本文へジャンプ

■議事録一覧■

中央環境審議会 瀬戸内海部会 企画専門委員会現地ヒアリング(中部) 議事録


平成24年2月14日(火)

開会
議題
(1)
趣旨説明及び現地ヒアリングの進め方について
(2)
関係者からのヒアリング
(3)
全体討議
閉会

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  皆さん、大変お待たせいたしました。ただいまから中央環境審議会瀬戸内海部会企画専門委員会の現地ヒアリングを開催させていただきます。
 皆様におかれましては、本日はお忙しい中、また少し寒い中、また雨でお足元の悪い中、御出席をいただきまして誠にありがとうございます。私は企画専門委員会事務局を務めております環境省水・大気環境局水環境課閉鎖性海域対策室の橋本と申します。よろしくお願いいたします。座長に引き継ぐまでの間、進行を務めさせていただきます。
 それでは、ヒアリングの実施に当たりまして、最初に企画専門委員会の委員長であります松田先生から、御挨拶をいただきます。

○松田委員長  企画専門委員会の委員長を仰せつかっております松田と申します。
 今日は雨の中、この現地ヒアリングに多数御参加いただき、大変ありがとうございました。それから、今日御意見をお伺いする8名の発表者におかれましては、大変お忙しい中、資料の作成ですとか、あるいは発表の準備、それから日程調整など、多大な御協力をいただきまして、ありがとうございました。厚く御礼申し上げます。
 さて、皆様既に御承知のように、瀬戸内海は海域にもよりますが、1960年代ぐらいには相当厳しい状況になりまして、全国に先駆けて1973年には、いわゆる瀬戸内法が制定されているわけでございますが、それからもう来年で40年ということになります。この間に社会情勢ですとか、さまざまな制度も大きく変わりました。それから、この瀬戸内法に基づいて瀬戸内海環境保全基本計画という、いわば法律を具体化する計画が作成されるわけですが、最後の基本計画が作成されてから既に10年以上がたちます。そして、この10年といいますと、およそ2000年代になってからということにほぼ対応するわけでありますが、その間にさまざまな法律、海に関しても重要な海洋基本法ですとか、あるいは生物多様性基本法とか、そういったものができました。当然これは瀬戸内海にもかかわってくるわけです。また、一昨年には御承知のように、名古屋で生物多様性条約のCOP10が行われまして、愛知目標等も決められたということですが、そういった状況を受けまして、昨年7月に環境大臣からこの中央環境審議会に諮問がなされました。その諮問の内容は、「瀬戸内海における今後の目指すべき将来像と環境保全・再生の在り方について」ということでございまして、その実際の具体的な調査や審議を、この企画専門委員会で行うことになったと、こういう次第でございます。
 この企画専門委員会に与えられました任務といいますか課題は大きく言って2つございます。一つは、豊かな瀬戸内海とは一体どういったものを示すかということを、より具体化したいと、こういうことでございます。ここ数年さまざまな瀬戸内海の在り方に対する総論的な議論が行われてきたわけですが、その中で、単に水質がよければいいというだけではなくて、もっと様々な生物も棲め、あるいは水産資源も利用できる、それから人間が海と親しめるというような、豊かな海という方向性が大方の支持をいただいているわけです。しかし豊かな海をどうとらえるかは、かなり人によっても違いますし、必ずしも共通認識が得られているわけではありません。これに当然、昨今の新しい課題であります栄養塩を減らせばいいというだけではなくて適正管理するとか、それから森・川・海を一体的につなげて考えるとか、あるいは今日もお話があると思いますが海ごみの問題、あるいは景観やツーリズムの問題、そういった新しい課題にも対応しなければいけません。こういう中で、この豊かな海をどういうふうに考えるか、できれば最終的には本当は豊かな海の指標ですとか、評価基準みたいなものまで議論が進めば非常に望ましいというふうに考えております。
 もう一つは、ではその豊かな海をこれから実現するに当たり、実際にはどういった取り組みが必要かという課題です。特に皆様、非常に活発な取り組みをなされて実績のある方から御意見を伺えますので、大変ありがたい訳ですけれども、それぞれ地域に応じて海の様相も違いますので、具体的にどういった取り組みが必要かということを取りまとめたいと考えております。
 そういうことで、この企画専門委員会では、幅広く瀬戸内海から御意見を伺いたいということで、現地ヒアリングを3カ所で、実は昨日、西瀬戸を中心にして北九州の小倉でやってきたところですが、あちらでは当然、こちらとは海が違って、例えば響灘ですとか、豊後水道ですとか、そういったところの問題も出たわけでございます。今日は主に瀬戸内海中部を対象にして皆様から御意見を伺いたいということです。あと来週、大阪で東部海域について、この現地ヒアリングが行われる予定でございます。それぞれの海域に応じた御意見が伺えればと思います。
 それから、この瀬戸内海での議論がもう少し広い意味でどういう影響を及ぼすかということについてですが、瀬戸内海は全国に先駆けて瀬戸内法ができたということでもわかりますように、かなり今、ある意味で全国的な問題のトップランナーとか、あるいは環境管理の実験海域とか、そういうふうに言われるような役割を持っておりますので、この瀬戸内海での議論は、恐らく単に瀬戸内海でとどまるだけではなくて、日本のその他の閉鎖性海域とか、あるいは沿岸海域にも十分活かされるものと考えております。
 そういうことで、今日はぜひ皆様から率直な、あるいは忌憚のない御意見をお伺いして、この企画専門委員会での取りまとめにぜひ反映したいと思いますので、できれば提言とか、提案とか、こういうふうにやったらいいというような、そういった形での御意見を伺えれば、非常にありがたいかと思います。  それから、最後に、本日のヒアリング開催に当たり、関係自治体、それから環境省の地方環境事務所の皆様の多大な御協力をいただきました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。
 以上、簡単ではございますが、今日は時間が限られてはおりますけれども、よろしくお願いしたいと思います。どうもありがとうございました。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  松田委員長、どうもありがとうございました。
 それでは、本日、現地ヒアリングに御出席の企画専門委員会の委員の御紹介をさせていただきます。
 まず、スクリーンに近いほうからでございます。独立行政法人海洋研究開発機構研究担当理事の白山義久委員でございます。

○白山委員  白山でございます。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  お隣でございます、徳島大学大学院ソシオ・アーツ・アンド・サイエンス研究部教授の浜野龍夫委員でございます。

○浜野委員  浜野でございます。よろしくお願いします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  続きまして、国際日本文化研究センター教授の白幡洋三郎委員でございます。

○白幡委員  白幡でございます。どうぞ、よろしくお願いします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  白幡委員には、本日の現地ヒアリングの座長をお願いしております。
 続きまして、先ほど御挨拶いただきました広島大学名誉教授の松田 治委員長でございます。
 そのお隣でございます、兵庫県農政環境部環境管理局水大気課課長の森川 格委員でございます。

○森川委員  森川でございます。よろしくお願いします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  ありがとうございます。委員の皆様、本日はよろしくお願いいたします。
 あと、事務局でございますけれども、私、橋本と、同じく閉鎖性海域対策室主査の千野でございます。

○千野主査  千野でございます。よろしくお願いします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、本日御意見をお伺いさせていただきます方々を、席順で御紹介させていただきます。
 こちら側から、広島県環境県民局環境保全課主任の沖本真朗様でございます。

○広島県環境保全課沖本主任  沖本と申します。よろしくお願いいたします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  そのお隣でございます、香川県政策部参事の濱本俊策様でございます。

○香川県政策部濱本参事  どうぞ、よろしくお願いします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  続きまして、海洋建設株式会社水産環境研究所所長の田中丈裕様でございます。

○海洋建設株式会社水産環境研究所田中所長  田中でございます。よろしくお願いいたします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  そのお隣でございます、公益財団法人水島地域環境再生財団研究員の塩飽敏史様でございます。

○公益財団法人水島地域環境再生財団塩飽研究員  塩飽と申します。よろしくお願いいたします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  お隣でございます、小串漁業協同組合代表理事組合長の竹原槙男様でございます。

○小串漁業協同組合竹原代表理事組合長  竹原でございます。どうぞ、よろしくお願いいたします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  お隣でございます、香川県かん水養殖漁業協同組合代表理事組合長の嶋野勝路様でございます。

○香川県かん水養殖漁業協同組合嶋野代表理事組合長  嶋野です。よろしくお願いします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  続きまして、NPO法人瀬戸内里海振興会専務理事の田坂 勝様でございます。

○NPO法人瀬戸内里海振興会田坂専務理事  田坂でございます。よろしくお願いします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  最後でございます、広島工業大学の上嶋英機様でございます。

○広島工業大学上嶋教授  上嶋です。よろしくお願いします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  8名の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。
 続きまして、お手元にお配りしております資料の確認をさせていただきます。最初に1枚、次第がございます。1枚おめくりをいただいて、資料1が出席者名簿となっております。それから、その次が資料2といたしまして、趣旨説明及び現地ヒアリングの進め方でございます。それから、資料3、こちらが本日の発表資料となってございまして、それぞれ資料、枝番で3-1から3-8までのものがございます。それから、その次に参考資料1として審議状況という1枚ものと、参考資料2といたしまして、本日のヒアリング、それから意見募集の報道提供資料をお配りさせていただいております。御不足等ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。
 それでは、本日のヒアリングでございますけれども、中央環境審議会の運営方針に基づきまして公開とさせていただいておりますので、よろしくお願いいたします。また、本日の議事録についてでございますけれども、御確認をいただきましたものを本日の発表資料、お配りをしております発表資料とともに、環境省のウェブサイトで後ほど公開させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 恐れ入ります、これ以降の写真撮影はお控えをいただきますようお願いいたします。
それでは、この後の進行につきまして、座長の白幡委員にお願いをいたしたいと思います。

○白幡座長  座長を務めさせていただきます白幡でございます。進行をお手伝いさせていただきます。
 今日はもう寒い中、天候も悪い中、遠方からお越しいただきまして、どうもありがとうございます。発表いただきます関係者、関係機関の方々におかれましては、御多用の折、本当に御出席ありがとうございます。皆様の日頃の活動、経験等を踏まえた御意見をお伺いして、今後の諮問に関する審議に反映させていきたいと考えております。どうぞよろしくお願いします。
 本日は16時半までということで予定させていただいております。16時半を目標に進めさせていただきたいと思います。ちょっと長丁場でございますけれども、途中1回休憩をとらせていただきますので、どうぞ御協力のほどよろしくお願い申し上げます。
 それでは、最初に事務局から本諮問の背景、これまでの審議の概要等について簡単に説明をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  改めまして事務局の橋本でございます。よろしくお願いいたします。
 それでは、資料2によりまして、今回の諮問の趣旨説明と本日のヒアリングの進め方について説明させていただきます。
 こちらが瀬戸内海の範囲です。今回、対象としております瀬戸内海の範囲につきましては、瀬戸内海環境保全特別措置法に基づきまして設定されておる範囲ということにしております。瀬戸内海、通常言われる瀬戸内海に、あと少し日本海側に入りました響灘ですとか、豊後水道、紀伊水道あたりまでを含めた海域を対象にして、今回の諮問、ヒアリング等を行わせていただいております。
 本日は中部のヒアリングということで、主として広島湾、安芸灘、燧灘、備後灘、備讃瀬戸のあたりを中心に。本日は高松でございますので播磨灘のお話も若干含まれるのかなと思っておりますが、この中部地域を主としてお話をお伺いできればと考えてございます。
 瀬戸内海におけます環境保全の取り組みについてですが、松田委員長の挨拶にもありましたように、瀬戸内海については瀬戸内海環境保全特別措置法という法律が制定されてございます。このように特定の海域を対象にした法律というのはあまりなくて、瀬戸内海と、あとは有明海・八代海についての法律で、瀬 内海というのは特別な海域であるという位置づけをされておるものでございます。その第3条に瀬戸内海環境保全基本計画についての規定がございまして、この中で瀬戸内海は特別な海域であるというところの特徴が法律の条文の中に記載されております。瀬戸内海は我が国のみならず世界においても比類のない美しさを誇る景勝地であると。それから、国民にとって貴重な漁業資源の宝庫であるというところ、その恵みを国民が等しく享受をして、また後の世代に引き継いでいくということが必要である、そういった特別な海域であるという位置づけがなされてございます。その環境保全の取り組みについて、この基本計画の中で取り組みをまとめて、それによって取り組みを推進していこうということになってございます。現行の計画は平成12年12月に策定されたものでございます。
 今回、中央環境審議会に対しまして、瀬戸内海における今後の目指すべき将来像と環境保全・再生の在り方について諮問をさせていただきました。その背景といたしまして、先ほど御紹介をいたしました瀬戸内海環境保全基本計画を推進する中で、その進捗状況等を中央環境審議会の瀬戸内海部会に御説明を申し上げ、いろいろと検証していただいておったわけでございますけれども、その基本計画フォローアップという中で幾つかの指摘を受けております。
また、昨年度でございますけれども、今後の瀬戸内海の水環境のあり方懇談会というものを5回ほど開催させていただきまして、その懇談会で得られました意見等を論点整理にまとめております。その内容でございますけれども、瀬戸内海の水質については一定の改善が見られるものの、景観の面、それから藻場・干潟等の改善、あるいは生物多様性、漁獲量といった面では、まだまだ改善が不十分な点がある。水質改善中心ということではなくて、もっと広い環境保全の在り方というのが問われているというのが一つございます。
あとは平成12年12月に策定された計画ですので、それ以降10年以上が経過しております。海洋基本法ですとか、生物多様性基本法という新たな法律の制定等の動きもありまして、瀬戸内海においても、こういった時代の流れに合わせた対応が必要になってきているということでございます。こういった背景を受けまして、今回、昨年の7月でございますけれども、中央環境審議会に将来像と在り方についての諮問をさせていただいたところでございます。
 豊かな海というのは、最初の松田委員長からの挨拶にもございましたように、一言で「豊かな海」、これを目指していきましょうということをよく言われますが、その豊かな海とはどういう海なのか。ここではきれいな海ですとか、美しい海、生産性の高い海ですとか、人々の生活を潤す海、生物多様性の高い海、健全な海、というような6つのイメージを挙げておりますけれども、瀬戸内海も非常に広いということで、それぞれの地域地域で目指すべき姿というのは異なってくるのではないだろうかと。それから、ここに挙げていますものでも、個々に追求をしていくと、それぞれが対立するような要素というのもございます。そういった中で、豊かな海と言うときに、これらがどのようなバランスのとれたものにしていくのがよいのか、そういった考え方を今回、お示しをいただければと考えておるところでございます。
 それから、その取り組みの基本的考え方、環境保全・再生の在り方については、今現在、昨年度の懇談会の論点整理の中で挙げられましたもの、プラス震災関係で1点追加をしておりますけれども、6つの基本的考え方というものが今現在、挙がってきておるところでございます。この中では、こういう物質循環でありますとか、生態系管理、それから藻場・干潟、底質環境の回復、自然景観、文化的景観の保全、それから里海の創生、資源管理、あとは防災と環境の両立というようなキーワードが出てきておるのかなと思いますけれども、この基本的な考え方のもとでどのように取り組みを進めていくべきなのか、それからどういったところに重点を置いて取り組んでいくべきなのかを、今後御議論いただくと考えております。
 今回の意見聴取でございますけれども、中央環境審議会に諮問をいたしまして、瀬戸内海部会に付託をされ、その瀬戸内海部会に企画専門委員会が今回設置されて、今現在検討を行っているところとなっております。企画専門委員会の報告を取りまとめるに当たりまして、瀬戸内海は非常に広いエリアでございますが、関係者の方々の御意見を聞く場を設けましょうということで、昨年12月に広域的な関係機関として、瀬戸内海環境保全知事・市長会議でございますとか、瀬戸内海研究会議、漁業関係者、関係省庁の取り組み等のヒアリングを行ったところでございます。さらに、より現場に近い関係者の方々の御意見等を直接お伺いする場ということで、今回、3カ所で現地ヒアリングを実施させていただいておりますが、本日はその2回目ということで、中部地域についての関係者の方々、8名の皆様よりお伺いをさせていただくということでございます。
 合わせまして今月いっぱいでございますけれども、意見募集として、瀬戸内海の環境の現状について、あるいは将来像、環境保全・再生の在り方について等々の御意見を広く募集しておるところでございます。こちらも、またお寄せをいただければと考えております。
 今後の予定といたしましては、本日はこの2番目ですね、企画専門委員会における検討の途中で御意見を伺うところでございますが、企画専門委員会で報告をまとめたものを中央環境審議会瀬戸内海部会に、大体今年の夏頃としておりますが、報告をして答申をいただくというようなスケジュールで今のところ予定しておるところでございます。
 本日のヒアリングの進め方についてでございますが、先ほど御紹介させていただきました8名の方々から、お話をお伺いさせていただきたいと考えてございます。発表の持ち時間でございますけれども、大変短くて恐縮でございますが、お一人10分でお願いいたします。発表が始まりまして8分が経過しましたときに、1回ベルを鳴らさせていただきますので、時間の目安にしていただければと存じます。また、お一人お一人の発表が終わりました後で、本日ご出席の企画専門委員会委員から少し御質問等をさせていただきたいということで、その質疑応答も合わせましてお一人15分を予定しております。8名の方々からの発表をいただきました後、全体として時間の許す範囲で、全体を通じての御質問ですとか、あと時間があれば本日この会場にお越しいただいた方からの御意見等もいただければと考えておるところでございます。本日はすいません、短い時間ではございますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。
 私からは以上でございます。

○白幡座長  どうもありがとうございました。
 ただいま説明がありましたように、発表の方には10分という申し訳ないような短い時間ですが。なおかつ8分目にベルを鳴らすというような、なんか急がせるようで申し訳ないのですが、16時半ぐらいまでにうまく皆さんの御意見をお聞きしたいということで、そういうことで発表時間が10分ということですが、どうぞ御協力のほどをよろしくお願いいたします。それと、発表の際にはパワーポイント等をお使いのときに演壇にお運びいただきますよう、よろしくお願いします。
 それでは、早速ヒアリングを始めさせていただきます。最初に広島県環境県民局環境保全課の沖本様から、どうぞよろしくお願いいたします。

○広島県環境保全課沖本主任  改めまして広島県環境保全課の沖本です。よろしくお願いいたします。
 今日はこのような発表の機会をいただき、ありがとうございます。この背景の写真は、私の自宅から車で10分程度のところにある広島湾元宇品海岸の写真ですけれども、私自身も瀬戸内海沿岸に住む住民として、このように多くの方が意見を述べる機会が設けられるというのは、非常に連帯感を感じていいかなと思います。
 さて、本日の発表の構成ですが、まず広島県などが海浜で環境保全活動を行う方を対象として行っております、せとうち海援隊の制度について御紹介した後、これらせとうち海援隊の活動から考えた豊かな海について意見発表したいと思います。
 その前に、広島県の施策の全体的なところから申しますと、広島県では平成22年10月に、ひろしま未来チャレンジビジョンという総合計画を策定しました。そして、この計画を環境の面から推進するための計画として、平成23年3月に広島県環境基本計画を策定しております。中でも今後目指す環境分野における将来像の一つとして、だれもが環境に配慮した行動をとっているという姿を提示しており、せとうち海援隊制度はこの部分の具体的な事業という位置づけになります。
 まず、せとうち海援隊の制度の仕組みですけれども、せとうち海援隊は実際に海浜清掃や生物の調査等を行う団体が主に活動している市町と、県が連携して行う事業という制度になっております。市や町は回収したごみの回収、ごみの処分等に協力したりですとかを行って、県は活動にかかわる保険とかに加入したり、あとは活動状況のPRとか、そういったことを行うようになっております。団体のほうは、活動の報告を県にしていただくというような三者で連携する仕組みとなっております。
 次に、活動の状況ですが、現在のところ約30団体に登録をいただいておりまして、活動フィールドは、このように広島県内に広く分布しております。また、毎年延べ3,000人程度が活動しておられます。そして、様々な団体がいるのも、このせとうち海援隊制度の特徴でございます。これは当方で勝手に分類をしたものですけれども、まず一つ目として自治会とか町内会活動といった地縁型組織があります。2つ目といたしましては、環境カウンセラーなどの方が中心となったり、あとはヨットや釣りの趣味の愛好家の方で組織されている目的型組織と呼ばれるものがあります。3つ目といたしましては、学校などで行われている環境学習ですね。その他として学生サークルや企業ボランティアなどの活動が挙げられます。
 次に、幾つか長く活動されておられる団体について紹介したいと思います。
 まず、一つ目は広島県の最南端に位置する呉市倉橋町の海越地区の女性会の皆さんです。春から夏にかけて毎月早朝に海浜清掃をしておられます。この夏に一緒に参加させていただいたのですけれども、海浜清掃をしているわけなのですけれども、近所の皆さんで家の周りを掃除しているといいますか、そういった感じで習慣というか、ごく自然に活動しておられるというような印象を受けました。
 次に、環境市民ネットまつながさんです。この団体は、福山市の西側に位置します松永湾を活動のフィールドにしておられまして、昼休みを使ってごみ拾いなどの掃除を行っておられます。せとうち海援隊の制度の課題などについてもいろいろと御意見をいただいておりまして、もっといろいろな団体の意見を取り入れて制度を改善していかないといけないなと、いつも感じているところでもあります。
 最後にNPO法人の佐伯帆走協会さんです。この団体はヨット仲間で構成されている団体ですけれども、海を楽しみながら美しい瀬戸内海を次世代に残そうということで活動されています。この夏に宮島での清掃活動に連れていってもらいましたが、陸地の、ここの桟橋から、実際清掃を行った海浜まで船で連れていってもらいまして、天気も非常によくて眺めもよかったものですから、まさに楽しみながら海浜清掃をしたということで、非常に記憶に残っております。  次に、せとうち海援隊の活動内容について紹介したいと思います。
 ご覧いただいたスライドのように、海浜清掃というのは多くの団体で行われています。あとは学校であれば環境学習などを行っています。一つ、せとうち海援隊で特徴的かなと思いますのが、生物調査というのを実施されている団体がいることです。これは、県がつくったマニュアルにより、磯の生物調査を行うというものです。このマニュアルがどんなマニュアルかと申しますと、磯にいる生き物ですね、どんな生き物がいるかを調べまして、いた生き物から海の汚れの程度を4段階で判定するといったマニュアルになっております。
 実際の記録用紙なのですけれども、こちらにございます20種類の指標生物にチェックをいたしまして、いた生物から評価点、100点満点ですね、評価点を出しまして、4段階で海の汚れの程度を判断するという方式になっています。指標生物以外でも生物が観察されましたら、この欄外、右側に記入していただくといった記録用紙になっています。
 その活用状況なのですが、せとうち海援隊に、宮島の磯・生き物調査団という団体さんがおられまして、この方たちは毎月さまざまな場所で、このマニュアルによる調査を行っておられます。この写真が7月に山口県の馬島というところで行った生物調査の際の写真なのですけれども、ご覧のとおり非常にきれいな海で、判定結果も100点中96.8点で非常にきれいな海という判定になっております。
 続いて、同一地点を色々な団体が調査した結果というのもありまして、先ほど表紙のスライドに出てきましたが、広島市の元宇品海岸の調査結果で確認できた指標生物というのは、団体とか時期によって10~15種類とばらつきは見られるのですけれども、判定のほうは少し汚れた海ということで、ある程度同様の判定が得られるというような結果が出ています。
 さて、ここで、これらのせとうち海援隊の活動から考えた、豊かな海について述べたいと思います。
 さまざまな団体により、生物の調査が行われているという現状がありますので、目指す姿の一つとして、瀬戸内海を住民と行政、NPO団体などが協働してモニタリングしている状態の実現を挙げてみました。その際、そういった意識啓発というのは現在も行っているところなのですけれども、それに加えて活動する人たちが社会貢献や、やりがいを実感できるような制度、こういったものを設けることが大事なのではないかと思います。
 ここで、せとうち海援隊の皆様の御意見を幾つか御紹介しますと、まず上から一つ目ですが、当たり前のことではありますが、活動する際というのは何々県とか、そういった我々行政の都合は関係なくて、どこでも行きますと。こういったことから、制度を考える際に、瀬戸内海全体を対象とした制度が大事なのではないかなと思います。
 次に、上から3つ目ですが、団体活動とはいってもさまざまな事情によって同一団体が活動を継続できるとは限りません。そこで調査主体が変わっても記録として残るような公的なモニタリングの手法というのが必要かと思います。
 以上を踏まえまして、だれもが手軽に調査できる生物等を指標とした水環境の基準などを設定していただくという提案をさせていただきます。具体的には指針ですとか、環境基準などとして設定するとか、法でモニタリングを規定するといったことが挙げられるかと思います。仮に水質汚濁に係るものですと、我々自治体に常時監視する義務がございますが、どのようにして住民団体などによるモニタリングを普及していくかということについては、瀬戸内海環境保全知事・市長会議でも、府・県・市で連携して検討を始めたところです。このように住民と国と地方の三者がかかわる非常に豊かな制度、こういったものがあってもいいのではないかと思います。
 なお、最後になりますが、一番大事なのは瀬戸内海に触れる人が、心から瀬戸内海があってよかったなと思えることかなと思います。
 どうも御清聴ありがとうございました。

○白幡座長  どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの発表に対して御質問などございますでしょうか。どうぞよろしくお願いします。

○松田委員長  大変実績のある活動状況、それから具体的な豊かな海を目指すための御提案をいただき、大変ありがとうございました。ちょっと教えていただきたいのですが、このせとうち海援隊の活動の財政的基盤とか経費負担のようなものがわかりましたら、お願いいたします。

○広島県環境保全課沖本主任  基本的にはそれぞれの団体さんが自腹といいますか、自分たちで活動をされているところに、例えば傷害保険とか、損害賠償保険とか、そういったものをわずかではありますけれども県のほうから支援させていただいているというような状況でございます。

○松田委員長  どうもありがとうございました。

○白幡座長  ほかにございませんでしょうか。

○森川委員  どうもありがとうございます。2、3質問させていただきたいのですが、沿岸の住民の方とか、環境活動団体の方とか、参加されているのですけど、沿岸の漁業者の方との関係とか、参加とかは、どうでしょうか。
 それから、生物指標の分で結果の集約とか、発表とかはどのようにされているのでしょうか。その辺をちょっと教えていただきたいなと思うのですが。

○広島県環境保全課沖本主任  まず1点目の漁業者の方につきましては、1団体ほど登録されている大竹市の阿多田島漁協さんというところがございます。そのほかのところも活動を行っておられるとは思うのですけども、最近、せとうち海援隊への加入のお願いを行ってないものですから、今のところは1団体のみということになっております。
 もう一つといたしまして、活動の公表の仕方ですけれども、今のところ余り効果的な広報とかはできておりませんで、県のホームページでとか、そういったことにとどまっております。

○森川委員  どうもありがとうございました。

○白幡座長  いかがでしょうか。

○浜野委員  活動においてのトラブルのような事象ってございますか。こういうことがあったとか、どういうのでもいいのですけど。

○広島県環境保全課沖本主任  けがをされたというのは今までに1例ほどありましたけれども。それ以外で、あとは県からせとうち海援隊というのぼりを渡しているのですけども、のぼりが折れたとか、そういったことはありました。あとは、ごみも大体は市や町が回収してくれますので、特にトラブルといったようなものはないと思います。

○白幡座長  白山先生、どうぞ。

○白山委員  先ほど結果の公表がなかなかうまくいかないというお話もあったのですが、幾つかホームページとして結果を公表できる公的な仕組みはございますので、ぜひ活用されたらいいのではないかと思います。逆にそういうことをするためには、どれだけ公表される結果が信じられるかと言うと失礼ですけれども、正確かというのが、逆に問題になってきます。それで、先ほどデータシートみたいなのをチェックするのだというお話だったのですが、なんか証拠の写真を撮るとか、もう1段階しっかりした仕組みにされると、いろいろなところに広がりがさらにできるのではないかとコメントさせていただきたいと思います。

○広島県環境保全課沖本主任  ありがとうございます。

○白幡座長  よろしいでしょうか。
 どうも、それではありがとうございました。
 もし、まだ何かありましたら、最後のところ、総合的な質問とか討論を時間がありましたらやりたいと思いますので。どうもありがとうございました。
 では、続きまして香川県政策部の濱本参事様、どうぞよろしくお願いいたします。なお、3番目に発表いただくところで、発表順序を変えさせていただきたいと思うのですが、かん水養殖漁業協同組合の嶋野様の御都合がちょっと前倒しでないと次の予定が入ってくるようなので、少し順序を交代させていただきます。あらかじめ御了承をお願いしたいと思います。

○香川県政策部濱本参事  それでは、資料に基づきまして説明させていただきます。香川県の濱本です。どうぞよろしくお願いします。
 企画専門委員会の1回目の議事録を見ますと、道に関する情報がないというような御意見もあったようですので、私のほうでちょうどそれに関する仕事もしておりますので、今回、整理して出させていただきました。
 それではまず資料ですが、海上交通安全法、その制定の経緯につきましてはかなり長くなりますので省きます。昭和47年7月3日に日本国内での船舶が輻輳する海域、東京湾と伊勢湾と、それから大阪湾を含む瀬戸内海、これを対象に、特別の交通方法を定めて危険を防止する規制を行うということで、この法律が制定されました。もともと戦後の復興に東京湾、伊勢湾、それから瀬戸内海、この多極分散で復興していくという国の施策がありまして、それに基づいて色々なコンビナートやら企業ができたのですけれども、それに伴って船舶の事故が多発したということで、こういう形になっております。
 それで、香川県関係では備讃瀬戸の東、それから宇高東、西、備讃瀬戸北、南、そして水島航路、この6つの航路が該当いたします。図面があります、図1、これは備讃瀬戸海上交通センター、この図面を使わせていただいておりますが、瀬戸内海のうちの小豆島の地蔵崎から豊島、それから男木との間を抜けて与島と小瀬居島、この海域、片方が700×2で1,400mの幅があります。それで備讃瀬戸の東航路は約37km、北側が西向きです、右側通行ですので。それから南側、四国寄りが東向き、鳴門口から外へ抜けていくと、そういうルートになっております。この東航路から水島港、これは約15kmあります。それから、水島へ入らずに抜けていく北航路、これは22kmありますから、入口から出口まで約60kmあります。この間、これは道と言えば、普通は高速ならサービスエリア、それから一般道であれば最近は道の駅が大分整備されていますけど、それぞれゴミ箱はありますけども、この航路のそばにはゴミ箱はありませんので、航路浚渫をすると、普通のゴミではなくて家電製品まで出てくる、テレビや洗濯機。ゴミの話は後ほどまた詳しくお話があるということを聞いておりますので省きますけども。とにかくこういう航路が備讃瀬戸のど真ん中にあると。この中で漁業が営まれておるわけでございます。
 表1のほうに水産課の資料を出しております。小型底びき854、それから込網、これが64。あと流し網、いろいろあります。特にこれが毎日航路で操業しておるわけではありません。時期によって、それから潮によって航路に入るということでございますけども、このうち特に込網、それから流し網、これが動きづらい。要するに船が来ればよけられない漁業ということで、事故の危険が非常に高いということでございます。込網につきましては、本日後ほど嶋野さんが発表されますけども、嶋野さんは40年にわたって操業されております。
 こういう中で、今ちょうどイカナゴの込網が始まっております。写真をつけておりますけども。これ、漁具の幅が約200mございますので、先ほど片道700mと言いましたけども、4隻ぐらいが操業すれば、ほとんど航路はふさがるというような問題もあります。非常に問題の多い海域でございます。4月20日からはイカがとれますので、夜間の操業にもなります。昼夜を分かたず、特に船舶は夜間の航行が増えますので、その事故の危険性も高いということになります。  それから、表2ですが、この通行船舶、水道別に海上保安庁が調べております。浦賀水道、これは東京のほうですけども、それから黄色に塗っておりますのが備讃瀬戸東部。トータルでは明石海峡より少し少ないのですけども、貨物船とそれからタンカー、これを足すと、やはり日本で一番航行船舶が多いと。明石、それから伊良湖水道、これは漁船の数が多いのですけど、これは船びき関係がかなりありますので、そういう数字になっております。
 それと、次4番目ですけど、この間の事故、これを整理しますと、六管本部の管内では平成16年から22年、この7年間では年間400~500件。漁船が関係するものが86~127件ですので、大体4分の1は漁船が絡んでおります。高松管内を見ましても、やはり同じように4分の1起きています。人身事故もやはりあります。それは表4にございますけども。人身事故は、やはり底びきが一番多いです。込網につきましては、海上保安部それから漁業者双方が非常に注意を払って操業しております。監視もしておりますので、今のところ大きな事故は起きていませんが、浮きダルの損傷などは、やはり起きているという状況です。
 その事故の中で、特に次の表5に示しておりますけれども、流出油事故というのがございます。まず、事故の中身を先にいきますけども、衝突、それから乗上げ、転覆、このほとんどが油の流出につながるような事故でございます。下に総計を入れていますけども、これは高松管内で60や90と書いていますが、ほとんどがひっくり返ったり、沈んだりすれば油が出ると。そういうことが非常に危険な状況でございまして、表5に、さらには原因者がわからないものです。先ほどの事故につきましては、これはもう原因者がわかりますので、大きな船だったら船主責任保険に入っていますけども、原因者不明の場合は、誰が流したかわからない、誰がほったかわからないというようなものでございます。それで、昭和50年に財団法人漁場油濁被害救済基金ができております。これはその前の昭和49年12月に水島の三菱石油、大きな事故がありましたけども、これとは関係なく別途進められておったものでございますけども、これは原因者がわからないものについては補填するということで。現在、名前が変わっております。昨年の10月に財団法人海と渚環境美化・油濁対策機構ということで、合併して名前が変わっておりますけれども。この数字を見ますと、平成20年度の末までに対応したのが1,146件、42億3,000万円が支出されております。かなりの部分が瀬戸内海で起きています。
 それから、表6にありますけども、香川県での油濁事故、先ほどの表は海面、陸、合わせて数字を出しておりますけども、それを海域と陸域に分けて示しております。平成18年で22件のうち12件が海域、平成22年は34件のうち16件が海域でございます。この中で主なものは事例として挙げております、1、2、3、4、5ございます。それぞれ、例えばノリ網に油がついたらそれを撤去します。そうすると、その被害が出ます。被害が出ても原因者が、保険に限度がありますから、限度を超えたら漁業者の泣き寝入りという形が続いております。特にノリの時期に意外に流出事故が今まで起きています。それが一つの、何かよくわからないんですけど、そういう傾向があります。事故が起きますと漁業者も非常に被害を受ける。それから関係機関、当然、海上保安部も相当なエネルギーで処理したり、それから攪拌したり、県の水産課の船も出ますけども、とにかく事故が一つあれば相当な被害を被る。これは人的被害だけ言っていますけども、特に海洋そのものへのダメージ、これが今回の計画にも絡んでくると思うのですけども、徐々に徐々に海域が汚染されているという状況でございます。
 「瀬戸内海は道」というとらえ方、これも一つのとらえ方ですけども、先ほど言いましたように船舶からのゴミやら、それから地域住民から投棄されるゴミ、それから自然流入、下水処理場を超えて流入する窒素やりん、それから工場排水から流れる、規制はされていますけども、色々なものが入っております。それと、瀬戸内法はありますけども、アセスをクリアしたら、いまだに藻場や干潟の埋め立ては止まっておりませんし、海砂利(採取)は今はやめておりますけども、既に取り尽くした後です。それとコンクリートの護岸、これについては地震対策でさらにこれからも補強されるでしょうから、いずれにしても、どれをとっても瀬戸内海には非常に厳しい状況が続くと思います。
 この日本の沿岸は御承知のように世界の4大漁場の一つです。太平洋でちょうど大きな島があって、魚が寄りつくと。その中の瀬戸内海は特に広域回遊魚、マダイやトラフグやサワラ、これらの産卵場であり、稚魚の育成場でございます。それから、もとよりおびただしい種類の魚介類、これが生息しております。未来永劫豊かな海として維持存続できるように、この委員会で最良の方法を示されることを心より願っております。
 私のほうは資料提供で、非常にすいませんけど、以上で終わります。

○白幡座長  どうもありがとうございました。
 ただいまの意見発表に対して、御質問等ございませんでしょうか。いかがですか。
 最新のというか、この間の情報提供をいただいたわけです。最も交通量、船舶航行の多い備讃瀬戸の情報でありますけれど。どなたか、いかがでしょうか。

○浜野委員  表4の人身事故のうち、これ救命胴衣をつけてない者とかもこの中にあるのですか。それがあれば助かったであろうみたいな、そういうような資料とか何かございますか。

○香川県政策部濱本参事  これは県の外郭団体ではないのですけど、社団法人の水産振興協会、こちらがお金を出したといいますか、お見舞いした件数でございまして、その中身を個々に調べれば、当然に救命胴衣がなかった、あれば助かるというのもあったと思います。ただ、現在は県下の漁協を挙げて救命胴衣をつけるように、特に庵治漁協から提案してやっておりますので、漁業者は必ずつけるように水産課でも指導をしております。

○浜野委員  ありがとうございます。

○白幡座長  そのほかはございませんでしょうか。

○白山委員  規制の中に200m以上の船舶の進路を避けねばならないというのが最初のほうに書いてあるわけですが、当然、海上保安庁には大型の船がこの航路をいつ、何時ごろに通るよという情報は恐らく入っていると思うのですが、それは漁協にもきちっと連絡が行って、漁業をされる方は、そうするとその時間は避けて網を入れられるとか、そういうようなお互いの連携というのでしょうか、協調というか、そういうのはとられているのでしょうか。

○香川県政策部濱本参事  備讃瀬戸海上交通センターが細かく情報を出しておりますし、それから込網についてはAIS(Automatic Identification System)、位置情報を発する装置がついていますから、船舶のほうが気をつければわかるのですけど、漁業者は一々自分のほうから船舶の情報をとるような、そういうことにはなっておりません。もともと航路上は船舶と漁船操業、漁業操業、それが両立するという前提でこの法律ができております。あとは、やはりそれぞれ相当なエネルギーはもちろん海上保安部も使われておりますけれども。

○白幡座長  よろしいでしょうか。そのほか、もし御質問がありましたら。

○森川委員  不勉強なのですが、これだけたくさんの事故で油が流出しているのですけれども、例えば、流出した油の総量などは、どこかで統計がとられているのでしょうか。直接的な漁業被害に加えて、長い間の負荷とか、様々な問題にもつながるかとも思うのですが、どのくらいのインパクトがあるのかなという意味で、そういうデータがあればよいと思うのですが。

○香川県政策部濱本参事  油の流出量につきましては、その事故の案件ごとに海上保安部が類推して、大体記者発表されていますし、それからそれにあわせて県のほうも環境部局と水産部局で情報収集しておりますので、個別には大体把握をしております。当然、漁業被害がすぐに及びますので、できるだけ把握はするようにしています。

○森川委員  ありがとうございます。個別にはあるのでしょうが、集約したようなものというのは、ご覧になったことはないというようなことでしょうか。

○香川県政策部濱本参事  そうですね、そこまでの一覧表まではあまり見たことないですね。個別には水産課のほうで行政資料として把握はしていますけども、それがすべてではありません。

○森川委員  ありがとうございました。

○白幡座長  時間が参りましたので、どうも発表ありがとうございました。
 それでは、続きまして、予告のとおり先に小串漁業協同組合の竹原組合長さんにお話しいただきたいと思います。海洋建設株式会社の田中所長様は休憩後にお願いしたいということで、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、御意見の発表をよろしくお願いいたします。

○小串漁業協同組合竹原代表理事組合長  ただいま御紹介をいただきました小串漁業協同組合の竹原と申します。
 岡山県の南部、児島湾は、私たち小串漁業協同組合の地先にあり、岡山県の三大河川のうち旭川、吉井川という2つの川が流れ込んでいます。かつて有明海とともに我が国の代表的な干潟の海で、まさに豊穣の海でございました。遠浅の広い干潟と干満に伴う潮流の速さが児島湾独特の漁法を生み出しました。それは樫木網という漁法であります。網口の大きさが8m四方、長さが23mの長大な袋網を、直径40cm以上もある樫の木の大木を海中に2本立て、2本一組でそれに網を仕掛けて、潮の速さで流れ込んだ魚をとる漁法であります。あまりの潮の速さにこの大木が振動でゴーゴーと音を立てていたことを覚えております。
 そのほかにもシラウオに始まって、エビ、カニ、シャコ、イカやママカリなど、さまざまな魚介類が季節に応じてとれたものです。また、湾内に広がるアマモ場では、3cmくらいのタイの稚魚が群れをなしており、やがてこれが大きくなり成長して沖に出ていくと、漁師たちはこれを追って小豆島あたりまで出かけていったものです。しかし、児島湾が遠浅の海岸であるがゆえに、国策である農地造成のため、大規模な干拓事業が行われました。昭和34年には人工の淡水湖である児島湖の完成を見て、干潟を主な漁場としてきた児島湾特有の漁業は終焉を迎えたわけでございます。
 その後、干潟の衰退に伴い、児島湾での漁業は少しずつ漁場を沖合に移すことになりました。今では小串漁業協同組合の主幹漁業となっておりますノリ養殖業も同じ沖合へと漁場を展開しながら生産を拡大していきました。先ほどお話ししましたように、二大河川からの栄養塩の供給を受けて発展したノリ養殖業が、多くの漁師の生活を支えてきたのです。私自身も半世紀以上にわたって児島湾でノリ養殖業を中心に漁業を営んでおります。
 しかし、近年、海の環境は大きく変わってきました。昔と大きく違っているのは、秋からの雨が極端に少なくなったことです。これが原因で河川から供給される栄養塩が少なくなって、ほぼ毎年のようにノリの色落ちが発生をしております。ノリの色落ちが発生すると、ノリの商品価値は極端に下がり、生産を断念せざるを得ない状況にも至ります。かつて岡山県内には500軒を超えるノリ養殖業者がいましたが、このような深刻な状況が続いていたことで、現在は100軒を下回るほどに軒数が減ってまいりました。
 河川からの栄養塩は当然、養殖のためだけにあるのではなく、ノリの養殖に利用されるのは河川から供給される栄養塩のごく一部にすぎません。ノリのこと以上に心配しているのは、このような状態が続けば海の生産力というものが非常に弱まって、これまでは当たり前であった魚が産卵し、生まれて育った稚魚が大きくなり、それがまた親となって産卵するといった命の営みが途切れてしまうということです。今では海に栄養塩がなく、夏でも船の上から海底が透き通って見えるほど海の水はきれいになってしまったことを見ても、海が痩せ細っているのではないかと私は思っております。
 さらに10年余りの間に急激に海のバランスは大きく崩れていると思います。沖合に栄養がなくなってくる反面、児島湾の奥などでは、これまでの長年にわたる水質汚濁の影響を受けて、海底には有機物が堆積しヘドロとなってたまっている場所もあります。この改善に向けて岡山県では、海底付近から吸い上げた海水と海面からの海水を混ぜて、沖に向けて放出するといった試みが始められております。このように栄養塩が足りなくなっている沖合にあらゆる手だてを講じて、栄養塩を送り届けるという努力も必要なのだと思っております。
 かつて、瀬戸内海では赤潮が頻繁に発生し、瀕死の海とも呼ばれていましたが、その後、進められた各種の水質規制のおかげをもって、赤潮の発生は大幅に減り、海の透明度が回復するなど一定の成果があったとは思っております。また、下水処理技術が発展し、陸域からの汚濁が減ったことで、人々の生活が快適になったというものの、最近の海の状況を見ると、この規制も行き過ぎになっているのではないかと思っております。
 近年、秋の長雨がなくなり、川からの栄養塩の供給が減ったことは、自然が相手なので人の手では思いどおりにコントロールをすることはできません。しかし、少なくとも環境行政としては、我々の今までお話をさせていただいた様子を知っていただき、これまでの抑制するだけの規制ではなく、何とかして海に栄養が届くように取り組んでいただきたいと、こういうことが我々漁業者の願いであります。これは人間ができる工夫だと思っております。
 川を通じて流れてくる水は、豊かな森からの恵みであり、瀬戸内海の生命の営みを支える源であります。川からの栄養補給があるからこそ、瀬戸内海の生態系が維持されてきたのです。後継者にも豊かな海を残してやることが我々の務めであると考えております。つきましては、漁師の願いとして、少し具体的な次の2点を提案させていただきたいと思います。
 1点目は、たくさんの生物が棲んでいける豊かな海を取り戻すように、海の栄養のバランスを考慮しつつ、下水処理場などの水質規制を季節に応じて緩和するなど、新たな水質や環境政策を早急に取り入れていただきたいこと。
 2点目といたしましては、悪化している海底から沖合へ栄養塩を循環する技術など、海に必要な栄養塩を供給する水質レベルを維持・管理する方法や手段の開発を進めていただきたいことであります。
 以上の2点であります。ぜひともお願いを聞き入れていただきますように、重ねてお願いを申し上げ、私の意見表明とさせていただきます。どうもありがとうございました。

○白幡座長  ありがとうございました。
 ただいまの御意見の発表に対して、御質問等ございますでしょうか。

○松田委員長  具体的な御提案もいただきまして、大変ありがとうございました。
 お話の中でありました海底付近から吸い上げた海水を表面の海水と混ぜて沖のほうに放出するという、非常に斬新な取り組みをされているというお話でしたが、これについては、それで例えば海の水質がどう変わったかといった、そういったデータは、例えば県とかがとられているのでしょうか、御存じでしたら教えてください。

○小串漁業協同組合竹原代表理事組合長  私も、まだ試験が始まったばっかりなので、そういうデータ的なものはまだ承知はしていないのですけれども。大いに我々は、湾奥部のそういう栄養を含んだ水を沖合に放出していただける試験を続けていただいて、できることなら大規模なそういう試験をやっていただきたいと、このように考えております。

○松田委員長  ありがとうございます。
 一般にもよく湾の奥のほうは非常に栄養があり過ぎて、一方、外のほうは足りないというような状況がいろいろありますので、非常にいい参考になるかなと思いました。ありがとうございました。

○小串漁業協同組合竹原代表理事組合長  どうもありがとうございます。

○浜野委員  お話の中で、現在、夏でも海の底が見えるほど栄養塩が減ったのではないかと、きれいになっているということで、一般の人が考えると、それ、よいかなと思うわけです。確かに、私は組合長より若いのですが、私が子供のときに見た瀬戸内海というのは、物すごく真っ黒だったのですよね。それ以前のことを知っておられると思うのですけど、その以前はどうだったのですか。

○小串漁業協同組合竹原代表理事組合長  その以前はやはりきれいでしたね。

○浜野委員  どういう感じで、今と比べてどうなのですか。見た目で結構なのですけど。

○小串漁業協同組合竹原代表理事組合長  昔の海の透明度と今の透明度は、やはり今のほうがよ過ぎるというのですかね。

○浜野委員  それは組合長さんが子供のときと比べてもですね。

○小串漁業協同組合竹原代表理事組合長  私が子供のときの感じとしてね。透明度はあったのですけれど、多少は海が濁っているというのではなく、何か魚が棲みやすいような感じを受けるような透明度というのですか。今は何か極端に、今の時期いうたら本当に透き通った、もう何も養分も何もないのかなと、プランクトンも何もいないのかなと思うような感じの透明度ですよね。

○浜野委員  ありがとうございます。

○白山委員  一つ伺ってよいですか。川が、2つ大事な川があるというお話だったのですけれども、川の水の水質とか、あるいは最近はダムがあると川の水の水質にかなり大きな影響があるというのはよく言われるのですが。そのあたりの情報をお持ちでしたら教えていただけませんか。

○小串漁業協同組合竹原代表理事組合長  そうですね、旭川では早くから水力発電のダムが、小さいのがたくさんできていたのですけれど、吉井川のほうは生活用水、それから農業用水、工業用水等の多目的ダムというのですか。吉井川のダムができてからは、やはりもう吉井川そのものの河口付近でも極端に水の流れがなくなって、それで川の河口から1kmも行かないところに井堰があるのですけれど、その井堰を今までは越して水が流れていたのが、もうあまり雨が降らないときはダムからの放流がないので、井堰の下まで海が、どちらかというと水が変わらないから赤潮が発生したり、色が悪くなったり、川はしております。そういう部分では、やはり川そのものも、やはりダムから下流は死んでくるのではなかろうかという思いはいたしますね。ましてや海のほうも、そういう海につながっとる部分も、やはりダムの影響が大きいのかなという思いはしております。何とか、ダムができても取り壊すわけにいきませんけれども、何か海が幾らかでも生きていけるような何か方策がないものだろうかという思いはしております。

○白山委員  ありがとうございました。

○白幡座長  どうもありがとうございました。
 交代していただいて、竹原組合長のほうから先にお話をいただきました。
 続きまして、予定では水島地域環境再生財団の塩飽様の予定でございましたけれど、先に香川県かん水養殖漁業協同組合の組合長、嶋野様のほうから、御意見をお願いいたします。どうぞよろしくお願いします。

○香川県かん水養殖漁業協同組合嶋野代表理事組合長  香川県かん水養殖漁業協同組合の嶋野と申します。
 香川県かん水養殖漁業協同組合は、香川県の海面を利用いたしまして、ハマチ、カンパチ、マダイ、ヒラメ、トラフグ等を養殖している漁業者の団体でございます。昭和39年に設立いたしまして、現在、組合員は152名ということになっております。
 かん水の組合員は、瀬戸内海の豊かな漁場で、日々環境の変化や魚の健康チェックをいたしまして、高鮮度で安全で安心して食べていただける魚を育て、消費者の皆さんに食べていただくために日々努力を重ねているところでございます。
 近年、香川県の漁業生産は5万~6万トンで推移しており、そのうち養殖業の占める比率は全体の6割前後と高い割合で推移しております。ハマチ、ノリが主要なものとなっております。香川県の県魚であるハマチを含むブリ類の生産状況は、1万トン以上の生産量でほぼ安定しておりましたが、平成19年度以降、1万トンを下回っており、やや減少の傾向となっております。
 魚類の給餌型養殖を開始されましたのは、1927年、香川県東かがわ市、当時の引田町安戸池でございますが、我々の先駆者でございます野網和三郎氏が始めたブリ養殖が世界で最初ということになろうかと思います。1960年以降、小割生簀式の養殖が急速に普及したことにより、日本経済の高度成長による消費構造が、大衆魚から高級魚へと変化したこと、マダイなどの種苗生産技術が開発されたこと等から、急速に魚類養殖業の生産量は拡大してきております。
 しかし、1970年代に入りますと高度成長による水質の汚濁の進行、有機物負荷の増大に伴う赤潮の発生増加と海洋汚染問題がクローズアップされました。特に香川県では播磨灘での大規模なシャットネラ赤潮の発生と養殖魚の大量へい死が頻発し、養殖業の存続にかかわる大きな問題が起こりました。これを契機に1974年、瀬戸内海環境保全臨時措置法が制定されて、瀬戸内海全体が水質を規制強化されたところでございます。
 その後、徐々ではございますが、赤潮の発生件数も減少傾向となりまして、平成15年以降は養殖魚が大量へい死する赤潮発生は見られておりません。このように、安心して魚類養殖ができる海の状況を維持していくことが重要であるということで、国に対しても今後とも強く要望してまいりたいと、このように考えております。
 一方、養殖業者自身の課題といたしまして、当時の魚類養殖の多投餌やコスト削減のための密殖により、漁場環境が悪化し、赤潮の発生や魚病の頻発、さらには養殖魚の成長率鈍化や歩留まりの低下等をもたらすなど、大きな問題となってきました。
 このため、生産者や県、国が一丸となりまして、持続的な養殖生産のため調査や技術開発を進め、1999年、持続的養殖生産確保法が制定される運びとなったところでございます。持続的養殖生産確保法の目的は、持続的な養殖生産の確保を図り、もって養殖業の発展と水産物の供給の安定に資するとしており、そのために漁業協同組合等による養殖漁場の改善を促進するための措置、特定の養殖水産物の伝染性疾病の蔓延防止のための措置を講ずるものでございます。
 魚類養殖における環境負荷軽減策は、(1)養殖魚の放養量を適正規模に抑制すること、(2)といたしまして残餌を少なくするような適正な給餌を行う。給餌に関しましては環境負荷の小さい配合飼料への転換、すなわち生えさからモイストペレット、モイストペレットからドライペレットと、さらにはエクストルーデッドペレットと、俗に言うEPと言いますが、このように大きな流れがございます。
 私たち養殖業者は、漁場改善計画を作成いたしまして、漁場環境の改善を図っております。養殖漁場の改善を図るため、適正養殖可能数量の設定や養殖密度、小割生簀の配置に配慮しております。養殖漁場内の水質、底質の改善を図るため、養殖着手前には必ず海底耕うんを実施するということでございます。  餌飼料の種類の制限といたしまして、生えさ単独での給餌は原則として行わず、固形配合飼料もしくはモイストペレットを使用しているところでございます。給餌量の調整及び投餌による汚濁防止といたしまして、給餌量は飽食量の80%を目標とし、投餌に当たっては飼育魚の摂餌状態を観察しながら適宜給餌量を調整することにより、残餌による自家汚染及び過食による不健康魚の発生を防止しております。
 養殖業者は漁場環境の維持、コスト削減の視点から、最も効率的なえさのやり方を模索しております。例えば、夏場の投餌は隔日もしくは3日に1回など、給餌量を調整し、魚体の健康の維持、体質の改善に努めております。
 このように養殖業者は効率的な養殖業の経営を目指し、種苗やえさの共同購入や安全でおいしい魚を育てるために、組合員が一致してえさの与え方を工夫し実行することや、養殖漁場の環境保全に努めております。また、消費者に安全・安心な魚としてアピールするために、養殖現場の見学を行い、これらの漁場保全の取り組みを説明しております。
 これから庵治漁協の説明を若干させていただきます。
 私が組合長をしている庵治漁協では、先ほども県の政策部の濱本参事のほうから話がございましたように、漁船漁業が非常に活発な地域でもございます。魚類養殖、またノリ養殖など養殖業も盛んですが、私どもが行っておりますイカナゴやチリメンを対象とする、こまし網漁業、エビやカレイを対象とする小型底引き網漁業の漁船漁業も盛んでございます。どちらも備讃瀬戸の早い潮流を利用した漁業でありますが、近年、ビニール等の浮遊ごみ、海底ごみによる漁業操業の障害が問題となってきております。台風などの大雨のたびに陸上、河川により大量に流入してきますが、海から定期的に除外する仕組みが設立されていないため、どうしてもごみが海底に堆積し、海面を漂流し、毎日の漁業環境に支障となっております。しかし、漁業者レベルではどうすることもできないというもどかしさも反面ございます。早く国において海のごみを除去する仕組みをつくっていただきたいなと、このように思っております。
 私は、庵治の先達から、イカナゴが生息する洲は海の宝と聞かされまして育ってきております。海砂採取にはこれまでことごとく反対して、海を守るという観点からやってきたわけでございますが、近年、特に藻場や干潟などの海の生き物になくてはならない重要な場所でございますが、埋め立てや工事により、また浚渫等により、海砂採取等々が行われまして、漁場が消滅する事例が多くなっております。豊かな海をつくる基本となりますこれらを回復させたり、保全することが最も重要であろうと、このように考えます。近年、藻場の衰退が著しく、早急に国において現状の解明をお願いいたしたいと思っております。
 最後になりましたが、近年漁業を取り巻く環境は厳しいものがございます。魚価安、また輸入水産物の増大等々、我々漁業者はおいしい水産物を日本国民に生産するために頑張っております。国においてもこの漁業はだめだ、これは持続させようとか、仕分けすることなく、すべての漁船漁業、魚類養殖業、ノリ養殖業が持続できる海の環境を目指し、頑張ってほしいと思います。従来の日本漁業は同じ海を複合的に各種漁業や養殖業が利用してきました。赤潮発生の心配をせずに魚類養殖が営まれると同時に、ノリ養殖も問題なく営まれることが、海を十分に生かしていることの証左であるし、窒素・りんなどの栄養分がうまく循環している状態と考えられます。ぜひこのような豊かな海に瀬戸内海がなることを目指してほしいとお願いする次第でございます。ありがとうございました。

○白幡座長  ありがとうございました。
 ただいまの御意見発表に対して、御質問等ございませんか。

○松田委員長  どうもありがとうございました。
 香川県の魚類養殖は安戸池の話以来、多少存じ上げているつもりですが、途中で持続的養殖生産確保法の話がありましたが、この法律は必ずしも強制力のある法律ではなくて、それから御承知のように漁場改善計画も不適格をつくることができるというようなことで、つくらなければいけないということじゃなかったと思いますので、漁協さんによっては、かなり初めのころは特に全然無視したりとか、関係しなかったところもあったかと思いますが、こちらの香川県さんのかん水漁業のほうでは、この法律も有効に利用して、この環境の改善を実現してきたと理解してよろしいのでしょうか。

○香川県かん水養殖漁業協同組合嶋野代表理事組合長  主要漁協で養殖をやっているところが大体7漁協県下にございます。すべて漁場改善計画を施行前に申請いたしまして、改善計画は実行しておるところでございます。

○松田委員長  ありがとうございます。

○白幡座長  ほかにございませんか。

○森川委員  ありがとうございます。2点、教えていただきたいと思います。一つは海ごみの関係で、海底のごみ、大変だと思うのですけれども、国において除去する仕組みを、ということを発表いただいたのですが、組合長さんから見て、例えばどんな仕組みがいいかなというのは、何かイメージがありましたら教えていただきたいのです。こういうふうにしたらいいのではないかなということで。
 それからもう一つは、近年藻場の衰退が著しい、と発表いただいたのですけれども、これは埋め立て以外に藻場が衰退しているということなのでしょうか。であれば、国において原因の解明を、ということでしたが、組合長さんとしては、大胆に実感として何が原因と思われているかということを教えていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○香川県かん水養殖漁業協同組合嶋野代表理事組合長  浮遊ごみでございますが、もう恐らく皆さん御承知かと思いますが、特にスーパーのごみ袋、これがやはり川から海へ流れ込んでおるという実態がございます。当庵治漁協でも、昔青年部がごみの持ち帰り運動をやろうということで、私も率先してやった次第ですが、一向に減らない。また、ごみを持ち帰っても焼却する場所がない。今では市とか県とかにお願いすると埋め立てごみに持っていくというようなことで、なかなかそこの予算化がままならないと申しますか、そのようなこと。昔、町の焼却場で燃やしたこともあったわけですけど、やはり炉が傷むということもございまして、もうその後は焼却しないということになってきております。どんな仕組みをと言われましても、本当はやはり陸上部で、我々も含めてですが、ごみを捨てない、これが一番だろうと思いますね。ポイ捨てはやめようということで、それができましたら、これ以上増える要素はないわけで、あとは漁業者サイドが年間に何日間かごみの収集日を決めて、後、取ってきたごみを行政が処分するという形がとれればよいのかなと思っております。
 また、藻場の衰退でございますが、近年、藻場が増えてきた形跡があるわけですが、昨年ですか、また藻場が全然見えないというような状況です。先ほども岡山県の竹原組合長さんからも申されましたけれども、夏場、潮が干上がりますと藻場が海面に露出してきておったものが、昨年ですね、全然見えなくなったということもございます。ですから、その年、年によってアマモの発生、これが何らかの変化でまた枯れたりしておるのかなと思います。当然、アマモとか、ことし特に顕著に見受けられるのがガラモですね、岩場にガラモがほとんどなくなったと。過去に私の記憶では、ガラモが岩場になくなったということはないのですが、その一つの要因としてバリゴがたくさん繁殖して食べたのではないかと言うような方もおります。当然、先ほど竹原組合長が申されましたように、ノリ養殖の食害というような大きな問題も起こっています。チヌとかマダイが非常に増えてきておるような状況の中で、12月の水温の高い時期にチヌとかタイがノリを食べてしまうというようなことで、ノリが全然伸びないと。これも大きな問題になっておるところでございます。ですから、藻場についてはやはり環境、やはり水のきれいなところでないとなかなか育たないのかなと。ただ、先ほどのお話がございましたように、下水道の基準値の問題等々ございます。養殖業とノリ養殖は相反する立場にございますが、水清くして魚住まずというようなこともございますので、どうか昔のように豊かな海で、どんな漁業でも生計が立って、瀬戸内海で生活をやっていけるというような国の方向づけが望ましいのかなと、このように思っています。

○白幡座長  森川委員、いいですか。嶋野様はおられなくなるので、後で時間がありませんので、もしよければもう少し御意見があれば。

○白山委員  一つ、伺いたいことがあるのですが、養殖を着手する前に海底耕うんをされるということですが、具体的にはどういうことをして、それがどういう効果があるのか、教えてくださいませんか。

○香川県かん水養殖漁業協同組合嶋野代表理事組合長  もう御承知のとおり海底耕うんはかなり昔からやっておったわけですが、まず海底のヘドロは漁期終了後には堆積しております。当然、魚類のふんとかということで堆積しておるわけです。それを庵治漁協のほうでは鉄管にチェーンを10mほど垂らしまして、それを漁船で1日10隻ほど出て、1日中漁場を引っ張るというようなことで。本来なら戦車こぎという漁具があるのですが、これでこぐと非常に海底耕うんの効果があるわけですが、漁具的に問題があるということで、戦車こぎは使っておりません。
 それと、香川県の海は、冬場は特に北西の季節風が吹きますので、自然浄化される部分がたくさんあります。私どもの庵治漁協はもう満潮時で水深6mの漁場で、全国一浅いハマチの養殖漁場ということになっておりますので、大体1.5m/sほどの季節風が吹きますと、もう海は濁ってしまって、ヘドロをかき上げているような状況ですから、前々、水産試験場の方が言われていたのは、漁期終了後と漁期開始後とでは海がもとに戻っておるというようなことも聞いておりますので、それにあわせてまた海底耕うんも実施して、漁場環境をよくしていこうというようなことで取り組んでおるところでございます。

○浜野委員  そうしたら、冬の波当たりの強さというのは近年増えているとか、そういうことはどうですか、感覚的なもので。

○香川県かん水養殖漁業協同組合嶋野代表理事組合長  去年と一昨年は非常に風が吹いた、日本海からの冷たい季節風が吹いてきてということで、その前はもう御承知のとおり温暖化傾向で暖冬と言われる年には、季節風があまり吹かないと。ですから、当然、漁場環境もそんなにはよくなってないというような状況になるかと思うので、そのときは養殖業者が組合と相談し合って、海底耕うんの時間を長くするとか、そういうふうな工夫も凝らせておるところでございます。

○白幡座長  嶋野さん、どうもありがとうございました。
 これで前半を終わりたいと思うのですが、少し退席される方のために質問の時間を余分にとらせていただきましたので、5分ほど予定より遅れておりますけれど、休憩は15分まででよろしいでしょうか。トイレ休憩という感じで、15時15分に再開したいと思います。どうぞ、よろしくお願いいたします。

(休憩)

○白幡座長  それでは、時間がちょっと過ぎましたが、ヒアリングを再開いたしたいと思います。
 早速始めたいと思いますが、続きまして先ほど交代していただきました海洋建設株式会社の田中所長様から、発表をどうぞよろしくお願いいたします。

○海洋建設株式会社水産環境研究所田中所長  岡山の海洋建設から参りました田中でございます。よろしくお願いいたします。
 私からは、貝殻を利用しました海域環境修復について御紹介をさせていただきますが、これまで30年間にわたりましてやってきましたことをまとめてまいりましたので、10分間という時間でございますので、後で見ていただきやすいようにということで、資料はたくさん用意させていただきました。できるだけ写真と絵を多くしたつもりでございますけれども。今日は10分の中でどれだけお話しできるかやってみないとわかりませんが、駆け足というより全力疾走ではしょりながらということになろうかと思います。よろしくお願いいたします。
 まず、なぜ貝殻かというお話でございますが、実は貝床とか貝の巣とか呼ばれるホトトギスガイの群落、あるいはカキ礁ですね、オイスターリーフ、あるいはカキ殻の堆積した場所というのは、ゴカイ類が多量に生息しまして、非常に高漁場が形成されるということは、古くからの漁業者の間では知られておりました。したがいまして、貝殻の利用技術というのは漁業者、漁師さんの知恵から生まれたと申し上げてよろしいかと思います。
 最初、カキ殻を使ってアマモ場の再生に活用した事例を御紹介いたしますが、岡山県では昭和20年代ごろまでは4,300haのアマモ場がございまして、沿岸びっしりアマモ場だったと。それが昭和60年にかけてその9割がなくなってしまいました。そのアマモ場再生活動の発祥の地というのは、岡山県の一番東の端なんですけど日生町というところでございまして、この日生でも昭和20年に590haあったのが、昭和60年には12haまで減ってしまっています。
 そこで、つぼ網という小型定置網漁業があるのですが、それの漁業者たち26名が、そのアマモ場再生活動を始めたのが昭和60年のことでございます。花枝を春に採集しまして、秋に種子をまくと。その数、今まで25年以上の間に7,500万粒以上に及んでおります。ただ、種子をまくだけではなかなかアマモ場は戻りません。カキ殻を散布して底質改良したり、ゼオライトを使ったり、あるいはマットに詰め込んで敷いてみたりとか。あるいは、湾の入口にカキ殻を持ってきて透明度を上げることをやってみたり、色々なことをやってきましたけども、その中で、実は全形の粉砕してないカキ殻が、非常にアマモの安定に役に立つということにたどり着きました。
 カキ殻をまいてアマモの種をまきますと、しっかりとそこに活着するわけですけども、それを見てみますと、ひげ根、アマモのひげ根がカキ殻にしっかり巻きついて体を固定する。いわゆる、アマモの体を支持するアンカー材としての役割を果たしていたと。その上に、さらに浮泥の巻き上げを抑えまして光合成阻害を防ぐということもわかりました。そういったことで25年以上取り組みまして、12ha、さらに5haまで減ったことがあるのですけれども、それが200ha以上まで戻っております。
 これまでの日生のアマモ場の再生の取り組みというのも、もう30年ぐらいに及ぶのですけども、それらの成果を平成13年に岡山県としてもアマモ場造成技術指針として取りまとめをしまして、岡山県全域のアマモ場も一番減った550haから、現在1,200ha以上にまで回復をしております。さらに、この調査の過程で、カキ殻をまいたり、過去に堆積している場所というのは、底生生物が数倍から数十倍も多いということがわかりまして、一番古いものでは25年以上経過した場所でもそれが確認されております。こういったことを、アマモ場の先ほどのお話も含めて、カキ殻の有効利用に係るガイドラインとして2006年6月に岡山県がまとめております。適用海域は、ただこれまでの実績があった軟泥質の潮間帯及び潮下帯などの浅海域に限ったものでございます。これで岡山県としても公共事業で様々なことをやってきたということでございます。
 次に、海洋牧場に活用された事例ですが、岡山県には西の端の笠岡と東の端の日生、ここの2カ所に海洋牧場がございます。岡山県の海洋牧場の拠点づくりとしての考え方というのは、ここに書いてございますが、生態系の中での個々の水産動物のニッチを崩さずに生態系全体を底上げするということを目標にしておりまして、そのためには小型のエビ、カニ類、ゴカイ類などのえさ生物の培養が不可欠でございます。そういったことで開発したのが、この餌料培養礁でございますが、このパイプの中にカキ殻を詰めております。これが3m角の高さ2mのものでございますが、これで200kgぐらいのえさ生物が世代交代を繰り返しながら住みつくと。どういったものが住みつくかといいますと、エビ、カニの仲間20種以上、それからゴカイの仲間30種以上、ヨコエビの仲間25種類以上、貝類が20種以上、さらにサザエとかタコの子供なんかも入り込みます。さらに、その礁の内部や周辺には、こういったパラカラヌスとかアミ類、そういったもののスウォームが多量に発生をいたします。さらに申しますとカキ殻基質、カキ殻の入った基質は浮泥がたまりにくくて内部に遊走子が入った場合、その中を通り抜けるような動きになるのですが、そこに乱流とか層流が発生して着床しやすい。それから、固着力が平滑面に比べて、このようにしっかりと巻きつきますので、約1.5倍ある。さらにウニ類等による食害を受けにくいということで、岩礁性藻場の付着質としてもすぐれていると。そういったことでカキ殻の餌料培養礁はえさ場と住み場の提供による生態系の底上げに役立つということで、これは笠岡地区の海洋牧場のイメージでございますが、こういう流れの陰場に設けられた稚魚の保育場。東の日生の海洋牧場ではアマモ場を離れた幼魚から未成魚の育成場に活用されております。
 次に、平成21年度から岡山県と共同で進めておりますカキ殻を利用した総合的な底質改良技術の開発についてでございます。先ほど御紹介したガイドラインは潮間帯とそれに続く浅海域で、さらに軟泥質の海域というところに限定したものでございまして、その活用範囲をもっと広げる技術開発をすべきだということで、岡山県と共同でしております。今年度で3年目でございます。一つは締め固めが済んで固くなってアナジャコしか住めないような干潟の改良。これは粉砕カキ殻をすき込む方法でやっています。もう一つは水深10m程度の非常に流れの停滞したヘドロ状になった海域といいますか、そういったところの2カ所のフィールドでやっています。
 まず、締め固めが済んで非常に生物生産性が落ちている海域としては、フィールドとして吉井川の河口部の26haの干潟を選んでおります。この場所に粉砕カキ殻をすき込みまして粒度組成と透水性を向上してやることで、底生生物を増やすというものでございますが、この赤の折れ線グラフが種の数を示しています。それから、左の棒グラフが個体数、右の棒グラフが湿重量、上が試験区、下が対照区でございますが、対照区では御存知のとおり、これは1年半ぐらいの間のものを追っていますけども、季節変化がございますからずっと少ないままでございますが、カキ殻を敷設したほう、カキ殻をすき込んだほうは個体数は約3倍になって、湿重量に至っては数十倍になっておりまして、対照区と比較してもはるかに多いと。特筆すべきことは、全く見えなくなっていたアサリが戻ったということですね。さらに成長している。マテガイのほうも対照区にわずかにいたのですが成長してない、試験区のほうは確実に成長しているということでございます。
 それから、底質環境につきましてもCOD、ORP、IL、AVS、いずれも改善しております。赤が試験区でございます。
沖合浅場のほうですが、沖合浅場の場所は水島港の人工島の西側、これができたことで流れが滞留して非常に悪化をしておりますが、水深6mほどの海域ですが、こちらにはすき込むんではなくて、原地盤の上に50cm層でカキ殻を敷設して、新たな底生生物の生息層を創生、つくり上げてやるという考え方でやっておりますが、これも同様に下が対照区、上が試験区でございますが、はるかに生物量が多い。種類数に至っては、エビ、カニ類、ゴカイ類が増えまして120種に及んでおります。これも特筆すべきことですが、これで非常に驚いたのはナマコがすごく増えたということですね。一番多いときで1㎡当たり13個体以上おりました。それからマコガレイの稚魚が見えるようになって、イイダコの卵も見つけていると。さらに濁りも改善されていることがわかりまして、セディメントトラップ調査をいたしますと、海底のすぐ上のセディメント量が半分ぐらいになっております。これは再懸濁を防止して透明度を上げたということですが、それによりましてカキ殻を敷設した後、全く見られなかったコンブ類とか緑藻類ですね、そういった海草の植生が見られ始めました。
 これをまとめてみますと、原地盤にカキ殻をすき込んだり敷設をいたしますと、粒度組成や透水係数が向上して底生生物相が多様化いたします。そうしますと、有機物を食べたり、かき回したり、巣穴をつくったりする、いわゆるバイオターベーションによって、さらに環境が改善されて再懸濁の防止によって濁りが抑えられて、付着珪藻や藻類がふえて、さらに生物層が豊かになって、上位の食物連鎖に行って水産資源が増えるというメカニズムと考えております。  さらにこれを広い海域に引き延ばしてみますと、こういった閉鎖性水域に長年にわたって堆積した有機物とか、それから広範囲に広がっている懸濁物というのは、下に積もって底質を悪化させて、最終的には硫化水素を発生させるなどの環境劣化のスパイラルに入るわけですが、さらには光合成阻害を招いたりするわけですけども、そういった場所に貝殻利用技術でモザイク状のエコトーンをつくってやることで、これらの有機物を生物に置きかえて腐食連鎖に乗せてやると、さらに上位の生食連鎖につながる。さらには堆積物の中に封じ込められた栄養塩をこういった底生生物の摂食と排せつの繰り返しによりまして無機化を促進して、これらも窒素循環に乗せていくということで、環境改善のスパイラルに入って生物多様性と生物生産性の向上が見られるはずだというふうに考えてございます。
 もう時間が来たようですので、ちょっと過ぎまして申しわけございません。まとめは後でご覧ください。ありがとうございました。

○白幡座長  どうもありがとうございました。
 時間が余りましたら追加で説明もいただきたいと思いますが、どうもありがとうございました。御意見、御質問がございましたらどうぞよろしくお願いいたします。

○白山委員  カキ殻は瀬戸内海ですと広島県とかたくさん養殖があるので、十分な供給があるということで、現地で十分に調達が可能だということなのでしょうか。
 それからもう一つは、カキ以外の貝殻、例えばホタテなども日本全体から見れば非常にたくさん処理に困っているものですけれども、そちらについては試してみたことがあるかどうか、伺いたいと思います。

○海洋建設株式会社水産環境研究所田中所長  まず、カキ殻は全国でたしか18万トンぐらいだったと思います。それから、貝殻、ホタテもアコヤ貝も全部入れて、ちょっと記憶は定かでございませんが四十数万トンだったと思いますけども、カキ殻については実は今、主に肥料に加工されて、民間業者によって加工されて販売されているという実情がございますけれども、それ以外の用途として、やはりこういったもともと海から発生した貝を循環して海に戻して有効に活用するという観点から、こういう方向のことを進めてきたということでございます。ですから、漁協さんが持っている貝殻を、やはり使えるようにきちっと管理をして使うという意味でいけば、今の段階では十分な量が確保できるのではないかと思っております。
 それと、ホタテ貝、アコヤ貝、その他の貝殻についてですが、ホタテ貝もアコヤ貝も実は先ほど御紹介しました餌料培養礁で活用しております。現実に効果もやはり十分ございます。特にホタテ貝についてはキジハタなんかの、ハタ類の、非常に当歳魚の弱いときの隠れ場としての機能がすぐれておりまして、岡山県でもこれを使っておりますけども、定着率、生存率を非常に上げるということで、もう既に公共事業で使われているというものでございます。アコヤ貝も使っておりますね。ホタテについては、まだまだ用途が広がっていくと思いますけども。
 以上でございます。

○白幡座長  ほかにいかがでしょうか、御質問は。

○浜野委員  よいですね、再懸濁の防止に役立つというか、これはとても色々な意味でよいなと。海底にいい栄養を供給してくれるし、ナマコが増えるのはもっともだなと私は思いました。その貝殻なのですけどね、一度やはり上に置いて空気に触れさせるというようなことをして、それからまたおろすということが重要なのか、すぐにもう養殖業者としては、割ったらすぐに、もうそのものが処理できると本当は一番よいわけなのですけど、そこら辺のところをちょっと。

○海洋建設株式会社水産環境研究所田中所長  先ほど御紹介したガイドラインの中には詳細を御紹介しませんでしたが、カキ殻を利用するに当たってのルールを決めておりまして、基本的には水産用水基準の底質、CODが20以下、硫化物が0.2以下でございましたか、それからノルマルヘキサン抽出物は検出されないという、そういったものにクリアしたものということを決めております。なおかつ、申しますと、一般に海中一時堆積場に置いたようなものは半年以上たつと、今までの経験的なもので申しますと、その条件は十分にクリアできると。さらに陸上で置かれて保管されたようなものは、ある程度一定期間以上風乾といいますか、されてやはり有機物が水産用水基準の底質以下になったものを使うということを決めております。

○浜野委員  ありがとうございます。その基準についてはいかがお考えになりますか。こういうものに対して、一時置きをやってまた動かすというのは、すごくエネルギーの無駄のような気もしますし、一時的に上がったとしても、色々な値がですね、それが例えば生態系に及ぼす影響とか、漁業、生態系への影響なんかを考えたときには、どうお考えになりますか。

○海洋建設株式会社水産環境研究所田中所長  それは今後の課題といいますか、規制を緩和していく方向というぐらいの意味でよろしいですね。それについては一つの方法としては、いわゆるカキ殻を敷設、あるいはすき込む対象にする海域の底質よりもいいか悪いかという判断、方法がございます。それと、もう一つは日生でもカキ殻を一時堆積場で保管しているのですが、そこもずっと定期的に色々な状況を見ておりますが、残渣とか、貝柱とか、そのままつけたまま入れているにもかかわらず、非常に環境がよくなっていっているといいますか。そういったものがマイナスになってないのですね。そういったメカニズムを、実は今年から調べていこうということで今考えていまして、その辺のメカニズムが科学的に解明されていけば、ある一定の流速が要るのかとか、流況とか、色々なその辺の環境条件、そういったものも加味する必要があると思いますので、その辺のメカニズムを明らかにしていけば、緩和していく方向に持っていけるのではないかと考えております。お答えになったかどうかわかりませんが。

○浜野委員  十分です、ありがとうございます。

○白幡座長  よろしいでしょうか。では、田中様、ありがとうございました。もし時間がありましたら、後でまた御意見をいただきたいと思います。  続きまして、先ほど交代して、後ろに回っていただきました公益財団法人の水島地域環境再生財団、塩飽研究員様から御発表をお願いいたします。どうぞよろしくお願いします。

○公益財団法人水島地域環境再生財団塩飽研究員  改めまして、こんにちは。公益財団法人水島地域環境再生財団、長いので略してみずしま財団と言いますが、そこで研究員をしております塩飽と申します。本日はこういった場にお声がけをいただきまして、ありがとうございました。早速、お話を進めさせていただきたいと思いますが、今日はみずしま財団の取り組み、瀬戸内海の環境再生を目指してということでお話をさせていただきたいと思います。
 まず最初に、そもそもみずしま財団とはどういうところなのだということですけれども、もう皆さんも御存知のことかと思いますが、岡山県にあります倉敷市水島というところは、1950年代から鉄鋼・石油化学のコンビナートによって発展してきたところなのですけれども、それと同時に大気汚染公害が発生しまして、その水島地域で公害健康被害補償法という法律の認定患者さんだけで4,000人ぐらいの患者さんが発生するということが起こりました。その患者さんが1983年に裁判を起こして、1996年に和解を企業としたのですが、そのときに和解金の一部を地域の環境再生に活用できるということで、地域の環境再生、まちづくりの拠点ということで設立されたのが私どもの財団で、2000年に設立をされています。
 今日のお話の流れですが、ざっとまず活動の背景とそれから実際に備讃瀬戸海域における海底ごみの調査活動の御報告と、それから瀬戸内海が目指すべき将来像についてということで、少し提言のようなお話をさせていただきたいと思います。
 まず、活動の背景についてですが、先ほども言いましたようにコンビナートが1960年代にできまして、先ほど大気汚染公害と言いましたけれども、その前に当初、異臭魚ですとか油臭魚、油臭い魚ですね、そういったものですとか、それから水質の汚濁という海のほうから環境問題というのが顕在化をしてきます。
 それから、先ほどもお話がありましたが、1974年に三菱石油の重油流出事故などが発生して、瀬戸内海の環境が一気に悪化をしてしまうということが起こりました。そういうふうに水島というところは、この地域の海の環境問題が最初に起こったところということで、みずしま財団も設立に当たって、環境再生の取り組みとしてこの海の問題を取り上げることにしました。
 実際に海の問題ということで、一つ着目したのがごみの問題です。先ほど御紹介もありましたが、近年問題になってきているということで、海岸に漂着したごみですとか、漂流しているごみということで取り上げられているのですが、実はこの表面に見えるごみ以外にも、目に見えない海の底にもごみがあるのですが、なかなかそこが注目されていない。実際にちょっとお送りいただいた資料を見ても、海岸漂着ごみ、漂流ごみはあるのですが、海底ごみについての記述がほとんど書かれていないということで、この海の底のごみというのはまだわかってない部分がたくさんあるのではないかということで、ここに着目して調査を行いました。
 じゃあ、実際に海ごみの問題としてどんなものがあるのかというと、ざっとこういったところがあるかと思いますが、一つはやはり海岸に堆積することによる景観の悪化ですとか、それからゴーストフィッシング。これは漁業系のごみになりますけれども、そういったものがあることによって水産資源が失われてしまったりですとか、あとは実際に漁業者の方にとって網がですね、これは小型底曳漁業の網ですけれども、こことここ分かれていますけれども、これはもともと一つあったものなのですが、大きな鉄板か何かにかかったことによって真っ二つに裂けてしまって、網が使い物にならなくなったりですとか、あと実際に網にごみが詰まって魚がとれなくなってしまったりとか、そういう漁業者への被害。あと、それから実際に後でお話ししますが、ポリ袋などのごみが大量に海底に堆積することによって水循環が妨げられたり、生き物が出入りできなくなったりという環境悪化ということも考えられています。
 実際に備讃瀬戸海域における海底ごみ調査ということで、みずしま財団が行ってきました調査というのは、こういった形で、まずは備讃瀬戸海域で実際に岡山県の西部にあります寄島町漁協の協力をいただいて、小型底曳網で毎日、漁業者が操業されて、網の中にかかってきたごみの量を集計して、実際にその実態把握をしたりですとか、それから近年ではこちらの香川県の、海守さぬき会ですとか、香川県水産課さんのほうから委託ということで、実際に漁業者の方が集められたごみの実態把握調査ということも行っています。そのほかにも2001年には、瀬戸内海沿岸の各漁協にアンケートを出しまして、それに関連して実際に海ごみに関する調査、ヒアリングなども行っています。
 実際に調査をして、これはちょっと古いデータなのですけれども、2006年度のデータとして個数で見てみると、やはりポリ袋が大体半分ぐらい、46%を占めていまして、そのほかプラスチック製品といったもので、いわゆるプラスチック系のごみというのが大体7割以上、大半を占めている。それに対して漁業系のごみというのは非常に少なくなっているということが、おわかりいただけるかと思います。要は、我々の陸上での日常生活から排出されたごみが大半を占めているということになります。ただ、これは先ほど言いました小型底曳網漁業の中にかかってくるごみを集計したものということになりますので、先ほどのお話にもありました航路沿いなどですとか、港湾区域内などにはもっと大きなごみが揚げられることもありますけれども、そういったものはカウントされていませんので、その点、御了承いただきたいと思います。
 実際に先ほども言いましたように回収をした中で、1ないし2名の漁業者の方に回収をしていただいて、10年間で約10トンぐらい、13.6トンのごみを回収してきています。また、それから先ほど言いましたように陸上から排出されたごみが大半を占めているということと、あと、それからこれはヒアリングですけれども、先ほどアマモ場の再生、取り組みをされていた日生町漁協ではごみの回収も取り組まれていまして、今から30年ぐらい前は1日12トンぐらい揚がっていたごみが、ずっと回収の取り組みを続けることによって、1日5kgぐらいまで近年では減ってきているというデータもあります。
 それから、じゃあ実際にどこから発生しているんだろうということで、岡山県にあります高梁川で流域における海ごみの対策調査ということで行いまして、実際に流域の高梁川本流と、それから用排水路ですね、それから高梁川に流れ込む支流などのピックアップをして、実際そこの河川の川原に散乱していたりですとか、水門などにかかっているごみを実際に調査してみたデータですが、圧倒的に多いのは実はたばこの吸い殻でした。これは個数です。ただ、これは軽いものなので、海岸漂着ごみとしては多いのですが、海底ごみとしてはほとんどかかってきていないということになります。2番目に多いのは、こちらポリ袋になっていまして、やはりこれが重量でも一番多くなっていまして、こういったところで河川から発生したごみが実際に海底に堆積している、そこのつながりというところが明らかになったのではないかと思います。
 ここのところ、先ほどの調査の結果ですが、大体高梁川流域、岡山県の西部ですね、備中と言われていた昔のところの地域内で、大体年間130トンぐらいのごみが発生しているのではないかと考えています。
 これがまとめたところですけれども、こういった形でプラスチック系のごみが非常に多いということ、それから新しいごみが流入し続けているということ。あと、それから実際に漁業者が回収をすることによって大きな成果を上げられるのですけれども、先ほどもお話がありましたが、実際にはそこのところがうまく回っていないために、きちっと回収がされていないということが課題として挙げられます。
 あと、それから財団では、そういった海のごみの問題を市民の方に知っていただこうということで、海の生き物観察ですとか漁業体験といったことを通じて、海ごみの問題を伝えるような体験学習のプログラムも行っています。
 最後に、目指すべき将来像ということで少しお話をさせていただこうと思いますが、まず最初に、やはり漁業者の方に負担の少ない回収処理の方法の確立です。先ほどの組合長さんもお話しされていましたが、やはり漁業者が日常持ち帰っても、きちっとそれを処理する体制ができていない。そのために漁業者が持ち帰りできないという問題がありますので、そういった漁業者の方が持ち帰ったものをきちっと自治体で処理をする仕組みづくり、それから例えば先ほどありましたごみの回収に伴って破れた網の補償をするといった、そういったものも必要なのではないかと思います。実際に岡山県ですとか、それから尾道市などでは、そういった取り組みを進めて大きな成果を上げてきているということになります。
 それから、あとはやはり海ごみ、中でも特に海底ごみに関しては先ほどもお話ししましたが、実際になかなか責任が明確になっていない、そういう法制度も整っていないということで、やはり海底ごみの大半は陸域から発生する一般廃棄物と捉えて、きちっと位置づけをして、その処理責任をどこにするかということを明確にするということ。それから、海底ごみ、これは海底ごみに限ったわけではないですけれども、やはり近年の大量生産・大量消費・大量廃棄ということですね、使い捨ての製品というもの、先ほどもありましたポリ袋ですとか空き缶ですとか、それからたばこの吸い殻も含めて、そういったものは生産段階では回収して処理することまで考えられていない、つくりっぱなしになっているのですね。そういったものをきちっと拡大生産者責任ということで、ごみにならないように、まずはつくる段階から対策をとるように、これはもう政策的に誘導するしかないと思いますので、こういったところを国としてきちっと対策が必要ではないかと思います。
 あと、それから海に流出してしまうとごみというのは回収が非常に困難になります。漁業者の方が網にかかったごみを回収するくらいしかできませんので、そういったものに対して河川の時点で外に出る前に、まだ川原なんかに堆積している時点で回収をしたほうが効率的で手間も少ないので、国交省も含めて、そういう横の連携をとって、この海ごみ対策というものに取り組む必要があるのではないかと思います。
 あと、それから先ほども言いましたように、市民が海に親しむ、近年、市民が海になかなか近づけない状況になっていますので、市民にも親しむことによって海に関心を持ってもらって、このごみの問題についても関心を持ってもらうことが、ポイ捨てですとか、そういったものの抑止につながっていくのではないかと思います。
 あと、それから最後になりますが、やはり最初にもお話がありましたように、流域、瀬戸内海全域で考えていく、やはりごみというものは県境も関係なく流れていきますし、それから上流河川から発生しているということで、陸域も含めて全体的に流域圏という考え方で、この問題についても対策をとっていく。これは何もごみだけに限ったことではなくて、瀬戸内海全域の環境を考えていく上でも重要なことだと思いますので、そういった視点の中にごみの問題も含めて、こういった考え方で取り組んでいただきたいと思います。
 ちょっと時間のほうがオーバーしてしまいまして、申しわけありませんでした。

○白幡座長  どうもありがとうございました。
 ただいまの御意見発表について、御質問はございませんでしょうか。

○白山委員  先ほど非常に精緻なデータをお見せいただいたのですが、こういうのは公開されていますか。つまり、パブリックに、こんなにごみがあるのですよというのを知らせるような努力というのは、団体のほうではどのくらいされているかということと、日本海側ではNOWPAPと言って、国際的に海ごみを調べる仕組みがあるのですけれども、瀬戸内海ではそういう仕組みがどうなっているのかを、教えていただくとありがたいのですが。

○公益財団法人水島地域環境再生財団塩飽研究員  ありがとうございます。まず、情報発信についてですが、先ほどお見せした海底ごみのデータについては、私どもの財団のほうのホームページに載せたり、それからあとは広報紙で情報発信をしています。あと、それからこれまで毎年報告書という形で作成をしていまして、これは地球環境基金というところの助成をいただいてつくった冊子になりますので、御希望の方がおられれば無料で、郵送費だけいただいてお送りをさせていただくようにしています。あと、それから実際に漁業体験などに御参加いただいたときに、実際にそのときの配付資料という形で、実際にこれだけのごみがありますよというお話をさせていただくような、そういった形で、できるだけ多くの方に知っていただけるように取り組みを行っています。あと、それからもう一つ、財団でパンフレット、瀬戸内海を知っていますかという形で、海の環境ですとか、そういった取り組みなどについて御紹介するようなパンフレットをつくって、色々なところに、まだちょっと色々な公共施設とかいうふうな形できちっとはできていないのですけれども、機会があるごとにそういったものを配付させていただいて、できるだけ広く知っていただくように取り組んでいます。
 2番目の御質問にありましたNOWPAPのような取り組みに関しましては、ちょっと私どもの市民レベルというところではなかなかそういった連携というふうな形でというのは、まだあまり全体的には進んでいないのですけれども、これはもう先生方がよく御存知だと思いますが、やはり瀬戸内海の知事・市長会議の中で、こういった海のごみの問題も含めて、環境問題について取り組みをされているということと、岡山県と香川県の知事が連絡会議というふうなものの中で、2000年か2001年に実際にこの海ごみ問題について取り組もうということでお話をされていました。あと、市民レベルで言いますと、先ほども言いましたように、私どもの財団と、それから香川県に海守さぬき会という団体がありまして、そこで実際にこの海ごみの問題について取り上げたいということで、体験学習の講師に呼んでいただいたりですとか、実際に海底ごみの分析の委託をしていただいたりという形で、徐々にそういった連携ができつつあるのかなと思っています。

○白幡座長  よろしいですか。ほかにございますか。

○松田委員長  海底ごみの問題、なかなか重要な問題ですが、お話にありましたように責任体制が明確でないということで、非常に重要な課題になっているわけです。御提案のように法律の整備がされると一番よいわけですが、すぐにできない場合に、例えば府県とか、あるいは市町村のような自治体の条例などで、割とうまくやっているというような実例を、もし御存知でしたら教えていただきたい。

○公益財団法人水島地域環境再生財団塩飽研究員  実際に各自治体の、そういう縛りがないというのは、逆に自治体の裁量に任されているようなところもありますので、先ほども御紹介しましたように岡山県で取り組みをされていますのが、実際に岡山県の沿岸の7市に海底ごみ専用のステーションをつくって、実際にそこに漁業者の方が持ち込みをしたら、その沿岸の自治体がごみの処分をするという形で取り組みをされていまして、そういった漁業者の方に負担の少ない、持ち帰りさえすれば自治体のほうで処分してもらえるという、そういった漁業者と連携した取り組みというのが、一つ大きな成果になっているのではないかなと思います。

○松田委員長  どうもありがとうございました。

○白幡座長  ほかによろしいでしょうか。

○森川委員  ありがとうございます。沿岸の自治体で回収されたごみを処理されているところもあるのですが、沿岸の自治体だけの問題ではなくて、しかも塩分の問題などもあって、対応できるところと、できないところがあると思うのです。その中で、企業に拡大生産者責任を負わせるべきとのご意見について興味深いと思ったのですが、その仕組みについて、もう少し詳しく、例えばこういう形でやったらどうかとか、何らかの提言とかをまとめられたか、これから何か考えられているのか、教えていただきたいのですけれども。

○公益財団法人水島地域環境再生財団塩飽研究員  企業の責任というところを含めて、私どもといいますか、多少個人的な意見も入っているところもあるのですが、やはり一つは先ほども言いましたように河川流域、上流域も含めて、きちっと処理体制、責任体制をつくっていくということで、例えば沿岸部の自治体がそういう処理にかかわる負担の部分、費用負担の部分を、例えば海ごみ処理税と言うとちょっと縛られてしまうのですが、そういう形で、例えば海を守るための、岡山県では森林税というふうな形で、森を守るための税金というのがあるのですが、そういった形で上流域も含めて費用を応分負担する。その場合には、やはり人口が多いところからたくさんのごみが発生しているということが考えられますので、そういった人口割合に応じた費用負担をするとか、そういった形で上流域も巻き込んで、この海ごみの処理対策、費用も含めて応分負担をしていくということが、一つ必要なのではないかなと思っています。
 あと、それから企業のやはり拡大生産者責任というところでいきますと、先ほども言いましたように、そういったごみになるものを結局つくって、使い捨てのものが多いということで、一つはやはりデポジットなど回収する体制を企業としてつくっていくということが必要なのではないかということと、あと最悪ごみになったとしても、やはり海、自然に帰っていく素材に切りかえていくということが最低限の必要性というか、そういう取り組みをやはりきちっと企業としても行っていく。そして、そのとき同時に、市民として、今どうしても安かろう、良かろうみたいな感じで、どうしても皆さん、環境に配慮という以前に、そういうもののほうを購入してしまうというところがありますので、そういった市民がきちっと環境にも配慮したものであるということをしっかり把握して、それを選択していくような意識づけによる切りかえということも必要なのではないかと思います。そういったところの啓発ということも、合わせて行っていくことが必要なのではないかなと思います。

○白幡座長  どうもありがとうございました。
 ただいまの塩飽様、どうもありがとうございました。
 それでは、次の発表をお願いしたいと思います。NPO法人瀬戸内里海振興会の田坂専務理事様、どうぞよろしくお願いいたします。

○NPO法人瀬戸内里海振興会田坂専務理事  瀬戸内里海振興会の田坂でございます。このような機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 最近、知事さんあたりで瀬戸内海のイメージということで、青い海か、もしくは緑の海かという形でイメージをお話されていますけれども、私ども瀬戸内海についてのアンケートをしております。これは平成18年、19年ですが、以前16年にもございまして、やっておるわけですが、どんな海になってほしいか等含めて、どんな瀬戸内海を残したいかという、約3,200人ぐらいのアンケートをとっております。これは3歳から80歳まで、色々な方が書けるわけですが、回答とすれば、きれいな海と魚のたくさんとれる海を期待しているということでございます。
 そのような、私どもは、いつも言うのですが、海に関心を持たなくなった層が増えたというのは実感しておりまして、俗に言う海離れということを申しております。それらを少しでも解消したいということで、海辺の自然学校を運営しております。今までに15回ほど実施しておりまして、約1,500人の参加をいただいています。大体、座学と、それから海の生き物観察という二本柱でずっとやってきております。
 海のリフレッシュ活動ということで海底ごみ、漂着ごみをやっております。とりわけ平成22年度は海のリフレッシュということで海底ごみを、ずっとやってきたわけですが、今回、主体的に広島湾再生というテーマでやらせていただきました。ちょうど右側に少しぼやけていますけれども、これは広島港の公園の前にある海底の岸壁の近くですがアマモが生息しておりました。それから、左側にありますのが、これは大浦崎、ちょうど右端にありますが、ここは漂着ごみが非常に多いというところでして、海上保安庁と一緒に海底ごみを私ども、海クラブというダイバーたちの会員がおりますので、主体的に取り組んでいただきました。
 結果として、こういうごみ集約数がまとまっております。私ども、実は広島県の環境税という形で、特に山のほうにお金を使われていますけれども、少し海のほうにも使うべきではないかなということで、ホームページに御意見をいただきたいということで開示しておるところでございます。
 これは少しニュアンスが変わるわけですが、瀬戸内海の海砂採取は禁止になりました。言ってみれば海砂は貴重な財産となったわけでございますが、これらを今まで人工干潟の覆砂に使うだとか、それから、古来から、瀬戸内海では魚影を濃くするために砂をまく、それから広島県側だと思いますが、石を投入するということで、海草類の着定促進を図っていたということと、やはり山砂よりも海砂が非常にいいという漁業組合長さんのお話もありますので、これらを有効活用することができないかということで薄層撒出工法、ちょうど、こういう台船でもって実験を、後ほど言いますけれども、戸崎で平成20年に実施いたしました。
 これが私どもの活動する主なところでございますが、ここは国交省さんが航路だとか、木材の荷揚げ場をつくるという意味で整備を進めております。その中で浚渫土が発生しますので、それらを利用して近隣に人工干潟をつくっているという状況でございます。
 私どもは平成15年11月に発足したわけですけれども、とりわけ浦島漁業協同組合さんと手を携えて海老干潟でございますけれども、環境学習を実施しております。特に最近でございますけれども、非常にアサリがとれなくなった。私ども、どちらかというと水産業は経験がありませんので、あまり詳しいことはわかりませんが、稚貝をまいて、それを中間育成して出荷するというやり方でございますが、それのほとんどが死んでしまう、あるいは、大きくならないという問題がありまして、私どもは海老干潟をフィールドに使う関係上、何かお手伝いすることができないかというのが一つございました。それともう一つは、個々の漁業組合の平均年齢がもう70歳だということで、非常に労働力といいましょうか、なかなか日常的な干潟管理が難しい状況になっているということを感じております。
 そういう背景のもとに、昨年の3月に緊急雇用の制度を活用しまして、6名の方を雇用いたしまして、写真の中央は組合長なのですけれども、20代の方が2人、50代が1人、60代が3人という構成と、今回、土木指導員、それから水産指導員、いわば土木と水産の指導員2人をつけまして干潟の保全活動に入りました。
 これが松永湾周辺にあります、ちょうど上側に山波の洲というのがあります。これは自然干潟でございまして、左側が尾道水道ですが、ほとんどは行政が行った人工干潟5カ所について保全活動をいたしました。
 結果、1月31日で終わったわけですが、覆砂が陸側に護岸側にたくさん盛られたり、不陸の状態を重機でもってかき出す、まき出す、もしくは食害対策用に稚貝定着促進ということで笹がけを実施したということでございます。
 ほとんど瀬戸内海の干潟は西風を避けるという形で反対側につくられるのが普通なのですが、ここの海老呑については西側にもろに受けると。そのかわり非常に稚貝の数は多いのですが、ごらんのとおり漂着ごみも多いし、ちょうど完成のとこに少し白っぽく護岸が見えますが、排水口を1m50cmぐらい埋めてしまっているということから、なかなか栄養塩が流れにくい状況を感じています。それをまき出ししながら不陸整正するという作業を実施いたしました。
 これは笹がけでございます。それから、1月にはなかなか作業が潮の関係上難しゅうございますので、成貝の調査だとか記録を実施しました。これの背景には、先ほど申しましたが環境学習を実施したときに、エビが特にとれなくなったという話がありまして、専門家の方と、それから漁業組合の方と、それから小学校の生徒さん、先生らが一緒に干潟を歩きまして、昔はこうであったと。今こうなっているというような話を聞いたものを参考に保全活動をしております。
 豊かな海を目指した課題ということで、私たちはNPOでございますので、色々それぞれのお立場の方に添うという、苦情を言われないようにやるということが非常に肝要なことでございまして、色々な立場の人の意見を聞きながらやらせていただきますが、基本的に行政は縦割り行政というのがやはり、この干潟にもございまして、なかなかその辺の融合、話し合いというのは、非常に難しいというような感じを持っております。特に環境基準についてはほとんどの方が知り得ておりませんので、ましてはそれを数字化して記号化されていますので、なかなか実感としてはわかないという感じがいたします。特に芦田川流域のところでは田島さんというところでノリをやっているのですが、非常に栄養塩が少なくなっているという実感を漏らされていました。
 もとに返りますけれども、やはり道路があって、テトラポットを置いて護岸があるわけですが、やはり先ほど言いましたように、例えば管理用の斜路がないだとか、こういうことについて行政の縦割りをもう少し埋めるような、海から見た共通的なことはできないかというふうに思います。今度私どもは、今までやってきたものをさらに継続していこうということと、海を身近なものに感じ、大切にしようという機運を醸成することを目指していきたいと思います。  最後になりますが、私ども瀬戸内海のふるさとの海である里海の保全、再生創造活動、周辺地域のまちづくり推進という形で、今後も活動してまいりたいということでございます。
 以上でございます。

○白幡座長  ありがとうございました。
 ただいまの御発表に対して、御意見、御質問はございますでしょうか。

○浜野委員  人工干潟でのアサリの増殖試験をなさっているわけですが、漁業権がある場所ではないかと思いますが、漁協さんと具体的にどのように連携をとりながらやったかというのを説明いただけたらと思うのですが。

○NPO法人瀬戸内里海振興会田坂専務理事  まずは、ここは平成16年から環境学習をずっとやってきていまして、漁業組合さんとは非常に密度の濃い環境学習。例えば環境学習したときに漁業組合の婦人部の方にアサリのみそ汁をつくってもらったり、そういう親しい間柄になっております。そういう中で、やはり漁業組合の方で、ではアサリに詳しいかというと、そんなこともないわけで。しかし、過去から言うと、こういうことではなかろうかという話について、NPOとして、どれだけ添えるかと、どれだけ協力できるかという立場ですので、そんなに違和感がなくて、それでは組合長、こういうことでやりましょうということで活動しております。私の役割というのはどこかからお金と労力を引っ張って活動ができるよう汗をかいております。

○白幡座長  よろしいでしょうか。ほかに御意見、御質問ございませんか。よろしいですか。
 それでは、どうも田坂さん、ありがとうございました。
 続きまして、広島工業大学の上嶋先生に御意見をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○広島工業大学上嶋教授  広島工業大学の上嶋でございます。よろしくお願いいたします。  私は大学教員としての立場でのお話もあるのですが、一昨年立ち上げました瀬戸内海エコツーリズム協議会の代表理事を務めていますので、今日はその立場にウエートを置きながら提案をさせていただければと思います。
 本日の提案タイトルが「瀬戸内海の環境資源を活用したエコツーリズムによる活性化事業の推進-エコツアーの構築と活動を通じて-」となっていますけれども、近年エコツーリズムという言葉がかなり理解されるようになってきたのかなと思っています。日本では平成19年にエコツーリズム推進法ができまして、それ以来、各地にどんどんその活動が広まってきているというのが現状です。
 この基本的な活動の目的や趣旨については環境省さんが生物多様性条約会議COP10の中でおやりになりました。このCOP10では、いろいろ提案がございました。特に「愛知ターゲット」という戦略計画が採択されまして、とにかく海を対象とした生物多様性の保全を考えていかなければならないということです。即ち、海の生物多様性というものを意識してエコツーリズムを考えていくということなのです。もともと我々が生きている場所というのは、人間以外の生態系が存在するわけですが、それを意識しないで生きている。それを何とか意識するようにやっていこうというのが本質的なもので、山、川、森、海、里、一緒くたにして考えていくというのが基本的なことかと思います。このスライドは海洋生物多様性保全戦略というのが平成23年に提案されて、今現在は、もうきちっとした形になっていると思いますけども、そういうことも含めながら瀬戸内海全体の生物多様性を考えていきたいということです。
そこで、今日はお話しする課題としては2つ挙げたのですが、一つは瀬戸内海の自然環境資源の活用、これを生物多様性を継続するエコツーリズム活動としてやっていこうということの提案をしていきたいと思いますが。二つ目の課題としてスライドの下段に示すように、「瀬戸内海の環境再生の取り組み」、この辺についても、今日は他の方からいろいろ技術的な課題も出ていましたけれども、もっと、総合的な形でやっていきたいという提案です。これは多分、瀬戸内海東部地域での大阪湾について提案が出るでしょうから今回は説明を省きます。
 それで、第一提案の課題について紹介します。まず、生物多様性の継続的な環境管理をどうやって「活動」として行っていくかということで、説明します。
世界各国でナショナルトラスト、エコツーリズム、あるいはサンクチュアリー、ミチゲーション、あるいはラムサール条約等々が活動として実施されています。我が国の瀬戸内海国立公園も今、海域に大きく延ばしていこうという事業を推進しております。私が今活動しています周防大島の南の沿岸海域には「ニホンアワサンゴ」の群生が見つかりまして驚いていますが、これは大変なことなのです。この場所を取り入れながら一緒になってエコツーリズムの活動をやっていこうとしています。今年そのためのエコツアーもやってこうと考えております。
 そもそもナショナルトラストというのがイギリスで100年以上も前から実施されていますが、このナショナルトラストの場所でエコツーリズムと密接な関係を持った活動が行われきたということです。イギリスのナショナルトラストの会員は、何と350万人以上存在します。1人大体7,000円会費を払うそうですけれども、その資金は莫大なものとなっており、その場所にエコツーリストが年間500万人以上も訪問するという。そのツアーの中身は多様なエコツアーが企画・実施されているからなのです。そのエコツアーをやっているから多くの収入が入ってくる。そして地域の活性化が図られ、貴重な環境が守られるというような一石三鳥の話となっています。
 そもそも、エコツーリズムというのは自然環境や歴史、文化を体験し学ぶとともに、地域の自然環境や歴史・文化の保全に責任を持つ観光のあり方ということで、自然に基づいた活動であるということ、それと先ほど環境学習のお話も出ていました。それは、もちろんそれに取り込んでいく。そして、それが持続的でなければいけないということで、自然を壊さないように自然の保護、それから観光立地、そして地域振興、この3つが合わせもったものであるという定義があります。
 それをまとめると「環境資源の活用」「環境保護」「エコツアーによる新たな観光」「経済効果」のこういうような4つの効果になるだろうということですね。平成23年度、環境省はエコツーリズムを通じた地域活性化事業というのが始まりました。これに我々の推進協議会はトライしたということなのですが、この事業の中に、一つは「地域コーディネーター活用事業」、二つ目には「外国人旅行者のためのプログラム整備事業」、そして三番目には「エコツーリズムガイドの育成事業」、この3つが合わさった事業を考えていこうという事で活動してきたのが、我々の協議会です。
 この協議会は、広島県さんと廿日市市さん、それから呉市さんと協働し、「瀬戸内ツーリズム推進協議会」という名称で、昨年2011年の10月にできました。広島県さんは海の道構想プロジェクトチームというのが動き出しておりまして、その構想の一つの事業をこの協議会に入ったことをやっていこうということです。それから、廿日市市さんは国立公園宮島という、何と年間300万人の観光客がおり、その中でも外国人が12万人来るのです。日本で一番たくさん外国人の来るところが宮島なのです。これを何とかエコツーリズム型の観光を構築していこうということで廿日市市さんは参加されています。呉市さんは、瀬戸内海で一番長い海岸を持つ市です。その一番長い海岸を持つ市が、海に対してどういうふうに活動にトライするかということで一緒に活動することになりました。そこで、先ほどの環境省さんの「地域コーディネータ活用事業」をあわせ持って、瀬戸内海で活動していこうということです。
 そこで具体的に何をするのかということなのですけども、「地域コーディネータ活用事業」の中で、一つ、瀬戸内海エコツーリズムの構築ということで、外国人旅行者に向けたエコツアーを開発しようということ。それから、エコツーリズムのための人材育成。とにかく私の大学で環境について学んで卒業しても、関連する就職先がない。環境のことを学んでも食べていけないという、こんな現状を改善するために、何とか新たな雇用を創らないといけないと考えました。そのためにはエコツーリズムを理解しエコツアーを構築できる人材を育成して、そして社会に出そうということで、今、観光業界と提携しながらやっていこうと進めています。また、エコツーリズムフォーラムをやりまして、エコツーリズムの概念やエコツアーの活動事例を紹介し、そこで人材育成についても語ろうと企画しております。
 また、大事なことはこのエコツーリズムを発展させるためのインフラ施設整備が不可欠です。現在、これが何も揃っていないのが現状です。とにかく施設整備をつくっていかないといけない。例えば自然環境や歴史文化施設のガイドができるビジターセンターもなければ、エコツアーをやるための案内施設がほとんどないということで、ソフト、ハードをあわせてやっていこうということです。対象の場所としてスライドに示すように、一つは瀬戸内海国立公園の中に、特に今、対象としているのは宮島ですが、二つ目は呉市さんの安芸灘諸島、それから三つ目は、瀬戸内海に橋がかかると言われて一つだけかからないで残された諸島が、「防予諸島」です。柳井から松山まで橋がかかるという話だったのですが、かからなくてよかった。この防予諸島には国立公園のサイトがたくさんあります。この海域には、実は瀬戸内海特有の海洋哺乳類の「スナメリ」がたくさんいるところです。それと、「ニホンアワサンゴ」が存在するということです。防予諸島は伊予灘の外洋系の水と、安芸灘側の内海の水が出会うところ、ここが特異な防予諸島海域です。生物多様性の富んだ海域です。
 そこで、エコツアーを構築するにはコンテンツとなる環境資源を結ぶネットワークを創ることからやっていこうと考えました。瀬戸内海の空間な区分を、陸域、沿岸域の三つに分けました。その中で代表的なコンテンツを選び、それを瀬戸内海全体としてネットワークすることを検討しました。
まず、海域としてのネットワークのコンテンツは、海域の生態系の頂点に立つ「スナメリ」を対象にしてやっていこうと決めました。それから陸域は何か。瀬戸内海の代表的な景観として忘れてはならない「白砂青松」があります。現在は、一体どの様な状態になっているのか。白砂青松地の場所をちゃんとネットワークを結んで松、浜の管理・保護活動をやるためのエコツアーを構築していくこと。それから、沿岸域では、先ほどから紹介のあった干潟・藻場の生態系を守るためのネットワークを結んでいこうということを考えました。白砂青松の現状は松枯れや砂の減少、開発による消滅など、今、悲惨たる状況です。この写真は最も素晴らしい白砂青松地であり国立公園の山口県室積海岸ですね。ここは一番手入れされているところです。それから、沿岸域、これを考えなければいけないのですけれども、こういう磯場とか干潟とか、これを皆さんに知ってもらわなければいけないということで、干潟の連携を結びネットワークをつくりました。どこの干潟が今どうなっているかということの環境診断をやって、評価し悪化した場所に行き、みんなでそこを修復していこうというような活動を考えています。
 それから、海域ではスナメリですけども、このスナメリは非常に減少しています。減少しているけども数字がわからないということで、これを何かわかるようにしていこうということで、瀬戸内海を定期的に航行するフェリー航路でのスナメリ発見調査を行っています。瀬戸内海には定期航路はたくさんありますが、その中で図に示すように、今8つの航路に船長が毎日船でスナメリをウォッチしています。これで毎日の発見頭数の数字がどんどん出てくる。それを一つに集めて、現状を把握するということをやっております。そのネットワークとして、瀬戸内海東部、西部、中部と分けまして、3つのグループをつくって、そこからデータを集め、そして中央に持っていく。中央というのは瀬戸内海エコツーリズム協議会がそれをまとめているということで出していくということになっています。
 この図は、釣島水道のところですね、防予諸島ですが、この赤い点とか黄色い点とか白い点ですね、発見頭数別に色分けしてプロットしています。赤が4頭ですが、これがスナメリが何処に何頭いるかということが分かります。こういうスナメリ観測をやっているということで、このデータをもとに色々なツアーを各海域でつくっていくことができます。
 エコツアーの実施例として紹介します。これは防予諸島の西に位置する周防大島ですけれども、この場所を対象にして、船とそれから陸上からのツアーをつくっています。スナメリが3頭、海上に出現し見ることができました。こういう実際の様子を見るチャンスというのはなかなかないわけですね。子供たちは大感動して一生忘れないだろうと思いますけども。
 国立公園「宮島」は、このスライドに見られるように色々なツアーをつくって実施しています。現在、島周辺、色々な山も含め陸域エコツアー、海域エコツアーなどを実施しています。これは呉のほうですね。安芸灘諸島のエコツアーをつくっているということで。
 最後に今後の課題として、エコツーリズムのための施設整備、エコツアービジターセンターとか、あるいはガイド整備とか、そういうことに力を入れていかなければならない。あるいは人材育成もしなければいけない。そして、ネットワークをしっかりとつくっていくということが大きな資産になるでしょう。それによって瀬戸内海の環境保全が進んでいくだろうということです。こういうことを進めていけば、すばらしい瀬戸内海が皆さんに愛され、環境保全にも繋がることと思います。ありがとうございました。
 終わります。

○白幡座長  ありがとうございました。
 ただいまの御意見に対して、御質問はございませんでしょうか。

○浜野委員  先生の取り組みの中でスナメリの今の部分なのですが、どこら辺からお客さんが来られていますか。あと、おおよその年齢とか。

○広島工業大学上嶋教授  ツアーをするときも、これは募集をかけるわけですけども、それは子供さんから大人まで、すばらしいのは大学生とか高校生まで来てくれるということですね、これは非常にありがたいなと思っています。
 一方、常々、そこのスナメリを見られる航路のフェリー会社が、スナメリが見えるぞというPRをしています。すると、そこに乗ると、ずっと通っている間にスナメリが見えるということで、もうほっといても見られるのだ、お金を払わなくても、運賃は払いますけども、その中で見られるということで、これはツアーをしなくても見られるというふうな状況になっています。そこに色々な資料を送っています。

○白幡座長  よろしいでしょうか。どうでしょうか、ほかに。時間的には少し後ろへ押しておりまして、できましたら全体に対する質問も含めて、上嶋先生のも含めて、委員から言い忘れた、聞き忘れたということがあれば、御質問をお願いしたいと思います。とりあえず上嶋先生の御発表は、これにて終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、各委員の方、まず全体を通して何か追加で御質問、お忘れになったことはありますでしょうか。
 各発表者の方も言い残したこと、とりあえずここで言っておかなければいけないというようなことがございましたら、ぜひ御発言ください。

○広島工業大学上嶋教授  すいません、この2月25日、瀬戸内海で初めてなのですが、エコツーリズムのフォーラムを広島のYMCAのほうでやりますので、もしお時間がある方がおられましたら、ぜひ参加いただければと思います。ありがとうございました。

○白幡座長  どうもありがとうございました。
 いかがでしょうか。委員の方、発表された方の中から追加で。

○海洋建設株式会社水産環境研究所田中所長  私も漁業の立場から、今日竹原組合長がおっしゃったお話とか、嶋野会長がおっしゃったお話も含めて改めてお願いなのですが、その部分で共通しているというのは、やはり有機物を中心に偏在した栄養分を鉛直的にも平面的にも、それをやはり循環させて全体にうまく回すための有効活用といいますか、そういったものを求められているように思うのですよね。
 今日、私どもカキ殻のお話をさせていただきましたけども、色々な方法を使って最終的には栄養塩の循環に至るわけですけれども、窒素、りん、炭素、そういったものの物質循環の正常化ということを非常に何か重く置いて、瀬戸内海の豊かな海に向けていくような方策の方向に向けていただければなという気がいたしております。
 先ほど、竹原組合長から海の下の水と上の水を合わせてというお話がありました。密度流拡散装置のお話でございまして、今日は岡山県の方も来られていますが、中島プロペラと岡山県が共同で、児島湾の奥にたまったものを外へ引っ張り出そうと。児島湾の湾口部にはノリ漁場が、一番主要なところがございますので、そういったこともやはり物質循環の促進というものをベースにした改善、豊かな海への方向性というような気がいたしますので、改めてお願いをしたいと思いまして発言をさせていただきました。

○白幡座長  ありがとうございました。
 この件について、御意見、もし何かございましたら。小さな循環、色々なところで取り組みがあると思うのですが、それが大きなまとまった循環みたいなものにつながっていかないかという、そういう啓発も含めて必要だということですね。よろしいですか。

○公益財団法人水島地域環境再生財団塩飽研究員  改めましてですが、今日もお話しさせていただいた中で、最初の方のところでも言われていたと思うのですが、やはり地域、瀬戸内海の地域として環境を守っていくためには、やはり地元で地域のことをよく知っている漁業者の方ですとか、それから地元で活動している市民団体の方とか、そういう方たちの取り組みというのが非常に大切になってくると思うのですが、最初の御発表にもあったように、基本的には結構ボランティアベースで、自腹で活動されているということもありますし、私のお話のほうでもちょっとさせていただいたように、漁業者の方がやはりごみを持ち帰っても、それに処理費がかかってしまうということでは、なかなかそういった取り組みは進まないと思いますので、そういった地域、地元のことをよく知った地域の団体ですとか、漁業者の方などを支援するような体験学習の活動も、今日もたくさんお話がありましたけれども、そういった活動をぜひ政策として支援していただきたい。そういう費用面も含めて、地元の団体を支援していくことも、これからの瀬戸内海の環境を考えていく、取り組みを進めていく上で、ぜひ取り組んでいただきたいと思っています。

○白幡座長  ありがとうございます。

○白山委員  今日のお話の中で、瀬戸内海の周辺にたくさんの工業、いわゆるインダストリーがたくさんあって、そういう企業のほうで、例えばCSRの姿勢として、今のNPOの方々の活動を支援するとか、そういう仕組みがあると、お互いに手を取り合ってという感じになると思うのですけれども、そういう事例はないのでしょうか。

○公益財団法人水島地域環境再生財団塩飽研究員  私がお答えしてよいのかどうかというのがありますが、水島には大きなコンビナート、日本を代表する企業がたくさんありまして、その中のJX日鉱日石エネルギーが高梁市と協定を結んで、この先10年間、植林活動ですとか、そういったものに職員の方がかかわるという協定を結んで、その受け入れを実際に地元のNPOの方がされる取り組みが始まっています。そういった意味で、だんだんとそういう企業が地元に、地域に貢献していく取り組みが進んできていると思うのですが、ただ、まだ一部で、やはり基本的には、例えば水島にあるコンビナート企業も、本社はどうしても東京ですとか、そういったよそにあることもあって、なかなか地域で地元のこの事務所、事業所で判断がなかなか難しいようなところもあって、どうしても進んでいないようなところもありますので、そういったところ、まだまだ課題はあると思うのですが、実際にそういう取り組みは一つありますし、またそういった企業が取り組みをしやすいような仕組みといいますか、体制を作っていくことが必要になってくると思います。

○白幡座長  ほかにございませんか。

○広島工業大学上嶋教授  すいません、私の発表したこととちょっと違うことなのですけれども、ちょっと今日も話題がなかったので気になっているのですが。一つは防災という視点での瀬戸内海をどう考えるのかというのが、ちょっと話題にもなかったので、私はもともと瀬戸内海の流況等々をやってきた人なのですが、最近津波が瀬戸内海に入ってきたときに及ぼす色々な影響が、漁業のみならず色々なところに出るというのが推察されているのですけれども、そういう対応についてどこが考えるのだろうかということが、非常に気になっているのが一つ。
 それから、再生エネルギーで潮汐潮流を使おうという動きが民間から今、動き出していまして、経済産業省のNEDOも動いていますけども。結局、瀬戸内海の漁業に対するエネルギーを海でとるというようなことも、瀬戸内海の活用の一つかなというふうに思うのですね。ですから、自前のエネルギーで、そして漁業に、色々なところに役立てるというようなエネルギーの使い方もあっていいのかなというような気がしますね。2つ、防災とエネルギーということ。それに環境というものが入っていくということ。
 それから、もう1点は高齢化、物すごい勢いで高齢化が進んでいます、島が。その高齢化に対して、何らか対応が必要ではなかろうか。このままほっとくと、本当、空き家の島がいっぱい出てくるという現状ですので、その辺のことに対しても、何か一つの方法があるのかなという気がいたします。すいません、3つお話しさせていただきました。

○白幡座長  ありがとうございました。
 非常に大きな提言というか、御意見をいただいております。
 これで大体時間の4時半が参りました。時間が許せば会場の方からも御意見をいただきたい、御発言ももらいたいと思っていたのですけれども、時間がもう押しておりますので、もし御意見がございましたら、会場からも、ぜひこの機会に、ここで言っておかなくてはいけないと思われるものがありましたら、どうぞ御意見をください。

○小串漁業協同組合竹原代表理事組合長  今日の発表内容とは違うのですが、私たちは地元の小学校の子供に瀬戸内海の環境問題を勉強していただくということで、アマモの種を、県の採捕許可をいただいておりまして、それを子供たちに種を育てていただいて、数年育てたものを、また地元の地先海岸へNPO法人の協力をいただいて植えていただいているのです。それで、非常に子供たちも関心を持っていただいて、我々も実際に海というのは、やはりアマモ場が繁殖しないと稚魚の繁殖も少ないということで。年々アマモが増えてきまして、海岸線にも幅が10mぐらいしかなかったのが、今100m以上も沖合にだんだん広がってきています。そういうことで、これからの瀬戸内海は、やはり将来子供たちにもそういう関心を持っていただいたほうがよいのではなかろうかと思って、そういう運動をやっております。
 以上です。

○白幡座長  ありがとうございました。
 それでは、まだまだ御意見を伺う時間が欲しいところなのですが、おおむね時間が参りましたので、最後に、この企画専門委員会の委員長であります松田先生に、最後の締めでよろしくお願いいたします。

○松田委員長  本日は、初めに事務局からお話がありましたような企画専門委員会で抱えている重要なテーマについて、かなり直接かかわるようないろいろな御発表、御提言を8人の方からいただきまして、本当にありがとうございました。内容も非常に藻場・干潟の再生から海ごみ、あるいはツーリズムというような新しい問題、それからさらに最後の、ただいまありました全体的な討議の中で、かなり大きな政策提言もいただいたと思います。
 私どもは、今年の6月ぐらいまでにこれを取りまとめる必要がある訳ですが、そういったプロセスの中で、できるだけ直接、間接的に今日いただいた皆様の御意見、御提言を活かしたいと考えております。しかし、今日は大変、時間が限られておりましたので、十分御意見を発表していただけなかった点もあるかと思います。今後、色々な形を通じて、さらに御意見をいただいたり、教えていただいたりということになるかもしれませんけれども、引き続きよろしくお願いしたいと思います。
 今日は非常に有意義な御発言をいただきまして、ありがとうございました。

○白幡座長  どうもありがとうございました。
 豊かな瀬戸内海とは何かというのは、なかなかこれはもう本当に色々な分野で御意見もいただかなければいけないし、具体的な取り組みは、もちろん今日御発表いただいたように、手をつけていただいている部分もあると思うのですが、これを全体として取りまとめて、できるだけわかりやすい形で発表、公表したいという委員会でございますので、御意見等はまたどうなっているのですか。ホームページというか、メール等で。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  意見募集につきましては、今日最初に趣旨説明の中でも申しましたように、今月いっぱいで意見募集しておりまして、メールですとか、ファクス、郵送で受付をいたしております。

○白幡座長  ということですので、どうぞよろしくお願いいたします。
 本日は本当に委員の方、発表の方、それから会場のフロアの方も、どうもありがとうございました。
 それでは、事務局にマイクを渡したいと思います、どうぞよろしくお願いします。

○橋本閉鎖性海域対策室室長補佐  白幡座長、どうもありがとうございました。また本日御発表いただきました皆様、大変短い時間の中で御準備のほうもいただきまして、また今日の時間も、発表時間10分ということで、非常に制約ある中で、その中でも貴重な御意見を伺えたのかなと思います。本当にありがとうございました。また、各委員の皆様にも、いろいろとお伺いしたいところもあったかと思うのですけれども、そちらもちょっと時間の関係で、申し訳ございませんでした。
 今回できるだけ多くの方に御意見等お伺いをしたいということで、お一人お一人の時間を短くして、それでも8人ということで、瀬戸内海は広いですから、その8名以外のほかの方にもいろいろそれぞれ瀬戸内海に対する思い等をお持ちの方が多いかと思います。繰り返しになりますけれども、今月いっぱいで行っております意見募集に、御意見を寄せていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それから、冒頭申しましたように、本日のヒアリングの議事録、それからお配りしております発表資料につきましては、後日、環境省のホームページに掲載をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 あと、最後になりますけれども、本日、現地ヒアリング開催に当たりまして、関係県の皆様に御協力をいただきまして、事務局からも重ねてお礼を申し上げます。
 それでは、以上をもちまして本日の企画専門委員会の現地ヒアリングを終了とさせていただきます。本日はどうもありがとうございました。