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中央環境審議会野生生物部会
第3回遺伝子組換え生物小委員会 会議録


1.日時

平成14年3月11日(月)14:01~16:43

2.場所

経済産業省別館第827会議室

3.出席者

(野生生物部会長) 岩槻 邦男
(委員) 磯部 力 市田 則孝 岩熊 敏夫
大塚直 鷲谷 いづみ
(専門委員) 大井 玄 加藤 順子 鎌田 博
矢木 修身 山野井 昭雄
(環境省) 小林自然環境局長
松原審議官
黒田野生生物課長
水谷野生生物課長補佐

4.議事

【事務局】それでは予定の時刻になりましたので、中央環境審議会野生生物部会の遺伝子組換え小委員会の第3回目の委員会を開催していただきたいと存じます。
本日の委員会でございますが、審議会の運営規則によります定足数は満たしております。
それでは、岩槻委員長、どうぞよろしくお願いします。

【岩槻委員長】それでは、これから第3回遺伝子組換え小委員会を始めさせていただきます。座って失礼します。
まだ大塚先生はお見えになっていないのですけれども、時間はきょう一応、3時間を予定していただいています。これは前回、時間がちょっと苦しかったということがあって一応3時間予定していただいているのですけれども、この種の委員会は2時間ぐらいが普通は議論の限度だと思いますので、できるだけそれをめどに終わらせていただきたいと思いますし、途中から退席したいという委員の方もいらっしゃるようなので、できるだけ早く終わるようにご協力をいただきたいと思います。
それでは、議題に入ります前に資料のチェックをお願いいたします。

【事務局】それでは、お手元にお配りした資料の確認をさせていただきます。議事次第の下の方に資料一覧とございます。
配席図がございまして、資料1は、「遺伝子改変生物による生物多様性への影響について」という、とじた資料です。それから資料2は、右の上に小さい字で書いてありますが「影響の評価項目について」。資料3は「評価に際しての情報について」。資料4、これは第2回の小委員会での主な意見をまとめたものでございます。それから資料5は、カルタヘナ議定書に関する関係省の審議会等の検討状況をまとめてございます。
それから、参考資料の1は遺伝子改変生物と移入種(外来種)による影響、参考資料の2はカルタヘナ議定書でのリスク評価、それから、参考資料3といたしまして米国科学アカデミーによる遺伝子組換え植物の環境影響に関する報告についてでございます。
それから、その下に、先生方のお手元には前回の委員会の議事概要、それから会議録をお配りしております。これに関しましては、既にこれをごらんいただいて一部の先生からはご意見をちょうだいしておりますが、なお、まだご意見をいただいていない先生方もおいでになりますので、今週中をめどに、どうぞご意見をいただきたいと思いますし、既にご意見をちょうだいした先生からも、もしさらに追加のご意見があればお申し出いただきたいと思います。したがいまして、この下の2つはまだ未定稿ということでございます。
資料は以上でございます。

【岩槻委員長】皆さん、お手元にそろっておりますでしょうか。
それでは、ちょうどここで全員おそろいということでもありますので、議題と言いたいところなのですが、この前の議論のときに遺伝子改変生物の生物多様性に及ぼす影響という説明をしていただいた際に、外来種と比較してという議論に少し時間をとりましたけれども、きょうは、参考資料1で環境省でどういうふうに検討していただいているかという資料も準備していただいていますので、このことについて環境省の現状というのをまず説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。

【事務局】今、委員長からお話のありましたとおり参考資料1という1枚紙、表裏印刷となっておりますが、これで遺伝子改変生物と移入種のそれぞれによる影響というようなことをある程度整理してみました。
まず、一番上に掲げられておりますとおり、生物多様性への影響というものの性質を考えてみますと、移入種、外来種も、それから遺伝子改変生物も生態系に導入されてそれによって起こること、すなわち懸念される影響というものは、基本的には共通、潜在的にはと言った方がいいかもしれませんが、共通であろうと。
移入種の場合は、現時点で見たとき、現にいろいろな影響が生じている。これに対して遺伝子改変生物に関してはいわばこれからという分野でございますので、現段階では影響は顕在化はしていないところでございます。
そういうような状況のもとで、対応方策がこの2つに対しては少し現段階では異なっておりまして、移入種に関しましては3つの段階といいますか、そこにありますとおり、侵入の予防、それから定着初期の発見と撲滅、そして定着したものの管理まで、多様な問題が発生しておりますし、段階に応じて、多様な対応が求められる、こういう現状にあるところでございます。
それから遺伝子改変生物は、一方、現段階では主として影響の予防ということから対応が求められているということでございます。
下に表で整理しましたが、簡単にご説明しますと、今申し上げましたとおり、生物多様性への影響の主な種類ということですと、競合、駆逐とか、野生種との交雑とか、こういうものは遺伝子改変生物も移入種も基本的には一緒であると。有害物質の産出による影響とか土壌環境等の攪乱、こういったものがそれぞれ遺伝子改変生物なり移入種なりがもたらす影響なわけですが、これらとて、ある程度の時間の長さを持って考えると、それぞれに同じような影響が出てくる可能性がございます。
それから、現に何が問題となっているのかということでございますが、遺伝子改変生物の方は現在その環境放出利用が実用化されている農作物がございますが、この栽培によって顕著な影響が出ているという報告はございません。一方で移入種に関しましては捕食・競合・駆逐とか、先ほど申し上げたような影響でそれぞれ問題化しているケースがございます。
それから、環境中への導入の経路というものを考えて見たときに、これも意図的導入と非意図的導入というのがそれぞれあるわけですが、遺伝子改変生物に関しては、農作物の栽培、あるいは非意図的導入として混入というようなものが考えられるのに対し、移入種の方は非常にさまざま、意図的導入に関しても天敵利用で導入するとか、そこに掲げられているような狩猟とかペットとか、その他の目的で導入される。あるいはここにありませんが緑化植物などというものも緑化するという目的で導入される。いろいろな、多種多様なものがございます。また非意図的導入に関しましては、物資の移動に伴って付着するとか、混入するとか、そういうような現象が見られているわけでございます。
こういう中で、対策ということになるわけですが、現段階で改変生物の方は予防的対策として、各省のガイドラインに従いまして、利用に先立って環境安全性へのチェックを実施していると。移入種に関しては、予防的対策として、これは、実際、侵入ルートが多岐にわたっておりますので、必要な対策というものも多様なものが必要になってくる。それから、侵入定着後の対策というものも、影響の程度、あるいは実際の状況によっていろいろな対応をとっていかないといけない。こういうことでございます。
以上が現状の比較です。次は条約上の違いですが、ともに生息域内保全のために措置が求められております。8条のgという項目と8条のhという項目で隣り合わせの項目でございます。再三ご説明していますとおり、改変生物に対しては既に2000年の1月に議定書が採択されておりまして、その基本的な仕組みとしては、生きている改変生物の輸出入に際して、輸入国が事前に、利用した場合の評価を行った上で輸入の可否を判断できる仕組みの導入等が既に決まっている、義務づけられていると、こういうことであります。
一方の移入種でございますが、これは生物多様性条約の締約国会議でガイドラインというべき、指針原則というものを検討しておるところでございまして、前回の2000年5月の第5回の締約国会議で中間的な原則が採択されております。本年4月の第6回の締約国会議におきまして、最終的な指針原則が採択される予定となっております。この指針原則では、見通しでございますが、先ほど申し上げた予防に優先順位を置くことになると思われまして、次に定着の初期の発見と速やかな撲滅、それから定着したものを封じ込めるなり制御なりの管理という3段階での対応を原則としているところ、そういうようなものになる見通しであります。
こういう条約上の位置づけもございまして、我が国での対応でございますが、遺伝子改変生物につきましては、議定書に対応して国内措置をとっていかないといけないと。農水省、経産省、文科省、外務省など関係省庁で具体的に制度を検討しているところであると。
一方で移入種、外来種でございますが、これは、現在、既に採択されている中間的な指針原則、それからそれをもとにこの4月に指針原則そのものが採択される予定ですが、それを踏まえながら我が国としての対応方針を検討するために既に検討会を別途設けております。この中で具体的にどういう対応をしていくかという検討を今進めているところでございまして、一応その基本的な方向につきましてはこの移入種の方の検討会を今年度中にまとめて、来年度、環境省としてどういうふうに対応していくかという措置の方向を決めていきたいと、こう考えておるところでございます。
資料の裏側は今お話ししたことを絵にしたものでありますので、説明は省略をさせていただきます。ちょっと長くなりましたが、以上でございます。

【岩槻委員長】どうもありがとうございました。ただいまのご説明に、何かコメントかご質問か、ございますでしょうか。どうぞ、大塚委員。

【大塚委員】簡単なことで恐縮ですが、もしご存じでしたら教えていただきたいのですけれども、生物多様性条約のもとでの対応がLMOの方が先んじていて、移入種の方が少しおくれているというのは、やはり移入種の方が少し複雑な問題があるということ、あるいはLMOの方がこれからの話なのでまとまりやすかったとか、そういう問題があるのでしょうか。概括的な質問ですみません。

【事務局】正確なところはわからない部分がありますが、基本的にはおっしゃるように、結果としてなのですけれども、LMOに対する対応の方がまとまりやすかったということだと思います。逆に移入種に関しては結局ガイドラインという形になるわけですけれども、国によって状況がさまざまであり、またそれに対する対応をどうするかというのはさまざまで、そういう中から一定のルールをつくろうということ自体コンセンサスが得られなかったと、こういうことと理解しております。

【岩槻委員長】よろしいでしょうか。
(なし)

【岩槻委員長】それでは、先へ進めさせていただきたいと思いますが、本題、議題に入らせていただきますが、議題としては生物多様性への影響の評価についてという、まさにこの委員会の目的のことが、そのままきょうの議題ですけれども。
最初に、資料に基づいて事務局からご説明いただけますか。どうぞ、座ったままでも。

【事務局】資料1でございます。これは、前回、資料3としてお示しいたしましたものを、前回のご議論などを踏まえて若干修正したものです。
まず、前回の議論につきまして、資料4で主なご意見というのをまとめさせていただいておりますので、そちらをごらんいただければと思います。前回ご議論いただきました問題を4つぐらいにまとめさせていただいております。
論点の1つ目ですけれども、遺伝子改変生物に特有の問題はあるのかといった議論があったかと思います。結論としましては遺伝子改変生物、その技術に特有の問題というのはどうもないのではないかと。問題としては、生物多様性に与える影響という観点から見ますと、外来種と同じような生態系に与える影響というのは懸念されるのではないかと。どういうようなものを技術によって生み出して、それをどうやって使うのかということによって、生物多様性の影響が生まれてくるのだろうというような整理ができるのではないかなと思われます。
論点2につきましても、同じような話ですけれども生物多様性への影響の考え方です。ここでは、1つは、微生物というのはなかなか影響の評価というのは難しい点が残るという問題。それから生物多様性への影響というものの中には、人と自然とのかかわりといったものも含めて考える必要があるのではないかと。改変生物による影響というのは、それをどうやって、どんな形で利用するのかという、利用の仕方と一体として評価するという視点が必要ではないだろうかと、そういうご意見もいただいたかと思っております。
論点3、リスク評価のあり方についてですけれども、リスク評価というのはやはり科学的なベースに基づく議論であるべきだろうというご意見。ただ、そうはいいながら行政だけでリスク評価をすべてやるというのは難しい現状を見ると、専門家の委員会などというのが必要ではないかと、また、そういった委員会の中立性というのが重要になってくるのではないかと、そういったご意見をいただいたとまとめさせていただいております。
論点の4、これは大分いろいろご意見をいただいたかと思いますけれども、リスク評価を踏まえてどのような利用の決定をするべきなのかという点でございます。主にリスク、便益の評価というのができるのかどうかという話が大きく議論されたと思いますけれども、一つはリスク評価を踏まえて利用するかどうかという決定、判断につきましては、その合理性、公正性、透明性の確保というのが必要であると。リスク、便益に関しましては相対論では整理できない、それから得られる便益ともたらされる影響、リスクというのはタイムスケールが違うというので、同列に比較するのはなかなか困難ではないかというようなご意見があったと思います。
あとは、リスクがよくわからない場面というのが結構起こるのではないかと。そういう場合には市民も含めたコンセンサス会議などを利用して判断する手法も必要ではないかと。また、リスクと便益を判断する際に、それでしかできないのか、代替手段がないのかといった検討。それから、緊急時の公益侵害への対応といった観点も決定には必要ではないかと。
あとは、根本的な問題としまして、使った後にもとに戻そうという原状回復は非常に困難な事象であろうということから、決定に当たっては慎重な態度が必要だろうと。具体的には、例えば隔離して利用する段階から徐々に利用のスケールを広げ、モニタリングしながら、スケールを広げていくような、そういうような使い方をするなど、慎重な態度が必要なのではないでしょうかと、このようなご意見をいただけたかと思っております。
ご意見を踏まえまして、前回資料3としてお示ししたものを若干修正いたしまして、今回資料1ということで出させていただいております。主に前回お示しした資料との違いなどを中心に、これの前半部分の説明をさせていただきたいと思います。
この資料全体を通して変えましたところが1点あります。前回資料では、リスク評価、リスク管理といった言葉を使っておりました。リスク、便益評価といった使い方もしていたのですけれども、今回の資料ではそのリスクという言葉を影響という言葉に置きかえて資料をつくっております。この置きかえ自体についてもご議論いただければと思うのですけれども、リスク評価といいますと改変生物に何か特有な危険性というのがあって、それが実際にどのくらい、ヒトなり生物なりに暴露するのかといったことを定量化していくというような、そういうイメージを少なくとも私は持ってしまっていて、改変生物を環境中に放出したときの影響の評価といったものが定量的に本当にできるのか、それからその後のリスク、ベネフィット評価といったようなことも定量化を前提として言っているのだとすれば、なかなかこれは難しいのではないかと。リスク評価というような前提で考えていくとなかなか解決し得ない、出口に到達し得ないような問題が結構あるのではないかというふうに感じまして、今回、影響の評価とか影響の管理とかといった言葉に置きかえさせていただいています。
言わんとしている中身はおそらく変わらないと思うのですけれども、ただ、カルタヘナ議定書の中ではリスク評価をしリスク管理をしなさいというような言葉になっていますので、最終的に言葉をどうするのかという議論は、またそれなりにしなければいけないと思いますが、今の段階で遺伝子改変生物を利用してそれを生態系の中に導入したときにどんな影響が出るのか、それをどんな形で予測して評価できるのかという現実にできることに立って、影響の評価、管理の考え方というのを整理してみたいということで、言葉をいじらせていただきました。それが全般で変えさせていただいたところです。あとは個別のところで、幾つかご意見を踏まえて変えさせていただいています。
1点目、Iですけれども、生物多様性への影響が生じるプロセス。これは生物多様性を減少させる要因としまして、外来種、移入種のもたらす原因、影響と同じというようなとらえ方をしております。改変された生物を生態系に導入することによって生じる生物多様性への影響というのを判断する。具体的には何を判断するのかと申しますと、その改変生物を利用する地域、改変生物が利用される地域における野生動植物の地域個体群、それから微生物相が健全に維持されるかどうか。これを見ていくということが、生物多様性への影響の視点であろうというふうに整理させていただいています。
その際、野生動植物への影響だけではなく、生物多様性を基盤として成立している産業への影響。それから生態系の機能面も生物多様性の構成要素を支える基盤として考慮するべきであろうと。あとは、議定書で触れられている範囲内においてヒトの健康に対する影響というのも考慮していくべきであろうと。考慮点としては、3つほどの点がプラスされるだろうというふうに考えております。
環境放出に伴う生物多様性への影響のプロセス。これにつきましてはフロー図で一番最初のときから、お示ししておりますけれども、それを再度整理させていただいております。2ページ目にあります図1で、改変植物、改変動物を環境放出した場合に考えられる、危惧される影響と、その危惧される影響が生じるプロセスを整理させていただいています。
これは前回までとほとんど変わっておりません。野生生物種の捕食・競合・駆逐という、真ん中の下から2段目の四角囲み、これは前回2つに分かれていたのを1つに統合したというぐらいで、ほとんどこれについては変わっておりません。
図2の遺伝子改変微生物の環境放出によって危惧される影響、それに至るプロセスのフローですけれども、これについては何点か変えさせていただいています。一番右の危惧される影響の中に産業への影響というのが入っていなかったのですけれども、動植物の場合と同じように最終的に危惧される影響の1つとして掲げさせていただいています。それに伴って、若干、矢印が変わっているところがあります。
あとは真ん中のヒト・動植物への意図的暴露の段ですけれども、これまでは4つの四角が平行に並んでおったのですけれども、例えば真ん中の導入遺伝子産物、新たな代謝産物の産生、環境中への残留ということによって、それをまた、人が摂取したり、動植物が摂取する影響というのが当然考えられますので、下から上に行く矢印というのを1本ふやさせていただいています。当然、その水平伝達による新規微生物とかウイルスの出現といったことも、さらにヒト・動植物へのそれによる影響というのも考えなければいけないということで、下から上に行く矢印というのを1本ふやさせていただいています。
それから、生態系への侵入・定着のところですけれども、これまでのフローでは生態系への侵入・定着から土着の微生物種との競合のこの1本しかラインが引かれていなかったところですけれども、対象地点、対象時期の範囲を越えて環境中へ拡散し生態系へ侵入・定着したものがヒト・動植物へ暴露したり、新たな代謝産物の産生を起こしたりというような影響も考えられますので、その生態系の侵入・定着から、ヒト・動植物への非意図的暴露、新たな代謝産物の産生等に至る矢印をふやしております。全体の姿はほとんど変わっていませんが、矢印のつけ方を少し整理させていただいております。こういった形で影響の出方というのが整理できるのではないかというふうに考えております。
さらに生物多様性への影響の評価・管理の考え方という、4ページ目でございます。これにつきましては、前回、図3、影響の評価・管理の考え方ということで全体のフロー図、影響の評価・管理の流れという図3でございますけれども、これについてご覧いただいてご意見をいただいたところです。
ここの中で変えましたのが、リスク、便益評価というのはなかなか難しいだろうということもございましたので、真ん中のところにあったリスク、便益評価というのをとっております。上から改変生物の利用計画、情報収集、情報によって影響の評価をするといった次に、影響の可能性があった場合、リスク、便益評価に移り、その結果をもとにして許容したり、条件付きで許容するというようなフローに前回はなっておったのですけれども、リスク、便益評価の手法というのも、今の段階ではこういった手法でやるというものも明示できない、さらに定量化などということも、なかなか難しいという現状を見ますと、こういったフローという形でリスク、便益評価という手続を確実に行っていただきたいという形で示すのは、やや時期尚早なのではないかと考えまして、影響の評価の後、影響の可能性があった場合には、影響の管理の可能性があるのかどうかということで、影響の管理ができる場合には条件つきで許容、できない場合はこれは許容できないとし、便益の評価について、このフローの中から明示的に書くというのを避けた形になっております。
4ページの方に戻りまして影響の評価の基本的な考え方ですけれども、個別のケースごとに宿主、親生物となる生物の特性、それから導入された遺伝子の機能、改変生物の利用環境などを考慮して行うべきであるという前提に立っています。その上で、前の2ページ、3ページにありました、危惧される影響というのが現実に起こらないため、危惧される影響が起こることを防止するために、例えば動物・植物の環境放出による影響を評価するためには、1つ目、農地等の環境、限定環境下から出ていく可能性の評価。4ページ目の一番下の四角囲みで動物・植物の環境放出による影響の評価項目というのをここで整理させていただいておりますけれども、基本的には前のフローの四角囲みと同じことをもう一度書かせていただいているということです。
植物・動物に関しましては、一番最初に農地等の限定環境下から逸出する可能性があるかどうか。さらにそれが生態系に侵入して定着する可能性があるかどうか。それがヒトへの非意図的な暴露の可能性があるかどうか。産業用動植物への被害の可能性があるかどうか。有害物質の生産とその暴露による野生生物種への影響の可能性があるかどうか。近縁の野生生物種との交雑の可能性があるかどうか。微生物等による物質循環機能への影響の可能性があるかどうか。この8点ぐらいが評価すべき項目として挙げられるのではないかというふうに整理しております。
微生物に関しましても、基本的にはこのフローに従って、フローに書かれている事項が起こる可能性があるかどうかということを評価すると。これが評価すべき項目であろうというふうに整理させていただいております。
実際に、これまで国際的に確認されてきました評価の考え方というのと、このフローなり、フローに基づいてこちらで整理しました影響の評価項目の考え方というのがどんな関係になっているのかということをご説明するということで、資料2の方を用意させていただいております。
資料2は、(1)(2)(3)(4)となっておりまして、(1)でOECDが1993年に発表しました農作物に関する安全性に関する考察で述べられております農作物の環境安全上の問題ということで、どんな影響が出るおそれがあるのかということを整理したものです。
2番目が、EUの新しい環境放出に関する指令。2枚繰っていただきまして、(2)EUの環境放出利用に関する改正指令での評価項目というのがあります。最も新しい2001年の指令の中で、高等植物に関して環境放出利用でどのような影響が懸念されるのか、潜在的影響にどんなものがあるのかという点を整理したものがございます。
(1)(2)につきまして、これが主に農作物に関してどんな影響があるというふうに認識されているかというようなペーパーでございます。(3)(4)が微生物に関しての同じような資料です。
(3)につきましては、バイオ肥料としての微生物の利用に当たっての考え方ということで、1995年にOECDが発表しました報告書での、これは肥料に限定したものですけれども、微生物に関する潜在的影響としてどんなものがあるのかという整理です。一番最後のページになりますけれども、4番がEUの新しい指令、先ほどの(2)と同じ指令ですけれども、この中で高等植物以外ということで、微生物も動物も入っておりますけれども、環境放出利用によって、どのような影響が潜在的にあるのかという影響の種類を整理したものです。改変生物を使うことによってどのような影響が懸念されるのかということを整理したペーパーというのはなかなかございませんで、このOECDのものとEUの新指令の中に記述されているもの、このぐらいが目にとまったものでありましたので、それを整理させていただいています。
それぞれのOECD、EUのペーパーの中で整理されております環境への影響というものが、実際、今回、資料1の方で整理していますフローの中で、ちゃんとその影響についてフォローしているのか、カバーされているのかというようなことを整理したものが1から4、4つのケーススタディーというふうに考えていただければと思います。
簡単にご説明しますと、1番のOECDの農作物に関しての環境への影響について、懸念される影響として主に6点、OECDのペーパーの中では挙げられています。それがそれぞれ下に書いておりますフロー、今回の資料1で整理しておりますフローですけれども、そのフローの中でどんな形で実際にその影響というのがカバーされているのかということです。
例えば1番目の遺伝子の伝播ということに関しましては、今回資料1で整理させていただいていますフローでは、[1]農地等の限定環境下での栽培、それから限定環境下から逸出して生態系へ侵入する、こういうプロセスを経る場合もありますけれども、[1][2][3]を経由して、[5]産業用動植物への被害とか、[8]近縁の野生種との交雑といったような形で、実際に産業への影響が生じたり、生物多様性への影響が生じるというような形でカバーされているだろうということで、大体OECDのペーパーで整理されております影響の項目、それから(2)のEUの新しい指令の中で、潜在的な影響の種類として挙げられているものにつきましてはある程度今回のフローでカバーされているのではないかというふうに考えています。
1つ、しっかりカバーできていないのではないかという点が1点ございます。(2)のEUの環境放出利用に関する改正指令。2枚目の裏側でございますけれども、この中ではEUの指令の中で潜在的影響があるというふうに高等植物の利用に関して潜在的な影響があるという形で整理されておりますのが1から9まで一応整理されております。
1番、2番というのが、自然生態系の侵入性が高まるという、侵入性にかかわる問題。
3番が交雑性にかかわる問題。5番が有害物質を生産することによる影響、それから野生種との競合による影響。6番が人の健康への影響。7番が動物の健康への影響。8番が生物地球科学的プロセスへの影響と書いておりますけれども、下のフローでは微生物等による物質循環機能への影響、こういった形で1から8までは、ほぼ、カバーされているだろうということ、フローでは一応扱われている影響の種類であろうというふうに考えておりますけれども、9番、高等植物の栽培、管理、収穫技術の相違。これまでの栽培、管理、収穫の技術と違った技術なりを使うという場合にその技術が与える環境影響というのが書かれておりますけれども、これについては現在の環境放出による影響のフローの中ではカバーできていない点ではないかなというふうに考えられます。ただ、改変植物、動物の環境放出に伴って生じるフローという中で、この栽培、管理、収穫技術、違う技術を使うことによる影響というのをあらわすのはやや難しいのかなという印象は持っておりますけれども、直接にはこのフローではカバーできていない点かなと思っています。
3番、4番の微生物に関しましても、今回ちょっとフローを修正させていただきましたけれども、その修正しましたフローである程度、OECDのレポートで書かれている影響、それからEUの指令で潜在的に影響があるとされています影響のパターンというものは、カバーされているのではないかというふうに考えています。EUの環境放出利用に関する指令との対比では、一番最後の9番のところは農作物と同じで、利用するときの技術、特別な技術を使うときに技術がもたらす環境影響というのは、このフローの中では直接的には取り扱われていないというところが違っている点かなというふうに考えております。
そういう意味で、これまで遺伝子改変生物を利用することによってどのような影響が生ずるのかということで、国際的にある程度整理されてきた内容と、今回こういったフローをつくることによってそれとかなり違いはあるのかということで見てみましたが、これまで懸念されている影響というのは大体カバーし切れているのではないかというふうに考えておるところです。ちょっと説明が長くなりましたけれども、以上で終わります。

【岩槻委員長】どうもありがとうございました。
こういうふうに整理をしていただいたフローが完全だったら評価が完全にできるということなので、ここのところ非常に大切なことになるかと思うのですけれど、ご質問からでもコメントからでも、どうぞご自由にご発言をお願いいたします。どうぞ。

【市田委員】資料1について2つご質問があるのですが、おかげさまで大分私の頭の中もこれで少しずつ整理されつつある状態なのですけれども。
質問は、まず1ページに影響の視点として、利用される地域におけるその地域個体群や微生物相が健全に維持されているかどうかということですけれども、これはこの利用される地域でよろしいのですか。前回のお話にもあったと思いますけれども、例えば微生物などは、雨が降ったりすれば川に流れて、広範に全部広がっていくわけですね。後の議論の中では、利用される地域に限定して議論が行っていないのではないかという気もするのですね。ですから、そこはこれで果たしてよろしいのかなと思うことが質問の1点です。
それからもう一点ですけれども、これは5ページになりますけれども、影響の評価とこのフローがありますね。これ、ずっと調べていって影響の再評価が必要かということでイエスになって、また戻っていって、何か問題があったときは再評価が必要だということになるのでしょうけれども、それで再評価した結果、影響の管理が必要であるとなって、それで管理が可能性があるかといって、ないとなった場合に許容できないというところで完結するのですけれども、しかしその時点では既に環境中に影響がいっぱい出ているわけですね。出ている影響に関して、ほうっておいていいということにはならないのではないかなという気もするのですね。ですからそこの点があると、では何をするのだというのはまだよくわかりませんけれども、そこら辺はいかがでしょうか。以上です。

【事務局】1点目の、確かに利用される地域だけではないというご意見はそうだと思います。フローの中でもそれ以外のところを扱っておりますので、ご指摘のとおりだと思いますので、検討させていただきます。
2点目は、影響の管理の可能性で、最初の段階であり、なしで利用の決定を判断する段階でそこは慎重にやるべきというような整理でしかないのかなと思っております。生じてしまった影響をどうするのかということをこのフローの中に入れるのはかなり難しいと思いますので、ご懸念のような、実際には影響が生じてしまいました、それをどうやってカバーするのでしょうかということ自体は、仕組みの中では何か考えなければいけないというふうには思いますけれども、この影響の評価、管理の流れの中にそれを位置づけられるのかどうかということは、ちょっと今の段階でこうすればいいかなという案もないので、検討させてください。

【岩槻委員長】どうぞ局長、何か……。

【事務局】要するにこの図3の方は、今の段階で非常にシンプルにイエスかノーかでやっていったときに基本的にこういう流れになるということでございまして、例えばこのフィードバック回路のところがあり・なしで来ているわけですが、そんなスイッチのオン、オフということではなくて、中間のグレーというのはいろいろ出てくると思います。そういうときにどういうふうに対応するのかとか、あるいはその具体論を考えたときにだれがやるのだとかそういうことも含めて、もう少しこれを具体的に動かすにはどうしたらいいのかという検討のところで、またいろいろ考え方をお示ししていきたいと思います。

【岩槻委員長】よろしいですか。ほかは。鷲谷委員、どうぞ。

【鷲谷委員】前回、遺伝子改変生物による影響はそれを使う技術と一体のものとして評価されるべきというような意見を述べたのですけれども、作物などは栽培体系とともに評価しないといけないということなのですが、先ほどご紹介のあったEUの評価項目の高等植物の9というのが、それに当たると思うのです。例えば除草剤耐制の新しい作物を使うとしたら、それは通常の作物では使わないほど高濃度、あるいは頻度で農薬を利用するということで成り立つ作物ですよね。そうしますと、通常の作物以上に農薬を使用するということがその付近の生物多様性にどういう影響を及ぼすかというような評価がやはり必要になってくるのではないかと思います。今のフローだと入りにくいかもしれませんけれども、このEUの評価項目の9に当たるようなこともどこかで考慮された方がいいのではないかと思います。
それからもう一つ、生物多様性への影響を野生動植物の影響としてとらえているのですけれども、1万年ほどの育種の歴史によってつくられた多様な作物の品種、最近ではそういうものも随分失われてきてしまって、残っているものとか、農家が実際に栽培しているものというのはそれほど多くないかもしれませんけれども、そういう人類の文化遺産でもあって、生物多様性という範疇にもおそらく含まれると考えられるような多様な農作物品種への影響というのは、ここでは考えなくていいのでしょうか。ちょっとその点については、私もよくわからないものですからお聞きしたいのですけれども。以上です。

【事務局】1点目の利用する技術にまつわる環境影響というのを考慮すべきだという点は先ほど資料2でEUの方では懸念される潜在的影響の9番目ということで掲げられておりますので、考慮すべきだというふうには考えておりますけれども、このフローの中でどうやって位置づければいいのかというのは整理ができておりません。おそらく今、図1、図2でつくりましたフローでは、植物、動物を環境放出したときの影響がどうなるのかということをフローにしてしまったので、その植物を使う、使い方というのは、これになかなかしっくり入ってこないという現状があります。おそらくそれが考慮される段階というのは図3で、影響の評価をした上で影響の管理の可能性も含めて、利用していいかどうかということを決定する段階というのが出てくるわけですが、その中で考えていかなければいけないのだと思います。改変生物を使うことによって、使う技術、生物そのものの影響ではなくてそれを利用するときの技術による影響というのは、多分プラス面とマイナス面と両方あると思いますが、前の図3ではリスク、ベネフィット評価といった形で、かなりあいまいなところがあって、その中で一緒にそこも加味して議論すればというような言い方ができたと思うのですが、恐らくその利用の決定をする段階で配慮するべき、考慮するべき事項として位置づけられるのかなというふうに考えております。そういう意味では、影響の図1、図2のフローと図3のフローでカバーし切れていない部分がありますので、そこは少し修正できればというふうに考えています。
2点目の栽培品種の観点は、ちゃんと整理しておりませんので、フローの中では産業への影響というところの一部分なのだろうなという気はするのですけれども、産業への影響の実は一部が生物多様性の影響なのだろうなということで、例えばフローの図1の生物多様性の影響というのを下の3つの四角に、野生生物種の地域個体群の縮小、微生物相への影響、野生生物種の地域個体群における形質の変化と、この3つをくくって生物多様性への影響としてしまったのですけれども、産業への影響の一部分というのが、これに入るのかなと思ってはおるのですが、なかなか図の中で整理しにくいということもありまして、ちょっと整理し切れておりませんが、確かにこれまで産業利用されてきたものというものの中にも、生物多様性、保全すべきものがあるということは事実あると思いますので、そこはどんな形で入れられるか、もう一回整理させていただければと思っています。

【岩槻委員長】どうぞ、山野井委員。

【山野井委員】今のプロセスの関係で2つお伺いしたいのですが、先ほどのお話のように移入種は、既にいろんな影響が出ているということで、それに対して、今度のGMOは予防的なことを中心に考えますということなのですが、それに関連してこのプロセスとの関係なのですけれども、1つは移入種で起こっているいろんな問題というのは、こういう中に何か生かされているのかどうかという点です。やはり進歩ということが必要ですから。マイナスのケースが結構多いわけですね、移入種による生態系の変化というのは。ですから、プラスに生かされているか否か、それが1点です。
それから2つ目は、今後移入種についても、別の面で検討がされているとおっしゃったキーポイントが当然予防的ということですね。予防的ということになると、このGMOのカルタヘナと非常に近いわけですけれども、そこに考え方の違いがあるのかどうか。なぜこういうことを申し上げるかというと、実は産業界の中になぜLMOと移入種と区別するのかという根強い疑念がないわけではないからです。そういう意味で、今後、生態系に対する影響という立場で考えた場合に、特に予防ということになりますとどこがどう違うということになるのか、もし現在の検討の中でポイントがわかれば教えていただきたい。以上2点です。

【事務局】1点目の移入種、外来種によって、これまでいろんな影響が出て、生じている問題があり、それがこの組換え生物の影響を考える上でどんなふうに生かされるのかという点ですけれども、このフローをつくった段階では、実はどちらかというと移入種、外来種の影響というのを念頭に置きながら、現にどんな問題が起こっているのかということを踏まえて、フローを整理させていただいています。逆に言えば組換え生物がどんな影響を及ぼしているのかということを考えるのは、現状ではすごく難しいわけなので、むしろ、外来種、移入種が、現に日本の生態系なりどこか生態系に入ったときに及ぼしている影響、それで実際にはどういうマイナスを及ぼしているのかということを考えながら、このフローを整理しているというのが実態です。

【山野井委員】わかりました。

【事務局】2番目の点ですが、生物多様性に与える影響という意味では、組換えのものであろうが、そうでない外来種であろうが、及ぼす影響というのは同じではないのかと。それはどうやって分けるのかというご質問ですけれども、最初に説明しましたが、生物多様性への影響という観点では、移入種、外来種も改変生物も同じであろうというふうに考えています。
ただ、あとは実態の話しかなくて、国際的にはカルタヘナ議定書でLMOに関してはこれからおそらく利用が多く図られて、大量に頻度高く使われていくのだろうと、いろんなタイプの利用が考えられるのだろうというような観点から、これについては国際的に一定のルールのもとでやりとりしましょうということが決まってきたというので、そこはもう皆さんの合意が得られてルール化されてきているところだと。それ以外についてどうしましょうかというのは、確かに類似の問題なので同じような影響が出るのではないかと、それについてどうするのかということについては、先ほどご説明しましたペーパーの中でも、ではそれまで含めて一緒に生物多様性に与える影響というのは同じだから、同じような輸出入のルールというのを適用しましょうというコンセンサスは得られていないと。
これはなぜかというのは、よくわからないところではありますけれども、現にいろんな形で生物のやりとりというのは行われていて、いろんなタイプのものがやりとりされているという現状を踏まえて、それを規制するということは現実的かどうかという観点に立って多分なかなかうまくいかないだろうという思いが皆さんにあるのだろうと思います。そういう意味で国際的に、では同じようなルールで規制しましょうというコンセンサスは得にくいし、得られないのだろうと思います。

【山野井委員】現状で、カルタヘナはそういうことに限定されていますが、今後の対応の中でその辺どう違うのかというところが、やはり1つ関心になってくると思います。ただ、私なりの解釈でいうと、多分これが1つポイントかなと思っているのは、便益性については外来種の場合に大きな便益性をもっているかというと、そういうことを考えたかもしれませんけれども、余り大きくないのでは。ただこのLMOの場合は、非常に便益性というものをベースとしてやっていますから、今おっしゃられるように、今後、大規模にいろんな形で世界各国で行われる可能性があるので、影響の大きさが違うのかなという気はします。
ただし、生態系に対する影響ということだけを考えれば、本質的には区別していいのかなという気は正直言ってしますけれども、これ自体はLMOを対象とした議定書ですから、これはこれで結構です。

【岩槻委員長】大井委員、どうぞ。

【大井委員】先ほど鷲谷委員がおっしゃいましたことに関連するわけなのですが、第1回目の委員会でも私、申し上げましたが、もし生物多様性というものも人間社会における社会的共通資本の一種というようなものと考えれば、それはそういうものを脅かすものは、種々の人間活動、ほかの活動が非常に大きい。先ほど1例としまして、農薬だとかそういうようなことをおっしゃいましたけれど。ですから、ここのフローチャートにはそういうようなものをぽんと入れることはなかなか難しいので、資料1のIの前文のように含めるということにしたらいかがでしょうか。
例えば、生物多様性を減少させる要因という章がございますが、その3行目の野生生物を減少させる、絶滅させるといった影響は、種々の人間活動による影響とともに生物多様性の保全にとって、潜在的に大きな脅威の一つである、と。そういうようにしておけば、先ほど鷲谷先生がおっしゃったようなことも含まれてくるのではないかと、私には思われるわけなのですが。

【岩槻委員長】特にコメントされますか、よろしいですか。どうぞ。

【鎌田委員】2つほどあるのですが、今の例えば在来種、在来品種の多様性に対する影響って、理念的には大変よくわかるのですが、前からの議論で、本当に組換え体という、この限定の中で、それは何が具体的に起こり得るかということは逆に考える必要があって、例えば単に外来品種、日本にたくさんある、例えばカブなんかだとたくさんあります。でも別に組換えでなくたって新しい品種がどんどんできていて、そういう意味では駆逐されていると。まさにそのとおりで、そういう意味で、では組換え品種を入れたからそれがどんどんなくなっていくよということを言い出したら、それは一体、組換えに固有の問題なのだろうかということがやはり問題……。理念としては大変よくわかるのだけれども、具体的にフローとかに入れると言われても、多分余り現実的ではないだろうと。どこかで栽培しているものに交配して、そこに何か組換えの遺伝子が入ってきてしまうということならば非常によくわかるのだけれども。例えば産業上、新しい品種が有益で農家の人が一生懸命つくり出した、だからなくなってしまったよということまでをこのフローの中に入れようとするのは、それは余りにも無謀ではないだろうかと、それは経済活動そのものを全部縛ることになるので、そういうことでは多分ないであろうというふうに私としてはとらえたいと思っています。
それからもう一つの問題は、これは組換えの問題を論じるときにいつもそうなのですが、結局影響があるとかないとかということを何を基準にするのかというのは、いつも問題で、外来種も全く同じことなのですが、結局比較対照すべきものがなければ影響があるとかないといっても判断もできないわけですね。それでは、ちょっとでも何かあったらだめなのかと。
例えばソバをどこかの外国に輸入して栽培しようというときに、アレルギーの患者さんが出るかもしれない。組換えでなくてもそういう問題があるという中で、では、ソバは栽培していいのか、いけないのかという議論ですよね。ではそのときは、やはりそこで組換えの固有の問題は何かというのは、ソバを入れたときと組換えのソバを入れるときの違いは何かという議論がない限り、ここの議論にのってこない。外来種と組換え体を一応ここでは分けて考えなければいけないというのは大原則にしているので、そこら辺のところを常に意識しながら、やはり最終的には私としては、評価をするときには比較対照すべきものがない限り、結局はいいも悪いもないのではないかという、そこの判断が現実にはできなくなるだろうと。外来種との問題も、例えば本当に外来種で組換えで日本に入ったことがないのだったら、もちろんそこまで含めて議論せざるを得ないだろうと。例えば、トウモロコシは既に日本では農作物で栽培されているから、トウモロコシを入れていいかどうかという議論は多分ないだろうと。既存の入っているトウモロコシとどう違うのかという議論をせざるを得ないのではないですかという、そういうことまで含めての、このフローはできていると私は思っています。
先ほどの鷲谷先生の話でもう一つ同じようなことは、除草剤も確かに大規模に使うようになると、ある意味では組換え体を使うことによる間接的な影響というのはもちろん考えられるので、理念としては大変よくわかる。ただ、では除草剤そのものを使っていいのかどうかという議論は、それはまた全く別になるので……。

【鷲谷委員】全然そんなことは言っていないです。

【鎌田委員】ないですよね。だからそこら辺のところから、組換え体を使うがために今までよりも、何しろ大量に使うという……。

【鷲谷委員】そういう作物もありますよね。

【鎌田委員】そうですね。そうです。

【鷲谷委員】そういうことを前提にして開発されている作物の場合に評価すべきだと。

【鎌田委員】ですよね。だから、多分そういうことだと思うのですね。

【鷲谷委員】そうです。

【鎌田委員】そこら辺のところが、だから……。

【鷲谷委員】ちょっと誤解されているみたいな感じで。

【鎌田委員】いえ、誤解しているわけではなく多分そうだろうと思ったのですが、そういうふうに考えないとすべてが整合性がとれなくなるので。例えば除草剤の問題を単純に取り上げてしまうと、それは全く別な問題として、普通の除草剤でもまた多分、農水の方でそういう規則があって、それを使っていいかどうかという別の判断も入りますので、そこら辺との余り変な形で抵触はしない方がいいのではないでしょうかということだと思います。

【鷲谷委員】在来品種のことに関しては鎌田さんとほとんど意見は違わないのです。在来品種で問題になるということはやはり交雑の可能性、特に可能性が高いわけですから、交雑の可能性なのですね。
それで今のフローだと、問題になる交雑の対象として考えられているのが、野生の植物だけなので、それでそういうようなものも生物多様性の中に含めて考慮しないといけないのではないでしょうかという、そういう意見だったのです。
一般的に遺伝子組換え作物が使われると在来品種が経済的な意味で駆逐されるということを問題にしているのではありません。生物多様性という面から、交雑の対象として取り上げておく必要があるのではないかと。交雑してしまうとすごく長い時間をかけて開発してきた品種というものが意味がなくなってしまうわけですよね。そういう問題なのです。
品種を維持するというのは、すごく大変なのですよね。周りから花粉がかからないようにして栽培も、かなり気を使っていらっしゃるのです。だから、なかなか一般的なところでは品種って維持できなくて、山間部で細々と維持されていたりするものなのですけれど、実は人類の文化遺産としてはかなり重要だし、生物多様性という中にも十分入り得ること
なので、それでリスク評価の中に交雑可能性ということでは、そこまで視野に入れた方がいいのではないのかと、そういうことが声が上がってくるというのは、もしかすると余りないかもしれないのですが、すごくマイナーな営みとして品種の維持というのはされているとは思うのですけれど。

【岩槻委員長】事務局から、何かコメントされますか。

【事務局】鷲谷先生のおっしゃっていることは、栽培品種で植えているものと交雑とい
うことかなと思って……。

【鷲谷委員】そうです、大量に植えられているものとの交雑で……。

【事務局】それで、先ほど私のご説明も多分、舌足らずでよくわからなかったと思うのですが、図1の改変植物・動物による影響のフローの中で、実はそこを入れようかと思ったのですが、上の2つ目の産業動植物への被害という、ほかとちょっと並びの違う用語を使っていますけれども、この中に、栽培品種への影響というのは、多分入っていると思うのです。

【鷲谷委員】わかりました。そうですか。

【事務局】ここに入れているつもりなのですが、ただそこに生物多様性への影響の点々の四角がかかっていない。かけられないかなと考えたのですが、どう見ても汚い図にしかならないので、ちょっとそこは整理させていただいています。
それを生物多様性への影響の下の四角に栽培品種への影響というのを入れてしまうのは、これはこれでまた違うのかという気もしますけれど。そこは、とりあえず生物多様性の影響の四角の外側に産業の影響というのを置いてしまっているのですが、ご指摘の点などにあるように、もう少し整理が必要かなという気はします。

【自然環境局長】鷲谷先生のおっしゃった、ある特定のGMOを使うために農薬をいっぱい使わなければならないような、そういうGMOを使う影響。これもカルタヘナ議定書の範疇に入るのですか。何か僕はもっと単純に考えていまして、GMOが直接生態系とか、そういう生物多様性に影響を及ぼすということについてこの場は議論するのかなと思っていたものですから。例えば今の例で言うと、農薬をどれだけ使ったらいいかという議論は、ここの場で議論するのではないのかしらと思っていたものですから、ちょっと事務局に、内部で質問なのですけれど。

【事務局】議定書の中で明示的にそこは言っていないと思いますけれども。ただ間接的にはそういう影響が生じ得るということは、例えばEUの指令の中では、そこまで配慮されているということなので、考えなくていいかどうかというのは、国内でどうするかというときに1つ整理は必要だとは思います。

【自然環境局長】全体をまとめるときの射程にどこまで入れていくかということはあるでしょうね。

【岩槻委員長】ほか。どうぞ、加藤委員。

【加藤委員】質問なのですけれども、このフローの図の1、2ですけれども、生物多様性への影響という点線の枠がありますよね、それの外に入っている産業への影響を入れられないか、あるいは入れると汚くなるかとかというようなご議論がありましたのですけれども、これは別に最終的にこの点線の中だけを考えればいいという意味でもないのですよね。
だから、この点線でくくっているのは、非常にわかりやすい感じのくくりではあるのですけれども、結局、点線の外にあるものも、みんな最終的には考えなければいけないことになるという理解でよろしいのですか。

【事務局】はい、多分点線の中にあるのはコアであるという、生物多様性の影響という意味ではコアであると。この資料1の最初の方に書いてありますけれども、資料1、1ページ目の真ん中の段に「生物多様性を基盤として成立している産業への影響も考慮する」と、考慮点が幾つか書いてありますので、そこも考慮に入れて全体の影響の評価・管理というのを考えていくという考え方です。

【山野井委員】ちょっと質問、よろしいですか。

【岩槻委員長】どうぞ、山野井委員。

【山野井委員】今の図1、図2の確認ですけれど、微生物等による物質循環機能への影響から、人の健康の方に矢印が出ていますよね、一番上の方に向かって。下の方の図1の植物・動物の場合の意味と、微生物を直接、例えば環境浄化等に使った場合の意味と、この健康に対する影響というのは例えばどういう内容を想定されておられるのですか。危惧される影響がある可能性があるとは思いますけれど。例えばこういうことはあるのですか、私は、作物はよくわからないのでで伺いますが、土壌の状態によって、ということは微生物のマイクロフローラも違ってくると思うのですが、そういうことによって、ある作物が毒性を持ったり毒性を持たなかったりというようなことが今まで例としてあるのですか。もしそんなことがあるのだったら、これは大変ですよね。土壌の微生物をやったときに、全部、作物をもう一回チェックしないと。微生物そのものが影響するというのは、これはわかります。それは全くいろんな実験でできますからね。しかし、この図の示す意味がちょっとよくわからない。
あるいは、その環境の因子のいろんな化学物質のことを言っておられるのか。この図1と図2と同じ意味で言っておられるのかどうかということを含めて、私は見ているうちによくわからなくなってしまったものですから。

【事務局】図1と図2をそろえようとしたということが実はありますけれども、一番わかりやすいといっても、1つぐらいしかイメージできないのですけれども、例えば根粒菌の窒素固定機能が衰えてしまったというようなことを考えなくていいのかという話は、議論としてはあったのですが、それは産業への影響ということで。

【山野井委員】産業への影響はわかるのですが、健康へ……。

【事務局】健康に対してダイレクトに影響するような事例があるのかどうかということに関しては、あるかもしれないという、そういう意味合いです。ただ矢印を引かないというのもどうかなということがありましたので。

【山野井委員】わかりました。

【岩槻委員長】大井委員。

【大井委員】資料4で、ここの小委員会での主な意見ということを非常に手際よくまとめていただきましたが、例えば論点の3、リスク評価ということがございますが、リスク評価はサイエンスであるべきであると言っておられます。サイエンスというものをどういうふうに定義するかによってこれは非常に難しいのですけれど、サイエンスというのはある種の客観的な真実があって、それを前にした人間がひれ伏すというような意味でのサイエンスというか、そういうような真実を見つけるための手法としてのサイエンスというのであれば、私はそれはそうではないと申し上げます。
リスク評価というのは、ある特定の手法によってデータを出しまして、それについての解釈でございます。サイエンスではない、そういう意味においては。したがいまして、例えば、地球気象などという、こういう社会的共通資本がどういうふうに変動していくかということについて、いろいろな国の人々がみんな集まって、そしていわゆる科学的、サイエンティフィックなディスカッションを行ったその結果は、非常に解釈がばらばらになっている。
したがって、そこにあるのは国際的に共通の項目でたとえ実施したとしても、何も共通のコンセンサスが得られるということは言えない。解釈の背後にございますのは、それぞれの人間の持っている世界観であるとか、あるいはイデオロギーということであります。したがいまして、京都議定書についていろいろな見解が違ったということは、これは当然のことだと思います。
それから2番目に論点の4ですが、リスク評価を踏まえた決定のあり方ということにつきましては、決定にかかわる判断の合理性、公正性、透明性の確保が必要であると。これは私は大賛成でございますが、ただし、それが今申しましたような意味においてみんなが納得するような意味でのコンセンサスを得よう、それが得られるという、そういう前提あるいは期待を持っておられるのだとすれば、私はこの文言というのは非常にあいまいなものになってくる、不正確なものになってくるのではないかと思います。公正というような言葉1つとって見ても、各人各人が非常に違った解釈を持って使っているということは、私たち、よくわかっているわけであります。
したがいまして、この委員会の目的というのは、そのリスク評価に当たっての我々ができる限り、我々の知識、それから熱意を持ってできる限りの評価をするという、その手続性が大切だと。つまりできるかぎり精緻な手続というものを我々が作ったのだと。手続の手法をこのようにして確立したのだという、そういうことがこの委員会の主要な目的の1つだと思います。
それからもう一つは、そういうことについて当然いろいろな意見なり批判というものは出てまいりますので、それに対してできる限り皆さんが、多くの方が納得できるような説明というものが行えるように、それだけのデータをつくっていく、つまり説明責任を可能な限り果たす、これは私はこの委員会のもう一つの目的であろうかというふうに考えるわけでございます。

【岩槻委員長】最初の説明で水谷さんが、リスク管理という言葉を使わずに影響評価という言葉を使いたいと、きょうからそうしたいとおっしゃった。非常に漠然と説明をされたのですが、割合そこの説明の内容を今、大井委員が大井先生の言葉で表現されたのではないかというふうに思うのですけれども。事務局サイドも特に反論をなさるわけではないですね、今のご意見では。磯部委員、どうぞ。

【磯部委員】よろしいですか。今の点、私も重ねて質問させていただいて、その上で事務局からコメントいただければと思うのですけれども。やはり前回のリスクという言葉を影響という言葉に置きかえることの意味は小さくはないのかなと思うのです。お気持ちは、先ほどご説明を伺った限りではわかったような気もしたのですけれど、今の大井先生のご発言などを聞くと、特にリスクとか影響とかと、それ自体、いわば客観的、実在しているものと考えて、それをどう評価するか。評価というのはもっと人間の主観性を持った行為というファクターを含んでいるというふうに考えますと、ついつい答えが出ないのですが、いろんな言葉遣いはあり得るわけですから、それはどんな言葉遣いの仕方をしてもいいのかもしれませんけれど。つい、我々は、この論点3にありましたとおり、リスクの評価というのはサイエンティストに任せておけば、おのずからなる、客観的なる評価に合意ができ上がって、これは正しいというふうになるのだろうかと思いがちですけれど。社会科学はもちろんそんなことはないわけですけれど、自然科学だってそんなことにはならないと。多分にその解釈的な行為であるということを前提にやはり考えた方がよさそうで、そうすると結局さまざまな多様な解釈にさらすという手続を踏むというのか、どれか一つの解釈だけをアプリオリに特別扱いして、それで結論を導いてしまうというのが、その公正、透明、合理的でない手続ということになるわけであって、だからさまざまな解釈にさらして異論を受け付ける。それに対する説明をしなければならないと。そういう面倒くさい仕組みを用意しておいて、そこを通ったならばおそらく一番リーズナブルな結論なのだろうという、それはサイエンティフィックには正しくないかもしれないのだけれど、百年ぐらいたって見ると違っていたなどということがあり得るかもしれないけれど、いわば社会科学的といいましょうか、法律制度的には、よりましな手順を経て到達した、よりましな結論であると。
それぐらい何といいますか、居直った仕組みづくりを考える必要があるのかなというふうに、これは直観的には思っているのですけれど、どうもこのフローなどを見ておりますと、そう言っては失礼かもしれないけれど、影響の評価にしろ、これは考え方の筋を示したチャートですからわかるのですけれど、管理の可能性ありとかなしとか、そのデジタル的にどちらかに答えが出るような感じになっていますけれどもこれはなかなかそうはいかないはずで、ずっとグレーで進まざるを得ないのではないか。だとすると、これは新しい問題であるようでいて結局昔からある、ある種の社会的に危険性を持ったもの、かつ、有益性を持ったものをどの程度管理的な制度のもとに置くかという各種の警察的な規制法制ですね、許可制とか、要するにそういうもので考えていくしかないのかなとも思いますけれども。
ちょっと長くなって恐縮ですけれども、これは前提としてはやはり国が全面的に責任を持って、一種の許可制のようなものを、まず法制度的には禁止しておいて、個別の申請があって許可をする。許可には条件を付すことができるとか、そういうようなイメージで考えておられるのだろうと思うのですけれど、そういうことでよろしいですか。ちょっといろんなことを申して恐縮ですけれど、そういう許可の手続等のところで可能な限り、さっき言ったような、さらすというような手続を仕組んでいく、説明責任とか情報公開とかというようなことを仕組んでいくということになるのかなというイメージで考えたのですけれども。ちょっと漠然たる言い方で恐縮ですけれど、そちらでお考えになっている制度のイメージをもう少し言っていただけるとありがたいと思います。

【岩槻委員長】その前半のところなのですけれども、社会科学の人と話をしているとしばしばこういうところへ戻ってしまうことがあるのですけれど、自然科学で結論の無誤謬性というのを追求するのは、あくまでディシプリンの中で、ある問題点については、無誤謬性のない結論を出さないといけないという、そういう解析をやるわけですけれども、そういう結論をもとにして、それを現象にアプライするときには、やはり無誤謬性というのは追求できない限界があるわけですよね。
ですから、まさに大井先生がおっしゃったように、この我々の持っている知見の範囲の中でどこまで言えるかという評価にしかならないわけで。だからまさに先生がおっしゃったとおり、何度も評価そのものを後戻りしないといけない。だからこの表も、その意味では非常にきっちりした書き方になっていますけども、そういうふうに断定できないことの方が現実としてはむしろ多いのが事実だと思うので。それはこの遺伝子組換え生物の新しい問題に関してもそういうことが絶対ないとは、これは言えないことだと思いますね。あくまでそれが前提での議論だというふうに思いますけれども。
後半のところに関しては、事務局から何かコメントはございますか。

【事務局】どんな仕組みをというのは、まだ具体的には想定していませんけれども、安全性のチェックというのを受けないものを野外に放出したりということはいけませんよという仕組みなので、先生が言われた許可制というイメージと似ているというか、そういことなのだろうなと。

【磯部委員】ごめんなさい。影響の管理の可能性というのは大きなファクターですよね、その管理のイメージは、行政がトータルに丸ごと直営で仕切るような管理、体制をお考えなのか。そうではなくて、かなり民間の自律的な責任に任せて必要最小限のチェックという程度のことをお考えなのか。

【事務局】そこは何が必要最小限なのかというのは、まだよくわかっていないのですが、全部国がやるということは多分あり得ないだろうと思います。

【磯部委員】あり得ないですね。

【事務局】そこには当然、ベネフィットを追い求めて使おうとする人、作ろうとする人、いろんな人がいるわけですね。そういう中で環境中に放出されるということが出てくるわけですから、そういう動きからしてもそれを全部国が面倒を見るというよりは、その使う人あるいはベネフィットを追う人にどういうことをやってもらうか。そういうセクターに自律的にやってもらって、なおかつそれを行政が、基本的には国だろうと思いますが、チェックをしていく。
あるいは、追い得ないような、例えば後の方のモニタリングとかサーベイランスとか2つありますけれども、どこかで特定の、例えば組換え体の影響というのではなくて、とにかく影響を見るというようなサーベイランスというようなものは、法的な対応をしないといけないのかなと思いますが、いずれにせよ、お答えとしては、全部、国なり行政の方がやるものは考えておりませんし、主体というか、かかわり合いはできるだけ少ない方がよいのだろうとは思っています。

【岩槻委員長】その問題に関して、今のサイエンティフィックにということも含めて評価をするための情報というのがどれだけかということが、やはり情報として入っていた方がいいと思いますので、もう少しそこのところを、次の資料をご説明いただいて議論をそちらの方へ深めていけたらと思いますけれども。よろしくお願いします。

【事務局】資料1のご説明、先ほど途中まで6ページの上の影響の評価項目のところまでご説明しました。それ以降についてですが、収集すべき情報以下について、若干、ほかの資料も交えてご説明したいと思います。
何を評価するべきなのかという点につきましては、先ほどのフローに基づいて危惧される影響が起こらないためには何をチェックすればよいのかという観点で評価項目を整理させていただいたところですけれども、実際にはそれを評価するためにどんな情報を収集すべきなのかという点について、6ページの真ん中から下に書いております。
これにつきましては、別に用意させていただいています資料3をごらんいただければと思います。実際に改変生物の利用に当たって、届出なり申請なりということが行われているわけですけれども、どういった情報を申請者に求めているのかということを整理してみました。(1)(2)(3)(4)があります。
1がまたこれもEUですけれども、改正のEU指令において届け出に要求されている事項です。左側が高等植物以外、右側が高等植物の環境放出に関しての項目ということになっております。求めるべき情報、これは最終的には議定書でもある程度触れられていますけれども、基本的には親になる生物、受容生物と書いてありますけれども、親生物に関する情報。それからどんな改変を加えたかという情報。でき上がったもの、EUの場合の右側の高等植物に関しましてはDの改変植物に関する情報、改変してでき上がったものに関する情報ですね。それと、どこで使うのか、放出地点に関する情報、ここでは6条、7条に基づくというのは、環境放出利用をする場合に適用されるということですけれども、どういうところで利用するのかという情報。
それからEUの場合は、一番最後のGですけれども、モニタリングに関する計画なり、こういったものも届出者に要求しようというふうに考えています。高等植物と、それ以外のものも、基本的な項目についてはほぼ同じというふうに理解できます。
2番目、次のページですけれども、これは微生物に関して実際にどんなデータをアメリカで求めているのかというものを、これはまとめ切れておりません。どういうデータを求めているのかということは細かく記載されておりますけれども、基本的にはその親になる微生物、それからでき上がってくる微生物、それを例えば野外試験であればどこに放出して利用するのかと、そういったことがポイントになっているのかと考えられます。やや細かい資料で、まとめ切れておりません。
3番目、次のページは農林水産分野における組換え体の利用のための指針。これは現在、農林水産省さんが用いておりますガイドラインにおいて、どのような情報、データを申請者に提供してもらっているのかと。組換え植物の場合、微生物の場合、実験小動物の場合、組換え生ワクチンの場合、それぞれの場合によって若干違うものがありますけれども、基本的には親生物、宿主、宿主の属する生物種、親生物の特性、それからどのようなDNAを与えて、発現させようとしているDNAはどんなものなのか。それからどのようなベクターで運んで、親生物に入れるのか。でき上がってきた組換え体自体がどのような形で作り上げられ、そのでき上がったものが、親生物とどう違っているのかといったことを情報として出してもらうというふうに整理されています。
4番目が経済産業省さんの組換えDNA技術工業化指針における評価項目ですけれども、これも基本的に親生物の特性、それから組換えDNA分子の特性、それから組換えて作られた組換え体そのものの特性、こういった点についての情報を得ようということになっております。
カルタヘナ議定書において、リスク評価における一般原則方法論、考慮点というものが挙げられております。この考慮点というのが、こういう情報を得なさいという部分に相当するのだろうと思われますけれども、親生物に関する情報、組み込もうとしているDNAを供与する生物に関する情報、運び込むものに関する情報。どういう改変をするのか。改変された生物がどのようなものなのか。それと親生物とはどう違っているのか。さらには改変された生物をどうやって検出したり、特定するのか。あとは改変生物の使い方、それから受け入れる環境、どういう環境の中で使うのかという、受け入れ環境に関する情報。こういったものが議定書の中でもリスク評価の項目として求められているところです。
こういう現状を踏まえまして、資料1の方に戻っていきまして、資料1の6ページ、収集すべき情報といたしましては、議定書で整理されております情報というのがやはりベースになるのだろうということで、親生物に関する情報、DNA供与生物に関する情報、ベクターに関する、この数点というのを挙げることができるのではないかと。現に組換え体の影響の評価をやる際に、実際に求めている情報というのもこれとほぼ類似した形の情報を求めているということですので、実態上求められる情報、必要な情報、合わせて考えてこのような情報が実際の影響の評価には必要になってくるのであろうというふうに考えて
おります。
あと7ページ以降、影響の評価の手法、影響の判定、ここら辺は文字を一応書いておりますけれども、影響の評価の手法に関しましては、収集した情報に基づきまして評価項目に掲げられていることが実際に起こる可能性というのはどのくらい高いのか。その事象が起こったときの重大性はどうなのか。地域個体群及び微生物相の健全な維持に対して、それが影響が生じるのかどうかということを判断するということが実際の評価の段階で求められることでありましょう。
影響の判定につきましては、定性的なことしか書けないので、定性的に幾つか野生生物
の地域個体群への形質の変化とかというあたりを文字にしております。
あと8ページ、影響の管理と利用の決定、IIIのところですけれども、先ほどのいろいろ、ご議論のありますフローによりますと影響の評価の上で影響の管理と可能性を判断して利用のよしあしというのを決定していきましょうという流れになっていきます。ただ、その利用の判断に際してはやはり便益というのを考慮しなければいけないということで、リスク・便益の分析なり評価を行いなさいという形では明示しておりませんけれども、利用の判断に際して便益の考え方というのを加味していく必要がありますということはここに残しております。
以上、資料1の後半部分の説明ということでさせていただきました。

【岩槻委員長】どうもありがとうございました。そうしたら大塚委員、先にお願いします。

【大塚委員】先ほどの話と続きになってしまって恐縮ですが、その資料4の論点4のあたり、前回、磯部先生が発言されていて私も申し上げたことが、ある程度反映していただいていたのだと思うのですが、論点4の最初の丸のところは、さっき大井先生からお話があったようにこれは手続の話として申し上げたことだと思いますので、判断の手続の合理性、公正性、透明性の確保という、そういう趣旨であったと思いますので、そのように、もし、私なんかの発言を基礎にしていただいているのでしたら、そういう趣旨ですので修正していただいた方がありがたいと思います。
それからもう一つの論点3の最初の丸のところですけれども、リスク評価はサイエンスであるべきでというのは、これは別に私が申し上げたことでは必ずしもないかもしれませんが、一つの考え方としては、これは確かに厳密な意味でサイエンスではないというのは、先ほど大井先生がおっしゃったとおりだと思うのですけれども、最初からベネフィットと比較するのではなくてというぐらいの意味だったら私は理解できるというふうに思っています。最初からベネフィットと比較すると、そもそもリスクがどういうものかという判断がすっ飛んでしまうようなところがあるものですから、最初は例えば科学者の委員会でリスク評価をしていただいてその結果を見てから、もしリスクがよくわからないという場合にはベネフィットと比較するというような判断の仕方が一つのあり方ではないかというふうに考えております。ただ、これもリスクの評価とか、リスク、ベネフィットのあり方というものについてはいろんな考え方がありますので、それもご意見を伺いながら私ども考えていきたいと思っていますが、まずリスクがどのぐらいかということをご判断いただくというのが、本来あるべき姿ではないかと思います。
もちろん、さっきからお話があったように科学者の間でもリスク評価が違うのだというのは、確かにそのとおりなのだと思うのですけれども、それは社会科学、理科系の科学との間でお互いに押しつけ合っているようなところがあるのかもしれませんが、委員の中立性ということは当然、前提にした上で科学的な委員会を例えばEUとかはつくって、そこで判断を一応仰ぐような形になっているのですけれども、そこでも意見が割れることは当然あるかもしれませんが、そこでの多数決がどう意味を持つかということはわかりませんけれども、ただ割れたら割れたで割れたものが出てくるということに多分それなりの意味があるということで、そういう手続を公正で透明な手続としてとるということに大きな意味があると。
さらに、場合によっては市民に対して意見を聞くということもあり得ると思うのですが、そういう手続を経て判断していくということに意味があるということが前回申し上げたかったことですので、大井先生がおっしゃったことと多分、そんなに違わないのではないかと思うのですけれども、ちょっと補足させていただきました。

【岩槻委員長】どうぞ、岩熊委員。

【岩熊委員】今まで3人の委員の先生からリスク評価に必要な情報とか、それからリスク評価をどうするかということが意見として述べられたのですけど、私もカルタヘナの議定書の中の附属書のIIIにリスク評価はケース・バイ・ケースで行われるべきということなのですが、実は、これ、6項目なのですが、必要とされる情報は事例ごとによって異なるということになっておりますね。ですから、あくまで科学性のある情報を必要に応じていかに収集できるかと、こういうようなシステムをつくっておくのがやはり重要であろうと。
それから、カルタヘナの議定書の附属書の2番目ぐらいですか、リスク評価はとりわけ権限ある当局によって、生きている改変された生物に関し、その情報に基づく決定を行うために利用される。ちょっとわかりにくいのですけれども、評価に際していろいろな情報を考慮して評価を行えるようなシステムをつくるということ。
それから、科学者としては、考えられる、想定されることに関する情報をいかに網羅して提供できるか。それがいかにその時点だけでなくて後の時点、後日も批判に耐えられるだけの根拠を示せるか、こういうものをつくれればいいと思っております。
そうしますと、逆にいろいろなこういう細かいアセスの方法とかというのをつくってしまうと、かえって自由度がなくなってしまうかなというような懸念もあるのですね。ですから何か少し、現時点ではわからないのですけれども、今後予想されることに関する情報を提供できるというような自由度をある程度持たせておいた方がよろしいかと思っております。

【岩槻委員長】どうぞ。

【山野井委員】リスク評価の問題ですけれども、最初に、先ほど資料4のリスク評価はサイエンスであるべきだということは、前回私も意見として申し上げたような気がするのですけれども。意味は今、大塚委員のおっしゃったとおりで、プロセスとしてサイエンスという立場できちっとやる必要があるのであって、そこに便益性ですとかポリティカルな問題が入ってきますと非常に判断が複雑になってきますので、まずはそこをきちっとやるという意味でこれはサイエンスという言葉はちょっとぐあいが悪いのですが、サイエンティフィックプロセスをもって、そのときの最も進んだ、最も信頼性のある手法をもって評価のデータを出す。その後それをどうするかという問題、これはちょっと別でございまして、そういう意味で申し上げたつもりでございます。
ただ一つだけ、それに関連して今のいろんな情報の問題を含めて、前回もちょっと申し上げたかもしれません、気になるのは、評価する主体はこれは輸入する国なのですよね。そこのレベルという言葉は悪いのですが、どういう人たちがどれだけの情報を集めて、今申し上げたサイエンティフィックにいろんな人たちが便益性も含めてどうするか、論議するに値する、つまり世界中の例えばサイエンティストが見ても、ああ、これはもっともだね、この内容はもっともですね、と。「もっとも」というのをどう判断するかは別として、このデータをサイエンティフィックに見ても十分信頼できるデータですねというような仕組みというのはどうするのかということについて、全部その国にお任せして、それはノーです、例えばこれは危険があるからやめますと言ったらもうそれで終わりということなのかどうかという問題なのですけれどね。
国際的に、複数の国の間で動く話ですから、できるだけそういう、輸入する国の皆さんが評価される、評価というか、つまり、これはポリティカルな問題ではなくて科学的な意味での評価の中身の差がもしあるのだとしたら、それが極小化できるようなトータルとしての仕組みというのをやはり考える必要があるのではないかなというふうに私は思うのですが、それについてはどうでしょう。
ある国では通ったけれどある国では通らない、それは環境が違うので当然だとみんなが納得すればそれでいいのですけれども、どうも環境だけの理由でこうは思えないと。そうするとやはり、今言った評価の中身自体がちょっと理解できんといったときにどういう、何か例えば輸出する国がそれをクリアリングハウスとかというようなところに出すのがあるのかどうかという、その辺のことなのですが、いかがでしょうか。不公平があってはまずいというだけのことなのでが。

【岩槻委員長】むしろ、それに対します条約に合わせてどう対応するかということから一歩踏み込んで、条約の枠組み自体にどう対応するかというご意見かと思いますけど。

【事務局】例えば、参考資料の2の裏側に、輸出国が輸入国に対して、まずこういうものを輸出しますよという通告をするときに盛り込まなければいけない情報というのがあります。その中にKというのがあって、附属書IIIに一致した、以前の及び既存のリスク評価報告というのがありますので、要するに輸出国サイドとして情報として与えることは、もちろんできるというふうに理解はされると思うのです。ただ輸入国がそれをもとにしてどう判断するのかということで。

【山野井委員】実験も含めてやるわけでしょう。つまり、環境が同じではない。

【事務局】ええ、そうです。違うので。

【山野井委員】例えば作物で違いますから、そこでやらなければいけないですよね。

【事務局】自分のところに入れてどうなのかというのは、自分の国に照らして考えなければいけないということになってくるので、そこの判断について、どこまで輸出国サイドからというか、その判断自体、どういうデータをもとに、どのくらいの信頼を置ける判断が出されたのかということをチェックをするような仕組みということかと思うのですけれども。

【山野井委員】環境が違いますから、その国でやるのはこれ当然だと思うのですよ。ただそのときの、さっき言ったサイエンティフィックプロセスをもってされたデータの中身について、それを実際どうするかという問題はこれはちょっとまた別の問題なのですが、そのデータそのものをどういうふうに解釈するかといったときに、そのデータがどこの国でやっても同じようなデータが出ています、と。あとはそういう次のステップの問題ですというのならいいのですが、段差があるようなことが起こる可能性があるかどうかということを申し上げているわけです。つまり、重要なところが抜けてしまっているとか、要するに実験の内容ですよ。データ採取の、研究の内容です。そういうところはどうするのですか。

【事務局】例えば輸出国ではこんな評価をしましたというデータがあって、それをもとにして輸入国で、ではうちの国ではこれと交雑するような植物があります、本当に交雑しているのかどうかという実験をしてみましょう、と。それで実験をしてみました。それである程度のデータが得られて、これはちょっと交雑する可能性があるのでやめましょうという判断をそれぞれが、まず、するということですね。

【山野井委員】それぞれの国がするわけですよね。輸入国側の要請がないので、そこへ第三者的に入って、それが不公平性がないかどうかというチェックは、すべきことではないと思うのです。それはその国が責任を持ってやるという話であって……。

【事務局】できないときは輸出国に対して技術的にサポートしてくださいということで輸出国にかわりにやってもらうという仕組みもあるので、逆に輸出国の方でもし輸入国でちゃんとした評価に値する実験が、本当にできるのかなと、不安であればこちらでやりましょうかという国があっても……、あるのかもしれないですけれども。

【山野井委員】例えば、輸出国の人が一緒に行ってその国で一緒にやるなんていうことがあるのですかと。例えばそういうことなのですよ。

【事務局】それはあり得ると思います。

【山野井委員】輸入国の方の要請があれば。

【事務局】要請があれば。

【山野井委員】わかりました、結構です。基本はやはり、その国の判断というか、検討を重んずるということですよね。

【岩熊委員】その辺の情報はどの程度オープンになるのですか、輸入国サイドでの。そういう実例が蓄積されていけばすごく役に立つのですけれども、その辺を保障するようなシステムは、仕組みはありますか。

【事務局】特に秘密条項以外であれば、求められれば出すということはあり得ると思いますけれど。

【岩槻委員長】この附属書でいう以前の評価の報告を出すということは、輸出国は以前に輸出をしたときには輸入国がどういうリスク評価をしたというデータを持っているということが前提なのですね。ということは、そういう取引があったときには、輸入国は輸出国になぜ受け入れたか、どういう評価をして受け入れたかということを知らせているということ。

【事務局】いや、これは例えば自国の中で使っていいかどうかというときのリスク評価だという理解なので。

【岩槻委員長】そういう範囲のリスク評価ですか。どうぞ、加藤委員。

【加藤委員】多分、実際に動き出せばいろんなことがあり得るとは思うのですけれども、1つはクリアリングハウスという仕組みがあって、そこで各国がどういう評価をするかというのはそこに情報を出すということになっていますし、それから実際につくった評価も実際に評価した結果も一緒にクリアリングハウスに情報を出すことになっていますので、そういうところでいろんなことの調整ができる。それでもいろいろ起こり得るとは思いますけれど。

【岩槻委員長】鎌田委員、どうぞ。

【鎌田委員】ちょっと話を変えさせていただきたいのですが、この環境省で議論しているこれは、多分、日本全体の基礎から実用まで全部をカバーするというふうな形だと思っています。そのときにいつもひっかかるのは、便益という言葉の中身は、産業利用だと非常によくわかるのですね。基礎研究における便益とは何かというのは、それは大問題でして、要するにある遺伝子が環境に影響を及ぼすかどうかを調べたいということをもし考えたときに、要するに産業的には何の便益もないわけですね。組換え体が本当に環境にどれぐらい影響を与えるか調べたい、でも環境に出さなければ結局はわからない。ある意味では、リスクも予測はしても本当のところはわからない。産業的な意味での便益はない。そういうのはやるのかやらないのかという議論がやはり必要で、便益という言葉の中にそういう意味でサイエンティフィックなある価値を持っていますよという、結論を出すための価値を持っていますよとかというのも便益であると考えないと、今のような論理は成り立たないですね。要するに研究って成り立たないのですね。多分そこら辺もちょっと、便益という言葉の中に、どうも産業利用の方に行きがちなので、そうでない便益もあるのだよということを意識をしておいていただければなというのが1つです。
それから、さっきサイエンティフィックという言葉の意味がいろいろ出てきました。先ほどもいろんな議論があって、私もそれでもちろんいいと思っているのですが、あるデータを出すのは要するにサイエンティフィックでなければいけなくて、それこそ変な話なのですが、遺伝子組換えなんて嫌いだからそんなものを環境放出するなとかいう議論とまともにぶつかっても、それは意味がないと思うのですね。サイエンティフィックでなければいけないというのは、そういう意味だと思うのですが。だけど、そのときにいろんなところで、いろんな話が出てくるけれど、これはここだけの問題ではないのですが、やはり遺伝子組換えとは何ぞやと、一番考えなければいけないことは何なのかということは、これは環境省の方もぜひちゃんとPAという言葉はいいかどうか知りませんが、そういうところがないと、今の組換え食品なんかと同じで、何となく社会に出ると組換えだからという意見が出て、さっきパブリックコメントを求めるというような話もありましたが、そういうときにやはり組換えなんだから反対というようなパブリックコメントが圧倒的に多くなったときにそれは、では許すのか許さないのかという議論が出てくると思うのですね。そうではないのだというところは、やはりきちんとPAをして、ケース・バイ・ケースで判断する。要するに組換えだからではなくて、ケース・バイ・ケースで判断していて、その中での便益だとか、リスク、影響だとかというのを全体を評価して、こうだよという、そこら辺のところは多分、これを実際に運用して何かをしようとしたときには絶対に出てくる問題で、それはぜひ環境省の方にもそういうことなのだよということが世の中に広がらないと、特に公平性を求めてというところが成り立たないと思うので、これはお願いでございます。中身をいじくるとかではなくて。ぜひそういうことは最初からご検討いただきたいということでございます。以上です。

【岩槻委員長】事務局からコメントはございますか。伺っておきます。磯部委員。

【磯部委員】今のご指摘にもちょっと関係するのですが、先ほども申し上げかけたことで、一体どういう制度設計をするのか。国際問題はちょっと別にして、国内法制度として考えますと、いわゆる許可制的なものを考えますと、これ法学理論みたいになって恐縮なのですけれども、許可制というのは許可を受ける相手方に、もともと営業の自由とか、何々する自由とかというものがあるというのが前提なのですね、古典的には。例えば運転免許制度などというのは、人間はそもそも運転する自由があるのだと。しかし、勝手にやるとぶつかったりして危なくてしようがないから、一定の技術を持った人かどうかを試験をして、身体的資格能力なんかがあるかどうかとかチェックして、いわゆる基準を満たしたら今度は必ず許可をしなければならんという、そういう仕組みなのですね。つまり、許可をする側のその際の行政庁の判断が裁量という名のもとに恣意的になって、ある人には許可を与えたけれどある人には与えないみたいな不合理なことになってはいかんと。だからきつく縛って、一定の基準を満たしたら必ず許可がおりるようにしなければならんという形での縛りがかなりきついものなのですよね、普通の許可制は。
そういう自由な、この場合ですと遺伝子組換えをする自由というのがあるという前提で考えるのか、そんな自由はないという前提で、ないのだけれど特別に、規制があるから特別に何か組換え実験をするとか、そういう製品をつくる権限をあるいはそういう能力を、特にAさんならAさんに与えるという、こういうのは学問的には許可と言わずに特許といっているのですけれど。普通の、発明の特許とは意味が違いますけれど。
以上のは公務員試験の受験勉強をした方は、教科書で勉強されたという、本当にクラシックなやつです。だけど基本的な考え方としては、今日でも出発点にはなるわけで。現実に存在するさまざまな行政の介入チェックというのは、そんなにすっきり分けられるものではないのですけれど、しかし今のそもそも遺伝子組換えして勉強したり実験したり、おもしろいからやりたいというふうな自由はあるのか。さらにそれを使って金もうけしたいという自由が当然あると考えれば、それに対する制限は最小限であるべきだと。極力、まさにケース・バイ・ケースの判断ではなくて、一律の基準を満たしていたらもうオーケーよというふうにやるべきだというのが、健全な制度感覚なのだろうと思うのですけれども。
そうではなくて、そもそもこれは危険性推定の原則というようなものを立てて、およそ遺伝子組換えというのは危険かもしれないと推定されるのだと。だから、よっぽどの危険ではないということを十分に立証しなければ許可されないと。その立証のルールをこれもなるべくハードルを高くし、かつ、むしろ複数にして、許可権者とその判断する人間とを分ける。例えば独立性のあるコミッティーなんかをつくっておいて、そこをパスしなければ大臣は許可してはならんみたいな仕組みにしておくことは考えられるわけですけれども、そんなことをやっていたら、日本はもう置いていかれるぞという話になるのかもしれない。
とにかく、そこのところですね。危険性の推定とか、そもそも遺伝子組換えの自由なんてないというところから出発するのか。先ほどのいわゆる一般庶民の何かとにかく嫌だと、自分の家のそばでそんなことされたくないとか、あるいは確かに何のサイエンティフィックな根拠がなくても、危なそうだというようなうわさで、いわゆる風評被害なんていうのは生じるわけでして、被害としては現実なのですけれどね。そういったものも考えなければならんとなりますと、その基本的なところはぜひはっきりしておかないとならないということがあるだろうなと思います。

【岩槻委員長】どうぞ。

【鎌田委員】今のことに関して、今までの現在までの動いてきた仕組みだけをご説明しておきますと、今までは組換えの実験に関しては、ある意味、当初はまだ何の危険があるかわからないから一度全く全部止めた時期がありますが、基本的には組換えDNA実験は、もちろん生物だとか入れる遺伝子によって危険性はいろんな程度があるので、封じ込めるという言葉を使いますが、物理的に封じ込めたり、ある生物が外に逃げないとかというような、そういう封じ込めということを前提にして、この実験をやるのならばこの程度でいいよと。要するに原則禁止ではなくて、こういう危険があるから、こういう条件を付して認めましょうということで、それで今までずっと流れてきました。
それ自身も、ガイドラインといって法律ではなくて、やる人たちが自主的に守りましょうと。でも、まあ、そういう制度の中で日本では、文部省とか科学技術庁がそれぞれいろんな審査をして、実験室の中であってもそういう手順で全部認可制度、基本的にはやる権利を持っていて、やるということを否定はしない。ただし、これだけ危険な実験をやるのだからこういうふうな封じ込めをしなさいねという制限をつけて認めるというのが今までずっと流れています。
ただ、今回の問題はちょっと違うのは、では封じ込めはと言われると、自由な空間と言われると、封じ込めってないのかなと。そこのところが今までと違うところで、でも、だからある条件を付して、ではこういう条件のもとでやっていいですよと。1つの例として例えば、花粉が飛ばないという条件をつけていいですよという場合もあるだろうし、そうではない条件もあるだろうと。そこら辺の判断が多分今のような個別のデータを出すことによって、ある意味では物理的な意味での封じ込めのない世界の中にどう出すかという判断なので、最終的にどうなるか知りませんが、今までのような単に自主的規制ではなくて、ある程度国がしっかりと定めて認可制をとるということを多分、今の流れでは考えていらっしゃるのかなというふうに思っています。

【岩槻委員長】今の磯部委員のご指摘は、その遺伝子組換えをやるというのは全く人々が自由にやっていいことかどうかという、何かをつくって金もうけするというのが、だれでも自由にやっていいのと同じことかということだと思うのですけれども、そのことに関しては、僕はそうだという判断をしているのですね。そうだといいますのは、もともとこれは育種の1つの手法なわけですよね。昔から品種の育成というのはやってきていた。この間の鎌田先生のお話にありましたように、遺伝子組換えというのは自然でも起こっているわけですよね。自然でも起こっていることを人工的にやる。人工的にやるからいろんなリスクが出てくるということが今問題になっているわけですね。
これが育種の過程で、例えば交雑というようなことはもともと自然に起こっているのと同じようなことを人為的にやってきたわけですよね。やってきて、そこで余り極端なリスクが生じなかったから、それを文化が受け入れているという。そうしたら、例えば組織培養だったらやってもいいのかどうか。それから細胞融合ならやってもいいのかどうか、今のテクニックに応じた遺伝子組換えならどうかという、そういうことで1つ1つの技術が進歩してきているということですね。
ここでも何度も指摘されてきていますように、人為的にDNAを動かすということの影響というのはまだわかっていないものですから、だからその封じ込めだとかなんとかで、いかに安全かということを検証しながら進めてきているというのが事実であって、遺伝子組換えが非常に特殊なことが起こっているということではないのですよね。そこのところが、実は鎌田先生が今さっきおっしゃったような、もっと一般の理解を得ないと間違いのために変な風評になってしまうおそれがあるのではないかと。現に私たち自身はその遺伝子組換えなんて学校で習ってきませんでしたよね。まだそういうことがわかってなかった時代ですから。だから、我々世代というのはそういうことを知らないのが原則なのです。それはやはり知らないといけないということが1つありますよね。
これは、もっとわかりやすい例で言えばクローンで出てくると思うのですけれども、羊や牛でクローンができたからヒトクローンというのが急に問題になりましたけれども、クローンというのは、先祖代々、植物ではやってきていたことですし、それから、例えばカエルでクローンがつくられたなんてずっと古いことなのですけれども、それは実験でやられてもカエルのクローンは生産には結びつきませんでしたけれども、そういうことをやっていても余り世間では問題にならなかった。
ところが、哺乳動物であるということになると、そうしたら、ヒトもやれるのではないか。ヒトがやれるのならフセインがたくさん自分のクローンをつくるのではないかという、これも誤った風評なのですけれども、そういうことで話題になっている。そこをやはりサイエンティフィックにクリアしないといけない部分があるのではないかと思うのですよね。
ですから、今の遺伝子組換えに関しては、少なくても研究レベルでは研究をする自由があっていいというふうに思いますよね。それがそのこういう条約をつくって議論しないといけないというのは、まさにリスクがまだ十分はかり切れないから、リスクをチェックしてその取引をするというのがどうかということが話題になっているわけで、やっていけないという言葉はどこにも出てこないのではないかと思うのです。
ただ、やるためにはリスク評価ということが必要だというのが、ここで話題になっていることではないかというふうに理解しているのですけれども。

【磯部委員】いいですか、では質問。もちろん、その話はわかっているわけなのですけれども、さっきの自動車運転免許にしても、平安時代から牛車に乗っていた時代でも交通事故があったかもしれないのです。そういう意味では何ら数字的な変化はないわけですけれど、やはり量的にも技術的にも、格段の危険性が増しているわけですよね。自然にもあったことだと言えばそうなのですけれど。だって、今でも自転車に乗るのだって、酔っぱらって自転車に乗るのは、道交法上はいけないのですよ。しかし、それで捕まるということはめったにないですけれどね。酔っぱらって自動車を運転するということは、これは最初は昔はそんなにきつくなかったのが、非常にやはり事故がふえてきつくなるというのは相対的なものですね。

【岩槻委員長】いや、だから、私は自動車に乗るのは嫌いだから自動車の免許制度はやめるわけだという意見は成り立たないわけですよね。

【磯部委員】いや、その……、どうなのでしょう。

【岩槻委員長】もちろんおっしゃってもいいでしょうけれども。

【磯部委員】都心部などではあり得るという話になってくるのではないですか。

【岩槻委員長】それをどう制限するかということであって、ちょっと話題が違う。自動車というものはやめましょうということではない。

【市田委員】いや、ちょっといいですか。私はその風評被害の方にちょっと近いのですけれども。でも、自動車もやはりつくり方によっていろんな自動車とか強烈なものもできるから、そこに規制が必要になってくるのだろうと思うのですね。ですから、何かこの特に鎌田さんのお話しなどを伺っていると何でもないことなのだという気もするのですけれども、もう一回よく考えてみると、遺伝子組換えの技術、まあ私はよく知りませんけれども、品種の改良の範囲ぐらいでやっているときにはいいのでしょうけれども、その技術がどんどんいろんなところに行く力もあるのではないかという気もするのですね。とんでもない生き物ができてくるのかもしれませんし。それはわかりませんけれども。だからこそ、こういう議論があるような気もするのです。
それから一般的に私たちの方から見ていると、何かそんなようなものが出てくる気もするので。だから、やはり環境省としては特に環境に対する影響というところで規制をかけていってほしいという気がするのですけれど。研究はご自由ですけれども。

【岩槻委員長】いや、そういう意味で、だからリスク評価をして、リスク評価にかかったものでないと通しませんというのは、このカルタヘナ条約の精神ですよね。

【市田委員】ですから、それは、特に正しいと思っているのですけれども。

【岩槻委員長】絶対必要なのです。それなしにノーリスクに何でもやってくださいと、
それはないわけで、そういう自由はないわけですね。

【自然環境局長】よろしいですか。磯部先生のご指摘は法制度をつくる上では、非常に根源的な問題点のご指摘だと思うのですね。ここは本気になってちゃんと考えておかないと法制度はきっとできないと思うのです。だけど、多分ここの議論の中ではある程度の危険も予想されるので、そこをどうやって評価しながら環境への影響をできるだけ小さいものにしていこうかという点では、そんなに大きな議論ではないと思うのです。
現実の世界から見ると、移入種の問題と比較して、移入種は今、本当に何もない状況の中で原則自由の中で動いてきているわけですね。若干、農産物とか家畜とかに何か影響があるようなものについては止めている。それの流れは根本的にはひっくり返しにくいのかなとは思っているのです。そういう現況を踏まえながら法制度をつくっていく、その上で今の磯部先生のご指摘というのはやはり根源的にどういうふうに考えるかというと、論点が人によって全然違う、ここが一番難しいところなのですけれど、全然違う意見があると思うのですけれども、法制度のときにはそこは決めていかなければいけない問題。だけど、今ここで技術的な議論をするときにはそこまでしなくても何とか方向づけはできるかなと。
法律を書くときの条文の書き方とか、許可にするか登録にするかとか、そういう意味になってくると、ぎりぎりした議論が必要になってくると思います。

【岩槻委員長】どうぞ。

【矢木委員】ちょっとよろしいですか。ちょっと私もコメントさせていただきたいのですが。私は組換えをつくっている者なのでかなり理解はしておるのですけれども。従来は、ヒト成長ホルモンとかインシュリンとか、要するに糖尿病が治ったということはメリットというのでしょうか、医薬の中では非常にメリットがあったと。そういうので私も当時は、これはすばらしいと。ところが、最近は、今度はこれを野外に使おうというようなことになってきましたので、ちゃんとそういうルールの中でやっていたのですけれども、そのルールはしっかりしていたのだけれども、今度は野外でやるときになると、例えば光る猿をつくるとか、2倍の豚をつくるとか、そういうのが今どんどん出てきてしまいますと、私もこれでいいのかなという、やはりそういう疑問になるわけですね。
閉鎖系の中でこれは大丈夫だろうと思ったのが、非常にいろんな技術が何でもできる。
もう雄雌が要らないのだというようなことになってしまいますと、本当にこの技術はすばらし過ぎると。逆に言えば我々の理解を越えてしまっていると。そうすると、やはりリスクを評価しなければいけないなという気に私もなっているのですね。
それで、資料の1のところなのですが、例えば図の3のところで先ほどもリスクの評価は難しいから影響の評価に変えたのだとおっしゃったのですが、この中でも表3のフローの中でも、例えば影響の評価をしたときに影響なしとか、ありとか、100%あり・なしというのは難しい。ですから本来の考え方はやはり、例えばバイオ微生物を使って環境を浄化しようとした場合には、何か窒素とか燐とか微生物を入れるわけだから、必ず影響が出るわけですよね。汚れた環境をきれいにするのだから少々影響が出てもいいのではないかということと、あるいはその影響が出ているではないかと言われてしまうともう使えない。
そういったときにやはり、リスクはこれだけあるけれどもという、そのリスクの大きい少ないというような考え方をぜひ入れていただいて、必ず何かリスクはあるのだ、でもそれは非常に小さいから大丈夫なのだというような、何かそういう考え方を入れて、影響なしというのではなくて、リスクは少し、ほとんど要するに問題ない範囲であるというようなことが出てくればいいのかなという気がしているのですね。
その中で先ほどちょっと図の2のところで、今の資料1の図2のところなのですが、山野井先生の方から微生物等による物質循環機能への影響がどうしてヒトの健康への影響があるのだろうかと。私も言われてはっと気がついて考えて見ていたのですが。要するに微生物なんか、従来の考え方、評価は、こういう生物多様性という考え方ではなくて、生態影響がどういう影響かということだったので、そうすると従来は個々の魚などで1つ1つ調べていたわけですね。それではなかなか評価ができないので、それでは、機能で、ファンクションでやりましょう、物質循環機能を調べましょうと。機能を調べることによって、では機能が何だということで、微生物の分野ですと窒素のサイクルとか炭酸ガス、ですからCOがどんどんできて温暖化になってしまうとか、窒素がどんどんできて温暖化ガスができてしまうとか、あるいは微生物によって硝酸がどんどんできてしまうと逆にそれは飲み水として問題だとか。
それから、先ほど窒素の話が出ましたけれども、窒素を固定する微生物が組換えでできているわけですよね。そういうのをまけばどんどん窒素を固定してしまって、何か生態系の循環が変化するのではないかというような問題があるので、やはり人の影響へ、そう大きくはないけどあるかなというような気はしているのですけれどもね。
ですから、そういう中でのリスクというのをやはり何か少し、非常に難しい話ですけれどももう踏み込まなければいけないのではないかと、そんな気がしております。

【岩槻委員長】その意味では、リスクという言葉を影響という言葉に置きかえられたというのは、おっしゃったようなニュアンスが多少出てきているということではありますよね。どうぞ。

【大塚委員】おっしゃるようにリスクは一定リスク以下であればいいということなので、ゼロリスクということはあり得ないですから、おっしゃるようにリスクが小さければやってもいいという場合もあると思うのですけれども、しかし小さければいいということで不確実であればベネフィットとの比較をするという、それが一つの整理ではないかというふうに思っています。
それから、先ほどからいろんな議論があるのですけれども、研究のためだったら例えば環境への放出をするのは当然だというわけには必ずしもいかないと私は思っていて、それは多分、憲法だと学問の自由と環境権の対立か何かの議論になるのかもしれませんが、それは、例えばブラックバスを学問的な観点から放流するというのは、後になっていろんな問題を起こすわけですよね。そういうことがありますので、学問的観点であってもリスクの評価というのはやはりせざるを得ないのではないかという、もし環境に本当に放出するのであればリスクの評価というのはせざるを得ないというふうに思っていますけれども、それは一般的な話です。
それで、先ほどの磯部先生のご議論というのは非常に明確で、私も大変おもしろいなと思いますが、カルタヘナ議定書との関係では、これはやはり予防的なアプローチをカルタヘナ議定書がとっているということがこれと関係していることで、だからどっちだというのはすぐには言えないと思うのですけども、全く当然自由で、最小限の規制で足りるというわけでは必ずしもないというのがカルタヘナ議定書の趣旨ではないかと思います。
ただ、逆に危険なことが推定されてというところまでいくとは、私もそこまでは思ってはいませんが、必ずしも全く自由なのが当然で最小限の規制で足りるということではないのではないかというふうに、議定書の趣旨だとなるのではないかと思います。

【岩槻委員長】よろしいですか。私が自由と言ったことの意味がちょっと誤解をされているみたいなのですけれども。今おっしゃったような意味で自由だったら、カルタヘナ条約は不必要なわけですよね。研究の自由というのも、自由というのは何をしてもいいということではなくてやはり研究者の倫理というのがあると思いますので、研究者としての責任のもとでの自由だと、当然それはあると思います。

【大塚委員】いえ、倫理だけではなくて、法的な意味ももちろんあるのですけれども。倫理に任せるわけにはいかないところもあるものですから。

【鎌田委員】先ほどリスク評価しないなどと言っているわけではなくて、もちろんリスクは評価をしながら、でも予測不能だからこそ実験をしなければいけないという部分があるので、そういうのは研究としての便益というか価値であるということを認めない限り、要するにここでいう便益というのはなくなってしまうようなケースがありますよということを指摘したところなのです。
それ以外のことでもう一つ、今の全体の議論の中で、さっきの例えば資料4の論点4の上から5番目の代替手段の検討とかいう、多分、今のは法律論にも実際よくかかっている問題で、どういうことかといったら組換え食品の安全性の議論をするときに、例えばアレルギー性だとか毒性を調べろと来るわけですね。その前提として、どうして組換え食品の安全性を調べなければいけないのか、そんなもの認めるべきではないという人が出てきてしまうわけですね。それは変な話で、要するに、そんなの、日本は食料が余っているのだから組換え食品なんか使うなという議論をしてしまったら、これは何も始まらない。現実問題、アメリカからの例えば食糧だとか全体の中で動いていることで、そういうのとある意味では似ているところがありまして、代替手段ということに関しても、例えば組換えだと、数字で言うと1億円でできる。でも、それ以外の方法をどうしてもやるとなると50年かかって100億円かかる。50年待て、100億円出せということだと、現実に評価をして余り問題がないのならば、代替法があったってそれは使っていいのか悪いのかという議論もきっと出てくるのですね。そこら辺が法律化するかどうかの前提で、組換えは本来悪であるからこんなものやめてしまえという議論からいくのか、今のようなことも含めて、その代替法についても評価はいろんな仕方があるのだという中で動くのかが多分大きな違いかなというふうに私自身は思っています。

【岩槻委員長】僕が余り議論せん方がいいかもしれませんけれども、今のそのご意見は磯部先生のおっしゃったみたいに、ちょっと踏み込み過ぎていると思う。僕は個人的に言いますと、組換え食品なんかは入らなければ入らなくてもいいのだと、それの方がいいという感じを持っている人間なのですけれど。だけど、それはそれを入れようという人を禁止することではないという、それはさっき申し上げた理由からそういうことが出ているわけで。
ちょっと話が飛躍するかもしれませんけれども、僕は最近サッカーに関連して韓国人が犬を食べるのはけしからんと、サッカーのワールドカップの間はやめておけという人たちがいるみたいですけれども、そういう人たちはモスリムの人のそばで結構平気で豚を食べたりしているわけですよね。それはいろんな文化で、文化がそういうものを持つというのはやはり自由だと思いますし、組換え遺伝子に関しても僕が自由と申しますのはそういうストーリーの中で、科学的な必然的な発展の中でこれはリスクのことがチェックされながらここまで進歩してきているものだから、だからリスクさえ評価できれば、それはそういうことをやりたいとおっしゃる方があればやる方向で、何もそのやること自体を気にすることはないのではないかということを申し上げているのであって。ただ、それは好みがありますから、嫌な人は嫌とおっしゃって、僕はいいと思うのですが、私は絶対食べませんという、そういう方があってもそれはおかしくないと思うのです。そのためにたくさんお金を払うということになってもそれはその人の好みなのであって、そういう自由まで制限することはないと思って。

【鎌田委員】いえ、そういうことではなくて、要するに評価するなというような意見が出てしまうのですね。申請をすること自身もおかしいではないかという意見になってしまうのでそういうことではないですね。

【岩槻委員長】だから、それはそういう、また一方で自由が認められるのではないかと思うんですね。

【鎌田委員】言う自由はもちろんあるわけですが。

【岩槻委員長】そのリスクさえ評価されればという。そのことを今ここでは論議しているわけですよね。

【鎌田委員】ええ、私もそう思っています。

【市田委員】それで、先ほどから出ている外来種との関係なんですけれども。GMOが生態系に入っていったときの影響とかそういうのは、多分外来種が入ったときの影響と似ているだろうと。それはそうだと思うのですね。だけど一番根本的に違うのは、恐らく先ほど光る猿というお話がありましたけれども、もしその遺伝子を変えたものと同種がそこに生息していた場合には区別がつかない。だから、その対策が立てられないということがあると思うのですね。その点は相当、根本的に違うことだろうという気がするのです。
特に動物の場合は、囲い込みということをやったとしても原則的に逃げるわけですね。
逃がす人もいるし、逃げるわけです。だからそれは広がっていくものだと思うのです。そこの部分がこれから特に管理の問題を考えたときには重要になると思うのですが、そのときに例えば質問なのですが、組換えをしたときに外から見て明らかに違うように何かやっておくということはできるのですか。

【鎌田委員】技術的にそういうことを義務づければ別ですが、こういう色がつくものにしろとかというのは、そういうことは普通はやらなくて、ただ、では絶対区別がつかないのかと言われるとそうではなくて、今の組換え食品なんかの場合には組換え体であるかどうかは、入れた遺伝子の配列を持って、一応PCR等をやれば、検知できるようになっていまして。だから、日本には組換えのトウモロコシがどれぐらい流通していますよとか、認可していないのが入っていましたよとか、新聞に載るのはそのせいです。

【市田委員】ですけど、それは顕微鏡で見たりなんかすれば、そういうのはわかるかもしれませんけれども、野外でその個体数をコントロールする、しないと考えたときには、区別できませんでしょう。

【鎌田委員】でも、一番簡単な方法は、発現たんぱく質の種類によりますが、エライザ法という方法で一応たんぱくでごく簡単に見分けるような方法も、もちろんあります。だからほんのちょっと、動物の場合はどうですかね、植物の場合に葉っぱを1枚持ってきてすりつぶして、ちょっと調べればわかるという方法も、もちろんあります。

【岩槻委員長】それから、余分なことは言わない方がいいかもしれませんけれども、輸入するときにラベルは関係あるとか……。

【鎌田委員】もちろんそれは言い出したら切りがないのですが。多分ここには余り書いていないのですが、組換え食品についてOECDやコーデックス委員会なんかでも議論されていますが、トレーサビリティーといって、ある認可されている組換え食品かどうかを追跡できるかどうかということの議論が今、世界的にはやられていまして、最終結論は先週あったのを私も正確には聞いておりませんが、基本的にはトレーサビリティーはある程度確保される形でしか、組換え食品なんかは認められていかないだろうというふうに聞いておりますので、そういう意味で正確に、科学的にという意味なのですが、すりつぶして調べたりすれば組換え体であるかどうかはわかるというのを前提としています。今の組換え食品なんかは。

【市田委員】食品ならそうだと思うのですけれども、これから動物がいろいろつくられていった場合にそれが逃げ出したらば、区別がつかないですよね。

【鎌田委員】外見では、ですね。

【市田委員】でも、外見で区別がつかないと、コントロールなどの対策の立てようがないと思うのですよね。

【加藤委員】多分その外来生物と組換え生物は同じようで違う、今おっしゃったように組換えの場合は区別がつかないかもしれない。それはそうかもしれないのですけれど、また別の意味からいいますと外来生物の場合には、全く今まで日本にいなかったものを持ってきたときに、それが一体どう挙動するかというのを事前に評価するということは非常に難しくて、それに比べれば組換え生物の場合にもしそれが外来でなければ、もともといたもののここの部分をこう変えたということなので評価はしやすいという面もあるかもしれない、あるだろうと思います。
ですから、そういう意味では、管理という意味から、もしまずいものが逃げてしまったときの管理というふうに考えれば難しいかもしれないのですけれども、事前評価という観点からいえば、全く新しいものが入ってくるよりは既に土着しているものの組換え体の評価の方が易しい面もあるだろうというか、かなりそちらの方が多いのではないかというふうには思います。私は個人的には。

【矢木委員】それに加えてよろしいですか。微生物なんかの場合も、要するに外来から来た場合だと区別ができないからわからないのですが、組換え体はどう挙動しているかというときにマーカー遺伝子というのを必ず入れまして、それがあれば組換え体だというふうにしていますので、例えば今ですと非常に分析が早くなったので、半日ぐらいあればこの水の中に組換え菌がいるというのを、そういう特定の微生物についてはもう検出ができるというようなPCR法というのができていますので、通常、組換え体の場合はやはりそういうマーカーの遺伝子を普通は必ず入れます。それがやはりたんぱく質をつくってしまうので、それがアレルギー源になるのだというのが1つの問題になっているので、ではそれは落としてしまえばいいではないかということで、落とすことになると思うのですけれども。ただ、その場合でも、特定の遺伝子が入っているから、それで探すことはできるので、挙動を調べる場合、先ほどありましたけれども研究レベルではぜひマーカーをつけて、どう挙動しているかというのを調べないことには話が進まないのですよね。
だからそういう意味で、ぜひ研究のレベルではどこかやれるような場所というか、システムを認めてもらいたい。

【市田委員】半日でわかるのは非常にありがたいのですけれども、ただ実際には例えば今、外来種について、野鳥公園をつくって池をつくると、必ずブラックバスなんかが入れられてしまうのです。必ず入ってしまうのです。それがもうみんな魚を食べてしまうわけですね。そういうときにどうするかというと、最初から池はプールのようにかい堀できるようにつくるわけです。水をざーっと抜いて、その中からブラックバスをとるわけですよ。半日かけて検査しているという時間がやはりないのですね。
だから、野外に出てしまうと、研究はいいかもしれませんけれども、生態系との関係となるとすごく難しいかなと思いますことと、それから移入種はそれで入ってきていいと思っているわけではございませんけれども、勝手に入ってきているわけですね。本当は環境省さんにはもっとしっかりやっていただきたいと思っているのですが、それでやはりその種類の近いものほど競争は激しいですね、あるいは地位が近いほど。ですからやはり遺伝子をちょっと変えたというものが出てくると、それはそれなりのいろいろな問題があるように私は思いますけれども。

【磯部委員】私もこの後ちょっと出席ができないと思いますので、あと一言だけ申し上げておきたいのですけれど。この問題、従来からの古典的なというんですか、伝統的な行政法の仕組みではうまく対処できないのではないのかなというのが基本的には私の気持ちでして、だったらどうしたらいいのかというのは、答えがわかっていればいいわけですけれど。
この遺伝子組換え技術に限らず、ありとあらゆる場合、テクノロジー的なものですが、これまでの日本の行政法の仕組みというのは、結局、行政は霞が関は答えを知っていて、何が国民の福祉に最適であるか、何が公共の利益であるかを知っているという前提で組み立てられてきた。だから、無誤謬とは言いませんけれども、あたかもそうであるかのように、一たん許可してしまったら今度はなかなかそれを取り消すなどということはできないという仕組みにできてしまっている。これは今、がらがらと変わりつつあるわけですけれども、今後ますます行政のリソースが、人の面でも、金の面でも、絶対的に変わらないでしょうから、こんなありとあらゆる技術に対応して目を光らせてというような、仕組みを幾ら紙に書いても実行できないということになりますよね。
ですから、ちょっと発想を変えていく必要があるのだろうと思うのですけれども、そういう意味で、極力、さまざまな民間の、あるいは企業のパワーなり学者のパワーなり、そういうものをあるいはNGO、NPO的な関心のパワーとか、そういうものを極力システマティックに組み込んで、かつ、一たんは許可してみたけれど、もし何か違った情報が出てきたらすぐやり直すというような必ずしもその都度のこの決定は完全ではないぞということを前提にして、あるいは実験的にこうしてみるけれど、一定の情報があったらやり直すとか、そういうことがもう最初から予定されているようなシステムをつくるべきだと。これは、言うのは易しいのですが、霞が関で培われたもろもろの意識からすると、とてつもなく難しい話なのですけれど。しかし、材料としてはこの辺から始めていく、あるいは環境省から始めていくというのが、恐らく歴史的使命なんだろうと思うわけで。
ちょっと大げさになりましたけれども、やはりそれぐらいの課題なのではないかなということをちょっと申し上げておきます。

【岩槻委員長】その意味では生物関係は特にテクニックの方が進んで、バイオエシックスの方が多少、一歩も二歩もおくれているという、そういう現実は関係者みんなが意識しているところなのですが、それを例えば法体系に生かすというようなときには、そこの落差というのはやはり念頭に置いていただくというのが大切なことだと思いますし、非常に大切なご指摘だというふうに思います。
まだまだ議論はあるのかもしれませんけれども、2時間ぐらいが適当だったと言っても2時間半過ぎましたけれども、他省庁で進んでいる状況というのをちょっとご紹介いただけるようなのですが。お願いいたします。

【事務局】資料5で1枚紙を、表裏のものを用意させていただいております。
現在、環境省のこの小委員会のほかに、農林水産省さんの方では農作物の環境リスクに関する懇談会ということで、11月から議定書対応、主に農作物のリスクの管理ということを中心にご議論いただいているところです。
裏側ですけれども、経済産業省さんの方では産構審の遺伝子組換え生物管理小委員会というところで、主に鉱工業分野での組換え生物の管理のあり方ということで議定書の対応措置の検討を、昨年10月から検討されているというところです。
文部科学省さん、ここは科学技術・学術審議会の中で試験研究における組換え生物の取扱いに関する小委員会ということで、試験研究分野での取り扱いの議論を始められております。
これからの予定も含めて書いておりますけれども、いずれ、4月、5月、6月といったあたりに環境省のこの小委員会での結論もある程度まとめていかなければならないのですけれども、関係する各省での懇談会、審議会での議論というものも踏まえながら、またこちらでの議論を展開していく必要があるのかなというふうに考えております。
現状、こんな形で、各省さんの懇談会、審議会の小委員会というのが進んでいるということのご報告をさせていただきました。

【岩槻委員長】どなたか、コメントかご質問かございますでしょうか。ほかの省庁の委員会にも関係していらっしゃる方がたくさんいらっしゃるかと思うのですけれども。岩熊先生、どうぞ。

【岩熊委員】懇談会の日程というのは、こちらの委員会をにらんでの懇談会と……。農林水産省で懇談会が11月から今までに4回ほど開かれているのですけれども、これはこちらの組換え生物小委員会との関連は。

【自然環境局長】懇談会という、ただ名前だけで、審議会の組織を使っていないというだけの話です。

【岩熊委員】ですけど、こちらの情報というのは、適宜流れていると解釈して……。

【事務局】お互いに、どのような意見が出ているのか、という情報交換はしております。

【岩槻委員長】よろしいでしょうか。
委員長が勝手にしゃべったから長くなってしまいましたが、きょうの議論をまた踏まえていただいて、フロー等、影響評価を次のときまでにもう少しリバイスしたバージョンにしていただきまして、次は4月10日の午後2時から4時ということで、またよろしくお願いしたいと思います。特にごあいさつはなしということだそうですけれども……、事務局の方から何か。

【事務局】次回は4月10日の午後ということで、よろしくお願いします。
資料1、きょういただいたご意見を踏まえて修正させていただきたいと思いますけれども、その際、各先生方に個別にまたご意見をお伺いすることになると思いますので、その節はよろしくお願いいたします。

【岩槻委員長】それでは、どうも長時間ありがとうございました。これで終わりにさせていただきます。

【事務局】どうもありがとうございました。