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中央環境審議会瀬戸内海部会(第5回)議事録


平成18年12月5日(火)
環境省 水・大気環境局 水環境課 閉鎖性海域対策室

  1. 開会
  2. 議題
    (1)
    瀬戸内海の環境の保全に関する府県計画に関連する取組について
    (2)
    その他
  3. 閉会

午後1時58分 開会

○高橋閉鎖性海域対策室長 定刻より若干前でございますけれども、予定の皆様方はもうご出席でございますので、ただいまから中央環境審議会第5回瀬戸内海部会を開会いたします。
 私、担当の閉鎖性海域対策室長の高橋と申します。
 本日は、秋葉委員、飯泉委員、大西委員、岡田委員、柳委員、山口委員から事前にご欠席のご連絡をいただいておりまして、20名の方にご出席いただくことになっております。なお、宮原委員は20分ほど遅れていらっしゃるというご連絡をいただいております。
 定足数を満たしていることをご報告いたします。
 最初に、前回のこの部会は今年3月に開催いたしましたけれども、それ以降、私ども事務局の幹部に異動がございましたので、ご紹介させていただきます。
 まず、水・大気環境局水担当審議官、寺田でございます。
 同じく水環境課長、望月でございます。
 それでは、寺田審議官から一言ごあいさつをさせていただきます。

○寺田水担当審議官 この夏に水環境担当審議官を拝命いたしました寺田でございます。
 新任ということでございますので、この場、お時間を拝借しまして一言ごあいさつを申し上げます。
 本日は、この年末押し迫った大変お忙しい時期にご参集賜りまして、まことにありがとうございます。
 瀬戸内海部会でございますが、前身は、瀬戸内海環境保全特別措置法に基づく瀬戸内海環境保全審議会であると承知しております。瀬戸内海環境保全特別措置法、できたときは臨時措置法という名前だったかに記憶しておりますけれども、昭和48年に生まれた特別法でございまして、瀬戸内海を愛する多くの方々のご努力、ご熱意によって、議員立法でできた法律だったかと記憶しております。
 まだまだ日本全体が開発、開発で浮かれていたような中で、環境保全について非常に先進的な内容を持った法律であったかと思います。例えば、それこそ開発、開発で浮かれているときに埋め立てに関する非常に厳しい抑制方針を出した、あるいは世の中に環境アセスメントなどという概念がほとんど知られていないときに、特定施設の設置についての事前調査などというものも導入した。
 こういった先進的な施策と、それを支えた瀬戸内海の周りの皆様の熱意によって、今日なお私どもは、瀬戸内海に行けば瀬戸内海国立公園のすばらしい景観を見ることもできますし、おいしいお魚もいただけるということだろうと思っております。
 ただ、残念なことに我が国の沿岸域全体、一方で大変厳しい状況にございまして、経済社会の変貌もございますし、あるいは地球温暖化等、地球全体の生態系の変容もあるのかもしれませんけれども、沿岸域においては水産資源がだんだん減ってきている、あるいは生態系そのものの構造が少しずつ変わってきている、さらには沿岸域で持っているさまざまな環境保全能力が失われつつある、こういった我が国の沿岸域全体が持っております問題と瀬戸内海といえども無縁ではなく、やはりいろいろな問題があるのだろうと思っております。そのために、瀬戸内海の保全施策、ますます前進させていかなければならないのだろうと感じているところでございます。
 そういった瀬戸内海の環境保全の中心、拠所となっておりますのが瀬戸内海環境保全基本計画ということでございまして、この部会には、この基本計画の点検と申しますか、進捗状況についてのご審議をお願いしていると承っております。
 今回は海域に根づいた取り組みということで、関係府県のご協力をいただきまして、各府県による取り組みをご報告させていただくことになっております。本日は、これらを含めまして、今後の瀬戸内海の環境保全の進め方について活発なご意見を頂戴いたしたいと考えております。
 簡単でございますけれども、私のごあいさつとさせていただきます。
 ありがとうございます。

○高橋閉鎖性海域対策室長 議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。
 資料1として、名簿がございます。資料2といたしまして「瀬戸内海の環境の保全に関する府県計画に関する関係府県の取組について」というものがございます。資料3といたしまして「瀬戸内海におけるNPO等の活動と支援」というものがございます。資料4といたしまして「化学的酸素要求量(COD)、窒素含有量及びりん含有量に係る総量削減基本方針(第6次)の概要」というものがございます。
 それから、委員の先生方だけへの配付でございますけれども、参考といたしまして、番号はついてございませんが「化学的酸素要求量、窒素含有量及びりん含有量に係る総量削減基本方針(瀬戸内海)」という数枚のもの、それから印刷物で「平成17年度 瀬戸内海の環境保全 資料集」を置かせていただきました。傍聴の方は、これらにつきましてはホームページでごらんいただけますので、後ほどお願いいたします。
 それから、傍聴者も含めまして全員の方に、中国四国地方環境事務所からの参考資料といたしまして、公園の概要、地方事務所のご紹介、活動事例報告の3つのパンフレットを配付させていただいております。ご確認いただければと思います。
 それでは、以後の進行につきましては須藤部会長にお願い申し上げます。

○須藤部会長 かしこまりました。
 委員の皆様、こんにちは。本日は大変ご多用の中、また遠方からお繰り合わせご出席いただきましてどうもありがとうございます。
 また、関係府県の担当の方々、また多くの傍聴の方々のご出席をいただきましたことをお礼申し上げたいと思います。
 本日は、午後4時半までの終了をめどに議事を進めさせていただくことになっておりますので、議事進行にもどうぞよろしくご協力をいただきたいと思います。
 早速議事に入らせていただきます。
 最初の議題でございますが、瀬戸内海の環境の保全に関する府県計画に関連する取組についてでございます。
 前回の部会より、瀬戸内海環境保全計画に関連する施策のフォローアップを始めたところでございますが、今回は、関係府県の取り組みについて報告をいただきます。
 では、事務局よりご説明願います。

○浅見室長補佐 説明を担当いたします閉鎖性海域対策室の浅見と申します。パワーポイントを操作いたしますので、しばらくお待ちください。

(スクリーン)

  それでは、資料2に基づきまして、瀬戸内海の環境保全に関する府県計画の取組状況について、関係府県の事例をご紹介してまいります。
 まず、府県計画の位置づけからご説明いたします。
 府県計画は、瀬戸内海環境保全特別措置法に基づきまして、ここに示しております関係府県知事が定める法定計画となっています。その内容につきましては、上位計画である政府が定めることとされている瀬戸内海環境保全基本計画に基づいた形で構成されておりまして、具体的な施策を念頭に置いた記述がなされております。
 現在の府県計画は平成14年7月に策定されておりますが、これは平成12年12月の基本計画の変更を踏まえた内容となっております。
 こちらにお示ししていますのは、平成12年に変更された基本計画の構成でございます。本日ご説明する各府県計画につきましても、ほぼ同様の構成となっております。
 さて、今回の事例紹介に当たりまして、瀬戸内海関係13府県の方々のご協力をいただき、前回ご紹介した国で把握している施策以外の施策で府県計画に明記されているもの、または、明記はされていないが関連するものといった観点でご報告をいただいております。その結果、延べ292件の施策についてご回答がありましたため、時間の関係もありましたので、事務局の方で類似事例の多いもの、先進的なもの、前回の部会でご指摘のあったものといった観点で絞り込みを行わせていただき、本日、25の事例について代表としてご紹介させていただきたいと考えています。
 なお、これからご紹介するパワーポイントの各タイトルの左側に通し番号が振られておりますが、事務局の手違いで20番が欠番となってしまっており、番号は26番まで振ってありますが、事例の数は25となっております。お詫びするとともに、ホームページ公開時には訂正しますので、ご了解のほどよろしくお願いいたします。
 では、具体的な事例を紹介してまいります。
 まず、公害防止協定の締結です。
 これは環境法令による規制等を補完し、地域の実情に即した生活環境保全対策を実行する上で有効な手段として、地方公共団体と企業、これに地域住民が加わるケースもございますが、協定を結びまして、関係者の責務を明確化して公害の未然防止の確約をとりつけるものです。
 資料には、広島県の実際の協定に明記されている項目をお示ししておりますが、このような内容の協定が、瀬戸内海関係府県が関与しているものだけでも169件ほどございました。これ以外に市町村等が結んでいる協定もございますので、それまで含めると相当数の協定があるものと考えられます。
 2番目に、赤潮被害の未然防止ということで、大分県の事例をご紹介させていただきます。
 大分県では、水産試験場と県の出先機関である振興局がプランクトンの発生状況を調べ、その情報を漁協や漁業者に伝達しております。
 また、赤潮や貝毒についてはモデル地区を設定いたしまして、有害プランクトン監視員制度を創設し、漁業者、漁協と県の機関が連携したモニタリング体制を構築するとともに、県の機関が観測機器等の整備を行い、有害プランクトンの監視体制を強化しています。
 また、福岡県や山口県にまたがる周防灘におきましては、これらの県と共同で、二枚貝に被害を及ぼす赤潮プランクトンの発生状況について調査を進めています。
 このような赤潮プランクトンに関するモニタリングや研究は、このほかに7つの府県よりご報告がありました。
 続きまして、自然を活用した水質改善を実施している事例ということで、兵庫県の事例をご紹介いたします。
 こちらにお示ししていますのは、富栄養化が進んでいる阪神臨海部において底質や水質を改善することを目的としまして、平成17年から尼崎港で既に整備されている人工藻場や人工干潟で育てたアオサ、ワカメといった海草類を用いてメタン発酵をする技術を確立し、また、それで得たバイオマスエネルギーを有効利用する研究を進めているというものです。
 これ以外にも、広島県からは礫間接触を用いた水質浄化の実験、また徳島県からは竹炭を用いた水質浄化の実験など、4つの県から同様の施策が報告されております。
 続きまして、条例に基づく自然環境保全のための指導等ということで、福岡県の制度をご紹介いたします。
 福岡県の場合、3ヘクタール以上の開発行為に当たりましては、事業者に対し、条例に基づきまして自然環境の破壊の防止や植樹等による自然の回復策を指導しています。
 実例といたしましては、周防灘に面した地域で開発行為の届け出の手続の際に、絶滅危惧種とされている植物が確認されたことから、本条例に基づき指導を行い、この植物の移植を実施したという事例が報告されています。
 同様の制度は、これ以外に4つの府県から報告されています。
 次に、自然景観の保全ということで、大分県の清掃船を活用した浮遊ごみの回収事例をご紹介いたします。
 この事例は、大分県が公益法人に対して清掃船を貸付け、公益法人の会員である地方公共団体や企業からの負担金等により清掃船を運行し、別府湾を中心として海域の浮遊ごみを回収するというものでございます。年間の稼働日数は、約200日程度と伺っております。
 また、ごみの回収以外の用途といたしまして、普及開発活動として小・中学生や環境保全団体を対象とした体験乗船にこの船を活用しているとのことでした。
 なお、同様のケースが4つの府県から事例が報告されております。
 続きまして、浅海域の保全として、愛媛県の藻場づくりの事例をご紹介いたします。
 愛媛県では、中予水産試験場が中心となり、漁業者を初め小学生、一般市民の参加を得て、アマモ場等の造成を進めています。この事業は、小学生や一般の方々にフィールドで藻場の機能を理解していただいた上で、アマモの移植用ポット等を作成してもらい、海に設置する作業を通じて藻場に対する理解を深めていただくという普及啓発活動も兼ねています。
 海底に設置された藻場は追跡調査を実施しており、ホームページ等でその進捗状況がわかる形になっています。
 これ以外にも、アマモの造成に取り組んでいる事例は5県ほどから報告がございました。
 引き続きまして、海砂利の採取に当たっての環境保全上の配慮ということで、岡山県の事例をご紹介いたします。
 岡山県は、別の条例等で規制がかけられる港湾区域、漁港区域を除く海域につきまして、砂利採取法に基づく手続のほか、砂利採取や海域の占有などの行為を規制するための岡山県普通海域管理条例を平成10年に策定し、罰則規定を設けるなど規制を強化した上で、許可制という形で海域の保全を進めてまいりました。
 その中でも、航路しゅんせつ等を除く販売目的の海砂利採取につきましては、条例制定以前から減量計画を策定し、削減に努めており、平成15年度以降、採取を全面的に禁止しています。その後、違法採取等の監視は行っているとのことですが、違反事例は今のところないとのことでした。
 これ以外にも、岡山県のように条例を設けた上で採取を実質的に禁止している事例が、広島県、香川県、愛媛県から報告されています。
 次に、山口県の事例ですが、こちらは海砂利の採取は禁止はしていないものの、瀬戸内海環境保全基本計画の趣旨を踏まえ、条例を適切に運用している事例でございます。
 山口県の場合、事実上、瀬戸内海環境保全特別措置法で定める瀬戸内海のうち、関門海峡より北の日本海に面した響灘のみに限定し、海砂利採取を許可しています。
 また、海砂利の採取が漁業に大きな影響を与えると思われる海域につきましては、採取禁止区域を設定しております。
 さらに、海砂利の採取を許可する場合についても、許可量についてさまざまな規制をかけ、1事業者当たりの採取量の制限や、トータルでの年間の採取量の総量の制限をしております。
 その結果、グラフのとおり、採取量が年々減少する傾向となっております。
 続きまして、埋め立てに当たっての環境保全上の配慮ということで、徳島県のマリンピア沖洲第二期事業の事例をご紹介します。
 この事業は、徳島市内で高速道路の用地を確保することを主目的とする埋立事業として、沖合にある埋立地と市街地の間を全面的に埋め立てる計画となっておりました。しかし、条例に基づくアセスの過程で希少種となる昆虫が存在することが判明し、そこで、環境への影響を最小限とするため、住民の意見を十分に踏まえ、また、有識者や専門家の意見を踏まえながら検討した結果、全面埋め立てでは希少種への影響は回避できないという判断に至りました。その結果、徳島県として埋立計画を大幅に縮小するという判断を下し、それでも消失してしまう海浜については、希少種の生息環境を代替するため人工海浜を整備し、昆虫の移動を行うこととしています。
 現在、その実施に向けた詳細な検討が進んでおり、専門家の意見を聞きながら整備、モニタリングに努めているとのことでした。
 なお、徳島県からは、空港整備に伴う海浜の喪失の代替として人工海浜を整備し、植物群の移動を行うという事例についても報告がありました。
 続きまして、廃棄物の処理施設の整備及び処分地の確保ということで、岡山県のごみ減量化の取り組みについてご紹介いたします。
 岡山県では、廃棄物の要最終処分量を減少させるため、再生製品の利用促進や環境にやさしい企業づくりを初め、資源化を図るガイドラインの策定やリサイクル可能な産業廃棄物をインターネット上で斡旋するシステムの整備を図り、資源の有効活用を推進しています。
 また、マイバッグ持参運動やクリーンアップ活動などを通し、一般市民へのごみの減量化に向けた普及啓発を実施しています。
 このような廃棄物の減量化に向けた取り組みは、ほぼ各府県からご報告がありました。
 続きまして、健全な水循環機能の維持・回復ということで、大阪府の築いそ事業の事例をご紹介いたします。
 大阪府では漁場の整備を目的として、漁業者が天然石を投入して小規模な浅場を整備する事業を支援してまいりましたが、この事業は藻場、干潟等の浅海域の保全や浄化機能の高い沿岸域の拡大という観点でも重要な役割を果たしているとのことから、今回、ご報告をいただいております。
 同様に、県の単独事業で浅場を造成している事例の報告が徳島県、大分県からございました。
 続きまして、水の循環利用の観点から、雑用水の利用促進を図っている香川県の事例を紹介いたします。
 香川県では、水資源に恵まれていないということもあり、節水や水の循環利用の促進に努力しています。例えば、新築の大型建物に対しまして、建物から排出される排水や雨水、下水処理水を雑用水として利用するための施設の設置を指導しています。また、そのための補助制度も設けており、雑用水利用の促進のための取り組みを行っています。
 また、香川県ではこれ以外にも、水の循環利用や節水を呼びかける普及啓発を推進しているとのことでした。
 他県には類似事例の報告はございませんでしたが、特徴のある事例としてご報告させていただきました。
 続きまして、健全な水循環には森林の保全も重要であるとのことから、愛媛県から、森林環境税の事例についてご紹介いたします。
 愛媛県では、県内に住所、事業所がある個人、法人を対象に、県民税に上乗せをする形で森林環境税を法定外目的税として設けております。森林環境税は環境保全基金に積み立てられ、森林を保全する活動等に活用されています。活用事例として、県が森をつくる事業に使用するほか、県民から事業を公募し、里山再生等の事業にも当てられております。
 このような森林環境税については、愛媛県以外でも6つの県で導入が進んでいるとの報告がありました。
 続いて、失われた良好な環境の回復という観点で、香川県の干潟・藻場の保全事例をご紹介いたします。
 藻場の造成事例は、先ほどの6番目の浅海域の保全のところでも愛媛県の事例をご紹介いたしましたが、それよりも少々規模が大きいということで、この事例をご紹介させていただきます。
 具体的には、アマモについては播種による造成試験を実施し、また、アマモ場の水産資源をはぐくむ効果についての調査、また、アマモの生育条件や適切な造成地の把握など、事業化のための基本的な調査を実施しているところです。
 また、ガラモにつきましては、アマモに比べ取り組みが先行しており、既に事業としてガラモ場の造成を開始し、着実に藻場の再生が図られているといった状況となっています。
 続きまして、島しょ部の環境保全ということで、少々変わった事例でございますが、香川県の「さぬき瀬戸塾」の取り組みをご紹介いたします。
 この取り組みは、瀬戸内海の島しょ部の活性化を図るため、島づくりリーダーの養成とそのネットワークの構築を目的として、島しょ部の住民や島づくりに意欲を持っている方を対象に開催されたワークショップで、以前、瀬戸内海環境保全審議会長を務められた岡市先生が塾長をしております。自然豊かで独特の風土といった個性を生かしまして、島おこしに向けた活動が進められています。
 なお、本事業は平成16年までは県の事業として進められてきましたが、現在は塾生による自主運営という形に移行しております。
 なお、島しょ部での取り組みについては、香川県以外では広島県、愛媛県より、島しょ部の環境改善のためのハード整備を進めているとの報告がございました。
 次に、環境保全に関する調査研究及び技術の開発等ということで、広島県の海洋生物等モニタリング調査の事例をご紹介いたします。
 この事例では、海岸の生物分布など生態系の面から海域環境を把握するため、年4回の調査を実施しているとのことです。実施に当たりましては、学生グループの参加を得て、海岸の一定区画を調査対象として生物の個体数を数えるといった方法で実施しています。
 なお、広島県以外にも、同様に海洋生物のモニタリングを実施している事例については6府県からご報告がありました。
 続いて、豊かな海と水産資源を開発する技術ということで、兵庫県の取り組みをご紹介いたします。
 兵庫県では、新種の赤潮の発生等による漁場環境の悪化に伴い漁業の生産額が減少しており、特にノリの色落ち等についての漁業被害が発生しております。このため、水産部局が中心となって、藻場、干潟の修復技術や、広域的な漁場環境データベースの構築や赤潮予防といった漁業被害防止のための技術開発に力を入れております。その結果、水産資源の回復という観点から、瀬戸内海の環境保全という取り組みを進めております。
 兵庫県以外では、岡山県や山口県ではノリの漁場に関する調査研究が進められており、大阪府では貧酸素水塊等の調査が進められているとのことでした。さらに広島県からは、さまざまな新技術を用いた流域圏再生のための研究が行われているとの報告がございました。
 続きまして、ここからは自然環境保全思想の普及及び住民参加の推進という観点で、4点ほど事例を紹介させていただきます。
 まず、広島県の事例でございます。
 広島県では「せとうち海援隊支援事業」という名称で、広島県内の生物調査、海浜清掃に取り組む団体等の活動を支援する制度を平成14年に創設しています。内容は、県と市町、そして認定された団体で役割を分担し、瀬戸内海の環境保全に向けた取り組みを進めていくというもので、平成17年には36団体が「せとうち海援隊」として認定を受け、活動しているとのことでした。
 類似の事例といたしまして、広島県以外では、兵庫県、岡山県から海岸清掃の市民活動を支援する事例、また、徳島県、福岡県からは漁業者の環境保全活動に助成を出している事例、また、大分県からは、NPOを中心とした干潟調査の事例についてご報告がありました。
 続いて、NPOとの協働ということで、大阪府から事例を紹介します。
 大阪府では、府としてNPO協働推進計画を策定し、NPOと行政が対等の立場で協働するための具体的な推進方法を提示しています。
 このような計画や要綱については、9つの県から報告がございました。
 なお、これらの制度につきましては、いずれも環境保全に限ったものではなく、通則的な、一般的なものでございますが、前回の部会でNPOとの連携についての議論がございましたので、ここであえてご紹介させていただきました。
 次に、漁業者の森づくりの推進ということで、兵庫県の事例を紹介いたします。
 兵庫県では、漁業者みずからが森林で植樹を行う漁業者の森づくりを漁業者全体の運動として盛り上げていくとともに、市民から幅広く海の環境保全への理解と協力を得ることを目的として実施しております。
 具体的には、こちらに書いてあるとおり、山から海までを一体としてとらえた各種の取り組みを実施しております。
 このように、漁業環境保全の観点から森づくりを行っている事例は、大阪府と大分県からも報告がございました。
 また、普及啓発の最後といたしまして、瀬戸内海環境保全月間に関係府県が行っている取り組み、普及啓発事業をご紹介いたします。
 毎年6月の環境月間に合わせて、瀬戸内海関係府県が瀬戸内海環境保全月間ということで、さまざまな普及啓発事業を実施しています。ここでは和歌山県の事例をお示ししておりますが、このような取り組みは各府県において実施されているものでございます。
 続きまして、ここからは環境教育及び環境学習の推進ということで、事例を3つほどご紹介させていただきます。
 まず、大阪府の事例でございます。
 大阪府では海と自然の環境学習として、平成14年より小・中学生を対象として、海をフィールドとした自然体験を通じて大阪湾への関心を高めてもらい、海域の環境保全の重要性に気づいてもらうためのプログラムを実施しています。具体的には、夏休みに府の所有する海洋観測船に乗船して海洋調査を行うプログラムや、浜辺での海洋生物の観察会などを実施しております。
 このように、海をフィールドとした環境学習は、大阪府のほか4つの府県から報告がありました。
 また、上流域での取り組みということで、奈良県では大阪湾に流れ込む大和川流域の住民に対して、水環境に対する意識向上をねらい「万葉の清流ルネッサンスキャンペーン」と名づけ、リバーウォッチングなどの取り組みを行っています。
 また、行政機関や企業等が連携して、環境教育、環境学習を推進するための環境県民フォーラムを立ち上げ、小学生やその保護者を対象として、水質検査などを体験できる「川の教室」を実施しています。
 このように川を対象とした取り組みは、奈良県以外にも8つの県から報告がございました。
 また、環境学習の実施条件を整えるという観点から、山口県から、環境学習のための拠点を設けたり、環境学習のためのガイドラインとして環境学習基本方針を整備したという事例についてご報告がありました。
 このような環境学習のためのガイドライン整備の事例につきましては、山口県以外に9府県からご報告がありました。
 最後になりますが、情報提供、広報の拡充ということで、大阪府のインターネットによる公共用水域水質測定結果の公開の事例についてご紹介いたします。
 大阪府では、国土交通省や市などが実施した公共用水域水質測定結果も含めまして、インターネット上でデータの公開を行っており、河川については昭和26年以降の水質データが検索できるデータベース機能も備えています。
 また、全国で初めて、毎月の速報値として各機関が測定したデータを含めてホームページ上に公開しており、インターネットの特徴を生かした迅速な情報提供を行っています。
 これ以外にも、岡山県のインターネット上で水温がリアルタイムで観測できるシステムを始め、8つの県でGIS等を活用した情報システムを構築したり、速報値を掲載したり、そのような形で迅速な情報提供を図るなど、さまざまな工夫を凝らした情報提供を実施している事例が報告されています。
 長くなりましたが、以上で関係府県の府県計画に関する取組状況についての説明を終わります。

○須藤部会長 簡潔にご説明いただきまして、どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの浅見補佐の各府県の取り組み、25を選び出してご説明いただいたわけでございますが、どこからでも結構でございます、ご質問、ご意見、そのほか追加等ございましたらお願いしたいと思います。大変多岐にわたっておりまして、それぞれの委員の皆さんのかかわっている部分もあろうと思いますので、追加のご説明をしていただいても結構でございます。

○白木委員 今、私は青潮のことが非常に気になっているんですが、そういうことへの取り組みはありますでしょうか。

○須藤部会長 赤潮はさっきご説明いただきましたけれども、青潮については、たしか196でしたか、選んだ事例の中に入っていましたでしょうかというのがご質問です。

○浅見室長補佐 青潮についての調査でございますが、青潮はいわゆる貧酸素水塊が海面に上がってくる現象なんですが、貧酸素水塊のモニタリングについては、大阪府さんで阪南の方を中心に行っているというご報告をいただいております。

○白木委員 私は大阪に住まいしていますが、大阪湾では青潮が頻繁に発生しています。私も参加しているML「大阪湾ネット」では、青潮発生を知った人がネット上で発信し、それを見た人が青潮の広がりを確認しに走り、その様子を報告する、というような連携ができています。赤潮のことばかり気にしていたら、いつの間にかにそれが「青潮」に変わり、今さらのように自然の複雑さ恐さを感じています。
 大阪湾の場合は、関西空港埋め立てに使った土砂採取後の深い穴で、青潮が発生します。関西空港を設置するにあたっては、アセスメントを十分実施されたと聞いていますが、にもかかわらず青潮が発生するようなことが起こってしまっているのですから、それはもう個々のアセス会社や市町村で収拾する範囲を超えていると思われ、国が乗りだして下さるしかないのではと思っています。青潮の発生場所や追跡調査に大阪府が努力しても、そのフォローを国にお願いしたいと思うのです。

○高橋閉鎖性海域対策室長 貧酸素水塊の問題、ご指摘ございましたので、少しその取り組みについてお話ししたいと思います。
 最近、新聞とかテレビでもこの問題、非常に取り上げられていることを私ども、承知しておりますけれども、今、おっしゃったように、一つの要因として、過去、埋め立てに使った土砂を採取した窪地が、かなり大きなものが大阪湾にあるということで、そういうものがございますと、そこに長期間にわたって海水が停滞いたしますと酸素がなくなり、また、硫化水素ができてくるということで、生物にとっては非常に悪影響の大きい状況になるということでございます。
 このような現象は、実は大阪湾だけではなくて、東京湾とか三河湾でも報告されております。
 そういうことで、1つは私ども、去年5月に第6次水質総量規制のあり方ということで中央環境審議会の答申をいただきましたけれども、その中で当然、1つの基本的な対策として、後ほど報告がありますけれども、汚濁物質の負荷量の削減をしていくということでございますけれども、それに加えまして、今、申し上げたような大規模な窪地、こういうものを埋め戻すことによりまして、その周辺海域の水環境が相当改善されますので、そういうことについても、やみくもにやるのではなくて、その効果を十分に評価しながら、埋め戻し等をやる必要もあるということを、その答申でもご指摘をいただいております。
 具体的な動きといたしましては、1つは、大阪府につきましては、これは国土交通省の近畿地方整備局が事務局でございますけれども、大阪湾再生推進会議というものが設置されておりまして、これは私ども環境省もメンバーとして入っておりますけれども、その中で関係機関が連携していろいろなことをやっていこうという中で、1つ貧酸素水塊のモニタリングも連携して、できるだけ効果的に、どこでそういうものが発生しているかについてモニタリングしていくということがございます。
 また、埋め戻しにつきましては、これは環境省の事業というよりも、国土交通省さん等が実際の事業を進めていかれるわけですけれども、環境省としてもこれは非常に重要な課題だということで、これは総合政策局の方でございますけれども、どういう場合に埋め戻しをしたら効果的なのか、あるいはどういうことに注意してやっていかなければいけないのか等、事後のモニタリングも含めて、そういう技術的な事項につきまして、ガイドラインのような案をつくりまして提示してございます。そういうものも参考にしていただいて、事業を進めていただければと思っております。
 それから、環境省としてできることとして、最近取り組んでおりますのは、これは埋め戻しに限りませんけれども、いろいろな、特に貧酸素水塊の問題等について、海域の環境を直接改善するようないろいろな技術を今後、開発する必要があるだろうということで、そういう技術開発の支援もやっていきたいと思っております。
 具体的には、環境省で環境技術実証モデル事業という制度がございます。これは、技術開発されているけれども、まだデータ等が十分でないために普及が進んでいないといった技術につきまして、その効果を検証するような、実証するような、そういう制度でございまして、この制度を活用いたしまして、今年から閉鎖性海域の水環境改善を一つの分野として取り上げまして、実証していきたいと思っております。
 これは今、実施のためのいろいろな技術的な指針をつくっておりまして、できれば来年度かたら実際の海域で実証試験をやっていきたい。この制度は地方公共団体が実証機関となりまして、そこが民間からの技術を公募して実証するということでございますので、大阪湾でも関係する自治体から応募があれば、例えば大阪湾の貧酸素水塊を改善するような技術についても実証の対象となるのではないかと思っております。
 ちょっと長くなりましたけれども、そういうことで、いろいろ対策をとってございます。

○須藤部会長 白木委員の今のご質問は、個々の事業のアセスのフォローアップにとどまらず、最終的には国がそういう問題に取り組んでほしい、こういうお願いであって、今の高橋室長のご説明ですと、やってくださっているということで、先ほどの実証モデルなどについても私も漏れ聞いておりますが、大阪湾でそれが実現するかどうかはともかくとして、そういう仕事も始まっているということでございますので、いいですか、それぐらいのところで。

○鷲谷委員 貧酸素水塊の対策については、流域も考えて、もしかすると農業サイドなども含めた対策が必要になる可能性があると思います。
 日本ではまだ余り十分にその辺のメカニズムなどについて、だから陸の側ですね、検討が進んでいないかもしれませんけれども、アメリカ合衆国では、メキシコ湾の非常に広大な面積で無酸素に近い水塊が毎年生じてしまうことに関して科学的な検討が行われて、対策としては、ミシシッピ側の上流域を含めた対策が法制度の整備も含めて始まっていまして、例えば上流域の農地からの栄養塩負荷、面源汚染になりますけれども、それを防ぐために、農地で肥料などを削減することももちろんですが、それだけではなくて河畔の湿地の再生ですとか、そういう意味で、恐らく本当に解決するためには流域レベルで考えていくことも必要だと思いますし、それから、海の側でもし打つ手があるんだったら、そういうこともあわせて進めていくことが必要なのではないかという気がいたします。

○須藤部会長 ご追加ありがとうございます。
 これも総量規制や何か、基本的な考え方と同じようなことで、ちょっと追加していただけますか。我が国の今の瀬戸内海の例でもいいわけですから。

○高橋閉鎖性海域対策室長 まさにご指摘のとおりでございまして、流域からの負荷のコントロールと海の方の環境改善を両輪として進めていかなければいけないということかと思います。
 先生ご指摘の面源でございますが、日本の場合は、特に東京湾などを見ますと、やはり生活系のものが相当大きいということで、総体的な面源よりも、いわゆる点源といいましょうか、そういうものの割合が大きい地域もございますけれども、今後さらに削減を進めていかなければいけない、例えば東京湾とか大阪湾とか伊勢湾等を考えますと、これまでの対策に加えて、やはり面源対策をより重点的にやっていかなければいけないことも当然かと思いますので、その辺は、これは農水省さん、いろいろ努力していただいておりますけれども、引き続きいろいろ私ども、調査を進めて、そういうものの対策を強化していくことが必要かと思っております。

○西山委員 補足になります。
 私、大阪府の第6次の規制にかかわっていますが、今度の規制には、水質だけでなく、かなり再生というところに重点を置いた施策を打ち出しており、また、大阪湾の再生についても国との関係で共同体制をとっているようです。それを府の審議会などにおいてもどのぐらい実現できたのか、数値目標だけではなくて内容の方も十分にフォローしていきたい、いかなければいけないということを重々言っております。貝塚の方も重点エリアとなっているようです。今回、大阪湾の状況はよくなかったので、次の時代までにはそれを何とか返上しようと、府の方も努力していきますので、国の支援もよろしくお願いしたいと思います。

○高橋閉鎖性海域対策室長 総量規制につきましては、国と府県の協力は非常に重要でございまして、いろいろなデータも全部府県の方で整理していただいたものをベースに、将来の目標などもつくっておりますし、今、総量規制は、後ほどご説明いたしますけれども、国の方の基本方針ができましたので、今、府県の方で具体的な計画をつくっていただいているところでございまして、今、ご指摘ございましたように、これまでの基本方針と違って、干潟の保全等についても基本方針の中にきちんと書きまして、そういうことも進めていただくということでやってございますので、今後とも府県との連携・協力を十分やりながら進めていきたいと思っております。

○須藤部会長 今の西山委員のご質問は、後ほどその他のところで総量規制の説明をしていただきますので、またそのときにお願いできようと思います。
 今、流域管理が必要だというお話で、法的には当然、ご承知のとおり、今日は閉鎖性海域の海の話が主ですけれども、湖沼では、もう既に湖沼法の改正によって法的にも、全部ではございませんが、指定地域を設けてしなければならないというふうに先行していますので、同じようなことが今後、海域で実施されることもあり得るのではないかと考えます。
 ほかに、よろしいでしょうか。

○浮田委員 各地の取り組みをいろいろ紹介していただいたんですが、それぞれ住民の方が参加してやっておられる活動で、自分のところもやっているのに載っていないとか、そういう失望感を抱かせてはいけないので、どういう形で公表されるのかわかりませんが、「ほか何件」だとか「何県でもやっている」とか、補足的な情報も同時に載せていただいたらいいかなと思います。
 それと、いろいろ分類していただいているんですが、ちょっと細か過ぎる感じがします。例えば、島しょ部における取り組みというのは、ある意味では環境学習に入りますね。だからそのあたり、大枠を整理していただいて、関連のものはなるべくサブで入れていただいた方がいいですね。ごみにしても、ここでも出てくる、こちらでも出てくるとか、ちょっと頭が整理しにくいかと思うんですね。

○高橋閉鎖性海域対策室長 最初の点でございますけれども、今日は時間も限られているため典型的な事例を紹介したということで、確かにこれに載っていないものはたくさんございますので、それにつきましては、次回までに全体の進捗状況の取りまとめという資料をつくりたいと思っていますので、その際に何らかの形で、ほかの事例も見えるような整理をしたいと思っております。
 それから、項目立てでございますけれども、ご指摘のように、できるだけ簡潔にしたいと思いますが、ただ、一応基本計画の目次に沿っているということでございます。目次間、項目間で若干重複もあるんですけれども、基本計画の目次に沿って整理したいと思っておりますので、そこはご理解いただければと思っております。

○須藤部会長 基本計画に基づいて分類しているわけですね。
 ほか、どうぞ。今日は多少ゆとりもございますので、せっかくの機会なので。瀬戸内海部会にとってこの基本計画は大変重要な問題だと思いますので、前回もいろいろご審議いただいたんですが、ご要望でも結構でございますので、お願いいたします。

○白木委員 勤務している施設で海に関わっていて思うのですが、海から遠い地に住む子どもたちの環境学習に、先生方が子どもたちを海に連れて行けないで困っていると聞きます。海のすぐそばの私たちの施設では、子どもたちを海に集めれば、それでもう十分と言っても過言ではありませんが、それをもっと多くの子どもたちに広げていきたいです。海と森とのつながりから考えても、森の近くに住む子どもたちを海にお誘いしたいものです。
 例えば、遠足で海へ連れていこうと思っても、遠くの海へ連れて行くのに、学校では時間やお金の手配ができないと聞きます。大人も子どもも環境学習には現場に行くことが一番だと思っているので、近くに海がない子どもたちに海と出会えるような機会をつくってもらうこと、もう一つは、子どもたちが実際に海へ行ったとき、海を熱く語れる人が必要だと思っています。海の生きもののことや海の素晴らしさを話せる人、それは生物屋さんでも文学屋さんでも船乗りさんでもいいのですが……。
 現に、私たちのところで海の生き物のことをよく知っている者は、どこからも引っ張りだこなんですが、そういう人を育てるのを怠ったために、今や数少なくなってしまったので、今からでも大切にしたり育てたりするような方法を何か考えてほしい。
 現場に強い優秀な人がいても、彼らが働く場所がないのが現実です。就職する場所が限られ、あっても採用人数も僅かで、アルバイトや呼ばれたときの講師料だけで生活している人が多いです。彼らの力が活かせる場所が欲しいです。

○須藤部会長 先生のところの施設は、今のような状況なんですね。要するに、前にも伺ったことがあるんですが、働いてはくださるんだけれども、それに見合う賃金のお支払いができないことが問題ですか。

○白木委員 というより、そういうすばらしい人たちが働く場所がないので、アルバイトで職員以上の仕事をし、ニーズはけっこう高いのに常時働く場所はないという人が多いのです。役所も今のように苦しい時期になると、もともとが少ない予算を他の部所と同じ割合で削ってゆくので、彼らのアルバイトの場所さえも確保できなくなります。
 私たちの施設は、正職員がいないし、予算も僅かなのに、かなりの実績をあげていると自負しています。新しい海の施設を建設することは大変でしょうが、頑張っている既存の施設をよく見てくださり、人員を増やしたり、仕事を下さったりするような応援が欲しいです。

○高橋閉鎖性海域対策室長 ちょっと補足させていただきます。
 今日お配りしました「瀬戸内海の環境保全」という資料集、実はこれ毎年つくっているんですけれども、ごく最近のものが刷り上がったばかりなので、今日、ちょっと重いんですけれどもお配りしました。
 これの95ページをごらんいただきますと、今、委員からご指摘ございましたような普及啓発についての国あるいは県の取り組みが書いてございます。国の方でも瀬戸内海環境保全協会とタイアップいたしまして、例えば観察会の実施とか、観察会で説明できる人材育成のためのトレーニングプログラム、人材育成、そういう事業も、予算に限りはございますけれども実施しております。
 ただ、最近のご時世、こういう予算はだんだん削減の傾向にあることは事実でございまして、そういう意味で、だんだんその実施が厳しくなっているというご指摘は、そのとおりかと思います。私ども、できるだけ予算の確保には努力していきたいと思っておりますけれども、そういう状況もあるということでございます。

○須藤部会長 先生おっしゃるとおりですが、この議事録もとられておりますし、いろいろ関係者もいらっしゃいますので、環境教育の担当の方が今日いらっしゃるかどうかはともかくとして総合政策局の方もいらっしゃるから、それはそれとして、環境学習担当の方にも意見としては届くと思いますので、担当としては、この程度でよろしいでしょうか。
 それでは、次にどうぞお願いします。

○沖委員 今回、該当する府県の区域における計画をいろいろと聞かせていただいたのですが、これを見ていますと、やはり瀬戸内海というのは連続性がありますので、該当府県だけにとどめておくことはかなり難しいと思います。ですから、何か計画があった場合には、その隣県等がどういうふうに絡んでいくか。また、赤潮被害防止等々になりますと、今度は該当府県が離れていてもお互いに情報交換しながら進めていかないといけない。これはやはり国の指導になるかと思うのですが、次のステップ、その辺のところはどういうふうにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。

○須藤部会長 多分それはできていると思っているんですが、事務局の方からお答えお願いいたします。協議会とか知事会とか、いろいろありますね。

○浅見室長補佐 先ほども幾つか事例をご説明させていただきましたが、ほかにもあるので、ご説明させていただきます。
 まず1つ、赤潮等の調査につきましては、近隣府県と連携して水産試験場が行っているケースがほとんどでございまして、その点で、赤潮の発生については水産サイドの方で連携はなされているのかなという気がしています。
 それから、各種協議会として、先ほどお話も出ました大阪湾再生につきましては、大阪府、兵庫県、それから上流の京都、滋賀までたしか入っていたと思うのですけれども、その県で協議会という形式で立ち上げて、大阪湾の再生についていろいろ議論を進めている。そういう意味では、そういう協議会を通した各県の連携が図られていると考えております。
 ただ、今後もうちょっと広くという話になりますと、どちらかというと、瀬戸内海環境保全基本計画、前回フォローした内容の方になってきて、国の方の出番になってくるのかなというところもありますので、そこは各県と調整しながらやっていくべき内容かと考えております。

○須藤部会長 13府県の協議会というのがあるんですか。

○高橋閉鎖性海域対策室長 知事・市長会議という、まさに瀬戸内法の生みの親といいましょうか、そういう意味ではほかの海域に比べて、関係府県の連携という意味ではむしろ進んでいるというか、そういう場があるということかと思います。

○沖委員 研究そのものも、そういう形で進められているんですか。

○高橋閉鎖性海域対策室長 研究についてもその知事・市長会議、たしか松田先生がその代表でございますけれども、研究者の会議がございまして、いろいろ共同研究等を進めていただいているということでございます。

○須藤部会長 研究の方について、瀬戸内海研究会議の松田先生、少し解説をいただけますか。

○松田委員 瀬戸内海研究会議は特定の分野の学会等ではありませんで、分野横断的といいますか、学際的な、そういう研究者等の集まりでございますけれども、国際的な閉鎖性海域のネットワークでありますEMECS会議の勧告に基づいてできたもので、さまざまなシンポジウムあるいは勉強会、フォーラム等のほかに、さまざまな活動をしております。
 それから、ささやかですけれども、知事・市長会議の協力をいただいて、研究助成、特になかなか大きなプロジェクトには乗りにくいユニークな研究ですとか、若手の研究、あるいは地域のユニークな研究等の研究助成等をやっておりまして、今は里海というような考え方、新しい人と海とのかかわり方から議論していこうということで、研究会議で昨年ですか、知事・市長会議の方にご提言申し上げたんですが、その内容をかみ砕いたような書物が今、ほぼできるところ、多分年明け、1月には「瀬戸内海を里海に」というような再生構想に関する本も出版する予定でございます。

○須藤部会長 機関紙も出されていますよね。

○松田委員 「瀬戸内海」というのは、研究会議ではなくて環境保全協会の方からなんですが、あれとも非常にタイアップして、密接にやっているといった形でございます。

○鷲谷委員 1件ごとに自主性と、それぞれの関心に応じた多様な取り組みが行われていることはよくわかりましたが、その府県の計画に則った取り組みの効果に関して、点検とか評価をどういう仕組みでするのかについて、よくわからない面がありました。
 客観的に判断したり評価をするためには、恐らく取り組みに比較的近いところの指標が、水質という指標はもちろんありますけれども、水質にはいろいろな要因がかかわっていますし、ある一つの取り組みで水質がすごく動くわけではないと思うんですね。例えば、人の意識を変えていくような取り組みだとしたら、参加人数等もあるかもしれませんし、その行事が行われたことによってどう意識が変わったかをつかむような指標とか何かないと、非常に主観的に、自己満足になって、「それぞれたくさんやりました」というところにとどまってしまって、それらの多様な取り組みが有機的な連携しながら瀬戸内海の環境全体をよくしていくという、それが見にくいといいますか、そういうプロセスがなかなか見えてこないように思うんですね。
 今はもう何でも、大学でもどこでも点検と評価流行りで、ここでもかという感じがあると思うんですが、やはり客観的、科学的な視点もないと、いろいろなことがたくさん行われたけれども、何が変わったか、何が前進したかが見えてこないということになっても、せっかくすばらしい取り組みがたくさんなされていると思いますので、その効果を実施した人も参加した人もしっかり確認できるようなことが必要ではないかという印象を受けました。

○須藤部会長 大変重要なご指摘ですし、今後の話にもなるんでしょうけれども、点検、評価をどういうふうに進めるのかということですから、効果ということも大切ですよね。それを判定するのが大事でしょうから。

○高橋閉鎖性海域対策室長 次回までに、前回の国の取り組みと今回の府県の取り組み、いろいろ情報を集めましたので、それを進捗状況という形で取りまとめた資料をご用意させていただきたいと思っております。
 今の先生のご指摘、非常に重要ですけれども、どこまで対応できるか、まだ指標等確立していない面が多いと思いますので難しい点はあると思いますけれども、できるだけ効果なり前進の状況がわかるような工夫をして、お示しできればと思っていますので、その辺は今後、作業をさせていただきたいと思っております。

○須藤部会長 これを基礎資料として、出てきたものについてこれからやるらしいので、期待していただいて、また途中でもご示唆をいただければと思います。

○道浦委員 私、皆さんが科学者とか実際に環境問題に取り組んでいらっしゃる中で、歌人として文学のジャンルから参加させていただいて、とてもありがたいと思っております。
 それで、これは提案なんですけれども、日本では、一般的には俳人が1,000万人、歌人が100万人と言われております。そういう人たちは一番自然というものに関心を持っていて、テーマとしても取り組んでいるはずです。歌人も俳人も大きな協会を持っておりまして、きちっとした全国組織で各支部ごとの組織まで持っておりますので、そういうところに積極的に、幻の自然、幻の四季を詠んでいる俳人、歌人に対してもっと、私はNPOの資料も読ませていただいたんですが、文学者がこれほど環境問題に関心を持っていないことを私自身とても恥ずかしく思いましたので、積極的に発言する、それからシンポジウムのパネラーなどにもどんどん呼んでいただいて関心を喚起していただきたいということと、働きかけをしていただきたい。私たちもそれをもって努力したいと思っております。
 今後の展開、それから効果というお話がございましたが、そういう人たちが一番その目で見ていらっしゃると思いますので、そのあたりとの接触を今後、考えていただけたらと思いますが、いかがでしょうか。

○須藤部会長 大変すばらしい提案をしていただいたと思います。普通は我々、水質がよくなったとか生物がいたとか、そういう話が多いんですけれども、今のような、本当に自然のそういう姿を歌うわけでしょう、俳人も歌人も。そういう中で、どういうふうにそれを感じているかというのも大切かもしれませんね。私もいいと思いますが、事務局の方で何か。

○高橋閉鎖性海域対策室長 思いつきですけれども、例えば私ども、毎年の環境週間に瀬戸内海のポスターの募集などをしていますので、今後、例えば俳句を募集するとか、そういうこともいいかもしれません。いずれにしても、参考にさせていただきたいと思います。

○須藤部会長 いいんじゃないですか。やはり環境ですから、そういう形でね、自然環境の定量的な姿でなくても、今のようなお話で訴えていただいて、仮に環境省がそういう募集をしても、そんなに違和感はないのではないかと思いますので、そのときはぜひ審査の方をお願いします。そうなると高橋室長に任せられないからね。(笑)

○道浦委員 よろしくお願いいたします。

○久野委員 今の話とも若干関連して、先ほど瀬戸内海研究会議のお話がございましたけれども、瀬戸内海環境保全協会というのがございます。これは13府県の関係部局のほかに事業団体、あるいは衛生団体、それから市町村なども幾つか入っております。そういうところが出資した団体なんですけれども、そこでは、例えばついこの間「新お遍路のススメ」だとか、あるいは瀬戸内海全域の写真コンテスト、そして瀬戸内海の30景であるとか、そういうある程度文学的な側面も含んださまざまな活動をしております。
 また、機関紙では「瀬戸内海」というのを年に4回出しております。残念ながら赤字で非常に苦しいんですけれども、そういう活動も続けておりますので、ぜひとも皆さん方にご協力をいただければと考えております。よろしくお願いします。

○須藤部会長 写真コンテストのようなものも含めてこれから少し幅広に、環境学習なり環境啓発という場合にはいろいろな、そういう文学的なもの、あるいは写真なども含めてやられるのがよろしいのではないですか。そんなにお金のかかることでもありませんし、それぞれは、俳句も歌もそんなにかからないでしょうし、写真も自分でやられるでしょうから、それをそういう材料に使っていくのも大変よろしいし、表彰するというか、そういうことだけで済むでしょうから、今後、何かそういう機会にまた考えてください。

○森脇委員 先ほどの道浦委員の補足と言ったらおかしいんですけれども、2年前、うちの山陽新聞社で「よみがえれ瀬戸内海」というシンポジウムをやったとき、道浦委員に基調講演をしていただいております。学者さんとか研究者ではない歌人をシンポジウムの─後で市原所長から説明があると思うんですけれども、そういう意味で、いろいろ幅広い分野から瀬戸内海に関心を持っていただくということですかね、そういうことは、新聞社としてやっていきたいと常々考えているんですね。
 それから、これは環境問題にとってプラスになるかマイナスになるかわかりませんけれども、瀬戸内海に世界的な注目を集めようではないかということで、岡山県、香川県あたりでは、今、香川県では特に直島への「007」の誘致、岡山県、香川県では2年後に瀬戸内海サミットをやろうではないかと、かなり本気になっております。先ほど言いましたように、プラスになるかマイナスになるかわかりませんけれども、関心を高めていこうということで、そういう動きもあることを報告しておきます。

○須藤部会長 マスコミの世界でも、どうぞプラスになるようにご尽力いただきたいと思います。

○浮田委員 発表の仕方というか、全体に総花的で、これを見た人が結局どうなんだというのが非常につかみにくいので、鷲谷委員が言われた定量評価までいかなくても、定性的に、今、各府県の取り組みがどういう状況にあるのか、そういう総括といいますか、そういうものがあった方がいいかなと思うんですが。

○須藤部会長 全体としてね、個々ではなく。それでは、事務局の方で工夫してください。
 次のときが大変ですよね、いろいろ整理されて、先ほどありました成果、評価も含めてお願いをするということに、ここではしておきます。
 今までの国や府県の取り組みや部会でのご意見を踏まえて、基本計画の進捗状況の取りまとめ案をぜひ作成していただいて、今、お話があったように、次は今後の方向性について審議させていただきたいと思っております。
 それでは、この議題はこの程度にして、次に、その他ではあるんですが結構これ時間を要しますので、次に移りたいと思います。
 まず、前回の部会でNPOの活動等についてご議論があったかと思いますが、今回、環境省の中国四国地方環境事務所の市原信男所長においでいただいて、事務所におけるNPO等との連携事例についてご説明いただけると伺っておりますので、よろしくお願いいたします。

○市原中国四国地方環境事務所長 中国四国地方環境事務所長の市原でございます。
 須藤部会長及び森委員には、このような機会を与えていただき、本当にありがとうございます。
 15分ほど貴重な時間をいただきましたが、スライド枚数が非常に多いため、NPO等の活動と支援についてスピーディにご紹介したいと思います。よろしくお願いします。

(スクリーン)

  まず、中国四国地方環境事務所、これでございますが、昨年12月に設置されました。ただ、その前身であります自然保護事務所は、昭和29年に国立公園のレンジャーが1名、岡山県の下津井、鷲羽山の近くでございますが、ここに配置されましてからこの50年間、瀬戸内海の市民とともに歩んでまいったわけでございます。
 瀬戸内海環境保全基本計画の中では、幾つかの項で住民や民間団体との連携・協力について記載されていますが、第15項では、国立公園等を活用した活動支援をうたってございます。お手元の管内図、広げますと非常に大きくなってしまいますので、ここに示させていただきましたが、国立公園として、ここにあります飛び地の六甲山、それから加太、紀淡海峡の付近ですね、それから佐田岬、そして関門海峡に囲まれた、やや色を濃くしてある部分が国立公園でございまして、大阪湾とか周防灘の一部については公園外でございますが、それ以外につきましては、ほぼ瀬戸内海国立公園と一致しておるわけでございまして、国立公園を一つの手段として、瀬戸内海における市民活動等をある程度フォローしていくことは、これまで可能だったわけでございます。国立公園の風景を守ることを趣旨とした各地でのこのような活動を把握し、あるいは支援していくことができたわけでございます。
 しかし、範囲が非常に広いこともあって、十分に把握することは困難でしたので、一昨年の瀬戸内海国立公園指定70周年を機会に、これをできるだけ把握してみようというようなことになったわけでございます。
 お手元の分厚い活動事例報告及び提言集は、NPO等、個々の団体の取り組みを紹介したものでございます。このようなものを作成した心は、広い瀬戸内海において各主体の取り組みをつなげ、そして交流し、より活発化させたいというようなところにあったわけでございます。
 その冊子の目次を書き写してございますが、これをごらんいただきますと、実にさまざまな団体がさまざまな活動を展開していることがわかるかと思います。活動の中身は、国立公園に限らず瀬戸内海全体にわたりまして、例えば海ごみについて、中には瀬戸内法改正に関する提言、それから藻場の再生など、漁業協同組合その他、水産試験場からも非常に関心が高く、いろいろ報告や提言をしていただいたというようなことでございます。
 そのときの新聞の社説等では、これは中国新聞になりますけれども、今後の活動について、特に住民と行政の主体間の協働─パートナーシップ─と、広域での団体間の連携が強調され、期待されていました。
 そこで、交流発表会を開催してみてはどうかということで、一昨年5月30日に開催したところでございますが、そのような趣旨説明の後、団体に発表していただきました。ここでは7団体ほどですけれども、発表していただきました。さらに、各県に審議会が設置してあるわけですけれども、そこの部会長さんにわざわざお越しいただいて、コメントをいただくなりしました。その意図は、各県内でも市民活動をしっかりと認識してもらいたい、そしてまた、県境を越えた連携についてもお願いしたいというような気持ちがありました。
 この会場でごらんいただいている冊子は、今、お手元にある報告集と同じものでございます。
 先ほどお話も出たんですが、この交流発表会の前日に、山陽新聞社主催のシンポジウムに道浦先生にもお越しいただきまして、みんなでお話をお伺いしたというようなことでございます。
 70周年に前後して、中国新聞では、今日はご欠席の柳先生などがご提唱の里海の保全について、その活躍する人々について約2カ月間の連携を組んでくださいました。山陽新聞社さんでは「海・人・未来」と題して、こちらは約半年間、連載していただきました。これは、左上に小さくあるように新聞協会賞候補作品だったそうですが、残念ながら受賞できませんでしたので、代わりに私の方から(笑)感謝状を差し上げました。その理由ですけれども、住民と行政との協働を普及啓発し、市民活動の盛り上げに貢献したというところにあるわけでございます。
 もう一つ、感謝状の贈呈は、ほかに瀬戸内海国立公園のシンボルマークを無償で提供していただいた地元の広告会社があります。広い瀬戸内海の心を1つにするには、ぜひともシンボルマークが必要だったわけでございます。このシンボルマーク、現在は瀬戸内海国立公園ということでございますが、瀬戸内海全体のシンボルマークになる日が今後、あるかもしれません。地域一帯から広域へということでございます。
 さて、現在進行中の事例を2つほどご紹介いたします。
 1つは、グリーンワーカー制度による事業ですが、地元の方々、NPO等と国が直接請負契約して、必要な作業のほとんどをやっていただくというような事業でございます。この中身は環境教育とか普及啓発とか、そういったものも含めて、今後、役に立っていけたらなと思っております。
 実際はかなりたくさんあるんですが、表では抜粋でごく一部、それでもさまざまな団体が各地でさまざまな事業を展開しております。中でも、左側の方に丸をつけておりますけれども、展望地再生事業というのが大変話題を呼びまして、マスコミさんも常に取材に来てくださるような事業でございました。
 「環境省が樹木伐採」と衝撃的なことが書いてありますが、実はこれ、いいことでして、環境省が樹木伐採を指導しているというところが、地元の方々にはサプライズだったんだと思いますが、地元の方々も、のこぎりを手に「夢みたいだ」「何でこんなことができるんだろう」と泣いて語ってくださった方もいるほどでございます。
 小豆島を皮切りにしまして、鷲羽山、金甲山、天目山など次々に、いろいろな市民団体やNPOによる伐採作業が始まったわけでございます。
 瀬戸内海には展望箇所が233カ所あるんですが、せっかくの展望台から瀬戸内海が見えないといった状況が続いてきたわけです。やはり国立公園ですから、瀬戸内海の多島海景観を観賞する、見る、そして「いい所だな」とみんなが感動するというのは当たり前のはずだったんです。それが今までできていなかったということで、人々の心が瀬戸内海から何となく遠ざかってしまったというようなことについて、それをみんなで取り戻そうと、この写真がそうなんですけれども、一生懸命取り戻す作業をしているという姿でございます。
 この作業には周到な事前調整、無断で木を切ったらこれはもう犯罪になりますから、それは相当の手続が、自然公園法を初め保安林、森林法から、文化財にかかっているところも当然ありますから、これは相当な許認可手続や調整が必要なわけですが、かつ危険も伴うということで、このようなマニュアルなどもしっかりと整備して、それに備えているというようなことでございます。
 これが作業の前後の写真で、ようやく多島海が我々の手の届くところに見えたというふうに、瀬戸内海じゅうのかなりの方が喜んでくださっております。─というか、皆さんの手でやっているわけですから、皆さんで盛り立てながら一緒に祝っているというようなことでしょうか。
 その後の維持・管理も大変なわけですが、最初にそういった作業を地元の人たちの手で、役所は側面的な支援をして、地元の人たちにやってもらうことによって、その後の維持・管理でもNPO等が自主的、積極的に活動しているという、つい最近の、この11月の新聞記事でもその後を追いかけていただいているところでございます。
 さて、次に、厄介な海ごみに関する地域での取り組みでありますが、我々が居酒屋で食しているシャコとかエビ、カニの棲み家がこんなんであったかと知ったわけでございます。
 この写真は、岡山県寄島の漁師の大室さん、大室君と言ってもいいくらいなんですが、彼は現在29歳ですけれども、6年前に父親を亡くして漁業を引き継ぎ、ごみの多さに驚いて、魚介類にまじるごみを回収し、陸揚げしているわけでございます。普通の漁師さんであれば、処分に困るごみを海に戻してしまうところなんですが、時代を引き継ぐ若者たちにこんな海を残したくはないと思っております。陸からのごみ、流域からのごみが半分ぐらいを占めるとの調査結果もありますし、社会広範な取り組みというものから、循環型社会を形成するというようなことを我々は今後、していかなくてはいけないと考えているわけでございます。
 そこで早速、即やる環境事務所ということでございまして、対策検討会をNPO等も巻き込んで設置いたしました。魚連や主要ネットワークNPOにも参加いただきまして、専門部会では全国ネットのNPOのノウハウを提供していただいているというようなことになっております。
 検討会では、先ほどの大室君の発表をみんなで聞いたりして、まずは情報を共有しました。新聞の社説等にもありますように、漁業者の意見に耳を傾けつつ、広域連携が重要と考えております。
 また、今後の方向性について、本年1月に中国経済連合会から、お手元にパンフレットがあるかと思いますが、このような提言をいただいたわけです。この提言項目3の、中身はパンフレットに書いていないので、この左側に1、2、3と書かれていますけれども、私としてジーンと来たのは、誇りと愛着を持って瀬戸内海を守っておられる方々の活動が継続、発展できるよう支援せよというような提言でございまして、しっかりと受けとめていかねばならないと思っております。これは今年2月にうちの事務所で提言を受けたところでございます。
 なお、瀬戸内海では、このように五角形のパートナーシップが成立しておりまして、これをさらに強化していく必要があると思っております。通常NPO、企業、行政の3者のパートナーシップはよく言われていますが、ここでは専門家、研究者、マスコミを加えて、さらにマスコミと行政が底辺を支えていろいろなものを支援しているというようなイメージを、私自身いつも描いているというのが特徴でございます。
 国機関でも十分に連携が必要だということで、しょっちゅういろいろな会合を開いているわけですが、中でも海砂採取がこの3月、半年ちょっと前に瀬戸内海において全面禁止になったことを受けまして、今後50年、100年と瀬戸内海をモニタリングしていく必要があるのではないかと。その際、次代を担う多くの子供たちに目の前の里海、里浜に愛着を持ちながら、彼ら自身にモニタリングをしてもらえるような方法の開発にも期待しているというようなことで、この写真のように、子供たちにやってもらうような、そういった汎用的な、範囲が広く、どこでも使えるような一つの間接の手法を先生方に編み出していただけたらなという、それが50年、100年と続いていって、みんなに愛情、愛着というものをさらに深めてもらいたいと感じております。そういったものに対して、先生方皆様のお知恵を拝借したいと思っております。
 先週の月曜日ですけれども、山陽新聞さんが、どういうわけか本日、私がお話しする内容を予見して解説してくださっていますので、ご参考にしていただきたいと思います。特にリークしたわけではございませんけれども、前々からのお付き合いでございますのでね。(笑)
  ただ一つ、この書いてある内容は瀬戸内海全体の話なんですけれども、国立公園というものが強調されています。国立公園とした方がインパクトが強い場合もある。それは、やはり国立公園を手段として、この瀬戸内海の環境保全に利用しているといったところもございます。マスコミさんは、率直な市民の感覚というものをいつもとらえていらっしゃいますので、さすがだなと感じるところでございます。
 まとめですけれども、これも次の世代を担う若手が書いてくれたもので、かなり政策っぽく固いものになっていますけれども、その心を申し上げますと、やはり1,000万から3,000万人の関係人口の多さゆえ、瀬戸内海はこれまでさまざまな試練を経てきたわけでございますが、これからはそれを逆手にとって、人々の力をプラスに転化させていこうではないか、そうすれば自然はきっとそれにこたえてくれるのではないかというようなことでございます。
 この写真のように、1度壊滅した豊島の産業廃棄物沿岸の浜でございますが、そういった自然が今、一生懸命蘇りつつあります。今後ともどうぞご指導のほどよろしくお願いしたいと思います。
 どうもありがとうございました。

○須藤部会長 市原所長、時間を守って簡潔にご説明いただきまして、どうもありがとうございました。
 それでは、ご発言をどうぞ。

○森脇委員 岡山の山陽新聞の森脇と申します。市原所長には、ここまで新聞を取り上げていただいて本当にありがとうございます。特に2年前の企画では、結構行政に対して言いにくいこと、批判的なことも書いたんですけれども、感謝状という結果をいただきまして、環境省という役所の度量の大きさ、本当に社内で、法務省だったら立入差止─そこまではないでしょうけれども(笑)、本当に度量の大きいところだと。批判することによって、また社会の関心が高まるということも議論していましたので、感謝状というのは本当に思いがけないことで、こちらの方が感謝しなければならないと思っております。
 それと、そういう事務所の方針とか、先ほど白木委員もおっしゃいましたけれども、海が見える、海を見せるということが本当に大事なことなので、私ども、どう言うんでしょうか、この瀬戸内海部会もビルの谷間の東京でやる─国が瀬戸内海を大事に見てくれているのは非常にありがたいし、心強いことなんですけれども、部会の現地委員会、こんなものがあってもいいのではないかなという話は、記者の間ではよく話題になっております。
 感想まで。

○須藤部会長 それは事務局とよく相談して考えます。(笑)
  それでは森委員、ずっとこの基本計画にかかわっていただいていますので、そのことも含めまして、お願いいたします。

○森委員 この間、私がNPO等の市民活動が一体どういう形でなってきたのか、計画をつくったときにはそれほどウエートが高くなかった活動分野だったんですが、それがどういうふうに展開したのかという質問に対して、今のお答えだったと思います。
 お答えを聞きながら、想定していた以上にいろいろな活動分野が広がったなという印象を強く受けました。それと同時に、事務所も新しくできたわけで、計画をつくったときには、さっき1人というお話がありましたが、50年来ずっと自然保護だけの事務所だったわけですが、それも新しく行政として1つ置かれて、こういう結果になっているわけで、先ほど問題提起がありました計画の見直し、問題点の摘示というときに、1つ考えるべき項目が明らかになったなという印象であります。
 もう一つは、これを全体として見ておりますと、計画をつくったときには定量的な目標値をつくることが基本的な考え方だったと思います。水質汚濁でありますとか、そういう定量的な目標値をどれだけ達成していくかということなんですけれども、現実のこの発表の中身を見てみますと、むしろ定性的な問題、それから先ほど道浦先生のお話もございましたように、あれを定量的に評価するのは非常に難しいと思うんですね。「何カ所の景観が開けましたよ」とは言えるけれども、それがどのぐらい価値あることなのかはやはり難しいので、評価の仕方も、普通の行政計画あるいは基本計画とちょっと違う手法を考えなければいけないのかなと、今、話を伺いながら感じました。
 総体的に言いますと、計画をつくったとき以上にうまくいっているのではないかという、自己満足のような気持ちがいたしました。

○須藤部会長 森委員は、この基本計画をつくるときに最も中心的な役割を演じていただいたところでございますので、今のようなご感想は、恐らくそういう中から出てきたものだと思います。

○宮原委員 今、すばらしい報告をいただきまして、その中でちょっと質問をさせていただきたいんですが、海ごみの問題が出ておりました。
 海ごみというのは、我々漁業関係、大変一生懸命取り組んでいるんですけれども、現実の問題としまして、とってきたごみを陸に上げた途端、これが一般ごみであるのか産業廃棄物であるのかということで、処分の仕方が違ってくるわけであります。我々、全国に「ごみをとったら回収して陸へ持ってこい、海へ捨てるな」という指導をしているんですが、持ってきたごみの処分で大変悩んでおりまして、その辺、今回の瀬戸内海でのご指導のあり方はどんな形であったか教えていただきたいと思います。

○市原中国四国地方環境事務所長 国としては、まだはっきり方針は出しておりませんで、地域の自治体、支庁、市及び町に任せておるわけで、寄島─今は浅口市になりました─とか日生町─今は備前市になりました─いずれも岡山県でございますが、その2市が今、一生懸命やっておるわけですが、一応一般廃棄物ということで、燃えるごみと燃えないごみに分けて処理場で処分しております。前は1キロ当たり2円だったんですが、今は6円、漁協が払ってそれを処分しているというような、まだ金銭的に整理されていないところはかなりあって、要するに、海の中のごみは一体だれのものかというようなことで、かつ行政界もはっきりしていない、権限も義務も特に何も決まったものはないといった難しさですね。こういったものを、いろいろな事例を引きながら国としても1つ指針を出せないか、瀬戸内海全体で、みんなでこうやってやっていけばうまくいくんだよというような一つの見本的なものが、今後、いろいろな方の意見を聞きながら出されればいいなと考えております。

○須藤部会長 閉鎖性海域全体としての海ごみの問題は、全体としてはどういう視点でやられているんですか。今の各県にお任せというご説明でよろしいですか。

○高橋閉鎖性海域対策室長 海ごみにつきましては、今、瀬戸内海だけではなくて全国的な問題になっておりまして、環境省の中では地球環境局が窓口でございますけれども、今年4月に漂着ごみ対策に関する関係省庁局長クラスの会議ができまして、そこで今年度中に当面の取りまとめを行うということで、具体的な対策を、今、検討しております。
 そういう中で、今、ご指摘のような処理の責任の問題とかそういうものも、なかなか難しい問題だと思いますけれども、議論されていくのではないかと思います。

○宮原委員 よろしくお願いします。

○須藤部会長 大変重要なご指摘なので、それこそ前向きにやらなくてはいけない問題で、また海に戻したのでは何もなりませんので、そういう方向で。

○川嶋委員 海ごみの回収については、いわゆる港湾管理者というか、港を管理しているところについてはそれぞれのところでやっていただいているわけですけれども、瀬戸内海のような一般海域については、国の方で回収船を持っておりますので、それで自ら回収しております。その処理についても自己で処理をするという形で、回収したものは決してまた海に戻したりはしておりませんので。
 それで、港湾の中に木材、木皮等を焼く焼却施設があるような所では、そこで焼いてもらいますけれども、それ以外のものは整理して回収してもらうといった形で、それぞれやっているところでございます。
 それから、先ほど海にたくさんの方がというお話がありましたけれども、そういう船とか、そのほかに監督測量船という船を持っておりますので、旅費までお出しするのは無理かと思いますけれども、港に来ていただければ子供さんでもご案内をして、ごみを回収しているようなところを見ていただくようなこともできます。所長のレポートの中に整備局との連携というのも書いていただいておりますけれども、どんどんお話をしていただければ、作業に支障のない範囲ではご案内できると思いますので、おっしゃっていただければと思います。

○須藤部会長 船に乗せてくださるわけですね。

○川嶋委員 はい。

○須藤部会長 白木委員、そういうことで頼もしいお話もあるようですから、ぜひまた近くを通ったら連絡してください。

○松田委員 NPOや市民のさまざまな活動を紹介していただきまして、ありがとうございます。
 最後にまとめられたように、次世代の環境教育、非常にこれから重要なテーマだと思いますけれども、1つお伺いしたいのは、現行の公教育の制度の中では、環境教育にかなり可能性があるのが総合的学習の時間だと思います。実際にすばらしい実践をしているところは、その時間をやりくりしたり、土曜日と振り替えたりしてやっているところが多いと思いますが、一方、なかなか各学校にはそれに適した指導者がいないとか、意欲があっても技量が伴わないとか、あるいは現場に行くときに難しいことがあるとかいうことで、NPOや市民活動と公教育の中での総合的学習の時間の連携といったことは、将来的にはかなり大きな可能性を持っているような気がするんですが、それの現状とか今後の見込みとか何かがもしありましたらお教えいただきたいんですが、いかがでしょうか。

○須藤部会長 市原所長、ご経験の範囲で結構ですので。

○市原中国四国地方環境事務所長 私自身、そういうのは好きなものですから、要請があればいつでも飛んでいくような体制をとっておりますが、実際は、小・中学校から国の事務所に「ちょっと来てくれ」というようなことは余りなくて、その点、市民団体、NPOが活躍してくれればいいなということで、研修会など、要するにリーダーの研修会などを我々は年に幾つか持っていまして、彼らの活動として、地域の中の小・中学生頼むよという形でもって、今もちょっとやっていますけれども、今後もやっていきたいと思っています。

○松田委員 もちろん、その先端のレベルを上げるのも大切ですが、やはり地域にすべからくある小学校等ができるだけそういうものにつながっていくと非常にいいかなと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

○須藤部会長 環境カウンセラーはいかがですか。

○市原中国四国地方環境事務所長 環境カウンセラーは、どちらかというと今は地球温暖化と廃棄物ですか、そっちの方面で、自然観察関係はカウンセラーの方よりむしろパークボランティアとか自然系の人たち、あるいは地域にナントカ観察クラブ等をつくっている人たちが主体になって動いております。
 実は、最後の子供たちによる今後50年、100年のモニタリングにつきましても、せいぜい学校と、それは教育委員会との関係もありますけれども、そういったものをうまく調整しながら、学校の中で末永く続けていくという方向も先生方にご提言いただきたいと思っておりますので、よろしくお願いします。

○須藤部会長 松田先生、今のお話はご提言と考えてよろしいですね。

○松田委員 単に環境教育、学習というだけではなくて、例えばですけれども、瀬戸内海の周りの小学校5年生なりが夏の同じ時期に同じスキームで生物観察をすれば、それが5年、10年、15年と記録がたまっていくと相当立派なデータベースになる可能性があるわけですよね。そういうところを含めて、今後、長期的に取り組む課題ではないかと思いますので、よろしくお願いします。

○小森委員 小森でございます。この委員になったときは瀬戸内海環境会議のメンバーでございましたけれども、顧問に祭り上げられて、今はボランティア、市民活動を支援する兵庫県の施設の長をしておりますので、その関係で一言追加させていただきたいと思います。
 兵庫県の場合は、実は小学校5年生で5日間の野外体験がございまして、大体自然の多い所へ行って、みんなと一緒に泊まって学習するということでございます。これはもちろん山へ行くのもあり、海へ行くのもあり、それぞれですけれども、そこで小学校の先生だけでは当然指導できないので、専門家によるご指導と、それから実習助手という制度がありまして、この人たちが手伝いに来てくれる。先ほどもちょっとご質問ございましたけれども、こういう形で若い人々のパワーを利用するということもやっております。
 一番たくさん行くのが洲本の施設だと聞いておりますが、やはり海岸での自然学習というのは非常に人気があるプログラムだと伺っております。それについても、実はNPOの方がそういう指導員、指導助手の育成や派遣も引き受けておりまして、今、私どもの方でも支援を続けております。もちろん、こういうことだけで十分であるとは思いませんけれども、やはりそういう人材をストックして、必要なときに提供できる仕組みも大事だと思います。
 ただ、これはあくまで小学校がそれぞれ自主的にテーマを選んで学習するので、すべての学校が海岸へ行くわけではありませんが、特に都会の学校などは、山とか海とかこういう所でのそういう体験を非常に重視しておりますので、こういうことが広まれば、またあれだと。もう20年ぐらいやっているはずでして、兵庫県以外でも二、三の県でこういうことをやっていらっしゃるところがあると聞いております。うろ覚えですが、県が30億円ぐらい出しているというお話をちょっと聞きましたので、なかなか今の情勢で新しく始めるのは難しいかもしれませんけれども、またご関心がある場合にはぜひお尋ねくださるように、ご紹介いたします。

○西山委員 次代の子供たちにいろいろな教育をするということで、総合学習は非常によいと思います。ただ、いろいろ見てみますと、身近なものとして、まずごみ問題に関する総合学習が始まっており、その次が水で、水に関しては、水辺環境の辺にまだとどまっており、海まではまだテーマが広がっていないように思えます。それは近づきにくいということもあるのではないかと。総合学習自身がまだ不十分であり、海をとりあげるのは遅くなるのではないかと思われます。地球環境という形で海というものを取り上げていく必要があると思います。
 それから、私は香川県の産で、昔は臨海学校など集団で、海というものを実体験していました。今のいろいろな取り組みはかなり規模が小さい。臨海学校などでは海というものの学習がかなり効率的に行われていた。安全性の問題のあるのかもしれないが、今はこういった取り組みが少ない。ぜひいろいろな形からの支援を、文科省だけでなく、こういったところからも行っていただきたいと思います。

○野中委員 1つ質問させていただきます。
 今日のお話、NPOが大変よく活動されているというお話を伺いまして、非常に感心いたしましたが、その一方で、環境省さんがこれをよく育てていらっしゃる点、私は大変大きな評価をするというか、非常にいいことではないかと思っております。
 といいますのは、このごろNPO活動はいろいろありますけれども、みんな財政基盤が小さかったり、アメリカなどに比べるとその辺が非常に弱くて、非常に苦労しておられる。ですから、いろいろな意味で環境省がそれをバックアップして現実的に対応できる、非常にいいことだと思います。
 そこでちょっと関連して、先ほど中国経済連合会の提言がありましたが、ここは提言をする以外にNPO活動について、何か自分たちも積極的にやっていくぞというようなことが、あるいはもう既にやっていることがあるんでしょうか、その点ご質問させていただきます。

○市原中国四国地方環境事務所長 事例集にも経済連合会のやっている報告及びその提言について書かれた部分がございますが、中国地方全体のいろいろなビジョンを描くというようなことで、いろいろなところでいろいろな交流会を開いたり、シンポジウムを開いたりしておりまして、中でも、やはり経済に結びつくというところがキーでして、郷土に地元の人がまず愛情を持っていろいろきれいにしていく、保護していくことが地域の活性化とか、あるいは現実、経済的なものとして観光振興に結びつくということで、先ほども申し上げましたけれども、いろいろ普及啓発のシンポジウムを経済連合会さんが開いたりするなど、一つの地域をまとめる中心的な活動をしてくださっているというところを、我々、常々連携しながら一緒になってやっているといった状況でございます。

○須藤部会長 今のご質問は、NPO自身に対する支援というか、もちろん直接費用ということでもないと思うんだけれども、NPOが活動しやすくなるように経済界も応援してくれていますか、そういう意味でよろしいですね。

○野中委員 はい。

○市原中国四国地方環境事務所長 企業及びその団体というのがNPOともう一つ別の主体としてあるわけで、特にNPOに対するいろいろな経済的・人的支援ですかね、そういったものに我々としても期待しておるわけでございます。

○須藤部会長 具体的には、経済的な支援も多少はあるんですか。

○市原中国四国地方環境事務所長 助成金などとして多少あるようです。

○小森委員 実は、中国地方は私の隣の地方ですが、大変熱心にやっておられるところです。特に今、CSR、企業の社会的責任の一環として、NPOと一緒に環境問題をやりましょうという動きは各地であると思います。私どもの方にもそういうことを支援する動きがございますけれども、これが今後、一つの流れになるだろうと思います。
 そういう意味で、先ほどご説明になった最後のところ、今後の進め方ですね、これは、いわばガバメントからガバナンスへという大きな流れとしてとらえることができると思うんですね。政府だけが瀬戸内海に責任を持つのではなくて、地域住民も企業も、また市民活動団体、専門家もともに地域の将来について、あるいは環境について責任を持つ仕組みをつくるという意味で大変前向きなご提案であると、あわせて申し上げたいと思います。

○須藤部会長 市原所長、今日は大分お褒めの言葉をいただいておりますので、ぜひ頑張ってやってください。お願いします。

○市原中国四国地方環境事務所長 頑張ります。

○白木委員 先ほど市原所長がおっしゃったように、環境カウンセラーの働きというのは、それはそれで一生懸命やっておられると思うんですが、生きもの系の人たちを育てる新しい予算はとてもないにしても、先ほど山陽新聞さんが喜ばれたように、環境省が褒めてくださるとか、環境省がそれに力を入れていることがわかるだけでも随分違うと思うので、環境カウンセラー以外にそういう、簡単に言えば昆虫博士のような人、魚博士のような人、そういう人たちを育てる新しい何か芽生えさせてほしいと思うんです。
 それから、この部会に入れてもらったときからずっと私は山陽新聞さんのことをいいな、いいなと思っていまして、大阪にはそういう新聞がないので、今のお話を聞いていて、いっそう山陽新聞さんと市原所長がぜひ大阪に欲しいなとすごく思いました。(笑)

○須藤部会長 今度、関西との連携をしていただいたら。事務所はどこにありますか。

○森脇委員 現在、岡山でございまして……

○須藤部会長 そちらは岡山だけど、こちらの方は。

○市原中国四国地方環境事務所長 大阪市内にあります。

○須藤部会長 では、そこに市原所長もまた……。やはり環境事務所も連携した方がいいですね。

○白木委員 そうなんです。もっと身近なものとして感じたいです。

○沖委員 私、岡山大学に所属しておりまして、実は今、大学の方の環境教育において、やはり環境問題を解決するにはNPO組織なしではどうしようもないところまで来ております。そのNPO組織についての講義、あるいは演習科目、こういうものがほとんどないですね。かろうじて言えば公共政策論ぐらいをどこかでやっていらっしゃるというところです。
 岡山大学には環境理工学部、そして大学院には環境学研究科がございます。大学院教育、それから学部教育両方ともに、少しNPO組織を勉強できるような、つまり卒業してからNPO組織でのキーパーソンになれるような人材を輩出することを、目論んでおります。文科省の方にアプライしようと思っておりますけれども、ぜひとも環境省、市原所長さん、そして山陽新聞社にも、いろいろご協力いただきまして、このような取り組みを全国に発信していただきたいと思っております。

○須藤部会長 いい提案をしていただいているので、恐らく各地の環境事務所が同じように、そういうところでNPOとの連携、ネットワーク、それから環境カウンセラーなどもそうですよね。そういった中で今のような、そういう人材を育てていくのは多分、今後、必要だと思いますよね。ですから、例えば講義してくれなんて言われたら「ちょっと行ってください」というぐあいに一回二回ね、例えばですね。そういうことだそうですので、多分。

○松井委員 これは要望になるでしょうか、NPOの環境教育なんですけれども、東京湾など特にそうなんですけれども、多摩などに住んでいる人は東京湾を具体的に実感するチャンスがないということで、一つの提案として下水処理場の見学というのがありまして、実際に我々が出した汚水がどういった格好で処理されているか、それが最終的に東京湾に入ってどうだといった教育が、NPOの教育の一環として最近だんだん多くなってきております。
 下水処理場の方もそれに対してちゃんと受入態勢ができてきて、自分たちの水がどう流れて、どこへ行ってどうされて、最終的にどうなるんだという環境教育が関東では大分盛んになってきているんですけれども、瀬戸内海では70年たってそういった事例が一件もないということなので、非常に残念に思っているんですけれども、海を見なくても瀬戸内の都市に住んでいる人は、自分たちの出した汚水がどうなるか、やはり環境教育とか、一応小学校4年生からそういった教育は当然入っているわけですけれども、そういったことは現地に行かないとなかなか体験できないということもございますので、NPOを指導すると言ったら大変失礼に当たるわけですけれども、何となく世論を喚起して、実際、目の前でバクテリアが汚水を処理しているという実感は非常に貴重な体験だと思いますし、それから、都市に住みながら自分たちの汚水と瀬戸内が連関しているということも体験できるわけで、これは要望になると思いますけれども、そういった方面からもご検討をお願いしたいと思います。
 また、下水処理場の方も、そういった見学の受入態勢はほとんどの処理場ができていると思いますので、よろしくお願いします。

○須藤部会長 環境教育とは別に、下水処理場の見学というのは必ず小学校でやっていませんかね。

○松井委員 小学校4年生のときにそれは1回あるんですよね。ただ、先生がよくわからないというのが1つあって……

○須藤部会長 環境とのつながりをやっていないんですね。

○松井委員 多分そうだと思います。

○須藤部会長 ただ下水がどう流れてとか、そういう形しかやっていないんですね。

○松井委員 ただ処理場に見学に行って終わりというか、先生がよく……

○須藤部会長 要するに、水道(みずみち)全体を通した教育がなされていない、そういう理解でよろしいですか。

○松井委員 はい。

○須藤部会長 それは大切ですよね。汚水処理は汚水処理で切られていたのでは、それは余りね。

○松井委員 要するに、都市に住んでいる人が海との意識を保てる場所だということです。

○須藤部会長 本当なら下水の行方とか、そういった視点が必要だということですね。わかりました。これはまた所長の方も、そういう原点の部分からずっとつながっているということで。

○道浦委員 人材確保ということで、これも私の思いつきのような提案なんですけれども、今、検定ブームで、つい最近も映画検定というのがあって、とてもたくさんの方が受験して、そのための勉強をなさったように聞いておりますので、水検定とか瀬戸内海検定とか、そういうことをしまして、そして講習会を開いて皆さんに学習していただく。そして受験料を取りますとある程度収入も入りますので、たくさん予算が要るというわけではないと思いますし、人材確保のときに、そういうことを考えてもいいのではないか。
 直接専門的に偉い先生に来ていただくのは、なかなか難しいので、シルバーボランティア的な意味とか、在野のいろいろな知識を持っていらっしゃる方をそういう意味で認めて、そして身近に呼べるような形にするのはいかがかなと思いました。
 また、人材確保という意味では、先ほど申し上げましたように、俳人1,000万人、歌人100万人と言われる我が国では、日本的にも、それから各市町村クラスでも協会とか組織を持っておりますので、いつも恩恵をもらっていますから、ごみ拾いに参加しようとかいうことはそういうところにも呼びかけてくだされば、かなり私は今後、人材確保の可能性があるところだと思いますので、提案させていただきたいと思います。

○須藤部会長 大変広い観点からご指摘いただきまして、これは今どうのとすぐにはできませんけれども、まずこちらの事務局の方で相談していただいて、また総合政策局ともご相談されて、いろいろな制度を使って人材確保をしていくことが大切だろうと思います。
 それではすみません、もう少しご意見あるかもしれませんが、もう一つ議題がございますので。
 先ほどお話も出たんですが、総量削減基本方針について、事務局からお願いします。

○秋山室長補佐 それでは、資料4によりまして、化学的酸素要求量、窒素含有量、りん含有量に係る総量削減基本方針の概要について、説明させていただきたいと思います。
 資料4の2ページをごらんいただきたいと思います。
 既に先生ご存じだと思いますけれども、水質総量規制といいますのは、閉鎖性海域の環境を改善することを目的としまして、その海域に流入する汚濁負荷を総合的、計画的に削減していこうという制度でございます。昭和54年以来5次にわたって実施されております。対象となっておりますのは、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海及びそれに関係する20都府県となっております。
 2ページの下に参りまして、制度の概要ですけれども、水質汚濁防止法に基づきまして、総量削減基本方針を環境大臣が定めることになっております。中には目標年度、削減目標量、削減に関する基本的事項が定められます。
 それを受けまして、今度は関係都府県が総量削減計画を策定いたします。内容としては、総量削減基本方針をさらに詳しく、各都府県の状況を踏まえてブレークダウンした形になっております。
 総量削減計画に基づきまして、総量規制基準による比較的大きい工場に対する規制、削減指導等、あるいは事業の実施をしていくという制度になっております。
 先ほど5次にわたって実施と申しましたのは、この総量削減基本方針、総量削減計画、総量規制基準の設定などの流れを5次にわたって行ってきた、基本方針、計画も今まで5回にわたって策定してきた、そういうことでございます。
 1ページに戻りまして、1、総量削減基本方針の6行目ぐらいですけれども、今回、第6次の総量削減基本方針を今年11月21日に策定いたしました。内容なんですが、今まで5次までの総量削減基本方針では、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海を基本的に同じ考えで実施してきたわけですが、今回から、瀬戸内海を大阪湾と大阪湾以外に区分いたしました。そのために、東京湾、伊勢湾、大阪湾では水環境を改善するため、大阪湾以外の瀬戸内海については、現在の海域の水質を維持する、悪化防止等をするために、以下のような施策をすることとしております。
 この施策といいますのは、今までと大きく変わってはいないんですが、1つ変わったのは、一番最後の干潟の保全・再生。これは5次までの方針にはなかったわけですが、今回から、東京湾、伊勢湾、大阪湾を含めた瀬戸内海でも実施すべしということをうたっております。
 削減目標量ですが、これは右側が平成16年度における量、真ん中が平成21年度の目標量、単位は1日当たりのトン数となっております。また、瀬戸内海は括弧内が大阪湾、括弧の外側が大阪湾を含んだ瀬戸内海全体の数字です。
 ここでは平成16年度の実績と21年度の目標値を掲げておりますけれども、3ページに今までの経緯、推移をあらわしております。一番上のCODを例にとりますと、瀬戸内海、昭和54年には全体で1,012トンだったものが平成16年度には561トンまで削減されて、それをさらに平成21年度、537トンまで削減するという目標となっております。
 グラフの白い部分が生活系、灰色の部分が産業系、一番上の濃い部分がその他系、土地であるとか農業となっております。
 1ページに戻りまして、一番最後の今後の予定ですが、環境大臣の方で総量削減基本方針を定めましたので、(1)ですが、今度は都府県において総量削減計画を策定することになります。現在、各都府県で作業を行っておりますが、都府県の環境審議会の審議を経た上で、また環境大臣の同意の後に、恐らく来年6月ぐらいに策定されるものと考えております。
 (2)ですけれども、ほぼ同じ時期に都府県において総量規制基準を設定いたします。これも6月ぐらいに設定いたしまして、若干周知期間を経て、今の見込みでは9月ごろから適用されます。また、既設の事業場については、第6次総量規制の目標年度である平成21年の4月1日から適用される予定でございます。
 以上です。

○須藤部会長 簡潔にご説明いただきまして、どうもありがとうございました。
 西山委員、先ほど質問された大阪湾の総量規制については、今、ご説明ありましたが、大阪湾については強化をする、それでよろしいですか。何か追加がございますか。

○西山委員 努力目標、頑張らなくてはいけないということで、大阪でも上げておりますから。

○須藤部会長 それをおっしゃってくださったんですね。ありがとうございます。
 それでは、今、ご説明の総量規制について、どうぞお願いいたします。

○中原委員 1ページの数値のところに、例えば瀬戸内海だったら今、水1立方メートル当たりどれぐらいの負荷量があるかですね。大阪湾と瀬戸内海では水の量が全然違うので、この総量だけあったらどのぐらい負荷を与えているかですよね。その数字は多分計算できると思うので、その辺も出していただければいろいろなことを判断する場合にわかりやすいかなと、これを見ていて感じました。

○須藤部会長 総量にしてしまうと、かえってあれなんですね。総量だと全体の量だというんでこうなっているんですが……。私が余り答えてはいけませんので、秋山補佐、お願いします。

○秋山室長補佐 ご指摘のとおりでして、3ページを見ますと瀬戸内海が他の水域より負荷が多いような印象を受けるわけですが、ご存じのように、瀬戸内海は東京湾、伊勢湾に比べまして圧倒的に広いですから、実際は逆になっております。平成16年度の試算はちょっと今、手元にないんですけれども、平成11年度の実績でいきますと、CODの負荷量は、海の容積ではなく面積で比較しておるんですが、瀬戸内海ですと、1平方キロ当たりの1日当たりのCODトン数で見まして大体0.02。ですから、単位としてはトン/日/平方キロになるわけですが、CODですと、瀬戸内海で大体0.02ぐらいの数字になっております。
 それに対して東京湾ですと、0.17ぐらいですね。瀬戸内海、中でも大阪湾は0.12ぐらいです。

○須藤部会長 大阪湾の方が少ないのね。

○秋山室長補佐 順番としては、東京湾、大阪湾、大阪湾を除いた瀬戸内海という順番になります。すみません、先ほどの0.02というのは大阪湾を除いた数字です。

○須藤部会長 ちょっとこれもね、1平方キロメールということで面積当たりだそうですので、1立方メートルではないんですけれども、面積ですから、大雑把に比較はできるでしょうね。

○中原委員 あと、この数値を出されたときに、例えば干潟の保全とか再生なども含められているんですが、ただ、これだったら窒素等に関しては、例えば現在、干潟でどのぐらい脱窒が行われて、これから干潟を増やした場合にどの程度見込まれるとか、入ってきたもの以外に中で使われて、そういうものも全部、ある程度、これから目標値を出すときに、きっちりそうした化学的な値があった方がいいと思うんですね。その辺の数字はそちらでちゃんと把握されているのかどうか、その辺をお聞きしたいんですが。

○須藤部会長 干潟が機能したらどれだけの効果があったとか、そういう意味ですね。

○秋山室長補佐 資料4の数字は、あくまで陸域で発生した負荷量でして、今、ご指摘のあったような海の中での挙動については計算には入れておりません。ですから、干潟の保全・再生は確かに脱窒であり、あるいは生物を介した脱りん機能もあるわけですけれども、それについてはここには入っておりません。
 この基本方針を定める前に中央環境審議会で第6次総量規制のあり方をご審議いただいたわけですが、その際に、瀬戸内海ではないんですけれども、東京湾をフィールドにシミュレーションを実施しまして、東京湾で干潟をかつての1割でしたか、再生したときにどれぐらい水質に寄与するかといった評価は、一定しております。それがそのまま瀬戸内海に当てはまるわけではないんですけれども、干潟を再生することによって一定環境改善に資するんだということは、方向性としては示されているのかなと思います。

○須藤部会長 今までの分が完全に修復・再生されれば大体1割ぐらいだというのが、まあまあの常識というか、そうなっているようです。

○武岡委員 単位ボリュームとか単位面積という話が出てきたので、ちょっと補足したいんですけれども、単位ボリュームにすると瀬戸内海は非常に小さくなるように見えますが、実際には、それにさらに海水のターンオーバーとかそういうものを含めて考えないといけないので、瀬戸内海と東京湾、伊勢湾では、要するにたまりやすさが全然違うということですので、そこも含めた数字。となると、最終的には濃度ということになってしまうんですけれども、ターンオーバーの時間なんていうのはそう正確には出ませんので、比較はしようがない部分がありますが、ただ、瀬戸内海は伊勢湾、東京湾に比べて格段にターンオーバーが遅いですから、少し入れてもたくさんたまっていくということですね。
 その辺の数字をいろいろ出すなら、そこまできちんと含めて考えないといけないということを申し上げておきます。

○須藤部会長 ご説明、ご追加どうもありがとうございます。
 水質ということではちゃんと評価している、それはそれでよろしいんですね。その上で、負荷量として出した値なので、当然水質に影響するファクターが、今、先生おっしゃったようにターンオーバーレートみたいなものが当然出てきますから、その辺は、すべてここでは水質ということで評価しているわけですね。だからもう一回言うと、瀬戸内海は順番でいくと水質は。CODでいいですよ。もう一回言ってください。

○秋山室長補佐 これは先生ご指摘のように、各水域によって海の諸元が全く違うという中での話なんですが、結果的に、面積当たりの負荷が大きい順番に水質も並んでおります。要するに、東京湾が面積当たりの負荷が大きくて濃度も高い、その次が大阪湾になっています。その次が伊勢湾。瀬戸内海は、面積当たりの負荷が小さくて濃度も低いという、繰り返しになりますけれども、海の形が違うし諸元が違うわけですけれども、結果的には、偶然とはいえそういう結果になっております。

○中原委員 結局、瀬戸内海などは人間との付き合い方で、漁業との関係というのは今までも重要だし、これから物すごく重要。漁業生産がずっと持続的に行われる、そのためにはある程度栄養塩がなければだめだし、今、ノリの色落ちの問題も出ているし、だから漁業とうまく付き合ってこの環境を保全するにはどれぐらいがいいか、ただ総量で幾ら、幾らというよりも、その辺、全体の生態系ですよね。漁業を含めた。それを考えた上で、どれぐらいの負荷量かを考えないといけないと思うんですね。それを人間がうまく利用しながらやっていく。
 だからこの数値のベースとして、そういう値が考えに入っているのかどうか、その辺ちょっと、どうも余り入っていないような気がしてならないんですけれども、その辺どうでしょうか。

○須藤部会長 これも環境基準をつくるときには、水産の立場から強くそういうことで基準を決めていますので、どうぞお答えください。

○秋山室長補佐 今回、総量削減基本方針の中で、瀬戸内海を大阪湾とそれ以外に切り分けた理由なんですが、まず、大阪湾以外の瀬戸内海につきましては、特に窒素、りんの環境基準達成率が平成15年度、非常によかった。だんだん上昇してきまして平成15年度には96%ぐらいまで上がってきたということがあります。また、濃度的にもほかの水域より低かった。総量規制というのは、環境基準の達成を大きな目的にしておりますので、大阪湾以外の瀬戸内海については、現状を維持するんだという方向性を審議会で打ち出したいただいたところです。
 その後の環境基準の達成率なんですが、平成16年度、若干90%を切りましたけれども、平成17年度はまた96%余りまで上昇しまして、窒素、りんの濃度からいきますと、環境基準等の対比でいきますと、今が一番いい時期ではないのかなと。100%を達成してさらに濃度が下がると、それは下がり過ぎになりますが、今は90%以上のところで行ったり来たりを繰り返しているところですから、環境基準達成率では一番いい状態にあるのかなと考えております。
 今回、削減目標量を設定するに際しまして、当然、大阪湾については下水道のさらなる高度処理化であるとか、大阪湾についてはまだまだ人口が若干増加するという見込みもあったので非常に苦慮したところではあるんですけれども、下水道の整備やさらなる高度処理化であるとか、産業系の努力を踏まえて、瀬戸内海の中でも大阪湾については削減率を比較的多目に、何とか設定できました。
 大阪湾以外の瀬戸内海につきましても若干負荷は下がっておりますけれども、下水道の整備であるとかそういう施策を進めていけば当然若干は下がります。極端に下がるとそれは大きな問題になりますので、そこは大きな、特に窒素、りんについては削減内容に、各県と調整したところです。

○須藤部会長 水産は十分に考慮はした末、さらに強化はしない、そういうことだったんだろうと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、大雑把に言えば大体、これについては今日は説明で、これはもう決まってしまったことなので、あとはどうぞ、各県でやられるいろいろな施策について見ていただければと思います。
 一応これで2つの説明を終わらせていただきますが、今後の予定について、事務局の方からお願いします。

○高橋閉鎖性海域対策室長 今日はいろいろ活発なご議論、どうもありがとうございました。
 次回に向けての予定でございますけれども、前回、国の取り組み、それから今回、関係府県の取り組みということでご議論いただきましたけれども、そういうものを、今回ご紹介できなかったものも含めてかなりの情報がございますので、それをもとに、それから、今日いろいろご指摘いただいた点を踏まえて作業をいたしまして、次回までに基本計画の進捗状況についての一定の取りまとめ案を私どもで作成いたしまして、それを踏まえてご議論いただきたいと思っております。
 次回の時期につきましては、年度明け、来年度の第1・四半期の中で実施できるように準備したいと思っております。

○須藤部会長 今日の全体を通して何か言い忘れたこととか、何かお気づきの点、よろしいですか。
 そうしましたら、一応議事についてはこの程度にさせていただきます。
 最後に、事務局から何か。

○高橋閉鎖性海域対策室長 二、三ご連絡事項でございます。
 1つは、委員の改選がございます。中央環境審議会の委員及び臨時委員の任期が来年1月5日で満了するということで、現在、環境省では改選の作業をしてございます。この部会もその対象になるわけでございますが、これにつきましては今後、各委員に個別にご連絡させていただきまして、必要な手続等をとりたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
 それから、議事概要の作成等でございますけれども、これまでどおり、本日の簡単な議事要旨を、部会長の了承をいただいた上でホームページに公開したいと思います。詳細な議事録につきましては、作成できましたら各委員の方に個別にお送りして、チェックしていただいた上でホームページに公開することにさせていただきたいと思います。

○須藤部会長 どうもありがとうございました。
 それでは、これにて中央環境審議会第5回瀬戸内海部会を閉会とさせていただきます。
 議事進行、先ほど4時半と申し上げたんですが、十分に時間内でございました。議事進行への委員の先生方のご協力を感謝申し上げて、これで閉会とさせていただきます。

午後4時23分 閉会