感想文

TEMM19ユースフォーラムに参加して

崎山 由香
崎山 由香

酪農学園大学大学院

ユースフォーラム=出会い+刺激!

私は大学で野生動物管理学(狩猟管理学)を専攻し、現在はロシアの野生動物管理制度について研究しています。3年前から狩猟にも挑戦しています。ユースフォーラムを知ったのは、参加経験のある先輩からの勧めがきっかけでした。『環境』と『国際』がキーワードであるTEMM19ユースフォーラムは、海外の事例研究をする私にとってぴったりだと思いました。さらに、先輩の『北海道(地方)から世界に飛び出せ!』の一言で、本フォーラムへの応募を決心。どんなメンバーが集うのか緊張しながら事前勉強会に臨んだ時の、あの緊張とワクワク感は、今でもしっかり覚えています。

事前勉強会から当日までの感想は一言で表すと『刺激で溢れていた5カ月』です。その理由は2つあります。

一つめは、様々なバックグラウンドをもつ人たちとの出会いです。国内の様々な地域から、SDGs、森林管理、環境倫理、野鳥の保全、狩猟など、多様なバックグラウンドをもつメンバーが集まりました。準備を重ねるなかで、日本代表の共通認識である『人と自然のつながりの必要性』をどのように表現するのか、何度も何度も話し合いを重ねて試行錯誤しました。話し合いを通して、皆さんの考え方や価値観の違いを知り、議論できたことは大きな収穫で、大変勉強になりました。その集大成として『WA(和・環・輪)』を骨子としたプレゼンテーションを作成し、中国・韓国ユース代表の方々に日本代表の想いをしっかりと伝えることができました。

二つめは、環境問題に対する日中韓の共通認識・課題の発見です。「中国と韓国の環境問題に対する認識はどのようなものか」「3か国の共通の課題は何か」。日本に住む私にとって、それは大きな疑問でした。ユースフォーラムで「人の自然に対する認識の不足」「教育の改善」「予算の問題」などが3か国に共通する課題であることを知り、国境を越えて協働し解決していかなければならない、解決していきたい、と強く感じました。

この度、私たち日本代表は「TEMMを核とする日中韓のユースをつなげるプラットフォームの構築と継続(WA)」を提案しました。環境問題を共に解決するために、つながりを作ることはもちろん大切です。しかし、継続は力なりという諺があるように、つながりを継続させていくことがより重要であるからです。今回参加したメンバーを中心に、必ずこのWAを実現したいと思っています。日本全国で活動する多くのユースが、TEMM19ユースフォーラムのような国際会議の場を経験するきっかけづくりが必要だと考えます。そのために、まずは北海道での情報共有・拡散に取り組んでいきたいと思います。

最後になりますが、TEMM19ユースフォーラムに参加するにあたり、関係者の皆さまには大変にお世話になりました。この場を借りて深く御礼申し上げます。

外谷毅史
外谷毅史

一橋大学大学院

省察的な実践としてのTEMM

2017年8月23日から26日まで、韓国水原市で開催された第19回日中韓環境大臣会合(TEMM19)のサイドイベントであるユースフォーラムに、私は日本ユースとして参加の機会を得た。4日間という短い期間ではあったが、「生物-文化多様性と若者の参画」について、自身の視野を広げる貴重な学びの場となった。以下では、フォーラム全体を通して得た気づきや感じた事などについて、簡単に述べたい。

まず、フォーラム参加の動機であるが、私は大学院にて人間の生命医療や福祉、環境、研究に関する倫理であるバイオエシックスを専門に研究しており、当分野の学修知識や経験を活かして、人類が直面する環境問題や地球倫理などについて、共通の未来を生きる日中韓ユースと議論や交流に励みたいと感じた事が挙げられる。また、自身は生物-文化多様性というテーマに関して、これまでは学会や会議への参加に留まり、保全のために自ら現場で活動や実務に携わった経験は然程なかったため、実際に当分野で活躍する他のユースとの意見交換や相互交流を通じて、自然環境について更なる理解を深めたいという意識もあった。

実際に参加してみると、日中韓のユースは各々、地球環境や多様性の維持のため様々な実践活動に取り組んでおり、他の参加者の事例発表による新たな発見が多かった。例えば、中国の青島地域における生態(エコ)民宿や青田の稲と魚の共文化、韓国の済州島における海女や村藪などは、私自身あまり詳しく知らない内容で、彼らとの議論や対話が、各々の社会が抱える問題や若者の参画のあり方について知る契機となった。同時に、日本メンバーの関わる事例として取り上げた、北海道の狩猟及び東アジアのクロツラヘラサギという絶滅危惧種との比較から、国は違えど伝統文化の担い手や教育不足、自然と人間との共存、共生に向けた市民の意識醸成など、各々の地域が抱える課題には共通点もあり、共に学び合う場の必要性を改めて強く感じた。

発表では、冒頭の生物-文化多様性の定義や多義性、「WA(和・輪・環)」という観点からの解釈を担当した。全体として発表を時間通り無事に終え、その後に活発な議論が出来たことは素直に嬉しい。偏に事前の打合せから当日に至るまで、準備に多くの時間を費やし、和して同ぜず作業に徹した仲間や辛抱強く支えて下さった先生方のおかげである。

TEMM19本会合における三カ国大臣への報告については、前日遅くまで日中韓の参加者で議論をし、皆の力で宣言文を作成した。環境大臣と面会も叶い、大変有意義な時間を過ごせた。終了後には、セルフガイドツアーにて、中韓のユースとグループに分かれ、ともに、歴史的に由緒ある美しい水原の街並みを眺めながら、ドラマ『チャングムの誓い』の撮影地でも使われた華城行宮や、北の水門である華虹門、楼閣の下の池と柳の和が美しい訪花随柳亭まで、華城散策を堪能できたことは一生忘れないだろう。

TEMM19ユースフォーラムでの対話や交流を通じて、私は日中韓の環境や歴史だけでなく、各々の地域で生きる人々の生活や文化、人生の物語についてより深く知りたいと思うようになった。今回のフォーラムでの様々な邂逅や縁を忘れずに、これからも生涯にわたって、TEMMの仲間とより良い関係を構築できるよう努めていきたい。願わくば、今回できた新友が、今後の更なる交流を通して親友から心友となり、将来は真友となれるように。TEMMフォーラムを礎に、将来3カ国が真友となれるように。そう信じて、自身の研究も社会へ還元できる倫理実践を目指し、今後とも生きていきたい。

今回、私たちユースへの助言から、事前発表でのフィードバック、フォーラム全般に至る支援まで、環境省はじめコーディネーターの先生や事務局スタッフの方々には、大変お世話になった。同じ日本ユース代表の仲間はじめ、一人一人の協力がなければ、フォーラムが成功することは決してなかった。この場を借りて心より御礼申し上げたい。今後とも、本フォーラムが持続可能な形で発展し、一人でも多くの人々が地球市民として、人類の未来について考え、各々の実践の場でより良い環境を希求していけることを切に願って。

俳句:

Life is Earth
Warmed by all beings
cherished diversity

高橋 美佐紀
高橋 美佐紀

公立鳥取環境大学

TEMMのWAとは??「人と自然」、「人と人」のつながりづくり?

今年のユースフォーラムのテーマは「生物-文化多様性と若者の参加」であり、大学で森林・林業を専門的に学び、鳥取での地域ベースの活動と青年環境NGOでのグローバルな活動をしている私の関心にぴったりなトピックだったこと、また人と自然の共生を考える生物-文化多様性は、林業や日本発のSATOYAMAイニシアティブ、森里川海連環学の根幹にあるものであり、本ユースフォーラムを通して中韓のユースにも伝え、深く議論したいと思い応募しました。

通常は3月の事前勉強会から1ヶ月ほどで発表内容を完成させますが、今回は当初の開催予定の4月から8月に延期になったこともあり、日本代表メンバーとは5カ月という長い期間、生物-文化多様性という新しく掴みづらい概念に対して、「オンライン等で議論を重ねる→フィードバックをいただく→練り直す」という作業を何度も繰り返すことができました。テーマについて参加者それぞれの観点から考え、生まれた疑問に対して妥協することなく語り合い、さらに日本ユース代表の意見として練り上げていく作業は非常に時間を要するものでした。しかし、テーマに関して深く理解し、共通の認識を得た上でフォーラムに臨むことができたことは、チームビルディングと私たちの自信になりました。

限られた時間でしたが、TEMM19ユースフォーラムは一日一日が非常に濃く、様々なワークを通して参加者全員と親交を深めることができました。私たち日本ユースは、「時代の変化とともに薄れつつある自然と人間とのつながりを今一度新しい形で構築する必要があり、その重要な役割を担うポテンシャルがユースにはあること」、そしてその土台に、「日本のWa・和・輪・環という概念があること」を強調しました。中韓ユースによる事例紹介の中には、海女に関する活動もあり、改めて日中韓は共通点のほうが多いこと、そして国内で触れる情報には三カ国の「違い」にのみフォーカスされたものが多いことを痛感しました。実際、中韓のユースはしっかりとした意見を持ちつつも他者の意見に耳を傾け、ディスカッション以外の場面でも、日本の言葉や文化に興味を持って積極的に話しかけてきてくれました。こうした参加者一人一人の真摯な態度が場の雰囲気をつくり、前向きなエネルギーに満ちた中でコミュニケ(共同宣言文)の作成まで突き進むことができたのだと思います。

また今回、ユース以外の方とできたつながりも、本フォーラムへの参加を通して得られた貴重なものの一つです。同じくサイドイベントとして開催されていた日中韓環境ビジネス円卓会議の関係者の皆様と交流させていただく機会も設けていただき、立場ごとのTEMMへの多様な関わりを知ることができました。私は生涯を通じて環境に関する仕事に携わりたいと考えており、どのようなアクターが環境問題の解決に一番インパクトを与えることができるのかを、長い間模索してきました。そのため、この交流会を通して各分野のリアルを教えていただけたことは、将来を考える上で非常に勉強になりました。

ユースフォーラム閉会式でも「ここがスタート」という言葉が何度も出たように、参加者それぞれの人生においても、日中韓という国家レベルにおいても、これから迎えうる厳しい局面こそ、本フォーラムで培ったものが試されてくると思います。ユースフォーラム日本代表の一人として、本フォーラムで築いたWAを今後も継続させると同時に、TEMMをはじめとする日中韓の取り組みを広め、より多くのユースを巻き込んでいくことができるよう尽力いたします。

末筆ながら、TEMM19ユースフォーラムという非常に貴重な機会をくださった環境省並びに日中韓の関係者のみなさまに、心より感謝申し上げます。

所谷 茜
所谷 茜

東京工業大学大学院/Team SPOON

TEMM19ユースフォーラムに参加して感じた自然・文化・人々の関わりと未来

TEMM19ユースフォーラムに参加した動機は、日中韓各国の人々とつながりを築き、互いの活動や地域の課題を学び合い、今後の活動につなげていきたいと思ったからでした。私は、東アジアの渡り鳥であるクロツラヘラサギに注目してTeam SPOONという活動を行っています。クロツラヘラサギは世界的な絶滅危惧種で、営巣地である韓国、ロシア、越冬地である台湾、日本、中国南部沿岸地域、ベトナムなど、フライウェイ全体で環境が保全される必要があります。保全は地域の人々の行動だけでなく、内陸部や都市部の人々の協力が不可欠です。Team SPOONでは、都市の人々にもクロツラヘラサギを想うことで心の中に自然を抱いてもらうとともに、人々のつながりを創ることで実際の保全につなげていこうとしています。活動を行う中で、クロツラヘラサギが渡る地域である中国や韓国の人々とのつながりをつくりたい、中国・韓国における人と自然の関係を学びたいと思うようになりました。

ユースフォーラム当日は、5人全員でプレゼンを行います。したがって、初めて出会う人同士で一つのプレゼンを作っていくことになりますが、このプレゼンづくりの中で、生物-文化多様性をどのように維持・保全していくかを深く議論することができました。

生物-文化多様性の例として真っ先に出たのが「里山」でした。しかし、現代の生活、とりわけ都市では、里山のような自給自足はできませんし、生活の中で自然とのつながりを感じることも難しいと思います。つまり、自然と共存した文化を再生したり、保存したりするだけでは不十分で、いかにして自然と共存する仕組みを現代の暮らしの中に組み込むかが重要です。私たちはプレゼンを作る中で、何度もこの認識を確認しました。こうした議論は、これまで行ってきたTeam SPOONの活動の意味を改めて考え、自分自身がこれから何をしていくべきかを考える機会となりました。

ユースフォーラムでは、日中韓3カ国のユースでグループになって、3カ国の大臣に向けた宣言文づくりのために議論をします。それだけでなく、一緒に食事をしたり、日中韓のメンバー1名ずつの計3名のグループで開催地の水原市を巡ったりと、日中韓で話す機会がたくさん設けられていました。日中韓3か国は、同じ海を囲んでおり、古くから交流がありますが、実際に中国、韓国の方と一緒に話してみると、似た言葉があったり、似た食べ物があったりと、類似点をいくつも見つけることができました。さらに、中国、韓国のユースのプレゼンテーションを聞いたり、一緒に宣言文を作るための議論をしたりする中で、中韓のユースもまた、持続可能な未来をつくっていくために、一人ひとりが深く考えていること、そして実際に活動していることを知ることができました。

自然や文化が国を越えてつながっていることを感じ、ビジョンを共有しているということを認識した私たちは、きっとこれから様々な協力ができると確信しています。私たち一人ひとりのつながりから生まれる協力は、個人的なものかもしれないし、小さな組織間の協力かもしれません。しかし翻ってみると、国と国の間には未だに課題が多くあり、協力できていない部分があることも事実です。今回ユースフォーラムに参加し、日中韓のユースと共に話すことができたことで、もっと多くの人々が自然と文化のつながりを感じ、ビジョンを共有していくことができれば、より多くの協力ができるようになるのではないか、そのことが国同士の良い関係を創っていくのではないか、と考えるようになりました。

今後は、Team SPOONの活動や研究を通して、自然や文化のつながりを表現しながら、国を越えた一人ひとりのつながりをつくっていきたいと思います。そして様々な人々が共に持続可能な社会を築いていける社会となるよう、努力していきたいと思います。

最後に、TEMM19ユースフォーラムの開催にご尽力をいただきました日中韓の関係者の皆様に感謝申し上げます。これからもこのユースフォーラムが続いていくことを祈っております。

松岡 宏明

立教大学ESD研究所

語り合う「個」と「個」/多様性を楽しむ課題解決のカタチ ?第19回TEMMユースフォーラムに参加して?

今回、私がTEMM19ユースフォーラムに参加したいと考えた一番の理由は、自然環境や社会的な課題に対して、これから立ち向かおうと考えている同世代の仲間を作ることでした。私たちや私たちの子供たちが生きていく時代が、環境、社会の課題が山積した世界にならないために、今、自分にできる活動の一つがこのユースフォーラムに参加して、同世代の国内外の繋がりを作ることでした。また、今回のメインテーマでもある「生物-文化多様性」も参加したいと思った要因です。これは、非常に現在的な課題を含んだもので、これから私たちが生きていく時代において重要になる概念です。しかし、新しいがゆえに、研究がまだ進んでいないのが現状です。つまり、私たち若い世代が知恵を絞り、それを深めていくことができる課題ということです。今思い返すと、調べ、考えるほどに深みを増していくような、私たちが挑戦するにはとてもいい題材でした。このような挑戦的な課題に国内外の仲間たちと挑むことができたことは非常に幸せなことでした。

今回の発表や議論において、三カ国の環境、社会的課題が数多く提示され、議論を通してその解決策の共通性を確認することができました。特に興味深かったのが、私たちが発表した日本の狩猟文化の問題点と韓国の海女文化が抱える問題点が共通しているという点でした。これら二つの文化は、その地域の自然生態系や文化と密接に関わりあっています。しかし、現在従事者の減少に伴い、その地域の生態系が崩れ始め、文化的アイデンティティの希薄化、主に自然に対する考え方、接し方などの希薄化を生んでしまっています。そこで、それらを解決するために、その文化がどのような役割を担っていたのかを再び学ぶような場を展開し、今まで文化的活動に参加してこなかった人々を巻き込むような活動をどちらも行っていました。このように共通する課題の共有だけではなく、その解決方法も共有し、相互に学び合うことで、それぞれの国の生物多様性と文化多様性、それらの相互作用によって生まれた文化が、未来に向けてより良くなるステップを踏んだように思いました。

上記のような議論を通して、「生物-文化多様性」の面白さに改めて気付かされました。当然のことながらその国、地域ごとの自然やその関係性、文化は異なります。しかし、それら全ての共通点や相違点はすべて「多様性」という言葉に還元されていくようになったのだと思います。つまり、自然や文化への「関わり方の多様性」に価値がうまれるということです。そのことで、皆が同じ出発点に立ち、多様性を構成する「個」として発言できる場が形成されるのだと思います。活発な意見交換だけではなく、全く恐れることなく問いかけを他の参加者たちに投げかけられる雰囲気もあったように思えますが、今回のような活発な議論が起きたのは「生物-文化多様性」がもつひとつの効果なのかもしれません。

TEMMユースフォーラムのような若者たちが環境政策に発言できる機会を新設する、または持続させることは重要です。今回の議論を通して、若者たちが作り出したネットワークは、多様性を楽しみ、直接的な課題解決に繋げられるものだと思いました。今後、TEMMユースフォーラムのような仕組が整備され、それが持続されていくことで、環境課題解決の一歩を踏み出せるのではないでしょうか。

最後に、本当に濃密で刺激的な4日間に感謝を述べたいと思います。これまで、自分自身の自然環境に関する考えや、様々な意見を深く開示した同世代のグループにあまり関与できていなかったこともあり、本当に刺激的な機会でした。今回できた仲間たちは、きっとこれから各々の現場で力を発揮することでしょう。私自身も彼女ら、彼らと同様に活動できるよう頑張ります。中韓の仲間たち、そして何よりも日本の仲間達。こんなにも素晴らしい人たちと出会えて本当によかったです。また、上記のような素敵な経験を私たちが得ることができたのは、日中韓多くの関係者の皆様のおかげです。この場を借りまして、お世話になったすべての人たちに感謝を伝えたいと思います。ありがとうございました!