開発援助プロジェクト及びプログラムに係る環境アセスメントに関するOECD理事会報告 (仮訳)

 


1985年6月20日採択


 理事会は、

 1960年12月14日のOECD条約第5条 (b)に鑑み、

 1979年5月8日の環境に著しい影響を及ぼすプロジェクトの環境アセスメントに関する理事会勧告に鑑み、

 1979年5月8日の環境大臣会合で採択された「予見的環境政策に関する宣言」に鑑み、

 特に、その第1項及び第10項において、OECD加盟国政府及びユーゴスラビア政府が、「著しい環境影響を伴いそうなあらゆる経済社会部門の意志決定の早期の段階において、環境への配慮が組み込まれることを確保するよう努める」旨及び「環境悪化の防止を支援するために、すべての国、特に開発途上国と最大限可能な限り協力を継続する」旨を宣言したことを想起し、

 多くの加盟国及び非加盟国において、各国内におけるプロジェクトの環境影響評価については既に多年にわたる経験が積み重ねられていることを考慮し、

 環境問題を扱う際の共通の原則を加盟国が採択し、開発途上国における環境アセスメントの利用を支持、支援する必要があることを念頭に置き、

 開発途上国は自らの環境を管理する責任を有するものの、加盟国の援助機関は必要に応じ環境アセスメントを実施すべきであり、また、その際には被援助国政府の積極的参加を求めるべきであることを認識し、

 開発援助委員会 (DAC)の支持を受けての環境委員会の提案に基づき、

I.加盟国政府に対し以下のことを確保するよう勧告する。

(a)その性格、規模及び立地場所のために環境に著しい影響を及ぼす可能性のある開発援助プロジェクト及びプログラムについては、可能な限り早い段階において、適切な程度に、環境の観点からアセスメントが行われること。

(b)個々の具体的な開発援助プロジェクト又はプログラムを詳細な環境アセスメントの対象とするか否かの判断に際し、加盟国の援助機関は、被援助国の固有の法制度や社会経済情勢、環境条件を顧慮しつつ、附属書に示されたプロジェクト及びプログラムについて特に注意を払うこと。

(c)危険な物質や工程が含まれる場合、加盟国政府自身及び加盟国の企業が関与するプロジェクトには最善の防止・保護技術及び最善の製造工程が導入されることを促進するための方策も引き続き検討すること。

II.環境委員会に対し以下を指示する。

 加盟国の援助機関の実際の経験に照し、また、開発援助委員会 (DAC)との協力の下に、開発援助プロジェクト及びプログラムの環境影響の評価の実施を促進するとともに、ある種の援助プロジェクト及びプログラムが環境に及ぼす可能性のある悪影響を早期に防止し、軽減することに寄与するために必要な手続き、手順、組織及びリソースに関する指針を作成すること。

附 属 書

環境アセスメントが最も必要とされるプロジェクト及びプログラム

1.環境アセスメントが最も必要とされるプロジェクト及びプログラムは、プロジェクト又はプログラムが環境に及ぼすと予想される直接、間接の影響が重大なものとなりそうかどうかの確認を目的とした多くのクライテリアに基づき判定される。

2.個々のプロジェクト又はプログラムが環境に大きな影響を有するか否かの判断に際しては、まず何よりも、そのプロジェクト又はプログラムの実施場所として計画されている地域の生態学的条件を考慮する必要がある。ある種の非常に脆弱な環境 (例えば、湿地、マングローブの沼沢地、さんご礁、熱帯林、半乾燥地)においては、常に、詳細な環境アセスメントが必要である。環境アセスメントを実施する場合、考慮すべき問題としては以下に対する影響が挙げられる。

   a)土壌及び土壌保全 (浸食、塩化等)
   b)砂漠化にさらされている地域
   c)熱帯雨林及び熱帯植生
   d)水源
   e)魚及び野生生物資源の保護・保全にとって、あるいはその持続的利用にとって貴重な生息地
   f)固有の価値を有する地域 (歴史的、考古学的、文化的、審美的、科学的)
   g)人口又は産業活動が集中しており、それ以上の産業開発又は都市拡大が重大な環境問題を引き起こしそうな地域 (特に、大気及び水質について)
   h)特定の脆弱な人口集団にとって特別な社会的価値のある地域 (例えば、伝統的な生活様式を持つ遊牧民等の人々)

3.環境アセスメントが最も必要とされるプロジェクト又はプログラムは以下の項目に整理される。

   a)再生可能資源の利用における重大な変更 (例えば、農業生産、森林、牧草地への土地の転換、農村開発、木材生産)
   b)耕作法及び漁法の重大な変更 (例えば、新作物の導入、大規模な機械化)農業における化学物質の利用 (例えば、殺虫剤、肥料)
   c)水資源の開発利用 (例えば、ダム、灌がい・排水事業、水及び流域管理、水供給)
   d)インフラストラクチャー (例えば、道路、橋、空港、港湾、送電線、パイプライン、鉄道)
   e)産業活動 (例えば、金属精練工場、木材加工工場、化学工場、発電所、セメント工場、石油精製・化学工場、農業関連産業)
   f)採掘産業 (例えば、鉱業、砕石、泥炭、石油及びガスの採掘)
   g)廃棄物の管理及び処分 (例えば、下水道施設、廃棄物埋立地、家庭ごみ処理施設及び有害廃棄物処理施設)

4.プロジェクト又はプログラムについての上記リストは、重要度による順番ではなく、また、ある特定のプロジェクト又はプログラムのタイプが必然的に他よりも環境アセスメントを必要とすることを意味するものでもない。更に、上記には記載されていないものの、ある地域の環境には著しい影響を有するかもしれないプロジェクト又はプログラムも存在するかもしれないので、このリストは完全網羅的なものではない。あるプロジェクト又はプログラムが上記のリストに載っていることは、このようなプロジェクト又はプログラムが必ず環境に悪影響をもたらすことを意味するものではなく、実際、その中のあるものは環境にプラスの影響をもたらすこともあるが、経験が示すところによれば、このようなプロジェクト又はプログラムによる環境への悪影響を除去又は軽減するためにしばしば特別の対策が必要となっている。従って、あるプロジェクト又はプログラムを詳細な環境アセスメントの対象とすべきか否かは、個々の具体的な場合についての全ての事実を分析した結果によることになる。