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中央環境審議会野生生物部会
平成22年度第2回鳥獣保護管理小委員会会議録


1.日時

平成22年12月22日(水)12:50~16:42

2.場所

経済産業省別館共用825

3.出席者

(委員長) 山岸  哲
(臨時委員) 石井 信夫 市田 則孝 是末  準
福田 珠子 三浦 慎悟 染  英昭
(専門委員) 小泉  透 坂田 宏志
(ヒアリング対象者) 梅田 和夫 高橋  理 今吉 信一
草刈 秀紀 野上ふさ子 坂元 雅行
古南 幸弘 倉澤 七生 高橋 俊守
白野  暢
(環境省) 鈴木自然環境局長
渡邊官房審議官
牛場外来生物対策室長

4.議事

【事務局】 中央環境審議会野生生物部会鳥獣保護管理小委員会を開催させていただきます。
 本日の出欠ですが、汐見委員及び羽山委員が欠席とのことです。そのため、12名中10名の出席であり、中央審議会令により、定足数を満たしておりますので、本日の小委員会は成立しております。
 本日の第2回の小委員会では、関係者からヒアリングを予定しております。遅れて参られる方もおられますが、開会に先立ちまして、本日、ヒアリングにご参加いただく関係者の方々を事務局よりご紹介させていただきます。
 まず、狩猟団体関係として、社団法人大日本猟友会、梅田理事。
 続きまして、農業被害関係で、高知県より香美市役所の高橋主事。
 続きまして、林業被害関係で、鹿児島県より伊佐愛林有限会社の今吉代表取締役。
 続きまして、人材育成関係で、宇都宮大学農学部附属里山科学センターの高橋准教授ですが、若干遅れております。
 続きまして、自然保護関係で、CBD市民ネットワーク法制度部会から草刈部会長。野上様。坂元様は、遅れております。古南様。倉澤様。
 最後になりますが、都道府県関係で、北海道自然環境局の白野課長にお越しいただく予定ですが、休憩後になるというお話を聞いておりますので、先に進めさせていただきます。
 次に、配付資料の確認をさせていただきます。配付資料の一覧が議事次第の後ろに記載していますので、こちらの方でご確認ください。
 これとは別に、参考資料1として、「環境省における鳥インフルエンザの対応状況について」と、参考資料2として、「第1回小委員会の議事概要」をつけております。
 資料に不備がございましたら、事務局にお申し出ください。
 また、本小委員会の資料及び議事概要は、後日、環境省のホームページにおいて公開されますことを申し添えます。
 それでは、山岸委員長、よろしくお願いいたします。

【山岸委員長】 それでは、ただいまから平成22年度第2回の鳥獣保護管理小委員会を開催いたしたいと思います。
 本日は、それぞれの分野の関係者からの意見聴取及び質疑を行った後に、事務局より各都道府県から提出された特定鳥獣保護管理計画などに関する意見についてご説明をいただくことにしております。
 それでは、議事の一つ目、関係者からのヒアリングについてですが、まずは狩猟団体である社団法人大日本猟友会の梅田理事よりご説明をお願いいたします。

【(社)大日本猟友会(梅田理事)】 ただいまご紹介いただきました、大日本猟友会の理事、梅田でございます。狩猟界の現況と将来の見通しについて、お話をさせていただきます。
 狩猟を取り巻く環境は年々厳しくなっておりまして、まず1点目として、自然環境の変化、地域社会の変革によって、特定の鳥獣が大幅に減少する、また、あるいはその反対に著しく増加している。こういうような現象が続いておりまして、狩猟者にとっては、理想とする調和のとれた狩猟資源が確保されていないというのが現状でございます。
 近年、外来動物やシカ、イノシシの増加により、農林被害、またキツネ、タヌキ等の増加により、ライチョウ、キジ、ヤマドリ等、地上で卵を産む、またそれを育てる種類について、かなりの影響が出ておりまして、自然界の動植物のバランスの不均衡が進んでおるところでございます。
 前者の農業被害では、北海道のエゾシカの生息数は70万頭に達するというふうに言われておりまして、牧草を初め、水稲、小麦などの農業被害は52億円に達しております。全国的には約200億円と言われていますが、鳥獣による被害を受けて、離農してしまった農家等を統計に含めますと、この被害額は300億とも400億とも言われているところでございます。
 さて、この農林被害の原因となるシカ、イノシシの異常繁殖の原因、これはまず雪が少ない、いわゆる、どか雪というんですか、大量の雪が降らない、そういう関係で飢えることがなくなり、死亡率が減少したということになりまして、また、行動範囲も広がったということでございます。
 2番目に、シカ、イノシシ等により農業被害を受けたこと等による耕作放棄地、いわゆる農家をやめてしまった、耕作を休止したというところが多くなりまして、それがシカ、イノシシ等のえさ場となって繁殖しやすくなったということ。
 3番目には、高齢化でハンターが減少して、狩猟圧が低下したというようなことが言われております。
 もちろん、このような農林業に被害をもたらす鳥獣につきましては、特定鳥獣保護管理計画に基づきまして、猟友会のハンターが個体数調整を行っておるということでございます。しかしながら、ハンターの高齢化、ハンターの減少で、銃での捕獲が追いつかないことによる狩猟圧の低下が現状であります。思うように成果があらわれておりません。
 2点目は、野生鳥獣保護思想の高まりに加えまして、平成19年の12月に、佐世保の散弾銃乱射事件というのが起こりました。それによって、社会一般からのハンターへの風当たりがすごく強くなったということでございます。結果、銃の所持そのものを否定する厳しい風潮が生まれまして、改正した銃刀法、これが昨年の12月4日から施行されまして、銃砲所持者にとりましては、非常に厳しい状況に置かれているところでございます。それでなくとも、全国各地の山々からハンターが次々と消え、1970年代に40万人を超えていた銃を扱う猟友会員は、今、10万人を切る状況にあります。それにもかかわらず、このような銃刀法の改正で、ハンターは近い将来、現在の半分ないし3分の1に減少するといっても過言ではない状況でございます。
 そのため大日本猟友会は、鳥獣の保護や自然環境保全に活躍する団体の方々に集まっていただきまして、円卓会議を開き、狩猟者の減少対策に知恵をおかりしているところでございます。狩猟者が減っている実態から、オオカミを放して、シカ、イノシシを捕獲させて、増加にストップをかけるか、また、自衛隊に応援を頼んだらどうかといった方法を考えている自治体もありますが、これはまた、まさに現実的ではないと言わざるを得ないわけでございます。
 ところで、今年の秋は各地でクマが出没しまして、人を襲う事故が相次ぎました。その都度、猟友会員が出動して、その処理に当たっていますが、ハンター不足が原因のようです。クマが人里に多数出没する理由は、シカ、イノシシによる農業被害に遭い、里地・里山での人の活動が減りました。人間と動物とのせめぎ合いがなくなったことで、鳥獣の分布域が人の生活圏近くまで広がったこと、ハンターが減ったことで、狩猟期に人間に追われた経験のないクマがちょこちょこ出てくること。そういうようなことが原因であろうと有識者の方は分析をしているところでございます。この点でも、ハンター不足が問題になっています。
 自治体から依頼される有害捕獲隊を編成しようとしても、編成できない市町村が生まれております。また、編成できた捕獲隊についても、自分のところだけではなくて、よそからお呼びがかかる。よそまで行ってやらなきゃならないというような不便さを感じているところでございます。
 農林業者が安心して生活できる環境にするには、昨年12月の改正銃刀法を緩和することで、ハンターを増やすことができるのではないかと思います。改正銃刀法の緩和こそが不可欠と考えます。
 今、日本国内に生息する野生鳥獣は、鳥類が550種類、獣類が80種類、合計で630種類と言われています。そのうち捕獲できる種類は49種と、非常に少ないということで、しかも、その中には、今、捕獲が禁止されておりますウズラ、北海道のシマリス、こういうものも含まれているということでありますので、ごくごく捕獲できる種類のものが少ないということが言えると思います。
 また、許可捕獲により捕獲することのできる鳥獣は、生態系を乱すまでに増殖してしまった種類、農林業に被害を与える種類、人間に直接被害を与える種類に限られておりまして、種の保存を乱すようなことは考えられないということです。
 大日本猟友会は、このように特定鳥獣保護管理計画に基づき、個体数調整等を行う等大きな社会的貢献をしております。
 そして次に、皆さん、お手元の表があるんですが、これは大日本猟友会がまとめたものですが、一番下の平成21年度の第1種銃猟が9万9,083人で、とうとう10万人を切ってしまったということでございます。その左隣の網・わな、1万8,291人と書いてありますが、これは網・わなが以前より増えたということですが、銃刀法の関係で、銃を持つことが非常に難しくなったということで、こちらに移行した人が多くなったという現実でございます。トータル的には、毎年減っているということが言えると思います。
 次の表ですが、これは銃猟の将来予測です。近い将来、どのくらい減っていくだろうかということでございまして、平成21年、今言いました9万9,083人なんですが、これが大体10%ずつぐらい減っていくのではないかと考えています。平成27年には5万人ぐらいになってしまうのではないかというような予測を立てております。
 次に、大日本猟友会における課題についてでございますが、担い手の減少・高齢化に関するもの。これは和歌山と北海道の意見ですが、捕獲隊の編成ができなくなりつつあり、特に平日の出動は困難である。年をとっている人というのはやめていく人が多いわけでして、若い人はやはり仕事を持っておりますので、なかなか隊の編成ができないということを言っているわけです。それと、各種規制の強化について、深刻に受けとめる会員が多いということで、会員がどんどん減っていくのではないかというような憂いを持っております。これは三重県猟友会の意見でございます。
 次に、狩猟に対する国民等の理解に関するものということで、クマ等の野生鳥獣から地域社会や地元の自然を守っているにもかかわらず、苦情の矢面に立つことが多いと、これは岩手県からの意見です。また、ボランティアとして有害捕獲に協力しても、趣味で殺生を行っているものと誤解されている。それから、肉の需要が広がらない。こういう意見もございます。
 次に、有害捕獲の従事に関するものでございまして、先ほども申し上げましたとおり、休みの日に捕獲の編成がなされるということになると、昼間、通常月曜から土曜日まで勤めておって、日曜日にこれに駆り出されるということが非常に苦痛であると言っているわけです。
 以上が私の方の説明でございます。
 それと、あと資料として、大日本猟友会のパンフレットを添付しておりますので、後刻お読みいただければよろしいかと思います。
 以上でございます。よろしくお願いします。

【山岸委員長】 ありがとうございました。
 今のご説明につきまして、ご質問、ご意見がございましたら、どなたからでも結構ですので承りたいと思います。
 はい、どうぞ。市田委員。

【市田委員】 ありがとうございました。
 今のご説明の中で、最後のページの資料なんですけれども、クマなどの問題から地域住民を守っているのに苦情の矢面に立つことが多いということですけど、苦情ってどういうことなんですか。

【(社)大日本猟友会(梅田理事)】 苦情ということかどうかわかりませんけれども、例えば有害捕獲で、先日、ある県で主婦がひっかかれて、怪我をした。2頭出たんですけど、そのときに、1頭は中学校に入って、それで射殺したというようなことになりますと、毎回そうなんですが、大日本猟友会の電話が鳴りっぱなしだそうです。どうしてこういうこと、かわいそうなことをしたのかということですね。学校の先生もいらっしゃるかもしれませんけど、幼稚園から小学校まで、やはり動物愛護運動というんですか、指導というんですか、これが非常に多く普及されているものですから、動物をかわいがる、殺すなんてとんでもないというような教育を小さいころから受けているんです。そういうような人たちが育ってくると、こういう問題が起きてくるんじゃないかと思うんです。根本は教育の問題だと思います。

【山岸委員長】 市田委員、よろしゅうございますか。
 それでは、そのほかに。はい、どうぞ。染委員。

【染委員】 ご質問をさせていただきたいと思います。
 お話の中で、2009年の銃刀法改正で、銃砲の所持が大変厳しくなったということで、その辺の何らかの改正が必要ではないかというお話だったと思うんですが、これ、2009年の改正というのは、多分、更新時の実技試験の義務づけと、精神科など専門医の診断を受けるとか、そのような改正ではなかったかと思うんですが、これに対する規制緩和の要請は、どういう方向で進めているのかということが1点。
 それと、お配りになった資料の一番最後のページに、各種規制が効率的な捕獲の妨げになっているとのことですが、ここでいう各種の規制というのは、一体、どういうことを意味しているのか、教えていただきたい。

【(社)大日本猟友会(梅田理事)】 では、最初の銃刀法の問題なんですが、3年ごとに更新の際に行う実技の講習と試験があるわけです。それが一番のネックになっているわけです。それが受からないと、次にもう所持をできないということになります。あと、医者の診断書ですね。これが精神科の医者でなければだめになったということです。それから、75歳以上、これは年寄りの方なんですが、認知症の試験も受けなければならない。それと弾の使用状況の帳面をつくらなければならない。いわゆる出納帳のように、毎日毎日、それを書き入れるということをしなければならない。それともう一つ、弾の保管は自宅ではだめ、別棟にしろということが言われているんです。別棟ということは、自分のうちに小屋でも建てて、そういう保管の箇所をつくるかどうかということですね。それはちょっと行き過ぎているのではないかと思います。それで、警察庁に話しを聞きにいったりしているところです。
 2番目ですが、銃刀法もそうですが、いろいろ厳しくなると効率的な捕獲が難しくなる。例えば網・わなにしてもそうですけども、くくりわなは12センチの輪でないとだめだということになると、非常にかかりにくいということがいろいろ言われているわけです。

【山岸委員長】 よろしゅうございますでしょうか。
 ほかに何かありますでしょうか。
 それでは、私の方から1点、配付していただいた資料の2ページ目に、第1種銃猟者の減っていく推定の表があるんですが、年間の減少率が10%でずっと減っていくというふうになっていますよね、22年から。それまでのところを見ると、高くても5%の減少率だが、だんだんそれが増えている傾向にあるんですけど、いきなり10%となっている。その理由を教えて下さい。

【(社)大日本猟友会(梅田理事)】 これは改正銃刀法がそのままだったらという話です。だから、仮に、改正銃刀法が緩和されれば、10%やそこまでは減らないと思います。今の状態でいけば、このぐらいになるだろうということです。半減します、あるいは3分の1になります。もうみんなやめると言っているんですよ、はっきり言って。規制が厳しくなって。そういうことなんです。

【山岸委員長】 はい、わかりました。
 もう一点、それでは、随分ご苦労をいただいて、有害捕獲に協力していただいているようなんですが、経済的な支援とかも出ているんですが、通常、行政などから要請されたときに、お金は出るんですか。

【(社)大日本猟友会(梅田理事)】 出ます。有害捕獲の場合は、市町村によって違うんですが、1頭5,000円のところもあるし、1万円のところもあるし、あるいは日当で出すところもありますが、ガソリン代にもならないというところもあります。

【山岸委員長】 ありがとうございました。
 ほかにございますでしょうか。

(なし)

【山岸委員長】 梅田様、ありがとうございました。
 続きまして、農業被害関係で、高知県の香美市役所の高橋さん、お願いいたします。

【香美市(高橋主事)】 高知県の香美市役所から参りました高橋と申します。
 それでは、座って説明をさせていただきます。
 私、林政課という林業の課でございますけれども、鳥獣関係を一手に扱っておりますので、農業被害についても対応しています。
 それでは、まず最初に被害の現状でございます。
 まず、被害面積、被害金額ともに、農林作物全般ということで、10.62ヘクタール、2,741万円となっておりますが、これは申請、いわゆる農家から出てきておる数字でありまして、実際はこの5倍ないし10倍あるものと推定をしております。
 主な被害でございますけれども、写真で4枚入れております。
 特に香美市では、近年、ニホンジカによる被害が甚大で、特に左上の写真、基幹作物がユズですが、この被害写真、本当のユズの木は、この上の部分、茶色い部分が本当の色なんですけれども、ニホンジカにはがされて無残な姿になっております。
 この圃場でございますが、昨年被害に遭ったところなんですが、100本植えていたユズのうち97本がやられてしまいまして、残り3本となってしまいました。ユズがやられますと、3年までは実がとれるのですが、それ以降は実がとれないということで、来年にはもう切る予定と聞いております。
 それから、右の写真でございますけれども、スギの被害です。香美市においては林業も盛んでございまして、このようなスギの皮をはぐ被害が非常に増えております。こうなりますと、木材市場に出しましても、全く売れません。このため、そのまま放っておくか、切って林地に置いておくしかないというような状況です。
 それから、この下の2枚の写真でございますけが、これは国指定剣山山系鳥獣保護区内の、さおりが原という、いわゆる原生林でございまして、平成13年と20年で、この違いとなり、ご覧のとおり、ニホンジカに自然植生を、下草植生をやられてしまいまして、丸坊主状態になっております。たった7年の間で、ニホンジカの食害によって原生林の中の自然環境まで変わってきておるという状況です。
 香美市のニホンジカによる被害は、平成5年に山火事がございまして、その後に新植をしたところ、その新植した苗木にニホンジカがつきまして、それから増加しております。その後、平成18年度ごろから、ユズ、民有林、国有林を問わず被害が激増しております。
 そのほか、8種類の鳥獣を予察捕獲対象鳥獣に指定しまして、捕獲を行っております。
 それから、職員3名、私も入っておりますが、わな猟免許を取得しまして、鳥獣被害対策実施隊を組織しております。
 それでは、2ページの方にお願いいたします。
 そのニホンジカでございますけれども、大体、大ざっぱな形ではありますが、生息頭数を推定しております。香美市の推定生息頭数、これは高知県の調査と香美市の森林面積で割り出しておりますけども、約4,600頭前後と推定しています。そういう中で、これも県からもらったデータで算出しておるんですが、適正頭数が1,031頭ということで、適正頭数の4倍以上のニホンジカが香美市内に生息しておるという状況があります。
 そのような中で、有害捕獲を香美市では積極的に行っておりまして、平成20年度から予察捕獲を推進して、狩猟期間外の4月から10月までの間、それから狩猟期間開けの3月16日から3月31日までの期間に、捕獲を可能にしております。
 それから、推定生息頭数を適正頭数に近づけるべく、年間に1,500頭の捕獲目標を設定しております。報奨金は、1頭当たり8,000円でございます。それで、平成20年度にはご覧のとおり1,563頭、21年度1,634頭を捕獲しましたが、減ったという印象がございません。
 このグラフで、ニホンジカの捕獲頭数推移というものを出しておりますが、報奨金を香美市では両耳で確認して出すという方法を取っています。
 しかしながら、この現行の制度では、現在以上の目標設定、いわゆる1,500頭以上という目標が困難になってきておる現状がございます。
 次の3ページの方にお願いします。
 先ほど大日本猟友会の梅田理事からのお話にもありましたが、狩猟者の減少傾向であります。まず、平成18年度から、毎年5ないし10名の減少があります。17年度には300名いた会員が、平成22年度、先日、狩猟者登録をした人数は280名で、年々減ってきています。それから高齢化、平均年齢が65歳でございますけれども、これにも歯どめがかかっておりません。今後の捕獲担い手も確保できない状態でして、20代の狩猟者は私1人、30代は2名しかいないという現状で、あと二、三十年しますと、本当にこの人数しか残らないんじゃないかというふうに考えています。私、3日前にも狩猟にいっておりましたけれども、65歳の方が勢子を行って、75歳の方が仕留めるというのが現状でございます。このような状況ですが、2、3年以内はまだ大丈夫と思うのですが、10年後には、恐らくもう目標達成も困難な状況になると見ております。
 それから、もう一つの理由ですが、県境付近での捕獲の現状でございます。この写真1と2ですが、何の変哲もない写真ですけれど、実はここに県境がございます。写真1については、グレーチングから手前側が高知県、向こう側が徳島県という状況です。それから、写真2については、これは剣山山系鳥獣保護区内ですけども、この赤い屋根の小屋があるところが徳島県、ちょっと見づらいですが、右側が高知県という現況です。特に県境付近ですけれども、連携して捕獲を行おうとしましても、高知県側にはまだ狩猟者がある程度いるんですが、徳島県側にほとんどおらず、実施できない状態です。それから、この写真1の向こう側に仮にニホンジカがいたとしましても、徳島県側の許可をもらわないと捕獲できないという現状がございます。その際、狩猟者の方の場合には、徳島県側に狩猟者登録が必要となりますので、狩猟税等の費用が2倍かかるというのが現状です。それから、香美市の事業として、剣山山系鳥獣保護区内で個体数調整事業を行っておりますけれども、同様の状況でございます。県境付近にニホンジカが現在非常に密集しておるんですが、各県の制度の違いが阻害要因となっております。
 それでは、4ページの方にお願いいたします。
 ということで、私から現場に携わる者としての提案ということで挙げさせていただきます。
 まず最初に、広域の特定鳥獣保護管理計画の作成推進ということで。現在、ニホンジカの被害については、最近ではなかったんですが、愛媛県、香川県で少しずつ出てきております。そういったことで、広域単位での特定鳥獣保護管理計画作成について、実は現在の指針では、都道府県下の協議・調整が行えるというふうになっているんですけれども、県の場合でも、担当部局が二つ、三つに分かれており、なかなかまとまりません。そういった状況がありますので、環境省ないし農林水産省からの強い関与をもって計画を策定していくということも必要じゃないかと思います。それから、迅速に動く場合には、市町村単位でも計画を作成できるというような仕組みに持っていくことも必要じゃないかと考えています。
 それから、連携した捕獲の際の狩猟者の負担軽減ということですが、これについては、先ほど申し上げたとおり、県境をまたいだ場合には、狩猟税等で負担が2倍になるというところがございますので、県境を越えて有害捕獲等を行う場合には、狩猟者の負担軽減ということで、狩猟税の減免等を図る必要があるんじゃないかと考えます。そうなれば、狩猟者の多い地域から少ない地域への応援体制の確立、連携捕獲が推進できるというふうに考えています。
 最後でございますけれども、とにかく有害捕獲、これは狩猟も一緒でございますけれども、次期指針の終期の平成29年3月31日には香美市の狩猟者の平均年齢が70歳になりますので、そこまでが、現在の農林業被害を防ぐためには最後の勝負の時期ではないかと考えております。
 以上でございます。

【山岸委員長】 ありがとうございました。
 ただいまのご説明について、ご質問、ご意見がございましたら、どなたからでもどうぞ。
 はい、どうぞ。染委員。

【染委員】 何点か教えていただきたいんですけれど、一つ目は、いわゆる鳥獣被害対策特措法に基づく実施隊を組織されているということなんですが、これは役所の人間が3名と書いてありましたが、実施隊はトータルでは何名ぐらいの方々で組織されていて、この方々がすべて地域の駆除をおやりになっているのかということ、それと、この組織が機能しているのかという意味合いで、平成20年に1,563頭、21年に1,634頭の捕獲数のうち、実施隊が関与して捕獲したのは、どのくらいなのかを教えていただきたい。
 それと、2点目は、環境省の技術マニュアルを見ても、この捕獲の目標数等については、きちっとしたモニタリングとフィードバックが極めて重要であるということをかなり謳ってあるんですが、。にもかかわらず、今のお話の中では、この1,500頭の捕獲目標を見直すのが困難だというお話だったので、一体なぜそうなるのかというのが2点目です。
 それと、3点目は、一番最後の広域の問題ですが、要は特定鳥獣保護管理計画を各県ばらばらにつくっているせいで阻害要因になっているというようなお話ですが、ということは、そもそもこの広域指針は、現在、全く機能していないというふうに見れるのかなと思うのですが、この広域指針を機能させるには、どうしたらよいのか、その辺も何かご提案があれば教えていただきたいと思います。

【香美市(高橋主事)】 それでは、1点目についてお答えを申し上げます。
 まず、実施隊でございますけれども、平成20年の5月に、日本で一番最初に結成いたしまして、3名全員がわな猟でございます。最初は銃猟の方が1人おりましたが、退職されたので、今は、わな猟3名でやっております。農水省の特措法では、通常の狩猟者の方についても、非常勤職員として雇えるとなっておりますけれども、人事担当部局との話がまとまりませんで、今のところ、職員3名だけでやっております。ニホンジカの捕獲頭数でございますけれども、今年度、大型囲いわなを1基構えまして、ようやく8頭の捕獲実績が出ているというのが現状でございます。
 それから、次、2点目でございますけども、この1,500頭という捕獲目標でございますけども、これについては、計画を立てたのが平成20年度でございまして、当時、猟友会の方々ともお話をしまして、私が最初、ニホンジカを減らすには2,500前後捕獲しないと追いつかないと話をしましたが、なかなかそれは難しいということがありまして、当時の捕獲数に即した数字ということで、1,500頭を設けたところでございます。

【染委員】 これはなぜ改正できないのですか。

【香美市(高橋主事)】 改正できない理由は、狩猟者が減少傾向にあるためであります。狩猟者はもうこれ以上は増えません。私も友人の20代、30代の方に狩猟免許を取ってみないかと誘っていますが、取る気配は一切ありません。そういった状況ですので、狩猟者は減っていくということで、これ以上の捕獲は無理というところです。
 それから、3点目でございますが、広域計画の推進についての阻害要因ですけれども、これは各県の姿勢でないかと思います。特に高知県の方は、とにかく捕獲すべしということで、今まで捕獲、捕獲、捕獲でやってきておりますが、徳島県については、とにかく守るべしということで、さくを中心にやってきたというところがございます。そういったところで、まず県同士の有害鳥獣対策に関するいわゆる認識のずれがございまして、これから作成の推進をしていくに当たっては、特に国の方からの強い関与といいますか、国の方で指導とまではいきませんが、各県の方のおしりをたたくといいますか、とにかくつくるべしということでやっていくということが必要じゃないかと思います。
 以上です。

【山岸委員長】 染委員、よろしゅうございますでしょうか。

【染委員】 はい。ありがとうございました。

【山岸委員長】 専門家の観点からはどうですか、三浦委員。

【三浦委員】 ちょっと確認したいんですが、ここにある2ページの図は、これは香美市での捕獲実績ですか。

【香美市(高橋主事)】 はい。

【三浦委員】 先ほど3名の職員のわな猟では、8頭とれたということですが、結局、その他の現在の狩猟者たちが一生懸命頑張ってこの頭数をとっているということですか。

【香美市(高橋主事)】 そういうことでございます。280名前後の狩猟者の方で捕獲しているというのが現状です。

【三浦委員】 ちなみに、例えば去年ですと、雄・雌に分けるとどれくらいだったか、そういう数字はありますか。

【香美市(高橋主事)】 雄・雌の比率でございますが、20年度については、雄の方が特に多かったです。7対3から、もうほぼ8対2に近いくらいです。特にシカの習性もあると思うのですが、雌ジカは本当に隠れるのがうまいので、特に5月、6月に、戦いに負けた雄ジカがふらふらしているところを撃たれる。それから、けんかをしていたシカで、疲れた後に2頭一気に獲られるということで、雄ジカの頭数が増えていました。
 ただ、21年度、22年度については、これが6対4ぐらいになっており、やはり狩猟者の方も、雌ジカがどういうところにいて、獲れるのかを大体把握してきたということで、比率が若干変わってきております。

【三浦委員】 ありがとうございます。
 もうちょっと本格的にお聞きしたいんですが、香美市というのは、人口はどれくらいですか。

【香美市(高橋主事)】 人口が2万8,000人でございます。特に被害が起こっているのが旧物部村というところで、2,500人です。ちょっと困った話ですけども、推定生息頭数でいきますと、旧物部村の範囲内でニホンジカが2,700頭と推定していまして、人間よりシカが多いというような推定になっております。

【三浦委員】 この頭数は、県が全体を推定した上で、香美市分ということで推定しているんですか。

【香美市(高橋主事)】 高知県では、全県で平成19年度に生息数が4万7,000頭としています。
これに基づき、県の出した数字が、1平方キロ当たり9.8頭ですのでそれをもとに算出しております。

【三浦委員】 それから、香美市には鳥獣保護員は何名いらっしゃるんですか。

【香美市(高橋主事)】 鳥獣保護員につきましては、旧町村単位で3名おります。

【三浦委員】 全員猟友会の方ですか。

【香美市(高橋主事)】 全員猟友会で、特に中核を担う方が3名です。

【三浦委員】 もうちょっと突っ込んで聞きますけど、香美市で農林業の被害や野生鳥獣の動向などに取り組む職員で、若年層はいますか。市の職員がほとんどですか。

【香美市(高橋主事)】 若年層はおりません。私が市内おのおのを回っておりますけども、特に、象徴的なこととして申し上げたいのは、うちの方で狩猟免許の所有者を増やすために講習会をやっておるんですけれども、無料で開催しています。募集をかけているのですが、出てくる者は全員が65歳以上の方ということで、自分も、20代、30代の仲間に勧めてみたりするんですが、受けてはもらえません。

【三浦委員】 ありがとうございました。

【山岸委員長】 はい、どうぞ。

【小泉委員】 現有の捕獲勢力ですと、既に捕獲数が上限に達しているという話でしたけれども、ほかの地域から人を呼ぶ、応援に来てもらって予定捕獲数を達成させるような動き、猟友会の会員の方からそのような提案はありますか。

【香美市(高橋主事)】 地区の猟友会として香美猟友会がございまして、外から捕獲者を入れるという話は、県からそういう話があったんですが、猟友会は、自分のところは自分のところで済ます、いわゆる解決するといっております。まだほかの市町村よりは、この280名という会員数が多い部類に入っておりますので、自分のところでまだ何とかなるということになっておりまして、外から捕獲者を入れて達成するということは、まだ話に出てきておりませんし、縄張りというものがございまして、他の地域からそこに入ってこられたら、けんかになることも考えられます。そういったこともありますので、他の地域から入るということは、数年後でも恐らくないと思われます。

【小泉委員】 ありがとうございました。

【山岸委員長】 はい、どうぞ、福田委員。

【福田委員】 私も林業をやっておりますのでよくわかるんですけれども、広域の計画の策定が必要とおっしゃっていましたけど、確かにそうだと思うんですね。私は東京都なんですけれども、東京都にシカがいなくなると、山梨に増えたとか、埼玉に増えたとか、そういう感じです。こちらがよければあちらが悪くなる感じで、絶対数は減っていないんです。ですから、国の強い関与、もしくは市町村単位の計画が必要で、それをみんなで話し合いましょうかということを徳島とかとまだなさっていないんですか。

【香美市(高橋主事)】3ページの写真1をご覧いただきたいんですけれども、この写真1で、実は先ほど申し上げたとおり、高知県側は手前、向こう側が徳島県ですけども、ここでまず狩猟期間が違うんです。高知県については、1カ月間延長されまして、3月15日までなんですが、このグレーチングの向こうでは、2月15日までが狩猟期間ということです。私も高知県の人間ですが、最近、徳島県側のニホンジカの会合によく呼ばれることがありまして、問題提起を行っております。その中で、現在、徳島県でも、捕獲に目を向けていくべきじゃないかという話が出ていまして、まず、私が高知県の突破口になって話し合いを持っていきましたので、次の段階ですが、広域に向けた会議といいますか、そういったものが開かれるのではないかと考えております。

【山岸委員長】 ありがとうございました。

【山岸委員長】 どうぞ、市田委員。

【市田委員】 先ほどお話のあった、この鳥獣被害対策実施隊についてお尋ねしたいんですけれども、この実施隊は、被害対策も含めていろんなことをやっていらっしゃるんだろうと思うんですが、実際に勤務されている時間の中で、捕獲に使える時間はどのくらいあるのでしょうか。それから、鉄砲を使わないということについては、何か特別な理由があるのでしょうか。

【香美市(高橋主事)】 仕事に使う時間でございますが、1週間で半日、4時間ぐらいあればいい方だと思います。この実施隊の主な活動が、小動物用の捕獲おりを使用し、特にハクビシンとかタヌキなど、人家の近くに来て危険ということで、そのおりを仕掛けて捕獲するということを主な実務にしております。それから、もちろん被害対策の推進の一環として、被害対策についての考え方等を市民の方に広めていくということも実務の中に入れております。銃猟免許の取得については、これはもう割り切って申しますと、いつ自分も他の部署へ異動するかわかりません。市役所の職員ですので。税務課へ行くかもしれないし、福祉関係に行くかもしれないということで、自分でも思案中ですけども、なかなか銃を取るまでには至っていません。

【市田委員】 ありがとうございました。

【山岸委員長】 何かほかにはありませんでしょうか。

(なし)

【山岸委員長】 高橋さん、ありがとうございました。
 では、引き続きまして、林業被害関係で、鹿児島県の伊佐愛林有限会社の今吉代表取締役、よろしくお願いいたします。

【(有)伊佐愛林(今吉代表取締役)】 皆さん、こんにちは。私は、素材生産、造林業、特用林産物、椎茸の栽培、あと水田も少々やっていますが、本来、国有林の請け負いが多いものですから、確かにシカが多くなっているとの実感はあります。シカの害が増えているのも事実であります。
 まず、2ページ、鳥獣(シカ)被害の現状。もちろんサルの被害もあるし、イノシシの被害もありますが、とにかく問題となっているのはシカです。イノシシに関しては、被害が増えたという報告は受けておりません。とにかくシカの被害が林業関係でかなり多いという状況です。
 伊佐市は、南九州の紫尾山系に位置し、以前からシカの生息地ではありますが、年々年々増加しており、シカの増加に伴いヤマビルの被害も広がっています。伊佐市は盆地であり、周囲のドーナツ状の山林で生息数が増え出し、ほぼ1周している状況であります。昼間は2~3頭しかいないんですが、仕事を終えて、暗くなって林道を帰る際、10数頭から20頭のシカの群れをほとんど毎日のように見るぐらいです。
 林野率が71%を占め、国有林率が46.1%と高く、戦後の高度成長期の流れに沿って広葉樹林が伐採され、人工林(主にヒノキを植栽)が急激に増加し、鳥獣等の食べ物が減少したことで、人里近くまでおりてきたこと、また天敵がいないことから、増加の要因と考えられます。伊佐地方の約7~8割はヒノキを植林しています。スギの被害もあるらしいのですが、特にヒノキの被害が多いと見られます。
 樹皮を食害するのではなく、角磨きによる、ヒノキ等の樹皮の剥皮被害が多数見られます。被害を受けた立木はそこから腐食が始まり、風が強いときに根元付近から倒木しているものもあります。写真は最近になって被害を受けたもので、樹齢12年ほどの樹木です。全体の被害状況としては、植栽本数の5割程度が被害を受けている状況であります。また、農産物の食害が近年増え始めています。
 対策として、まず、行っているのはシカネットです。自分の林地の周りをシカネットで囲むとか、それにプラスして、被害を特に防ぎたい箇所に、さらに二重にシカネットを張ったりしています。また、剥皮対策として、太い樹木には、120~130の高さで幹にネットを敷き、一番玉対策としています。植栽の際も、末木枝条等で隠すように植えると被害が少なくなるとか、下刈事業も、蒸れを防ぐ程度の刈り払いにとどめ、造林木の直近の雑幹木は残すようにする等の方法を取っています。また、間伐の際には、切り捨てた間伐木を将来有力木となるような樹木の根元に積み上げて剥皮被害を防除する包囲間伐なども行われています。先ほども言いましたように、主にヒノキの被害が多く、苗を植えても食害にあうと、結局、上に育たず横に広がって盆栽のように育ってしまい、結局、不良木となり、、製材品がとれるようなヒノキにはならない。なお、イヌマキ、センダン、クスノキ等の被害の実態はない。また、狩猟者が高齢化して、シカの増加率に比べ捕獲数が追いつかない。あと、一番これが問題なのだが、捕獲した肉の需要が少ないことから、狩猟者が捕獲を好まない。シカの肉は食べられるところもあるが、全体の1~2割程度であり、残り8~9割は処分しなければならないが、その費用が高くなる。このため、イヌがシカを山から追い出しても銃口は向けるけが捕獲はしない。イノシシは肉としての需要がありますから、捕獲します。とにかくシカの肉がある程度まで食用として商品化できれば、狩猟者も捕獲する。現状では、シカがとれて、友人たちに「シカがとれたから食いに来いや」と言っても、「イノシシじゃないの」、「イノシシだったら食べに行くけど、シカはもういい」、「おいしくないから食べない」、そんなもう風潮になっています。
 とにかく、皆さんいろいろと対策をやっているのですが、シカネットによる防除が中心です。だから、とにかくシカ肉の食用化を進めるため、山から大体1時間以内の場所に、食肉加工センターを各市町村、3カ所、4カ所程度設置して、とれたらすぐ食肉に加工し、残った残滓は、まとめて処理することができれば、皆さんシカを捕獲するのではないかと私は思っています。
 私は、20年ほど前から林業をやっていますが、20年前にはなかったことです。シカが、毎日のように、10~20頭の群れで、夕方になると林道を走っているという現状でございます。
 

【山岸委員長】 今吉様、ありがとうございました。
 今の説明につきまして、ご質問、ご意見がございましたら、どなたからでも。

【(有)伊佐愛林(今吉代表取締役)】  あと、被害を防ぐには、あまり良い方法ではないが、除伐や保育間伐後に、除伐木、間伐木をそのまま林地に残して置くことも一つの方法です。人が通りにくくなった林地には、シカも入ってこない。結局、きれいに整備された山は、人間も歩きやすいが、シカも入ってきやすいと感じます。
 とにかく絶対数を減らさないことには、被害は減らないと思っております。

【山岸委員長】 よろしゅうございますか。

(はい)

【山岸委員長】 ありがとうございました。
 高橋先生がちょっとお見えになっていないので、予定を変えまして、引き続き、自然保護関係で、CBD市民ネットワーク法制度部会の草刈部会長から説明をお願いします。

【CBD市民ネット(草刈部会長)】 CBD市民ネットの生物多様性関連法制度部会の草刈です。
 CBD市民ネットは、生物多様性条約の締約国会議に向けて結成された、市民団体のネットワークです。その中で、生物多様性の関連の法制度を扱っている部会になります。
 まず、このヒアリングの率直な感想をお話しさせていただきますが、議論は鳥獣保護を図るための事業を実施するための基本的な指針の改定に向けたヒアリングだと思いますが、過去3件のヒアリングが、どちらかというと特定鳥獣に対する基本的な指針の改定のヒアリングのように見えてしまいます。野生鳥獣全体の基本的な指針をどう改定するかという議論なので、特定鳥獣にあまりにも偏っているのはいかがなものかなというのが率直な意見です。
 私ども市民ネットは何人かメンバーがいますので、それぞれ担当から少しずつ意見を申しますが、私は、指針の見直しのあり方についての意見として、全体をお話しします。まず、1)番に書いてありますが、鳥獣の基本的な指針ができたのが2007年で、それ以降、さまざまな物事が変わってきています。2008年に鳥獣被害対策特措法が施行され、また、同年に、生物多様性基本法が制定され、この法律に基づいて生物多様性国家戦略が策定されているわけで、その国家戦略の中の一つとして鳥獣というのは扱われている。さらには、今年の10月に生物多様性条約の締約国会議が開催されて、新たな10年の目標が定められた。そのような中で、ツキノワグマの異常出没があり、ニホンザルの大量捕獲があり、このほかにも海洋生物の多様性の保全戦略をつくる議論などもおこなわれているという状況がありますので、そのような社会状況と社会的な流れを踏まえて、この指針の改定を考えていくことが、まず大前提にあるのではないかなと思います。特に生物多様性基本法という鳥獣法の上位法ができましたので、その上位法に基づいて、この基本指針をどうするかというような議論が非常に重要ではないかなと思います。
 第1回目の小委員会を傍聴させていただきましたが、配付資料の中に、愛知目標の仮訳は配付されていますが、生物多様性基本法については配付されていなかったので、どうかなという気がしています。
 まず、基本法の基本原則には、生物多様性の方針が明記されていますので、この基本原則に基づいて今回の指針をどのように扱うかを考えていかなければいけないと思っており、あえてフォーラムのその条文を抜粋して、そこに入れてあります。
 それから、この基本法の第21条の多様な主体と連携及び協働、自発的な活動の促進という中に、こういった民間団体の責務も入っていますが、いろいろな政策形成の民意の反映ということで、透明性・公正性を持って行わなければならないことが述べられている。今回の委員のメンバーの中に、国内で生物多様性保全を行っている団体が入っていないことは、いかがなものかなと考えている。
 まず、生物多様性条約で何が決まったかというと、地球全体から言えば、生物多様性は非常に劣化が進んでいて、それを何とかしなければいけないので、生物多様性の主流化が第一の目標に挙げられていて、生物多様性の主流化をどう進めていくかというようなことが非常に重要だと思う。
 それから、COP10で決まった愛知目標なり、それぞれの決議に基づいて、2012年には生物多様性国家戦略が改定されると思うが、そこで新たにいろいろな取り組み指針として書かれるとすると、今回改定される基本指針はどのように位置づけられるのかが全然見えていない。例えば2010年に改正された国家戦略での書きぶりと基本指針の整合性がないのであれば、この後、また基本指針を変えるのかどうか、その辺りの対応がよく見えていない。個別の案件はほかのメンバーにバトンタッチしますが、高知のツキノワグマのことをあえて加えさせていただければ、四国のツキノワグマは、絶滅のおそれの高い地域個体群として挙げられていて、深刻な状況であることは、科学的に検証されおり、生息地が非常に狭いことから、生息地を拡大しなければいけないという問題があるが、先ほどは、シカのお話だけで、バランスからすると、高知のツキノワグマのことも考えて議論していただければ非常にありがたいと思います。特定鳥獣保護管理計画に関する広域制度をつくることは、非常によいことで、その際には、著しく個体数が減少したクマのことも加味して議論していくことは、非常に重要なことだと思います。 

【CBD市民ネット(野上)】 地球生物会議の野上と申します。
 今日お話ししたいことは3点ありまして、一つ目は国の基本計画について、二つ目は特定鳥獣保護管理計画、あるいはこの本指針と鳥獣害対策特措法の関係、三つ目は有害捕獲に関する諸問題です。
 本指針は、1部と2部に分かれており、1部は国として行うべき役割が記されています。何よりも基本事項として、本指針の策定を含め、野生鳥獣に関する政策立案、施策等、すべての段階において市民参加を促すことを明記していただきたいと思います。
 また、野生鳥獣は国民の共有財産であり、国民の合意のもとに保護管理がなされるものであること。そのためにも、鳥獣保護員の公募制を進める等、広く一般市民、国民の参加意識を高めるような施策を展開していく必要があると思います。
 先ほどの話でもありましたように、農山村がどんどん過疎化し、人が少なくなっています。猟友会も、もちろん高齢化して人が少なくなってくる。野生鳥獣の問題は、猟友会だけの問題でもなく、農山村だけの問題でもなく、日本の人々すべての問題であるという意識を高めていくためにも、さまざまな施策に参加できる制度を入れていくことが必要であると考えます。
 また現在、地方分権や、鳥獣害対策特措法の制定などで市町村の役割が非常に大きくなり、国の方針と地域の実態がかけ離れているようにも考えられます。その対策として、国は常に市町村レベルの情報を収集し、特に自治体間の境界を越える広域的な問題、先ほどからも議論にありますように、広域指針の策定に現在国がほとんど関わっていないのが問題だと思いますので、国がこの部分について、全国的な視野から野生鳥獣の保護管理に関する明確な指針を出していく必要があると思います。
 次に、特定鳥獣保護管理計画と鳥獣害対策特措法の関係で。特定鳥獣保護管理計画は、生息地管理、被害対策、個体数管理の三つを基本としていますが、2008年に鳥獣害対策特措法が施行されたことにより、被害対策についてはほとんどが特措法に委ねられました。さらに、特措法のもとに市町村計画が立てられて、有害捕獲が積極的に行われるようになり、個体数管理の部分も特措法に委ねられた格好になっています。
 一方、生物多様性国家戦略では、特定計画を現在の107計画から170計画にする方針を示していますが、特措法ができたために、特定計画を策定するインセンティブが失われてしまったと考えられます。そうなると、都道府県レベル、あるいは県境を越える広域レベルの取り組みがますます重要となってきます。その対策として、本事業計画と特措法の市町村計画との整合性を確保するために、都道府県は速やかに特定計画を策定すること、さもなければ、特定計画のない都道府県では特措法に基づく市町村計画は樹立できないといった措置を定めていただきたいと思います。
 特措法に基づく市町村の計画は、鳥獣保護事業計画との整合性がとれたものでなければならないわけですが、本指針の改定前に特措法が制定したために、本事業計画がないがしろにされるのではないかと懸念されます。速やかに本指針において特措法との整合性を確立し、環境省としての方針をしっかり定めていただきたいと思います。
 次に、有害捕獲に関する諸問題です。
 鳥獣の捕獲許可権限が市町村に委ねられ、さらに捕獲の規制緩和が行われたことにより、捕獲の現場では、さまざまな違法・脱法行為が見られると聞いています。例えばわなに標識がない、わなの見回りをしない、錯誤捕獲の動物を放獣しない、あるいは殺処分の方法も、水没させる、餓死させるといったことがかなり広がっていると聞いています。
 問題なのは、有害捕獲の場合は、規制が狩猟よりもはるかに緩いということです。例えば狩猟で禁止されているトラバサミは、有害では許可されています。くくりわなの直径12センチ規制も緩和されています。設置するわなの個数の上限もなく、見回りの義務もありません。有害捕獲では、わなは野放し状態になっています。
 その結果、何が起こっているでしょうか。今年は各地でクマの出没が報じられ、捕殺数は11月末で3,419頭に達しています。しかし、この数字にあらわれていない数字があります。それはイノシシやシカ用のわなにクマがかかる錯誤捕獲です。長野県に聞きましたら、ツキノワグマの錯誤捕獲件数は、平成20年度は55件、平成21年度は82件であったものが、本年の平成22年では、10月末までに166件もあったということです。この数字は、長野県の統計捕獲頭数には含まれていません。長野県では、基本的に錯誤捕獲は放獣しているとのことですが、他県ではそのまま捕殺されることが多いと聞いています。
 今回添付した資料、信濃毎日新聞にも、地域によって錯誤の対応、あるいは放獣する等の対応がまちまちであるということが書かれています。
 驚くべきことに、錯誤捕獲で捕殺された頭数は報告義務がないということです。そのために、実際の数値は、今年は既に4,000頭を超えている可能性もあると思われます。環境省でも錯誤捕獲の統計をとっていませんが、今後、鳥獣関係統計に錯誤捕獲と放獣の有無の項目を設けることを強く要望したいと思っています。
 次に、わなの規制緩和ですが、錯誤捕獲の急増は、わなの規制緩和と特措法による捕獲の促進という政策が生み出したものと推定されます。長野県では、今年、あまりにも錯誤捕獲が多かったために、来年度は錯誤捕獲の多い夏季にはわなを架設しないようにする等の対策を講じたいと言っていました。今後とも、安易な捕獲方法としてのわな捕獲が増えていくことは予想されますので、安易な規制緩和をしないことを明記していただきたいと思います。また、錯誤捕獲の防止の方法についても、より具体的に明記していただきたい。
 また、実際に鳥獣の捕獲頭数はかなりいい加減で、本当にこの数字が現実を反映しているのかどうかということもしばしば耳にするところです。例えば、従来、有害捕獲では報奨金が出されており報奨金をもらうために数値が報告されてきたわけですが、特措法が制定されて大変たくさんの補助金がつくようになったために、報告義務のインセンティブが薄れているということも聞きました。捕獲数は、鳥獣の生息実態の基本資料でもあり、正確な報告義務があることを広く周知徹底していただきたいと思います。
 次にトラバサミについてですが、今年の春、都道府県にトラバサミの使用許可に関するアンケートを行いました。資料として添付しています。これによると、トラバサミを許可している自治体は34道府県あり、しかも、その大半がトラバサミの販売・使用実態について把握していないことがわかりました。トラバサミについては、これまでもたびたび国会で議論されてきましたし、既に狩猟で禁止猟具になったものを許可捕獲で認めるのは矛盾しています。また、現在でも通信販売ではだれもが自由に買える状態が続き、実質的に野放し状態です。トラバサミについては許可捕獲においても速やかに禁止していただきたいと思います。

【CBD市民ネット(坂元)】 NPO法人トラ・ゾウ保護基金の坂元と申します。
 本日は、ツキノワグマの保全の観点から、基本方針見直しにあたり、お願いしたいことについてを簡単に申し上げます。
 私の資料は、このCBD市民ネットの資料の中の6ページ目の終わりからとなります。
 私が本日申し上げる意見は5点になります。
 まず、一つ目の意見ですけども、この基本指針は、基本的に二つの大項目に分かれております。基本的事項と呼ばれるものと、もう一つは事業計画の作成に関する事項です。私の一つ目の意見は、このうち基本的事項に関わる部分です。この基本的事項の中に、特に保護管理に当たって留意が必要な鳥獣が書かれておりますが、現在の基本指針では、生息分布が隔離されている鳥獣のみ記述がなされております。ぜひ、有害捕獲数の年変動が大きく捕獲数が多い年は相当量の捕獲がある種、こういうカテゴリーを加えていただきたいと思います。これはもちろん、ツキノワグマのことですが、本年は、2004年、2006年に続いて非常に大量に捕殺されております。多くの方々の生命・身体に関わり、また、クマ自身も多く命を失い、長期的に見ますとクマの保全、野生鳥獣の保全に対する一般国民の理解を削ぐような事態であります。こういった種に関して、特に保護管理に当たり配慮をするというのは合理的ではないかと考えます。それから、意見の2番目ですけども、ここから後は基本方針の大項目の2番目、事業計画の作成に関する事項に係るものです。この2番目の大項目は、この基本方針を受けて、都道府県が具体的にどのように計画を策定するのか、そのガイダンスになるものですので、特に重要なパートだと考えられます。
 意見の2番目は、有害捕獲の許可に関するものですが、現在の指針では、ツキノワグマやイノシシ、ニホンザルなど、特定計画が作成されている鳥獣について、有害捕獲に依存するのではなく、できるだけ特定計画の個体数調整としての捕獲に努めなさいと記述されております。これはもっともなことであります。ただ、今日も議論になっているようでが、特定計画の策定が必ずしも十分に進んでおりません。そういう状況のもとでは、さらに一歩踏み込んで、これらの種に関しては、特定計画の策定自体にも努めるとする記述を加えていただきたいと思います。法律上、策定は任意で義務づけはありませが、努力を促すことを基本指針で記載することは非常に重要ではないかなと思います。
 それから、意見の3番目、これも有害捕獲の許可に関するものですが、先ほど基本的事項の中で、保護管理に特に配慮が必要な鳥獣として、捕獲数の変動があり、たくさん獲られる年もあるものを加えていただきたいとお話ししましたが、その基本的事項の記述を受けて、具体的に都道府県が事業計画の策定に当たって慎重に捕獲許可を行い、また、捕殺にかわる学習放獣を積極的に活用することをガイダンスしていただきたいと思います。
 意見の4番目と5番目ですけども、これは現在の指針では書かれていないことですが、意見の4番目は、今申し上げた点と重なりますので、そこに譲りたいと思います。意見の第5ですが、これは、現行の指針では、都道府県に対するガイダンスとして、生息環境の管理と被害防除対策への取り組みについて、具体的な記述がないという点です。これは基本指針の大項目の1番目、基本的事項の中には記述がございます。これは特定計画を策定する場合、個体数調整と並んで、生息環境管理、被害防除対策をしっかり行って、そのための体制についても整備をしなさいというガイダンスがございます。しかし、具体的に都道府県に指導するこの第2項目になりますと、この点についての記述がありません。そこで、今回の見直しに当たって、ぜひ第2の事業計画の作成に関する事項においても、生息環境管理、被害防除対策について書き込んでいただきたいと思います。
 具体的に、特にツキノワグマの関係で申し上げますと、私の資料の最後のところに書いてございますが、自然林を中心とした森林の保護ですとか、人工林の広葉樹化、人工林の手入れ、こうしたことを生息環境管理の重要な要素として書き込んでいただきたい。また、被害防除対策としましては、鳥獣による里地里山の利用形態の実態把握、ツキノワグマにつきましては、里グマなどと俗に言われまして、行動形態がかなり変化してきているのではないか、それが分布の拡大と関係しているのではないかということも言われておりますが、各都道府県での実態把握が非常に重要だと考えます。その上で、各地域に適した奥山と里の間の緩衝地帯の再構築についてのガイダンスをぜひ記述していただきたい。
 毎年、クマと人との遭遇の回避、遭遇した場合の対策について、各自治体が非常にご苦労されて、いろいろな事業をなさっていますが、やはり抜本的なところで行動がとられていきませんと、これからまた、こうした悲劇が繰り返されると思います。ぜひ、今回の指針でご対応いただければと思います。

【CBD市民ネット(古南)】 続きまして、財団法人日本野鳥の会の古南から、主に鳥類に係る部分で3点申し述べたいと思います。資料の8ページからになります。
 今から申し上げることは、いろいろな社会情勢の変化ということもございますけれども、前回指針の検討の際に十分議論できなかったものととらえていただければと思います。
 1点目が鳥類の安易な飼養制度の廃止ということです。
 ちょっと耳慣れないかもしれませんが、山岸委員、市田委員、あるいは三浦委員は、前回指針でご議論いただきましたのでよくご存じのことと思います。鳥獣の捕獲許可の基準で、その他特別な事由を目的とする場合というのがⅡの第四のところに出てきます。これは、個人がみずからの慰楽のために飼養する目的で捕獲することが認められておりまして、日本では、今現在、メジロ1種類だけが、この対象になっているというものです。これは、捕獲基準のところで見ますと、非常に理念と矛盾しておりまして、鳥獣は本来自然のままに保護すべきであるという理念にもとるのみならず、鳥獣の乱獲を助長するおそれもあると言い切っておりますので、「飼養のための捕獲はこれを禁止する」というふうにするのが国語上自然な流れと思いますが、それがなぜかメジロ1種類が残ってしまっているということです。
 1ページめくっていただきまして、9ページの真ん中あたりに参考2というのがございまして、これは前回指針もあわせて検討した検討会の報告書にも出てきますけれども、これは歴史を振り返りますと、昭和32年(1957年)に、既に本来は捕獲を禁止すべきという文言が出てまいります。実に53年かかっておりますけれども、53年かかって、この1種がなかなか消せないという状況です。2007年の前回指針の検討の際にも、ホオジロとメジロだけが残っていたんですが、もう廃止すべきという意見が検討会で大勢を占めておりました。にもかかわらず、環境省は、なぜかこのメジロ1種類だけを残して暫時廃止するとしました。暫時というのは、53年かからないと減らせないものかと非常に疑問に思っておりまして、何か特定の利権と結びついているのかというふうに受け取れるほどの抵抗でございました。これはもう今回ぜひ知っていただきたいというふうに思います。
 今回、ご議論いただいているのは告示の改正ですけれども、実は省令にもこのようなことが出てきまして、省令の改正もあわせて必要かと思いますが、これは環境省の内部の検討だけで消せるものです。環境省の判断で、メジロを飼ってもよいということが53年続いているということでございますので、ぜひ消していただきたい。
 なぜこういうことをくどくど申し上げるかといいますと、特に10ページの上の方に、愛玩飼養制度が密輸を助長しているという確かな事由が幾つも出てきます。ここには近年のものだけをごく一部書き連ねましたけれども、奈良県ですとか、徳島県、三重県、広島県などで、密猟者が愛玩飼養の登録票を持っていて、しかも、それを偽装して、警察に「これを持っているから適法なものです」と言い張っています。こういうことが全国で横行しております。これは警察、あるいは鳥獣行政の取り締まり上も、非常に大きな障害になっております。密猟者自身が、あんなものはやめればいいのにというふうに言っているという話もありますので、ぜひ、ここは一歩踏み込んでいただきたいというふうに思います。53年の宿題を片づけていただきたいと思っております。
 あと2点申し上げますが、11ページのところに、人畜共通感染症への対応ということでご指摘申し上げました。先ほどのクマのところでもありましたけれども、実はⅠ番とⅡ番で、この問題については対応しておりません。Ⅱ番のところに、人畜共通感染症への対応が、その他というようなところに出てきており、扱いが軽くなっております。ちょうど今、高病原性鳥インフルエンザが全国で野鳥にも発症しておりまして、出水では希少種のツルが死ぬという、非常に深刻な事態になっておりますが、これは感染症に関して、野生鳥獣の側のモニタリング体制がまだ不十分ということだと思われます。鳥インフルエンザだけではございませんけども、いろいろな大量死が起きたときに、環境省で一括的にこれを分析するという形にはなっておりません。それから、各県で傷病鳥の救護を行っておりますが、いろいろなデータが出てきます。この原因を解明する方向になっておりません。生物多様性国家戦略では、鉛中毒のことだけ書いておりますが、疾病や事故というのも非常に大きな深刻な状況を招いている部分がございます。それから、感染症に関しては、もちろん人間の生活に大きな影響を与えるものです。ところが、家畜とか、人間の側だけをモニタリングしていても、これは解決しない問題ですので、ぜひ、ここも一歩進んでいただきたいというふうに思っております。
 3点目は、鳥獣害防止策の適切な指導ということです。先ほど、有害鳥獣駆除を市町村に権限移譲していますが、やり切れていないというお話が出てきました。鳥類についても、ここでは二つ事例を挙げておりますが、市町村で有害鳥獣の防止策が手に余っているという状況があります。この12ページですが、写真を見ていただくとおわかりになると思いますが、霞ヶ浦で毎年1,200羽というような、多数の鳥が事故で死んでおります。これは未必の故意だと、かかるのがわかって張っているという状況とも言えるのですが、特に問題だと思うのは、12ページの下の方の写真です。これは横糸のある網になっておりまして、防鳥網と称しておりますが、構造上は、かすみ網だと思いますので、違法行為ではないかと思われます。あるいは、めくっていただいた上のページで、オオタカもかかっており、こういう状態が6年も続いています。農水省の補助金で買った網なのでこれは外せませんと話しています。実は今年度から、特措法で新しい予算がついております。こういうことを根本的に防止しないといけないわけですが、防鳥網という手段しか市町村が考えつかないものですから、こういう状態になっているということです。
 それから、事例はサギ山ですが、卵を取る捕獲許可で、違反して、ひなを取ってしまったというようなことも起きています。非常に初歩的なミスだと思いますけが、これも捕獲による方法ではなくて、前年度、サギ山に対する適切な措置をしていれば、こういうことは起きなかったということです。
 鳥による被害も増えていることは事実だと思いますが、対策に必要な知識が広がっていかないということもあり、これはやはり国と自治体の連携において解決していただければというのが趣旨です。

【CBD市民ネット(倉澤)】 CBD市民ネットの法制度部会の最後です。倉澤と申します。
 私からは、指針の中にもう少し強い言葉を書き入れることで、2002年に適用除外となった種についても、もう少しご検討いただきたいということです。
 覚えておいでの方もおいでになると思いますが、2002年に鳥獣保護法が改正されて、定義が新たにでき、原則、すべての鳥獣がその対象となりました。ただし、80条の除外規定というのがありまして、海棲哺乳類の一部は、他の法令で適切に捕獲について管理されていることから除外されてしまいました。
 その当時、国会の議論も、結構盛り上がりまして、今の環境副大臣の近藤昭一さんなども、既に100数十頭しか残っていない希少なニシコククジラについて、対象外とするのはおかしいのではないかというような質問を国会でしていました。
 13ページの下の方に、基本指針にも書いてありますが、他の法令による適切な保護管理が図られないと認められるときは、速やかに適用除外の検討の見直しを図るものとするとあります。このニシコククジラですが、2005年に、希少な雌と子供が3頭、翌年には雌が1頭、定置網にかかって死亡しているという事故がありました。雌は、もう26頭ぐらいしかいないと言われていので、これは大きな事件でした。
 水産庁は、2007年に水産資源保護法をコククジラに適用しましたが、水産庁自体、その目的が水産業の振興ですので、種の保存、あるいは回復というところについては、ツールを持っておりません。ほかの種についてもそうですけれども、保全をしていくことについては、水産庁だけでいいのかということを考えさせられる事件だったと思います。
 それだけでなく、例えば個体群の保全ということを考えれば、いまだにツチクジラのオホーツク個体群は、下が310、上が1,000、推定個体数660ということですが、捕獲は小型捕鯨で継続したりしているわけです。
 これらのデータは、別に私でもアクセスできます。もちろん環境省がそのデータを集められたいということであれば、集めることは可能だと思います。もし検討を始めるということであれば、データはあるというふうに私は思っております。
 何でそれが必要かというのは、水産庁から取り上げろと言っているつもりはなくて、例えば動物園や水族館が環境省と文科省の共管であるように、片方では資源として管理していく方策を、他方では希少な生物についての保全の方策を取り、連携をしていく上で、これは非常に重要なことだと思います。
 もう一つは、今、実際に鯨類とか海棲哺乳類についてですが、専門家の活動の内容そのものが、やはり水産に特化していくということなので、より中立に、あるいは野生生物としての生態を研究していく上では、環境省の関与というのは、絶対に欠かせないものだと思っています。
 もう一つですけれども、一般の人たちに対しても、例えばクジラが旬の魚を食べるというような、粗悪な情報が流れていたりするわけですが、そういうことが本当なのかどうか、科学的、生態的に良質な情報を伝えていくことも必要です。
 実は、この10月23日のCOP10の真っ最中に、「オーシャンズ・デイ・アット・ナゴヤ」というイベントがありまして、そこの中で、環境省が海の生物についても、レッドリストとしての情報を収集していくと言っていることは、非常にありがたいことだと思っております。別に食うなというつもりも全くなく、公正に科学的な形で保護管理を進めていくためには、鳥獣保護法は非常に重要なツールだと思っていますので、ご検討をお願いしたい。

【山岸委員長】 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいま5人の方からご意見をいただいたんですが、質問、意見ございましたら、どなたに向けての質問かということを最初に言っていただいて、どうぞご質問ください。どなたでも結構でございます。よろしゅうございますか。

(なし)

【CBD市民ネット(野上)】 すみません、つけ加えたいことがあります。
 この本指針の印刷物、第1回の検討会でも添付されていますが、これが非常に見づらい。目次は非常に大ざっぱなものですし、ページも書いてありません。小見出し等についても、ちゃんと区分けされていません。大きな見出しは行分けをして、索引をつけるとか、ゴシックで区別するとかして、もう少し読みやすくする必要があると思います。

【CBD市民ネット(古南)】 すみません、もう一件、資料に載せていないんですけど、外来生物法との調整ということでちょっと書き落としたことが一つありまして、これは一つの事例なんですけれども、神奈川県で要注意外来生物のカナダガンをNGOの方たちが捕獲して動物園に収容したいということで、繁殖をし始めてしまいましたので有害捕獲の許可申請を出したところ、神奈川県は、これはだめだということで捕獲ができませんでした。実は学術捕獲で捕獲許可はおりたんですが、学術なので全部捕まえちゃいけないと。それで、実は手取りで全部捕まったんですけれども、捕まったやつをむざむざ放したという非常におかしな事例があります。これは何のための要注意外来生物指定かということがわかりませんので、要注意外来生物の有害捕獲に関しては、指針に特に指摘するべきではないかというふうに思います。

【山岸委員長】 事務局、一言ありますか。

【審議官】 すみません、今日、実は鳥インフルエンザの関係で室長が出水に行っているもので、申し訳ないですがかわりにお答え申し上げます。
 今お話のありました印刷物の仕様については、具体的な話は担当者に任せていますが、できるだけ見やすいように、また、わかりやすいようにしたいと思います。また、一定の段階でまとまったところでパブコメにもかけたいと思いますので、不十分なところがありましたらご指摘いただければと思います。

【山岸委員長】 ありがとうございました。それではよろしいですね。
 そうしましたら、一応休憩にいたしたいと思います。

(休憩)

【山岸委員長】 皆様、よろしいでしょうか。
 それでは、順番がちょっと前後してしまいましたが、人材の養成関係ということで、宇都宮大学の農学部附属里山科学センターの高橋先生に説明していただきたいと思います。

【宇都宮大学(高橋准教授)】 宇都宮大学の高橋です。よろしくお願いいたします。
 私からは、人材養成の取り組みについての事例を説明いたします。栃木県の宇都宮にあります国立大学法人ですが、こちらはご存じの方も多いと思いますが、東北新幹線で東京からおよそ1時間の北関東にある一つの県でございます。周辺には海こそございませんが、いわゆる里山に恵まれている地域で、豊かな自然には恵まれているんですが、その一方で、鳥獣害というものが非常に深刻さを増してきている状況でございます。
 お手元の資料をご覧いただきますと、栃木県の農作物の被害金額の推移について示してございますが、平成12年から平成20年までグラフを示しましたが、鳥獣害ともに推移をがっつりと見て増加傾向にあるというところがおわかりになるかと思います。また、栃木県の場合ですと、平成20年の例では、それまで鳥害の方が被害金額が大きかったんですが、これで獣害の金額が逆転したというような状況にもありまして、特に獣害が近年、増加傾向にあるということが顕著でございます。
 続きまして、獣別の被害金額の推移について見てみますと、次のスライドに示すようになっておりますが、最も栃木県内で深刻な問題になっていますのがイノシシでございます。続いて、ハクビシンも非常に被害金額が多くなってきておりますが、そのほか、ニホンジカあるいはツキノワグマあるいはニホンザルといった、一般的によく鳥獣害で知られている動物がさまざまな形で農作物に対して被害を及ぼしているという状況でございます。それぞれの農家、猟友会等のヒアリングによる農業被害の状況について地図に示したのが次の平成21年イノシシ農業被害といったところですが、イノシシの被害がないのが宇都宮市中心部でございまして、その周辺は日光ですとか、いわゆる奥山に至る中間地点の里山のエリアというのが、ほとんどがイノシシの被害を受けている状況です。続いて1枚めくっていただきまして、シカなんですけれども、シカは奥日光の前縁部の里山において広く被害が見られるところでございます。また、サルなんですが、サルについても、やはりシカ同様に被害分布域が見られまして、ところどころハナレザルよる被害等も報告されているところです。そして、ツキノワグマですけれども、これについては、農業被害に限っては、特に奥山に近い部分に関して幾つか報告事例があります。これらの主要な4種の獣害について被害報告をすべて重ね合わせてみますと、栃木県の中山間地あるいは里山と言われているエリアがほとんど奥からべた塗りになるような状況でして、農林水産業等を行うためにも、この鳥獣害というものをまず目前の課題として克服する必要があるという立地特性になっているわけでございます。
 このように、なぜ里山で野生鳥獣のあつれきが深刻化してしまったのかということを簡単に模式図的に示したのが次のスライドの図になるわけですけれども、基本的には農林水産業の衰退というものがあるというふうに考えておりまして、これに伴って、特に高齢化・過疎化というものが進展いたします。そうしますと、耕作放棄地が増大しまして、こういった場所が野生鳥獣の生息地というふうにみなされまして、野生鳥獣がより人里に近いところまで延伸してくるということになります。そこで鳥獣害が激化しますと、今度は、先ほどは農業収入に関してのグラフを示しましたが、それ以上に、特に里山や中山間地では自家消費農家さん、先祖から受け継いだ土地を守るということを主に、そういった動機で農作業をやっている方たちにとっての精神的な打撃が非常に大きく、それによって営農を放棄するということが頻繁に起こり、それがまた里山の維持管理にとっても非常に問題になります。それで耕作放棄地が増えると。そうすると、さらに高齢化や過疎化が進展するという、いわば負のスパイラルと言われている現象が極めて顕著に出ている状況ではないかと思います。
 その具体的なデータとしまして、栃木県の現在の高齢化率について地図上に示してみますと次の図になるわけなんですけれども、現在、栃木県の場合は65歳以上が21.7%というふうになっておりまして、これは島根県の高齢化率が非常に高いということは全国で知られていますが、その島根県のデータで見ますと、平成7年の水準に相当するということで、今後も、特に関西圏で鳥獣害というのは非常に深刻な打撃を与えていると思いますが、今後、いよいよ関東圏でもこの鳥獣害についてはますます深刻な課題になってくるのは間違いないというふうに思われるわけです。
 そうしたところ、これに対して、まずどのようなことができるのかということを地元の自治体なり栃木県と連携して話し合いを行いました。私ども宇都宮大学では地域貢献活動ということについて、全国的にもトップクラスとして認められている実績がございます。また、特に周辺の恵まれた里山環境というものをターゲットにしました科学教育、そして、地域貢献活動を中心にするための里山科学センターというものを新たに設置したところでございまして、これに自主的に参画することを申し出た教員が20名、そして、里山科学センターの専任のスタッフが私を含めまして10名いるところでして、非常に教育研究体制が整っています。また、もちろん地域の里山の環境を用いました科学教育的な実績があるわけで、宇都宮大学としては、地方大学としては教育研究の実績があったわけです。これに対して栃木県の方では、鳥獣害対策に関しては熱心に活動している県の一つであるというふうに私どもも認識していますが、特に第10次の鳥獣保護事業計画の中で、専門的な知識・技術を有する指導者を必要とされる現場に配置するということが明記されているわけです。また、栃木県が独自に管理指導者養成研修というのを平成18年度から開催していますが、それに毎年50名ぐらいの参加者があって、非常に関心が高いという状況がわかっております。さらに独自の野生動物の研究交流会を6年間実施してきたということがありまして、このような地方自治体の実務経験と、それから大学の持っている教育研究という得意分野を合わせることによって、人材養成プログラムを開発できるのではないかということになりました。
 こちらで取り組んでいます人材養成プログラムなんですが、大きくは二つの目的がございます。一つは、ともすれば野生鳥獣対策というのは、被害農家さんの自助努力等によって行われることが主だったわけなんですが、要するに鳥獣管理を行うための技術者というものは社会的に認知されていないのではないかということが、まず、このプログラムを設立するに当たって得た一つの結論であって、そのような状態を改善するために、端的に技術者として、野生鳥獣対策を行う方々を技術者であるということを表現する一つの端的な表現方法として、鳥獣管理士といった名称の技術者を養成しようということをまず目的にいたしました。
 それからもう一つは、鳥獣害対策をやっても、農家さんにとってはどこに相談したらいいかわからない、あるいは昨今では、出先の市町村にその担当の窓口がつくられてはいるんですが、実際には自治体の中に専門の技術者がいないといったことで、自治体もなかなか手を出せないという、こういったような状況がありまして、この地域での被害を受けている農家さんや、あるいは地方の自治体、そして大学等のネットワーク組織というものをやはり十分に機能させる、地域に密着したネットワークを構築する必要があるだろうということで、この鳥獣管理士の養成とネットワークの構築の二つをプログラムの構想として掲げてスタートしました。
 実際に、このプログラムの内容ですが、特に宇都宮大学の立地特性を生かしまして、座学だけではなく、現場の実習と、それから自治体との連携によるインターンシップを実施するような特色のあるカリキュラムにすることを念頭にカリキュラムを構成しました。
 まず、座学ですが、座学は5科目つくっております。これは野生鳥獣に関する生態学的な知識、そして、その対策に関する知識といったことを主にやったわけですが、これにも増して、鳥獣害対策を克服した後に地域をどのようにしたいのかと、どのようにしたら、その地域がさらに活性化できるのかといったところに関しても十分に考えていただくように、里山科学論ですとか、それから里山再生学特論といったものも設置したのが特色でございます。
 それから、2科目の演習ですが、これは現場のフィールドや大学校内でのGISなどを使った里山科学演習、そして、里山野生鳥獣管理学演習といったものを行っています。
 それから、2科目の現地実習というのがありますが、これは実際に栃木県内の鳥獣害が発生している現場に全員が赴きまして、そこで、こちらに書いてありますのはアライグマ、ハクビシン、食肉加工だとか、さまざまな具体的な現場での対策方法に関しての実習を行うといった構成です。この現地実習に関しては、地元の市町村と、それから時には地元の農家さんにも広く情報を呼びかけまして、年間で12回開催していますが、その半分の6回で延べ336名が受講しているところでございます。
 それから、さらに1枚めくっていただきますと、里山インターンシップというのがございます。この科目は、特に鳥獣害対策のいわば前線基地というふうにも言えるかもしれませんが、それが市町村であろうと。そして、鳥獣管理士という技術者は市町村と役所のそれぞれの担当の方との連携を非常によくとる必要があるということで、実際に受講生が5日間程度のボリュームを持って出先の役場の方のところに職場訪問をするような形で、役場の方たちのそれぞれの仕事内容ですとか、その責務の内容ですとか、役所の方の立場に関しても理解ができる鳥獣管理士を養成するといったものが、この里山インターンシップでございます。
 最終的には、プログラムの修了課題というものが課せられていまして、これは実際に鳥獣管理士として一本立ちしてやっていけるということを各自がみずから証明して、発表してもらうといったものでして、そのような修了課題を修了要件としているところです。
 次のページがプログラムの受講生なんですが、このプログラム自体は昨年度から始まりまして、現在、第1期生39名、第2期生31名の合計70名を受け入れているところです。男女比に関しては男性が非常に多いという特色があります。それから、年齢構成は20代から70代ぐらいまで幅広く受講していただいています。職業構成については、会社員、そして公務員。公務員の方、これは市町村の公務員の方、それから県職員の方、または国の役所の方も受講していらっしゃいました。学生はすべて大学院の修士課程以上の学生でございます。そして、自営業、団体職員等となっております。この受講生について、栃木県内にマップを示してみますと、各地域から広くこのプログラムに参加してもらっていることがわかりました。
 この教育プログラムなんですけれども、科学技術振興調整費という予算をいただいているものでして、これは必ずしもずっといただけるわけではなくて、5年間という時限がございまして、そうしたものにかかわらず、これを恒久的に行うための仕組みも必要であると。また、技術者としての認定をするところ、あるいは技術者のフォローアップをして常に技術推進を確保するためにも、第三者的な機関を大学と栃木県のほかに設置する必要があるだろうという結論になりまして、現在は任意団体でありますが、鳥獣管理技術協会という団体を設置したところでございます。この団体は、鳥獣管理士の資格認定や認定試験を実施する、あるいは研修会や教材の開発等を実施するといったことを目的に、特に鳥獣管理にかかわる方の技術の普及と、そして、技術の社会的な中での保障等々を行うことにしております。
 1枚めくっていただきますと、鳥獣管理士の現在のところの資格制度の状況になりますが、関連する法律等についてはこれ以外にもあるわけですが、制度の連携としましては、既に農水省のアドバイザー登録、あるいは環境省による鳥獣保護管理に係る人材登録等の制度が既にございますので、こういった制度との連携も視野に入れているところでございます。それから、鳥獣害対策に関しては、各自治体が独自の講習会を受けた方に資格認定をする等の方法で、独自の資格制度をつくっているところがありますので、今後、全国的にもし展開するとすれば、そういったところとの連携・調整といったことも必要になろうというふうに思われます。現在は、1級・準1級・2級・3級というふうに区分しておりまして、1級の方はいません。まず、数日程度の講習会を受けて鳥獣害に関して理解が特にある方を3級、そして、知識を持っている方を2級、技術に関して理解・実施できる方を準1級、そして、その知識と技術を経験的にもこなしている方を1級というふうに制度設計しまして、スタートしたばかりでございますけれども、どこまでこれをやっていくのかということがこれからの課題でございます。現在、第1期生の中で特に熱心に学んだ方が鳥獣管理士として認定を受けておりまして、栃木県内での分布を示しますと、このような地図上の点の分布がありまして、さらに、それぞれの行政区域の色づけをしましたが、ちょっとまだいらっしゃらない地域もあるんですが、それぞれの地域の受け持ちのようなこともできるようなことになってきました。
 今後の課題についてなんですけれども、まず、鳥獣管理士という知名度も十分に上げていって、地域の人たちに、この人たちに相談すれば解決できるかもしれないというふうにしていただくことが必要だろうということです。それから、鳥獣害対策については、既にさまざまなところで草の根の活動等が行われています。そういった方々とのネットワークの構築、さらに、実際に既に動いている既存のシステムとの融合についても検討が必要なところです。また、鳥獣害対策というのは、ともすればボランティアでということがこれまで常だったところでありますが、そうではなく、これを何らかの報酬が得られるような形で職種としても認めていただくようなことが必要になろうかと思います。それから、地元の人たちに信頼されて受け入れていただくためにも、この鳥獣害対策ということに加えて、地域の社会的な課題ですとか今後の地域再生等について、さまざまなことがディスカッションできることが望ましいと考えていまして、鳥獣害対策をやったら、次にこの地域をどんなふうによくできるだろうかということにつなげられればと思っております。最後に、これは大変な課題に手を出したと感じております。人材養成プログラムを自律的に運営するためには、さらに労力やお金や時間など、たくさんのものが必要になるんですが、現在のところ、まだまだ手が回らないところでございまして、これをどのように自律的に運営していくかということが課題になっているところです。
 以上で説明を終わらせていただきます。

【山岸委員長】 ありがとうございました。それでは、ただいまのご発表について、ご意見・ご質問がありましたらご遠慮なくどうぞ。小泉委員。

【小泉委員】 森林総合研究所の小泉といいます。大変興味深い報告をありがとうございます。今日のヒアリングの前半でご報告があった捕獲の担い手の減少ということと、それから、市民ネットの方から抑制のきいた統制のとれた捕獲行為ということに対する期待が述べられておりまして、この鳥獣管理士という方々が捕獲の担い手としてどのような活躍をしているのか、また、どのような活躍を期待して育成をしているのか、その点について教えていただけますでしょうか。

【宇都宮大学(高橋准教授)】 まず、この農作物被害等の解消に向けて何をすべきかというところからなんですけれども、私どもの方で鳥獣害対策を行うためには、捕獲というものは一つの有効な方法で、これは必要であるというふうに認めております。一方で、鳥獣害対策でこれまで十分に対応できなかった、人間側の行為による鳥獣被害の発生という側面、例えば、野生鳥獣を誘引するような土地利用とか、農作業上の廃棄物といいますか、不要な野菜等をそのまま放置しておくとか、人間側にも一つ大きな原因を見出せるところす。その捕獲と人間側の野生鳥獣の防除というところと、それから自然環境の整備である生息地管理という3点が重要で、特に私たちのプログラムでは、捕獲の必要性を認めながらも、人間側の土地の利用や、土地との関わり方に特に焦点を絞っているところです。そういったところで、捕獲に関しての理解していただくような講座等はあるんですが、実際に捕獲者を養成するということは積極的に打ち出していないというのが、現状であります。
 一方で、受講者の中に非常に多数、これは数字的に出ておりませんが、猟友会の方が含まれておりまして、逆に私たちが鳥獣害を解決する立て役者だというふうな形で猟友会の方がいらして、その方たちがさらに別のアプローチがあることを学んで、さらにさまざまな鳥獣害対策に対してのアプローチができることを知ったというふうに言っていただいているところでして、捕獲に関しては、やはり猟友会さんですとか、そういったところとの連携を紹介しているところです。

【市田委員】 大変興味あるご発表、ありがとうございました。質問が二つあるんですけれども、一つは、ここの被害金額の推移の表がありますけど、この被害金額は申請された被害金額ですか。もしそうでないとしたら、大学で、実際どのぐらいの被害額であったかというような研究をなさっているのか。

【宇都宮大学(高橋准教授)】 これは研究成果ではありませんで、栃木県からいただいたもので、申請による被害金額でございます。

【市田委員】 大学の方で実際に被害額というのをお調べになっているような事例はございますか。

【宇都宮大学(高橋准教授)】 今のところ、まだ調査には至っておりません。

【市田委員】 もう一つ、この鳥獣管理士をボランティアではなくて、プロとしていくんだということは、大変大切な方向性じゃないかと私は思うんですけれども、ここに来られた方、年齢とか職業とか、いろいろな方たちですけれども、この中の方でプロを目指していこうとかという方もいらっしゃるんでしょうか。もしいらっしゃるとしたら、それで本当に報酬を得ている例がもう出てきておるんでしょうか。

【宇都宮大学(高橋准教授)】 今年の9月30日に初めて修了生を出したところで、実績の収集を今、行っているところでございますが、私どもの方には、例えば年限は二年とか三年とかありますが、鳥獣害対策の専門員のポストがあるが、だれか来て手伝ってくれないかとの問い合わせがあります。これは他県からの問い合わせだったりするんですが、例えば300万円で鳥獣害対策専門の方を2名雇うポストをつくったから、だれかいないかという相談が来たりします。それを修了生に伝えていますが、じゃあそこに行く人が現れるかと思って期待して見ていますと、今のところだれもいらっしゃらないというような状況です。ただ、そういった例が、小さいところも含めていろいろ引き合いが来ておりますので、今後はきっとそういう方が、特に若手の方から出てこないかと思って期待しているところでございます。

【山岸委員長】 何かございますか、ほかに。
 私も言っていいでしょうか。この委員会というのは、要するに国の鳥獣保護事業計画の基本指針を見直そうということで行っているわけですが、その辺の地域の実情も踏まえて指針を考える必要がありますが、地域としてはどうでしょうか。

【宇都宮大学(高橋准教授)】 私たちは地元の問題を解決するために最適解として、鳥獣害対策を担う方たちに、よくわかる端的な資格をつけて勇気づけようということで、この資格をつくったわけでございます。全国的に広げることがまずありきではなくて、その地方で実際に鳥獣害に遭われて困っている方たちに対して何かできるか、そして、それに対して、よし、自分がひとつ解決に対して腰を上げたときに、どのようにしたら勇気づけられるのか、そこから生まれた資格ですので、全国的な方向性については国でご議論いただければと思います。

【山岸委員長】 要するに鳥獣の保護管理を担う者というのは、これはもう非常に普遍的な知識、技術が必要なものじゃなければいけないが、一方で、その地域の状況に応じて対応しなければならないので、非常に局地的な知識、技術も必要とされる。この点が大変難しいと思います。
 ほかにございますか。

【是末委員】 大変ありがたい話をお聞きしました。私ども大分県では、既にこれに取り組んでおります。鳥獣被害のプロジェクトチームと言いまして、アドバイザーを登録して認定士を出しております。昨年と今年度で11回の研修会をやりまして、もちろん参加者は各林業団体、農協、猟友会、鳥獣保護員、それから町村の担当者がいて、そういう方々が参加してやっているわけですから、試験というものはない。ただ、現場での被害対策として、ネットの張り方、木の伐採、休耕田を減らすなどの実技の講習、それから、講師による講習の開催をおこなっています。ところで、この試験制度の1級・準1級・2級・3級は、きちんと試験等で行っているわけですか。

【宇都宮大学(高橋准教授)】 これもまだ制度上で考えているというところでして、試験というのは今後です。なぜこういうふうにしたかといいますと、鳥獣管理士が技術者としてまだ世の中に認められていないんです。その人たちがなぜ鳥獣管理士の技術を持っているのかということを社会の中で知っていただくためにも、この方たちが試験をパスしたということを示すことが必要であろうということから、今後は検討が必要だろうと考えております。

【山岸委員長】 ほかに何かありますか。ちなみに、三浦先生にお聞きしたいのですが、野生鳥獣の保護管理学というのは確立しているんですか。

【三浦委員】 現時点で体系化されているとは思いませんが、それぞれが努力をしているところです。ただ、フィールドワークというか、その枠組みが非常に広いものですから、ベースになるのは生態学基礎分野だろうと思うんですけれども、ただ、技術レベルもそれぞれ、防除の問題から個体群全体の集団のトレンドを変えてみるといったような、非常に縦の軸も横の軸も広がり過ぎています。これは日本だけではなくて、欧米も含めて、ワイルドアニマル・マネジメントとは何を言うのかというのがまだはっきりとしていないですけれども、私はそれはそれぞれの国での生態学的な背景だとか、それぞれの種の構成だとか、それから、生物多様性の位置づけ等々の、そういう相対的な軸でベクトルが決まっていくんじゃないかなというふうに考えています。

【山岸委員長】 宇都宮大学には、ぜひ、その点での確立も期待したと思います。
 ほかに何かございませんでしょうか。
 それでは、高橋先生、どうもありがとうございました。
 最後になってしまったんですが、それでは、北海道自然環境課の方から、テーマは都道府県の問題点ですか、よろしくお願いします。

【北海道(白野課長)】 北海道自然環境課の白野と申します。資料6を1枚めくっていただきますと、私の職名が、特定生物担当課長とあるんですが、これは特定鳥獣保護管理計画の特定ではなくて、環境省が扱う生き物全般と、希少種・外来種を含めた野生生物全般と飼養される動物、これは生き物すべて扱っているという、そんな意味でございます。
 それでは、特定計画を策定し、運用している立場から現状と問題点をお話しさせていただきたいと思います。北海道では、ニホンジカの亜種でありますエゾシカの保護管理計画を策定しておりますけれども、そのエゾシカの生息状況の変化でありますとか、それから、保護管理計画の概要、そして、その問題点を順番にこの資料でお話をさせていただきます。
 まず、1ページでありますけれども、北海道はもともとエゾシカが多く住んでおりまして、上の図の黒い棒が捕獲数なんですけれども、開拓期に、千歳の近くに官営のシカの缶詰工場があり、大量に捕獲をしまして、角や肉を輸出をしていたということで、当時の北海道の経済を支えておりました。それに当時の豪雪が加わりまして、一旦、絶滅寸前にまでになったと。それを受けまして、二度にわたる禁猟措置をとって、1950年以降、だんだん生息数は回復してきたんですけれども、1980年、昭和60年以降、また爆発的に生息数が増えてきたというのが概略でございます。上の図は2000年までの状況ですけれども、その下のグラフは少しその後も、現在までの状況も書いておりますけれども、平成8年、9年ぐらいに急激な増加がありまして、雌ジカの狩猟区域の拡大でありますとか、頭数の制限の緩和など実施しまして、一旦は生息数も被害等も減ってきたんですけれども、再び最近、急激な増加を見せているというのが状況でございます。平成21年度のシカによる被害額は50億8,200万円で、全国のシカ被害の7割を占めております。
 次の2ページに分布の変化を簡単に書いておりますけれども、色のついているところ、濃いところが生息情報のある地点でございますけれども、黒く見えるところというのが、時期によりまして東から西へ分布が拡大していることがおわかりいただけるかと思います。これに伴いまして、下の3のグラフでありますけれども、折れ線が上から東部・西部・南部の被害額を数値化したものでありますけれども、一度、東部で被害額が減りまして、また、再び増えてきている。西部も同様に被害額が増えてきている。しかし、南部はあまり変わらない。こういった状況がおわかりいただけるかと思います。下の○の2番目でございますけれども、このほかにエゾシカによる交通事故は、届け出があるだけで年間1,800件、それから、列車に衝突したり、衝突を避けるために減速をしたり、停止をしたりという運行の支障が年間2,200件、それから、非常に深刻なのは、分布が垂直方向にも広がっておりまして、知床半島でありますとか、天然記念物である夕張岳、アポイ岳などの高山植物も食害に遭っている。さらに、ひづめのかきならしといいますか、ひづめの跡に外来種でありますアメリカオニアザミが侵入したりということで、このエゾシカ問題というのは、単なる農業問題だけではなくて、北海道の生物多様性の危機であると、こんなふうに考えているところでございます。
 次の3ページでは、私ども北海道が保護管理計画を数次にわたり策定してきたんですけど、その変化の対象区域をあらわしております。最初に平成10年に、まだ国の保護管理計画制度ができる前に、独自の計画といたしまして、道東地域を対象といたしました保護管理計画を策定しております。その後、鳥獣法の改正によりまして、特定鳥獣保護管理計画制度が創設された後、その法定計画に移りまして、区域を広げながら、現在、第3期の計画期間を迎えております。
 4ページに、その各計画期間の区域割をお示ししております。全道が対象ではありますけれども、それと被害の状況でありますとか、それから一番重要なモニタリングデータにまだ濃淡がありまして、物が言える部分、言えない部分等がございます。それで、東部地域については管理目標を、ここに書いてありますとおり、個体数の大幅削減による人間活動とのあつれきの緊急的軽減など、数点掲げております。西部や南部については、そこまで書き込めない状況です。それから、知床半島につきましては、全道を対象とした保護管理計画の一部でもあり、また、世界遺産の管理計画の一部でもあるといった位置づけの「知床半島エゾシカ保護管理計画」を別途策定しておりまして、環境省が中心となって保護管理を進めているところであります。
 次の5ページをお開きいただきたいと思います。保護管理計画の策定・運用の基本的な考え方を書いております。まず、東部地域でございますけれども、全道共通ともいえますが、基本的な考え方といたしまして、野生動物の生存率や繁殖率は常に変化をしており、それから、そもそも野生動物の生息数の絶対数というのはわからない。したがいまして、順応的管理と申しますか、フィードバック管理、常にモニタリングをしながら、その状況に応じて捕獲圧の調整で適正な保護管理を目指そうと、この考え方で進めることとしております。
 下に概念図がありまして、次のページに、後ほどご参照いただきたいんですが、管理水準と管理措置の考え方を書いておりますけれども、簡単に申し上げますと、基準年、北海道の東部の場合は平成5年でありますけれども、その時点での生息数を指数100といたしまして、目的としましては、指数50から25の間で捕獲圧を調整しながらコントロールしていこうと、これが目標であります。後ほど申し上げますけれども、目標は立派なんですけれども、その捕獲圧の調整が全くきかないというのが最大の問題であります。
 (2)西部地域につきましても、指数管理を目指しておりますけれども、まだ東部に比べてデータが少なくて、管理水準と管理措置を表示するには至っておりません。
 それから、南部地域はまだまだ、相当最近、シカの数が増えてきましたので、一部捕獲数、被害が生じておりますけれども、指数で評価するにはまだ至っておらないのが現状であります。
 7ページをお開きください。先ほど申し上げましたとおり、考え方といたしましては、個体数管理を狩猟と許可捕獲による捕獲圧の調整で担おうという話であります。また、2番目の○にありますが、同時に捕獲物が、エゾシカ肉でありますとか、エゾシカの皮の積極的な有効活用の推進を図ることも管理に資することであるという考え方で、これについても同時に進めることとしております。3番目の○、具体的な話なんですけれども、「狩猟」による捕獲圧の調整、これはご承知のとおり、狩猟の期間でありますとか、捕獲数ですとか、雄・雌の制限等によりまして捕獲圧を調整することとしております。具体的には※に書いてありますが、一言で言ってしまうと、目いっぱいその制限を緩和しているのが現状であります。4番目の○「個体数調整のための許可捕獲」、これも考え方といたしましては、許可基準を段階的に設定することにより捕獲圧を調整しようという考え方であります。これも※に現在の状況を書いておりまして、これも目いっぱい制限を緩くしているという状況であるというふうにご理解をいただきたいと思います。
 次の8ページには、それでは現在、その結果、指数はどうなっているのかというのをまとめております。まず、東部地域でありますが、先ほど申し上げましたとおり、平成5年の生息数を指数100といたしまして、25から50の間に早くおさめてコントロールしようという話なんですが、残念ながら一度は減る兆しがありましたが、現在は指数の130±20ということで、頭数に直しますと、これは32万頭±7万頭に相当すると言われております。このページの一番下の表には捕獲実績を載せておりまして、研究者の方からは東部地域で個体数を減少させるためには、少なくとも4万頭の雌ジカを捕獲する必要があるとされておりますけれども、現実に捕獲できているのは3万6,000頭でありまして、現在のままでは今後さらに増える状況でございます。
 次の9ページには、西部地域の指数をグラフ化したものを載せております。これは平成12年の生息数を100としたときの指数の変化でありますが、現在は指数が350±60。これは生息数を数字で評価すると非常に難しいのですが、研究者の方からは東部地域と同じか、それ以上に生息している可能性もあると、こんな言い方をしております。学術的にはそういう言い方しかできないんでしょうが、対議会のときには、私ども行政の責任で、今、何頭いるんだという話では、東部と同じという感じで約65万頭が生息していると推定されると、こんな言い方をしているところでございます。
 南部地域については、捕獲数もまだ少ないんですけれども、部分的に高密度の地域が観察されておりますので、引き続き捕獲圧をかけ続けることとしております。
 一番下に全道の捕獲数、字が小さくて恐縮なんですが、簡単に言いますと、東部も西部も合わせますと、減少させるためには雌ジカを8万頭以上捕獲する必要があるんですが、現状では5万6,000頭、あと2万4,000頭、雌ジカを捕獲しなければ減らないということがわかっております。
 次の10ページには、個体数管理に関する課題をまとめております。(1)、まず「狩猟」に関する課題、これは先ほど来、猟友会さん初め、ご指摘いただいていると思うんですが、北海道も全く同じ状況でありまして、下のグラフにありますとおり、最初の棒と次の棒の間には10年間開きがありますが、10年間で狩猟者数が半減し、その後、減少基調で推移している。同時に高齢化が進行しているという状況でございます。それから、下のグラフ、実際に狩猟を担う狩猟者登録者数も同様の状況でございます。
 次の11ページをお開きください。これも市町村さんからお話が出ているのかもしれませんけれども、許可捕獲に関する課題でありますが、許可捕獲は、実質的にはほとんどが有害鳥獣捕獲であるというふうに見ております。これは、基本的には農地の周辺で害があったときに対症療法的に捕獲をするということでありまして、実施体制や予算による制約が非常に大きい。同時に、先ほどの有害鳥獣捕獲の担い手である指導者が大幅に減っておりますので、捕獲圧を高めるのに非常に苦労しているというのが実態でございます。さらに、捕獲をすると必ず、死体が出ます。エゾシカは特に大きくて100キロを超えますので、そのままでは100キロの生ごみが出てくる。谷底から引き上げるのは大変なことであります。なるべく自然の恵みをおいしくいただこうということで、食肉に利用するとか、食べられなくてもペットフードに利用するだとか、そういう有効活用は図りたいんですが、それにしても最終的な処理の問題が出てくる。これから大量に捕獲個体が出てくるときに、それをどうするのかというのが大きな問題の一つでもございます。
 さらに、(3)エゾシカの行動の変化ということが研究者からも指摘されております。効果はともかく、強い捕獲圧を毎年かけ続けておりますので、シカの警戒心が高まりまして、鳥獣保護区でありますとか、狩猟者が行けない場所に日中逃げているという状況が確認されております。それから、本来、夜行性でありますので、下にちょっとグラフを書いておりますけれども、銃器による捕獲ができない夜にシカが出てくるという状況にあります。一番下の○の二つで結論めいたことを書いておりますけれども、一言で言ってしまいますと、現行制度のみで個体数調整を行うことは、もはや不可能であるというのが私どもの認識でございます。
 したがって、お願いといいますか、結論といたしましては、最後の12ページになりますが、「専門家による高効率・計画的な捕獲(カリング)」を速やかに導入する必要があるというふうに考えております。二つの○にも書いておりますけれども、つまり「狩猟」と「有害鳥獣捕獲」の3本目の柱として「カリング」を加える必要があるのではないかという話であります。同時に、その担い手といたしまして、捕獲を行う専門家の存在が必要であるというふうに考えております。先ほど先生からお話がありましたとおり、それはどういう人間かというのが、まだ議論の途中ですが、例えばアメリカの捕獲専門会社の社長は生態学者であります。いろいろなパターンがあり得るのかもしれませんけれども、少なくとも生態学を修めたり、保護管理、マネジメントに通じた者が専門家の一部であることは大変重要なことかなというふうに考えているところでございます。
 下の※に、それに向けて北海道が今やっている事業を簡単に書いておりますけれども、これは今年から環境省の交付金をいただきまして、生物多様性保全推進支援事業という事業を開始しております。その柱は四つありまして、1番目がカリングを支える捕獲技術でありますシャープ・シューティングの実証実験を行っております。これは、警戒心の強いシカをつくらずに、効率的に捕獲するということでありまして、えさ場にシカをおびき寄せまして、寄ってきたシカは確実に逃がさずに銃器で捕獲をいたします。アメリカでは、夜間に近距離から消音器つきの小口径ライフルで精密射撃を行いまして、大きな成果を上げているという事例がありまして、これを先ほどのカリングの柱として北海道でも導入できないかといった問題意識を持って推進しているところでございます。ご承知のとおり、鳥獣法で夜間発砲が禁止されております。それから、銃刀法でも消音器の使用等は基準に合わないということで認められないんですが、その法律の趣旨は安全性の確保、これができるのかということだというふうに理解しておりますので、その実証実験を通じまして、高度にコントロールした状況下で安全性が行政の責任で確保されるのであれば、行うことも可能ではないかというふうな、そういった問題意識を持って実証実験に臨むこととしております。
 2番目は地域における鳥獣保護管理を担う人材育成、これも先生からお話が出ましたけれども、これは何種類か人材育成のプログラムを考えております。まず、大学生でありますとか、今までやったことのない資質のある方、例えば自衛隊のOBでありますとか、新人ハンターを育成する場面、それから、次に地域においては、市町村の現場で鳥獣のマネジメントを担う人材の育成、それから、猟友会の中で人格・見識にすぐれ、技術もある地域のリーダーとなるセレクティブハンターのような、ハンター中のハンターという方に活躍していただけるような仕組みも今後検討したいというふうに考えております。
 それから、3番目、高山植物に対するエゾシカの食害のモニタリングであります。先ほどご紹介したとおり、夕張岳で高山植物の食害が著しいということで、ソーラー発電による電気シカ柵を、今年、試験的に設置いたしましたが、技術的な課題がいろいろわかりましたので、引き続き来年も実施していく予定でございます。
 それから、最後に4番目ですが、実は先ほどの絵にありましたとおり、道東地域でシカの害が著しいんですが、同時に道東地域の海岸部は希少猛禽類の生息地でもあります。したがいまして、狩猟する時期、例えば、繁殖期を避けて狩猟日を設定するなど、いろいろ配慮しているんですが、それに関するデータがどこにもないということで、人の出入りでありますとか、銃声による影響なども研究をしてみたいというふうに考えているところでございます。
 一番下に結論として書いておりますけれども、次期基本指針では、「カリング」を柱として導入すべきというようなフレームを国につくっていただければ大変ありがたいなと思っております。同時に、一定の限定した条件下での日没前の、あるいは日没後の狩猟ができるような鳥獣法の改正でありますとか、それから、少なくとも緊急減少措置が必要な期間は、国から財政的なことも含めてご支援をいただけないか、こういったことをお願いしたいなと考えているところでございます。
 以上です。

【山岸委員長】 どうもありがとうございました。ただいまの説明について、ご質問・ご意見がございましたら、どなたからでもどうぞ。はい、どうぞ。小泉委員。

【小泉委員】 大変先進的な取り組みで、感銘いたしました。私の方から申し上げたいのは、質問というよりは、この審議会に参加されている皆さんにちょっとお話をしたいのですが、北海道の方が代表されて、今のシカの現状、それから、個体数管理に関する問題が指摘されましたけれども、実は、これは日本全国どこでも起きている問題です。例えば11ページに北海道の方から指摘されている、現状で考え得る限りの緩和措置というのを多くの都道府県で進めているわけですが、緩和措置にも限界があって、もう一つブレークスルーできない、シカの個体数が管理できないというのが今の現状だと思います。その上で、12ページに大変意欲的な提案がなされたというふうにお考えいただきたいと思います。ニホンジカは、ご存じのように在来種ではあるんですけれども、個体数が大変増加しまして、自然の生態系そのものに大きなインパクトを与えつつあります。生物多様性、この辺はちょっと考え方にいろいろなところがあるかもしれませんけれども、日本の自然生態系の生物多様性に対する大変大きなインパクト、脅威になりつつあるというふうにも考えております。ということで、北海道から提案された内容というのは、実はすべての都道府県に当てはまるものだということでご理解いただいて、ご審議いただきたいと思います。

【山岸委員長】 ありがとうございました。ほかに何かございますか。はい、どうぞ。染委員、お願いします。

【染委員】 大変おもしろいお話で、ありがとうございました。12ページの北海道の取り組みというところの環境省の交付金事業で取り組むと書いてあるんですが、これは現に本年度、着手しているようなお話と理解してよろしいんですか。それが1点です。
 それと2点目は、上から二つ目の○に書いてありますような、アメリカで会社形式で生態学者さんが社長さんをやっていて、専門的なカリングを行うということなんですが、こういうことまでやるとなると、やはり日本全体を対象としたような一つの組織形態を考え、それが一つのビジネスモデルとして成立するようなものを考えていかないといかんのじゃないかという感じがするんです。そういう意味で、こういうことは日本で可能なのかどうなのか、北海道の方にお伺いするのがいいかどうか分かりませんが、その辺、どういうふうにお考えになっているのかというのを教えていただきたい。その場合には、当然、捕獲するだけじゃなくて、食肉としての資源がかなり出てくるはずですから、それを全国流通させるような、貴重な生物資源を有効活用するような、ビジネスのシステムをつくっていくようなことが必要なのかなという感じもいたしますので、その辺も含めて、どういうふうにお考えなのかというのをお願いしたいと思います。

【北海道(白野課長)】 事業は今年から着手しております。正確に申しますと、北海道と、それから大学、NPOが事業主体となりまして、この事業を実施しております。
 それから、次にシャープ・シューティングが実現したとして、ビジネスモデルの可能性でありますけれども、これは十分に成立するんだろうと思います。例えばアメリカのような独立した会社組織というのは、北海道にも旧野生研、自然研のような調査会社などがありまして、そこがわなの仕組みを考えて実施したり、例えば調査会社の一部門としてカリングチームが所属するというような形もありましょうし、それから、カリングによる捕獲を契約に基づいて、行政の公共事業としてやっていただくというようなことができれば、企業体として成立する余地は十分あると思います。それから、ドイツのようにフォレスターとして、森林官が本来業務の中で野生鳥獣管理もやる。あるいは環境省のレンジャーが生態系管理の一環としてシカの捕獲をマネジメントするというようなやり方もありましょうし、それはいろいろなやり方があるのかなと思います。これからの話でありますけれども、ビジネスモデルとしては成立するのかなと期待をしております。
 それから、エゾシカ肉、現在、大手の企業なんかにも話しておりますが、なかなか独特の問題でありますとか、コストの問題だとかあります。例えばペットフードなら引き合うかもしれないという話もありますし、それから、地域の名物として北海道のいろいろな場所でシカ肉料理が出されておりますし、そんなことも含めて進めていきたいというふうに考えております。

【福田委員】 どこにお話ししたらいいかわからないのですけれども、シカを捕獲して、その後、結局使うというか、処理する。確かに食用というか、そういうのにするのにも、もっと、要するに高級なフランス料理に使えるというようなこととか、それから、私たち女性の意見でやっているんですけれども、革をかばんにしたいなと思って、それでちょっと高級なものにできたらと思って、いろいろとやってみたんですけれども、なかなか個人ではできませんし、結局、いろいろと調べたんですけど、うまくいかないんですね。そういうものがもっと本当にプロジェクトみたいな感じで行うことになれば、シカの捕獲に対して猟友会の人たちももう少し頑張れるかなと思います。また、若い人たちが狩猟のことに関して、もっと興味を持てるかなというふうに思うんですね。ですから、捕獲したあと、それをどうしようかという、出口の面ももうちょっと考えておけば、もっと状況は違うようになってくるんじゃないかなと私は思います。

【北海道(白野課長)】 ありがとうございます。おっしゃるとおりかと思います。実は、北海道で捕獲しているエゾシカのうち、1割しか有効活用がされておりません。先生おっしゃるとおり、ジビエとしまして、肉のいいところはホテルで買い取ってもらえるようになってきているんですが、ほかはどうするのという大きな問題がありますので、有効活用を熱心に、一生懸命やっていきたいと思っております。

【(社)大日本猟友会(梅田理事)】 シカを殺して減らそうというのは、僕は最終的な段階だと思うんですよ。いわゆる畑あるいは牧草地に侵入させなければいいわけですから。今、防護柵というのをしてありますね。私は足寄へしょっちゅう行っているんです。15年ぐらい前からシカ撃ちやっていますけれども、最初はよかったんですよ。ところが今は、今年もあったんですけど、あのシカが柵を飛び越えるのではなくて、よじ登って畑や牧草地に行ってしまう。追われるとそうなるんです。ですから、シカ柵は問題があるんじゃないかと思います。長さというより、一番頂上に有刺鉄線か何かを張って飛び越えるのを防止する必要があります。ちょっと気がつきましたので、よろしくお願いします。

【山岸委員長】 ほかにございませんようでしたら、どうも白野課長、ありがとうございました。
 それでは、次の議事であります。各都道府県から提出された意見についてというのを、これは事務局よりお願いいたします。

【事務局】 今回の指針見直しに向けて、特定計画等について、各都道府県にアンケート調査を行っております。本日は、その回答の状況について、ご説明させていただきたいと思います。
 まず、特定計画の関係ですけれども、特定計画については、沖縄県を除く46の都道府県で何らかの対象種の特定計画の策定をしております。1枚目のページの上の方ですけど、各対象種ごとの現在の計画数をまとめたものです。その下の小さい括弧で数字があると思います。これについては下の注書きにもちょっとあるんですが、年度別で個体数調整の捕獲数を定めるなどの年度計画を策定している都道府県、または県内の地域の状況に応じて、地域計画を作成している都道府県についての数です。
 続きまして、計画の目標の達成状況の評価ということです。特定計画については、基本的に一定の期間で見直しをしながら進めていくというのが効果的であるとされております。ただ、今回の調査で見てわかったのは、計画の評価をする専門的な委員会等を設けていない都道府県が結構あるということです。対象種によっても異なるんですけど、全体の7割については、一定の専門家からなる科学的委員会などの評価委員会を設けているようですが、そうでない都道府県もまたあるということです。
 続きまして、計画の目標の達成度についてです。特定計画の目的の達成の状況を、達成度を100とした場合に、現在どれぐらいですかということで都道府県に回答をいただきました。左側の軸に対象種、右側の軸に各対策の内容を置いております。個体数調整や被害防除についてはあまり芳しくない状況です。また、生息環境整備については、これは、特にニホンジカとイノシシについては、現時点で生息環境整備をするような状況にはないということもあって低い達成度となっております。ただ、クマについてもあまり芳しくないような状況が見られると思います。これらの目標達成が進んでいない理由として、対象種ごとに、この下のページから次のページに挙げています。例えばニホンジカについて、いわゆる生息密度なり生息数が目標としてるレベルに達していないというのが8都道府県、被害が増加している、または横ばいであるが5都道府県ございます。イノシシについても、被害の増加や捕獲目標に達していないというような状況で、計画の目標達成が進んでいないというような状況になっております。あと、クマ、ニホンザルについても、それぞれのような状況になっております。
 目標の達成が進んでいない中で、都道府県として、今後、どのように改善していけばいいのかというのを答えていただいたものが以下の状況です。実際にはもっと様々な意見があるんですが、主要なものをこちらの方に記述させていただきました。例えば捕獲の強化とか、効率的な捕獲の推進、既存の制度が活用されていないというようなところもございますし、特定計画そのものの計画、捕獲数を見直さなければならないと考えているところもあるようです。
 続きまして、次のページです。目標達成に関して、環境省に対し、どのような要望をお持ちになっているかをまとめたものです。例えば生息数を把握するための調査手法の確立や、国指定鳥獣保護区、国立公園内での対策の強化、モニタリングや評価手法の実施基準の策定など11の都道府県が必要ではないかという認識を持っております。また、ヒアリングの中でも出ていましたが、環境省主体でもっと広域管理を進めていただきたいとの意見が3都道府県から出ております。また、財政支援や制度等の改正に対する要望などもございます。
 今のページの下に行く前に、次のページに飛んでいただいて、では現在、各都道府県でどのような連携をされているのかをまとめていますが、例えば単に隣接都道府県との連携を行っていると言っているのは37都道府県で、全体の約8割ぐらいは少なくとも隣接の都道府県と連携しながら情報交換等は行っているというような状況がございます。例えば秋田、青森、岩手ではツキノワグマ保護管理協議会を開催し、毎年1回の情報交換を行っている状況がございます。特に九州では、既に熊本、大分、宮崎、鹿児島がニホンジカについて一斉捕獲、同じ日にあわせて捕獲をするような体制を組んでいるというような話もございます。また、地域個体群の広域管理の必要性について聞いております。これについては39都道府県、全体の85%が必要と回答しています。県単独での保護管理では十分な対応ができない、限界がある、生息密度が高い地域が県境に多く見られるなどのご意見がございました。
 続きまして、人材等の確保について、やはり専門的な人材の配置が現在どうなっているのかを聞いたものです。専門的な人材を配置している都道府県は全体の30%、約14都道府県にとどまっております。ほとんどの都道府県は1人ないし2人か3人なんですが、14人もの専門家を有する県もございます。、これは兵庫県ですが、こういった都道府県もある状況です。その下には、職員に対する研修の実施や研修への参加を実施している都道府県です。こちらの方は約60%の都道府県で何らかの研修を実施していたり、国等の研修へに参加させるなどの対応がとられているようです。
 続きまして、1ページ戻っていただいて、鳥獣保護法第38条の銃猟の規制についても質問しております。先ほど、北海道から夜間の発砲等も今後考えていくべきではないかというようなお話もあったところでございます。各都道府県に聞いたところ、全体で33の都道府県が夜間発砲なり、住居が集合している町中での銃器を使用した捕獲行為、こういったものに対して一定の規制の合理化が必要ではないのかという意見がございました。その大きな理由ですけど、特に今年はクマの出没が多かったということもございまして、一つは町中でのクマの緊急対応ということで、19の都道府県がご意見を上げられております。ただ、この中には麻酔銃のみの規制緩和でもよいという意見が4件ほどございます。もう一つは、ヒアリングでもありましたシカの問題でございます。より効率的な捕獲につなげたいということで、17の都道府県から規制の合理化を考えてもらいたいとの要望がございました。
 愛がん飼養について、現況を都道府県に聞いたものがその下にございます。現在、28の都道府県において、愛がん飼養の目的による捕獲を許可しており、そのうちの24の都道府県については、都道府県の判断による許可の廃止を現在のところ考えていないというようなご回答がございました。各都道府県の主な意見を下に記載しております。
 最後になりますが、一番最後のページの下の部分です。各都道府県から、今後の野生鳥獣の保護管理に向けてどういうことが必要かということで、意見を頂いたものをまとめています。法律に係るものから今回の指針に直接関係するものもございます。こういった意見が都道府県の方から出てきておりますので参考としながら進めていきたいと思います。
 以上です。

【山岸委員長】 今説明のあったのはアンケートの結果ですが、どのようなことを聞いたかについては、その後ろの2ページにアンケートそのものがついておりますので、それも参考にされて、何かご質問・ご意見がございましたら。はい、どうぞ、草刈委員。

【CBD市民ネット(草刈部会長)】 夜間発砲の問題は、千葉でシカの特定計画でやっているときに、たしかサルの駆除隊が2回にわたって、誤って人身事故を起こしたことがあって、全然事業が進まなかったということが実際にあるんですけど、昼間でさえそういう事態が起きているのに、夜間の発砲が本当にできるのか、甚だ心配です。

【事務局】 安全性の話もございますし、じゃあ本当にそれだけ捕獲効率がいいのかどうなのかというお話もあります。その辺は、今後いろいろ検討し、実際にある程度いろいろなものを積み上げていく中で、判断していくべき部分だとは思っております。

【CBD市民ネット(草刈部会長)】 特措法ができたとき、京都の議員が一生懸命勧められましたけど、そのときにも夜間発砲するんだとおっしゃっていましたけど、それもいろいろ問題があったので、夜間発砲というのは本当に慎重にやっていった方がいいと思います。

【CBD市民ネット(野上)】 すみません、ついでに、このアンケートの中で、その特措法との関係については特に聞かれていないわけですよね。

【事務局】 特措法との関係で聞いたものはあります。ただ、ちょっと時間の関係でまだまとまっておりませんで、まとまり次第また提供させていただきます。

【CBD市民ネット(野上)】 特措法はどんどんひとり歩きしていって、特定計画がない県で市町村計画が実施された場合に、やはり目標数を大幅に上回るとか、過剰捕獲とか、科学的な保護管理ができないわけですね、県単位で。その問題はすごく大きな問題だと思うので、そこはもう調べられているわけですね。

【事務局】 今回、調べているのは、調査票の中の3の連携の関係で聞いております。

【CBD市民ネット(野上)】 特措法に関する質問は、部署ですとか、意見交換をしていますかとか、そういうレベルの問題だけですね。

【事務局】 とりあえず今回、都道府県にお伺いしたのはこういったところでございます。

【CBD市民ネット(野上)】 特措法は、やはり鳥獣保護法の根幹に係る重大な問題だと思います。そのあたりの関係や実態をきちんと把握して評価しないと、次の指針に反映させていくことは大変難しいと思うので、ぜひそのあたりを、もう一度アンケートを聞くぐらいの形でやっていただければと思います。

【事務局】 そちらは少し検討させていただきます。

【CBD市民ネット(古南)】 古南でございます。二つあります。一つは、今のアンケートのところで広域保護管理については設問が不適切じゃないかなという気がしたんです。カワウに関しては広域管理協議会が二つあります。関東と中部近畿ですね。それぞれ10都県と15府県だったかと記憶していますけど、そういうものが連携の部分で出てきていないというのは、聞き方が悪いんじゃないかなと思います。

【事務局】 事例のお話をされていると思うんですけど、特に国が主導して指針まで策定している事例については、今回の資料には載せませんでした。というのも、あくまでも、主体的に各都道府県でどういう連携がなされているのかという観点で資料を作っております。申し訳ございません。ちょっと説明が足りませんでした。

【CBD市民ネット(古南)】 すみません、わかりました。そのことでコメントしたいんですけれども、目標達成に関して環境省への要望の中の広域対策で、環境省主体の広域保護管理ということが多数載っていますが、私、関東のカワウの広域協議会の科学委員をやらせていただいていたので実情を申し上げると、そもそも栃木県などから要望があって設けられたものなんですけれども、環境省の予算がなくなり、それで10都県の分担金で運営したいというお話がありました。ところが、分担金が払えないという県が出てきてしまいまして、それで事実上、その協議会の事務局を置いたり、科学委員の委嘱ができなくなって、連絡体制だけ残すということで消滅しているというふうに私は思っているんです。広域対策に関しては、国家戦略でも特に推進するということは書かれているんですが、実情は予算は削られていて、予算を削ったことで実態の活動がなくなっている。そこに関して挽回しようという動きが見られないというのは非常に残念です。 2点目です。愛がん飼養についてですが、これもこのアンケートの設問の仕方が不適切だと思います。というのは、私ども全国野鳥密猟対策連絡会で全国の第10次鳥獣保護事業計画の許認可の状況について調べましたところ、この数字が合わないんです。資料の10ページの真ん中から下のあたりに書いてありますけれども、許可している自治体は28とのことですが、当方の調べでは許可していない自治体は31のはずなんです。これは設問が悪くて、「許可されていますか」という聞き方をしていると、事業計画に記載している内容しかでてきません。例えばある場所はもう六年、七年ぐらい出していないはずなんですが、事業計画では認めていることになっています。これはもう明らかに設問の仕方が悪いと思います。また、この意見のまとめ方が少し恣意的だと思います。以上です。すみません。

【山岸委員長】 そうしましたら、ちょっと大事なことが残っているので、報告事項の中で、鳥インフルエンザのことを報告していただくことになっていますので、かいつまんでお願いします。

【渡邊官房審議官】 はい。今日は本当にさまざまな立場からご意見いただきまして、ありがとうございました。基本指針の見直しの検討の参考として生かしていきたいというふうに思います。
 最後に少し報告ということで、参考資料の1の鳥インフルエンザの対応状況という資料を開いていただいて、現状をご報告したいと思います。この秋から幾つかの場所で鳥インフルエンザが発生しています。時系列的にご紹介します。
 1枚、表紙の裏ですけれども、10月の下旬に稚内の大沼というところで野鳥のふんの調査を北大がしておりまして、そのふんからH5N1の高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出されて、その後、強毒タイプということがわかっています。おそらくカモ類のふんだろうと推定をされています。それを受けて、野鳥の監視体制の強化を全国に要請しているところです。大沼の周辺で追加的にふん便調査をしました。また、死亡野鳥の調査もしましたけれども、その追加調査ではすべて陰性であり、陽性のものはなかったという結果です。
 次に、約1カ月後、11月29日に中海の南側に当たります島根県安来市の養鶏場で、やはりH5N1の強毒タイプの鳥インフルエンザウイルスが検出されました。養鶏は殺処分されましたけれども、野鳥側の動きとしては、強毒タイプが確認されましたので周辺10キロを警戒レベル3に上げて、野鳥の周辺の状況を調査、あるいはふん便を追加的に拾う、それから、スズメ等の小型野鳥の粘液(スワブ)をとっての分析をしました。その追加のふん便調査と捕獲調査の結果はいずれも陰性でしたけれども、12月4日に、今度はその養鶏場から7キロぐらい離れたところ、中海の近くですけれども、米子の方で12月4日に回収をされたコハクチョウからH5N1の強毒タイプということが確認をされました。こちらの方も周辺10キロをレベル3に引き上げております。安来と米子の周辺10キロというのはかなり重なる関係になっています。
 そして、次のページに行きまして、今度、日本海側の富山であります。12月16日、高岡のお城の跡地のお堀を活用した動物園なんですけれども、そのお堀のスペースで放し飼いにしているコブハクチョウから、結果的に高病原性鳥インフルエンザウイルスが検出されました。こちらの方も周辺10キロを警戒レベル3に上げて、今日から周辺での水鳥類のふん便調査に入っているところです。
 そして、さらに鹿児島出水でありますが、12月18日に出水で衰弱個体として保護して、20日に死亡したナベヅルの個体からH5N1のウイルスを検出をしました。死亡個体として、今までに7個体回収をされています。その中でA型インフルエンザの簡易検査陽性が4羽出ていまして、そのうちの1羽(1検体)がH5N1というタイプであるということが確認をされました。強毒タイプか弱毒タイプかという検査は、今、鳥取大学の方で進めてもらっていて、その結果が間もなく出るだろうということになっています。強毒であるという可能性もありますので、強毒であった場合、そして、さらに感染が広がるというような場合を想定して、どういうふうに対策をとったらいいのかということで、ちょうど今日の午後に出水の方で、このナベヅルの感染が広がるのをできるだけ防ぐための緊急の対応措置を協議するための関係機関の協議会合を開いております。環境省からは野生生物課長が行き、県と出水市と関係機関での協議を行っています。ナベヅルは特別天然記念物でもあります。環境の対応、それから文化財の対応、そして農業・畜産の対応と、それぞれの対応について、どういう方針で動いていけばいいかという共通の対応方針を今、協議をしているところでございます。
 最後に、今後の対応ということで掲げてございますけれども、鳥インフルエンザ、野鳥に関する対応については、環境省で専門家グループを設けております。獣医の方、あるいは野鳥の生態の専門家の人たちの会合を開いたり、随時、アドバイスをもらっているということと、それから、鳥インフルエンザの対応として、常時の監視、モニタリングの体制をつくってきています。渡りのルートを把握していくということ、それから、全国50カ所程度でふん便の調査を10月から5月にかけて行い、そのふん便のウイルスの有無をチェックしていく。それから、どういう鳥がいつ飛来したかという飛来情報を関係者が共有できるような情報提供をしていくというようなことでやっておりまして、そちらの恒常的なモニタリングの中身もしっかりとやっていく必要があるというふうに考えているところです。
 記者発表資料が幾つかついていまして、一番最後にレッドデータブックのナベヅルの位置づけで、絶滅危惧Ⅱ類というのがついていますけど、その1つ前に野鳥との接し方ということで、これは一般の人たちにこういった鳥インフルエンザの発生に対して、どんなふうにとらえ、どんなふうに気をつけてもらったらいいのかということを、この紙をつくりまして、関係機関を通じて一般の人たちにも呼びかけをしているというところでございます。感染症対策については、古南さんのご意見にもありましたけれども、今回の基本指針の中でも大事なテーマになるんじゃないかなと思いますので、今後の審議会の議論の中でも、こういった感染症対策にどう取組んでいけばいいかということについて、ご議論をいただけたらなというふうに思っています。
 以上、ご報告でございます。

【山岸委員長】 ありがとうございました。それでは、このあたりで本日の審議を終えたいと思います。
 次回は、事務局で日程調整をしていただき、早目にご連絡をいただきたいと思います。
 以上をもちまして、本日の鳥獣保護管理小委員会の議事を終了いたしたいと思います。ご協力ありがとうございました。事務局にお返しいたします。

【事務局】 長時間にわたるご議論ありがとうございました。これをもちまして本日の鳥獣保護小委員会を閉会いたします。
 どうもありがとうございました。