「地球環境に関する援助機関ガイドライン」

 


経済協力開発機構
パリ 1991年


 I. 序

 II. 気候変化

  1. 背景

  2. 援助機関のためのガイドライン

  3. 気候変化が引き起こすエネルギー関連の問題

  4. 気候変化が引き起こす森林関連問題

  5. 海面水位上昇

 III. オゾン減少

 IV. 有害廃棄物

 V. 生物学的多様性

 付表



地球環境問題に関する援助機関ガイドライン

 OECD (経済協力開発機構)開発援助委員会 (DAC)は、開発援助および環境に関する作業部会を通じて、環境と援助に関するガイドラインと勧告を数多く作成してきた。それらは作成され次第DACによって採択され、事務局長によって公開された。この「地球環境問題に関する援助機関ガイドライン」は、以下の分野において開発途上国を支援する際に、援助機関の指針とすることを意図して作成されたものである。

a) 気候変化 (とくにエネルギー、森林、および海面上昇に関して)
b) オゾン減少
c) 有害廃棄物
d) 生物多様性


Copyright OECD, 1991


地球環境問題に関する援助機関ガイドライン


I. 序

1. 国境を越えて地域的または地球的規模になっている環境問題について1970年代初頭から関心が高まってきた。先進諸国民一般の関心がこうした地域的、地球的性格の問題に取り組む国際的協調を促進させるための、OECD加盟国政府のイニシアチブを増加させた。このような数多くの環境問題の起源は主に先進諸国の中にあることは広く認識されており、その結果、気候変化や生物多様性などの問題に取り組む国際的な努力においては、先進諸国の主導性が一段的に容認されている。OECD諸国はその責任を認識しており、地球環境問題へのマイナス貢献を減らすため各国の政策の枠組みの中で継続的に対処している。この援助機関のためのガイドラインにおいて提案されている対策の多くは、先進諸国の場合にはその国内政策と同様に適用することができる。しかしながら、世界的な効果を期待するためには、開発途上国の十分な参加が必要である。開発途上国がそうした地球的規模の活動に参加できるよう支援する際に重要は役割を担っているのが、二国間および多国間開発機関である。

2. とくに注目されるのは、環境分野の国際協定に定められている義務を開発途上国が果たせるように支援する方法である。これまでのところ、そうした協定では、オゾン層を破壊する物質 (ウィーン条約およびモントリオール議定書による)や有害廃棄物の国境を越えた移動 (バーゼル条約による)が対象になっている。気候変化に関する枠組条約や生物多様性保全に関する条約を作成する作業が目下進行中であり、ともに1992年6月にブラジルで開催される「環境と開発に関する国連会議」 (UNCED)において重要な課題になるものと予想されている。世界の森林の保護と開発に関する国際協定についても議論が交わされており、また国際水域の汚染に関しても、数多くの地域協定がすでに成立しているか、または検討されている。

3. 1989年の設置以来、開発援助および環境に関するDAC作業部会は、二国間援助機関が、開発途上国が地球環境問題に取り組むのを援助するに際してどのような役割を果たせるかということについて調査している。数多くの国際フォーラムで多数の加盟国が地球環境問題に取り組むためにはODA以外の資金も必要であることを認めている。多くの場合、援助機関がこうした問題を処理する際には、プログラムを提供するための効果的なメカニズムとして、また地元開発優先主義と地球環境保護とのバランスが取れている場合に適用されるODA資金の利用を通じて重要な役割を担うことになる。1980年代後半までは、ほとんどの援助機関ではこの地域の開発途上国の援助に関する経験や専門知識が不足していた。しかし、最近は援助機関の能力も強化されており、一部の援助機関はこうした面で数歩先を進んでいるケースもある。したがって、本報告に盛られている政策ガイドラインは、分担を要求された場合に他の政府機関でも実行できるような支援活動を提示する際にも役立つものと思われる。

4. 作業部会は調査結果にもとづいて本報告を作成したが、それには一連の地球環境問題に関する援助機関のための政策ガイドラインが盛り込まれている。この報告に取り上げられている問題は、気候変化やオゾン層保護、有害廃棄物、国際水域の汚染、生物多様性の喪失などである。気候変化については、海面上昇、エネルギー、森林などの問題は別の章で取り上げられている。エネルギー、森林などの章では、気候変化に関するエネルギーや森林の問題にとくに重点が置かれているので、注意が必要である。エネルギーや森林に関連する広範な環境問題は、各援助機関の援助プログラムの部門政策において取り上げられるものと思われる。作業部会は、エネルギーと森林に関する問題のうち、気候に関連しない問題について、今後の取り組むべき方向を検討中である。

5. 本報告で取り上げられないものに、開発途上国の地球環境問題に取り組むための活動費の資金調達の問題がある。地球環境問題に関する開発途上国への資金援助のために、一部のDAC加盟国は現行の支援プログラムとは別に、新たな特別協定をすでに結んでいる。オゾン層破壊物質に関しては、モントリオール議定書のもとに暫定多国間基金 (interim multilateral fund)が設立されている。また地球環境ファシリティが世界銀行、国連環境計画 (UNEP)、および国連開発計画 (UNDP)の支援のもとに設立され、オゾン層保護、温室効果ガス排出制限、生物多様性保全、および国際水域保護などの分野におけるプロジェクト活動に融資している。「環境と開発に関する国連会議」に備えて、気候変化や生物多様性に関する交渉のさ中、資金調達と基金のメカニズムについて現在集中的な討議が行われている。本報告ではそうした討議は取り上げないし、またそれに重きを置くものでもない。

6. 同時に、地球環境が脅かされている中で、持続可能な経済・社会開発の促進という優先目標を損なうことなく援助の優先順位に変更を加えるため、既存の二国間援助のメカニズムの中で実行できることは多々ある。すなわち、OECDのメンバー政府は開発途上国の地球環境問題への取り組みを支援する活動において、各二国間開発機関がその特有の専門知識や経験を駆使してとくに主導的役割を果たすのである。

7. 本報告のパートIIからパートVは、作業部会が予備的に行った作業であり、そこには支援分析とガイドラインが記載されている。個々の問題に関する推定値はある程度の誤差を前提としている。その推定値はOECDの公式数字ではないが、信頼すべき情報源から入手したものである。個々の問題ごとに政策的勧告が提示されている。そうした勧告には、援助機関が地球規模の問題を取り扱う場合に必要な制度上の機能や専門知識を生み出すための援助機関のための優先的措置や開発途上国への優先援助が盛り込まれている。これらの援助機関向けガイドラインは、現在行われている国際交渉の結果を踏まえて、今後の作業の過程で強化、改定される予定である。

II. 気候変化

1. 背景

8. 地球温暖化および気候変化の問題に関する国際的関心は、「気候変化に関する政府間パネル」 (IPCC)の作業に集まっている。IPCCはUNEPと世界気象機関 (WMO)に支援によって1988年に設立されたものである。その中の3つの作業部会 (WG)が次のようなテーマに取り組んでいる。すなわち、気候変化の科学的問題 (WG I:議長国はイギリス)、気候変化の影響 (WG II:議長国はソビエト)、および気候変化の影響に対応するための戦略とそれを抑制する戦略 (WG III:議長国はアメリカ)である。1990年8月のIPCCの最初の評価レポートの公表、および1990年11月の第2回世界気候会議の政府宣言などに次いで、国連総会決議によって設立された「政府間交渉委員会」 (INC)が気候変化の枠組み条約の作成に関する交渉を開始した。

9. IPCCが最初の評価レポートで下した結論は、気候変化に関する我々の理解はきわめて不正確なものだということである。IPCCによれば、人間の活動に起因する温室効果ガスの大気中の現在までの累積濃度は、1850年以降の二酸化炭素の累積濃度の約50%分に匹敵し、もし何らの対策も講じない場合には、もっとも控えめにみても21世紀中の地球の平均気温の上昇率は10年間に0.3℃になるという。これは過去1万年の間に発生した上昇より速いペースであり、その結果、地球の平均気温は2025年までに現在のレベルより平均1℃上昇し、また2100年までに平均3℃上昇する見込みである。地球表面の平均気温はこの100年間で約0.3ないし0.6℃上昇しているが、1980年代には最高気温年になった年が5年も記録されている。

10. 気候変化の地域的影響の精確な予測は現在は不可能である。しかし一般的な結論を導き出すことはできる。人間が出す温室効果ガス排出の増加を抑制する予防措置をとらない場合は、地球の平均海面上昇率は10年間で約6センチと予想されている。もし海面上昇が1メートルに達すると、36万キロメートルの海岸線に変化が現れ、一部の島国では居住が不可能になり、数千万の人が土地から追われ、低地にある都市は危機に曝され、肥沃な土地も水をかぶり、飲み水は汚染されるだろう。温度や海面水位の上昇のほかにも第3の影響として植物帯の移動が予想される。

11. 被害の影響をすぐに受けてしまう地域や生態系の脆弱な地域では、適応能力が弱いために、農業生産性の低下が起こるものと予想される。一部の地域の生態系は、気候変化の速度が一部の種の適応能力の速さを上回るため、その影響を受ける可能性がある。気候のわずかな変化でも、水資源に大きな問題を引き起こす場合がある。開発途上国では、水とバイオマスはともに重要なエネルギー資源であるが、両方とも入手可能性に重大な影響が現れる恐れがある。全体として、気候変化のマイナス影響を最初に受け、しかもそれがもっとも厳しい形で現れるのが開発途上国になる可能性があると、IPCCは予想している。

12. IPCC対応戦略作業部会は、気候変化に対する取り組みを支援できる抑制対策としてさまざまなものがあることを確認している。そうした抑制対策は、エネルギー・セクター、森林セクター、農業セクターのほか、海岸地帯の管理などを対象としており、その内容は、資源利用、経済政策と財政政策、一般大衆への情報提供と教育、法的規定 (とくに気候変化協定のための提案に関するもの)、さらに技術移転などとなっている。こうした対応戦略はすべての国で採用されることを期待して提示されたものであるが、開発途上国の側にはそれぞれに独自の要求があり、また国際的に十分に対応していくためには外部からの援助が必要である。IPCCの「開発途上国の参加に関する特別委員会」は、開発途上国の状況を適正に考慮し、また開発途上国をIPCCの今後の活動に密接に参加させるよう配慮しなければならないと、勧告した。

13. 1991年3月13日から15日までジュネーヴで開かれた第5回本会議で、IPCCは、気候変化とその影響、とくに海面水位の上昇に対する科学的調査の促進、およびエネルギー・セクター、森林セクターでの影響に関する技術的分析の推進のための作業計画などを採択した。

2. 援助機関のためのガイドライン

14. 気候変化に対応するための総合的活動に関連して二国間援助機関が優先的に取り組むべき対策をいくつか次に示すが、それらは、開発途上国が気候変化に取り組んだ時にその利害関係を明確にするものであり、また地球規模の活動の場でより効果的にその活動に参加できるよう促すものである。IPCCとINCは、開発途上国を、とくに国際交渉において援助するために信託基金を保有している。二国間援助機関が行う活動は次のとおりである。

a) 今後の気候変化枠組み条約において予想される義務とその関連手段に必要な対策の追加コストの見積もり作業について開発途上国に協力する。それには技術的ニーズの確認、それに伴うコストの算定も含まれる。
b) ざまざまなレベルの気候変化による経済およびその他への影響に関する各国の調査レポートの作成に協力し、またその政策をその国の環境調査および国家戦略に組み込む方法について開発途上国に協力する。
c) 温室効果ガスの排出 (排出源と吸収源)に関する総合的な全国調査一覧の編纂、気象関連データ作成のための調査とモニタリングのプログラムなどの作成の支援、さらに全国的な調整メカニズムまたはネットワークの確立なども支援する。
d) 開発途上国の科学者や政策立案者が気候変化に関する国際会議、とくにINCとIPCCの今後の任務に関する国際会議に参加できるよう支援する。
e) 開発途上国の大臣や高官などの意思決定者のためのセミナーを支援する。IPCCの結論やそれらの国の気候変化による影響に関するセミナーである。
f) 一般大衆への情報提供と教育プログラムを支援する。
g) 気候変化の問題への対応に関する意思決定を容易にし、とくに温室効果ガス排出を抑制する制度作りや訓練を支援する。
h) 温室効果ガス排出削減を目的とする国家戦略またはプログラムを公式化し、温室効果ガスの吸収源を増やし、気候変化への適応力を高めるために支援する。

15. 考えられる他の活動

a) 調査やパイロット・プログラムを通じて、気候変化の影響を評価する方法論を開発すること、およびこうした方法論を現行の環境評価手続きに組み込むこと。
b) 開発援助機関の専門知識や経験が気候変化問題に関する国際的な議論において正しく考慮されるようにする手段。
c) 気候変化問題に関して開発途上国を支援するための情報交換システムの確立。例えば、各国の気候変化の調査に関して援助機関と被援助国との間の情報交換などがある。

3. 気候変化が引き起こすエネルギー関連の問題

16. 序章で述べたように本章および以下の章で意図されていることは、エネルギーおよび森林から引き起こされる気象関連問題を基本とする援助機関のためのガイドラインを提案することである。この2つのセクターは開発援助の主要目標である。したがって、ここで取り上げられるのはそうした側面に限定される。

援助機関のためのガイドライン

17. 開発途上国は全地球のエネルギー使用から発生する温室効果ガス排出の約25%を占め、その量は1年間で約6億5千万トンの炭素に相当する。開発途上国の排出絶対量と地球全体の炭素排出量に占める開発途上国の炭素排出量の割合は、経済成長と人口増加に伴って上昇するものと思われる。しかしながら、開発努力を進めていく過程でエネルギーに起因するガス排出の増加をある程度抑制できる可能性もある。その主要な抑制要因としては、現行システムの効率改善や、二酸化炭素の含有率が少ないかあるいはまったく含まないエネルギー資源の供給と需要を拡大する方向への転換、さらには経済的に再生可能なエネルギー資源の全面的利用などを指摘することができる。環境優先型のエネルギー政策を実施する場合には、いかなる対策もその前提条件として、開発途上国が環境問題の複雑さに対する理解を深め、さらに国民と政策立案者があらゆるレベルで目標戦略に参画することが必要である。援助機関は、いかなる形態のエネルギー利用についても、総合的な国の評価、モニタリング・システム、計画システムなどを確立する作業を奨励し、支援すべきである。

18. 経済的に魅力があり、しかも/または地域や国全体にとって環境面で大きな利点があり、同時に気候変化への取り組みにも貢献するような投資機会は、さまざまな分野に存在する。そうした選択肢は開発協力において最優先されるべきである。そうした活動としては、エネルギー節減や、エネルギーの生産、流通、ならびに産業や輸送業や一般家庭などの最終需要における効率改善などがある。そうした目的に投資すれば、最終需要家に供給できるエネルギーを増加させることができるだけでなく、本来それに比例して必要となる一次燃料の消費増加や投下資本の増加を回避することができる (あるいは一次エネルギーの需要を削減させながら、供給は一定のレベルに維持することができる)。

19. 開発途上国でエネルギー効率を大幅に引き上げようとしても大きな障害がある。第1に、エネルギー効率の改善に必要な投資以外にも各種の投資オプションが存在するということである。投資利益率の確実性など、さまざまな理由からそうした他のオプションの方が政府、企業、個人にとってはより魅力的になるケースもある。第2に、エネルギー効率を改善する活動に取り組もうとしても、行政的、制度的、政治的問題に直面する場合もある。したがって、援助機関は優先的援助プロジェクトやプログラムを選択する際に技術的、制度的な制約と同時に、経済的に実行可能なものであるかどうか考慮する必要がある。第3に、多くのケースではエネルギー効率改善の方法やそれに付随する資金面や経済面の利点に関する情報が不足している。

20. またもっとも重視すべき問題は、特定のプロジェクトまたはプログラムに対する支援は、必ず効率的なエネルギー利用を促進するマクロ経済的枠組みやセクター的枠組みのある所で行われるということである。その場合、多くの開発途上国における最大の問題は、エネルギー・コストや他の環境への影響を反映せず、したがって効率的な資源配分を阻害するような価格決定方式である。この問題には補助金制度を支持したり、あるいは市場メカニズムをゆがめたりする公的政策が関係している場合がよくある。したがって企業経営者は総費用をベースにした価格決定方式を導入できるような適切なインセンティブを与えられていない。さらに問題なのは、エネルギー供給者間の競争が欠如しているため、コスト削減対策を作成し、実行するインセンティブが弱いことである。現在行われている補助金制度は、不経済な需要構造や歪曲された需要構造を生み出しており、また間違った資源配分を招いている。エネルギー・セクターの制度的改革を推進するために、こうした議論が行なわれることはよくあることであるが、気候変化という新たな問題の出現によってさらに重要なものになっている。こうした問題を克服する際に援助機関は、開発途上国のエネルギー・オプション分析や国内規則の立案を支援すべきであり、さらに価格決定、訓練プログラム、技術協力、制度的機能の確立などを含む支援を行なうべきである。

21. これまでは、価格や関税制度を含む制度面の改革は主に、政策討議、援助機関協力会議、構造/セクター改善貸付などを通して行なわれてきた。多くの国では補助金制度はかなり大きな重要な位置を占めている。短期間でコストを完全に回収するのは、政治的にも制度的にも非常に困難であろう。場合によっては価格が急上昇するケースもあるからである。したがって援助機関コミュニティは、とくに電力供給においてはコストの回収は最低水準に抑えるようにすべきである。適正な最低レベルとしては、コストの3分の2を回収することを考慮すべきである。それ以下のレベルでは、オプションが1つの場合には援助機関は特定のプロジェクトへの融資を却下する可能性がある。しかし、このような場合でも、エネルギー政策の改革はセクターおよび構造改善プログラムを通して支援すべきである。

短期優先事項

22. 短期間で温室効果ガスをかなり削減できるオプションはさまざまなものがある。以下の提案には、排出量削減の可能性をもつものばかりではなく、大がかりな制度の整備を行なわなくても大きな経済的効果や財政的効果を期待できるものも含まれている。

23. さらに酸性雨の問題もある。酸性雨は化石燃科の燃焼によって発生し、二酸化炭素の吸収源である森林に影響を及ぼすため、気候変化に対しては間接的に影響する。開発途上国が酸性雨を削減するために低硫黄石炭または脱硫石炭を使用する場合には,援助機関からの援助が提供される可能性がある。

24. エネルギーの利用効率を高めるためには、需要家も重要な要因である。第1に、関税制度を改定することにより、エネルギー消費者に節減のインセンティブを与えることになる。第2に、とくに企業の需要家などからの料金の集金方法の改善、あるいは家庭でのメーターの設置など、補完的な手段ももっと重視すべきである。第3に、産業界、オフィス、観光施設、高収入家庭などにも省エネルギーの可能性がかなりある。こうした顧客には情報サービスを提供するとか、エネルギー効率の優れた機器を利用させるようにすべきである。

25. 特定の地域や国によっては、電力供給や消費システムの効率を改善できる場合もある。その選択肢としては、現在の送電系統の最適利用、化石燃料発電所の再利用、それのコージェネレーション・プラントへの転換、供給ネットワークの修復などがある。それに必要な対策は、訓練プログラム、経営能力の改善、予備部品から、大型投資への融資まで1セットで提供することである。そうした投資によって得られるエネルギー・ロスの削減は20%を越えることがよくあり、それ以外にも経済的利点や、単位あたりのエネルギ一消費に対する温室効果ガスの排出量の削減などの効果もある。残留物や森林バイオマスを利用する複合型バイオマス発電システムの利点についても調査してみるべきてある。

26. 代替燃料: エネルギー節減の可能性はあるものの、開発途上国でも、とくに農村開発に伴ってエネルギー需要が増加するので、開発計画においてはエネルギー供給の増加が優先されることは明らかである。開発協力の役割は、温室効果ガスの排出の少ないエネルギー資源の供給拡大を支援することであり、そのためにはとくに燃料を天然ガスなどの二酸化炭素の少ない化石燃料に代替させたり、再生可能なエネルギー資源を使用するようにすべきである。現在約50の開発途上国で天然ガスの埋蔵が確認されているが、実際にそれを利用している国はわずかその半分である。エネルギー問題の長期的な解決を見るまでの過渡期にあっては、一般家庭や工業、電力産業などでの天然ガスの効率的利用を拡大することを最優先すべきである。それと同時に、天然ガスの生産、輪送、供給の段階でのメタンの漏洩、さらに石炭、農業、その他の資源からのメタンの漏洩も防止する必要がある。状況によっては、天然ガス以外にも有望な手段も考えられる。例えば、より低コストの燃料、二酸化炭素の排出が少ない燃科、あるいはエネルギー効率を向上するための直接投資とか、再生可能なバイオマスなどもある。

27. 水力発電: 温室効果ガスをほとんど排出しないエネルギー源として水力発電がある。水力発電所を運転してもほとんどの場合、二酸化炭素は発生しない。ただ、建設段階における貯水によって森林地帯の二酸化炭素の吸収低下 (ヘクタールあたり最大200トン)のために、温室効果ガスの正味排出量の増加が若干認められる。多くの開発途上国では低コストの立地が減少しており、それ以外の立地では送電線がもっと長くなるため、発電所の増強計画は電力料金を改定したのちでなければ資金提供されないケースがよくある。小規模水力発電所は、投資額が少なくてすみ、また環境への影響も少ないので有望と思われる。

28. しかし、水力発電には多くの社会的、環境的欠点がある。例えば地元民の移住、水を経由する病気の増加、河川の水文および形態の変化などである。こうした問題にも対処する必要があり、またマイナスの環境影響に対する補償またはその軽減のための手段に必要なコストは、エネルギー料金でまかなう必要がある。環境影響評価などの環境管理ツールは、プロジェクトの実行に関する意思決定や、環境へのマイナス影響や社会的影響を軽減するために必要な手段を判断する際の基礎となるべきものである。

29. その他の再生可能なエネルギー: 地熱エネルギー、太陽エネルギー、バイオマス、風力などの再生可能なエネルギーは、例えば農村地帯に分散方式で電力を供給するような場合などには、経済的に実現可能であることが知られている。特殊な応用例として、送電系統が接続していない地域への電力供給、給湯施設、保養施設、水ポンプ、およびバイオ残さと送電網を結合したコージェネレーションなどがある。水力発電とバイオマス利用はすでにエネルギー生産においてある程度の役割を果たしている。バイオマスを発電に利用しても、自然成長または移植によって大量に補給されるならば、二酸化炭素の正味の排出増加は起こらない。農村住民にとってバイオマスは重要なエネルギー源であるから木材の燃焼、バイオマスの増殖、その他のバイオマス利用技術における効率の向上に配慮する必要がある。太陽エネルギーや風力を利用する技術もかなり進歩してきたが、普及はまだである。それは、従来のエネルギー源よりコスト高になることも一因であるが、もう1つほとんどの国では再生可能なエネルギーの開発が優先されることがないからである。援助機関から支援する場合には、こうした分野の研究開発を優先させるべきである。化石燃料のエネルギー価格を、長期的な限界コストと環境という外部要因を反映させる方向に調整してきたことから、再生可能エネルギーの経済的競争力が高まってきた。

30. 産業部門のエネルギー効率: 温室効果ガスの排出削減戦略においては、産業部門のエネルギー利用効率の改善が重要な要素になっている。その改善方法は、価格政策、プラントの修復、廃棄物のリサイクル、ロスの削減など、さまざまである。産業部門においてエネルギー節減を促進するためには、エネルギーの価格政策が重要な要因となる。そうした節減効果がもっとも期待できる部門は、金属、石油化学、セメント、肥料、紙パルプなどのエネルギー多消費型産業である。とくに価格体系を改定すれば、既存プラントの修復や改良に投資しても利益をもたらす可能性がある。そうした新規投資を行なう場合には、技術援助、訓練、資金援助が必要になるケースが多い。さらに工業プロセス (紙パルプ、食品、飲料の製造を含む)からの廃棄物を燃料として利用する方法も考慮すべきである。そのほか、天然ガスの輪送システムからのメタンの漏洩、石油精製の際の製油所ガスの放出も削滅できる。そうしたメタンの漏洩は最大5%にも達しており、その温室効果ガスとしての影響を考えると、その漏洩削減は温室効果ガス排出の全体的な抑制につながることになる。

31. 輸送産業のエネルギー効率: 開発途上国の輸送産業によって排出される温室効果ガスの比率はしだいに増加しているので、効果的な措置が必要になっている。さらに、これら諸国の輸送産業は、温室効果をもたらすオゾン前駆物質 (NOxとCO)をかなり高い比率で放出する。この輪送産業は、二酸化炭素やその他の温室効果ガスまたはその前駆物質の排出を (効果的に)抑制する技術や手段の点では先進国より大幅に遅れている。自動車エンジンや車両設計の改善によって燃料消費料を削減することはできても、そこから排出される二酸化炭素を除去できる技術はまだ開発されていない。したがって、自動車を改良すれば、二酸化炭素の排出をかなり削減できる可能性がある。開発途上国は全般的に所得水準が低く、技術的排出基準や燃料補助金なども実施されていないため、自動車から排出される二酸化炭素は先進工業国よりも多くなる傾向がある。例えばオゾン前駆物質であるNOxやCOをOECDで認められている水準近くまで削減する排出基準の導入や実施の面で開発協力が進めば、二酸化炭素以外でも環境への好影響を期待することができる。また、それ以上に有望な対策として都市の公共輪送手段の改善、とくにバス輪送の燃料効率の改善を指摘することができる。

32. 家庭におけるエネルギー効率: 電力、マキ、石油製品、石炭を消費する一般家庭も二酸化炭素の排出源である。選択の幅は少ないかもしれないが、エネルギー消費を削減する措置を取ることは可能であり、その方法としては、都市部や農村部における住宅設計の改良、中・高所得者層向け家電製品の効率改善、低所得者層向け料理用マキストーブの効率改善などが考えられる。援助機関に可能な主要な援助対象としては、既存技術を各国の事情に合わせて適用するという方法、さらに適切な技術の普及を支援するという方法もある。建築物や屋内空間の設計が気候に適合していないため、かなりの量のエネルギーが浪費されている。気候に合わせた家屋の設計やレイアウト、自然換気の効率的利用を行なえば、住居、事務所、工場,学校、病院などの冷暖房に必要なエネルギー消費をかなり削減できると考えられ、そのための開発援助プロジェクトを検討すべきである。

33. 全体的には援助機関は、環境に好影響をもたらす投資を選択する際に発生する追加コストに融資する形でエネルギー部門からの二酸化炭素、その他の温室効果ガスの排出を削減する開発途上国の努力を支援すべきである。地球環境ファシリティとしての二国間援助機関と多国間援助機関の活動の場はここにある。

長期優先事頂

34. 長期的には別途のオプションが必要になるものと考えられる。その1つは技術開発である。それは従来の化石燃料技術の熱力学的効率の向上を可能にするものであり、また代替技術の応用範囲を広げるものでもある。もう1つは、エネルギー利用に伴う外部コストの負担である。開発途上国においては価格決定の際にこのコストを考慮する場合がある。

35. 先進国の発電所では、先端的燃焼技術、複合サイクル、無公害石炭燃焼技術などの進んだ技術によってかなりの熱効率の向上が可能になっている。開発途上国では、太陽エネルギー、燃料電池、脱硫技術、バイオマスなどの適切な代替技術を国情に合わせて利用する際にも技術開発が有効な手段になる。太陽発電設備などの価格は今後低下していくものと考えられるので、応用範囲が広がるだろう。コストの低下は市場規模に大きく影響し、また生産規模効果による経済性の向上もかなり期待できる。こうした革新技術を、主に石炭を利用している開発途上国にどの程度導入できるかを判断するためには、調査が必要である。

36. 先進国ではエネルギー利用に伴う社会的コストと環境コストを完全に含めてエネルギー価格を決定しており、それに見合う形で需要が調整されるので、GNPに占めるエネルギーの比重も低下し続けることになろう。各種のエネルギー資源の構成比率は各エネルギーの価格変動に比例して変化するので、代替エネルギーや再生可能エネルギーに有利になるものと考えられる。開発途上国でも、環境コストだけでなく金融コストも含めた形でエネルギー価格を調整する必要がある。

37. 上記のような分析にもとづいてDAC加盟国は、開発計画において需要家に対するエネルギー供給を優先的に増加させることで合意している。これら諸国はそれによって二酸化炭素の排出量が増加することを知っているが、エネルギーに起因する温室効果ガスの排出増加を開発協力の枠組みの中で抑制する方法もいろいろ選択の幅があることも承知している。DAC加盟国は、開発途上国におけるエネルギーに起因する温室効果ガスの排出抑制を、下記のような方法を通じて協力することで合意している。
a) 全国的なエネルギー計画の立案やモニタリング・システムの確立に対する支援;
b) 家庭、工業、輪送業、農業における需要家と生産者の双方が行なうエネルギー効率向上に対する支援; とくに重点が置かれるのは、制度の制定、訓練、人材開発、技術移転、環境保護およびエネルギーコストである。
c) 持続可能な全国的エネルギー経済体制の確立を目的とする長期プロジェクトとプログラムに対する支援; とくに重点が置かれるのは、エネルギー価格政策、コストの回収、二酸化炭素排出の削減である。
d) 再生可能エネルギー資源の研究およびその利用分野の拡大、とくに農村での利用拡大に対する支援;
e) 地球温暖化ガスの排出を抑制し、しかも新しいタイプのエネルギーや再生可能なエネルギーを重視し、エネルギーの経済性を向上させる技術の研究とその移転に対する支援;
f) 再生可能な非燃焼型エネルギー資源であるバイオマスの広範な利用の可能性、とくに農村部における可能性に関する調査;および
g) 熱効率を改善し、輪送段階でのロスを削減する技術を含む新技術の応用分野に関する調査ならびに代替技術を各国の実情に合わせて適用しうる可能性に関する調査。

4. 気候変化が引き起こす森林関連問題

援助機関のためのガイドライン
38. 森林が国家経済にもたらす利点を考えると、森林を保護し、その管理方法を改善するための行動は急務である。気候変化についていえば、人間の活動から発生する温室効果ガスの年間排出量の14%は森林伐採によるものであると、世界資源協会 (WRI)やIPCCは推定している。従来の森林管理を改善し、植林を行なうことが、排出を抑制する重要な手段の1つであることをIPCCは確認している。森林は自然が与えた二酸化炭素吸収源としてきわめて重要なものであることを考えると、森林の保護と管理による気候変化の抑制対策は当然の措置である。森林伐採も植林も、開発政策や森林セクターとその外部からの投資の対象になりうるものである。したがって、二国間援助機関による効果的な措置がきわめて重要となるが、すでに多くの二国間援助機関が森林に対する援助を開始しており、さらにその強化を計画している。

39. 持続可能な形での森林利用が別の利用形態より経済的に有利であると考えられる場合にのみ森林伐採が減少することが一般的に認められている。したがって、開発援助政策は最初は国家的ニーズに対して行なわれるべきである。それは、国家経済と地方住民のニーズ、持続可能な森林管理の促進策、現在の森林地帯以外での持続可能な農業開発、および土地所有と貧困の解消の問題を優先するということである。森林が現在地域社会に提供している市場とは無縁の便益にも配慮する必要がある。

40. 二国間援助機関の活動ガイドラインは、したがって、地球規模での気候の安定化という目的と熱帯諸国レベルでの森林資源と森林伐採後の土地の持続可能な開発という目的との間の利害を最大隈に一致させることを追求するものでなければならない。気候に関する基本的な目標は、伐採による森林破壊の進行の減速化および再植林と造林による大気中の炭素吸収量の増加による二酸化炭素とそれ以外の温室効果ガスの正味排出量の削減である。国家規模と地球規模の環境目標を達成するために必要なその他の方法としては、森林管理と伐採の効率改善、木材の利用、および炭素貯蔵物である木材と木材製品の寿命の長期化などがある。

41. 最終的には、地球気候の安定化に対する森林セクターの最大の貢献は、50年ないし75年かけて人間の気候に対する影響をより安定的なものに変えていくという不可欠なプロセスの中で行なわれるのであろう。集中的再植林、地球規模の森林資源の再利用、それを持続させる管理体制などがいったん確立されたあとは、化石燃料に代わるエネルギー源として、さらには他の工業原料に代わる低コストの材料として、木材消費が増加するにつれて、森林セクターから気候への正味の好影響は減退していく場合がある。

42. 多くの熱帯諸国の国家的目的は、食料、それ以外の基本的な生活必需品、外貨収入などの短期的要求に支配される場合が多い。そのため、その目的は地球レベルの環境目的や国民の長期的な利益と矛盾することがよくある。そうした状況のため自然森林を土地バンクとして利用するという結果になっており、その場合には収穫の継続や増加のために管理が行なわれる代わりに、木材資源、肥沃な土地、生物多様性が徐々に失われている。その結果、欠落している持続可能な国の管理能力を構築するために、また伐採によって劣悪化した土地の生産性を回復させるためにかなりの再投資を伴う修復作業が現在必要になっている。そのような時期には多国間援助機関と二国間援助機関のコミュニティや民間セクターから、もっと多くの調整済みの開発援助や持続的開発援助が要求されるようになるだろう。また援助援関は、他のセクターで普遍に見られるより高い割合で現地に賛用を投入するように配慮すべきであろう。

43. 二国間援助機関の活動のガイドラインと優先順位は、多国間援助機関の活動のガイドラインおよび優先順位と調整する必要がある。FAOの事務局長によって提唱され、1990年5月に作られた「熱帯森林行動の独自審査プログラム」 (TFAP)は、森林セクターに対する開発援助の指導と調整を行なうための合意済みの枠組みとして、再活性化と支持に必要な適切な基盤を国際援助機関コミュニティに提供するものである。この審査レポートは、TFAPの明白な目標として環境保護を明確に盛り込むこと (国民生活の支持体制および生物多様性と気候変化を含む地球の保全に対する熱帯森林の貢献度を高めること)を勧告している。改訂版のTFAPは、どの国においても他のセクターと連携した森林セクターのための国家的開発計画の作成と実施を通じて機能するものであり、国家的行動の枠組みを提供するものになる筈である。国家レベルでのこうした枠組みは、地域レベルまたは地球レベルでもっと適正に実行できる分野での国際行動も含めて作成すべきである。

44. 国際連合食糧農業機関 (FAO)はその組織下にある地球レベルや地域レベルの政府間森林機関を通して、森林セクターに発生する問題を処理するための技術援助を提供することができる。国際熱帯木材機関 (ITTO)も持続可能な森林管理の推進の面で特殊な役割を果たしている。二国間援助機関は、ITTOのガイドラインやその種の規定を実施する意思をもつ国や団体や政府機関に対する適切な資金援助と技術援助の規定を含む持続可能な熱帯森林管理に関するITTOのガイドラインの広範な適用を推進すベきである。それ以外の関達業務としては、FAOが行なう「地球森林資源評価」とその関達分野の情報の収集と配布、UNEPとIUCNの生物資源と生物多様性の保全に関する業務、「国際森林調査機関連合」 (IUFRO)と「国際農業調査に関する諮問グループ」 (CGIAR)の調査業務などがある。そのほかにも、あらゆるタイプの森林の管理、保護、持続可能な開発について、法律ではないが拘束力をもつ政府の規則文書に関する交渉がUNCEDによって継続されており、この場合には開発途上国の特殊事情が考慮される。それにもかかわらず、長期的に持続可能な熱帯森林資源開発は、各国の国家機能の進展状況に大きく左右されるのである。

45. 森林伐採と土地の破壊は、このセクターでの過去の投資不足の結果であると同時に、資源の酷使の結果であり、そのため他のセクターや同業者や個人の短期的需要に対して環境面からの影響が現れている。森林セクターに影響している政策的歪みを修正するだけでもかなりの改善が可能である。また、環境管理プロセスは、森林セクターに関する環境影響評価 (EIA)や長期の経済費用と開発計画全体の利点の総合分析などのツールを含んでいるので、国民経済において適切な開発決定を行ない、森林セクターを優先するためには不可欠の要素である。EIAに関する情報は広く利用できるものにしなければならない。

46. 地域の利用者グループがトップダウン方式は自分たちの社会・経済的目的に適合しないと考える場合には、一般的にその方式では効果が現れないことが立証されている。したがって、政策やプログラムへの介入は、地域社会がその設計に効果的に参加できるように行なわればならない。それと同様に、プログラムの実行も、影響を受けるグループの了解と利害を組み込んだ参加型の計画プロセスにもとづいて行なうべきである。持続可能性を実現しようとするならば、森林管理について地元民やその代表者に適切な役割を与えるように配慮しなければならない。

短期優先事項

47. 重要なことは、伐採の減速化と造林および再植林の推進とでは、もっとも早く効果を上げうる対策が異なるということである。農村住民の生活上のニーズを満たすということは、基本的には国の政策とその対応策の問題である。

48. 伐採は土地所有形態、土地投機、焼き畑農業、家畜の放牧、マキの需要、持続を不可能にするような木材生産、過剰放牧、鉱業開発、貯水池の建設などに伴って発生するが、その主な理由は熱帯諸国ごとに異なり、どの国も森林の保護と開発については独自の優先策を取っている。各国が適切な国家政策の枠組みの中で正当な必要性に応じて適正な措置をとるという国家戦略を採用することが、優先性を確立するための基礎になるべきである。

49. 国家レベルのプログラムは必要に応じて外部からの援助プロジェクトの支援を受ける必要があるので、そのプログラムの正確な定義と優先順位の決定は、国内事情に合わせ改定後の政策の枠組みの中で行なうべきである。多くの国では、総合的な土地利用計画と国の法規の枠内で永続的な森林財産を指定し、それを保全するため、さらに森林資源、森林保護戦略にとってもっとも重要な動植物、生物資源などのマップとリストを作成するためにも、直ちに行動を起こす必要がある。

50. 各国の国家プログラムが目標どおりに実行できるかどうかは、セクターの適切な政策、目標、行動ガイドラインなどに左右されるが、そのほかに十分な人材や資金も必要である。熱帯諸国ではほとんどの場合、森林セクターは制度的にも資金的にも大きな弱点があるので、援助機関コミュニティから直ちに資金援助ならびに技術援助を提供する必要がある。資金も人材も限られた状態にあるので、そうした援助は、援助機関からの資金援助の優先順位の変更を意味することになり、さらに訓練と現場体験を実行する強化計画による森林セクターの技術協力プログラムに利用できる限定的な外国の専門知識の強化計画をも意味する。

51. 訓練計画やインフラ開発により熱帯諸国の国家機能を向上させる活動の強化はきわめて優先度の高い課題である。その行動に含まれるのは、森林関係の技術的能力や科学的能力の開発だけではなく、森林セクターの計画立案や政策決定に必要な社会的・経済的能力、さらには地域社会に関する協議手法の改善なども含まれる。

52. すべての熱帯諸国では持続可能な森林管理 (持続可能な森林伐採とその他の林産製品から得られる経済的利益の最大化を含む)に必要な国内用ガイドラインの作成が緊急課題である。ITTOが1990年5月に採択した熱帯自然林の持続可能な管理に必要な国際的ガイドラインは、国内用ガイドラインを作成する際の基本になる。しかし、国内用ガイドラインを作成し、適用する際にはほとんどの場合、外部からの援助が必要である。したがって二国間援助を高い優先順位で適用すべきである。

53. 援助は、長期的なものであっても短期的なものであっても、つねに慎重な準備と分析、文書化が必要である。TFAPにおいてはプロジェクトの準備や評価に必要な能力の不足が明らかであった。森林セクターの活動が今後拡大していくにつれて、その不足が厳しい制約条件になる可能性がある。この制約を取り除くためには、援助機関がまとまって行動する必要性がきわめて大きい。すなわち、二国間援助機関が個別に行動するだけでなく、共同して行動する必要もあるものと思われる。

長期的優先事項

54. 人口増加と土地破壊の進行に直面している中にあって、熱帯森林資源の長期的保護と持続可能な管理は、土地の配分から見ても、また農業、植林、農林業の本質から見ても、土地利用の効率の向上と維持に左右される状況にある。要するに、それはきわめて集約的な長期プログラムだということである。乾燥したサバンナから雨林までの幅広い熱帯の樹種の多様性と、その種の中の遺伝子の多様性は、生産性の向上や維持にとってきわめて重要な基礎をなすものであるが、まだその解明はほとんど進んでいない。成長速度の速い事業用植林に利用される樹木について研究した結果、数百%という高い生産性が確認されている。現在、とくに農林業用の多目的樹木の生産性を向上させる研究を強化する必要が生じている。したがって、二国間援助によって、国の研究能力の強化が最優先されなければならない状況である。

55. きわめて厳しい環境にある地域、例えばアフリカのサヘル地帯やそれと類似した条件をもつアジアやラテンアメリカの一部の地域などでは、人口や家畜の増加のために植物や土地の環境収容力の漸進的低下が進行しているため、生産性向上の必要性は非常に大きい。水分や栄養分の不足という環境に耐えられる自然発生的体系に関する集中的研究から、きわめて劣悪化した熱帯の土地の生産性を回復するための基礎知識が得られる。熱帯の多湿地帯と季節的に乾燥する地帯の劣悪化した広大な土地に森林を復活させることができれば、その地域の経済ばかりでなく、地球全体の気候の安定化に大きく貢献するものと思われる。

56. それと同時に、豊富な種をもつ複合的な熱帯雨林の持続可能な管理は、持続可能性という基礎の上で経済的利益の最大化を達成できるかどうかに左右される。気候変化に対する反応や敏感性を含む生態系に関する理解をもっと深めるためには、持続可能な管理を促進させるような対策のほかにも、より長期的な対策も必要である。その種の対策としては、分類学的研究、動植物の品種調査、森林動態学に関する生理学的・生態学的研究などがある。先進国の科学研究集団も含んだ形の二国間援助は、共同研究によって熱帯諸国の専門知識の向上に寄与することができる。

57. 森林と気候変化の関係に関する上記の分析をもとにして、DAC加盟国は次のような方向に作業を進めることで合意した。
a) TFAPに関する国際代表者協議フォーラムの早期設立と運営。
b) 持続可能な森林管理に関するITTOガイドラインの実施とITTO活動の強化。ここでは、生産国と消費国が共同して、熱帯木材の国際貿易と森林の保護および持続可能な管理との間にもっと前向きの関係を確立する。
c) 開発途上国の国全体の能力を向上させる方策。その方法としては、森林関係の技術的専門知識と関連する科学、森林セクターの計画立案と政策立案に必要な社会・経済的専門知識、地域社会関連の協議手法の改善などを網羅した訓練計画とインフラ開発がある。
d) 森林研究の強化。とくにCGIARを通じて行なうもの。研究対象としては、とくに熱帯雨林の管理、極度に劣悪化した熱帯の土地の生産性の回復、および農林業における原産種の多目的樹木の利用などを取り上げる。
e) 開発途上国との二国間関係の枠組みを広げて森林伐採の根本的な原因に取り組むプログラム。そこでは、政策問題の分析、および持続可能な森林管理を促進しなければならない国家政策を再重視する必要性の分析も含まれる。もう1つ、土地所有、持続可能な農業、土地利用計画、国内の代替エネルギー源などに関するプログラムも対象となる。

5. 海面水位上昇

背景

58. IPCCの科学作業部会 (WG I)は、1990年8月に作成した報告書の中で、地球の海面水位は過去100年間に年平均1.0-2.0mmずつ上昇してきたという結論を報告している。この作業部会の結論は、海面水位は地球全体で一貫して上昇し続けてきており、その原因はほとんどが気候変化に関係しているように思われるというものである。今世紀になってから地球の平均海面水位の上昇が加速されたという明確な証拠はないが、今世紀は前の2世紀より海面水位上昇が速いという証拠は若干ながら存在する。海面水位上昇の主要な原因は、熱による海洋の膨張とグリーンランドの氷床の先端にある氷河の融解量の増加と思われる。

59. 今後の海面水位の変化についてはさまざまな予測が行なわれている。IPCCの「成り行きにまかせる」 (すなわち、何らの対策も講じない)シナリオの場合には、地球の平均海面水位は2030年には現在より8~29cm高くなるとしており、もっとも可能性の高い数字は18cmである。また2070年の上昇推定値は21~71cmで、その場合のもっとも可能性の高い数字は41cmである。主要な温室効果ガスの排出量がかなり減少するとしても、気温の上昇とその結果である海面水位の上昇は回避できないのである。IPCCの科学作業部会の結論は、21世紀には1m以上の海面水位の上昇はないだろうとしている。かりにそうだとしても、「成り行きにまかせる」シナリオで示唆されている上昇速度 (そのもっとも可能性の高い数字)は過去100年間に発生した数字の5~6倍である。

60. そのような海面水位上昇が起これば、海岸線は数百メートルも陸の方へ後退し、海水は護岸施設を乗り越えることになる。海からの浸水により人命、農業、家畜、建物、インフラストラクチャーなどが脅威に曝されるだろう。また海水は内陸の帯水層や河口湾にまで入り込み、上水道、農業、貴重かつ珍重な生態系にも影響を及ぼすだろう。

61. 海面水位上昇によって大きな影響を受ける国もある。例えば、バングラデシュ、ヴェトナム、エジプトなどの護岸施設のない河口デルタでは、潮位が1m上昇すれば水没する土地に800万ないし1000万の人が住んでいるものと推定されている。多島海や環礁に存在する国に約50方の人が生活しているが、それらの国土のほとんどは平均海面水位より3m弱の高さしかない (例えば、モルジヴ、マーシャル諸島、ツヴァル、キリバチ、トケラウなど)。それ以外の多島海国や島国は多くの海岸や耕地を失い、厳しい経済的社会的破綻をきたす可能性がある。

援助機関ガイドライン

62. IPCC対応戦略作業部会 (WG III)の沿岸地帯管理小グループ (CZMS)は、海面水位上昇から人命と財産を守る手段として次の3つの対応策があることを確認した。すなわち、撤退と適合と防護である。撤退の場合には、海水の侵入から土地を守る努力はいっさい行なわないので、沿岸地帯は放棄され、生態系は内陸へ移動する。適合の場合には、危険な状態ではあっても住民は土地の利用を継続するが、土地を浸水から防護することはしない。このオプションでは、緊急用の浸水防護壁を建設し、建物の下にパイルを入れてかさ上げし、農業は養殖漁業に転換し、塩水に強い作物を植えるなどの対策を講じる。防護の場合には、海水の侵入から土地を守るために、海岸に護岸や堤防などの強固な施設を建造し、また砂丘や植林など、自然になじむ対策を講じる。

63. 最適な対策を決定するためには、海岸の低地の標高に関する情報や、環境問題、社会・経済的問題、法的問題、制度的問題に関する情報が必要である。ごく一部の国を除いて、危険に曝されている人の数や開発事業の規模の判定に役立つような信頼できるデータはほとんど存在しない。

64. CZMSの結論によると、少なくとも予想可能な将来においては、海に面している国では海面水位上昇による影響はほとんどの場合きわめて深刻ではあるが、適切な措置を講ずれば制御することができる。したがって、この場合に重要なことは、それらの国が適切な海岸防護措置を講じて、現在および将来の悪影響を回避することである。この問題がとくに重要な意味をもつのは小さな島国の場合であり、援助機関がそれらの国に援助する場合にはとくにその点に留意する必要がある。

65. DAC加盟国は、国境に接している沿岸地帯の管理についてはガイドラインの適用範囲を考慮すべきである。その場合のガイドラインには、沿岸地帯の海面水位上昇やその他の気候変化による影響に関するすべての問題に対処する場合の二国間協力と多国間協力の適用範囲が示されるべきである。またこのガイドラインは、国際的に役立つ参考資料を作成する場合や、目標や目的を明確にする場合に役立つものと考えられる。

66. このガイドラインに盛り込むべき内容は次のとおりである。
a) 沿岸地帯の海面水位上昇およびその他の気候変化に伴う影響に関する調査を行なう組織に対する支援;
b) 沿岸地帯の海面水位上昇およびその他の気候変化に伴う影響を監視するための国際協力;
c) 危険に曝されている機能や地域を確認するために行なわれる沿岸地帯の体系的な地図作成や資源評価に対する協力;
d) 沿岸管理プログラムの作成に協力する国に情報提供や技術援助を行なう国際貢献への支援;
e) 沿岸地帯の海面水位上昇およびその他の気候変化に伴う影響に対処するための国家間の情報、専門知識、技術の交換;
f) 沿岸地帯の海面水位上昇およびその他の気候変化に伴う影響という問題に関する情報普及活動;
g) 必要に応じて環境価値を保護できるような沿岸地帯の管理;
h) 隣接諸国の沿岸地帯に損害を与えるような措置の回避;
i) 暴風による高潮に襲われた沿岸諸国に対する緊急援助の実施。

67. DAC加盟国は開発途上国と共同で、沿岸地帯や島の人口と危険に曝されている農業生産や工業生産を確認する調査に協力すべきである。さらに、気候変化の影響を受けやすい環境や社会・経済的体制の評価方法も開発しなければならない。そうした調査に含まれるものとしては、海面水位上昇に対処するための沿岸地帯の管理計画、危険に曝されている沿岸資源の評価、ならびに教育、訓練、技術移転による国家能力の向上に関するケース・スタディがある.例えば、世界各地の島国や広い河口デルタをもつ国の地理的多様性、あるいは漁業と農業と観光業など、危険に曝されている国に共通する特殊な資源利用事業のリスクといった、ケース・スタディの選択規準も作る必要がある。こうしたケース・スタディによって、海面水位上昇に対処する方法 (撤退/居住地移動、適合、または防護)ならびに個々の選択の際に付随する環境問題や社会・経済問題を分析すべきである。

68. 開発途上国は2000年までに制度的適応能力を整備して、沿岸管理プログラムを作成し、その実施手段を含む規則を確立しなければならないが、DAC加盟国はそれを支援すべきである。要求される技術的適応能力は、訓練プログラム、専門家のアドバイスや適切な装備によって必要なレベルにまで引き上げるべきである。

69. 各国は、沿岸地帯の開発によって海面水位上昇に対する弱点が進行しないようにしなければならない。海面水位上昇に対する構造物による対策はまだ十分ではない。しかし、沿岸部のインフラストラクチャーや防護設備の設計と設置箇所に関しては、気候変化による海面水位上昇やその他の影響も十分に考慮すべきである。この点に関しては環境影響評価が役に立つ筈である。そうした要因を構造物の設計段階で考慮すると、あとから建造し直すより低コストですむ場合がある。河川の水位やダム、マングローヴ地帯やその他の湿地の農地や居住地への転換、サンゴの採取、低地における居住者の増加などは、とくに検討を要する問題である。

70. すべての海岸諸国では、浸水する恐れのある地域を確認しておく必要がある。また適応可能な対応策を評価する必要がある。海岸諸国は2000年までに、総合的な沿岸地帯管理計画を実施すべきである。具体的には次のような手法がある。海岸および資源の利用、情報収集と定期的な更新、土地利用計画における環境目的、海岸水域の計画立案、保護の必要性などに関する国の政策目標の設定; 環境影響評価の利用、大衆に対する教育、大衆の意思決定への参加; 必要な法規の作成と制度の整備 (例えば、全体的な海岸戦略へのセクターからの投入を調整できる主導的行政機関の設置など); モニタリング手順と実施手順など。こうした計画は、地球的気候変化による海面水位上昇やその他の影響に対応できるものでなければならない。また、住民に対する悪影響は最小限に抑制されなければならず、しかも沿岸部の重要な生態系を保護し維持することの必要性も認識していなければならない。

71. 海面水位上昇の影響に対する国際的関心を持続させる必要がある。UNEPなどの国際機関を、例えば地域海洋プログラムを通じて強化することにより、海面水位の変化に対する関心を高め、特定地域に関する"地域の"国際海岸地帯管理計画を立案し、また計画立案に必要な体制作りを行なう必要がある。そうした計画に対する勧告を実行し、定期的に更新する場合には、参加国政府からの融資や援助資金を利用できる可能性がある。

72. 海面水位の変化や適用可能な対策に関するデータや情報は広く普及させる必要がある。気候変化、海面水位や沿岸部への影響、および各種の適用可能な対策に関するデータや情報を収集・交換する方法は、関係者を加えて開発すべきである。沿岸部の管理計画を立案する場合には、こうした情報を開発途上国にも提供することがきわめて重要である。海面水位上昇によって危険に曝されている沿岸部の資源、適用可能な技術、および実行可能な対応戦略に関するデータベースを2000年までに完全に運用できる状態にしなければならない。このデータベースのフォーマットは、上記のケース・スタディ・プロジェクトにおいて定義することが可能である。この種のデータベースは、沿岸諸国間の情報や知識の交換を促進させるだろう。

73. 上記の分析とIPCC対応戦略部会の勧告にもとづいて、DAC加盟国は下記のような作業に着手することに合意している。
a) 沿岸部の管理に関する国際的ガイドラインの必要性の検討;
b) 沿岸部や島における気候変化による海面水位上昇やその他の影響の可能性に関する調査とモニタリングに対する援助;
c) 沿岸部管理計画に必要な体制能力ならびにその実行に必要な規則と方法を確立するための開発途上国に対する援助;
d) 住民や自然資源 (農業生産や工業生産を含む)への影響に関するリスク評価方法とそれに付随する計画立案方法の作成に対する支援;
e) 国家間の情報、知識、技術の交換、ならびに沿岸部や島における気候変化による海面水位上昇やその他の影響の可能性の問題についての住民への情報提供と政治的認知の促進;および
f) 暴風による高潮やサイクロンの災害に見舞われた沿岸部や島国に対する緊急救済策の適用。

III. オゾン減少

背景

74. 人工的に製造される特定の分解されにくい化学物質、とくにクロロフロロカーボン (CFCs)とハロンの作用によるオゾン層の減少は、1970年代から問題になってきた。オゾン問題の重大性に関する科学的認識が向上する一方、その問題に取り組むためには国際協力が不可欠であるという認識も生まれ、そうしたことから「オゾン層保護に関するウィーン条約」が1985年3月に調印された。ウィーン条約には、オゾン層に対する脅威に対処するために予防措置を導入するという考え方が採用されており、そこでは調査と報告に関する一定の義務が定められていると同時に、オゾン破壊物質 (ODS)の排出を規制する特定の議定書に関して合意を得るためのメカニズムも述べられている。

75. この条約が採択されてから30ヵ月以内に、条約当事国は5種類のCFCと3種類のハロンを主要なオゾン減少物質に認定する議定書と、1986年の数字を基準としてCFCの生産と消費を1998年までに50%削減し、1992年からはハロンの生産と消費を凍結するというスケジュールに合意した。この議定書では、開発途上国はオゾン減少にあまり影響を及ぼしていないが、将来及ぼす可能性があることを考慮して、人口1人あたりの消費量が0.3kgを越えない限り、10年間の猶予期間を与えると規定した。この合意が「オゾン層を減少させる物質に関するモントリオール議定書」と呼ばれるもので、1987年9月に署名が開始され、1989年1月に施行された。1990年6月までに60カ国がこの議定書に署名したが、その中にDAC加盟国はすべて含まれていた。これら当事国はCFCの生産と消費の90%以上を占めている。

76. モントリオール議定書の交渉過程においても、オゾン減少の科学的根拠がさらに多く示され、その不安が増幅された。すなわち、1985年に南極大陸の上空でオゾンホールが発見されたことから、それに対する不安が一気に高まった。しかも、CFCが地球の温暖化にかなり影響していることも明らかにされた。不安をつのらせた科学者や環境グループはODSの全廃を主張し始めた。

77. こうした状況下で、モントリオール議定書によって開始された審議過程では知識を拡大し、対策を進める方針が決定され、その結果オゾンの科学的評価、環境への影響、技術審査、および経済的評価の4つのパネルを設置し、全世界から数百人のスペシャリストを集めて、その知識を結集させた。これらのパネルの作業は、1990年6月のロンドン会議におけるモントリオール議定書の改定準備に寄与した。また国際的経験の交流を促し、その結果、利用しうる最良の技術に対する共通認識の確立にも寄与した。モントリオール議定書の新しい緊急スケジュールを実施する際には、工業国にとっても、また工業国と開発途上国が協力する場合にも、技術審査パネルの報告書がとくに役立つものと思われる。

78. 次に示すパネルからの報告書は、開発協力を促進させる場合に有効な情報を提供するものである。
― 経済的評価パネルの最終報告書、1989年8月;
― 技術審査パネルの報告書、1989年6月30日;
― 冷凍、エアコンディショニング、ヒートポンプの技術オプションに関する報告書、1989年7月30日;
― 軟質発泡体および硬質発泡体の技術オプションに関する報告書、1989年6月30日;
― 電子製品、脱脂、ドライクリーニング用溶剤の技術オプションに関する報告書、1989年6月30日;
― CFCのエアゾール、殺菌剤、その他の用途に関する報告書、1989年6月30日
― ハロン消火剤に関する技術オプション報告書、1989年6月30日;
― 国内のケース・スタディに関するTOR (調査アンケート案を含む)。1990年1月のワークショップで最終合意されたもの。

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