<(1)外来生物法をめぐる現状と課題>
◇事務局から[参考資料1]及び[資料1]~[資料4]について説明。
◇委員意見
(資料2:コガネムシ上科の輸入等について)
- 外来生物法による輸入指定港に、現在羽田空港は入っていない。羽田空港は、特にアジア地域からの輸入が多くなっている。震災時に成田空港が使用できなくなった際には羽田空港がかわりに使用されたが、外来生物については羽田空港から通関させることができなかった。今後、輸入指定港への羽田空港の指定も考えていく必要があるのではないか。
- 種類名証明書については、海外の研究機関などを見ても信頼のおけそうなところなので安心した。一方でコガネムシ上科は大量に輸入されている。展示・一般ユーザーによる飼育が多いと考えられる。次々に輸入され、野外に出ると影響が懸念される。特に、日本に在来種がいるヒラタクワガタの影響が懸念される。ヒラタクワガタの属するDorcus属がどの程度輸入されているのか調べて欲しい。
- 数年前に調べたところ、ヒラタクワガタは安価であるため、クワガタの7~8割(少なくとも半数以上)がヒラタクワガタであった。メインユーザーは夏休みのこどもたちである。
(資料3:輸入水産種苗について)
- 輸入水産種苗については、養殖用種苗・潮干狩り用種苗の入手・放流実態が分かっておらず、統計にも含まれていない。これらの種苗の入手・放流実態を把握し、どう指導していくのかが課題ではないか。
- これまで中国産のアサリも日本のアサリと同種ということだったが、亜種レベルで種が違うということが分かってきた。交雑が進むとその集団の全ての個体がハイブリットになる可能性があるため、その前に早めに対処していく必要がある。アサリについては交雑が相当進んでいる海域があり、対策が急がれる。
- 内水面漁業は(海面と比較して資源が乏しいことから、増殖義務を課すなど)種苗放流にたよっている。内水面漁業におけるシジミ増殖によって、タイワンシジミ、二次的にカワヒバリガイが入っており、業者が自由度を持って輸入・放流していることも問題ではないか。
- 養殖用種苗について、同種の外国産種苗の実態把握が必要。タイリクスズキ・外国産イサキは瀬戸内海で養殖されており、スズキについては日本のものとのハイブリッドが見つかっている。
- 遊漁で使われる、エビなどが大量に入ってきているなど、釣り餌用の生物の問題もある。ヒルミミズがスジエビに影響を与えつつある。
- 水産庁からの指導では「外来生物の導入は当面行わないように」としているが、現場の人が「外来生物」をどのように受け取っているか。シジミ、シナハマグリ、アサリと資料に記載されているが、シジミという種名はなく、シジミならヤマトシジミ、タイワンシジミ等に分けられる。これらについてそれぞれ別種として整理することが必要。
(事務局)資料3では、水産動物の種苗生産及び放流並びに水産動物の育成に関する基本方針の一部を抜粋して「外来生物の導入は当面行わないように」と指導記載している。さらに種苗の放流にあたっては、その他生物多様性の保全に配慮するようにも指導しており、種苗生産現場では、地先での親魚を用いて種苗生産しており、遺伝的な多様性を確保していくためにも、定期的に親魚を入れ替える取組もしている。
- 佐渡ではドジョウが野生復帰のトキの餌になっているし、コウノトリの餌にも中国からのドジョウが使われているのではないか。実態を調べて欲しい。
(資料4:交雑種の取扱いについて)
- 交雑種の取扱いは、種概念をどう考えるのかという問題である。遺伝的に見ても分岐年代もはっきりしない種もあり、従来的概念では取扱いが難しい。外来生物法第2条では、特定外来生物の定義の中で、「政令で定めるものの個体(卵、種子その他政令で定めるものを含み、生きているものに限る。)及びその器官…」と定められているが、ここに「遺伝子」を含めておくことが必要だったのではないか。法律で定めることが難しくても、「個体(遺伝子も含む)」という解釈をできればよいのではないか。
- 千葉県でもニホンザルとアカゲザルの交雑が起こっている。千葉では全て有害鳥獣捕獲の許可をとって防除を実施しており、交雑種の取扱いについて外来生物法に規定されてなくても防除は実施できる。但し、地方公共団体がなぜ予算を使って防除するのか対外的な説明責任が求められるため、その根拠が必要となる。このため、外来生物法において交雑種の位置づけを整理する必要がある。
- 法律上では分類が真理のうえに成り立っているという前提にたっているが、現在の種の分類は仮説であり、分類体系は変わっていくものである。一代雑種で済む場合もあるが、いちど交雑したものを取り戻そうとするのは負担が非常に大きい。証明できないものは当面の利益となるように判断されるのかも知れないが、危機回避の観点に立つことが必要。交雑個体の法律への位置づけは難しいかも知れないが、遺伝子の置き換わりは外来種による影響の代表的なものであり、いち早く対応すべき問題である。
<(2)外来生物法の施行状況を踏まえた今後講ずべき措置>
◇事務局から[資料5]について説明。
◇委員意見
(検討の背景、検討の方向性等について)
- 外来種問題の課題として、被害状況・分布の把握が体系的になされておらず、従って対策も体系的になされないということがある。資料の背景の部分に、こうした把握が必ずしも十分になされていないことも記載すべき。
- 外来種、外来生物を意図的に使い分けているか。言葉の使い分けを分かり易く整理するべき。
- ブラックリストが法の上位になり、その一部を法が担うというイメージを受けた。法の上位にどのように設定するのか。
(事務局)特定外来生物以外の外来種の対策について整理をするもので、法の上位ではなく横に広がるイメージ。法による規制的手法とそれになじまないものは情報的手法も用いて対策をしていきたいと考えている。
外来生物は、法に基づき「海外から持ち込まれたもの」。外来種は国内由来の外来種等も含める考え方で整理している。
- そのような(上記事務局説明のような)意図は現在の文章では読み取れない。国内外来種には同種間の遺伝子交雑の問題があるように、「外来種」と「種」の概念が混乱する
- 外来種と外来生物の言葉の使い分けはわかりにくいので、整理をするように。
- CBD COP10でペット、生き餌に関する国際基準の議論がなされたとあるが、これが現在どの程度まで審議されているか整理してほしい。
(特定外来生物の選定に関する状況と課題)
- p3「侵略性が高く、我が国の生態系等に…」とブラックリストの説明があるが、「侵略性が高く、我が国の生態系等に…」は特定外来生物の説明と全く同じ内容のため、特定外来生物リストとどのように異なるのか整理して変えるべきである。
- 要注意外来生物は、法的な位置づけもなく、個別の特定外来生物の選出の材料として認識していて、有用な植物も含まれている。ブラックリストについては、要注意外来生物をそのまま掲載するのではなく、位置づけを整理するべき。
- 特定外来生物がブラックリストというイメージであり、「ブラックリスト」という言葉の使い方は整理するべき。
(事務局)名称については仮称であり、最終的にどのようにするかは今後検討する。
- p3特定外来生物の指定の際の課題として、「指定の少ない分類群」とあるが、法の趣旨として指定種数を増やせばよいというものではない。「被害状況を把握し、必要なものは」と改めるべきではないか。
- 希少種対策と外来種対策を同じ構造にするべきと考えており、レッドリストのようにブラックリストが作成されるのには賛成だが、ブラックリストという名称については検討が必要。レッドリストも法的には根拠がないが、掲載種は開発行為の際に配慮されるなど効果は大きい。それがゆえに、掲載種の選定は慎重に行う必要はある。
- p3「他法で同等の規制があるとされている種」とあるが、植防法で輸入規制されていても国内での移動規制がないものなど、「他法で同等」ではない。よく似た法令で名前が挙がっているからといって、二重規制とする遠慮は排除するべき。
- p2特定外来生物の指定種数の記述があるが、具体的にどう数えて105種類なのか、第一次・第二次・未判定外来生物の輸入届出でそれぞれ何種類が指定されたのかを記載するべき。
- 外来種の利用の方向性を示すと資料のブラックリストの記述のところに書いてあるが、マルハナバチのように特定外来生物に指定された後も様々な問題が継続するのを避けるために、もう少し具体的に書いた方が良い
- ブラックリストについては、種の保存法に対するレッドリストの位置づけのような考え方でよいか。非権力的な手法もうまく組み合わせて対応すべきというのは分かるが、非権力的な指導で対応することが難しい場合には法的な位置づけもあった方がよいのではないか。
(飼養等許可の現状と課題)
- 新規の利用を認めないというのは何を根拠にしているものなのか。飼養者が高齢になって農業ができないのでセイヨウオオマルハナバチを使わなくなるということもあるが、農業は若い世代が変わって営んでいくべき。
(事務局)外来生物法では飼養等許可を認める目的を定めており、その中で「生業の維持」としている。指定前から農業を営んでいるなどでないと認められない。農業を譲渡承継する際にセイヨウオオマルハナバチを飼養等することは認めている。
- セイヨウオオマルハナバチの飼養数量を増やそうとする場合も新規になるのか。たとえばハウスが増えたなどの場合は数量を増やす必要があるが、それも新規にあたるのか。
(事務局)既に許可をとっているものであり、新規の扱いにはならない。しかし、基本的には、これまでの実績に応じた数量内での飼養を指導しており、必要がある場合は個別に必要性を判断している。
- セイヨウオオマルハナバチの飼養等許可については、新規を認めない、数量にリミテーションがあるなど、現場では不公平感が強い。在来種利用の方向性も含めて、検討していく必要があるのではないか。オオマルハナバチを海外で増やすために環境省や農水省に文書を出してもらうように依頼したことがあるが、反応がなかった。
(事務局)セイヨウオオマルハナバチについては、今後の方針について別途検討を進めていきたいと考えている。
- 代替種の利用については、利用者の波及効果も含め、種を指定する際に考慮すべきことであり、「(1)特定外来生物の選定に関する状況と課題」の中に記載するべき。また、予防的観点からできる限り属単位で指定をするという方向性で記載するべき。
(輸入規制、水際対策、非意図的な導入対策)
- アルゼンチンアリの分布拡大が深刻。土砂や植木の運搬などによる国内での拡散の防止について記載をするべき。
- 二次的拡散については、「(3)輸入規制、水際対策、非意図的な導入対策」だけでなく「(5)国内由来の外来種対策の現状と課題」でも記載するべき。国内のホットスポットでの水際対策についての記載がない。国内のホットスポットへの二次的拡散について、行政指導に頼るのでは不安。
- 国内移送をどう歯止めをかけるかの問題はあるが、非意図的導入については国レベルの水際でもできていないので、ここにポイントを置いて考えているものと思う。国内検疫については小笠原でモデル事業も実施しているので、こうした現状も踏まえた記載とするべきである。
- ホットスポットへの導入については、自然公園法で対応するのが現実的に難しいことがある。国内由来の外来種についても、「ここでは外来種である」という法的な後押しがないと地方公共団体は動けない。島嶼-亜熱帯-温帯くらいで線引きをし、法令で規制をするべきである。こうしたエリアごとでの対応をしている法令もある。
- 「現状と課題」で「水産物に混入して導入される外来種」という記述があるが、増養殖種苗の実態の把握が進んでいないことを記載し、「必要な施策の方向性」にもこうした実態把握について記載すべき。
- 何かに混入して入ってくる外来種と、何かに付着して入ってくる非意図的な外来種では全く対策が異なるはず。その点を記載するべき。
(国による防除の実施、防除に係る確認・認定)
- 侵入初期の対応が、後々のコストの点からも重要なのは分かるが、地方公共団体には専門知識・予算・マンパワーがなく、また、被害が少ない段階で防除予算をとることは難しいので、国が侵入初期に特化した支援策をとるべき。また、侵入初期の防除手法が分からないので、国がモデル事業を実施して手法を提供し、専門家派遣などの支援策をするべき。
- IUCNでも外来種の侵略性については基準が確立されておらず、最低限、どこが侵入初期でどこがまん延しているのかなど分布情報が防除やブラックリスト作成には重要。「体系的な調査」について記載をするべき。
- 防除については、農水省・国交省が協力して実施する必要がある。両省でかなりできることがあるのではないか。
- 「現状と課題」の中では、費用対効果の必要性をにおわす記述はないが、「必要な施策の方向性」では記載されており、整理としてはよくない。
- (「費用対効果」と記載されている部分について削除の意見もあるが)「より効果的な対策はどういうものか」という考え方で、順応的に管理していく、ということは逃げ口上としても記載しておく必要はあるのではないか。
- 「カブトムシ亜科」とあるのは「クワガタムシ科」の間違いではないか。
(国内由来の外来種対策の現状と課題)
- 国内由来の外来種とは、他地域にはいるがその地域にはいないものが持ち込まれた、という理解でよいのか。「国内由来の外来種」はまだ用語としてこなれていないので、注記が必要。また、地域に生息する集団間の移植を対象とするのかどうかについては、どこかに記載しておく必要がある。集団間の移植を対象とする場合は、遺伝的なマネジメントユニットをどう設定するかということになり、外来種の枠を越えた議論になる。
- 国内由来の外来種については、科学的根拠に基づくということを記載しておくべき。
- 例えば、クニマスをどう考えるか。保全的導入や国内移植について整理するべきではないか。少なくとも国内外来種はダメ、ということが第一歩である。クニマスも含めて、普通種、希少種の国内移動のガイドラインを作るなど、優先順位をつけて整理をする必要がある。
(事務局)再導入についてのガイドラインはある。行動計画の中で整理をしたい。
- 緑化植物の外国産種苗について記載がされているが、水産物の種苗についても同様の問題があるのではないか。また外国産種苗は「国内由来」ではない。(遺伝的攪乱の扱いについても議論があったので)種よりも下のレベルの扱いについてのセクションを別途設けて記述するべきではないか。
(調査研究、普及啓発、各主体の協力と参画)
- 教育機関に関する記述をして欲しい。外来種問題に理解を得るために、倫理・道徳の教育での「命は平等」「生きものは大切」という曖昧な考え方がハードルとなっている。外来種の駆除については、「生徒に教えられない」ということで教職からの抗議があがったことがある。所管が違うため難しいかも知れないが、教育機関に対して外来種対策の論理と重要性を働きかけていく努力をするべき。
(事務局)環境教育の基本方針が改訂され、命の大切さを教えるとともに外来種駆除の必要性についても記載がされているので、次回紹介したい。
- 農環研のスタッフがオーストラリアで取材した事例を紹介する。オーストラリアのヴィクトリア州では、environmentally damaging weed として問題のある植物を市民自らが監視し、外来植物の持ち込み、蔓延防止に結びつくような啓蒙活動を組織的に行っている。費用がかかるが、こうしたやり方もある。
- 調査研究・普及啓発について書いてあることは当然やるべきことであり、(当初から)ずっと同じ方向性。分析的な内容がない。一般国民の裾野を広げるため、普及啓発は最も重要なところ。具体的な手法についてもう少し記述できるのではないか。また、横(省庁間)の連携と、縦(国~市町村)の連携の2つの連携がある。特に市町村は専門知識がなく、担当部局がないため、こうした連携についても記載をするべき。
- (先般より指摘のある)現状把握のための調査が必要だということを、「(6)」に記載するとよいのではないか。分からないことを早急に明らかにしていくということは必要。
- なぜ外来種対策をしなくてはならないのか、がわかりにくい。「生態系などは少し変わってもよいのではないか」という人もいる。外来種導入は、人間活動によって生物進化の地理的隔離を外すということであり、新たな種の侵入により生物相を変化させる影響に加え、近縁種間のハイブリッドを起こす。これは、自然では起こらないことであり、人間活動によって、種の進化に影響を与えるという問題といえる。
- (外来種問題について分かり易く説明し、理解を得ることについて)進化と生物多様性の概念が学問的にも定着していなければいけない。遺伝的多様性が高ければよいとすると誤解を生む。遺伝的多様性が低くても固有性が重要であり、これはローカリゼーション・ローカリズムとして分化・社会・経済に波及するため外来種問題だけで解決できるものではない。生物多様性国家戦略で生物多様性を主流化するということが前提である。
- なぜ外来種がダメなのか、年配者も理解していない。年配者は「昔から使っていた、食べていた」という言い方をする。外来種対策の推進のためには、生物的な観点だけではなく、社会・倫理的なアプローチを加えるべきである。
(その他)
- (震災の影響について)ここでは、さら地・パイオニア種の問題だけのように書いてあるが、南相馬の現状を見てきたところ、アライグマなど大型の捕食者が壊れた家屋等にすみついており、こうした地域を核にして分布域が拡大するおそれがあり、のちのち「あれがきっかけで分布が広がった」ということがあるかも知れない。10~20年後の視点で見たときに打てる対策は打っておくべきではないか。
- (指定や説明していくためには?)外来種について、論文化されている必要がある。この点について学者にも責任があり、行政をサポートしていくということが課せられている。
- 今すぐやらなくてはいけないことなど、検討課題に優先順位をつけて整理するべき。