地球温暖化防止行動計画
第一 行動計画策定の背景及び意義

平成2年10月23日
地球環境保全に関する関係閣僚会議決定
「当面の地球温暖化対策の検討について」(平成2年6月18日地球環境保全に関する関係閣僚会議申合せ)に基づき、地球温暖化防止行動計画(以下、「行動計画」という。)を定める。

第一 行動計画策定の背景及び意義

 地球温暖化問題は、人類の生存基盤に深刻な影響を及ぼすおそれがある重大な問題である。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の報告によると、現状のままで温室効果ガスの排出が続けられるならば、過去1万年の間に例をみない急激な温度上昇が生じ、その結果、海面水位の上昇や気候の変化、人間の居住環境への脅威等自然、経済及び社会のシステムに重大な影響がもたらされると予測されている。

 将来の世代に、その生存と発展の基盤である良好な地球環境を引き継ぐことは、現在、地球環境の恩恵を受けている我々の世代の責務である。このような認識の下に、地球温暖化に関しては科学的に未解明な部分が残されているものの、その被害が顕在化し取り返しのつかない事態が生じないよう、世界各国が協調して直ちに実施可能な対策から着実に推進していく必要がある。

 こうした中で、我が国は、その経済力、技術力等を活用して、開発途上国への支援等国際的地位に応じた役割を積極的に果たしていかなければならない。

 我が国は、これまで官民挙げてエネルギーの効率的利用に努めてきた成果として、人口一人当たりの二酸化炭素排出量では、先進国中最も低いグループに属している。しかしながら、我が国は相当量の二酸化炭素を排出しており、また、近年の内需拡大を背景とした経済活動の好況や国民のライフスタイルの変化等により、その排出量は、ここ数年増大傾向に転じつつある。

 温室効果ガスの排出抑制については、持続可能な開発の考えに沿って経済の安定的発展を図りつつ、地球温暖化による影響の重大さ及びその抑制対策や適応対策の実施可能性等を総合的に勘案して実施すべきものであり、我が国としては、温室効果ガスの排出抑制のための国際的な共通の努力として、第一段階として、温室効果ガスの排出量の安定化を早急に達成する必要がある。

 また、二酸化炭素の吸収源としての森林については、地球規模での減少が生じており、我が国と世界の森林資源との関わりを踏まえ、持続可能な開発の考え方に沿って、その減少の防止と保全造成に率先して取り組む必要がある。

 さらに、地球温暖化に係る不確実性を低減させ、科学的知見を踏まえた適切な対策を講じていくため、調査研究、観測・監視を推進するとともに、革新的技術を含め一層の技術開発とその普及に努めることが必要である。

 以上のような諸状況を踏まえ、地球温暖化対策を計画的総合的に推進していくための当面の政府としての方針及び今後取り組んでいくべき実行可能な対策の全体像を明確にし、もって国民の理解と協力を得るとともに、我が国として国際的な枠組みづくりに貢献していく上で基本的姿勢を明らかにすべく行動計画を定める。