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中央環境審議会野生生物部会
第3回移入種対策小委員会
会議録




 環境省自然環境局

  1. 日時  平成15年4月15日(月)10:30〜17:00
     
  2. 場所  経済産業省別館10階 1028会議室
     
  3. 出席委員 
    (小委員長)   岩槻 邦男    
    (委員)   阿部  永 
    小寺  彰
     大井  玄
     山岸 哲
     加藤 順子
     鷲谷いづみ
    (専門委員)   石井  実   大矢 秀臣  小林 正勝
     
    (環境省)   福井総務課長
    黒田野生生物課長           
    笹岡国立公園課長
    田部自然環境計画課長
    渡邊鳥獣保護業務室長
    上杉生物多様性企画官          

  4. 議事

【事務局】 それでは、予定の時刻を若干過ぎまして、申しわけございません。中央環境審議会野生生物部会移入種対策小委員会を開催していただきたいと存じます。
 本日の出席者数でございますが、中央環境審議会運営規則によりまして定足数を満たしておりますので、本日の小委員会は成立しております。
 なお、大塚委員、岡島委員、児玉委員、太田委員、細谷委員はご欠席と伺っております。また、鷲谷委員は若干遅れているようでございます。
 会議が始まります前に、お手元にお配りした資料の確認をさせていただきます。資料一覧がないので恐縮でございますが、まず議事次第の後に第3回移入種対策小委員会プログラムという1枚紙がございます。それから小委員会の名簿、その後に資料がございますが、資料1、それから資料2−1から2−10までの資料をお配りしてございます。もし資料に不備がございましたら、途中でも構いませんので事務局までお知らせください。
 それでは岩槻委員長、よろしくお願いいたします。

【岩槻委員長】 それでは、ただいまから移入種対策小委員会第3回を始めさせていただきます。
 前回は意図的導入についての基本的な考え方をリストアップして、意図的導入のためのリスクの評価をどうするかというような議論もしていただいたんですが、そういう総論的な議論に基づいて、きょうは意図的導入に関して問題がありそうな具体的な例について、幾つか勉強する機会を与えていただきましたので、午後まで長時間になると思いますけれども、十分勉強していただいた上で、理解を深めて、具体的な議論はまた次回にやらせていただくという、そういう形で進めさせていただきたいと思います。
 早速議題に入らせていただくことにして、最初環境省における移入種駆除事業についてということで、マングースの話をしていただいて、その後移入種に関する意見聴取ということで、5件、2人ずつお願いするという準備をしていただいております。
 それでは、最初に「環境省における移入種駆除事業について」、事務局の方からご説明をお願いします。

【事務局(河本)】 それでは、最初に環境省の方でやっております移入種駆除事業につきまして、ご説明を申し上げたいと思います。お手元の方に資料1をお配りしておりますが、それと同じものをパワーポイントを使いましてご説明を申し上げたいと思います。
 移入種対策といたしまして、現在環境省の方で行っておりますのが、制度づくりに向けましたこの小委員会での検討、それと既に定着をしている移入種の駆除事業も行っているところでございます。駆除事業の中身につきましてご説明申し上げたいと思います。
 大きく言って中身は2つございまして、1つは島嶼地域での移入種駆除の事業、それからもう一つはことしの2月から3月にかけて行いました皇居外苑の移入種駆除等の事業、これは前の年度から行っていますけれども、先月行ったものが結構大きく報道されましたので、ご存じの方もいらっしゃるかと思います。ただこちらの方は割愛をさせていただきまして、島嶼地域での移入種駆除等の事業についてご説明を申し上げたいと思います。
 平成8年度から奄美大島でマングース対策を開始したのが最初でございまして、やんばる地域でのマングースの駆除事業を平成13年度から行っているところでございます。それと移入種対策といいますと、早期発見、早期対応ということが求められるわけですが、オオヒキガエル、これの侵入を防ぐ目的でモニタリングを西表島で行っております。これについても若干触れたいと思います。
 マングースと呼ばれております食肉目の動物ですが、30を超える種がいるということで、奄美大島、それから沖縄本島に定着しておりますのはジャワマングースという種であります。これはアラビアの北部から東南アジア、中国南部にかけまして、またジャワ島に本来は分布をしている種であります。これが奄美大島あるいは沖縄の方に人為的に導入をされたというわけですが、ハワイ諸島ですとかフィジー島にもこの種が導入されたという経緯がございます。これの生態につきましては、昼行性、昼に活動するというものであって、食性、食べるものについてはかなり幅の広い性格を持っている。昆虫類から鳥類まで、小動物を広範に摂食をする。植物質のものも胃の内容物を分析しますと出てくる。
 初めに奄美大島の方の事業についてご説明をさせていただきます。奄美大島の方にマングースが導入されましたのは、地元の住民の方々にとって大きな脅威となっておりますハブ対策、これのためでありまして、1978年から80年の3カ年にかけまして30頭ほどマングースが放たれたのがそれの起源であると言われています。その後、この30頭のマングース、子孫をふやしておりまして、1997年、98年の時点では3,000頭〜6,000頭、それから99年時点では5,000頭〜1万頭ぐらいに増えたというふうに考えております。導入されてから20年ぐらいで100倍から300倍ぐらいの数に増えたと、そういうことになります。
 環境省がマングースの駆除事業を行っておりますのは、絶滅のおそれのある希少野生動物を捕食しているということが明らかでありましたので、放置しておくとこの希少生物が絶滅をしてしまう可能性がある。そのためにこの事業を開始したわけです。環境省が行いましたマングースの胃の内容物の調査がありますけれども、その結果、哺乳類ではアマミトゲネズミですとかワタセジネズミ、鳥類ではアカヒゲ、リュウキュウウグイスですとかシロハラですとか、また爬虫類ではキノボリトカゲ、そういうものが胃の中から見つかっております。
 また別に森林総合研究所の方でふんの分析を行っていますが、その中ではアマミノクロウサギという絶滅危惧種も見つかっているということでございます。同じジャワマングースが導入されましたハワイ諸島ですとか西インド諸島、そういったところでは多くの哺乳類、あるいは地上性の鳥類が減少なり絶滅に至ったということが知られておりますので、奄美大島でもこのまま放置しておきますと希少生物が絶滅の可能性が出てくるということで、この事業を行っております。
 マングースの分布の拡大の図でありますけれども、黒の矢印が示してあるところが最初に名瀬市で放獣をされたところです。その後82年、86年、90年、それから98年、大体同心円状に広がっているという様子が見ていただけるかと思います。この勢いで広がっていきますと、数年たつとこの奄美大島全島に広がるのではないかということも考えられます。
 一方、マングースに捕食をされていることが確認をされたアマミノクロウサギ、こちらの分布状況ですけれども、こちらの図面に示しておりますとおり、年々分布区域については縮小の一途をたどっております。ただ奄美大島の中ではダムとか林道関係の開発事業も幾つか行われておりますので、すべてがマングースの責任でこの分布が狭くなっているということは、そこまでは言い切れないというふうに思います。一番右側の1995年の図のところでは赤い矢印が示されておりますが、これは特にマングースが導入された後に生息域が縮小された場所について示しております。
 環境省の方で行っておりますマングース対策ですけれども、平成8年度に開始をしております。希少種の方を考えますと、早期にマングースの駆除を実施していくという必要があったんですが、奄美大島ほど大きな島でマングースを根絶をさせたという例は世界的にも見当たらないということで、目標は島内からのマングースの根絶ということに置いたわけですが、まず調査、あるいは技術的な試行を行いまして、平成12年度から本格的な駆除作業を実施しております。具体的には平成8年度から生息の実態把握、それからそれに基づいた効率的な手法を確立する、それから生息密度の調査、それから胃の内容物調査と、そういったことも行っております。それで12年度から本格的な駆除事業と、そういう年次で今まで進めてまいりました。
 奄美大島における捕獲頭数ですけれども、12年度から本格的な駆除を始めていますが、それまでは有害鳥獣駆除という形でマングースの駆除が行われておりました。12年度からはそれ以外にこの移入種対策ということで駆除を始めまして、その12年度が捕獲数のピークとなっております。13年度以降は捕獲が進んだということで、1カ所にわなにかかるマングースの数はかなり減ってきておりまして、全体の捕獲数も少なくはなってきております。ちなみに今までに捕獲したマングースの頭数を累計で言いますと、約1万6千頭に上ります。
 奄美大島における駆除事業の課題を整理してみました。駆除されるマングースの数は確実に減ってきているんですが、これでもって生息数自体を減らすことができたと評価することも可能なのですが、捕獲数が減りましたのはワナを避ける個体が現れてきているということも考えられますので、単純に生息数の減少を意味しているということは言い切れないかというふうに思います。効果の判断については慎重に下す必要があるかと思います。一方で分布域については着々と広がっておりまして、このまま捕獲の圧力をなくしてしまいますと、分布域が広がっておりますので、島内で一斉にまたマングースが増えてくると、そういうことも考えられます。
 2番目に、駆除が進みましたことで捕獲するためには山奥に行くとか、時間と労力をかけて出向かなければいけないような状況になっております。つまり捕獲のための努力量が増大しているというのが現在の状況です。今後、捕獲効率を高めるための技術開発ですとか、マングースの分布域を押さえ込む方策をどういうふうに組み立てていくかと、こういうことが今の重要な検討課題であるというふうに考えております。
 以上が奄美大島についての事業のご説明です。
 それともう一つ、沖縄本島の方のマングースの事業についてご説明申し上げます。沖縄の方にマングースが導入されましたのは1910年、これもハブ退治を目的にインドの方で捕獲したものを13〜17頭沖縄に放したと、そういう記録が残っております。50年代には県内の行政機関ですとか個人によりまして、名護以北、要するにやんばる方面の北部地域へも積極的に移入されたと、そういう記録が残っております。
 やんばる地域、言うまでもなく多様な自然環境が残っておるわけですが、固有種とか希少種も多く生息しておりますし、生物多様性の観点からは世界的にも特徴のある地域ということであります。しかしながらやんばる地域におきましても先ほどの奄美大島と同様で、希少種がマングースなどに捕食されているということが問題になっていまして、過去に調査した中ではヤンバルクイナですとかケナガネズミ、それからアカヒゲとかキノボリトカゲといったものをマングースが捕食しているということが確認されております。
 幾つかある希少種の中でヤンバルクイナについて分布状況を調べたものがございます。これは1985年に分布の南限とされました大宜味村の塩屋というところと、それから東村の平良というところを結ぶ線がございます。そこから年々ヤンバルクイナの分布の南限というものが北の方に上がっておりまして、今は2000年度と書いた線がございますが、85年の当時と比べますと3分の2ぐらいの分布域になってしまったのではないかというふうに考えております。
 この図は沖縄県と山階鳥類研究所の方で調査されましたものから起こしたものですけれども、ヤンバルクイナの生息の有無を確認した結果をメッシュでもって整理をしたところ、調査を行った区画のうち、やんばるの南西部の方で過去には生息が確認されていたのに、その反応が見られなかった区画がかなり見られたということです。同じ調査の中でマングースを捕獲したメッシュを照らし合わせてみますと、ヤンバルクイナが見られなくなった区画でマングースが確認をされている。しかもヤンバルクイナとマングースが両方確認できた区画がほとんどなかったということでありまして、やんばる地域にはまだ森林自体は結構豊かなものがございますから、ヤンバルクイナがいなくなっているのはマングースに捕食されてこういう分布を狭めている状況を招いているということが推測されます。
 マングースとノネコの捕獲頭数のグラフを示しております。沖縄県と環境省、それぞれ捕獲をした数を合わせたもので、具体的には平成13年度にマングース333、ノネコ  16、14年度にマングースが2,107、ノネコ116、これだけ捕獲しております。ここでいきなり「ノネコ」というのが出てきたわけですが、やんばる地域でノネコの糞を分析いたしましたところ、やはり絶滅危惧種であるノグチゲラとか、オキナワトゲネズミ、それからケナガネズミと、そういった希少生物をノネコが捕食をしているということが確認されておりますので、マングースと並んでやんばる地域の希少生物を脅かす存在になっているということから、あわせて捕獲しているものでございます。
 やんばる地域における事業につきまして、まだ2カ年しか経ておりませんけれども、現段階で課題を3つ挙げさせていただきます。1つは、マングースなど新たなやんばる地域への侵入をいかに防ぐかということです。13年度から始めましたのは、先ほど塩屋というところと平良を結んだ、俗にSTラインというふうに呼ばれておりますけれども、それの北側で直接希少種を捕食する移入種個体を捕獲しようとしたものであります。STラインの南部については昨年度若干捕獲いたしましたけれども、南側からやんばる方面に侵入があるということで、STラインの南側が言ってみれば移入種の供給源になっているということがあります。
 ちなみに沖縄県の方で昨年度捕獲したマングースの頭数が2,107ということですが、そのSTラインの北側でとりましたのが、800のワナを使って399だったということです。ただSTラインの南側ですと最大で200のワナしか使っていないんですが、1,708の捕獲があったということで、南側の方がマングースの生息密度としては非常に高いということは言えようかと思います。この南からの流入、個体の北上というものを止めないと、幾ら駆除作業を行っても際限がないということも言えようかと思います。
 それから2点目ですが、ノネコがやんばるの希少種の大きな脅威となっておりますけれども、飼い猫が捨てられて野生化しているということが考えられますし、それから本島の南部からやんばるの方へ猫を捨てに来る方々がいらっしゃるということで、これへの対処が必要であるというふうに考えております。なおマングースと同様にノネコを捕獲していくことにつきましては、動物愛護団体の方々から反対意見もいただいております。環境省で捕獲をした猫につきましては、適正に飼育をできて再譲渡や遺棄をしないと、そういった旨の誓約書を書いていただいた方にすべて引き取っていただいております。
 それから3点目ですが、新たな移入動物の存在というものがあります。マングースとノネコの話を申し上げたんですが、それ以外にアライグマ、そういったものも発見されておりますし、いわゆるノイヌ、それも希少種を捕食しているということが確認されておりますので、それらに対してもあわせて対策をとっていくということが必要になっております。以上が今のやんばる地域での事業内容でございます。
 最後に駆除事業とは直接関係ないかもしれないですが、西表島で行っております移入種対策の事業について、簡単にご紹介させていただきます。
 これは西表島の方に石垣島から建設資材などに紛れ込みまして、非意図的な導入という形になりますけれども、オオヒキガエルというものが入り込んでいる、これに対処しようという事業です。西表島の方にも数々の希少生物はいるわけですが、オオヒキガエルに昆虫類が捕食されてしまうといったこと、あるいはイリオモテヤマネコなどがオオヒキガエルを捕食したときに、耳腺のところには毒があるものですから、その毒によって影響を受けてしまうと、こういうことを懸念して行っているものです。現在これに対処するために島の住民の方々の中から監視の方をお願いいたしまして、モニタリング作業をしているところです。現在までに10匹ほど西表島の中でオオヒキガエルが見つかりまして、捕獲したという実績がございます。
 以上が環境省で行っております移入種関係の事業のご説明でございますが、基本的に環境省で行っておりますのは、希少生物を保護する、そういった観点から移入種の駆除事業というのを実施していると。しかもその中でも緊急性の高いものについて実施をしておりますので、その旨ご理解をいただければというふうに考えております。
 簡単でございますが、私の方からの説明は以上で終わらせていただきます。

【岩槻委員長】 どうもありがとうございました。
 ただいまの環境省の移入種駆除事業で、ご質問あるいはコメント等がありましたらご発言をお願いいたします。

【大井委員】 マングースを放したことによるハブの動向はどういう変化があったか、一言だけ。

【事務局(河本)】 奄美大島でハブにかまれる方々の数と、それで年次的にどういうふうに減ってきたかというふうな推移があるんですが、それと奄美大島でマングースが放たれた年度、それからの増加数は特に関係ございませんので、余り具体的な数字ではデータとしてマングースが実際にハブ退治に対してどういう効果があるかというのは見えてこないところがあります。
 それと、マングースは最初生態のところに書きましたとおり昼に行動するという動物ですが、ハブは基本的に夜に行動するものでございますので、多分遭遇することは余りないだろうというふうに言われておりまして、今の時点ではマングースはハブ対策としては余り効果はないというのが言われている状況でございます。

【岩槻委員長】 よろしいでしょうか、ほかに。鷲谷委員。

【鷲谷委員】 奄美大島の本格的な駆除事業は14年度までというふうに出ていましたけれども、15年度以降にはどんな対策を考えていらっしゃるのでしょうか。

【事務局(河本)】 先ほどグラフを見ていただいたんですが、12年度にはかなりの数が捕れまして、その後ちょっと減ってきております。実はこれ、島内の方々にある程度報償をお支払いした上で捕っていただいているんですが、最近なかなか捕れなくなったものですから、捕る意欲がちょっと皆さんなくなっているみたいです。山奥の方に行かなければ捕れなくなっているという事情もございますので、そうしたことから15年度以降も環境省としては駆除事業は進めるつもりでおりますけれども、とにかく捕ってくださいという形で進めるのではなくて、もう少し効果的な捕り方というのを考えなければいけないというふうに考えています。その中身について今検討中でございます。

【黒田野生生物課長】 1点補足ですが、資料の中で奄美大島における駆除事業というところに、12年度から本格的な駆除事業で5,600万円と書いてあって、14年度までと書いてあるわけですが、これは14年度までのお金ということですので、事業は15年度以降も継続する予定です。

【岩槻委員長】 山岸委員、どうぞ。

【山岸委員】 幾つかあるんですが、まず奄美大島の場合にはマングース駆除にかけた費用がきちんと、これを足すと8,000万円ぐらい書かれているんですが、沖縄本島の方のマングースに対してはどのぐらいかけられたのか、これが1点です。それから奄美大島の方はマングースの推定生息数が出ているが、沖縄本島の方ではそれがわかっているのかどうか。

【事務局(河本)】 沖縄県の方で実施をしております事業、直接の駆除の費用でございますが、12年度が3,500万円余り、以降13年度も3,500万円程度です。14年度は補正の予算があったということで、5,800万円ほどの予算をかけてやっております。マングースの推定頭数ですけれども、沖縄の方はまだ現在調査中というふうに伺っております。

【山岸委員】 お話を聞いて一番心もとないのは、これだけの物すごいお金がかかりながら、どのくらいの効果が上がっているのかというのが非常に科学的にわかっていないということだと思うんですが、そういうことに対して何かお考えはあるのか。このままずるずると、こんなようなスタイルで続けていかれるのか。その辺はどうなっているのでしょうか。

【事務局(河本)】 最後に課題のところでご説明申し上げたんですが、確かに今はただ捕るだけという形になっておりまして、南の方から入ってくるやつについては特に対策を取り切れていないということがあります。もし本格的にやるのであれば、例えば南からやんばる地域に入るのを防ぐために、ある程度物理的な障壁を造っていくということも考えられるんですが、それをやったときに、先ほど話しましたが費用対効果みたいな話でどこまでそれが理解を得られるのか。それから実際に技術的に物理的な障壁を造ったとして、マングースの侵入を抑えるだけの効果がどこまであるのかという辺りもしっかり検討してからでないと、次のステップには踏み込めないのかなというふうに思っております。今のところ、とにかくまずやんばる地域に南から入ってくるのを何とか抑えなければいけないということで、先ほどのSTラインというのがありましたが、あそこの周辺での捕獲作業をしたい。それからあと北の方にもしかしているかもしれないということで、モニタリングを兼ねた同様のマングースの捕獲作業というのもやっております。あと希少種が特に生息している山奥の方での捕獲を進めるべきじゃないかというふうな考え方もございますので、そちらの方も、では具体的にどういうふうなやり方をすればいいのかというのを検討させていただいている、そういったところでございます。

【山岸委員】 私は具体的にどうやるおつもりかということをお聞きしたので、これからやるというのでは全然答えになっていないので、どのようにおやりになるのかということ。まだわかっていないということでよろしゅうございますか。

【事務局(河本)】 現段階ではわなを仕掛けてマングースを個別に駆除をしていくというやり方で、それ以上に今の段階でははっきりとこうしますということは申し上げられません。

【山岸委員】 言えない。

【岩槻委員長】 鷲谷委員、どうぞ。

【鷲谷委員】 マングースの移動等の行動について、もっと生態学的なデータを充実させて、モデルをつくって捕獲努力との関係を検討するというようなことも必要なのかなと思います。林道が非常に多くやんばるにありますけれども、そういう林道というのが移動を促進することになっていないだろうかとか、科学的に検討すべきこともかなりあるように思うんです。そういうことを踏まえた有効な対策というのが必要だと思います。

【岩槻委員長】 山岸委員、どうぞ。

【山岸委員】 かなりしつこく、きついことを言っているんですが、事態はそんなに楽観できる状態ではないと思うんですよ。どんどんマングースが上がっていって、そのマングースが上がったところまでヤンバルクイナがいなくなるということは、もう早急に今鷲谷さん言われた科学的調査をして食い止めないと、かなり禍根を後に残す問題になってしまうのではないかと。ともかく急がなければいけないということで、しつこいことを申し上げたのですが、意のあるところをお酌み取りください。

【岩槻委員長】 そのほか、どうぞ小寺委員。

【小寺委員】 1点お伺いしたいのですが、先ほど猫のお話がございましたね。猫については、動物愛護というような観点から引き取ってもらう場合もあるということをおっしゃっていましたが、この駆除の事業と動物愛護との関係というのは、それは猫ということをおっしゃったんですが、どういうものについてはその種の動物愛護的なファクターを考えていらっしゃるのか、教えていただきたい。

【事務局(河本)】 我々の方に実際にいろいろご意見をいただくのは、猫についてがほとんどと言っていいかと思います。ただ動物愛護の基本は虐待防止というところにございますので、哺乳類なり爬虫類なりといったところ、もちろん鳥類もですけれども、そういったところが動物愛護法の中で定めた範囲ですけれども、そういったものを中心に動物愛護の視点というのは持っていくべきであろうというふうには基本的には考えております。

【岩槻委員長】 よろしいですか。小林委員、どうぞ。

【小林委員】 先ほど平良それから塩屋湾付近にマングースが非常に多いと。これは逆に言うと都市化によってマングースがそこに生息している。ヤンバルクイナは逆に都市化のために国頭村のずっと奥の方に入っていっているというような、ただ食われた、追われたというのではなくて、その辺の逆の現象というのはないのでしょうか。

【事務局(河本)】 奄美大島の場合は比較的開発事業がありますので、もしかしたら開発事業のためにアマミノクロウサギが分布域を狭めているのではないかという、そういう考え方はあるんですが、やんばるの場合は先ほど見ていただいたような場所で開発事業というのはそれほど行われておりませんので、今おっしゃった都市化なり市街化ということに伴ってヤンバルクイナの生息域が狭まっていったというものではないと思っております。直接一番関係として考えられるのが、マングースの侵入であろうというふうに今のところ考えております。

【小林委員】 マングースの餌になるというと変ですが、捕食するものは例えばヤンバルクイナだとか、たくさんあるんでしょうが、ごく身近な民家の近くの何か捕食するものというのは逆にないんでしょうか。

【事務局(河本)】 例えばクマネズミ、ネズミ類のようなものは捕食しております。ただマングースの特徴は、哺乳類から鳥類から爬虫類から両生類から何でも食べるというところが一番大きな特徴でありまして、場所によって胃の中から見つかるものについても傾向が変わっておりますので、特定のものだけ食べているというわけではないようでございます。

【岩槻委員長】 よろしいでしょうか。先ほどの鷲谷、山岸委員のご提案も含めて、ますます頑張っていただくようにお願いいたします。

【山岸委員】 ここに書かれている問題以外で非常に大きな問題が今起き出しているという資料を僕は太田さんからもらいまして、それで太田さんがきょう来て説明するかなと思ったので僕は資料を置いてきてしまったのですが、インドクジャクの問題ですが、これはお聞きになっておられるでしょうか。

【事務局(河本)】 太田先生から資料をいただいています。

【山岸委員】 そうですか。今後はぜひこの検討の中へお含みいただけるようにお願いいたします。

【岩槻委員長】 それでは、どうもありがとうございました。
 議題の第1の環境省の事業についての説明をこれで終わりにさせていただきまして、これから議題の2の移入種に関する意見聴取に入らせていただきますが、まずどういうふうなやり方で進めるのかというのを事務局からご説明をお願いいたします。

【事務局】 それでは、ヒアリングにつきましてご説明します。
 お手元の資料の小委員会プログラムを見ていただきたいと思いますが、これから行いますヒアリングにつきましては、移入種問題にかかわりの深い愛玩用哺乳類、産業用昆虫類、観賞用昆虫類、観賞用爬虫類、外来牧草類の5つの分野につきまして利用の推進や利用のあり方の研究などをされている方々から、それぞれの立場からの意見をお伺いしたいと考えております。
 まず、各分野の2名の発言者の方からそれぞれ15分程度でプレゼンテーションしていただき、その後20分程度各委員からの質疑、意見交換を行ってくださるよう、お願いいたします。順番につきましてはそのプログラムにお示ししているとおりでございます。
 以上がヒアリングの進め方についての説明でございます。

【岩槻委員長】 どうもありがとうございました。そういうことで、これから5件で、予定を見ますと16時40分までとなっていますけれども、委員の方もご協力をいただきたいと思いますし、発表をお願いするのは15分ずつということで、時間の厳守にご協力をお願いしたいと思います。
 それでは、早速始めさせていただきますが、最初は「愛玩用哺乳類(アライグマ等)について」ということで、最初は浅田鳥獣貿易株式会社の浅田未延さんよろしくお願いいたします。

【参考人(浅田)】 ただいまご紹介にあずかりました浅田鳥獣貿易代表取締役の浅田未延です。よろしくお願いします。
 まず、私どもではもう20年以上にわたって輸入鳥類、小動物、また爬虫類の方も輸入等をさせていただいております。私どもで輸入いたしまして、国内の卸売業者、またペットショップの方等に販売をさせていただいているわけです。今回の移入種問題に対して、ペット用に輸入された動植物が日本固有の生態系に影響を及ぼしているという事実に関しましては、ペット業界の一員として、また一番大本である輸入業者という立場から、厳粛に受けとめているところであります。
 しかしながらこの問題に関しましては、その原因が私の考えるところでは飼育者による飼育放棄ですとか、一部の輸入業者による無計画な輸入等が原因であると考えられ、本質的な部分は既存の輸入動物に対する他の規制とは全く異なるものであるというふうに考えております。他の規制というのは従来の動物由来感染症などに対する規制という意味で申し上げたわけですけれども、これは言いかえれば業界に従事する者、また実際に飼育される一般の方々のモラルの問題であるというふうに言えるかと思うんですが、このことから特定の移入種に対してこの問題に関して輸入規制をするのではなく、ペット業界または飼育者に対する指導、あとはそれに対する行政の指導ですとか規制をしない限り、この移入種問題に関しての本質的な部分は解決されないのではないかというふうに思います。
 次に業界の輸入から小売販売の、また飼育者までの現状を簡単にご説明させていただきたいのですが、我々輸入業者も含めまして、ペットショップですとかペットホテルですとか、あとはペットの病院、動物病院、こういったものを対象に動愛法の施行に伴って非常に従事している方の意識が高まったというふうに認識しております。このことは地方自治体によって多少違いがあるとは思うんですが、東京都の場合ですとまず都内でペットショップですとか輸入業者、またペットホテル、動物病院等も含めまして動物取扱業というものを設定しまして、ペットショップ等はその取扱業の東京都の許可がないと、営むことができないことになっております。この動物取扱業の許可をいただくためには、動物取扱主任者という登録が必要になっておりまして、これ、私のなんですけれども、東京都から発行していただいた動物取扱主任者証というものです。これを取得するためには、東京都の方で行われる適正飼養講習会というのを受けまして、それなりの知識を得た者でないと登録されないということになっております。この1人以上の主任者を設けて初めて取扱業という資格が得られるわけでして、こういったことから先ほども申し上げましたけれども、近年、もうこれが施行されて3年ほどになるかと思うんですが、ペット業界における動物取扱いに関する意識ですとか動物の販売に関する認識等が大分向上されたのではないかというふうに認識しております。
 また、実際にペットを飼われている方の間でも、近年欧米諸国の影響もございまして、今までの既存の愛玩動物という概念から、コンパニオンアニマル(家族の一員)ですとか、生涯の伴侶というような思想が大分広がってきているのではないかというふうに思われます。ただその一方で、近年のエキゾチックアニマルブームですとか、集合住宅等でもペットが飼えるという現状も助けているのではないかと思うんですが、生態が熟知されていないにもかかわらず、簡単にペットショップの店頭で入手できるという現状もあるかと思います。
 我々で取り組んでいる内容としましては、計画的な輸入をしようというふうに常に心掛けております。極端な話、輸入業者の中には大量のものを一度に入れて、安く仕入れてたくさん売ろう、それで余った分はもう本当に投げるような金額で処分してしまうような方もいらっしゃるという話を聞いたこともあるんですが、我々はできればそういうことは避けて、必要な分を必要なときに輸入して、それで販売していこうというふうに心掛けております。また、実際にペットショップなどに販売する際には、十分な飼育方法と取り扱いの説明をするように心掛けております。
 実際に輸入が規制された場合の問題点というお話があったんですが、現状では既にもうさまざまな規制がございまして、これ以上の規制はないにこしたことはないというふうに思っているのが正直なところです。私なりの考えではあるのですが、先に申し上げたようにモラルの問題であるというふうに考えておりますので、地方自治体レベルのペット飼育者に対する意識改革の促進、地方自治体レベルでの飼育動物の登録制度、これは先ほどこちらでご紹介した東京都の場合ですけれども、その取扱主任者ですとか、動物取扱業という部分での地方自治体の行政の対応を強く希望します。
 また、実際に販売するペットショップにおいても、顧客管理の徹底、例えばここで対象になっていますアライグマの場合ですと、アライグマがどこの誰々さんに売られて、お客様との交流を続けていくことによって、そのペットが例えば飼育放棄されているのではないかというような現状をつかむという意味でも書かせていただきました。
 それと、これは以前からもいろいろな方面でも話が出ている部分もあるんですけれども、輸入者の登録制度ですね。無計画・無作為な輸入を防止するためにも、何らかの形で輸入者の登録制度。またこれに伴って実際の輸入量の把握ですとか、そういったことにも役立つのではないかと思っております。
 ちなみに輸入者の登録制度というのは、欧米諸国ではもう輸出入に関してはすべてライセンス制になっているところが数多くありまして、実際にライセンスがないと輸出及び輸入業務というのができないような制度が既に諸外国ではありますので、こんなことも少し考慮していただいて、少しでも輸入量の制限という、単純に特定種を規制するというのではなくても、こういった部分で輸入量の制限というような形に役立てばというふうに考えております。
 最後になりますけれども、実際今回特定の移入種ということでアライグマの話が上がっているかと思うんですが、実際問題、アライグマ、スカンク、キツネに関しましては、狂犬病予防法に基づく規制のために近年輸入はほとんどありません。唯一私どもで輸入させていただいているのがキツネなんですけれども、これは特殊なフェネックという最小のキツネでして、これは規制になる前から単価が高かったために、多少の検疫の費用が入っても販売できるだろうというところから、本年規制がされた後も引き続き輸入はさせていただいていますが、アライグマ、スカンクに関しましてはもうほとんどないというふうに思っていただいて結構だと思います。
 また、今年の3月、プレーリードッグが、やはりこちらも人畜共通感染症の関係で輸入禁止となりまして、また並行してその他の齧歯類――リスですとかハムスターですとか――という話もあるようですが、こういったものも規制の対象になるのではないかという話もございまして、先ほども申し上げたように、既に多くの規制が輸入動物に対してかけられているのが現状でございます。ですので、本質的な部分が異なる移入種問題に関しましては、既に規制されている輸入動物に対して新しく規制をかけるのではなく、他の省庁ですとか他の法令、こういったものとの包括的な対応をご検討いただきたいところではございます。
 私の方からは以上です。

【岩槻委員長】 ありがとうございました。
 質問はお二人のお話を、プレゼンテーションをいただいてからということで、もう一人のプレゼンテーションを、北海道自然環境課の浅野さんにお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

【参考人(浅野)】 北海道の浅野でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 パワーポイントを使って説明させていただきます。報告に際しましてはアライグマの現状、それから現状を踏まえて作成いたしました基本方針、それから行動計画の進め方、それから15年度の取組み、こういう順序で説明させていただきたいと思います。
 まず、この写真からですけれども、これは道の研究機関で自動撮影装置を使って撮影しましたアライグマでございます。これは牛舎に出没した親子のアライグマでございます。こんな格好で出てまいります。これはトウモロコシ畑ですけれども、周囲に山がありまして、畑のそばには沢も流れております。典型的なアライグマの被害地です。こちら側に食べられたトウモロコシを示してあるんですけれども、器用に食べていきます。
 これはメロンとスイカの食害です。手先が器用なものですから、果肉をほじって食べるというような被害を出しております。
 これがアライグマの捕獲状況でございます。農業被害が増加していることから、道では平成12年度からアライグマの捕獲を実施しております。沢の中に仕掛けた捕獲ワナでアライグマが捕獲されております。捕獲ワナの大きさは幅が30センチ、高さが30センチ、長さが大体90センチで、折り畳みが可能です。折り畳むとライトバンに30個ほど積むことができます。
 捕獲したアライグマですが、これは北大の方に運びまして、性別の判定、それから体重、体長のほか、年齢の調査、あるいは雌であれば繁殖に関する調査を行っております。これは泌乳の確認、それから着床数の調査をしているところでございます。この調査の結果から産子数が大体4頭、それから性成熟年齢が11カ月、1歳の妊娠率が66%、2歳以上の妊娠率が96%であることがわかりました。
 続きまして、北海道のアライグマの生息状況の拡大について説明させていただきます。平成4年と7年と10年と13年の調査結果をまとめて示しました。4年と7年につきましては、北海道大学の池田助教授の調査結果を使わせていただきました。この調査は狩猟者へのアンケートで行いました。平成4年、青い部分ですけれども、恵庭市など、道央の一部でのみ情報がありましたが、13年度には道央部だけではなくて、道東ですとか道北でも飛び地的に生息状況が得られました。今後分布域の拡大が懸念されております。
 これは先ほどの調査を市町村数で年度別にまとめたものでございます。10年と13年に急増しているのがわかると思います。また13年度には85市町村でありまして、全道の約40%に該当しております。これは被害額と捕獲頭数の推移を示したものでございます。横軸を年度、左側の縦軸に被害額を、右側の縦軸に捕獲頭数を示してあります。折れ線グラフは捕獲頭数の推移で、棒グラフは被害額の推移を示してあります。最初に被害額の方から見ていきます。平成8年から10年までは急増しております。その後3,000万円台で推移しております。続きまして捕獲頭数についてですが、平成8年度に初めてアライグマが捕獲されまして、その後増え続けまして、13年度には約1,000頭捕獲されております。
 今までは農業被害について主におしゃべりしたのですが、アライグマの被害は農業だけではなくて、生態にも与えることが考えられております。これを3点に分けて説明いたします。
 第1点目が生物多様性への影響です。札幌市の近郊に道立自然公園に指定されています野幌森林公園がございます。平成9年に営巣中のアオサギのコロニーが消滅するという出来事がございました。そのコロニーが消滅した原因として、アライグマが疑われております。さらに道東の希少鳥類の営巣地付近にアライグマの足跡らしきものが発見されました。アライグマの影響が懸念されております。
 2点目ですけれども、在来種への影響ということが考えられます。北大などの調査から、アライグマによって在来種であるタヌキが圧迫されているのではないかと言われております。
 それから3点目が、餌となる在来種への影響でございます。アライグマの胃の内容物の調査から、トンボですとかセミなどの昆虫類、さらに魚類の骨ですとか鳥類の羽、コクワですとかヤマブドウ等の植物が食べ物として利用されていることが判明いたしました。
 アライグマによる農業被害の増加ですとか、生態系への影響が懸念されるようになってきており、道ではアライグマ対策の推進を進めるために平成15年の3月に北海道アライグマ対策基本方針を定めました。皆様のお手元に配っているものでございます。
 対策の目的ですけれども、3点ございます。1点目が農業被害の防止ということで、年間3,000万円ぐらいの被害が出ております。2点目がアライグマ回虫ですとか、狂犬病の可能性のおそれがあり、健康被害の防止ということにいたしました。それから3点目が在来種の影響のおそれが考えられますので、生物多様性の保全ということを、3点目の目標にいたしました。それから対策の最終目標ですけれども、これは北海道の野外から排除するということにいたしました。それから目標達成の方法といたしまして、普及啓発、野生化の防止、野生個体の徹底排除ということを考えました。普及啓発につきましては、皆様のお手元にこういうハンドブックをお配りしているかと思います。これを関係する市町村にお配りいたしまして、普及啓発を進めているところでございます。
 野生化の防止という項目ですけれども、道では「北海道動物の愛護及び管理に関する条例」を定めました。その中で特定移入動物を指定いたしました。特定移入動物といたしましては、アライグマ、フェレット、プレーリードッグ、この3種を指定しております。特定移入動物を飼育する場合には、届け出が義務付けられております。現在のところアライグマは13人の方が45頭飼育しております。なお動物販売業者には購入者に対して終生飼養の確認ですとか、繁殖を不能にする手術の必要性というのも、適切な情報を提供しなければならないということにしております。
 3点目の野生個体の徹底排除について説明いたします。これはアライグマ対策行動計画を策定いたしました。お手元に配りました15年度アライグマ対策行動計画、この中で詳しく述べております。
 まず、被害状況ですとか生息情報を基にいたしまして、全道を3つに区分いたしました。赤色の濃いところですけれども、ここを緊急捕獲地域といたしました。アライグマが捕獲され、かつ農業被害が報告されている地域を選定いたしました。札幌市ですとか恵庭市、16の市町村が該当いたします。桃色のところですが、これを要注意地域といたしました。緊急捕獲地域以外の市町村で、捕獲実績がある地域ですとか、生態系への影響が懸念されている地域を市町単位で選定いたしました。小樽市ですとか釧路市、約80市町村が該当いたします。無色のところをその他の地域として選定いたしました。
 それぞれの地域の排除計画について説明いたします。緊急捕獲地域は10カ年で排除を目指すということにいたしました。平成15年、16年は2,000頭を捕獲する、目標頭数の5割を6月末までに捕獲するということにいたしました。2番目の要注意地域ですけれども、ここでは積極的な捕獲を進めるということにいたしました。飛び地拡大の阻止と生態系への影響が懸念されている地域で排除を進めるといたしました。その他の地域ですが、ここでは速やかな生息情報の確認と、早期対策を実施することにいたしました。
 次に特に緊急を要します緊急捕獲地域について詳しく説明いたします。行動計画策定のために平成13年度の道とそれから市町村によるアライグマの捕獲実績等から、まずCPUEを計算いたしまして、13年度末の生息頭数を3,000頭と推定いたしました。この3,000頭を排除するための試算を行いました。このグラフがそれです。まず縦軸ですけれども、これは年間捕獲頭数でございます。横軸ですが、6月までの捕獲割合といたしました。特に6月までの捕獲割合ということに注目したのは、北海道ではアライグマの幼獣が捕獲されるのは7月以降です。6月までは巣穴にいて母親の授乳によって育てられていると考えられます。6月末までに母親を捕獲すると、同時に幼獣も死亡させることができます。そのため、個体数を減少させるためには6月末までに捕獲することがより効果的であると考えました。そのため6月までの割合という軸を設定いたしました。
 次に、中ほどにあります黄色、赤の三角で結んだライン、これは変化点ラインといたしました。このラインの水準で捕獲を行っても、アライグマは増えも減りもしないというラインでございます。例えば6月末までの捕獲割合が0%であった場合、7月以降に全部捕獲されたというような場合ですけれども、その場合に年間2,000頭捕っても、その次の年の総個体に影響はないというふうに見ていただきたいと思います。
 次に青色四角を結んだラインですが、これを5年後に捕獲可能ラインといたしました。例えばここもやはり6月末までの捕獲割合が0%であった場合、ここですけれども、毎年毎年2,400頭ずつ捕り続ければ、計算上5年後には排除できるというところでございます。そういうラインを考えました。現在の水準ですけれども、黒丸ですが、示してあります。現在北海道で行われているアライグマの捕獲は6月末までの捕獲割合が大体25%、緊急捕獲地域の中で捕獲されているアライグマの頭数は大体840頭程度です。現在はこの水準におります。排除のための目標を白丸で示しました。年間の捕獲頭数を2,000頭、目標頭数の50%を6月末までに捕獲するということにいたしました。
 緊急捕獲地域内で10カ年でアライグマを排除するための試算を行いました。推定頭数には捕獲後の年末の推定頭数ではなくて、捕獲される前の繁殖後の推定頭数を使いました。10カ年で排除するためには平成15、16年に2,000頭捕獲する必要があります。この部分でございます。後半はかなり大きな捕獲努力量が必要になると考えております。ですが当面といたしましては、6月末までの捕獲頭数を50%にした上で、年間2,000頭捕獲するということを目標値として定めました。
 最後になります。排除計画達成に向けての15年度の取り組みについて説明いたします。
 まず第1点目に道の捕獲事業の改善ということを考えました。平成13年度は6月から平成14年度は5月から捕獲事業を開始していましたが、本年度は4月から事業を開始することにいたしました。適期に効率的に捕獲することといたしました。4月から捕獲することで6月末までの捕獲割合を高めることができます。これらによって捕獲頭数を平成13年度は200頭しか捕れなかったんですけれども、これを倍増するということを目指しました。
 2点目ですけれども、緊急捕獲地域内の市町村の行動計画等の実施ということにいたしました。平成15年の3月から4月にかけて、緊急捕獲地域内の市町村へ、基本方針と行動計画の研修会を開催いたしました。研修会では6月までの捕獲割合を高めること、さらに捕獲頭数の目標を倍にすること、さらに従来は市町村から猟友会にお願いして捕獲を実施していましたが、捕獲頭数をふやすために、被害農家を従事者とする新たな捕獲許可の申請方法について説明を行いました。アライグマを監視する目、つかまえる人をふやすことによって目標を達成しようと考えております。
 最後ですけれども、捕獲情報のフィードバック。従来年末に捕獲頭数を集計して市町村の方々にお知らせしていましたが、年度末ではなくて、年度の途中で市町村に捕獲頭数をフィードバックするということを考えております。中間にお知らせすることによりまして、目標頭数に近づける、計画的な捕獲を実施したいと考えております。15年度にはこれら3項目の実施によりまして、6月末までの捕獲割合を高め、かつアライグマの2,000頭の捕獲を目指すことにしております。
 道におきましてはアライグマ対策基本方針に基づきまして、市町村、農協等と一体となって、野生化したアライグマの排除を考えたいと考えております。また平成15年度は対策の初年度であり、計画を次年度へフィードバックしながら実効性を高めていきたいと考えております。
 以上です。

【岩槻委員長】 どうもありがとうございました。
 それでは今の浅田さん、浅野さん、お二人のご報告に対して、質問、コメント、自由にご発言をお願いいたします。どうぞ、石井委員。

【石井委員】 まず浅田さんの方にお伺いしたいのですけれども、モラルの問題で解決したらいいなと私も思うのですけれども、その辺が問題ではないかと思うんです。それでお配りいただいた資料2−1の3にあります販売の際にご説明いただいているという取扱いの説明、この中に具体的に飼育放棄をしてはいけないというふうなお話はされているのでしょうか。

【参考人(浅田)】 私ども現状90%以上がペットショップ、または全国の卸業者の方に販売するのが輸入業者という立場からメーンになってきていますので、実際にペットショップまたは卸売業者の方に、直接口頭で飼育放棄はしないでくださいというようなことは、業界の一般常識として特に行ってはいないのが現状です。ただ、取扱いの説明ですとか、どれぐらい大きくなりますよですとか、飼育放棄の原因となるような、例えば小さいもので実はこれは半年後にはこれぐらい大きくなりますよですとか、こういったものを食べて割とお金がかかってしまうかもしれませんよ、というような説明はさせていただくようにしております。ただ実際に飼育放棄をしないでくださいというようなことは、言葉では申し上げていないです。

【石井委員】 その辺が私は問題かなというふうに思うんですけれども、それは浅野さんにお聞きしたいのは、最後の方で具体的な捕獲計画のお話があったのですけれども、お配りいただいたOHPシートの4ページでしょうか、アライグマの生息地の推移というのがございますけれども、これはどういうふうな経路というのですか、人間が運んでいるのだと思うのですけれども、脈絡がないような広がり方していると思うんですけれども、こういうふうなゲリラ的に増えていくことに対しておっしゃられたような捕獲計画で排除ができるかどうか、この辺お聞きしたいのですけれども。

【参考人(浅野)】 7枚目のスライドでアライグマの生息地の推移というものがあります。確かにゲリラ的というか、ぽんぽんと飛び地的に出ております。この中でこの図をよく見ていただけると、道央部分でかなり広がりがきついというか、そういうふうな形になっております。それに対して道東ですとか道北ではそんなに広がり方は、遅いというか、ひどくはなっていないという状況にあります。当然、北海道全体で捕獲作業をしなければ排除は困難ですけれども、当面はびこっているところ、そこをまず重点的に抑えたい、やっつけたいというのが計画の始まりでざいます。15年から始まるのですけれども、分布の状況がどんどん変わってくると、緊急捕獲地域をもっと増やしていくような形に対応したいと考えております。

【岩槻委員長】 ほかは。鷲谷委員、どうぞ。

【鷲谷委員】 北海道の方に伺いたいのですけれども、緊急捕獲地域での排除に向けての駆除の方針ですが、6月までの捕獲頭数を50%としていらっしゃいますけれども、それをもっと高くすればより効果的な駆除ができるように思われるのですが。このモデルのシミュレーションの結果を見ますと、なぜ50%より上げるという方針をとらない、何か難しい点があるんでしょうか、

【参考人(浅野)】 アライグマの生活史にもかかわってくるんですけれども、4月ごろ子供が生まれて、6月ごろまで子育てをして、大体秋口まで動く、冬場になると行動はとまってしまうという、そういうふうな生活史を持っています。それでワナにかかり出すのは大体4月ぐらいからですけれども、4、5、6、7、8、9、大体そこがピークになります。その中で6月までというと、物理的にワナの個数の問題もありますし、主に物理的な問題で5割が限度かなというふうに考えました。

【岩槻委員長】 よろしいですか。では小林委員、どうぞ。

【小林委員】 ずっとお話を聞いていますと、2,000頭にこだわっていらっしゃるような感じがまずしたということです。ですから何かバランスを整えるというのが、かえって生息のバランスがいいようなインセントなのかなという、感じがしました。それは裏には予算だとか何かがあって制約されているのかな。逆に言うと、もっと早くしないとますますマングースのように山に入っていったり奥に入っていったりというような経過が出てくるので、もっとお金がかかっていくのかな、早めの方がいいのではないのかなという感じがしました。
 それからもう一点、道内で13人の方が45頭飼育していらっしゃる。これは何の目的で飼育されているのでしょうか。これだけ問題化されている環境下で。その2点です。

【参考人(浅野)】 アライグマを飼育されている方がいらっしゃるんですけれども、これはペットとして飼育されている方の人数です。それから2,000頭でしょうか。現在先ほども触れたのですが、緊急捕獲地域の中で840頭ほど毎年捕っております。それを推定頭数が3,000頭ですので、3,000頭全部捕れればいいのですけれども、今の予算の都合ですとか、奥地へ行けば行くほど技術的な問題も出てまいりますので、技術的にも予算的にも無理なので、2,000頭というところで定めました。

【岩槻委員長】 阿部委員、どうぞ。

【阿部委員】 北海道の捕獲の問題ですが、これは非常に大きな問題がたくさん残っています。緊急で捕獲しておりますが、これは緊急雇用対策の費用を使ってやっているわけです。これがいつまで続くのか私はよくわかりませんが、そういうこともあって、計画はいいのですが、実際先ほどの南西諸島の場合と全く同じ問題で、これをやるためには専門家の集団がないと実際にはできないんです。ですけど、実際は被害農家を主体としてやっているわけで、初期はいいのですが、密度が低くなったり、あるいは道東の方では密度が低いのですが、本当はそちらの方を重点的にやらなければいけないのですね。ですけど、それができていないんです、十分には。ある程度密度を下げるところまではいくのですが、下げた後の捕獲率が悪くなった以降をどうするかという問題が全く解決されておりません。ですからこれに対しては、地方ではできない部分がかなりあると思いますので、国全体としてやらないと、その点が一番の問題だと私は思っております。
 例えば、先ほどの重点捕獲地域、北海道の中央部分で現在やっているわけですが、中心部で捕獲率を上げて捕りますと、周辺部で高密度地域が広がっているわけです。この事実を見ましても、余り手をかけていないところでどんどん広がりつつあるので、非常に大きな問題なわけです。これと同じようなことが人為的に運ばれたと思われます道北とか道東、特に道東の場合には非常に大きな問題を抱えております。希少動物の一つになっておりますシマフクロウというのがごくわずか、百数十羽しかいないと推定されているわけですが、これは樹洞で営巣するのですが、アライグマも木も登って樹洞で子供を産んだりするわけです。同じようなところをよく利用しますので、極めて重大な問題で、シマフクロウの分布域で増えますと、先ほどのマングースと同じ問題が出てきますので、やはり低密度時にどうするかという、お金がうんとかかるはずなんですが、そこのところをきちんとやはり国全体で考えていかないと解決できない問題だと思いますので、皆さんにご議論願いたいと思います。

【岩槻委員長】 どうもありがとうございました。ほか、どうぞ大矢委員。

【大矢委員】 ペットの方の動物について少し補足をさせていただきたいと思いますが、先ほど石井委員の方からモラルだけの問題で大丈夫かというお話もございました。現在、飼育のペット動物、テレビの影響というのは非常に大きいということが1つ言えます。最近消費者金融のコマーシャルでチワワが出ておりますけれども、あれで現在チワワ市場が、本当に犬が、売れるものがなくなってしまっているというのが現状でございます。それからアライグマもかつてラスカルというテレビのアニメ、これで爆発的に人気が出たということで、そして新聞等でこの動物は危険だとか、例えばオウム病の問題になりますと、ペットショップの前に非常に高価なオウムが、かごごと捨てられている、飼育放棄される、そういうような現状がかつてございました。今でもまだその傾向はないとは言えないと思うのです。ただ、動物愛護法で動物を飼ったら最後まできちっと飼わなければいけませんという縛りができておりますので、先ほど浅田さんのお話の中にありましたように、地方自治体だとかいろんなレベルで飼育者の指導をしていかなければいけないのではないかな、そんなようなことを感じております。
 それから、キツネやアライグマについてですが、狂犬病予防法で輸入規制ができまして、それ以後のデータは私のところで動物検疫所からいただいております。平成12年にはキツネは輸入件数が9件、頭数で67頭。イギリスから展示用―これは動物園用だと思うのですが―2頭、それから愛玩用でアメリカから65頭。平成13年には9件でトータル54頭。これは先ほど浅田さんのおっしゃったフェネックだと思います。
 それから今一番問題になっておりますアライグマでございますけれども、平成12年には1件2頭イギリスから動物園展示用として輸入されておりまして、平成13年には輸入件数ゼロになっております。それからスカンクは平成12年に1件30頭、平成13年に1件20頭、同じくこれは愛玩用でございますけれども、平成14年はまだデータが出ておりませんのでございませんけれども、このように激減してきております。ですから、他の法令等によってかなり縛りができるのではないかと、そんなようなことを感じております。
 ペット動物だけではないのですが、いわゆる生動物の輸入に関わる規制なんですが、家畜伝染病予防法、感染症予防法、狂犬病予防法、そしてワシントン条約、渡り鳥条約、そういったもので縛られてきておりますので、以前のような野放しの輸入体系というのはかなりなくなってきているのではないか。ただ税関の方は、大分広がりはできましたけれども、まだまだ輸入頭数がキログラムで提示されるというような統計法をとっておりますので、輸入頭数の実態が分からないというのが大きな問題です。鳥類は、ウエストナイルの関係で4月21日から規制がかかりますので、ある程度輸入数量はわかってくると思いますけれども、そういった問題が1つ残っているかなと。
 それから最後に輸入者の登録の問題なのですが、ワシントン条約が発効する以前に、私どもは当時の通産省に輸入業者の許可制みたいな、鑑札制ができないかということを申し上げたのですが、当時の通産省としては輸入拡大を言っているときに輸入業者を縛るというのは時代の逆行になるので、それはできないということで、いつもいろいろな問題が発生するたびに、輸入業者の許可制・免許制というものが出てくるというのが現状でございます。

【大井委員】 輸入業者の方は利潤追求のためにやはりある程度自由な状況が望ましい。それからペットを飼育される方はかわいい、だけどそのうちに飽きてくる、捨てましょうということになってくる。捕獲の場合でも、ロジスティックな意味において北海道の例などを見てみますとなかなか思うようには、効率的には捕獲できない。それから官庁の方からいいますと、輸入するときの頭数も分からない。通産省はそういうことについては輸入を拡大するためには制限はしない方がいい。それぞれの面において非常に大きな問題というものが錯綜してございます。
 それで恐らくこれを、1つのところを非常に厳しくしても、それは余り効果はない。したがってまず包括的なインプットを抑えるということ、飽きたらば捨てるとか、そういうようなアウトプットを抑える、それから捕獲するということ、この3つのことを全部一度にやらないと、効果的な規制というのはできないのではないかという気がいたします。従いまして、そのときの原則というのはどういうものかというと、恐らくそれぞれの人たちがある程度痛みを感じていただかないとこれは効果的にいかない。つまり捨てる場合には罰金だとかそういうようなこと、相当きちんと出して、それから業者の方が今度は売るときには、そういうような罰金がかかるんですよ、あるいはある意味では規制屋になるということですね、それをきちんと話をすることを義務付ける。例えば医学の場合でもインフォームド・コンセントというのがございますけれど、そういうことは当然考えられてもいいのではないかと思うんです。
 そういうことで、私は包括的にどういうふうにして網を広げるかという、現実的なところ、どのように考えられておられるのか、環境省の方のご意見をお伺いしたいと思います。

【岩槻委員長】 事務局から。

【事務局(河本)】 おっしゃるとおり、それぞれのインプット、アウトプット、駆除というお話がございましたけれども、それぞれに何らかの施策を打っていく必要があろうかと思います。
 本日こういう形でヒアリングの場を設けさせていただきましたのも、それぞれのまず状況を把握した上でこれからどういう施策を打っていくべきかということを考えたいということで、こういうのを設けさせていただいておりまして、はっきりしたお答えを今申し上げることができないのですけれども、この場での議論、あるいは必要な情報があれば言っていただきたいと思うのですが、そういうものを踏まえてこれからどうすべきかということについては、考えさせていただきたいというふうに思います。

【岩槻委員長】 どうぞ、大矢委員。

【大矢委員】 昔はライオンやトラは個人が自由に飼えたんですね。ところがペット条例の規制ができまして、それ以後ライオンやトラが欲しいというお客さんが来られますと、まず県の許可をとってください、許可証を持ってくればお売りしますよというような言い方をすれば、100%そういう形態はなくなってきたわけです。ですからここでいろいろな論議される動物の対象をどうするかというのが1つ残りますけれども、そういうものに対しては飼育許可制というか、届出制、浅田さんのご意見の中にもございましたけれども、まだまだワニだとか爬虫類で、本人はかわいいで飼っていますけれども、他から見ると非常に危険だなと思うものも一般に事実市販されています。そういうものを含めて許可制、届出制ということが1つの網かけになっていくのではないかと、そんなふうに思います。

【岩槻委員長】 どうもありがとうございます。
 先ほど大井委員に上手にサマライズしていただいて、それに今2つのコメントがあったのですけれども、この審議会の委員会も先ほど大井委員がおっしゃったように環境省がやるべきことをどういうふうにしていただいたらいいのかということをサジェストするという責任を持っているわけですけれども、今のお二人のプレゼンテーションも有効に、参考にさせていただきながら、引き続き議論を続けさせていただきたいと思います。
 参考人の浅田さん、浅野さん、貴重な時間をご協力いただきまして、どうもありがとうございました。
 午前中はこれで終わりにして、午後1時から再開させていただきます。
( 休 憩 )

【岩槻委員長】 時間が参りましたので、午後の部、再開させていただきたいと思います。
 小寺委員が午後はご都合が悪いということで退席されたようですけれども、第2部は「産業用昆虫類(セイヨウオオマルハナバチ)について」ということで、まず最初のプレゼンテーターはアピ株式会社養蜂部の米田さん、よろしくお願いします。

【参考人(米田)】 どうも初めまして、アピ株式会社の米田と申します。私はこの場にはマルハナバチ普及会の代表として発言させていただきます。
 マルハナバチ普及会というのは、日本におけるマルハナバチの販売メーカー5社で組織する非営利団体です。アリスタ・ライフサイエンス、東海物産株式会社、キャッツ・アグリシステムズ、シンジェンタ・ジャパン、そして私の属するアピ株式会社が会員です。アリスタ、東海物産、シンジェンタは海外からマルハナバチを輸入しておりまして、キャッツとアピ弊社では国内で製造拠点を持って製造・販売しております。この5社以外にも3社、マルハナバチを取り扱っているのが日本にあります。
 マルハナバチ普及会の主な活動内容というのは、マルハナバチの利用技術を普及し、生産者の省力化や品質の向上などの手助けをすることです。また、普及会では適宜生産者の情報交換の場として利用技術検討会というのを主宰してきました。輸入開始以降に始まり、一昨年に第7回を行いました。その際には国立環境研究所の五箇博士をお招きし、マルハナバチを使用している生産者、販売している代理店の方々にマルハナバチを取り巻く環境問題についてお話しいただいております。最近ではマルハナバチを用いて栽培されたトマトを市場で有利に取引されるような宣伝広告活動に力を入れております。
 我々が扱っているマルハナバチについて簡単に説明します。これはマルハナバチの、一番右上がトマトの花に来ているハチの写真で、左側がその中、巣ですね。一番右下の部分が巣箱ですけれども、マルハナバチというのは社会性の昆虫です。つまり女王蜂がいてワーカーがいて、コロニー、すなわち巣を1つの単位として活動しています。花粉と蜜を餌にします。コロニーには1匹の女王蜂と100匹前後のワーカー、そして女王蜂によって産みつけられた幼虫やサナギなどが入っております。生産者の方から注文がありますと、右端の写真のような巣箱、外装箱と呼んでいるのですけれども、それに入れられて宅急便で全国に配られます。ハウスの中に入って入り口を開けてしまえば、ハチは花粉を集めるためにトマトを訪れ、着果、受粉するという、そういう仕組みになっております。
 まずマルハナバチの利用の現状に関連しまして、輸入開始以降どれほどのマルハナバチが使用されてきたかをお話しします。本来であれば企業は営利追求を目的としますので、マーケットに係る情報というのは絶対公開しません。しかしながら環境保全を考える上でサプライサイド、つまり供給側の情報というのは絶対必要だという認識に達しまして、リスクを承知で公開しております。つまり、これを見て新規参入が入ってくる可能性があり、実際それは起こっております。
 普及会に参加していない会社もありますので、実際にはこれ以上の数、つまり2002年の1月から12月まで6万ですけれども、これ以上の数が確実に流通しているだろうというふうに考えております。本格的輸入が始まった1992年が2,000群で、2002年が6万群ですから、ざっと30倍の伸びがあります。我々の商売というのはお客様から注文があった後に出荷します。1つのコロニーがお客様の手元に届くときに2万円から3万円しますので、年率約20%の伸びを10年間継続しているというのは、これはお客様のニーズ、生産者の方々のニーズに極めてこたえているものだというふうに考えております。
 最近では、新しくハウスをつくる方などは、マルハナバチの活動に影響しない素材、被覆材としてのビニール――ビニールハウスのビニールですけれども、一部の商品ではマルハナバチが使えないので、マルハナバチが活動しやすいようなものを選んで、新規のハウスを建設しております。
 続いて、これは2002年の1月から12月までの月別の使用数量です。ざっと見て一番おもしろいのは、年中使われているということです。特筆すべきは赤で記してあるのが北海道の流通市場ですけれども、真冬の北海道でも使われていることがわかります。まず生産者の方はどんな作物を、あるいはどんな品種を栽培するかというのを考えるときに、つくりやすさとか収量とか耐病性――病気にどれだけ耐えられるか、そういったことの経済性で選んでいます。その中で、最近ではマルハナバチを使用することを前提とした花粉の出やすい品種というのを選定するようになってきております。
 なぜマルハナバチの利用が拡大したのかというのを説明します。その前にマルハナバチが導入される前の栽培というのはどういうふうに行われていたのかというのを簡単に説明します。
 導入以前の着果、実をつけるのを着果と言うんですけれども、それはどうやってやっていたかといいますと、写真のように花を1つ1つつまんで、そこにトマトトーンと呼ばれるような薬剤などを噴霧して成熟させます。トマトの実を食べますから、なった実を商品としています。咲いている花の1つ1つにスプレーで吹きつけていきます。
 実際にこれだけ広いところをやるんですけれども、どれぐらいの数を処理するかというふうに考えますと、ざっと1週間で1万個、4日から5日で1万個のこういった処理をしなくてはいけない。栽培期間を3カ月〜4カ月見ますと10万個の花をこうやって1つ1つ手でやっていかなくてはいけない。ざっと10アールのハウスなんですけれども、これはマルハナバチを1群から2群で賄えるようで、しかも生産者がこうやってやっていくと必ず見落としがありますので、そういった花もマルハナバチで着果できる。作業者の精神的な負担というのもこれで軽減できる。
 ではそれをどれぐらいの経済効果があるか金額にしてみますと、ナス、トマト、いろいろあるのですけれども、10アール当たり2万円ぐらいだろうと。これは多くもできますし、少なくもできます。メーカー側が自己申告でやっている計算ですので、それなりに根拠に基づいていますけれども、でかくも小さくもなる。これを栽培面積で見てみると120億を超える省力化というのが期待されています。ただしこの120億の中には精神的な負担、つまりトマトを栽培している人らが、これだけの見渡すような限りのハウスの中で、花1つ1つを手でつまんで着果するというような、そういった負担というのは数値化できていません。
 次にマルハナバチによって受粉された生産物の話をします。マルハナバチは言うまでもありませんが、農業生産に関わる資材です。その資材としての有効性というのは、生産物であるトマトやナスが市場で評価されて初めて検討することができます。10月から3月に栽培されたトマトを冬春トマトと通常呼んでいますけれども、これらの卸値というのは平均1キロ当たり300円です。平成13年度の取引量が27万4,300トン、ざっと計算すると800億です。マルハナバチの普及率の7割と考えますと、約500億のトマトの生産に関連した資材であるというふうに考えております。また最近の消費者の動向としまして、安全・安心・安価な食べ物を強く求めることが挙げられます。その中で栽培方法を明示して消費者の信頼を得る、いわゆるトレーサビリティーの概念が一般化しつつあります。
 その中でマルハナバチの役割について説明します。普及会ではマルハナバチを使用してつくられた生産物が市場に有利に出荷されるように、写真の右上のようなマルハナバチの自然受粉というようなシールをつくって差別化をしております。マルハナバチの利用は減農薬・高品質・省力化をもたらすからです。そしてこれらをそれぞれ安全・安心・安価に読みかえて消費者のニーズにこたえているためです。
 まず減農薬についてお話しします。マルハナバチで受粉させるということは、つまりハウスの中でマルハナバチを飼育するということにほかなりません。ですから当然殺虫剤は使用できません。その他の農薬についても気をつけなければいけません。結果として農薬の散布回数が減ります。では、どうやって害虫を防ぐのか。天敵昆虫の利用です。つまりマルハナバチは減化学農薬栽培の先駆けとしての役割を担っております。
 次に高品質。右側がマルハナバチの受粉、左側が薬剤処理したトマトの断面図を示しています。ぱっと見て形が全然違います。マルハナバチによる受粉のトマトは、受粉という過程によって中のジェリー部分が充実しているため、丸くなります。薬剤処理の方は現実的には肥大させているだけですので、空洞部分ができて、四角く角張ったトマトになります。消費者はどっちを選ぶかといったら、大体丸い方を選びます。しかもマルハナバチによって受粉されたトマト、これは受粉すれば大体そうなんですけれども、トマトのビタミンC濃度も上がることが知られています。
 最後に省力化。これは先ほどお話ししたように人手による受粉作業がなくなるため、生産者は大規模な栽培が可能となります。その結果価格は安く押さえられます。したがってマルハナバチの使用は、生産者だけでなく、消費者のニーズにもこたえるものであると考えております。
 次にナスのお話をします。ナスについても着果に薬剤を使うのはトマトと同じです。しかしながらこれからお話しする2,4−Dの問題を皮切りに、使用範囲が拡大しつつあります。もともとナスの着果にはナスリーフと呼ばれる植物成長ホルモンが利用されていました。ところが昭和52年、登録が失効しまして、事実上使えなくなりました。その際に除草剤として販売されていた2,4−Dを用いて着果できることが判明し、奨励されました。1998年、高知県の生産者によってその問題が直訴され、発覚しました。そして高知県では県が主体となって代替技術の探索を行い、マルハナバチが抜てきされました。さまざまな試行錯誤の結果、技術が確立し、現在に至っております。
 新聞記事は2000年の9月に現地の普及員により高知新聞に掲載されたものです。現在はその後の生産物の検査体制も確立し、悪く言うと2,4−Dまみれのナスから自然受粉によるナスへと改善しつつあります。マルハナバチの利用技術の確立がなければ、これほどの短期間での改善は見られなかったと考えております。
 次に使用などが制限された場合、想像される事態を考えてみました。これについても幾らでも拡大解釈できますし、ここでお話しするのも、とりあえず恐怖をあおっているだけと言われればそうかもしれません。ただその中でも現実的に想像できるものを3点選んでみました。まず1点目は、トマト、ナスの着果がマルハナバチ導入前の状態に戻るのは、これは当然でしょう。結果的に人件費が上がって、生産物の品質も低下する。価格面で海外との競争力が衰える。現時点でも日本のマーケット、特に生鮮野菜のマーケットを海外の市場がねらっている中、これはかなり致命的だと考えております。
 次に、これは皆様からすれば、一部の営利主義の人間の末路かもしれませんけれども、マルハナバチのビジネスはなくなります。海外から輸入している商社などは当然あらかじめ先行投資がありますし、我々などのように国内で生産しているアピとキャッツでは、特に生産拠点を持っていますので、それがもう使われなくなって、少なくとも私は首になるでしょう。
 3つ目、これまでの農業の流れからいきますと、マルハナバチの代替技術としてミツバチが検討されると思います。日本にミツバチを輸出できる国は、家畜伝染病予防法によって決まっており、現時点ではニュージーランドの一部とオーストラリアだけです。ところがニュージーランドとオーストラリアから、私も実際こういう商売をやったことがあるんですけれども、価格が合わないため商売にはなりません。養蜂業界においても、これほど急速なマーケットの拡大というのは当然品不足が起こります。では、次に何を考えるか。恐らく中国などの国からミツバチが輸入されることが検討されるのではないでしょうか。セイヨウミツバチすらも侵入昆虫とみなされた場合、さらに問題が大きくなると想像できます。
 これまでにマルハナバチの問題について、我々マルハナバチ普及会がやってきたことというのを簡単に説明します。まず左側の、ネットを張ってハチを逃がさないようにしようということをいろいろな形で啓蒙してきました。特に長野県とか岐阜県の中山間部あたりですけれども、これは害虫が中に侵入するのを防ぎますので、その意味でも効果がある。つまり、減農薬とかそういった部分の効果もあるというふうに考えております。先ほどお話ししたような毎年の流通量の報告というのを環境研と一緒にやっております。普及会の会員会社のアリスタ・ライフサイエンスでは、在来種を海外委託製造販売しています。そして東海物産株式会社では当初よりシンジョウバチの逃亡防止のための装置をつけて、お客様のところに販売しております。
 我々よりも特筆すべきは、実際に使っている生産者の方々の取り組みです。ここで北海道の平取地区のトマト・キュウリ部会の取り組みを説明します。
 この地域は1995年及び昨年にセイヨウマルハナバチの自然巣が発見され、保全運動としてハウスから逃げ出したハチの捕獲が行われている地域です。事態を深刻に受けとめた同部会では、逃亡防止のために2004年までに全部のハウスの開口部にネットを張ることを義務づけました。また昨年より平取農協では生産者の協力のもとに使用後の巣箱を回収する旨通達し、実施されつつあります。当然のことながらこれには費用がかかります。全部自己負担です。これも受益者負担と言われればそのとおりです。
 最後に私のマルハナバチ問題に対する意見を述べます。この部分に関しましては、マルハナバチ普及会内部でも意見が割れております。ここに書いてあることは私の意見ということで理解していただきたいと思います。
 まず農業と生態系の問題について。セイヨウは生態系に対し「善か悪か」と言われれば、私は「悪」とすぐに答えます。セイヨウの使用を禁止すべきかと言われれば「否」と答えます。これは私は議論すべき問題ではないと思っております。
 次に侵入種、国外からの移入種と国内移入種、地域個体群の問題。いろいろなところで在来種を増殖すれば問題が解決するというふうな意見がありますけれども、私自身はそうは思っておりません。環境研の五箇博士らの研究結果で、日本のマルハナバチは遺伝組成の異なる地域資材に分化していると報告されています。在来種の増殖はそれはそれでリスキーです。私の今の考えとしては、とりあえず見分けられない侵入種よりも見分けられた方がいい、環境影響評価がしやすいというふうに考えております。
 3つ目、トマトの生産者の問題と生態系の調査員の問題です。生態系保全のために逃亡したセイヨウを捕獲するのは一理あります。ネットを展張していない生産者にも、その保全の立場からの意味では非はあるとは思います。とはいえ、ハウスの外で餌を集めて巣に戻る、つまりハウスの中に再び戻るはずのワーカーをこれみよがしに採取するというのはどういうものなのか。生産者はハチを1匹150円で買っています。これは社会的良識に照らし合わせれば解決できる問題だと思います。
 4つ目の問題は、これは省きます。私は一番重要なのは、つまり科学的なデータをもとに検討されなければいけないのは[2]の問題であると思っております。それ以外の問題は科学は関係ありません。ですから、現在環境研と共同で独自に調査して、自分らで方針を決定し、現実的に可能な分から改善していく予定であると考えております。
 以上です。

【岩槻委員長】 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きもう一人の方、東北大の横山さんに発言をお願いします。

【参考人(横山)】 東北大学の横山でございます。よろしくお願いいたします。
 私は花と昆虫の関係を研究している研究者として、今回こちらで発言させていただきます。花と昆虫の関係を研究している研究者の方々は皆さん、マルハナバチは特に特定の植物と非常に強い関係を持つ昆虫ですので、セイヨウマルハナバチの利用が始まったときから、このハチが逃げ出してひょっとしたら国内で悪さをするのではないかということを非常に強く懸念しておりました。実際野生化が1996年に確認された以降は、そのおそれが現実化したものとして我々は受けとめて、現在共同研究という形でセイヨウマルハナバチの野生化の問題に取り組んでおります。
 最初のスライドですけれども、野生植物の受粉において在来マルハナバチ類の役割というのは非常に重要です。マルハナバチ類は国内に15種類分布しておりますけれども、それぞれが種類ごとに舌の長さ、体の形のつくりが異なっていて、特定の花を利用するような形になっております。ハチと花の形が非常に正確に対応する場合が多いので、そういった対応関係がきちんと見られる場合にはきちんとした受粉が行われるということから、在来種の種子生産には在来のマルハナバチの効果が非常に重要であるというふうに考えられます。最近発刊されました環境省版のレッドデータリストを見ましても、国内の絶滅が危惧される植物の約200種ぐらいは、マルハナバチが受粉に関与しているだろうというふうに考えていいと思います。
 ここで問題になっておりますセイヨウマルハナバチですけれども、詳しいお話は米田さんの方から先ほどございましたので、私の方からは非常に簡単に紹介させていただきますけれど、実際に分布しております地域はヨーロッパ全域とそれからアフリカの北部です。現在ニュージーランドとタスマニアでは野生化が報告されています。これは北海道の平取町、先ほどご紹介がありましたけれども、撮影いたしました野生状態というか野外で花に訪花している状態のセイヨウマルハナバチです。
 セイヨウマルハナバチの生態的特徴ですけれども、非常に観念的な書き方なんですが生活力が強い。非常にさまざまな気候に適応し、また高い増殖能力を持つ。ここまでは人間が利用するのに非常に都合のいい性質なんですけれども、それから高い増殖力ということは非常に大きな巣をつくるということで、非常にたくさんのワーカーを出しますし、それから巣の防衛能力が非常に高い。実際に野外巣の観察をしていると、全くこれも観念的かもしれませんけれども、見ている者を威嚇するような行動をとることがありまして、非常に防衛能力が高く、またすぐ春先にマルハナバチは越冬女王が目覚めて巣をつくりますが、その巣の創始の時期に巣の乗っ取りを行うことがヨーロッパなどでは観察されています。
 それから、花の蜜を吸うために使われる器官、舌の部分、中舌と呼ばれる器官ですけれども、非常に短くて花頭の長い、蜜源の深い花を利用する際には口吻が届きませんので、そういった花ではあごが非常に強いですので、大あごを使って花に穴をあけて、盗蜜を働くことがあります。こういったことから蜜源までの距離が短い花では普通に吸蜜をし、花頭の長い花では盗蜜を行うということで、非常に幅広い範囲の植物を利用します。
 実際に世界中幅広い範囲で利用しておりますし、先ほど米田さんの方から非常に詳しくご説明がありましたけれども、施設栽培のトマトでは非常に充実したおいしいトマトができる。それから減農薬に非常に貢献しているということから、世界中で利用されていますが、同時に世界中でやはり帰化の問題が出てきています。
 これは日本での定着の経緯ですけれども、92年に本格的な導入が始まりまして、96年に北海道の門別町で1年目の自然巣が発見されました。98年に島根県で自然巣が発見されまして、昨年度3例目の自然巣が平取町で発見されました。現在25都道府県から野外でのセイヨウマルハナバチの報告がありますが、定着の可能性の非常に高いところというのは、このうちまだそれほど多くないですけれども、これは徐々に増えてくる可能性があると考えています。
 右側の図は北海道の門別町での増加の様子ですが、昨年度、ハチ泥棒と言われてもしょうがないかもしれませんけれども平取町と門別町で捕獲を行いまして、実際にどのぐらいの数が外に出ているのかというのを見てみたんですけれども、かなりの数が外に出ていることがわかりまして、実際に捕獲数も非常に急増しております。門別町の方は周辺にトマトハウスがありませんので、トマトハウス由来のものではなくて、恐らく野生化しているもの、そのものの数をきちんと反映しているものであろうというふうに考えています。
 これが捕獲数のグラフですけれども、緑色の系列の棒グラフが平取町での捕獲数、それから黄色ないし赤の系列の棒グラフが門別町での捕獲数のグラフです。緑色のグラフを見ていただきますと、8月にがくんと減っております。これは先ほどの米田さんのスライドにもありましたように、8月はトマトハウスでの使用量が減りますので、それを反映していることから、平取町での外に出ているハチはハウス由来のものが多いであろうと。それに対しまして門別町でのハチの野外での捕獲状況というのは8月にピークを迎えておりまして、これはかなり自然状態での帰化個体群の様子を反映しているだろうというふうに考えております。
 野生化に伴って実際どういった問題点が挙げられるのかということを、ここに4点まとめさせていただきました。まず、在来マルハナバチ類との競争を起こすのではないか。これは我々一番懸念しておりますけれども、こういったことがあるのではないか。それからマルハナバチに送粉を依存している植物がありますので、そういった植物が繁殖に対する悪影響をこうむることにならないかということ。それからセイヨウマルハナバチに伴いまして外来の寄生生物が導入されてしまう可能性があるのではないかということ。最後に在来マルハナバチ類と交雑を起こすのではないかというような懸念です。これらの問題点が実際にどのぐらい現実のものになっているのか、ということを今回はお話ししたいと思います。
 在来マルハナバチ類との競争ですけれども、これは3例目の自然巣の様子です。昨年北海道で発見されたものですけれども、これを見ますと野外でのネズミの古巣が利用されていることがわかりました。これはこれまでの2例の巣が人工物に依存してつくられた巣であるのに対して、初めて自然環境での野外巣が発見された事例です。こういったところは在来マルハナバチも利用しますので、営巣場所をめぐる競争が起こる可能性があります。
 これは花資源の利用パターンを見たものです。北海道で門別町と平取町で96年から2002年までの間に各マルハナバチが利用した花の種類数です。見ていただきますとセイヨウマルハナバチは非常に多くなっておりますが、これは捕獲努力等のこともありますので、若干データにバイアスがありますし、それから外来種と書いてありますけれども、栽培植物への訪花が非常に数多く報告されていますので、そういったことから報告される植物数が増えております。
 ここに挙げましたのは、全国でセイヨウマルハナバチの訪花が確認された在来植物です。非常に幅広い範囲の在来植物を利用することが、これまでの調査でわかっております。このうち緑色の字で書いたものは、実際に野生の個体群で観察されたもので、これだけの植物の野生個体群を蜜源として利用していることがわかってきました。こういったものはほかのマルハナバチも当然利用しますので、競争が予測されるというふうに考えていいと思います。
 これは昨年度発見しました自然巣に持ち帰ってこられた花粉がどういったものなのかということ、花粉の組成を調べたものですけれども、注目していただきたいのは一番下の棒グラフなんですが、サルナシという植物の花粉を非常に大量に利用していることがわかりました。これは訪花の観察からはわからなかったのですけれども、こういった花粉分析からも自生植物を中心に利用する時期があって、他のマルハナバチ、サルナシはオオマルハナバチも幅広く利用しますので、そういったものと競争を起こす可能性があるのではないかというふうに考えています。
 これは実際の利用していた植物が、どれぐらい相互の種類でオーバーラップしているのかということを示しております。注目していただきたいのは、こちらの縦ですけれども、これは各在来の種類のマルハナバチが利用していた植物のうち、セイヨウマルハナバチも利用していた植物の比率をあらわしています。これを見ていただきますと、アカマルハナバチは観察した植物数がちょっと少ないので除いていただきたいのですが、それ以外のものですと約40%〜70%は、在来の植物とセイヨウマルハナバチが同じ植物種を利用しているというふうなデータになっております。特にエゾオオマルハナバチとエゾコマルハナバチでオーバーラップの度合いが非常に高くなっています。
 在来のマルハナバチとセイヨウマルハナバチとの間で餌をとるために用いられる体の特徴がどれぐらいお互い似通っているのかということを示した図ですけれども、ブルーで囲ってあるこの部分がセイヨウマルハナバチの形態的特徴を表している範囲で、この中にエゾオオマルハナバチ、エゾコマルハナバチ、アカマルハナバチが含まれています。こういった種類とは形態的特徴が類似していることから、同じような餌植物を利用する可能性がある、それは要するにこれらの昆虫種と競合する可能性が高いということを示しているというふうに考えています。
 2番目のマルハナバチ媒花の繁殖への悪影響ですが、これは門別町、平取町でセイヨウマルハナバチの盗蜜が確認された植物種を挙げております。栽培植物が多いんですけれども、自生種ですとクサフジでの盗蜜が観察されました。またここに挙げましたのはクロミノウグイスカグラ―ハスカップと呼ばれて、北海道で栽培されている、もともと自生の植物、それからインゲンマメの花ですけれども、盗蜜痕をあけられている様子です。ヨーロッパなどでもソラマメの盗蜜が非常に幅広く行われていることが確認されていまして、そういったことから農作物への被害というのが今後懸念されるというふうに考えていいと思います。
 またこのベニバナインゲンの例ですが、つぼみのときからもう既に穴をあけられていまして、こういった盗蜜痕をあけられてしまいますと、花に対する正常な訪花が期待できなくなってしまうことから、著しい影響が出ております。こういった、もともとマルハナバチに花粉媒花を頼っていた植物―これは栽培植物ですから在来のものではないんですけれども―こういったものが今後セイヨウマルハナバチが増えてくることによって盗蜜の被害を受け、繁殖がうまくいかなくなるという可能性が非常に高くなるのではないかというふうに懸念しております。
 3番目の外来寄生生物の随伴移入の問題なんですが、これは五箇さんの研究ですけれども、マルハナバチポリプダニというマルハナバチの腹腔内に寄生するダニでして、これはヨーロッパと日本で異なる系統がもともといたことが分かっているんですが、ヨーロッパで育成されているクロマルハナバチ、これは在来のマルハナバチとして今利用されているものですけれども、これにヨーロッパ系統のダニがついているということがわかりました。
 これはこの後、国内でも野外からヨーロッパ型のダニが検出され、なおかつオランダのマルハナバチ生産工場で日本型のダニが蔓延しつつあることが知られていますので、これはダニの交換を図らずも起こしてしまった例として挙げることができると思います。またこの他マルハナバチには寄生する生物が100種以上―ウイルスなども含みますけれども―いるというふうに言われていますけれども、現行法ではこれらに対する検疫は一切行われていない状態で、フリーパスで国内に入ってきてしまっているという状態になっています。
 4番目の問題点ですけれども、在来マルハナバチ類との交雑の問題点ですが、これらに対しては同じ亜属に属するマルハナバチ、オオマルハナバチないしクロマルハナバチとは人工的に交尾を行うことが観察されておりまして、実験条件下で雑種形成が確認されています。ただ、これは野外ではまだ見つかっておりません。それから、最近五箇さんのグループが行われた研究では、異種間交尾によって発育できない受精卵が形成されることで在来種の繁殖を阻害してしまう可能性が高いというふうに考えられています。
 これは門別町・平取町での雄バチの捕獲数ですけれども、7月に非常に高いピークがあるんですけれども、オオマルハナバチが繁殖個体を出す9月にも最盛期で3分の1程度に減っていますけれども、非常にたくさんの雄バチが放出されています。こういったものが在来種と交尾を行うことによって繁殖攪乱を起こす可能性は十分にあるというふうに考えています。
 以上の点をまとめますと、1番の在来マルハナバチ類との競争に関しては可能性が極めて高いというふうに考えておりまして、野外での実証的なデータを得ることが急務であるというふうに考えています。2番目のマルハナバチ媒花の繁殖の影響ですが、これは盗蜜の影響はやはり無視できない、こういうふうに考えています。今後影響を受ける種類が増加する傾向にあるかもしれませんので、この点は監視を強める必要があります。また、農作物への影響は十分に考慮する必要があります。3番目の外来寄生生物の随伴導入に関してですけれども、これはマルハナバチポリプダニに関しては現実のものとなっております。また、他の寄生生物については現在実態調査とか外来種への影響評価が行われつつあります。これは急務であるというふうに考えます。4番目の在来マルハナバチ類との交雑・繁殖攪乱に関してですけれども、交雑に由来する受精卵が発育しないことで、在来種の繁殖を阻害する可能性が極めて高いというふうに考えられます。ですので、野外で異種間交尾がどれぐらい行われているのかということに関して実態把握をする必要があります。
 こういったことが現実に今起こりつつある中で、どういったことをしなければいけないのかということを最後に一言申し述べさせていただきたいと思います。このうち2点に関しては、もう既に米田さんのお話でも一部現実のものになっているようですけれども、まずコロニーの輸入から処分までを完全に追跡するという必要があると思います。この点に関しては徐々に現実のものになっているようですので、こういった点を徹底するということ。それから、完全に封じ込めて使用する。とにかく施設園芸ですので、ネットを張って完全に封じ込めて飼育することは可能であるというふうに考えていますので、これを義務付けるということ。それからあと、幾ら封じ込めといってもやはり逃げ出しは当然起こると思いますので、モニタリングを常時するということ。それから、野生化個体群が存在することはほぼ間違いありませんので、そういったものをとにかく駆除するということを、この受益者負担というのは考え方がいろいろあると思うのですが、生産者であったり業者であったり、あるいは消費者価格に反映させるというやり方もあると思いますけれども、とにかく受益者負担で実施するということが求められる対策だろうというふうに考えております。
 以上です。

【岩槻委員長】 どうもありがとうございました。お二人のプレゼンテーターの方、前へお願いできますか。
 それでは、お二人のレクチャーに対して、ご質問、コメントがありましたらどうぞお願いします。鷲谷委員、どうぞ。

【鷲谷委員】 米田さんに質問をしたいと思うのですけれども、問題が起こらないようにするためには、ネットなどを張って逃げ出さないようにするという対策がとれるはずなのですが、そういう取り組みも始まっているということですけれども、使用量に対して何%ぐらいでそういう環境に配慮した使用というのがなされているのでしょうか。数字がわかったら教えてください。

【参考人(米田)】 環境に対して何%という言い方はできませんけれども、例えば高知県では、ほぼ100%全部です。北海道は平取地区はそういった状況です。ただ旭川とか富良野のはまだ進捗しておりません。岐阜のナツ地区はもうほとんど9割方、ですから全部の面積から考えると10%もいっていないのではないでしょうか。大産地と呼ばれる九州の八代地区、あるいは夏秋の大産地の福島県などはほとんどゼロですので。

【岩槻委員長】 ほかはいかがでしょうか。石井委員。

【石井委員】 ネットを張って逃亡を防ぐという方法ですけれども、どのぐらい効果があるかということですけれども、100%逃がさない方法があるか。要するにハウスというのは人が入らなきゃいけないわけなので、網を張ったとしても網をあけて入るわけですよね。そういうことも含めてどのぐらいの効果が期待できるか。要するにこの方法は今回の議論の中で共存できるかということです。

【参考人(横山)】 先ほど福島県ではほとんどゼロだというお話を伺ったんですが、私は個人的に福島県の南郷村に行って調査をした感じでは、使用しているところにネットを伸展している農家がかなりありましたので、そういったところでは確かに北海道で見るような、本当に花を見れば必ずセイヨウが乗っかっているような状態ではありませんでしたが、ただやはり1頭、2頭出てしまうということは当然あり得ると思いますので、もちろん100%ということはないと思います。ですので、そのためにもモニタリングが私は必要だというふうに考えておりまして、ネット伸展とモニタリングの二重の網をかぶせることによって、環境へのリスクというのを低減するということを、まず早急な対策としてやらなければいけないのではないかというふうに考えています。特に繁殖個体を外に出さないということが、最も要求される対策であるというふうに考えていますが、その辺に関しましては私はかなり勝手に調査をしていますので、農家の方々との対話がもっと必要だと思うんですけれども、農家の方々にきちんとお話をして、理解していただくということは重要だというふうに考えています。

【参考人(米田)】 ネットを展張するのでどれぐらいの割合のハチの移出が防げるかというので、やはり横山さんがおっしゃるように100%ではないです。一番の理由は、温度が高くなり過ぎるときは全部開けるんです。作物の方が重要ですので。ですからその部分というのをどうやって今後ネットとか具体的な資材として検討していくかというのは重要だというふうに考えていますので、100%ではないというのがお答えです。

【石井委員】 モニタリングの方法をちょっと具体的に教えていただきたいのと、モニタリングというのはあくまでモニタリングなのであって、それで次の手を何か打たなきゃいけないと思うんですけれども、モニタリングで移出が観察された場合に、どうしたらいいかというのはお考えがありますでしょうか。

【参考人(横山)】 ハナバチの場合ですと、花を見て回るというのが一番有効なモニタリングになると思いますので、例えば生産地周辺の蜜源となるような植物の位置というのをある程度きちんと把握した上で、そこをモニタリングが当然100%ではないと思うんですけれども、例えば全く1匹漏らさずきちんと数字として出すということは多分無理だと思うのですが、そういったところをある方式に従って見て回ることによって、定量的にどれぐらい外に出ているかということを推定することは可能だと思います。ですから、それを門別や平取町で調査をしながら、モニタリングの方法などに関しても研究をしているところですけれども、そういった形で蜜源植物を見て回るということと、それから雄が一定の巣のところを行ったり来たり集団で飛行することがありますので、そういった場所に何らかの傾向があるとすれば、そういったものをきちんと把握した上で、雄の群飛みたいなものをとらえるということも可能だと思います。あとは野外に出て、もし巣をつくっていることがあるとすると、そういった営巣場所となり得るようなところをきちんと押さえるということが重要だと思うんですけれども、まだ巣に関しては、技術的に難しいところがあるので、そこら辺をモニタリングの中にどこまで入れられるのかというのは難しいと思うんですが、蜜源植物の徹底したマークということで、ある程度のモニタリングは可能ではないかというふうに考えています。

【岩槻委員長】 大井委員、どうぞ。

【大井委員】 交雑繁殖攪乱ということで、実験条件下では雑種の形成があったと。それからもう一つは異種間交尾によって発育できない受精卵が形成された。雑種ができるんだったらば、それは生殖能力がない雑種ができたということなんでしょうか。ご説明をお願いします。

【参考人(横山)】 これは文献の又読みだけですので知識が不十分ですみません。

【参考人(米田)】 異種間の精子が入った受精卵が発現しなかったというのは私らの実験で、雑種ができたというのは玉川大の大野正人教授の方がやられた実験です。ただ再現はされていないです。雑種ができたというものをDNAで調べてみれば、雑種かどうかというのはわかるはずですけれども、まだそれも現段階でできていない。我々メーカーの方は幾つか強引に雑種をつくって卵を産ませようとしたんですけれども、なかなか出てこない。ではどうしたかといったら、さっきお話しした受精卵を調べてみればいいじゃないかということで、受精卵を調べた。卵がその先どうなったかというのはわからないんですけれども、少なくともその時点では胚発生、つまりふ化はしていなかったというところまでは分かっています。

【岩槻委員長】 ほかに。どうぞ、石井委員。

【石井委員】 資料2−3で米田さんが書かれている[1]のところなんですけれど、ここのところでちょっと重要なポイントだと思うので具体的にお聞きしたいんですけれど、「マルハナバチにおいては、議論が噛み合っていません」、この後なんですけれど、「中立な科学的データに基づく、リスクとベネフィットの評価が必要でしょう」というくだりですけれど、これ、具体的にどういうことをおっしゃっているんでしょうか。

【参考人(米田)】 現時点でいろんなところで言われているのが、在来種を増殖して日本でそれを使えばいいじゃないかと。確かにもっともらしい意見ではあるんですけれども、私ももっともらしく思って、5年ほど前に農林水産省の方からお金をもらって、今のアピ株式会社というところで在来種の増殖をして売ったんです。ところが、売った直後に環境研の五箇さんの方からデータが来て、地域集団に分かれているよということがはっきりわかって、アピの方では止めました。
 普及会会員のアリスタ・ライフサイエンスの方では、当初玉川大学と一緒にクロマルの方の在来の増殖をやっていましたので、それを逆輸入するという形で北海道以外の日本全土、つまりこれはクロマルハナバチの分布域ですね、そこで使用しているというのがあります。
 例えば我々の方がこういうふうな実験系を組んで、お話ししている雑種の問題ですね。雑種が出ませんよということを100例ぐらいやるというのは簡単です。大体増殖していますから。ところが、ではそれで雑種ができないと言っていいのかどうかという問題もあると思いますので、その場合には確実に第三者機関というのを加味してから、そういった形のデータをとっていかなくてはいけない。逆もまた同じだと思うんです。反対だという人たちのデータの出し方というのも、やはり同じだと思うんです。
 もちろん定着する可能性はありますけれども、それがどの程度日本の自然に対して影響を及ぼして、それから基本的には日本の使っている生産者の方々の利益のための先ほどお話ししたような部分というのをどう調整していくかの部分で、どこで妥協できるかという点を探すことの方が重要で、善悪の議論をしても始まらないと思っています。その中で唯一科学という尺度が必要になってくるという、そういったことです。ですから在来種が影響はないとは言いませんけれども、そうでないというようなデータを出そうと思えば、意図的に出せてしまうことというのももちろんあります。

【岩槻委員長】 どうぞ、小林委員。

【小林委員】 「『逃がさないこと』を独自で啓蒙しています」と、これはわかります。片方では高温時には開放しますという矛盾した話が先ほどありました。それは、資材ができればまた何かいいネットができれば可能だという話、これは当然あります。それからこのマルハナバチの飛ぶ距離というのですか、これがどうなるのかということと、ほとんどのハチはまたハウスに戻ろうとする習性があるというふうに聞いているのですが、マルハナバチは勝手にどこかへ飛んでいってしまうのか、また女王蜂か何かを入れた箱に戻ろうとする習性を利用して、退治するという方法はないのかどうか。

【参考人(米田)】 最初のネットの件で放すというのは、我々もやはり商売ですので、お客様にハチを1群幾らでお売りして、生産物をとって、その生産物を売ったお金で我々はお金をいただくわけです。そうするとハチの逃亡防止だからといって生産物がだめになりそうな状況でネットを開放するなということは、やはりどうしても言えない。複数のメーカーがありますので、そこら辺との兼ね合いもあって、私たちも強制力はないです。できればお願いできないかという、そういった形でネットをはがしてしまうというのは実際に起こっております。
 もう一つの戻る習性があるというのは働きバチだけですので、先ほど横山さんがお話になっている新しい女王蜂と雄バチに関しては、行ってそのまま戻ることはないです。飛翔距離に関しては働きバチがざっと半径500メートルぐらいだとは言われています。このセイヨウオオマルハナバチに関しては、古い文献ですけれども12キロとかというデータがある。どうやってとったかわからないです。ただ、かなりな距離を移動するだろうということは想像できます。

【参考人(横山)】 飛ぶ距離に関しては我々も結構懸念しておりまして、実際野外巣でどこまで採餌に行っているのかということをきちんとデータとしてとる必要があると思うんですけれども、やはり1キロぐらいの範囲では十分採餌に出かけているようです。実際にはもっと遠くまで恐らく採餌に行っている個体もあるようですので、例えば自然公園などの近くでそういったハチを飼わなければいけないという状況になったときに、問題になるのではないかというふうに考えていますので、その点もきちんと議論とする必要があるというふうに考えます。

【岩槻委員長】 大体時間が来ているんですけれども、ほかにどうしても聞いておきたいということはございませんですか。
( な し )

【岩槻委員長】 それでは米田さん、横山さん、どうもありがとうございました。
 第2部をこれで終わりにさせていただきまして、第3部は「観賞用昆虫類(クワガタ等)について」ということで、最初はタイコ エレクトロニクス アンプ株式会社の小島さんにお願いいたします。

【参考人(小島)】 初めまして。タイコエレクトロニクス、環境コーディネータの小島と申します。今日こちらに来ている中で唯一、全く業界とも学会とも関係ない立場で来ているのではないかと思います。環境コーディネータという仕事は、私どもの会社で作っております電子部品関係、これに環境負荷物質を入れない、ないしは工場から環境負荷物質を出さないといったことを監視・啓蒙する立場で社内で働いております。
 ボランティアというか、趣味でやっておりますのが下にございます@niftyというコンピューターネットワークで、昆虫フォーラムのサブシスというものをやっております。こちらの方で主にクワガタムシ関係の会議室の運営というものをやらせていただいています。皆さんにお配りした中にはちょっと入っていないんですが、どんなことをやっていた人間なのかと、まるっきり市井の愛好家ですので、私が書いた論文、報告論文ないしは本をごらんになったことがない方は全くわからないと思うんですが、このようなところから世の中でいろいろと取りざたをしていただくようになっております。
 特に今回のクワガタのブーム、カブトムシのブームというきっかけになりましたのが、1986年に、むし社というところが『月刊むし』という昆虫専門誌を出しているのですが、ここでオオクワガタ特集号というのをやりました。これがどうやらブームのきっかけになったようです。それまでクワガタムシというのは林長閑先生という方がミヤマクワガタが4年1化であるということを発表されていたために、ほとんどの愛好家が繁殖に手を出していなかったのです。私はこれを半年ないしは1年ぐらいで親になることを確認して、そのことを発表したところ、非常に反響が大きくて、生き虫の業者からは何でおまえそんなことを発表するんだと、おれたちの商売をたたきつぶすのかということを言われたり、あるいは一部の愛好家からは熱狂的な支持をいただいたりして、いろいろとやってまいりました。
 1996年に、長年研究してきました、趣味ですがクワガタムシの飼育のことを本で出しまして、これが累計で2万部弱売れたそうです。むし社で一番たくさん売れた本だそうです。1998年ごろになって、オオクワガタが日本全国でレッドブックに載るような状況になってしまいました。野生個体が激減しているということで、何かしないと自分でやはりブームのきっかけをつくってしまいましたので。それで「オオクワガタ スズムシ化プロジェクト」という、ちょっとふざけた名前ですが、オオクワガタをだれでも簡単にスズムシのように飼えるようにしてしまえば、野生個体をわざわざ捕りに行くようなばかなやつはいなくなるのではないかということで始めたのですが、逆にその直後に農林水産省が輸入種の大量な許可を始めたために、これもかなり危ない状態になってきております。こんなようなことをやっている人間です。
 いわゆるクワガタのマニアではあるのですが、そういうようなブームのごく初期からそれに関わっている人間として、以下の問題点があるというふうに認識しています。
 まず1番の問題点。原産地、原産国の保護種が輸入許可になっているという実態があります。これは翻って言えば、もし日本の立場で見るとすれば、ヤンバルテナガコガネを輸入して飼っていいよということをどこかの国が言っているのと全く同じことです。それから同じように原産地で害虫となっている種ないしは潜在的に害虫になり得る生の植物を食べる、傷つける種類も輸入許可になっています。それから、もう一つの問題ですが、マルハナバチの問題でもありましたが、国内種と交雑し、妊性のある子孫を残すような種類も大量に輸入されております。
 それからクワガタの場合は幼虫時に腐植を食べます。腐った木、葉っぱ、土中の腐植物を食べますが、これを消化するために大量のバクテリアを幼虫時代、腹に蓄えています。このバクテリアの起源をいろいろと調べてみますと、どうやら成虫になった後もそれを保持していて、卵を産むときに卵殻に塗りつけるなどして、母子間でバクテリアを譲渡・感染しているということが分かってきました。ということは幼虫の輸入を許可していなくても、体内共生菌ないしは最悪の場合には何か毒性のある寄生虫をそのままつけて輸入しているということが言えます。
 もう一つの問題点は大量にクワガタ・カブトムシが輸入許可になっているために、業者が輸入許可されていない種類も何となく許されるような感覚を持ってしまって、まだ輸入が許可されていない種類も大量に店頭に並んでいる、ないしは雑誌の宣伝に載っているという状況になっております。原産国の保護種、ワシントン条約の保護種まで輸入許可するのは異常ではないか。例えばタイワンオオクワガタ、シェンクリングオオクワガタ、ヨーロッパミヤマクワガタ、ニジイロクワガタ、ギラファノコギリクワガタ、この辺というのは普通にお店で売っています。ところが原産国のほとんどでは保護種ないしは生体での輸出を禁止している種類であります。マルガタクワガタに至っては、ワシントン条約II類のはずですが、農水省は輸入許可を出しております。その種は先だってウェブの数えた方に伺いましたら、約500種に及ぶ。私も知らない種がたくさんあります。ちょっと異常な事態だと思います。
 それから、奈良の方がオーストラリアで逮捕されました。インスラスキンイロクワガタです。これも3月28日に追加許可されています。このときはこの新聞記事、現地の自然保護法だけではなく、世界遺産保護規定の違反まで追起訴されるという事態になっております。状況としましては国内で許可しているために、日本に持ち込めば何とかなるだろうという甘い考えを持って海外に行く方が多いために、再三の逮捕者を海外で出しております。このほとんどが現地の法規制の初適応であります。日本人がその法律を初めて破っているという状況です。
 台湾の友達から数年前にもらったメールです。台湾で日本人の有名なクワガタムシのコレクターが捕まった。この人は何をやっていたかというと、台湾で保護されているシェンクリングオオクワガタ、タイワンオオクワガタというものを大量に捕獲して日本に持ち帰ろうとしていた。たまたま不幸なことに、この数年前に8センチのオオクワガタが1,000万円で売れたという誤ったやらせの報道がありました。それが台湾でも普及していました。ですからこの捕まった人はその1,000万円級のオオクワガタを台湾から大量に持ち出そうとしたのではないかという、ある意味ではいわれのない疑いまで含めて受けて、実際には現地法に違反したわけですから逮捕はやむなしですね。これが台湾日報に報じた日本人の逮捕者の例であります。ところが、その方が持ち帰ろうとしたシェンクリングオオクワガタ、日本国内で繁殖されたものは3,000円で売っています。異常に野生個体、海外捕獲個体というものに高値がつくために、そういったような海外での違反を重ねる方が後を絶たないということです。
 それからもう一つの問題。原産地で害虫となっている種、はっきり現地で、例えばアボガドの大害虫、クビホソクワガタというものが輸入許可になっています。このアボガドの大害虫が日本の果樹に害を与えないというのは一体だれが言い出したことなのか。農林水産省が本当にチェックしたのかということを知りたいと思います。それからパプアキンイロクワガタというクワガタは、1980年代ぐらいに子供用の本にベニバナボロギクというものの茎を切って汁を吸うという生態が発表されております。これは残念ながら文献が出る前に普通の子供用の図鑑にそういうものが載ってしまったために、だれも文献に書いていない。従って農水省の方は文献をチェックしたけれども、このパプアキンが生の植物を切るというのを誰も知らないというような話がありました。
 私がパプアキンイロクワガタを使ってやった実験ですが、花屋さんでいろんな花を買ってきて無作為に花束をつくって、そこにパプアキンをとまらせました。5分ごとに花を切ります。あらゆる花を切ります。ポピー、パンジー、デイジー、チューリップ、何でも切ります。ともかく自分が気に入るような汁が出るまで切り続けて、このように花を全部切り落としてしまって、飛んでいってしまいました。もちろんこのときは外に飛ばないように注意しました。ということは、このパプアキンイロクワガタが害虫化する可能性は非常に高い。この種が住めるような気候のところであれば、当然日本でも野生化して大害虫になる可能性がある。こちらにいらっしゃる五箇先生に伺いましたら、モルジブではこれが侵入大害虫になって、どうやって駆除したらいいかということを聞かれたそうです。現実に問題があるのは熱帯種なんですが、新成虫は非常に高い耐寒性を持っています。私が実際に確認した例でも、日本の前の冬、そのまま新成虫で越冬してしまいまして、今活動を始めています。これが温暖な花卉園芸地域、例えば奄美大島のようなお正月に花を供給するような地域に入って野生化したら一体どうなるのか。だれが責任をとるのでしょうか。
 ここに4種類のオオクワガタが並んでいます。クワガタムシに詳しい方は余りいらっしゃらないと思うんですが、この中には日本のクワガタは1匹しか入っていません。実はこうずらっと並んでいる中で日本のオオクワガタはこれだけで、タイワンオオクワガタ、ホペイオオクワガタ、グランディスオオクワガタで、非常によく似ているんです。この3種は日本のオオクワガタと近縁であります。ただし地域的にはかなりかけ離れた種類です。当然交雑します。妊性のある子孫を残します。それから海外のオオヒラタは日本産のヒラタクワガタと交雑が可能であります。こうした交雑個体、近縁種を国内種の「美形個体」と言って売る業者がいます。それから海外種を日本産の大型個体と偽って売っている業者もあります。もっと極端な場合は、全く何の断りもなしに、海外のオオクワガタ、ヒラタクワガタを単にオオクワガタ、ヒラタクワガタと表示して売っている業者もいます。要するに何でもありなんですね。めちゃくちゃなことをやっています。結果、非表示の輸入種を知らずに買ってしまって、雑種をつくってしまって、生まれた子供がおかしいので調べてくれということで、国立環境研究所に持ち込まれた例もあるそうです。私が確認した例ではヒラタクワガタ、オオクワガタではかなりこれが多く出ています。
 それから寄生虫や体内共生菌に関する予備知識が全くなしに、腐植食性昆虫、体内に大量のバクテリアを持っている化学工場みたいな連中を輸入しているわけです。ヤフーの海外ニュースなどにも取り上げられましたけれども、実は短期間に大型のクワガタムシを殺してしまうダニというものが近年発見されました。私のところでも発見されまして、五箇先生のところで見てもらったのですが、国内でも海外でも未記載種のようです。どこから来たのかわかりません。もしかしたら国内のどこか変わったところから来て、それがたまたま病原性を発生しているだけかもしれませんし、海外のクワガタと一緒についてきたものかもしれません。
 これの特徴は、大体3カ月ぐらいで取りついたクワガタムシのふ節から、汁を吸うのか何か毒性のあるものを出すのかして、このようにふ節を落としてしまいます。歩けなくなるのです。歩けなくなってくると全身に広がっていって、3カ月ぐらいで7センチぐらいのオオクワガタ、ヒラタクワガタを殺してしまいます。これは外から見てはっきり寄生されているということがわかるのですが、先ほど申しましたように体内共生菌の方は目では見えません。1,000倍の顕微鏡で見て初めてわかるようなバクテリアが体内に大量に含まれています。このものを果たして誰かチェックしたのかというと、誰もしていないです。彼らの体内はバクテリアの巣です。我々は熱帯雨林の底から一体何を輸入しているかわかっているのか。誰かが調べたのか。誰も調べていません。エボラ出血熱もエイズも前世紀になって発見された新しい病気ですけれども、そういったものに感染して中間宿主になったクワガタムシ、カブトムシというものは今まで知られていません。知られていないからといって本当にリスクがないのかということは、誰も断言できないと思います。この辺はぜひ調べていただくべき事柄ではないかと思います。
 ここからマニアックな話に入ります。クワガタムシ類の利用の状況、及び愛好者の飼育実態というものです。まず、生き虫の購入者は繁殖が主目的であるということです。繁殖して次世代でかっこいいクワガタムシ、大きなクワガタムシをかえしたい。観賞ばかりではないんです。ともかく増やすことをまず前提に考えます。それから血統協会がないのですが、なぜか血統主義がまかり通っております。それから地域指定のブランド主義のマニアがいます。例えば兵庫県の阿古谷というところのオオクワガタは姿形がいい、だからそこのものをおれは買うんだというようなことをやります。買ってみたものをミトコンドリアDNAで見てみますと、実は佐賀産と全く一緒だったりします。要するに産地詐称がまかり通っているということです。
 それからかっこいい交雑個体ができると、それをだまして売ってしまうというような悪徳な業者もいます。さっきも言いましたけれども、外国産で日本産によく似ているオオクワガタ、ヒラタクワガタを単に大型な国産種として売る例が非常に多くなっています。私も実は、委員をやっていますので、余り偉そうに言えないんですけれども、毎年駆り出される「オオクワガタ美形コンテスト」というものまであります。昨年からは中国産のホペイに関してのコンテストも行われるようになりましたが、実はこの種は中国では輸出禁止になっております。こういったことがいろいろあります。
 一番の問題、1番から毎年数十個体の子孫が誕生します。これに対して昆虫採集をした経験の少ないマニアは、自分で虫を殺して始末ができないんです。結果どうなるかというと、姿形がよい個体を求めていろいろなものを買い集めて自分でやるのですが、しかしクワガタムシの体型というものはほとんど後天要因です。生まれた後の餌の条件、温度の条件によって著しく変わります。結果として産地詐称や雑種、特定個体を偽る詐欺行為が起こるということと、もう一つはお金持ちと貧乏人とあるいは利殖を考えた人と趣味だけで走っている人ということで大きな差が生じます。
 当然、不人気な個体とか地域の個体は安値で取引されて、最悪の場合、最後は遺棄対象になる。ただし、だれもがクワガタムシを飼えるような環境になっていますから、これを逆にうまく利用すれば希少種、こういったものを一般家庭で保護に利用することもできるかもしれません。この辺ですね。美形個体と称するものをつくるためにみんな一生懸命頑張っているんです。ここで問題なのは、できが悪いやつは捨てられてしまうのです。捨てられてしまった結果、地域多様性も何もなくなってしまいます。最悪の場合には外国産でも捨てられてしまいます。これをどうやって防止するかというのがこれからの課題だと思います。ここに2匹のオオクワガタがいます。どちらかが雑種、どちらかはブランドの個体です。見比べていただいてより幅が広い左の方が高そうに見えますが、これはタイワンオオクワガタと日本のオオクワガタの雑種です。右側の方がほぼ純血であろうと思われるオオクワガタ。
 ではこの輸入を一律に規制してしまったらどうなるのか。まず経済効果のマイナス面が考えられます。正規輸入個体数というのは、大体1匹1番当たり100ドルぐらいかかって高価なものは輸入されております。これを禁止してしまうと全部がアンダーグラウンドに潜ってしまう可能性がある。一時期、暴力団の資金源になっている、ないしはそういった部分で悪い影響があるというようなことも言われていました。昨年の例では北朝鮮産のヒラタクワガタ、オオクワガタというものが数千匹単位で、ある業者が引き取らなかったために宙に浮いて、マーケットじゅう回っていた時期がありました。その後それがどうなったかわかりません。捨てられてしまったとすれば、日本国内で野生化している可能性があります。
 みんな増やしているわけですね。輸入した個体が増えている。×10は、これはかなり控え目な数字です。大体30匹ぐらいの子孫がとれます。ということは、100匹輸入したら翌年にはそれが3,000匹になってしまう可能性もある。そういったものを果たして管理し切れるのか。仮に正規輸入の個体を年間100万匹として、1匹100ドルで試算すると、年間120億円ぐらい輸入しているものが減ることになります。実際には正規以外の輸入がもっとあると思います。販売価格は輸入価格の約2〜3倍、死んでしまってももう一度仕入れて売って利益を出すためには、3倍以上で売らなければなりませんので、約3倍で売っています。ということは360億円以上の売り上げ減になる。輸入されたクワガタムシは繁殖されます。繁殖するためには当然飼育資材が必要になります。その飼育資材は1番につき10匹分必要ですから、この10倍ぐらいの市場がこの部分に存在することになります。このマイナス効果は日本だけではありません。今輸出している国の方にももろに響きます。
 海外とのトラブル事例、これは読んでいただければわかるのですけれども、生き虫昆虫、生体の輸出を禁止しているネパールから、なぜか私のところにメールがいきなり来ました。ある日本の業者に協力するなと、いろいろな理由が書いてありました。この国内の輸入業者がコントラクトプライス、協定プライスをひっくり返そうとして値引きをしろと言ったんです。それで怒って、ここの業者とはおまえら絶対つき合うなというような、いわゆる密告状みたいなものを回したのです。ネパールは生き虫の輸出をしようとしたら逮捕・拘禁されます。ですから、彼らも必死なんです。ばれてしまえばえらいことになる。ということで、こんなようなトラブルもありました。トラブルの元凶は恐らく保護種や規制がある地域から輸入を許可している日本の立場が一番大きいと思います。これは暴挙であろうと思います。
 それから、所得格差というものが当然原産地と日本の間には存在します。その結果彼らは日本人に売れば高く売れるだろう。一時期、グランディスオオクワガタというクワガタが大人気になって、当時ラオスの引き取り価格で1匹100ドルと言われていました。100ドルはラオスの現地の年間収入と相当するそうです。そのためには大木切り倒してでも捕ってやろうという気になります。森林破壊が起こりました。ということで、法規制のある国の輸出業者にとって、生き虫の密輸というのは検挙されて拘束されて、最悪刑務所に入らなければいけないようなことになっています。それをあえてさせるようなことを日本の輸入許可は増長しているということです。もし海外のマニアがヤンバルテナガコガネというのを密輸出したら、日本では大問題になりますよね。天然記念物で日本人でも捕ることができません。それと同じことを日本人の業者ないしはその業者と取引をしている海外の人たちはやっていることになります。このギャップは、放置すれば国際問題になるかもしれません。
 まず私どもが訴えたいのは、原産国の保護種は原則輸入を禁止したいということです。それから500種もの輸入許可種というのはちょっと異常だと思います。その500種全部に対して安全リスクの確認をしたのか。多分、していません。ということは不必要に輸入種を増やすようなことはやめるべきだと思います。輸入種が持つリスク、例えば遺伝子攪乱であるとか、ニッチェをとってしまうとか、害虫化する、寄生生物を持ち込むとかというような危険性です。このあたりはとりあえずやらなければいけないのは業者・愛好家・研究家などに啓蒙するべきだと思います。その上で哺乳動物でも話がありましたが、生き虫の輸入業者を許可制にして、密輸・密売には厳罰をもって臨むということが必要だと思います。その上で生き虫のビジネスを今後も許しておくのであれば、適切な管理下に置く必要があるでしょう。ここで問題なのは、単に法律で禁止しても実効があるとは思えないということです。
 いい点、玉石混交ですが、クワガタの研究者というのが非常に増えました。そのおかげでクワガタムシ・カブトムシの飼育技術は日本は世界一になっていると思います。例えばクワガタと同じ手法で飼えるヤンバルテナガコガネ、これは民間のそういうのが得意なところに出せば、恐らくあっという間に繁殖して増やすことができるようになると思います。こういったものはぜひ利用するべきだと思います。今後も輸入許可を続けるのであれば、国内の飼育技術を海外にも移転し、例えば海外の原産国の野生個体や自然を圧迫せずに、輸入が続けられるような体制をとるべきだと思います。このままですと日本の自然破壊をそのまま海外にも輸出しているのと同じことになりかねないと思います。やや飼育している愛好家側としては偏った考えかもしれないのですが、必ずしもいいことばかりと我々は考えていないということをお伝えして、終わりにしたいと思います。

【岩槻委員長】 どうもありがとうございました。
 では、引き続き環境研の五箇さんにお願いいたします。

【参考人(五箇)】 国立環境研究所の五箇です。ただいま小島さんの方からお話がありました輸入クワガタの生態リスクについて、うちの研究所でとっている科学的データについてお話ししたいと思います。
 現在日本では大量の外国産クワガタムシが輸入されていまして、恐らく世界中で最もたくさんの種類のクワガタムシを見ることができる国となっております。ここには代表的な種類しか書いてありませんけれども、ほぼ世界中クワガタが分布する地域から、色もとりどり、形も様々なクワガタムシが現在日本に集中的に輸入されています。
 輸入の経緯については、一体どうしてこのように輸入が始まったかと。その背景には、いろいろ言われていますけれども、政治的な駆け引きの材料に使われたという話まであります。何にしても1999年11月まで何とか植物防疫法でストップさせていたものが突如解除されまして、48種類、外国産のクワガタムシ、カブトムシの輸入が始まりまして、その後決壊した堤防のごとく、次から次へと輸入許可種がふえまして、2003年3月現在でクワガタムシ505種類、カブトムシ55種類、合わせて560種類の輸入が認められております。
 ちなみにクワガタムシ図鑑という本で記載されております世界のクワガタムシは1,500種類とされておりますから、実に3分の1ものクワガタムシが現在日本で輸入可能となっているということになります。輸入数ですが、申請されているだけで年間60万匹と言われています。密輸も含めれば恐らく年間100万匹は超えるであろうと。そのほとんどが標本目的ではなくて、それを元手にまた繁殖させようと考えているわけですから、実に100万匹を元手にまたさらにそれを増やしているわけですから、今日本でうごめく外国産のクワガタムシの数というのははかり知れないものになります。
 こうした輸入クワガタムシ、カブトムシも含めて、こういったものが実際に生態系影響を及ぼすかということについて、長年にわたって昆虫学者ですら外国産のクワガタムシ、カブトムシ、こんな巨大な熱帯産のものは日本のフィールドで成長できるはずがないだろうと、楽観視していたのですが、それはクワガタムシの生態に関する知識がほとんどゼロだったゆえのことで、実際に原産国へ行ってみると、クワガタムシのほとんどは熱帯、亜熱帯、赤道直下のものでも極めて高い標高域に生息するものがほとんどで、むしろ暑さに弱いぐらいで、寒さに強いものが非常に多い。日本の軽井沢ぐらいの気候だったら、平気で越冬することが可能であるということが、わかっています。ということは十分野生化が可能であるということです。
 こうしたクワガタムシの大量の商品化によって、どのような生態学的な問題が起こるかということで、まず整理してみますと、もともと外国産が入る以前からクワガタムシというのはバブルの時代の背景も受けて、非常に高値でその希少性が値段を呼びまして、国内産のオオクワガタを中心にクワガタムシの飼育ブームというのがありまして、それが乱獲をもたらしたり、投資の対象になったりという時代があったんですが、その時代から既に地域ブランド志向がオオクワガタを中心に乱獲を招いてしまって、数を減らす。更にそれを採集するために雑木林を徹底的に破壊するといった環境破壊の問題も引き起こしていた。大量に増殖したりしたものをあちこちに放したりするということによって、地域固有性が喪失するおそれがあるという背景はもともとあった上に、そこに追い打ちをかけるように、ここ数年で外来種が大量に移入され、まず外来種が逃げ出して在来種と交尾をして、遺伝的に汚染していくのではないかという問題が考えられる。それから、外来種が外来の寄生生物を持ち込んでくるかもしれないということで、それでなくても環境破壊も重なって疲弊し切った日本のクワガタムシの個体群に外国産が押し寄せて、もう文字どおり絶滅の危機に立たせようとしているというのが現状であります。国立研究所では、特に外来種が実際に在来種の遺伝子を汚染するのかとか、寄生生物を持ち込んでいるんだろうかということについて、実証データをとるということで検査をしています。
 まず、遺伝的な侵食の問題について、日本のクワガタはもう既に絶滅の危機にあるので、このまま滅んでしまう前にまず日本のクワガタそのものがどのような地域固有性を持っているのかということをデータベースとして保存しておく必要があるということで、うちの研究所では特に市場の規模が大きいヒラタクワガタとオオクワガタについてDNAでデータベースをつくるということで、各地域からサンプルを採集しまして、現在ミトコンドリアと核のDNAについて塩基配列調査を行っています。
 ここではヒラタクワガタのお話をしますけれども、クワガタをご存じの方だったら名前は知っていると思います。最も日本でメジャーなクワガタムシの1つですが、一言でヒラタクワガタといいましても、日本には実は地域ごとにこれだけ形態の異なる地域固有の系統がいます。大体12系統あると言われているのですが、これだけ多様なヒラタクワガタが存在するというのは、やはり島国ならではなんです。こういったヒラタクワガタそのものが、実際に遺伝的にどの程度分化しているかということをデータベースとして保存しようと。
 非常にたくさんの個体のDNAを調べまして、系統樹という形で類縁関係を各地域個体ごとに、このようにDNAのデータベースから描いてみますと、要するに地域ごとにそれぞれ固有の遺伝子組成を持つ集団に分化しているということが、形からもある程度類推されたものが遺伝子レベルでも証明されたわけです。このように島ごとに独特の遺伝子組成を持つ集団が形成されていて、外群としてスマトラオオヒラタクワガタやフィリピンのヒラタクワガタやタイのヒラタクワガタというのを位置させているんですが、要するに同じヒラタでも外国のものと日本のものは違うし、日本の中でも地域によって遺伝子が違うというのがわかったわけです。
 ところが、この遺伝子の調査をしている段階で、なぜか神奈川県の方からスマトラオオヒラタクワガタと同じDNAを持つ個体が見つかったり、静岡県の方からタイのヒラタクワガタのDNAを持つ個体が見つかったりということで、こういった調査をしている段階で既に外国産のDNAを持つ個体が日本国内から見つかり出した。この約1年半の調査の間に、DNA解析によって発見された国外及び国内の侵入種のDNAというのはこれだけあります。つまり長崎県の方からはタイにいるはずのヒラタクワガタのDNAがとれたり、あるいは、同じく神奈川県の方でスマトラオオヒラタクワガタのDNAがとれたりと、外国のDNAが国内でも見つかる。同時になぜか石垣島にいるはずのサキシマヒラタのDNAが兵庫県や静岡県の方で見つかったりということで、外国産のみならず国内のいろんな系統も商品として出回っているせいで、外国産のDNAだけではなくて、国内のいろんな系統のDNAも混じり始めようとしているということがわかりました。
 外国産のヒラタクワガタは、どのようなものが輸入されているかといいますと、主な原産国は中国や東南アジアになります。体の相対比からいいましても、日本のヒラタクワガタに対してこれだけ大きな体をしたヒラタクワガタが、大きいということもあって人気があって、どんどん輸入されています。基本的には分類学的にも日本のヒラタクワガタと近しい、あるいは遠い類縁関係を持つ系統がたくさんいると言われているのですが、ヒラタクワガタのみならず、クワガタ全般について基本的には生態はおろか分類も実はまだきちんと行われていなくて、特にヒラタクワガタについては分布域が広い上に、さまざまな形態変異があって、実はまだきちんと記載されていない集団というのもたくさんあるわけです。名前も生態もわからない状態で大量に輸入されて、DNAレベルで日本の集団を汚染し始めようとしているというのが現状です。
 外国のヒラタクワガタについても、先ほどの日本のものと同じように入ってくるものがどのような遺伝子組成を持っているのかということを把握するためにも、このようにDNAのデータベースをつくって系統関係を見ています。侵入種問題とは別の話になりますけれども、外国のものも含めて見ると、非常にいろんな地域にいろいろな遺伝子組成を持つ集団が分布しているということがわかります。結局こういったデータが全然できていないにもかかわらず、いろんな島からいろいろなヒラタクワガタがじゃんじゃん捕られて、日本にどんどん入れられている。そういった意味からすれば、こういう東南アジアの固有のヒラタクワガタについても乱獲の問題もあるということもわかるわけです。
 この系統関係から分かることは、ヒラタクワガタについては少なくとも北に分布する小型の個体と南に分布する大型の個体にまず大きく遺伝的分化していて、その系統関係から日本のヒラタクワガタというのが、実際に遺伝学的にどのような位置にあるかというと、アジアのどこかで発生したヒラタクワガタが一方は北に、一方は南に分化していく過程で、日本のヒラタクワガタというのは、その進化の果てに誕生したものであると類推されています。北は朝鮮半島経由、南は琉球列島がまだつながっているときに入ってきて、それがここでぶつかり合って、あるいは島ごとに分化していって、多様な遺伝子組成を持つ集団に分化していったということが考えられる。これから言えることは、日本のヒラタクワガタというのは、本当にものすごい長い時間をかけた生物進化のプロセスを経て、ようやくでき上がった、まさに何百万年という時間をかけてでき上がった固有の進化的遺産とも言うべきもので、そういったものがたった数年というタイムスパンで人間の手によってクワガタが移入されるということで、壊されようとしているという現実があるということです。
 実際にそういった種間交雑というのが起こるかどうか、というのを室内レベルでも調べています。この写真はスマトラオオヒラタクワガタ、体長が9センチから10センチある大きな雄が、日本の3センチぐらいしかないヒラタクワガタの雌に交尾を迫って襲っているという写真です。こんなに体格差があっても雄はちゃんと雌を認識して襲うんです。組み合わせを逆にしてみました。この大きな5センチぐらいあるスマトラオオヒラタクワガタ、東南アジアの大きなヒラタクワガタの雌に対して、5センチぐらいしかない日本産のヒラタクワガタの雄をかけ合わせました。これだけ体格差があるとさすがにオスがメスをはさんで死なせてしまうこともないので、安心して飼ってみました。すると、雑種の卵が生まれました。38個卵が生まれて、38個とも全部ふ化しまして、すくすく成長しまして、このようにたった5センチの雄から体長8センチを超える巨大な雄が誕生しました。これから何が言えるかというと、普通種間交尾、あるいは亜種間交尾をすると妊性がなくてひょろひょろと弱い雑種が生まれるのが普通ですが、この昆虫に関しては雑種強勢とも言うべき非常に強くてたくましい雑種が生まれるということです。またあごの形態も両方の親の形質を兼ね備えていて、非常に性格も荒い、強い雑種が生まれたということです。
 外国産同士でもこういうことが起こり得る。違う島に住んでいるスマトラオオヒラタクワガタとパラワンオオヒラタクワガタという巨大なヒラタクワガタ同士をかけ合わせます。大あごの形質に注目してほしいのですが、内歯の位置がすごく上にあるものと下にあるもの同士かけ合わせて出てくる雑種がこのようにちょうど中間の位置にして、なおかつ体の大きさが10ミリを超える非常に巨大でたくましく強い雑種が生まれるということです。
 これから何が言えるかというと、このようにあまり空を飛ぶことができない大型の甲虫類については、生殖隔離という、つまり本来なら種同士を分けるためにお互いに交尾をできなくするというメカニズムが進化するところを、彼らはもともと別々に島ごとに、あるいは山ごとに分化して進化してしまったがために、生殖隔離を進化させる必要がなかったわけです。だから放っておけば出会うことがないので、そのまま分化を果たしてそれぞれの種に独立して生きているのを、人間が簡単にそれを出会わせると、生殖隔離が進化していないので、簡単に交雑して雑種をつくってしまう。そういった意味で、生物学的にも遺伝的攪乱が起こりやすい種類であるということが科学的に示されたわけです。
 次に、寄生生物の持ち込みのおそれ、これについても実際に持ち込まれているかどうかということを検査しています。これはカブトムシの雌に寄生しているイトダニの一種と考えられる正体不明のダニですが、このように足や腹に大量に寄生して、これはダニの拡大図ですが、非常に大型のダニで体長が2ミリぐらいあるんですけれども、これに寄生されるとクワガタムシやカブトムシが約1カ月から3カ月のうちにこのように寄生された足の部分が腐り落ちて、衰弱して死亡するという症例が発見されています。このようにダニが寄生することで甲虫が死亡するという症例というのは、これまで科学的に調べられた例がほとんどない、というよりも、虫に寄生するダニとか寄生生物の研究なんていうのは、研究が進んでいない。
 実際に輸入品を1個1個チェックしてみますと、これはタイワンオオクワガタの幼虫に寄生しているダニです。この縞々についている粒々、これ全部ダニです。幼虫にびっしり取りついています。この幼虫も結局死亡しました。拡大するとこんなふうにダニがびっしり付いています。その他にも輸入品からこのように、もうわけのわからないダニが山のようにざくざく見つかります。要するに、目に見えるダニだけ見ても、輸入品から次から次へといろんなダニが、明らかに国内のものとは違うダニも含めてたくさん見つかるわけです。
 このことは何を意味しているかというと、目に見えないマイクロオーガニズムを含めると、いろいろな生き物が実はもうクワガタの体にくっついて日本に入ってきているということを現実に表している。ジャングルから生きた虫をはぎ取るということは、そのジャングルの中の生態系を一部切り取って持ってくるようなもので、そういうことを何も考えずに大量に無作為に無秩序に入れているという、この国自体のリスク管理の意識の低さみたいなものを堂々とあらわしていると思います。
 次に生物学的な問題以外に、ソーシャルの問題として密輸の問題があります。これはアンタエスオオクワガタといって、日本でも非常に人気の高い商品の種類ですけれども、これはいろいろな産地に生息しているんですが、日本での販売価格を示しています。地域によって値段がばらばらで、インドネシアのは非常に安い。50ドルで5,000〜6,000円ですけれども、なぜかインドやブータンやネパールのは1匹5,000ドル、約60万円もするんです。何でこんなに高いかといったら、ネパール、ブータン、インドというのは虫1匹、草1本取っちゃいけない国であって、こういうものが本来売られるはずがないのに売られるということで、希少性ゆえに日本ではすごい高値で売られる。結局日本人が密輸するために日本からマニアや業者がどんどん渡っていって、ガイド等の目を盗んで、ポケットにクワガタを潜ませて成田に持って帰る。ところが、日本ではそれを取り締まる法律がないので、税関で取り締まられることもなく、国内で流通している。
 行政機関の対応はどうなっているかということについて知っている範囲で言えば、この問題について農水省はどうしてきたかと。植物防疫法という法律でとにかく規制していたのが、なぜか99年11月に輸入の規制が解除されてしまった。そこまで、植物防疫法そのものは日本の農林作物を加害する植物の輸入を禁止する法律なので、クワガタムシ全部をこれで取り締ることはどだい最初から不可能だったのです。その意味で、ここまで頑張っていただけましなのですが、輸入した後、なぜ輸入規制を緩和したのかということに対して、クワガタムシと甲虫類については、植物防疫法の管轄外だから取り締まりようがないというのが見解であると。
 ただ、そう言っておきながら、今ももう議論になっていますけれども、ミドリトリバネアゲハとかいう虫ですが、こういったチョウチョも含めて、昆虫類の輸入について、議論を進めているという現状が一方ではある。環境省ですが、具体的な行動はこれまで一切ございませんでした。これ自体情けないと思います。これはやはり環境の問題なので、環境省が一番に手を挙げなければいけない。この会議ですけれども、2003年2月からこの小委員会が設置されたということで、個人的には今度こそ具体的なアクションを期待しております。
 こういった問題に対して学者の方は、どうしていったかということですが、学会の対応としてこういう問題に対しては特に関心を深めるべき日本応用動物昆虫学会については、はっきり言って外国産のクワガタムシに対しては無知・無関心で、これが結局問題の拡大を見逃してきてしまった。
 一方、昆虫学会ですが、こちらの方は日本鞘翅学会や日本甲虫学会、あと日本昆虫分類学会と共同で、別途甲虫輸入規制法の早期法令化に関する要望書を提出するといった形で、関心は高いです。ただ学会そのものが大きくないので、インパクトが弱いかなというところがある。
 トータルで見て学術レベルで見ても、リスク評価のための科学的実証データをとる努力がされていないまま、楽観論、危機論、すりかえ論が横行するだけで、結局クワガタの問題にちゃんと言及しているのは、一部の研究者でむしろ愛好家や一般の方のほうが問題意識が高かったりする。こんな500億円を超えるような市場の問題を、行政レベルではノータッチである。
 それから外国はどういう反応をしているか。得ている情報としては、これは新聞にも出ましたけれども、去年12月オーストラリアの世界遺産の島からクワガタムシなど昆虫1,000匹を持ち出そうとした日本人が2名逮捕されたということは、日本でも大々的に報道されて、かなり問題になりました。その後、今年2月にAP通信によって、我々のクワガタムシ寄生ダニのトピックも、アメリカの方で報道されて、かなりこの問題は世界的にクローズアップされつつあります。ただ、結局日本以外の国ではクワガタムシに対する愛着がほとんどないので、むしろ外貨獲得のいい材料とすら考えていて、ネパール政府からはクワガタムシの大量増殖法に関する問い合わせが、環境研の方にメールでも来ています。北朝鮮のクワガタが大量に日本にも輸入されているということで、外貨獲得の材料に使っているという現実があるわけです。
 去年タイのバンコクでありました移入種対策の会議で、ネパール環境省の人に会いましてこの話をしたら大喜びしまして、うちのクワガタがそんなに高く売れるのなら、おれもとってきて売ってやるという、冗談ですけれども、結局日本におけるクワガタムシ販売の実状を知って怒るかなと思ったら、怒らないんですね。クワガタムシに対する愛着はほとんどないので、それが結構問題をより複雑にしているわけです。諸外国にとってはいいお金になるという、外貨獲得材料として捉えられてしまっているというところで、こうした国々がクワガタに対して愛着があれば、もうちょっと規制に乗り出したりもしてくれるだろうと考えられるんですが、それができていない。
 これは移入種とは関係ないんですが、クワガタの問題といってしまえばそれまでですが、クワガタですらお金で買っているという日本の現状というのを外から見ればこんな感じだろうと、野生生物だけではなくて、農作物も熱帯林も北洋材も水産資源、石油も、ありとあらゆるものを結局外国からお金で買っている、要するに物質文明大国日本という、とても生物多様性条約加盟国とは思えない醜態をさらけ出している先進国としての日本の姿を象徴するのが、このクワガタの問題であろうと言えるということです。
 こちらからは以上です。

【岩槻委員長】 どうもありがとうございました。
 お二人とも熱のこもったレクチャーをいただきましたので時間がほとんどなくなってしまったんですけれども、多少時間を延長してディスカッションさせていただきたいと思います。どなたからでもご質問、コメントをお願いいたします。どうぞ、石井委員。

【石井委員】 私、日本昆虫学会の会長で、応用動物昆虫学会の評議員だったりして、なかなか立場がつらいのですけれども、五箇さんにシンポジウムでお話をしていただいて、かなり意識が高まってきたところなんですけれども、引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 ちょっとこの先のお話をお聞きしたいんですけれども、例えばオオクワガタとかヒラタクワガタの飛翔能力とか移動能力とか、その辺はどのぐらいあるのかということです。それからダニについてお話にありましたけれども、全くその生態についてわかっていないのかどうか、2点お聞きしたいと思います。

【参考人(小島)】 オオクワガタとかヒラタクワガタを実際に定性的にどのぐらい飛翔するかテストした実験というのはほとんどないです。個人的にやったのではミヤマクワガタの雌と雄を使って、上下をテグスでつないで、空中に置いておいて何分間羽ばたけるかというのをやってみました。時速5〜6キロで飛ぶと考えて、数百メーターないしは数キロの移動可能な能力があるというふうに考えています。飛翔のためには、およそ気温にして20度とか18度ぐらい以上が必要であって、クワガタムシの場合には事前にたくさん歩かせて、筋肉を温めておかないと飛び立てないというようなところがあります。従って一個体における移動能力はそれほど高くない。それから定置性が非常に強いという傾向がある昆虫だと思います。

【石井委員】 寿命は長いのでしょう。

【参考人(小島)】 オオクワガタで考えますと、活動を始めてから雄で最低3年、長いものは5年ぐらい生きます。したがって1匹の外国産の非常に強いオオクワガタがどこかにニッチェを占めてしまって、そこで繰り返し交雑を繰り返すとその子孫はその一生の上に100匹ぐらいに達する可能性があるということです。それから先ほどのパプワキンイロクワガタ、あれは25度以上あれば準備運動なしにハエのように飛び立ちます。

【参考人(五箇)】 ダニの生態のことですが、ダニの種数というのは全然わかっていなくて、恐らく昆虫種に匹敵するであろうという種数がいるにもかかわらず、学者の数は昆虫学者の10分の1ぐらいしかいないわけで、その数から見ても研究例が余りにも少ない。特にダニの世界では公衆衛生の面からいって人の血を吸うとか、動物の血を吸うというダニとか、あとは農業害虫のダニの研究に集中していて、昆虫に寄生するダニの世界というのは未知の部分が非常に多いですね。そういった意味では種名すらわからないものも多数ある。実際それがどのような生活をしてどこに分布していて、どのような菌を媒介するかということもほとんどわかっていない。ダニにおいてすらもこれなので、昆虫に寄生している菌、あるいは昆虫に便乗しているバクテリアウイルスの問題というのは、ほとんどもう、まるっきりわかっていないというのが実情であるということです。

【岩槻委員長】 ほかにいかがでしょうか。加藤委員、どうぞ。

【加藤委員】 遺伝的侵食については、もう実際にそういうことがありそうだということでデータがあるわけですけれども、例えば生息域からの駆逐ですとか、それ以外の生態学的な影響というのは、もう見られているのですか。どんな状況でしょうか。

【参考人(小島)】 異種間で競合があるかという実験を実際にしたことがあるのですが、例えば日本産の中でも同種的に存在するミヤマクワガタ、ノコギリクワガタ、ヒラタクワガタ、オオクワガタといったものを一種のリングをつくって闘わせるわけです。そうすると温度がどんな温度帯になっても最も強いのがノコギリクワガタである。環境が十分残っている伊豆半島などですと、ミヤマクワガタ、ノコギリクワガタ、ヒラタクワガタというのは同種的に見られるのですが、ノコギリクワガタが多いところではヒラタクワガタとの比率はおよそ10対1から20対1ぐらい。要するにヒラタクワガタの繁殖が抑えられている実態があります。
 ところが、ここ数年東京都が導入した半透明ごみ袋でカラスが非常に増えました。一番強いノコギリクワガタは昼間も活動するために、カラスの捕食圧にさらされているようです。私の実際に調べた範囲では、ノコギリクワガタが都内では激減していまして、かわりにヒラタクワガタが非常に増えてきています。東大の本郷などでも、昔はいなかった5〜6センチあるようなヒラタクワガタが採集できるような状況になっています。ということは、国内種同士でも相互に競合し合っているという事実がありますので、ここにさらに強力な海外種が入った場合には、当然ニッチェの争奪があり得ると私は考えています。喧嘩させてみると、海外種の方が強いです、はっきり言いまして。体も大きい、体力もあるということですね。

【岩槻委員長】 そのほか。どうぞ、大井委員。

【大井委員】 広東の方ではやっておりますSARSですか、そういうウイルスの起源というのがまだ全然わかっていないわけですけれど、エイズでもそうですし、それ以外のエボラ出血熱だとか、そういうミクロオーガニズムが昆虫だとかあるいは哺乳動物、そういうものとどういう関係を持っているのか、本当にブラックスポットでわからないのですが、こういうものについて何かそういうことをもう少し戦略的に見ていこうという、そういう動きがもしあったら教えていただきたいと思います。

【参考人(五箇)】 国立環境研究所の方では、次の研究課題として侵入種がもたらす寄生生物の持ち込みの問題に焦点を当て、今昆虫類を一つ挙げればこういったクワガタなりマルハナバチが持ってくるそういうダニの問題なり以外にも、恐らくさまざまな輸入昆虫が腹の中に、昆虫そのものに害を及ぼさなくても、そのまま自動的に持ち込まれているというものについて、まず分類学的にどういったものが入ってきているのかということの把握と、やはり疫学的な調査を行うということは検討しています。ただ余りにもやはり未知の部分が多過ぎるので、これをやるとなると相当なエネルギーと資金が必要になってくるだろうと考えていますが、そういった研究の着手については既に準備中です。

【山岸委員】 今日ご発表いただいたようなものの、ここに書いたものもあるんですが、恐らくオリジナルというのはこの2001年のmolecular ecologyあたりだと思っていいわけですか。

【参考人(五箇)】 寄生生物の問題については、molecular ecologyでマルハナバチのマルハナバチポリプダニのことを紹介しています。現在クワガタについては準備中という状況です。オリジナルはこれからになります。

【山岸委員】 そうすると、過激なご発言があったけれども、はっきりしてから時間がたっていないのではないですか。

【参考人(五箇)】 確かにタイムスパン、特にクワガタの問題についてはここ3年の話なので、余りにもタイムスパンは短いのですが、ただ同時に問題のクローズアップの仕方ははっきり言ってマスコミも含めて、もうマルハナバチの比でない。他のアライグマ、マングースも含め、クローズアップの仕方は異常なまでに既にされていて、なおかつ、愛好家の歴史そのものも長いわけですから、知られていなかったというよりは、単に気がついていなかった時間が長かっただけで、現実問題は実は伏線も含めて長かったと考えるべきではないかと思います。

【山岸委員】 やるべきことは余りにもはっきりしていて、これからどんどん動くんじゃないかと思うのですが、ともかくおもしろかったです。

【岩槻委員長】 他、よろしいでしょうか。熱のこもったレクチャーでしたから、多分間違いなく、お話しいただいたことは少なくとも部分的には生かされると思いますけれども、どうも、いいお話をありがとうございました。
 それでは、これから休憩に入らせていただきますが、ちょっと延長して5分までぐらいにさせてもらいましょうか。3時5分から再開させていただきます。
( 休 憩 )

【岩槻委員長】 時間になりましたので、再開させていただきます。
 今度は第4部ですが、第4部は「観賞用爬虫類(カメ等)について」ということで、まず、いのかしら公園動物病院の石橋さんに最初のレクチャーをお願いいたします。よろしくお願いします。

【参考人(石橋)】 初めまして。三鷹市で動物病院を開業しております石橋と申します。
 名前から大変紛らわしいのですけれども、「いのかしら公園動物病院」といいますのは、私が開業しております個人の犬猫病院でございまして、東京都恩賜井の頭自然文化園の動物園の獣医ではございません。あらかじめお断りいたします。立場的にはあなたのペットのホームドクターという、そういう存在の者でございます。
 本日、自然環境研究センターの千石正一先生のご指名で、移入爬虫類問題に関する発言をさせていただきます。昆虫の方ではブームのきっかけをつくられた小島さんご本人がきちっと出席されて責任を取っていらっしゃるのに対し、ブームのきっかけをつくられた本人のツルの一声で、きょうは子分が発言しに参りました。
 まず、爬虫類の移入問題に対する考えですが、これは最後の意見の項目に総括して発表の末尾に加えさせていただきます。また爬虫類愛好家と言われる方々や、爬虫類飼育産業の現状については、情報源として我が国を代表する爬虫両生類情報誌というのがございまして、その製作者である宇田川氏と冨水氏にご協力いただきました。さらに輸入の規制や移入種対策の具体案についても、両氏の意見を一部取り入れてあります。私はどちらかというとこういうものを飼育することにはネガティブな立場なのですけれども、やはり好きな人の意見もある程度反映してあげないといけないものですから、そういった方々の代弁も若干行っていきたいと思っております。
 クリーパー誌並びにビバリウムガイド誌の発行部数から類推すると、いわゆる爬虫類の愛好家と言われる人たちは全国に2万5,000人〜5万人ぐらいいると考えられます。ただし重要なのは、宇田川氏から提供された総理府調べによる爬虫類の飼育世帯数で、我が国の総世帯数の0.45%―単純計算すると約20万世帯が何らかの爬虫類を飼育しているということになるわけです。爬虫類情報誌を読んで、爬虫類の飼育に熱心に取り組むいわゆる愛好家以外に、15万人もの普通の人が何も考えずに爬虫類を飼育しているというこの実態がわかると思います。
 また、両雑誌の広告スポンサーのリストから類推すると、爬虫類ショップと銘打った専門店が全国に約300店舗以上存在し、それ以外にも多くの場所でペット爬虫類が流通しています。また、爬虫類マーケットでは生体のみならず、特殊な飼育器具や専用の餌などの周辺機材が非常に重要で、それらのさまざまな製品が多くのメーカーから供給されている現状があります。ペットとして流通している爬虫類は過去に雑誌に紹介されただけでも1,000種類を軽く超えると思われます。非合法な手段ですら勘定に入れてしまうと、購入ニーズがある限り、地球上に生息するいかなる種類でも、日本人のペットになり得るといっても過言ではありません。私の抱えている患者の中には、ゾウガメを飼っている若い女性がいるんですけれども、人間の生理的寿命をはるかに超える生物がペットとして売られているという異常な状態が実際にあります。飼うなと言っても、ゾウガメを殺すわけにもいかないですし、全国の動物園というのは放棄・遺棄爬虫類の受け皿としてはもうほとんど飽和状態にあるという状態で、何と指導したらよいものやらという状況です。
 爬虫類愛好家にもいろいろなタイプとレベルがあり、だからどの爬虫類が好まれるということは一概に述べられませんが、流通上ニーズの高い順で言えば、リクガメを初めとするカメ類、家畜化された種類もあるヤモリ類などが挙げられます。大蛇のイメージがあるボアやパイソンなども好まれているようです。飼育施設についてですけれども、これは都内の爬虫類専門ショップの店内の様子ですが、爬虫類の種類ごとに適切な環境が再現できるように高度に計算された飼育設備が並んでいます。これらは爬虫類専用の製品として市販されているものであります。
 これは私の病院の待合室にいるカメですけれども、公園の池で駆除の対象になったアカミミガメを、外科手術の研究用に払い下げてもらった個体です。水槽は上下120センチ水槽で、外ブロ化装置と内ブロ化装置、並びに人工太陽灯の一種なんですけれども、メタル波ライドランプというものを装備しています。このセットで全部で恐らく20万円以上かかっていると思います。縁日で買った600円のミドリガメが、秋になると死にかけの状態で次々病院に持ち込まれますが、ミドリガメを室内で健康に終生真剣に飼育するには、かなりの設備投資が必要であるということを親子に教育するためのディスプレイとしてこれを活用しています。いわゆる愛好家と呼ばれる人というのは、情報を集めて、頭とお金を使って飼育設備を工夫している人たちのことであります。
 これに対して、全国15万世帯の爬虫類を購入した一般の人は、ペットショップでまず最初に勧められるプラケース、この女の子が持っているこのケースです。先ほどの討論にもありましたけれども、ペットショップで正しい飼い方が説明されているかどうかということは、私の経験からいけば、まずないですよね。どんな生き物、ハムスターであろうがブンチョウであろうが、まずとりあえずこれを一緒に買っていってという話で、後の説明がなされていない場合が多いです。このプラケースですべての生物が飼育可能であるというふうにこの親子は思っているわけです。
 我が国の爬虫類飼育市場は、概ね輸入に依存しています。海外から野生の爬虫類やあるいは海外で養殖された飼育繁殖の爬虫類が日々大量に成田や関空に到着します。これ以外にも国内で繁殖された爬虫類、あるいは国内の野生爬虫類が販売されていますけれども、それは割と少ない割合となっています。また流通の仲立ちとして、さまざまな業種の人がいるのですけれども、例えばブローカーというような人は、割と表面に出てこない。例えば動物園で生まれた余剰個体を裏からサーカスに流してしまうとかいう極端な例を挙げてしまうのもなんですが、要するに表面に出てこない、多分恐らく取扱責任者何とかというのもありましたけれども、そういう資格とか店舗とか、そういったものを持っていないで、トラック1つで右から左にいろんなペットを流している人たちとか、もうありとあらゆる人たちが絡んでいるのが状況です。
 そして、昨今、インターネットの流通によって、個人輸入、それから小売業者の直輸入、中卸業者の直輸入、ブローカーの直輸入、それから密輸、いろいろなものが入り組み過ぎていて、個人と業者の区別がつかないという状況で、法律的に網をかけるとすると、正規に登録された大手の輸入業者とか、そういう人たちに話が行くと思うのですけれども、それ以外の流通が余りにも多過ぎて、どこに規制の輪をかけていいのかというのは、非常に難しい問題ではないかなと思います。実際有効な何か取り締まりというものを考えたときには、恐らくこの末端の飼育者、要するに飼育する人たちというところに、何か有効な法律の規制なり指導なりをかけるのが一番話が早いのではないかなと私は感じています。
 アメリカの爬虫類見本市というのがあるんですけれども、その様子です。この爬虫類見本市というのは夏にフロリダ州で行われるのですけれども、数万人の観客を動員して売買される爬虫類のその総額が、3日間の開催期間で数億円と言われています。いずれも飼育下で繁殖された家畜とも言える状態の爬虫類で、野生個体の売買は良しとされていない風潮があります。アメリカには大規模な商業ブリーダーがいまして、これ全部繁殖施設です。この桶の中に10匹ぐらいヤモリが入っているんですけれども、これは一部です。もう見渡す限り工場ですが、そういうようなところで増やした、中には1匹1,200ドルのヤモリがこういうところで3日間で数億円売買されているという、割とビッグマーケットになっています。この1,200ドルのヤモリは大体日本だと22万〜23万ぐらいで売れているという、そういう状況です。
 海外の流れに倣って、我が国でも飼育繁殖した個体を持ち寄って売買して、野生からの収奪を減らそうという試みが普及しつつあります。要するに彼らは比較的意識の高い愛好家ということで、恐らく苦労して増やしたものを野に放つようなことはしないタイプの、またその危険性等を十分啓蒙されているタイプの愛好家ということが言えるのではないでしょうか。また最近では、国産の野生種を採集して飼育することが1つのジャンルとして人気が出てきています。従来ペットとして顧みることのなかった在来の爬虫類に、いきなり金銭的な価値が生じてしまったために、ペット用に売買する目的での捕獲圧というものが新しく生まれる、あるいは増えてしまって、特に沖縄などに生息する貴重な野生生物を圧迫する結果を生んでいるようです。このスライドは日本各地に広く生息するジムグリというごく普通の種類なんですけれども、飼育が難しいために近年になって飼育にチャレンジしよう、それが楽しいという人がふえて、野生個体に2万円という値段がついています。飼育化繁殖個体、先ほどのアメリカの見本市では、2,000ドルの価格がついていました。
 スライドは環境省の移入種リスト、並びに右側が麻布大学の学生が卒業研究で確認したノラガメのリストです。環境省のリストは移入種の定義を満たした認定種でありますけれども、追加したリストはたまたま放棄されて公園で生存した種類という程度のもので、移入種というには少々問題があるかもしれませんが、ここではノラガメを移入種予備軍として一応追加しておきます。さて、本日の本題である移入種ですが、偶発的ノラガメを追加してもせいぜい30種類程度しか確認されておらず、このうちペットトレードに関連のある、あるいはまた、あったと思われる種類は、赤い文字で示した18種だけです。ペットとして1,000種以上輸入されている中で、わずか18種の爬虫類がようやく定着しているにすぎず、定着して問題が起きているのはいいところ2〜3種という状況をご理解いただきたいと思います。
 さらにこれらの大半が、子供がぱっと見てペット屋で欲しがるような安いカメであって、いわゆる愛好家レベルの飼育種というのはほとんどいないということです。移入対策という名目で爬虫類の輸入規制を敷く場合、こういったような実態が鍵になるかと思われます。実は移入種問題において問題視されるべきは、爬虫類を購入するんだけれども愛好家というほどには余り物を考えていないごく普通の人が爬虫類を安易に購入して、これをまた安易に放棄するという、そういうことが爬虫類に関して言うならば、移入種問題の中核をなしているということだと思います。
 愛好家と呼ばれる人たちは、情報誌の中で繰り返し、隣にいらっしゃる安川先生も積極的に活動されているんですけれども、一般の愛好誌等に移入種問題であるとか、野生生物の保全の問題に関する記事を一生懸命書いて、啓蒙されているわけなんです。そういったものを読んでいる人たちではない人たちが、捨てているというところに1つ問題があるのではないかということです。移入種という問題に対する対策を検討される場合、子供が衝動買いする安くて大量に販売されている種類に、的を絞って検討を行うのも1つの方法かなと思われます。
 爬虫類飼育の現状をお伝えしたところで本題に戻ります。爬虫類の輸入が規制された場合に考えられる問題ですが、まず熱心な愛好家というのは必ず残りますので、ニーズそのものは消えることはないわけです。従って単純に密輸の割合がふえるということにつながると思います。さらに一部の種類では輸入規制によって価格が高騰して、従来爬虫類とは全く関係のなかった人の中にも、密輸を行うに十分な動機が生じるというだけの金銭的メリットが生じてしまうわけです。現にマダガスカルから輸入されていたヒラオオリクガメというカメが、CITESI類になってから価格がもう約10倍ぐらいにはね上がっているという。それを要するに1回の旅行で元が取れるわけですね。向こうの監獄の怖さを知らないというか、チャレンジしに行く人が新しく生まれてしまう、そういうことが規制によって生まれてしまうということがあり得るということです。
 また、これによって非合法組織の収入源が新たに誕生してしまう可能性というのもあります。つまり、外国産昆虫の事例の逆を行くということになるわけです。また対象は車でも宝石でも何でもいいんですけれども、他人が入手できないものが欲しいという動機を持った人種の所有欲というのが刺激されまして、いわゆる愛好家とは違う層に―それは非常にお金持ちな人たちなのですけれども―新たな特殊な市場が発生するといった可能性も考えられます。また、先ほどお伝えしましたように、爬虫類飼育にまつわるマーケットは、小さな産業ジャンルとして成熟しつつあるわけです。十分に納得いく規制がかからないと、反発は避けられないのではないかと考えられます。
 最後に規制の対象とする種類の選択が、爬虫類の場合難しいということも重要です。北海道と沖縄では移入種になり得る爬虫類が全く異なると思われますし、移入種の被害を受けるであろう在来の爬虫類の種類が圧倒的に多いのは沖縄地方だと考えます。また海外の移入事例にある種類を中心に規制をかけていくべきで、これから恐らく輸入するであろうという無理な仮定のもとに規制種を決定していくのは、問題があるのではという意見がビバリウムガイド誌の冨水氏から出ています。
 さらにクワガタなどで深刻化している遺伝子汚染の可能性のある種類、例えば中国産のクサガメ類や、セマルハコガメなどの規制、その辺のところがもう明らかに交雑というのは確認されていますから、規制の対象となってよいかと思われます。さらにどのような爬虫類が在来種と交雑してしまうかというのは飼育下での実験が必要なわけですけれども、クワガタと違いまして結果が出るまでにそれなりに長い時間がかかりますので、爬虫類研究者の方々に長期間予算を投入していただいて、データを導き出していく必要があるかと思います。
 爬虫類が移入種とならないための予防と解決についてですけれども、まず飼育放棄という現象が起こりにくい環境作りというのが大切だと思います。例えば甲長が規定の長さ以下の小さいカメを販売してはいけない。カメを売っちゃいけないのではなくて、このサイズ以下の小さいカメを売ってはいけないといった条例が、実際海外ではあるようですけれども、そういったものが施行されると、捨てられるカメが減るのではないかと思われます。例えばミシシッピアカミミガメ―先ほどのミドリガメで例えますと、大体甲長が15センチぐらいになって色も緑でなくなって、かわいくもなくおもちゃみたいでもなくて、きれいでも安くもない状態、そこ以下の個体を売ってはいけないという条例を施行すれば、アカミミガメの安易な衝動買いと、それから新しく池に投げ込まれるカメの数が減るのではないかというふうに考えます。
 また、かわいそうだから逃がしてあげるという、思想面の改革というのは非常に重要だと思います。移入種動物というのは駆除して殺処分する対象だということを、子供のころからしっかり教育するということが重要ではないでしょうか。したがって学校教育の現場での協力というのが不可欠で、小中学生の教育カリキュラムの中へ組み込む努力とか、あるいは小中学校の教職員の勉強会などにも、予算を組んでいく必要があるのではないかと思います。また、保健所その他に移入種を捕獲して処分するという、ずっと置いておく部署を設けて、積極的に移入動物を捕殺して、人工的な淘汰圧を加えるという、そういうシステムが必要だと思います。ちなみに水生カメの捕獲というのは比較的簡単ですし、またこのミドリガメの子供はほとんどカラスに食べられて、自前で国内で増えているというのは余りないと思うんです。ですから、どんどん捕まえていく。一方で捨てさせないということをしておけば、幾ら寿命の長い動物でも環境の影響のないレベルまでは減らすことができるのではないかというふうに考えます。
 ちなみに駆除、殺処分という行為に対して行政は自信を持ってこれを実行するべきであると考えます。予算を組んで捕獲したにもかかわらず、愛護団体の反対に遭ってそのまま逃がすといったような、そういったようなことはぜひ避けていただきたいと思います。もし放すのでしたら、手弁当で行きますので、私は猫の避妊手術全部しますから、避妊手術済みでやんばるの山に放すようにしたいと考えております。そのためのボランティアは獣医の中にもいっぱいいると思います。
 ちなみに現在、中国在来のカメが食用で消費されて、中国の野生のカメが絶滅の危機に瀕しているということが問題視されていますが、最近では食用にカミツキガメなどが中国に輸出されているという話も耳にします。日本で捕獲したノラガメを食品として中国に輸出すると、採算はとれませんが中国のカメの保護にもつながりますので、ただ殺すよりかは何か有益になるかなとも思います。それから、危険動物の飼育条例がカミツキガメに適応されたことを受けて、カミツキガメの輸入は従来の年間3万頭からほとんどゼロにまで減っています。危険なカメを―この3万頭という話は輸入業者から聞いた話ですけれども、―沢山いたわけですけれども、それがちゃんと自主規制されて業者の自主規制で現在ゼロにまで輸入は減っているわけです。
 それによって危険なカメを飼い始める人口は確かに減少しました。しかしこの条例が危険なカメの輸入は減ったのですけれども、かえってノラガメを増やした可能性というのもありまして、要するに既に十分な個体が国内に輸入されて、育てられていいあんばいに大きくなっているものが、大体子供が飼っていることが多いんですけれども、いきなり高額な飼育設備の設置義務を課したために、お母さんに捨てていらっしゃいと言われてどんどん川に投げ込んじゃったというような、そういう経緯がありまして、恐らくこの条例と同時に天敵のいないぐらいまででっかくなったカミツキガメというのが、かなり一斉に川に放される事態になったんだというふうに考えています。
 また、すべてのペットの飼育というもの、飼育者のレベルでライセンス制にするという案を、私が鳥類保護連盟の機関紙に連載していたときに提案したことがあるんですけれども、受験とかテキスト代とか、更新手続とか、制度そのものに採算性というか収入が見込めるので、いいアイデアではないかなと思いますので、添付資料としてつけさせていただきました。子供向けの文章ではあるんですけれども、ご一読いただければ幸いです。
 さて、冒頭にありましたショップの店員が販売時に飼育方法を説明することを義務化するといった条例は、恐らく効果がないと思われます。まず説明が本当に実施されているか否かを査察する方法が全くないことや、説明される内容の信憑性、正しいことを説明するかどうかということの信憑性にばらつきが出るかと、そういうふうに思われるからです。実際、情報誌や書籍を通じてさまざまな専門家が爬虫類の飼育方法の啓蒙を行っていますけれども、私の病院に来る飼い主さんの様子を見る限りでは、やはりショップの店員さんというのは正しくそれを伝えていないように感じます。現在、愛玩動物飼養管理士という資格があります。法律的な問題も含めて大変すばらしい教育を行っており、高度な受験体制も整備されておりますので、これをペットにまつわる法律の方に移行していくというのも一つの案かと思います。例えばペットショップに従事する者は、この資格の特に難しい1級の所持を法律で義務付けて、写真付きのライセンスプレートを衣類のどこか、胸とかに張って、その上で仕事をするとかということをすれば、一目瞭然でその店は法を守った店かどうかというのがわかるとか、そういうようなことをすれば、またその違反者あるいは違反店舗には罰則を設けるといったようなことをやれば、有効ではないかと思います。
 さらに、飼育動物の登録制度ですけれども、これも非常に難しい問題です。現在動物の体内に埋め込むマイクロチップが市販されておりますので、法律で義務化することは可能です。販売店でチップを挿入し、販売時に購入者のデータとチップのIDがしかるべきところに届けられれば、ある日突然庭に出現した巨大なワニガメとか、そういったものが一体誰が逃がしたのかということが即座にわかるとか、そういうようなかなり大がかりなことなんですけれども、そのくらいしないと結局なくならないということですよね。そういうことも可能です。単純な登録証制度というのは、これをやっても恐らく野鳥の輸入証明書に等しいような、ほとんど意味のない法律になってしまって、さらに偽造ですとか、死んだカメに張っつけたりとか、新しい犯罪行為の温床にすらなりかねないのではないかと思います。
 最後に移入動物全般に対する意見ですけれども、これは個人的な意見として解釈させていただきます。
 まず、既に産業として成立しているバス釣りですけれども、このブラックバスの駆除を徹底するということ、もとよりバス釣りという行為自体を国内で禁止するべきなのではないかと私は考えています。管理釣り場ではなくて、日本の河川に直接外来種を放流しなければ成り立たないレジャーというのは、爬虫類のように飼育ケージの中で生き物を管理する趣味とは比較にならないほど悪質な環境破壊行為ではないかと私は考えます。バス釣り用品の販売禁止とか、バス釣りを紹介する書籍の規制とか、今回のプレゼンに釣り業界の方が呼ばれていなくてブラックバスの討論がないということに、何かちょっと不思議なものを感じました。
 さて本題の爬虫類ですけれども、爬虫類自体は移入種とならなくても、内在する病原体が移入するということが、実は深刻な問題であるように私は思います。現在までに輸入された爬虫類からさまざまな病原体が検出されており、人畜共通感染症の中ではデルマトフィルスによる皮膚感染、それから有名なのはサルモネラによる消化器感染です。このデルマトフィルスというのは、トカゲなどが輸入されたときに、いぼいぼになっているんですけれども、これは我々の皮膚に同じような皮膚感染を起こすバクテリアの類です。そういったものも、現在日本に入ってきているということが確認されています。
 また人畜共通感染症でなくても、爬虫類同士、この方がむしろ行きやすいです。人畜の方はなかなか成り立ちにくいですけれども、爬虫類同士の方が移りやすいということで、爬虫類同士の感染症ではクリプトスポリジウム症、鞭毛虫症、これは両方とも原虫病です。それからアデノウイルス感染症、蛇の封入体病、いわゆるIBDというものです。それからリクガメのヘルペスウイルス感染症などが、国立感染研究所とか神奈川県衛生研究所、それから麻布大学病理学部の研究によって細々確認されているのですけれども、これは爬虫類の研究をする機会が少なくて、余り予算もないものですから、たまたま見つかっていますけれど、もっと本腰を入れればいろいろ出てくるのではないかと思います。
 少なくとも、従来我が国には存在しなかった病原体というものが、ペット爬虫類とともに国内に持ち込まれているということ自体が大きな問題ですし、これらが今後在来の生態系、人間社会の公衆衛生に与える影響というのはわからない分不気味であるというか、在来種のニッチェの圧迫とか、遺伝子汚染の問題とかと同じレベルの問題として、もっとクローズアップされるべきではないかと考えます。実際、これは先ほど1,200ドルの値がついて一般に流通されている、家畜化されてペットとして最も適切な爬虫類とうたわれている、もの凄く飼育人口の多いヒョウモントカゲモドキというトカゲなんですけれども、これがアメリカの業者から入って、クリプトスポリジウム症が大量に出て問題になったんです。
 これが今天然記念物になって捕まえることも飼うこともできなくなりましたけれども、昨年まで飼育がはやっていたオビトカゲモドキという野生種なんですが、このオビトカゲモドキにペット屋のストック段階で感染するということがわかったんです。私が、死んだこのオビトカゲモドキを分析する機会を得まして、初めて発見したんですけれども、2カ月、3カ月たってじわじわ病原体を下痢として排泄しながら死んでいくんですけれども、その間に移ると、1週間ぐらいで死んでしまうんですね。もの凄い腸炎で死んでしまうんです。こういったものが例えば徳之島に爬虫類ショップというのができるかどうかはわかりませんけれども、このようなものを売る店ができたときに、この病原体が一たび徳之島というところに入った場合に、この貴重なオビトカゲモドキという野生動物が、その病気によって絶滅するというようなことも、危険性はないわけではないというふうに感じました。結局、移入種としてこれは別に日本に定着するわけではないんですけれども、移入病原体の入れ物としてどんどん入ってきているということに、移入種問題として絡めて考えていただければなと思っています。
 最後に、輸入規制という方針が国家機関にとって、最も一番やりやすくて楽な対応であるならば、感染症の研究というのが既に多くなされていて、コントロールがしやすいという意味で家畜以外のペットというのは、もう飼養禁止にしてしまってもいいのではないかと。すなわち野生生物由来のペット動物の飼育とか輸入とか所持を全面禁止としてしまって、これを徹底するために違反者を末端の飼育レベルで摘発して、何か違反行為に対して罰するという組織・機関を整備するというような、そういう極端なことでもやらない限り、この問題を根絶するということは難しいのではないかと私は考えます。
 ちなみに、先ほどの昆虫の研究とか、一個人のポケットマネーでこの研究が支えられているということ自体が驚異的で、この爬虫類も同じなんです。要するにこれは最初は何の得にもならない研究ですから、基礎研究というのは顧みられないし、明日から何かもうけ話が出るわけでもないので余り予算がおりないんですけれども、こういったような基礎研究の方に積極的に地道にカメを研究して、田んぼを一日じゅうはいずり回っているカメの学者さんたちに、しっかり予算というものを作っていただければなというふうに考えます。
 以上で発言を終わります。最後に発言の場を与えてくださった自然環境研究センターの千石正一先生に感謝いたします。以上です。

【岩槻委員長】 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続き2人目の発言者であります琉球大学の安川さんにお願いいたします。

【参考人(安川)】 安川雄一郎です。カメの研究者としての立場で、観賞用の爬虫類についてお話をさせていただきます。
 観賞用の爬虫類としては日本国内で最も多数飼育され、輸入量が多いのはカメ類ということになります。今回はその背景、問題点、対策などについてお話をします。
 日本国内に分布する陸産カメ類というのはOHPで示しましたが、イシガメ科の4属5種、スッポン科の1属1種の計6種ということになります。そして既に定着した種として外国産で4科6種、国内での移動による定着種が2科4種あります。これを具体的に見ていきたいと思います。
 ここで陸産カメ類としているのは、淡水棲ないし陸棲のカメ類のことです。これ以外にカメ類には日本近海にも生息するウミガメ類もいるんですけれども、ウミガメ類は一般家庭で飼育されることは少なく、国外からの輸入はCITESなどで陸産カメ類に比べるとはるかに厳重に規制されていますので、移入動物として問題になることは少ないと思われるので、割愛します。
 日本の陸産カメ類ですが、イシガメ科はここで示したとおり5種が分布しています。このうちリュウキュウヤマガメとセマルハコガメは国指定の天然記念物とされていまして、環境庁のレッドデータブックでも絶滅危惧II類に分類されています。しかし世界的に見た場合に、この評価というのはかなり軽いもので、例えばIUCN(国際自然保護連合)のRed Listでは、絶滅の危険度はより高いと評価されています。また、日本のレッドデータブックには掲載されていないミナミイシガメ、クサガメなども含めて、IUCNのRed List、これ2000年のものですが、2番目に危険度の高い絶滅危惧IB類に入っています。もう1種類のニホンイシガメについては、これは準絶滅危惧ということになっています。
 日本国内のクサガメとミナミイシガメは、比較的個体数が日本国内では多いとされていますが、現在国内法によって種レベルでは保護されておらず、環境庁のレッドデータブックにも掲載していません。しかし、これら2種は中国などの国外では個体数は激減しており、日本国内の個体群は比較的健全な状態で残された非常に貴重なものであると考えられます。またスッポン科についても絶滅危惧II類に入っていまして、いずれについても備考で示しましたが、日本の固有種あるいは固有亜種、既に亜種として記載されてはいないですが、将来的に記載される可能性が高いものというふうに、固有性の高い非常に貴重なものというふうに考えられています。
 次に表2で示しているのは、日本国内に既に定着している陸産カメ類です。外国から移入されているものとしてはイシガメ科のミナミイシガメ、クサガメ、セマルハコガメがあります。これらは主に中国から移入され、日本本土や沖縄などに既に定着していると考えられています。しかしこれらは数としては他のものに比べるとそれほど多くなく、カメ類の中で定着している種として、特に問題視されることが多いのは、次の北米産の2種類です。
 1つ目のミシシッピアカミミガメは、ミドリガメの名前で大量に移入されているヌマガメ科のカメ類で、北米原産です。これは日本本土の非常に広い範囲、それから琉球列島に入り込んでいます。続くホクベイカミツキガメ(カミツキガメ科)は、やはり北米のもので、本州で何カ所か確認されていまして、千葉県印旛沼周辺では繁殖も確認されています。しかし繁殖は確認されてはいないものの、目撃例は琉球列島などでもありまして、かなり広い範囲で定着している可能性があります。最後のスッポンは、台湾から持ち込まれたものが沖縄諸島、八重山諸島、大東諸島など、沖縄県内で非常に広く多数の島に既に侵入し、定着しています。これらは外国から持ち込まれたものが日本国内に定着した例ですが、日本国内の移動によって定着が起こっている例もあります。
 ミナミイシガメは、八重山諸島では保護する必要があるような固有の亜種ということになるのですが、これが八重山諸島から持ち出されて沖縄諸島や宮古島などに定着しています。クサガメについては本州、四国、九州とその周辺の属島に本来分布するものですが、これが沖縄島、奄美諸島の喜界島、北海道などに入り込んでいます。またセマルハコガメについては、八重山諸島に本来分布しているものが沖縄島で発見されています。これは繁殖している可能性が高いと考えられています。最後にスッポンですが、恐らく九州のものが奄美諸島に持ち込まれ、奄美諸島の中で増えています。このようにかなり数多くのカメが日本国内に既に定着していて、それらが影響を与えているおそれがあるわけです。
 続いて、これら陸産のカメ類が移入動物として注意を要する事由について挙げていきたいと思います。1つ目は日本の気候への適合性ということで、日本本土や沖縄の野外飼育施設、あるいは野外でのこうした生き物を飼っている飼育者からの情報によれば、外国産でも温帯性、亜熱帯性の種は、生息地の気候が日本に近いため、日本国内で定着が可能です。また熱帯産の種でも日本本土の夏の気候では生存・繁殖できますし、暖房の影響や温泉の存在など、そうした温排水などが流れていて、温度が高い環境では越冬可能な種がいます。さらに琉球列島や小笠原諸島では、亜熱帯の気候ですから、熱帯性の種でも特に寒さに弱い種を除けば、多くの種が定着することが可能です。こうした温度的な適合性や飼育下で、日光浴させながら飼育するという方法が一般にとられていますので、外で飼われることも多く、それらが逃げ出して定着することにつながることがあります。
 気候以外の生物的特性に関しては、幅広い食性と、食性についての順応性の高さということが挙げられます。カメ類は一般に特定の食物を選食することが少なく、食物に関して広い選択性と適応性を持つので、本来の生息地以外でも、その地域で利用可能な食物に適応することが可能です。また、日本と同じ温帯、亜熱帯に生息している種は、原産地でも日本国内と類似した環境に生息していまして、そこに生息している生物には共通性が高いと考えられることから、種は異なっても、例えば外国で食べるマキガイや、あるいは水生昆虫を食べている種は、日本に持ち込まれた場合、マキガイや水生昆虫として同種ではないものの似たような場所に生息する、似たような種類を食べて定着することが可能なわけです。
 続いて長寿命と長期の繁殖可能期間ということが挙げられます。カメ類は比較的短い種でも20年〜30年以上の寿命を持つのが普通で、特に長寿な種では50年以上生き残ることもあります。さらに多くの種が数年から十数年程度で性成熟し、それ以降十数年、あるいは数十年にわたって、ほぼ一生、生殖可能です。精子の貯蔵能力ですが、多くのカメ類の雌は精子を体内に蓄え、年々受精率は落ちるものの、交尾してから数年にわたって受精卵を産み続けることができます。また、多くの種で雌雄の交尾は冬期に水温が極端に下がっているとき、そうした時期を除き年間を通して行われますから、一度でも、短い期間雌雄が出会ったとき、精子の受渡しということが起きる可能性があるわけです。そしてその受渡しが終わった雌は、それ以後数年にわたって卵を産み続ける可能性があるわけです。
 4番目は長期的な移動能力の高さですが、カメは動きの鈍いイメージの強い動物ですが、年間を通して見ると広い地域を徘回・移動することができます。また先ほども言いましたとおり、長い年月を生きますから、その年月の間には非常に広い範囲を徘回・移動し、低密度で放されている状態でも、出会って繁殖できるようになる可能性があるわけです。特に水生種では河川に沿っての移動、あるいはその岸辺に沿っての移動で長距離の移動を行うことが多くの種で確認されています。
 続いて、成体に対する天敵の不在ということですが、本来のカメ類の生息地ではワニ、大型のカメ、カワウソ、大型魚など、比較的大きくなった成体のカメに関しても捕食者がいる場合が多いのですが、日本国内ではある程度成長したカメを捕食するような動物はそもそもいませんので、捨てられたものが捕食されるということも非常に少ないということになります。
 以上のことから、仮にごく少数の個体が放逐されただけでも、それらはその地域で食物を確保し、ある程度成長すれば天敵もいなくなり、長い繁殖可能期間の間には広い地域を移動して交尾相手と出会い、その後数年にわたって雌が受精卵を産み続ける可能性があるわけです。さらに極端に言えば、たとえ一個体の既に交尾を済ませた雌が放逐されただけでも、その雌は数年にわたって受精卵を産み続け、生まれた個体が雄であれば、それが性成熟後に、まだ生殖可能な状態で生き残っている可能性の高い母親、あるいは自分の姉妹に出会って繁殖でき、それが繁殖集団を形成することにつながるということすら考えられるわけです。
 続いて、こうした注意を要する理由として、輸入の現状と定着の可能性について話したいと思います。カメ類は、先ほども言いましたが日本国内では飼育動物としては非常に人気が高いということになります。そして、それを支える大量の輸入が行われています。既に定着したミシシッピアカミミガメ、カミツキガメは安価で大量に輸入されています。把握されているだけでも、アメリカ合衆国からは1989年〜1997年にかけて5,200万個体のミシシッピアカミミガメ、10万個体のカミツキガメが輸出されています。これは年によって変動がありますし、カミツキガメなどに関しては、現在ほとんど輸入が行われていません。
 また、国別の、このうちの何%が日本への輸出なのかというのを、カメに限っては何%なのかという統計データが存在しないために、このうちどれだけが日本に入っているか分からないんですが、カミツキガメというのは日本以外では余り人気がないカメですので、このかなり多数が日本に輸出されています。また日本はアメリカの爬虫類輸出の相手国としては最も大きな国で、爬虫類全体で10%から十数%の爬虫類を輸入していることから、ミシシッピアカミミガメだけでこの年数の間に数百万個体が入っていると考えて何ら問題がない。下手したら1,000万個体ぐらい入っていても不思議ではない。
 これはあくまでもU.S.Fish and Wildlife Serviceに残っているデータだけですので、これを超える数のものが入っている可能性があります。他の外来産のカメ類については、日本国内の種別のカメの輸入量を調べたデータがないために、個体数の把握はかなり難しいです。これは個体数ではなく、重量で表されていたり、あるいは種別が非常にいいかげんだったりするので、実態把握がほとんどできない。これは保護種であってもそうで、CITESの付属書IIに入って、許可を得て輸入されているようなものでも、分からない場合があるのに、それ以外の規制対象種になっていないものに関しては、全くデータがないに近い状況です。
 そして、この中でも特に問題なのが北米や中国など、日本に気候の近い地域に生息する種が、まとまって輸入されているということです。これらの地域は日本国内と気候が似通っているため、そこに住む種は潜在的に定着の可能性があります。特に北米産の種ではヌマガメ科のニシキガメ属、チズガメ属、クーター属、アカミミガメ属、カミツキガメ科のワニガメ属などは、大量にアメリカ合衆国から輸入されています。レジュメの表3がそこに輸入されているものです。これらは既に野外で目撃されたりしていて、まだ完全に定着しているということを示すデータはないですが、将来的に定着する可能性がある種だというふうに考えることはできます。また、中国産ではイシガメ科のハナガメ属、ニセイシガメ属などが輸入されています。
 これが具体的なその数ですが、アカミミガメの数が5,200万個体と圧倒的に多いのに対して、ニシキガメ、チズガメ属、クーター属などは数万から数十万程度の数で、これらに比べると数は少ないということになりますが、これらは放された場合、将来的には先ほど言いましたようなカメの生物学的特性のために、繁殖集団を形成する可能性が常につきまとっているわけです。
 それから、4の習慣と一般の意識という問題があります。古来から日本を含むアジアの国々には神社、神殿、仏閣などの庭園に生きたカメを放して、幸福を願う習慣というのがあります。現在でも日本国内では、これは必ずしもそこにそのカメを定着させようというわけではないんですけれども、神社や公園の池などにカメを放す人間というのが少なからずいます。その中には外国産の種も含め、他の場所で捕獲された個体がいます。それで放された場所を中心に野外への定着が進むことが懸念されます。
 こうした種類の放されたカメというのは、人為的環境に多いのは確かですが、人為的環境ではない、自然の川などにもこうしたものが放逐されたり、あるいは持ち出されてそこで繁殖しているケースもあります。それからこうした、上記のような管理ができないような野外の池、あるいは自然環境などにカメを捨てる行為そのものを、日本国内では罪悪感なく一般に行われているという現象があります。こうした行為を「放す」ないしは「逃がす」などと称して、美化している場合さえあるのが現状です。
 これは先ほど石橋先生からのお話にもありましたが、外国産のカメ類の野外の放逐の悪影響は、一部の知識のあるカメ類の飼育者、爬虫類飼育者の間では比較的よく広まっています。しかし、在来種や既に定着した移入種を野外に放すことの問題点までは、そうは認識されていません。アカミミガメに関しては、例えば自然の環境に放すのは問題があるけれども、寺の池、あるいはもう既に定着しているところに放すのだったらいいのではないだろうか。あるいは、自分の飼っているクサガメ―これは外国産か日本産かに関係なく―クサガメなら放してもいいだろう、アカミミは問題があるかもしれないが、クサガメは日本にもともといたものだから放してもいいだろう、といったようなことを考える人がいる場合もあるわけです。
 そして、大量に輸入される種、先ほど幾つかの種を紹介しましたが、年間数万頭の規模で輸入されるような種類に関しては、こうした移入種の問題に関する知識のある者だけではなく、そうした知識がほとんどない人にも入手され、最終的には野外に捨てられるケースがあります。飼育されているカメ類には、先ほどから何度も名前が出ているミシシッピアカミミガメのように、飼育下で10年以上生きるのが普通で、甲長20センチ、カメの大きさは甲羅の長さで表しまして、甲長で20センチというとこれぐらいの甲長ですが、頭からの長さとなるとこのように40数センチから50センチ近い大きさ、体重にして1.5キロ以上というふうなサイズになります。
 こうした大型の生き物、しかもたくさん餌を食べて、水と陸の場所が両方必要なもの、これはカメ類の中では特に大型種とは言えませんが、飼育動物としてはかなり大型のものなわけです。こうした大型種を、幼体はともかく、成体まで一般家庭で飼い切るのは容易ではありません。最終的にはそうしたものが持て余され、特に捨てることに対する問題点が理解できない人の場合には、それが野外に捨てられてしまう。捨てた本人も捨てたという認識はなくて、大きくなって狭いからかわいそうだから逃がしてあげた、おれはいいことをしたんじゃないかと、そういう感想を持ったりすることがあるわけです。
 また、マスコミなどの報道をもとに飼育が放棄されるケースというのも最近目立ってきました。例えばミシシッピアカミミガメはサルモネラ菌を保有していて、それが感染するという情報が流れた直後に川などに行くと、普段からいるアカミミの数がはるかに増えて、これはきっと最近捨てられたんだろう。あるいはカミツキガメ、ワニガメなどが危険動物指定されると、それらは大量に動物園や水族館に持ち込まれる。あるいはその直後に放逐されたものが野外で見つかる例が増えるというような現象も起こります。こうしたことも含めて、日本の現在のこうしたカメの放逐に関する習慣と一般への意識というのが、移入定着を促進させることは否めない事実だと思います。
 在来の生物への影響としては、定着性の高さと定着した場合の高い個体密度、これは様々な環境に定着可能で、非常に高密度で生息できる場合があります。そして定着したものは在来のカメ類へ影響を与える可能性があります。それから食性と生態的地位に関しては、広い食性を持ち、多くの生物を食べるスッポン、カミツキガメやワニガメなどは、高次の捕食者となる可能性が高いということになります。またこれは先ほどクワガタなどでも出てきましたが、雑種を形成する。例えばリュウキュウヤマガメの生息する沖縄島の北部にミナミイシガメあるいはセマルハコガメなどが放され定着し、それらとの間で、野外で雑種が見つかっています。また同種内でのクサガメ、セマルハコガメ、スッポンなどが放され、遺伝子の侵入が起こっています。それから、これは先ほどやはり石橋先生が話されましたが、病気の媒介のような現象もあるわけです。
 次いで人への影響という問題ですが、一般に外来種の問題では、在来種への影響よりも人への影響が宣伝されることが多いんですが、カメ類に関しては原産地での人への影響などを見る限り、在来種への影響に比べれば、人への重大な影響というのはありません。これらとしては人への直接的被害、産業への被害として漁業、農業、畜産業などへの被害などもありますが、それらは比較的軽微なもの。ただ、これは実際に入ってみないとわからない、実際に入ってみたら、もしかしたら重大な影響があり得るということも考えられます。
 こうした上記の問題への対策ですが、多面的な方法による対策が必要です。移入定着への対策に関しては、外国産種の移入そのものを規制するということ、それから先ほども言いましたが、何がどれぐらい入っているかというのが現状ではさっぱり分からないという状態です。それが分からないとどのような種に対して、どのような規制を行うべきかというのがわからないわけです。そのため、そうしたことを厳重に調査し、データを残していくことが必要です。そして、それに基づいて輸入の規制などを行っていく必要があると思います。販売や飼育などについても、規制が必要ということになります。また、こうした規制を行った場合に、放逐される個体数が増えることが想像されますので、それに対応する対策を行っていく必要があります。
 続いて、啓蒙活動に関してですが、カメを捨てるという行為自体が、動物愛護管理法への違反であり、生態系に対する犯罪行為であるということ、駆除をすることの必要性などを一般に知らしめる必要があります。それから販売する場合での定着を防ぐような、販売店などで説明義務を負わせるなどの行為も必要だと思われます。
 駆除あるいは除去ということですが、既に定着している種類に関しては、積極的な駆除を行うとともに、それに適した方法を開発していく。どのような方法が適切な方法であり、どうすれば効果的に駆除することができるかということを調査し、それの方法に基づいて効果的な駆除を行っていく必要があると思います。
 生物多様性の保全上特に注意を要する地域として、最後に紹介したいと思います。
 琉球列島の島嶼には沖縄諸島のリュウキュウヤマガメ、西表島・石垣島のセマルハコガメ、石垣・西表・与那国のミナミイシガメ個体群など、数少ない比較的健全な個体群で固有種であるようなものというふうに、非常に貴重な3種のカメが分布しています。これらは分布域が狭く、局所的に個体密度が高い場合はあるものの、全体の個体数は多いとは言えません。
 これらを守るためには、沖縄県内での採集・移動が移入・定着につながらないようにするために、既に保護されているリュウキュウヤマガメとセマルハコガメについては違法採集の取り締まり強化、ミナミイシガメについては採集の新たな規制を行っていく必要があります。また遺伝子汚染を防ぐため、外国産の同種の沖縄県内への持ち込みや販売を禁止するなど、思い切った手段をとることも必要だと思われます。さらにこれらと競合する可能性のあるカメ類についても、生息する島への持ち込みを規制する必要があります。
 以上が在来種の多様性に関する問題ですが、これ以外にペットとしてのカメ類の広がりに伴って、野生個体の採集圧、密輸、違法取引の増加といったような、生物多様性保護の観点からの問題があります。また、動物愛護の観点から、消費的な飼育や動物虐待、「捨てる」という意識の欠如から生じる放逐といった問題がありますが、今回はペットとしてのカメ類に関するものですので、ここではこれで終わりにしたいと思います。
 以上です。

【岩槻委員長】 どうもありがとうございました。
 お二人に非常に詳細なプレゼンテーションをいただきましたので、時間がちょっと超過しているんですけれども、お二人のご発表に対して、コメントあるいはご質問等がありましたらどうぞ。石井委員、どうぞ。

【石井委員】 私、本当に情けないことに知らなかったんですけれど、交尾をした後、雌は精子を体内に蓄えて、数年にわたって受精卵を産むことができるというのは、ちょっと驚いたんですけれども、まるで昆虫のようだなと思って聞いていたんですけれども、これは一般的な話でしょうか。カメそれから爬虫類について。

【参考人(安川)】 カメ類ではかなり多くの種類で確認されています。ほかの爬虫類についても同じような現象が知られていますが、カメ類の中で特に多く確認されているということです。

【鷲谷委員】 それとの関わりでの質問なんですけれども、そうすると多回交尾なのでしょうか。

【参考人(安川)】 そうですね、基本的に年間複数の回数交尾して、親は複数の雄が1回の産卵の卵に関しているということは普通です。産卵も年数回しますし、1回に産む卵の数も種類によってはかなり多いです。

【岩槻委員長】 その他はいかがでしょうか。
( な し )

【岩槻委員長】 それでは、特にご発言がないようでしたら、大分時間が超過しておりますので、お二人の方、ご丁寧に詳細な発表をどうもありがとうございました。
 それでは最後の第5部に入りますけれども、「緑化用草本類(外来牧草類)について」ということで、最初に雪印種苗株式会社の藤井さんからお願いいたします。

【参考人(藤井)】 初めまして、雪印種苗の藤井と申します。よろしくお願いいたします。
 今回いただいているタイトルでございますけれども、緑化用草本類(外来牧草類)ということでタイトルの方をいただいておりますけれども、この「牧草」という言葉でありますが、その使用される草種につきましては、利用場面でとてもオーバーラップしております。さまざまなケースで混同されてもおりますので、今回、今日はあえてこういう、区分する意味でもこういったタイトルにさせていただきました。それでは説明に入らせていただきます。
 タイトルを包括いたしますこの広義における「牧草」という草種につきましてですが、その用途から牧草・飼料作物、緑肥作物、芝草、緑化・法面作物、こういった大きく分けてこの4つに分類することができます。それぞれについてお話しします。
 まず牧草・飼料作物ですけれども、実際に使われている草種につきましては、オーチャード、チモシー、イタリアンなどの寒地型のイネ科牧草、それからローズ、バヒアなどのいわゆる暖地型のイネ科牧草、クローバ類などのマメ科、それにトウモロコシ、ソルガム、ムギ類などのいわゆる飼料作物といったものが利用されています。
 それぞれに品種改良がされますけれども、国の試験場で育成された品種、私たち民間で育成した品種を含めまして、その優良性を検定の上、各都道府県において奨励品種として認定するという制度がございます。これら奨励品種につきましても、その栽培用の種子、流通用の種子につきましては、すべて海外で種子が生産されている状況です。
 続きまして緑肥作物についてですけれども、この「緑肥」という言葉は馴染みのない方もいらっしゃるかと思いますけれども、国内に輸入される種子の量としては高い割合を示しています。この緑肥作物の利用ですけれども、基本的には土壌の改善を目的としまして、最近では環境保全、景観美化に利用されるケースも多くなっています。
 芝草と緑化・法面作物でありますけれども、特に草本類についていいますと、この2つの用途は使われる草種は、ほとんど同じです。しかし公園、庭園、ゴルフ場、競技場、ガーデニングといった、いわゆる管理される場面におきましては芝草、それから道路法面の施工など、環境保全や荒廃地の復元、そういった場面で従来放置されているような場所で利用される作物については、いわゆる緑化・法面作物として区分されます。
 主な芝草の種類ですけれども、ベントグラス類、フェスク類、ペレ、ケンタッキー、バミューダ、こういった草が使われています。この目的で利用される品種に特徴的なのは、草丈が伸びない、矮性のタイプに改良されるといったことが言えます。ほかの目的で使われる作物が主にその生産性を問題とし改良されるのに対して、この芝草については逆に伸びないタイプ、ターフタイプというふうにここでは書いてありますけれども、芝生ですね、伸びないタイプに改良されます。ひとえに管理を目的としてそういう方向で改良されております。
 続いて緑化・法面作物ですけれども、こちらの草本類につきましては、草種的に前の芝草と大差ありません。ただ、芝草が先ほど申したように矮性のタイプに改良されることに対して、こちらは緑化・法面目的に利用されるものですから、その生産性、特に初期の被覆能力が問われるということで、その辺が大きく異なっております。また右側の山野草種につきましては、肥料木、それから先駆作物としての役割と、外来牧草、外来草本類の使い過ぎということで、その利用の見直しから右側の山野草種が使われてきておりました。現状ではこのほとんどすべてにおいて海外からその種子が輸入されています。
 続きまして、ここまでの話の種がどれぐらい国内に入っているかということをご説明します。
 これは、ちょっと見にくくて申しわけございませんけれども、植物検疫所の輸入検疫実績からまとめた表です。統計資料の方ですけれども、カテゴリーとして牧草飼料作物といったカテゴリーはあるんですけれども、芝生それから緑化といった区分はございません。それらは牧草飼料作物の方に入っていたり、またその他の方に入っていたり、一部緑肥に使われる方は普通・特用作物の方に分類されていたりして、非常にそのままでは今回使えなかったので、こちらの方で生産国、それから品目を吟味して整理した形がこれで、それはまだ完璧じゃないかもしれません。そういった形で分かれています。
 どうしても1つの種を輸入してきて国内に入れたとしても、国内に入ってきてからいろいろな目的で使われるケースがありますので、申請がおかしいという形ではないと思うんですけれども、ちょっとこういったデータはそのまま使うには難しかったかなというふうに思っています。これを見ますと、国内に入ってきている量で一番多いのは、約4,000トン近いドクムギ属です。いわゆるイタリアン、ペレの類、これが4,000トン近く入っています。続いてエンバク、フェスク、トウモロコシ、ソルガム、こういったものが約2,000トン近くに絡むような数字で入っています。北海道主体ですけれども、チモシーですね、1,000トン近く入っています。野草種ではハギ類、これが約300トン近く入っていまして、そのほかではヨモギ、数十トンのレベルで国内に入ってきております。この表を見てもちょっとあれっと思うところが実際にはあるんですけれど、ムラサキウマゴヤシ(アルファルファ)、180、70なんていう数字がありますけれども、これは実際には牧草として使われている例では絶対ないです。これは恐らくモヤシ利用のものが多分、中に入ってしまっていると思います。
 それから、ちょっとどうしてもわからなかったのは、後で鷲谷先生の方からもお話があると思うんですけれども、ウィーピングなんですけれども、これは50トン以上のレベルで推移して入ってきているんですが、実際にこの輸入統計で見るとウィーピングというのは20〜30トンぐらいしか入ってきていないんですよ。ですけれども、そのほかのカゼグサ属という属名で申請されているものがございまして、これがやはり同じぐらいの数字で入っておりまして、一応カゼグサ属でトン単位で入ってくるものは、他にウィーピング以外にないんじゃないかと思って、それで併せてこの表に入れたんですけれども、今この時点でもこれだけ国内に入ってきているのかどうかというのは、正直、ちょっとわかりません。疑問に思っているというのが実情です。こういった形で入ってきておりまして、約1万8千トンの種が入ってきております。以前こちらの小委員会の方で出されている資料に、8万何がしというトン数が輸入されているんじゃないかというデータが少し入っていましたけれど、恐らく牧草・飼料作物、今話してきた中身ではそんなには入っていないです。これぐらいだと思います。
 このようにして輸入されてきた種が、国内でどのような用途で使われているかといったものをまとめたのがこれです。あくまで推測なんですけれども、推測というのはこういった区分にされているデータ統計資料というのがないんですね。こちらの方で絶対牧草で使われているだろうというような実績と、過去に種苗メーカーの方にアンケート調査したようなデータがございましたので、そのデータを参考に、平成13年の輸入実績から推算したものがこれです。これで見ますと、一番多いドクムギ属ですけれども、大半は牧草、それから緑肥で使われております。3割〜4割が芝生、15%ぐらいが緑化・法面で使われています。
 次にエンバクですけれども、ちょっと色の関係で見づらくて申しわけないです、エンバクはほとんどが牧草と緑肥ですね。フェスク、これは大半が緑化・法面。トウモロコシ、ソルガム、チモシー、ほとんど牧草です。それからレンゲ、緑肥利用です。イチゴツナキ―ケンタッキーブルーでしょうか―ギョウギシバ(バミューダ)、こういったものは芝生利用です。シロツメクサ、緑化の利用が多いです。ハギ、それからシナダレスズメガヤ(ウィーピング)、ヨモギ、ほとんど全部が緑化・法面で使われております。こうしてみると1万8千トンのうち緑化・法面で使われているのはその約15%ぐらい、2,600トンぐらいの数字になっております。
 それでは、それぞれの種がどこから入ってきているかというような話ですけれども、これは生産国別の輸入数量です。圧倒的にアメリカが多いです。続いてオーストラリア、これのほとんどがムギだと思います。それから中国、これはレンゲと野草です。カナダ、グラス類です。ニュージーランド、グラスそれからマメ科牧草です。フランスとタイ、これはほとんどがトウモロコシ、一部暖地型の牧草。韓国、これは野草類です。ハンガリーとオーストリア、13年の数字でいきなりランクインしてしまいましたけれども、これはトウモロコシですね。こういった感じで入ってきております。圧倒的にアメリカが今は多いです。
 このように海外からたくさん入ってきている種でございますけれども、その品質に関する規定や制度につきまして、まず輸入時における植物防疫法があります。これは有害な病気や害虫がついていないかというところが検査されています。また生産と流通面ですけれども、OECD規定、これはOECD保証種子制度ですけれども、それに準じる形のアメリカや日本国内の保証種子制度があります。この保証種子制度というのは、その品種が品種としてきちんと維持され生産されていることを保証する制度であります。内容としましては、その生産における圃場の隔離ですとか、転作の規制、圃場での異種混入についての確認などが規定されています。種苗法は国内法で、国内の流通における法ですけれども、表示義務の1つに発芽率を規定しております。
 OECDの保証種子制度は、品質として遺伝的な純度を保証する規定でありますけれども、種の物理的な純度に関する基準がこれでございます。これで見ましてその種子の純度において純種子の割合、それから他作物、きょう雑、ごみですね、それから雑草種子、こういったものの許容値が規定されています。これ以上のものが、もし入ってしまった場合は、いわば保証種子としては認められないという形になっております。このように各草種の基準につきましては、それぞれ種子の大きさですとか形、それから重さ、そういったものからして精選ができる、できないというのは、そういったところからこういった許容値が決められております。もちろん農業製品でありまして、工業製品ではありません。純度100%ということはまず絶対あり得ませんで、そういったことから、きょう雑や他作物、雑草の種子についてもここには不可避というようなことになっております。
 きょう雑や他作物種子や雑草種子について、この混入については避けられるものではございませんけれども、混入雑草については規制される雑草もあります。これはアメリカの牧草、それから緑化種子の主要の生産地であるオレゴンでの規定の例ですが、保証種子をとる際に、これらの雑草がもし入っていた場合は、保証種子として認められません。検査上1個でも入っていればという形になりますし、そういったレベルでなくても、ある一定基準値内でも、ある一定のレベルを超えてしまった場合は、もう保証種子としてはとれないといった、いわゆる規制種子ですね。これは禁止雑草で、ランクがちょっと違う規制雑草といったものも制度としてはあります。
 ただこの保証種子制度ですけれども、必ずそれをとらなければ国内に輸入できないかといったら、そういうことではないんです。先ほどの輸入時の植物検疫に関しては、あれはもう入ってくる種すべてにおいてやらなければいけない状態になっておりますけれども、この保証種子制度というのは必ずとらなければいけないということではありません。実際には安い種として国内に入ってきて、特に緑化・法面の場面においてそういった種が使われております。またこういった牧草や芝生の作物については、こういった保証種子制度というのは該当するんですけれども、野草種子につきましては、現在このような制度はございません。
 もともとOECDの制度というのが、生産物の保証から来ていますので、生産しているのではなくて、山取り、地取りするような、そういった山野草種子については、この規定は当てはまらないんですね。ですから、そういった制度がない状態で国内に入ってきております。ただ保証種子以外の草本類の種子につきましても、その基準をオーバーして持ってきているかといったら、そんなことはなく、ただ単に証明種子というタックがついていないだけで、基本的には先ほどお見せした基準の中のもの、むしろそれよりもレベルの低いというか、混入割合の低い状態のものを、国内に持ってきているようにしているのが実情です。野草種子につきましても、そういった基準はございませんけれども、業界の方で自主的に物理的な純度主体ですけれども、基準を設けて国内に輸入してきているといった状態です。
 それでは、なぜ海外で生産されるか。ひとえに国内ではもうコストと品質がネックになってしまうんです。面積が限られてしまって、圃場が隔離できません。品種として維持するためには隔離する必要があるわけですけれども、とても狭い日本ではこれが賄い切れません。気候的な要因もあります。梅雨、台風がある日本では、品質にそのままかぶってしまいます。採種時における雨はもうてきめんで、品質が落ちてしまいます。山野草につきましては、もう採種・利用そのものが困難な状態です。こういったコストと品質の問題が使っていただける農家さん、それから施工者の皆さんへの負担となってしまうわけです。
 山野草について補足します。採種面において、まずなぜ利用しないか。まず、これは採る人がいないんです。国内で採っている方、どんな方が採っていらっしゃるかというと、農家のおじいちゃん、おばあちゃん、お小遣い稼ぎにやっています。どんどん高齢化してどんどん減っています。どんどん取れない状態になっています。採種するということは栽培ではありませんから、ある程度の群落が必要です。やはり狭い日本ですとなかなかそういったことが難しいです。種を採るために畑を荒らすといったような弊害もあります。樹木種子については表年、裏年というのがあって、採種量を確保すること自体が不安定な状況です。また牧草に比べても、長期保存ができないような種が多いです。
 利用面から見ますと、こういった事情からまず入手そのものが困難です。価格も当然高いです。それから、使用頻度が少ないために、利用するための情報がありません。発芽率ですとか初期生育の度合いとか、そういった情報がありません。そもそも発芽率が低い。生育も遅い。休眠という状態が施工時期というものに絡んで使いづらくさせています。こういった状況が、山野草種子というものに対してネックになっているわけです。これをクリアするためには、長期的な理由で、しかもコストをかけてやってしか対応ができない状態になっています。もちろん緊急的な災害の復旧、そういった施工にはもう対応できない状態です。
 実際に施工する側の取組みとしまして、意識の変化と申しますか、これはもうご存じの方がいらっしゃるかと思いますけれども、緑化工さんが出されている提言ですが、これまでの緑化の現状、問題を整理いたしまして、そこから施工する場所に合わせて保全レベルを設定した形にして、施工管理していこうといった考え方です。これは地域的種苗というような利用を根底に置いていると思いますけれども、要するにもとあった草、もとあった種をそのままその場所で使う、そういった考え方が根底になっているかと思います。
 こういった流れの中で、我が社でも自然植生復元事業に取り組んでおりますけれども、根底としたら先ほど申したように遺伝子攪乱等に配慮して、種から苗まで採種地管理を徹底する考え方でやっています。下の方に実例ということで、今実際に進めている、北海道の事業が多いですけれど、一番下の釧路湿原の事業ですが、これは環境庁さんの方でNPO委託事業第1号で認定されている事業ですけれども、うちの方でもちょっとお手伝いさせていただいております。
 これは富良野川でやっている植生事業なんですが、これは96年からスタートしています。旭川土木現業所からの業務委託ということでやっておりますけれども、ようやく去年ぐらいで試験的な調査が終わりました。7年かかりました。森林限界に近いということで、とても長い時間がかかりました。こういった形で試験調査をしまして、ようやく去年ぐらいまでに何をどうやって戻していったらいいかということがわかりました。これを実際にどうやって計画、実施工に結びつけていくかというようなことが、これからの課題として今検討しております。
 こういう地域性種苗について、これもいわゆる地域性種苗なんですけれども、その進め方ですけれども、結構だと思います。どんどんやるべきだと思います。私たち種苗会社ですけれども、それを進めていくだけの技術、それから施設を持っています。ですけれども、どこまでできるか、やるか、それはもうひとえにコストと時間です。特に工事を実施する、発注する、公共事業などにおいては、それらを発注する側の意識を変えていかなければなかなか難しいことなんじゃないかなと思います。
 以上です。失礼しました。

【岩槻委員長】 どうもありがとうございました。
 そうしたら、今日の最後は鷲谷委員にお願いいたします。

【鷲谷委員】 お疲れのところ、もう少しお時間をいただいて、外来牧草の話を聞いていただきたいと思います。
 今のご発表にもありましたように、広義の牧草や山野草が現在大量に輸入されて使用されていまして、そのことがもたらしている影響というのは多岐にわたるんですけれども、時間も15分と限られていますので、私はその中でも研究データなどがあって、問題が割合よく認識されていて、しかも対策が始まっているものについてご紹介したいと思います。私が主張したいことは、資料2−10の最初のページに箇条書きしてありますので、こういうことを主張するために、やや具体的な例をこれから紹介させていただくということになります。
 最初のスライドですけれども、右下のあたり、町の中の明るいところに外来の牧草が繁茂している様子ですが、私たちの身の回りには今外来牧草がたくさんあって、明るい場所に行けば外来牧草が繁茂しているのを見られるというような現状になっております。いろいろな目的で外来牧草が使われているわけですけれども、大量に使われている場所というのはやはり右上の治山工事の場所であるとか、それからダムの工事現場などです。あと道路の工事のときの法面にも入れられますので、1カ所見ると面積が少ないようですけれど、道路というのは非常に延長すれば長いですから、大量の牧草がそういうところに導入されていて、種が周りに広がっていく。特に流域には水などで運ばれて広がっていって、問題が時に起こるということです。
 一番、生物多様性保全上問題だと思われますのは、河原への侵入です。これはシナダレスズメガヤ―ウィーピングラブグラスと牧草名では言うんですけれども―が侵入している様子ですが、河原というのは日本ではどこの場所も温暖で降水量が多いですから、森林になりがちですけれども、自然の攪乱があって、森林などに覆われることがなくて、明るい環境が自然に維持されている場所です。そういうところに牧草が入ってきて、今そういう場所が草原化して、もともとは主に石と砂の世界、そこにまばらに植生があって、そのことに適応した動植物が生きている場所が草原に変わりつつあるということです。
 そのことを書いてあるんですけれど、砂礫質の河原、礫質の河原と言ってもいいんですが、日本列島では河川が滝のようだとヨーロッパ人が言ったように、非常に急流です。その急流河川がつくり出す自然です。石がごろごろしていて間に砂があるような環境ですけれども、時に水の影響を受ける、それから、樹木に覆われてしまうことがありませんから光が強い、乾燥しがちである、夏などは高温になるという特殊な環境があって、そういう環境に適応した動植物が、そこだけに生育しているものも少なくありません。例えば日本の植物の中には「カワラ」という言葉が頭についている名前のものが少なくありませんけれども、その多くのものが河原に固有の植物です。そういう河原の環境というのが、近年変化してきましたので、絶滅危惧種になっているものもあります。また昆虫もここにはちょっと見えにくいんですが、河原の環境にうまく溶け込んで生きているカワラバッタですけれども、あとオサムシモドキですとか、河原の植物を食性としている、カワラケツメイを食性としているツマグロキチョウですか、そんなものがいたりしまして、河原の環境がなくなると絶滅してしまう動植物というものが少なくありませんので、そういう意味で生物多様性保全の意義がとても多い場所だと考えております。
 次からデータがある鬼怒川で何が起こりつつあって、それに対してどういう対策がとられているかについてご紹介したいと思います。
 ちょっと見えにくいんですけれども、これは1996年からのデータですが、もう少し前あたりからうちの研究室で、ボランタリーに植生の変遷というのがどういうふうに起こっているか、河原固有の生物を保全するという観点から、危惧されるようなことが起こっていないかという調査をしているんですけれども、その調査を見てみますと、1996年から2000年まで、5年間しかたっていませんが植生ががらっと変わってきています。
 左側を見ていただくと、最初はカワラハハコとかカワラノギクとかカワラヨモギなど、出現頻度が高いというのは優先しているということですけれども、河原の植物が多かったものが、2000年になるとシナダレスズメガヤが一番優先するようになっています。この先もまたその傾向が一層強まっているんですが、その結果としてカワラノギクというのは、もう鬼怒川と多摩川ぐらいにしか残っていない、しかも絶滅にかなり近い状態の植物ですが、この縦軸は途中で切ってありますので、非常に急激な変化ですけれども、1996年には10万株以上あったものが、2001年のところでもうほぼ絶滅しかけた、100のオーダーになってしまったんですね。どうしてそうなったかについては、いろいろ研究がありまして、論文数本分のデータに基づいてなんですけれども、外来牧草が入ってきて、1995年ぐらいから目立つようになってきたんですけれども、その数年間の変化というのが疑われるということで、そのデータを基に後でご紹介します再生事業というのが始まりましたので。川を管理している国土交通省の河川局の事業です、今やや持ち直しているところです。
 これはシナダレスズメガヤの影響というふうに書いてありますが、鬼怒川ではシナダレスズメガヤが入ってきているので、その影響の研究をしているので、その例ですけれども、もっと一般にいろいろな牧草が似たような影響を与える可能性があります。まず、もともとは砂礫が多くて、植物がまばらなところが草原化しますので、河原固有の植物、在来種はそこで成長したり、繁殖したりするのが難しくなるというのが競争によって在来種を抑圧ということです。それから砂防などに使われる植物ですから、株の周りに砂をためる性質があります。そこで礫質の河原が砂質に変わってしまいます。砂質に変わるとそこで生育できる植物の種類が変わってきますので、見た目の牧草地化が起こってしまいますと、河原に固有の昆虫などもそこでは生活できなくなっていくという問題があります。こういうようなことに関してはモニタリングをしていますので、データがあります。
 次に対策を立てるに当たっては、他の外来種についても同じですけれども、どのように分布が拡大していくか、あるいは植物でしたら株数がふえていくかについて予測をして、どんな対策が必要か、どんなタイミングで必要かということを考えなければいけません。そういうことの一例としてご紹介するんですけれども、このシナダレスズメガヤの分布拡大のモデルをつくって検討をしました。そのモデルの枠組みを簡単にご説明するんですけれども、分布の拡大を見るわけですから、空間を考慮できるような空間を格子にとって、ここに種子が生産されてその種子が株元に落ちたり、やや離れたところに落ちたり、あるいはもう少し遠くに分散したりという、そういう量を入れながら、ある程度確率的な過程も入れてシミュレーションをするモデルです。
 それからそういうことをやるに当たっては、生活史を考慮して、1つの種子がある場所で成長して、どれだけの種子をどのタイミングで分散していくかというのを見なければなりませんので、そういうのは推移行列モデルというのを構築して検討します。それで、モデルに入れるパラメータについては、現場や、必要があれば圃場などで実測して、動き得る範囲などを決めて、シミュレーションモデルのパラメータとして利用して予測するわけです。
 例えば鬼怒川での今起こっているようなことを考えますと、侵入からの年数がとってありますが、河原全体を10年しないうちに全部覆ってしまいそうなぐらいの勢いだということがわかります。これはかなり控え目に予測してですので、本当はもっと早いうちにそういうことになってしまいそうです。まず、だから放置しておくと、今草原化し始めたところが全体に草原になって、河原固有の動植物の生育場所が失われるということがわかります。それも数年とか10年とかの短期間に起こってしまうだろうということが予測されます。
 それから、川におけるこういう植生の調査というのは、河川環境全般の変化とも関係がありますので、例えば冠水の頻度、洪水などが少なくなったことが影響していたりもします。では洪水が起こったときにどういうことが起こるのか、それはたまたま私たちが調査を始めたころに洪水が起こりましたので、そのときに定量的なデータをとることができました。洪水前の様子がこちらの左上ですね。洪水で冠水して、洪水後の状態で、シナダレスズメガヤはほとんど生き残って、河原固有種の方が死んでしまう状況だったのと、ちょうど台風シーズンに冠水しますけれども、種子生産の時期で種子が分散されることに役に立ってしまうということがわかりまして、先ほどのシミュレーションの結果とも合わせて、放置していくと、鬼怒川は1990年代の半ばぐらいからシナダレスズメガヤが侵入してきたんですけれど、このままにしておくと河原らしい自然がなくなってしまうということが予測されましたので、再生の事業を提案して、2002年から実施されています。
 まず、今まで研究があるといってもそれは仮説にすぎないわけですが、シナダレスズメガヤが侵入して繁茂してくると、洪水時などに株元に砂を堆積してしまって、河原の砂質化が進むこと。河原の砂質化が進むということは、河原固有の植物や昆虫の減少や絶滅を招くおそれがあるんだけれども、さらに牧草にとっては生育に適した条件になりますから、悪循環が起こる可能性があります。ですから、この悪循環というのをかなり強硬な手段で断ち切らなければなりません。それでこういう仮説を確かめるということも兼ねて、河原で砂質化してシナダレスズメガヤ群落になってしまったところの群落を取り除いて、これは土木工事です。そして河原らしい基盤を戻して、そこにわずかに絶滅を免れた植物体が生産した種子を播種して、再生させるということを試みました。これの過程で河原らしい条件を造成する土木工事的なやり方なども検討いたしました。
 先ほどちょっとグラフでお見せしましたように、やや回復させることができたわけです。ですけれども、工事したところ以外は年々シナダレスズメガヤが分布を拡大していますので、シミュレーションの結果からいっても数年たったらもうだめだというふうなこともありますので、これはもっと強化していただくことをお願いしまして、2003年、今年の春なんですけれども、実験地を1ヘクタールぐらいに広げて、これ全部もともとはシナダレスズメガヤ群落だったところなんですが、シナダレスズメガヤを取り除いて、後まだ分かっていないことも幾つかありますので、そのことを検討する実験も兼ねて、カワラノギクの種子を播種しているところです。
 この場所だけやったのではやはりちょっと手遅れかもしれませんので、今お願いしていることは、現在群落のあるところで、恐らく数十ヘクタールから100のオーダーのヘクタール、もっと広がっているかもしれません。今群落が確認できるところで国が手を出せるところ―民地などはできないところがありますけれども―に関しては全部こういう工事をやる。もちろん、在来の植物や動物への影響については十分配慮しながら、こういう工事をやるということを提案して、恐らくそういうことができそうな状態になっています。これほど外来牧草などが入ってきますと、数年間ぐらいの間に河原の環境が変わってしまって、その対策には非常なコストがかかるということです。幾ら工事費がかかるかはお聞きしていませんが。
 こういうことは別に鬼怒川だけで起こっているのではなくて、ほかの河川でも起こっているんですが、残念ながら研究自体が余りありませんので、実態はそれほど十分把握されておりません。このことはある意味では生態的な必然と言えます。法面とか緑化とか治山、砂防に使われる植物というのは、乾燥しがちだったり、強い日射があるようなところでも生育できて、土をしっかりつかむような植物を選んで、しかもそのために育種をしているわけです。人為選別をして緑化材料として使っているわけですから、河原の条件のようなところで生きる植物としては、ある意味ではエリートで、しかも上流部に大量に使われていますから、それが繰り返し侵入してくることもあって、河原や造成地にどうしても群生・繁茂してしまう。一たんそこに群落ができますと、そこが今度は種子供給源になっていきますので、今こういう場所が広がりつつあるということです。
 他のところは十分わからないと言いましたけれども、河川水辺の国勢調査の結果を見ますと、1999年までのまとめですが、シナダレスズメガヤ(ウィーピングラブグラス)は105河川、オニウシノケグサ(トールフェスク)は107河川に広がっていて、先ほどちょっとご紹介があったような種類もかなりの河川に、一時はやったイタチハギですか、緑化工事に非常にはやってたくさん使われたものが、今急速に増え始めているという印象があります。
 河原の生物多様性の影響だけでなくて、懸念されているのがシカの分布拡大や、それを通じた生物多様性への影響を、この牧草地が増えているということが助長しているんじゃないかということなんですね。シカは冬には山の低地の方に移動して、そこで越冬して、夏になると山全体に広がります。関東地方北部のシカの個体群は、足尾銅山の跡地あたりを越冬地としている群があるらしいんですけれども、そこはここにお見せしたような牧草が一面生えているような場所です。それでシカが増えていることに関しては暖冬続きで雪が少なくなったことなども原因にはなっていますけれども、冬に死ににくい、あるいは十分に子供が育つということには豊富な餌があるということも影響しているのではないかと、シカの研究者の方と相談しながらそうじゃないかというふうに考えて、今そのことも研究をしているところなんですけれども、そこで越冬してたくさん子供が生まれたものが日光だとか尾瀬とかに行って、生物多様性への影響をもたらしている可能性があるのではないかと。しかも道路の法面というのが牧草ですから、えさを確保しながら移動するということもしやすいと考えられますので、こういう牧草が増えていることとシカの関係というのは今研究が始まったところですけれども、しっかり把握する必要があるんじゃないかと思います。
 生物多様性影響だけではなくて、花粉症の原因としても重要です。今、外来の牧草、イネ科植物ですけれども、あれだけのたくさんの種子が播種されて、しかも播種された量だけではなくて植物は増殖しますから、牧草地が広がっているということですけれども、はっきりわかった例をここに幾つか挙げてありますけれども、1984年、多摩川沿いの小中学校で集団花粉症が発症したんですけれども、そのときはカモガヤ(オーチャード)、それからホソムギ(ペレニアルライグラス)が、原因植物だというふうに分かりました。それから最近では、1994年に江戸川のジョギングコースというのがあるんですが、そこで近くの小学校の3年生が、これもロリウム類です。雑種のネズミホソムギなどが主じゃないかと言われていますけれども、その原因植物になっています。それから余り意識されていないんですけれども、花粉症というのはスギやヒノキの花粉が飛ぶ時期だけじゃなくて、ほかの時期にもかなり発症していまして、特に初夏の花粉症については外来牧草が原因になっていることが多いと考えられています。
 公共工事で大量の外来牧草が使われるということが、これらの生物多様性への影響や、健康被害をもたらしているわけですけれども、そういう問題のない緑化のあり方というのを今後検討していかないといけないんじゃないかと思いますが、そのときに二次遷移のあり方というか、それを尊重するような緑化の方法というのが必要なんじゃないかと、生態学の立場ですからそういう話をしてしまうんですけれども、日本の二次遷移の特徴なんですが、土壌の中に種子があったり、周りから分散してきたりして、こうやって回復していくんですけれども、最初から先駆樹種が入ってくるというのが特徴です。まず草本になって、それから陽樹が入って陰樹が入ってという、教科書に間違ったことが書いてあるのでそういう考えが流布しているんですが、ですからもし元の植生を回復させたいということでしたら、いろんなやり方があると思うんですけれども、もともとそこにあった樹木が早く入ってくるように、導入が必要だったらするし、土壌シードバンクをつくったり、あそこに鳥がありますけれども、鳥が種を運んできますから、そういうことが起こりやすい条件を整えたりということが重要じゃないかと思われます。
 それはともかく、生物多様性・生態系の健全性を損なわない法面の処理や緑化技術を開発していただけたらと思うんですけれど、まず緑化は特に急に緑化しなくても土を押さえればいいということでしたら、工事の方法というのが地域の植物資材などを活用して土を押さえるやり方です。伝統的なやり方というのもあると思いますので、そういうものも見直したりしながらできるんじゃないかと思います。それから工事する前の表土を取っておいて、土壌シードバンクを活用した例としては、大阪府のダム工事の例があります。恐らく、写真はその例ではないかと思います。それから種子が自然に入ってくるのを促進するということに関しても、林縁性の樹種を早期に導入すれば、鳥が種子を運んでくるものが増えますので、そういうやり方というのがあると思います。それから積極的に地域の在来種の種子を導入するということも、もしかしたらあるのではないかと思います。
 それで、ここに主張が書いてあるんですけれども、マルハナバチの例もそうなんですが、2)というところですが、これまでは、生物多様性への影響を考慮せずに経済性と効率性だけで外来のものを大量利用してきたわけですけれども、今後それで影響がもう明らかになっていますので、現在使用されているものを含めて生物多様性評価というものを実施して、評価結果に基づいて使用を控えたり、あるいは影響を回避し得る使用方法に限定して使うなどの措置が必要ではないかと思います。それから、これから新しく使うものについても同様の生物多様性評価の実施が必要だと思います。また、明らかな生物多様性影響が生じている場所では、それを取り除いて本来の生態系、植生を回復させるような措置、これは緊急に必要だと思います。というのは、時間がたてばたつほど元に戻すことは難しく、生物はネズミ算的に増えていきますので、こういうことは早くしないと、コストをかけても十分な効果が上がらない状態になってしまうのではないかと思います。
 それから外来のものも利用しないでも目的を達成できるようなやり方です。その手法の開発というのにも努力する必要があると思います。先ほどのお話では、採種だとか栽培とか、大変難しい問題があるということでしたけれども、コストや人手をかけるというのは今のような雇用創出が必要な時代にはむしろ望まれることだと思いますので、そういうことをする地場産業などを振興するというようなことも、外来種対策として考えていってはどうかと思います。
 以上です。ありがとうございました。

【岩槻委員長】 どうもありがとうございました。
 終了の時間を大幅に超過はしているんですけれども、せっかくの機会ですから今のお二人に、もう少し質問、コメントがありましたら、どなたからでもどうぞご発言をいただきたいと思います。どうぞ、山岸委員。

【山岸委員】 鷲谷先生に2点お聞きしますが、多分さっき見せていただいた写真は鬼怒川だと思うんですが、ブルを入れてグラウンド状態にならした写真があったですよね。ああいうふうにした場合に、あの状態というのはどのぐらいもつとお考えになってやっておられるのかが1点。それからその後播種されましたよね、カワラノギクを。その種子というのはどこのものを持ってこられたのか。

【鷲谷委員】 第1点ですけれども、まだ上流部にシードソースがかなり残っている状態ですので、どのぐらいもつか私たちもちょっと見通しが立たない。シードソースの評価ができればモデル的に検討できるんですけれども、どのぐらい上流部にシードソースがあるかまだわかっていないので、それもやりながら検討をするということになると思います。
 昨年実施したところは、それほど大きな面積ではありませんでしたので、入ってきた外来種は人手をかけて全部除去するということをいたしました。だからかなり根本治療には上の方のシードソースを除くということが必要だと思いますけれども、先ほどのダムサイトみたいなところを見直したりしなければなりませんので、大がかりになってしまう可能性がありますが、今みたいな工事をしながら、問題をもっとはっきり認識するということにはつながっていくのではないかと思います。
 それからカワラノギクの種子ですけれども、カワラノギクについては残っているものすべてを把握していますので、残っているところから種子を取って、むだにしないように増やして、それでそれを使って再生を今図っているところです。

【岩槻委員長】 そのほか、いかがでしょうか。どうぞ、大井委員。

【大井委員】  非常に深刻な状態になっているということ、それはわかったんですが、ちょっと本当に素人の質問で失礼ですが、この外来種ですね、シナダレスズメガヤなんかがあって、そして河川の土質を変えていく、砂質にと。そういうようなものの最終的な姿というものは、生態系を今まで複雑にあったものをそれをドミナントなものがぱっと支配するという以外にどんなことがあるのか。もちろん、例えば花粉症だとか、そういうようなことをおっしゃいましたけれど、そうじゃなくて、生態系としてのどんな姿、最終像があるのかということです。

【鷲谷委員】 それぞれの場所の生態系がどんな姿であるべきかということについては、生態学などではあるイメージを持っているわけですね。河原でしたらまばらに植生があって、河原に固有の植物がそこに生育していて、それに依存する昆虫であるとか、明るい環境に適応しているようなものがいるものを取り戻したい、あるいは一部なりともそれを残さないと、何種かの種は絶滅してしまうことになると思いますので、そういうことをしたいと思っているんですが、河原で対症療法的に工事をしているんですけれども、それだけで取り戻せるかどうかは、まだよくわかっていません。もっと流域全体の環境の変化などについても、根本的なメスを入れないと取り戻せないのかもしれませんが、それまでの間に河原固有の生物を滅ぼすわけにはいきませんので、それまでの期間は今のようなマイナー・レスト・レズンというような、対症療法的なやり方で維持していかなければならないと思っております。

【岩槻委員長】 どうぞ、阿部委員。

【阿部委員】 先ほどの山岸委員のお話と関連するのかもしれませんが、これ、氾濫源にブルドーザを入れてというのは、これは本来ですと頻繁に洪水が起こっていたことによって維持されていたところで、今、洪水がなくなったからこうなったのではないのでしょうか。どうでしょうか。

【鷲谷委員】 洪水がなくなったことも河原の環境を変えている要素にはなっていると思うんですけれども、そこに今までその生態系にはなかった異質な、入り込んでそこで砂をためてしまうような種類の生き物が入ってきたということもかなり大きな影響で、今の感覚だと、洪水が少なくなったこと以上の影響をシナダレスズメガヤが与えていると思います。そのことの仮説の検証の意味もあるんですね、こういう工事をするということは。それから河原のこういう工事ですけれども、自然の攪乱に倣った形でやっています。礫質の河原をつくるんですけれども、まずシナダレスズメガヤははぎ取りますが、砂は水で洗うんですね。洪水を、ある意味では人が起こして。今起こる普通の洪水ではシナダレスズメガヤがはぎ取られることがないものですから、その部分は人がやや強い力を加えてはぎ取った上で、洪水が起こった後のような状況をつくり出しているということだと思います。よろしいでしょうか。

【岩槻委員長】 ほかにご発言ありますでしょうか。
( な し )

【岩槻委員長】 それでは、大分時間が超過しておりますので、またいずれ内部でのディスカッションをやるということにさせていただいて、きょうはこれで終わりにさせていただきます。どうもお二人のレクチャー、ありがとうございました。
 午前中から10人の方にお話をいただいたんですが、皆さん非常に熱を込めて思いのたけをお話になりましたので、途中でやめてくださいとなかなか言いにくくて、時間が超過するままになってしまって、それで随分遅くなってしまいましたけれども、おかげさまでいろいろ勉強させていただいて、再確認したこともありますし、それから新しい知識を得たこともあると思いますけれども、今日のせっかくの機会を今後の議論に生かしていきたいと思います。発表いただきました方々、どうもありがとうございました。
 それでは、これで今日はもう、あとこのディスカッションはしないで、次回に今日のことを踏まえて意図的導入の問題の議論をさせていただきたいと思うんですけれども、何かこの際、特に委員の方からご発言ございますでしょうか。
( な し )

【岩槻委員長】 事務局の方から、それではお願いします。

【事務局】 次回第4回の小委員会でございますが、5月27日の火曜日10時から、環境省の第1会議室で開催する予定でございますので、よろしくお願いいたします。

【岩槻委員長】 それでは、どうも長時間、ありがとうございました。これで終わりにさせていただきます。

【黒田野生生物課長】 どうもありがとうございました。