露を除く各国の森林管理による獲得吸収量の上限値が具体的に合意されているが、露はより大きな数値を主張していたところ、主張通り、露は33メガトンの上限値となることが合意がされた。

(6)ヨハネスブルグ・サミットへの報告

 我が国は、環境問題への対処と持続可能な開発は互いに利益を生み出すものとの観点から、技術革新への取組みや市場メカニズムの活用を積極的に行うべきであり、また、気候変動の関連で水や貧困の問題への取組みを重視している旨のステートメントを行ったところ、右趣旨が盛り込まれた宣言文が採択された。

3.評価

(1) 政府代表団は、京都議定書の2002年発効を目指し、COP7で合意を達成すべく最大限の努力を行った。遵守に関しては我が国提案に基づき合意が達成されるなど、我が国は協議に建設的に参加した。今次合意を受けて、ボン合意の「法文化作業」が完了したことにより、京都議定書の2002年発効が大きく近づいた。川口環境大臣及び植竹外務副大臣は精力的に二国間会談を行った。
(2) 協議を通じ我が国は、費用効果的で持続可能な温暖化対策を可能とする京都メカニズムについて、十分に活用し得る利用しやすいルールの策定を目指した。その結果、一定の制約はあるものの、柔軟かつ幅広い利用を可能とし得るルールが作られた点は評価出来る。また、CDM理事会に岡松顧問が選出されたことは、我が国が今後CDM事業を推進する上で意義がある。
(3) 今次協議で温暖化防止へ向けた国際交渉が終わるわけではなく、地球規模での実効的な温暖化対策のためには、米国や途上国も含む全ての国が参加する一つの国際的枠組みが重要であり、その実現に向け引き続き最大限努力すべきと考える。
(4) 我が国は、引き続き、京都議定書の目標を達成するための国内制度に総力で取組むことが適当である。温暖化対策は経済との両立が鍵であり、我が国においては経済界の創意工夫を生かし、経済活性化に繋がる国内対策が講じられるべきであると考える。

(了)