<(1)外来生物法の施行状況を踏まえた今後講ずべき措置>
- 事務局から[参考資料1]及び[資料1]~[資料4]について説明。
- 委員意見なし
- 事務局から[資料5]について説明。
- 委員意見
(「1.はじめに」について)
-「外来種」「外来生物」の用語の定義について
- 「用語の整理」について。生物学的には、生物organismの方が種speciesよりも大きい概念。ここでの定義はそれが逆転しており、理解しにくい。教科書的に照らし合わせたときにも齟齬がある。法律用語ではあるが、「外来生物」に一本化してよいのではないか。生物であれば、器官や遺伝子も含む概念であり、遺伝的なマネジメントユニットを考慮していくという方針を打ち出しているのであれば、こうした概念の方が適切では。
- 関連図書においても「外来種」「外来生物」の定義は、この資料で整理されているのと同様であり、このままでもよいのではと思った。これまでの議論や整理ではどういった経緯があったのか。
- この検討においては、外来生物法の施行状況を検討するということで、「外来生物」の定義も含めて検討するということであれば、報告書の中で法の定義と異なるものを用いてもよいのではないか
- 「国内由来の外来生物」「国外由来の外来生物」という整理も一案
- たとえば、P1L25において、「生物種(亜種・遺伝的に異なる集団も含む)」という書き方をするのではどうか。
- これまで、我々貿易をやっている人間は「外来生物」とは外来生物法に基づいて「海外のもの」という理解をもってきているが、同じ用語を別の意味で使うとすれば混乱する。
- 法律上と実体上の概念を全く一致させることは困難であるし、必ずしもそれを一致させる必要はない。理論上分ける説明が整理できれば問題ない。
- in-situあるいは国境の問題かということを分ければそう難しい問題ではないのではないか。
→(事務局)「外来生物」は法律で定義されている用語。外来生物対策小委員会の前身の移入種対策小委員会で「移入種対策に関する措置のあり方について(答申)」等においても「外来種」という用語の定義が整理されており、これまでの生物多様性国家戦略等でもこの整理で用語を使ってきた経緯がある。遺伝的なユニットも考慮する必要があるが、外来種対策はまず種レベルでないと対策が難しく、それ以下のレベルについても遺伝的攪乱の問題として整理していきたい。
- 生息域外に出されたものは「外来」になる。種概念は様々な論争もありややこしいもの。「種」で規定しない方が適当ではないか。報告書では保全ユニットが地域集団であるという考え方になっているにも関わらず、言葉の定義が「種」となっていることが理解しづらいということ。
- 生物学的には種=speciesであるが、一般的には種=種類=kindであるという理解をされがちである。この資料での整理も種類=kindに近い整理がされており、これがきちんと分かるような説明書きが必要なのではないか。
- 言葉の定義については、事務局で案を作成し、各委員に見て頂いた上で確定させるように。
-修正指摘
- P1L28「導入される個体が」とあるが、「個体」ではなく、「絶滅のおそれのある野生動植物種の野生復帰に関する基本的な考え方」の記載に準じて、「集団・個体群」という記載にすべき。
- P1L29のみ「遺伝子攪乱」となっている。「遺伝的攪乱」に修正を。
(「(1)特定外来生物の選定」について)
- P10L5「地域的に影響を及ぼしている外来種」とあるが、国内由来の外来種を意味しているのか?こうして記載すると、全国的に影響を及ぼしているものを優先するべきではないという指摘が起こりかねない。説明をきちんとするべき。
→(事務局)国内由来のものもあるいは外国由来でも地域的なものも含めている。全国的に影響を及ぼしているものにはもちろん対策をしていくという前提。
- 交雑に関する考え方が甘く、P10L10に中期的に整理していくということが記載されているが、先送りされているという印象。P4ではタイワンザルとニホンザルの交雑があげられているが、自然での交雑だけではなく、P8L14~16に品種改良の話が書かれているが、品種改良だけでなく、外来種同士の交雑個体、交雑品種に対応していく必要がある。例えば、特定外来生物のストライプトバスとホワイトバスをかけあわせたサンシャインバスは、台湾で養殖され、規制を受けることなく、管理釣堀で親種よりも扱われている。現在どういう状況になっているのか、今後どう対応していくのか。
→(事務局)今後整理を検討していきたいと考えている。
- 「種」の概念だと交雑種が抜け落ちることになる。遺伝子組換え生物と同様に種レベルではなく、遺伝子レベルの問題である。
(「(2)飼養等許可」について)
-修正指摘
- P5L8~
- 「生産性が高い等の特定の遺伝的性質を持った在来種の代替利用」を「在来種といえども、人工増殖過程で遺伝的形質が偏った商品コロニーの代替利用」に
- 「野外への無秩序な放出が行われた場合は遺伝的攪乱のおそれ」を「野外への無秩序な放出が行われた場合は、非生息地への侵入、在来個体群の遺伝的攪乱のおそれ」に
- 「セイヨウオオマルハナバチの飼養等許可と在来種の代替利用の方向性」を「リスク管も含めた利用方針」に修正すべき。
- P10L29「遺伝的攪乱の影響に留意した上で」を「非生息域への侵入や遺伝的攪乱の影響に留意した上で」に修正。
(「(3)輸入規制、水際対策、非意図的な導入対策」について)
- P5L27「カワヒバリガイ等の外来種」とあるが、「等」には何が含まれるのか。外来種なのか、外来生物なのか、用語を整理すべき。
- カワヒバリガイのほか、クロツメタガイが混入して持ち込まれるものと言える。海外由来のものである。
→(事務局)国内由来のもので水産種苗に混入してくるものの想定が特にないので、用語については全体的に整理したい
- 輸入と導入はどうちがうのか。
- 導入は輸入も含み、また国内での逸走についてもこの項目では扱っているため「導入」で統一すればよいのではないか。
- 水産物については、「輸入」と入れることが重要であり、削除するべきでない。
-修正指摘
- タイトル「輸入規制、水際対策『及び』非意図的な導入対策」
- P5L24「遺伝的分化を有し」を「遺伝的分化を示し」もしくは「遺伝的差違を有し」等に修正
- P5L27「混入している場合がある」を「混入している場合やそのおそれがある」と修正。
- P5L28生き餌等については「野外に放出されている可能性がある」とされているが、当然野外に放出されることが前提となっているもので「可能性がある」は不要。
(「(4)防除」について)
- P12L8からでは、地方公共団体や民間団体に防除の確認・認定を進めていくということが書いてあるが、地方公共団体・民間の問題意識の温度差がある。環境省がリーダーシップをとり、もう少し取組をすすめていくような、積極的な記述が検討できないか。
- P12L27に地方の取組について、侵入初期に特化した支援の強化が記載されている。地方では財政的な負担の問題もある。予算的な問題は国も同様と思うが、報告書での表現はともかくとして、毎年の予算の確保に努力していって頂きたい。
- 防除が計画的に進んでいない、ということについて、基本認識や講ずべき措置には記載があるものの、現状と課題で詳細な記載がなく、具体的な想定がなく実際はやる気がないように見える。記載するべき。
- P6L31の冒頭に「目標設定が定かでなく」などと加えれば良いのではないか。
- P12L19には「イヌ、ネコ」とあるが、「ノイヌ、ノネコ」ではないのか。イヌ、ネコは動愛法に規定されるもの。「防除」に続く一文で、「イヌ、ネコ」との記載は愛護団体からの追求を受ける懸念がある。
- ネコの放し飼いが生態系への影響を与える懸念があることについて愛猫団体の認識が非常に低い。ここではきちんと「ネコ」と記載するべきである。
- 生物多様性の考え方の普及啓発を図っていくことが重要だが、ここで、動物愛護の精神に対してどこまで言及できるのか、が次のステップの取組である。
- 防除、封じ込め、根絶といった用語の違いが一般の方にわかりにくいので、区別して書くべき。
-修正指摘
- P6L31「マングース等の国レベルでの根絶」とあるが、マングースはよい事例としてその前に記載してあり、ここで評価を落とす必要はない。他の事例が適当ではないか。
- P6L31「国レベル」の根絶という言葉が分かりづらい。国の事業を意味するようにも見える。「ある地域の」「ある島嶼の」等の言葉にすべき。
- P12L18~「野外に逸出したヤギ等の家畜、イヌ、ネコ等の管理も含めた生態系管理の一環として、対策を」を「生態系の管理の一環として、野外に逸出したヤギ等の家畜、イヌ、ネコ等の管理も含めた対策を」に修正。
(「(5)国内由来の外来種」について)
- P13L3やP10など「条例や」とあるが、これは、法律で整備しないから条例で対応してくれ、ということなのか。国の姿勢がはっきりしないという危惧がある。地方の受取方としては、「国(法律)で規制していないものを条例で規制してはいけない」ということも、「国(法律)で規制できないから条例でやる」ということもあり得る。その混乱がないようにすることが必要。
- 国内由来の外来種への対応として、条例や自然公園法を活用していくということは分かるが、宮古島では希少種がいるのにこうした法規制がかかっていない。国立公園等の網もかかっていないところの問題について盛り込むべき。
- 保護地域の外でも対策が必要ということ。
- クジャクは本州では増えないが、沖縄では大変な問題。特定地域を指定すると行ったことは出来ないのか。
→(事務局)ブラックリストで対応していきたい。
- 琉球諸島、小笠原諸島の貴重さを考えると、もう一歩踏み込んだ対策がほしい。
(「(6)遺伝的攪乱」について)
- 緑化植物について、P8L7「外国産種苗」の利用の問題が記載しているが、緑化植物について国内での移動の問題もあるのではないか。調べて、あるようなら記載を。
-修正指摘
- 「遺伝的性質」と使われているが、「遺伝的形質」が正しいのではないか。
- P7L34「遺伝子レベルの管理の問題」を「遺伝子レベルの多様性保全の問題」と修正。
- P8L5~6「ススキ・ヨモギ・ヤマハギ」について遺伝的性質や成長特性の違いについて文献があればよいが、「コマツナギ」ははっきりと文献になっているためより適当と考える。また、「在来種と同種であるが」を「在来種と同種とされるが」に修正。
- P8L8「外国産の在来種が輸入・放流されているが」を「外国産の在来種が輸入・養殖・放流されているが」に修正。放流より養殖が多いと思われるので。
- P8L9~「国内において、…導入される場合が懸念される。」を「国内においても、種としては同じであっても、例えばホタルのように、地理的に遺伝的形質が異なることもあり、他地域の個体や個体群が別の地域に導入されることが懸念される。」に修正。
- P8L12「人為的に在来種の形質を改良」とあるが、「改良」を「改変」に修正。
(「(7)普及啓発」について)
- 外来種対策がなぜ必要かについては、生物多様性の保全のためであることを説明する必要がある。生物多様性のことが文章を通じてあまり記載がないが、普及啓発の中に記載しておく必要があるのではないか。
- 普及啓発は、わかり易い言葉で、ターゲットを明確にして行う必要がある。例えば、動愛法では、「学校・地域・家庭」というキーワードで実施した。環境省職員がテレビ等に出て生物多様性や外来生物法についてアピールすることが大事。そうしたことを具体的に記述してはどうか。
- 守らなければならないのは生物多様性であり、「命の大切さ」を出すと、外来種のいのちは在来種のいのちよりも価値が低いのかといった議論が起こり、やぶへびになる。生物多様性がなぜ大事なのか、という普及啓発が成功しなければならない。生物多様性は本質的には人の生活のために必要という論理で説明すべき。
- 一般の人に防除のことをよく説明しなければならない。なぜ殺処分しなくてはならないのかということについて。
- 生物多様性とはなにか、を伝えるのに大変苦心している。これは関係者皆で取り組んで行くべきこと。
- 生物多様性について、「外来種で種数が増えるからいい(多様性)ということではない」ということをここで明記するべきではないか。
- 過度に擬人化を避けるべき、ということを記載するべきではないか。過度の擬人化は差別の問題につながることになる。
-修正指摘
- P8L30「外来種問題についての国民の理解」を「外来種問題への対応・対策についての国民の理解」に修正。
- P8L32「生物相や生態系を保全」を「生物多様性を保全」に修正してはどうか。
- P13L24「在来種のいのち」とあるが、命は平等といった道徳の問題になるので、削除すべき。外来種管理は生物多様性保全のために行うことを前面に出すべき。
(「(8)調査研究」について)
-修正指摘
- P8L13「生態系等に被害を及ぼさない代替種の開発」を「産業利用されている外来種について」等の冒頭の説明を追加(五箇)、「開発」を「探索と利用法の確立」に修正。