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中央環境審議会野生生物部会
第2回鳥獣保護管理小委員会 議事概要


1.日時

平成17年11月8日(火)10:00~15:30

2.場所

経済産業省別館8F 825号会議室

3.出席者

(委員長)
岩槻邦男
(委員)
石原收、*磯部力、市田則孝、*大塚直、亀若誠、佐々木洋平、速水亨、三浦愼悟
(環境省)
自然環境局長、大臣官房審議官、鳥獣保護業務室長ほか

*印の委員は午後出席

4.関係団体ヒアリング

(1)地方公共団体(千葉県)

○狩猟鳥獣の捕獲上限の担保について

 現行制度では狩猟における鳥獣の捕獲数の上限を担保することができないことから、これを担保できるよう、狩猟鳥獣の種毎に入猟者数を制限できる制度が必要。農林業被害が深刻化する中で、狩猟を活用した鳥獣の個体数管理を推進することにより、個体数管理の効率化を図るとともに、安定的な個体群の維持を図る必要がある。

○鳥獣保護区の保全事業の必要性について

 国指定鳥獣保護区の谷津干潟について、公共下水道の整備に伴い、平成11年頃からアオサが干潟を覆うようになった。アオサの繁茂などについての原因究明も含め、必要な対策を講じるため、鳥獣保護区の適正な管理の為の事業を実施できる制度・財源が必要である。

○輸入鳥獣への対応について

 違法捕獲個体の鳥獣を外国産と偽って飼養する事例があり、違法飼養の取締に支障が生じていることから、鳥獣の輸入制限・登録制度等の水際規制が必要である。

○特定鳥獣の捕獲報告について

 特定鳥獣保護管理計画の対象となる特定鳥獣の保護管理を適正に実施するためには、鳥獣に関する様々な情報が必要であり、狩猟により捕獲された個体について、現在義務化されている、捕獲場所や捕獲頭数の報告に加え、雄雌や妊娠の有無など必要に応じ狩猟者から捕獲した鳥獣の情報提供を得られるような義務的な措置が必要である。

(質疑)

○鳥獣保護区の管理のための財源確保はどうしたらよいか。

千葉県:地元自治体も管理に協力していく必要があるが、財政事情が厳しく、県として財源の確保は困難な状況である。

○ハンター入猟制限に具体案はあるか。

千葉県:特に具体的な案はない。

(2)地方公共団体(大分県)

○イノシシ、シカの狩猟期間の延長について

 イノシシ、シカの狩猟期間は、各都道府県において特定計画を策定し、狩猟期間を延長している事例が多いが、当該種の狩猟期間の延長は全国的な傾向であり、全国措置として一律に1ヶ月延長することが適当と考える。

○休猟区内における特定鳥獣の狩猟による捕獲の可能化

 イノシシ、シカなどの特定の鳥獣により、農林業被害が深刻化している状況がある中で、休猟区内であっても、特定鳥獣については狩猟による捕獲を可能にしてほしい。

○網わな猟免許の区分について

 網・わな猟免許について、構造改革特区の認定を受け、網とわなを分けて免許試験を実施したが、例年の2倍以上の受験者があり、受験者も農林業者がほとんどであった。非常に好評であったため、現在の特区に限った制度ではなく、全国的な措置として制度化して頂きたい。

○免許の有効期間の延長

 狩猟免許の有効期間を、現状の3年から5年に延長することが望ましい。

○わな猟の禁止区域の新設

 とらばさみやくくりわなは、飼養動物や人への危険も高いことから、銃猟禁止区域同様、わなの使用も禁止する区域を設定できる制度が必要である。

○わなの架設者の明示

 わなの架設者名等の表示については、狩猟においてはその表示が義務づけられているが、捕獲許可に伴い設置されるわなについては表示義務がない。このため、違法に設置されたわなとの識別が困難であることから、捕獲許可に基づき設置されるわなについても、架設者名等の設置を義務づける必要がある。

○特定鳥獣保護管理計画制度について

○その他

(質疑)

○狩猟税の税収と鳥獣行政の予算規模はどの程度か。

大分県:狩猟税の税収は約7000万円である。鳥獣保護行政の支出はこれ以上となっているが、被害対策が優先され、保護関係は十分ではないと考えている。

○専門家の登録制度はどのような制度を想定されているのか。

大分県:専門家のリストの様なものを想定している。

○鳥獣被害の抜本的対策とはどのような主体による取組を想定しているか。

大分県:これまで防護柵の設置や捕獲に重点を置いた対策が多かったが、耕作放棄地の管理、追い払い、電柵の管理などの新たな事業を実施している。被害対策を目的とした里山整備事業のような抜本的な対策が重要と考えている。

○そのための財源確保はどうしているのか。

大分県:目的税を充当することとしている。

○網わな猟免許者の拡大を求める一方で、くくりわな・とらばさみの危険性を指摘されているが、矛盾はないか。

大分県:箱わなを中心に促進していきたいと考えている。

(3)農林業被害関係(滋賀県東近江地域振興局、九州横井林業(株))

(滋賀県東近江地域振興局)

○滋賀県では平成13年に鳥獣による農作物被害が急増したことから、「普及センター」の指導により、防護柵の設置指導、被害対策のための研修会の開催、里山管理、羊の放牧(下草の繁茂を防ぐ)、果樹くずの放置禁止指導等ソフト面の対策を中心に実施しており、被害の低減に効果を上げている。

○特定鳥獣保護管理計画の策定、運営に以下のような課題がある。

○農林業被害及び鳥獣保護管理の専門知識を有する者の育成が重要である。

○鳥獣法の改正に当たっては、農林部局が鳥獣対策に関与できるよう、制度的に明確にしてほしい。

(九州横井林業(株))

○熊本県の人吉・球摩地域では、シカによるスギ、ヒノキの植栽木被害(枝葉採食)や成林木被害(剥皮被害)が発生している。
 さらに、シカの林内の移動に伴う土壌攪乱や、植生の欠乏により、土壌流出、山地崩壊、生態系被害も発生している。

(質疑)

○被害対策に関し、他府県と情報交換しているか。

滋賀県:他府県の事例を収集し、現場で活用している。

○ぶどう屑放置防止のためにぶどう園に放牧され、役割を終えた羊はどうしているか。捕獲した鳥獣はどのようにしているか。

滋賀県:

○子どもの教育、人と野生鳥獣の適正なつきあい方について普及指導していく必要がある。

○野生鳥獣の生息環境としての森の餌場の価値向上についてどのように進めていくのか。

滋賀県:針広混交林化による健全な森林管理を進めていく方針であるが、具体的な管理の方法は今後検討する。

○シカによる林業被害対策として具体的にどのようにするつもりか。

九州横井林業:雑木を残すことによりシカが入りにくい環境を維持していく方針である。

(4)民間鳥獣保護管理事業者(NPO法人ピッキオ)

○別荘地を中心にクマによる被害対策として、以下のような取り組みを行っている。

○これらの対策により、近年クマの情報が減少傾向である。

○アライグマの駆逐、捕獲個体の解析、データ蓄積も実施している。

○鳥獣保護に必要な事項として以下の点が重要である。

(質疑)

○クマの学習放獣の効果はあるか。

ピッキオ:実際には、捕獲場所ではなく奥山に放獣しているため、捕獲場所周辺に戻ってきてしまう事例が多いことから、追い払いを重点に行っている。

○受託した事業中の事故に対する民間事業体としての責任についてどう考えるか。

ピッキオ:町の委託事業であるので町が主体となるが、自分たちにも責任はある。責任分担については現在は明らかになっていないが、委託者との間で明確にしておく必要があると考える。

(5)自然保護NGO(野生生物保護法制定をめざす全国ネットワーク)

鳥獣の保護管理について、以下の6つの提案をする。

[1] 鳥獣の種の区分

[2] 野生生物の広域保護管理

[3] 人材の育成と配置

[4] 狩猟の場のあり方

[5] わな免許

[6] 野生動物の取引規制

特に熊胆の流通は全面禁止にすべきである。

(6)狩猟団体((社)大日本猟友会)

○農林業被害が深刻化する中で、休猟区の指定に地元の理解が得られず、指定が進まない状況にあることから、休猟区であっても特定鳥獣については狩猟による捕獲を認める措置が必要である。

○網・わな猟免許を網免許とわな免許に区分することにより、それぞれの猟法の専門性を高め、加えて、網又はわなのいずれかのみを使用する者の免許試験における過度な負担を軽減する必要がある。

○近年、事故の損害賠償額の増加等に伴い、現在の3千万円を4千万円に引き上げてほしい。

○くくりわなによる安全性の向上、錯誤捕獲の防止等への対策として、くくりわなの構造制限が望ましい。

○小型鳥類による被害対策として、銃猟禁止区域内においても、空気銃は使用できるよう措置してほしい。

○鳥獣の保護管理の担い手を確保・維持するために、以下の内容を検討してほしい。

○有害鳥獣捕獲ではなく、狩猟を活用した被害対策の推進を図ることにより、円滑な鳥獣の個体数管理を推進する必要がある。

○鳥獣の生息状況は都道府県によって異なることから、知事が生息状況に応じ狩猟鳥獣を指定できる制度が望ましい。

(質疑)

○狩猟を活用した被害対策の推進とはどういう意味か。

猟友会:狩猟鳥獣の個体数管理を進めるためには、許可捕獲のみに依存するのではなく、狩猟を活用した方が効果的であるという意味である。

(7)鳥獣輸入業者(日本鳥獣商組合連合会)

○鳥獣輸入証明書の発行は 最盛期の1/5まで減少しており、このままのペースで減少し、輸入が途絶えた状態が続けば、今後、5年程度で当連合会の役目は終わると推測せざるを得ない。

○今後は、人工繁殖技術の確立を進めていきたいと考えている。

○輸入証明は、通関証が土台になっており、これまで適正に証明書の発行業務を行っていることを理解していただきたい。

(質疑)

○鳥獣輸入証明書の更新の際に、鳥が生きているかどうかの確認はどうしているのか。

日本鳥獣商組合:生きているかどうかの確認は事実上困難。申請者の良心に頼っている状況。

5.議事

(1)現地調査報告

[1] 事務局より資料1-1及び資料1-2について説明した。

[2] 特段、質疑はなかった。

(2)講ずべき方策の検討(特定鳥獣保護管理計画を中心として)

[1] 事務局より資料2-1、資料2-2について説明した。

[2] 事務局より、第1回小委員会での指摘事項に関し、以下のとおり説明した。

○鳥獣の生息状況変化の地域的な分析について

第3回小委員会においてより細かい分析を示したい。

○鳥獣保護管理の実施体制について

[3]委員発言及び質疑

○広域的な個体群の管理と地域的な個体群の管理について、どのように使い分けているのかがわかりにくいため、もう少し整理が必要ではないか。

事務局:基本的に広域的とは都道府県県境を越えた対応を指すが、その範囲は対象とする鳥獣により種々に異なる。地域的とは市町村や集落レベルの対応を指す。

○クマをはじめとする鳥獣の保護管理には、データによる裏付けが必要であり、その点でモニタリングは重要であるが、都道府県が財源に困るこのままの状態だと、特定鳥獣保護管理計画自体が国民の支持を得られなくなる。

○モニタリング経費の財源確保が重要である一方で、狩猟税が人件費にも使用されるとなると、モニタリング経費をどこから捻出するのか。

○狩猟税が目的税化されても、その使途が限定されるという認識をしていない都道府県が多いように見受けられる。

事務局:国として都道府県に対し、地方税である狩猟税の使途について制限をかけることはできないため、基本的には都道府県の判断に委ねざるを得ない。

○強権的な指示は無理としても、指導くらいはできないか。

○狩猟税の使途についてのグランドデザイン的なものがあっても良いのではないか。

事務局:通知により技術的助言の範囲内で一定の考え方は示している。

○予算の問題は法律で解決できることは限られ、環境問題などで地域にとって目に見えるメリットがないような予算の確保は困難であるのは当然であり、直ちに解決できる問題ではない。

○捕獲許可権限の市町村への委譲について、十分な体制が整っていない市町村がある。

○特定鳥獣保護管理計画の下位計画を市町村が策定するような制度が必要ではないか。

○市町村における鳥獣の保護管理について、ある程度研修を受けた者が担当するよう促すことも必要ではないか。

○権限を委譲したということは、市町村に任せても問題ないという判断のもとに行っているものであり、委譲した以上、市町村の裁量に任せるべきである。必要なのは、各市町村の取り組みを国民に明らかにすることであり、国民の評価により自治体の自主的な改善を促すことが理想的である。

○従来は権限行使について予算措置の裏付けがあったが、三位一体の改革によりこのような措置はこれからは不可能である。このような状況の中で、環境省としてどのうような対応を考えているのかを明確にすべきである。環境省としてできることとしては、各地域の成功事例を紹介していくことや、モニタリング手法など研究開発を実施するなどの対応が考えられるのではないか。

○地方分権が悪いということではなく、分権の良さを生かし、その上で発生するデメリットをどのように改善していくのかを考えるのが重要である。例えば、ある町でイノシシの追い払いをし、その町では被害がなくなっても、追い払われた個体が別の町に行き新たな被害を発生させているとすれば、これは成功事例とはいえず、ここが分権の新たな課題となる。この点を踏まえ、今後どのように制度として担保していくかを示すべきである。

事務局: