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中央環境審議会大気環境部会
微小粒子状物質リスク評価手法専門委員会(第5回)
議事録


1.日時

平成20年11月19日(水)13:30〜15:37

2.場所

虎ノ門パストラル新館5F ローレル

3.出席者

(委員)
上島 弘嗣、内山 巌雄、香川 順
加藤 順子、坂本 和彦、佐藤 洋
関澤 純、武林 亨、田邊 潔
椿 広計、富永 祐民、新田 裕史
横山 榮二
(環境省)
白石水・大気環境局長
早水大気環境課長
岡部総務課長
松田総務課課長補佐
        

4.議題

(1)
リスク評価手法に係る検討について
(2)
その他

5.配付資料

資料1リスク評価手法の基礎的な考え方について
資料2解析に用いる信頼できる疫学知見の抽出の考え方について
資料3定量的解析手法について

参考資料1微小粒子状物質リスク評価手法検討の進め方
参考資料2解析手法の技術的考察に関する作業方針

6.議事

【松田課長補佐】 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第5回微小粒子状物質リスク評価手法専門委員会を開催いたします。
 委員の皆様方におかれましては、ご多忙中にもかかわらずご出席いただきまして、大変ありがとうございます。本日の出席状況でありますけれども、現時点で12名の委員の方にご出席をいただいておりまして、定足数でございます過半数に達していることをご報告させていただきます。
 次に、お手元の配付資料でございますけれども、議事次第に配付資料一覧を記載してございます。配付資料を読み上げます。
 配付資料ですが、資料1、リスク評価手法の基礎的な考え方について、資料2、解析に用いる信頼できる疫学知見の抽出の考え方について、資料3、定量的解析手法について。また、参考資料に、これまでの会議でもつけていましたリスク評価手法の検討の進め方や技術的考察に関する作業方針の二つの資料をつけております。もし、資料の不足などございましたら、事務局にお申しつけいただくようお願いいたします。
 また、マスコミの方におかれましては、また、その他の傍聴者の方におかれましては、カメラ撮りは恐縮ですが会議の冒頭のみとさせていただいておりますので、ご協力をお願いいたします。
 それでは、これ以降の進行につきましては、内山委員長にお願いいたします。

【内山委員長】 本日は、またお忙しいところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。前回からまた少し議論を進めましたので、今日ご議論をまた報告書のまとめに向かってご議論いただきたいと思います。
 今日は、また1時30分から4時30分までと3時間の時間をとらせていただいておりますけれども、最大3時間ということで是非ご協力をいただいて、効率よく議論を進めさせていただきたいというように思います。
 それでは、早速、議事に入りますが、議題の1のリスク評価手法に係る検討についてですが、前回の専門委員会におきまして、1の基礎的な考え方、それから、2の解析に用いる信頼できる疫学知見の抽出の考え方、それから、3の定量的解析手法についてご議論をいただきまして、いろいろご意見をいただきました。そのご議論を踏まえまして、また作業会合におきまして検討をいただきまして、本日、その資料の修正・整理をいただいたものを提出させていただいているというところでございます。
 それから、前回でお示ししていなかった定量的解析手法の中の技術的考察についても今回おまとめいただいておりますので、それらについてもご議論をいただければというように思います。
 それでは、一つ一つ資料に沿って議論をしていきたいと思いますので、まず、基礎的な考え方についてということで、資料1でしょうか、作業会合の代表の新田先生の方から、特に前回からの修正点を中心にご説明をいただいて、それでまた議論を進めたいと思いますので、新田先生、よろしくお願いいたします。

【新田委員】 それでは、私の方から、資料1に基づきまして前回からのリスク評価手法の基礎的な考え方についてのところの修正内容に関しましてご説明をさせていただきます。
 まず、1ページの中ほどに、この4月に報告をされました微小粒子状物質健康影響評価検討会報告書の結論部分を引用しておりました。そこで、やや引用部分をそのままここに引用したということで、表現が唐突な部分があるというご指摘を受けました。ここを報告書の内容のまとめとして、要約した形で修正をいたしております。具体的には、1ページの2番目の段落の中ほど、「信頼性の高い調査に着目すると」という後でございますが、報告書の最後のまとめの部分に書いております内容をここで引用しております。「短期曝露及び長期曝露と循環器系・呼吸器系死亡、肺がん死亡及びその他の健康影響との関連に関する疫学的証拠には一貫性がみられることから、これらの健康影響の原因の一つとなりうると結論されている。」というような引用をしております。修正としては、前回の資料よりもさらにまとめた形にさせていただいております。
 それから、2ページ目以降ですけれども、2のこれまでの環境目標値設定の考え方のところに関しましては、大きな変更点はございません。
 それから、3ページ目の3の微小粒子状物質の環境目標値設定の考え方のところでございますが、まず、前回専門委員会で閾値に関する説明が不十分だというようなご指摘をいただきましたので、まず、3ページ目のほぼ1ページにわたりまして、閾値の考え方に関する記述を追加しております。基本的な考え方は、繰り返しになりますが、微小粒子状物質健康影響評価検討会報告書で記載されている内容をここに、特に定量的評価に関係するところを中心に記載をしております。
 まず、閾値の概念についてということで、毒性学と疫学での閾値のそれぞれの考え方を紹介しております。基本的には、疫学知見に基づく閾値の考え方に関して、いろいろ評価は難しい点があるということで、その内容に関しまして個人の閾値と集団の閾値という二つの考え方をここで説明をしております。
 それから、もう一点は、前回お示しした資料の中にも記載されておりましたが、曝露評価における誤差の存在という点をそのまま書いております。
 それから、解析上の問題という幾つかの側面から問題点を整理した上で、最終的に、「集団における微小粒子状物質への短期的、長期的曝露に対する影響に閾値の存在を明らかにすることはさらに難しい。」ということで、3ページの最後のところになりますが、まとめとして書いて、「このため、微小粒子状物質の濃度が低い環境下においてもいくらかの残存リスクがある可能性は否定できない。」ということで、前回、同じような表現をしておりますが、説明とそれに基づいた考え方の提示というところをわかりやすく修正したつもりでおります。
 それから、もう一点ご指摘いただいた内容ですけれども、3ページの最後の行から、「微小粒子状物質の健康影響の現れ方は」というところの段落でございますが、もともと有害大気汚染物質に関する記述ということで書いておりましたが、少し誤解を招く点がございましたので、明確に「有害大気汚染物質のように」と、有害大気物質に関する記述ということ、それと対比した形の書き方、それから、微小粒子状物質の健康影響の現れ方は、現下の大気環境における認識というようなものをここでまず書いて、その後でWHO、米国EPAの考え方を紹介するというような、段落の構成の整理を行いました。
 それから、4ページ目の最後から5ページ目にかけて、感受性の問題、それから脆弱性の問題を記載しております。前回の専門委員会でハイリスク集団というような概念との関係等々ご議論をいただきました。ここでは、記述としては、感受性という考え方と脆弱性という考え方、二つ存在するということで、それらを含めた形で、高感受性者、脆弱性者を保護するような観点が必要だろうというようなまとめにしております。単に高感受性者と書きますと、ハイリスク集団なのか、非常にセンシティブな集団なのか、そのあたりの概念に誤解を招くという点がございますので、両者を含むようなものだということが明確にわかるように、ここで書きぶりを整理いたしました。
 それから、5ページ目の4の考慮すべきエンドポイントという概念に関しても、前回いろいろご議論をいただきました。ここでの整理は、まず、図1で健康ピラミッドの概念図ということを出して、その概念の意味を医学生物学的反応の観点からということで、概念整理であるという位置づけを明確にいたしました。その上で、実際に大気汚染の健康影響を評価する上でどのようなエンドポイントが採用されているのかということを紹介し、その中で微小粒子状物質では具体的にどのようなものが用いられているのかというような、概念の提示と具体的なエンドポイント、それから微小粒子におけるエンドポイントというようなことで整理をいたしました。
 それから、前回の資料では、本日の資料の2の方に書いておりました、解析に用いる信頼できる疫学知見の抽出の考え方の中に、そこの議論で因果関係に関する判断の記述が不十分だというようなご指摘をいただいております。作業会合でいろいろ議論をいたしましたが、因果関係に関する判断等は、ここの基本的な考え方の中の考慮すべきエンドポイントのところに書くのが適当だろうということで、9ページの中ほどからの段落のところに疫学的な因果関係の考え方に関する記述を追加いたしております。
 それから、9ページの最後の段落のところですけれども、これも本日の資料でいきますと資料2に該当するところで、前回資料で記述されておりました、エンドポイントの中で、どのようなものを重視するべきなのかという判断をここに書き込んで、資料でいきますと、資料2から1の方に移しております。死亡に関して「最も考慮すべきエンドポイントである」。一方、それ以外のエンドポイントに関する知見の考察も行って、適切な健康影響の種類と曝露量−反応関係を推定することが妥当であるというような記述を、個々の疫学知見の抽出の考え方のところではなく、基礎的な考え方のところで記載をするということの方が適当だろうということで、ここに移しております。
 10ページの5の短期曝露影響と長期曝露影響に関しましては、用語の統一以外のところで大きく修正点はございません。
 以上です。

【内山委員長】 ありがとうございました。今、新田委員からは、特に資料1の基礎的な考え方についてということで、前回ご議論いただいて、いろいろ修正あるいはご意見が出たところを中心に、このように修正あるいは追加したということのご説明がありましたので、この資料1について何かご意見、ご質問。
 上島先生、どうぞ。
 

【上島委員】 質問ですけれども、表1の7ページの、この前気がつかなかったのかもしれませんが、早期死亡はわかるのですが、日死亡というのはどういう意味ですか。

【新田委員】 毎日毎日の死亡、解析では死亡数を解析モデル入れているということで、英語で言うとdaily morbidityと呼んでいるものをそのまま日死亡とここで書いております。

【内山委員長】 よろしいでしょうか。特に、ここは注釈なくてもいいですか。あまり、今まで使われてきていないということであれば、前の報告書にはその定義は書いてありましたっけ、4月の報告書には。日死亡の……。

【新田委員】 具体的な定義というような意味では書いておりません。

【内山委員長】 香川先生、どうぞ。

【香川委員】 ちょっとしつこいのですが、有害大気汚染物質、3ページのところですか、直していただいたということですけれども、3ページのところから「微小粒子状物質の健康影響の現れ方は、有害大気汚染物質のように長期間摂取することによって初めて将来的に健康影響が発現するおそれがあり、健康影響が顕在化する前に未然防止が求められるものとは異なる。」という部分が非常にひっかかります。例えば、この7ページのところに長期曝露による影響ということで、慢性呼吸器疾患発病率、肺がんそれから慢性循環器系疾患、これらは、長期摂取することによって将来的に健康影響が発現してくる影響だと思いますが。有害大気汚染物質の記述は、まさにこれですが、この記述は、いかがでしょうか。

【内山委員長】 ここは、有害大気汚染物質と従来のほかの大気汚染物質の違いということをここで述べる、基準をつくる考え方が違うという意味で、ここに入れているのですね。

【新田委員】 私の理解は、香川先生ご指摘のように、微小粒子の場合には長期的な曝露で健康影響が見られる。それは、ここで、有害大気汚染物質で書いてあるような単なるおそれではなくて、疫学知見として示されている。そういう趣旨でここに書かれているというように思っております。おそれというところの意味合いが少し誤解を招くのかなと思っておりますけれども。

【香川委員】 いや、私が、頭が悪くて、そういうように解釈するのか、皆さんはどう思うのか。いや、皆さんが新田先生のご説明で納得されるのだったら、私だけの問題ですから。

【内山委員長】 皆さんがすっと読んで誤解のないようにすることは、文章の推敲の上でもいいと思いますので、今おっしゃられたような、これは有害大気汚染物質の全くの定義ですね。大防法に書いてあるような定義なので、そこと、その上に、あるいはそこと何が違うかということがもう少しわかるように文章を練っていただけますかね。ただ単に、何々とは異なるというもの、似ているところも当然あるのかもしれないし。似ているところというか、将来起こるおそれのあるというのと、将来はもう、このままだったら起こるのだというものとの違いですよね、新田先生がおっしゃったのは。
 わかりました。もうちょっと文章が練れるように推敲させていただきます。
 そのほかにいかがでしょうか。どうぞ。

【香川委員】 黙っていようと思ったのですが、このリスク評価手法の基礎的な考え方というところで、私、一番大事なのは、この委員会が何をするのか、今までよくわからなかったのです。それで、リスク評価手法のことをするのであれば、これは当然、WHOが行ったのとEPAが行ったのと、二つしかありませんね。あと、いろんな機関が行っていますが、基本的にはWHOとEPAなので、そのWHOとEPAの考え方が基本的には同じなのか、違っているのか。違っているとしたらどこが違っているのか。それで、我が国は、WHO方式をとるのか、EPA方式をとるのか、あるいは、その両方のいいところをとって最終的に定量的評価手法のあり方を勧告するのか、いや、そこまでは行かないで、EPAはこうでした、WHOはこうでしたと、こういう方法がありますよというだけでこの委員会を終わるのか。その辺のところがちょっとわからなかったのですが、それは後の問題として、私、前回も申し上げたのですけれども、WHOとEPAは全く異なったアプローチをしていると思います。これは、私だけの意見かもわかりませんが、私は報告書を読むと、WHOとEPAは全く違ったアプローチの仕方をしていると思います。
 それで、私、前回から閾値のことをしつこく言っているのですが、WHOは、閾値がないという前提で出発していますね。ですから、死亡率でPopeとかACSとかハーバードの値で一番低いところをとってきて、その低いところでもまだリスクがありますよといって、濃度−反応関数から計算して、あえて値を出しているわけです。EPAは、閾値がないといいながら、基本的には閾値があると考えていると思うのです。閾値があると考えて、Evidence-based Considerationsというのは何も今回始まったわけじゃなくて、これは古くから行っていることです。我が国の二酸化窒素の環境基準だって、Evidence-based Considerationsで行っているのです。そこへもってきてEPAは何でRisk-based Considerationsというややこしいものを持ち込んできたのか。WHOはもっと簡単な方法で行っていますね。ちょっと表現を変えて、health-impact assessment、EPAのやり方とはちょっと違いますね。EPAは、長時間と短時間の組み合わせで、現行の基準でいろんなカットポイントを設けたときにどうなるかという組み合わせで評価をしている。WHOの方がもっと単純化された方法で行っていますが、EPAは基本的に閾値があると考えていると私は思うのです。だから、基準を決めるときにも、死亡率以外に入院とか、それから、救急外来の受診とか、いろんな健康影響指標を総合評価しています。私は、WHOも、報告書がいろいろ出ておりますけども、最後に出た報告書が一番、確かだと思うのです。WHOは、一番、最後のアップ・トゥー・デートの2005年、EPAは、一番、最後に出たファイナルルールのFederal Registerに細かく書いてあるのが、最後の彼らの意見だと思うのです。
 それを読んでみますと、基本的にEPAは閾値がある、本来、閾値はあるのだけれども、先ほど新田先生がお話しになった閾値がなぜ見えなくなってくるかという理由で閾値が見えなくなっているので、本来は閾値があるのだけれども、いろんな調査手法が入ってきて、そして、測定誤差とかいろんなものが絡んで閾値が見えにくくなっている。そういう状況の中でどう対応するかというので、従来のevidence-basedに基づいた評価で行って、それであと濃度−反応関数からどのくらいのリスクがあるかということを評価しているということで、私は、EPAとWHOのアプローチの仕方は、似ているようで、基本的には全く違っていると思うのです。
 ですから、これは私、ずっと、これ最後に発言しようと思ったのですけれども、我が国の定量的解析手法の勧告の場合にも、その辺のところをきちんと議論していただきたいと思うのです。その議論を今まで全然していないのです。私が閾値のことを言っても、皆さん何も理解してくれなくて、ここに書いてあることで駄目なのかといって前回怒られたのですが、私が言っている閾値というのは、今のようなことで、そこを、出発点をきちんとしておかないと、何かわかったようでわからないで議論が終わってしまうのではないかと。これは私だけの問題かもわかりませんけども。

【内山委員長】 これは、アメリカ、WHO、それぞれのところに行って詳しく聞いてきてくださったご報告にもあると思うのですが、そのときで一応我々は理解したような気がしていたのですけれども、武林先生、新田先生、そこら辺の解釈、どうですか。今、香川委員がおっしゃられたようなことがやっぱり基本的にあるのか、それとも、今まで議論してきたように、両方とも一応閾値があるかないかははっきりしないということで、それぞれのアプローチの仕方で多少違っているのか。

【香川委員】 これ、多少の違いじゃないですね。大きな違いですね。だって、WHOのガイドラインの値とEPAの値は相当開きがあって、WHOのガイドラインは、なぜ違うかというのはここに書いてありますけども、世界的に利用するような目標値的なものだからとかありますけれども、そこに至る過程は、私、全然違うと思うのですね。

【内山委員長】 新田先生、どうですか。

【新田委員】 私の認識も香川先生とそんなに、WHO、EPAに関しての閾値と目標値の決め方に関して、ほぼ同じ認識をしております。

【内山委員長】 加藤先生、どうぞ。

【加藤委員】 香川先生のおっしゃっていらっしゃるWHOとEPAの話ですけども、私がWHOでお話を伺ってきて、私の理解したところは、閾値がないということを出発点としている感覚ではなかったです。やっぱり、わからない。わからないときに、閾値がないという、よりコンサバティブなアプローチをとって、閾値がないことを仮定した濃度−反応関数を使って考えているというように、私は理解しました。
 閾値のある、なしについて、WHOが非常に突き詰めた検討をした結果、報告書が出されたり、それから、エグゼクティブ・サマリーで書かれているリスク評価のまとめが出てきているというよりは、閾値があるかないかわからないので、ない可能性もあるわけで、そのない方をとって数値を考えているというように私は理解したのですけれども。

【香川委員】 言っていることは、私の言っていることと同じことだと思うのですね。加藤先生がおっしゃっているのは、私は、わかりやすく1足す1は2ですよという方式で、できるだけ混乱しないように明確に言っているわけですけども、実情はそうだと思うのですね。でも、実際行った結果は、閾値がないという考えで進んでいるのだと思うのです。だから、ACSとかハーバードの値でどこに閾値があるかと。EPAが行っているのは、いろんなデータを持ってきて、35μg/m3を超えると、どうですよ、ああですよといって、値を決めているわけですね。でも、WHOの方はもう最初から閾値がないから、だから調査で、調べられた調査の地域の一番、最低のところをとって、でも、そこでも残存リスクがありますから、ガイドラインよりも、ガイドラインが満たされたからといっていいというのではなくて、もっと削減する努力はしなさいという書き方になっているわけですね。だから、わかりやすく単純明快に言えば私のような意見になるので、そこを柔らかく言えば、今、加藤委員がおっしゃったような言い方になると思うので、基本は同じだと思うのですけれども。

【内山委員長】 武林先生、どうぞ。

【武林委員】 私もWHOで議論をしてきましたけれども、やはり香川先生のニュアンスはあったとしても、やはり彼らは決して言っていないということは事実だと思います。ここに、文章の中にも幾らかの残存リスクがあり得るというように書いてあると思いますけれども、やはりあるとは、彼らは最後まで言いませんでした。そこはかなり実は時間をかけて議論をしましたけれども、決して、あり得るという前提でもちろん考えているということで間違いはありませんけれども、それはあるかないかという議論は、決して彼らは、最後まである、ないということの結論ではなくて、そこから先はわからないので、あるという前提で考えているということは、やはり議論の中では、最後まで一つの、ゼロか1かという議論にはならなかったというように記憶をしております。

【香川委員】 よろしいですか。
 私、海外調査に行かれた方の意見というのは、エビデンスとしては採用する気持ちはないのですね。なぜなら、これ、皆さんよく考えてごらんなさい。例えば、この報告書が表に出たときに、外部から人が来て、ここはどうですかといってここの委員に聞いたって、多分微妙に皆さん違った考え方をすると思うのです。だから、WHOの担当官に会って、話を聞いてきてこうだったからといって、それがWHOの正しい見解じゃないと思うのです。私も何回かそういうことをしましたが、必ずWHOにしてもEPAにしても、これはWHOの公式見解ではない、EPAの公式見解ではない、私の個人的な意見だと言って、断りを入れてしゃべっていますね。じゃあ、何をエビデンスとするかといったら、やっぱり報告書しかないのです。彼らだって、出た報告書に基づいて、その報告書からかけ離れたようなことは言わないように注意して発言していると思うのです。結局我々は何を信じるかといったら、出た報告書をよく読むことしかないと思います。

【松田課長補佐】 事務局として補足をしますが、第2回の専門委員会でお出しをした海外の調査報告については、もちろん各先生方からのインタビュー結果ということで報告しましたが、事務局も先生方に協力をしていただきましてWHOのエア・クオリティー・ガイドラインを見て、閾値の今の有無に関しての記述について、かなり精査をしたつもりです。実際に、そこの部分の記述の中にもエア・クオリティー・ガイドラインの――ここに第2回の委員会資料が手元にはあるのですが、277ページでは、全体として評価として閾値があるかないかというところまでは書いてはいないと思うのですが、ハーバード6都市研究やACS研究の閾値濃度は、いずれの研究においても明確ではないということが書かれていまして、その後、拡張ACS研究でリスク推定値における統計的な不確実性が13μg/m3より低濃度域で明確になり、さらに信頼区間が大幅に広くなっている。また、ハーバード6都市研究でもPM2.5濃度の長期平均値が11μg/m3の都市と12.5μg/m3の都市におけるリスク推定値は同レベルであり、14.9μg/m3の都市においてリスク推定値が明らかに上昇している。これらの結果は、11μg/m3から15μg/m3の範囲でPM2.5への長期曝露により健康影響がある可能性を示唆している、と。これで、したがって、年平均濃度10μg/m3は、発表された文献の中で最も可能性がある影響レベルより低い濃度である。ここまでが事実関係として書かれていた内容なのかなということで、これの内容を資料化してお出ししてはいるのですが、今の点の香川委員からのご指摘の部分で閾値があるかないかの部分について、WHOがはっきり、閾値について、ないというような形では書かれていなかったのではないかなと思いますが。この点は、加藤先生……。

【香川委員】 よろしいですか。それは、はっきり書いていない、私も思います。書いていないです。書いていないけれども、よく読めば、そういう対応の仕方をしているのではないかと。それで私は、前回、新田先生に、間違っていたら指摘をしてほしいと言ったら、新田委員は私の意見に賛成――賛成というか同意するということなので、これはちょっと時間をとりますから、また後で時間があればと思いますが、私、ここは、ここを避けては、このリスク評価手法の、一番、最後の定量的解析手法のところには行かないと思うのですね。私、非常に大事なところだと思うので、それで前回から閾値のことをしつこく言っていたのです。

【内山委員長】 そうすると、先生のお考えでは、ここでまず閾値があると考えてやるのか、閾値がないと考えてやるかという基本的な立場をここに書くべきだということでしょうか。それの上で、その中で実際的な疫学から閾値があるかどうかというのは判定が難しいということになるかもしれないけれども、立場として、PM2.5の影響には閾値がないと考えてやるのか、あるいは閾値があると考えてやるのかを、どこか基礎的なところの考え方のところで明らかにした方がいいという。

【香川委員】 私は、EPAとWHOがこのようにしたという紹介がありますね、そこのところに、そういうニュアンスのことを入れたらどうかと思います。だからそれは、この委員会の人たちが同意すれば入れればいいし、いや、それは入れられないとなったら、この次進むときにそれを心にとめながらすると。だから、そういうことを全然考えないで進めるのと、いや、WHOとEPAは基本的に同じと考えて先へ進むのか、ちょっと違うのだよということを認識して進むのとでは、私、全然違うと思うのですね。だから、そこを言いたかったのです。

【内山委員長】 わかりました。これは、WHOとEPAの考え方が多少違うというのは、何回も議論になったのではないですか。

【新田委員】 香川先生ご指摘の点ですけども、私自身は、資料1の4ページのところにWHOとEPAの紹介を簡単にしております。その後の段落で、「したがって」という「残存リスクが存在する可能性がある状況においては」という段落がございますけれども、その中で、「疫学知見に基づく曝露量−反応関係から健康影響が生じることが確からしいとされる濃度水準を見出して、それを微小粒子状物質の環境目標値の目安となる数値を検討する際の出発点にするのが適当であると考えられる。」と、ここの点は、明示的には書いておりませんが、evidence-basedでやるのだという表現だというように、私自身は考えております。
 ですから、今日、後で議論になるかと思いますけれども、資料3の最後の部分も、このような考え方に基づいてまとめられているというように思っております。ですから、WHOとEPAとどちらの考え方に近いのかと言われれば、EPAの考え方に近い考え方をここで採用しているというように言えると思います。

【香川委員】 いや、私、新田先生が今おっしゃったことが、皆さんが合意してくださっているのであれば、この定量的な解析手法で、最後に勧告、この委員会としてこうしたらいいですよというのは理解できます。だから、その辺がきちんとしていないと、3のところで勧告しているときに、あれっ、何だ、ということになっちゃうので、その前に今のようなことを少しわかりやすく書いておけば、この3の定量的解析手法に行ったときに違和感を持つことがないのではないかなと思うのです。私も、これ、定量的解析手法を見させていただいて、これ、EPAの手法を結果的にはとっているのだなと思ったのですけども。

【内山委員長】 何か、我々暗黙のうちに、そういう解釈といいますか、この4ページに書いてあるところでWHOとEPAの考え方は書いてあって、流れとしては3の方で、今日ご議論いただくような形になっているようには思っていたのですけれども、皆さんが共有、この会議で今までそういうことが共有できていない、これだけからではなかなかまだできない、あるいは共有できていないかというようにとられるとまずいのですが。

【関澤委員】 よろしいですか。香川先生のご指摘は、閾値のある、なしということに対して非常にクリアに記述をするというような観点からおっしゃっておられるというように受けとめたのですけれども、私は前2回の委員会で不確実性の幅は非常に大きいということを具体的に明確に示しておいた方がいいと。それはなぜかというと、通常、基準値を決めるときに単一物質を使った毒性学的試験というのがあって、そこでは割と単一曝露の量−反応関係というのは明確に求められやすいので、閾値というのを決定して無毒性量という考え方をとっているのですが、この場合は、複合的に曝露されている、しかも曝露されている集団も非常に幅の広い多様な集団であるという疫学的な知見に基づいてやっているということが非常に要になると思うのですけれども、その際にどういう不確実性が非常にあるのだということを明確にしておいた上で、ですので、受け取る側として基準値というのは何か非常に決定的な、決定論的な一つの単一数値と受けとめられやすいのですが、必ずしもそう受けとめないでほしいということを明確にしたような記述にしていただければ、閾値があるかないかというのは、WHOもEPAも明確に決められないという、疫学的な知見からは決められないと言っているので、それはなぜかというと、非常に不確実性の大きい複合的な曝露とか、多様な集団というものを相手にした知見をもとにして決めているのだということで、そういうところから導き出された目標値であるということをはっきり書いておくことによって誤解を避けることができるのじゃないかなということで、不確実性に関する記述というのは、非常に、私は大事だと思っておりまして、前2回でもご指摘させていただきました。

【内山委員長】 どうぞ。

【香川委員】 ちょっと、何かしつこいのですけど、EPAの考え方は、さっきから言っていますように、閾値はあると考えているのですよ。よく読んでみると。それはなぜかといったら、微小粒子状物質――結局、これ、中毒学的な知見が今度は大事になってくるわけですね。NO2とかSO2とかオゾンというのは、従来、閾値があると考えて対応してきていたわけですが、それだって、最近の、前々回ですか言いましたように、疫学調査で調査が幅広く行われてくると、閾値が消えてきちゃっているわけです。
 だから、本来、物質の特性、物理的・化学的特性を考えた場合に、閾値があるはずなのだけども疫学調査でいろんな地域で、そして集団の数とかいろんな要因をふやしたていくと、新田先生がここに書かれておりますように、いろんな要因で閾値が見えにくくなってくる。だから、そのときに、微小粒子状物質は閾値がないのだよと考えて対応するのか、いや、本来、閾値があるのだけども、疫学調査で見ると閾値が見えにくくなってきているという考えを受け入れてリスクを考えていくのと、行き先が違うと思うのですね、私は。

【内山委員長】 わかりました。座長として余り意見を言っていいかどうかわからないのですが、私は、逆にEPAは閾値がないという立場だと思いますけれどもね。今までの考え方からいくと。逆に、WHOはケース・バイ・ケースで、閾値のあるものとないものに分けている。これは、ただし、閾値がある、なしというのを議論するのは、もうスタンスだけの問題であって、この議論をするのは不毛の議論であるということは、EPAの人と話をしてもよく言うのですけどね。
 ですから、特にこの4ページのところに書いてあるように、アメリカも基準はゼロリスクレベルに設定するのではなくて、疫学調査から見たら不確実性が大きいから、実際に有意差がだんだん見えなくなるところぐらいまでしかとれないのではないかというのが恐らくEPAの考え方だと思うのです。ですから、先生おっしゃるように、EPAが、閾値があると考えているというのはちょっと言い過ぎではないかと。僕はEPAの人と話をしていて、よく思いますが。
 これは、でもやり出すと恐らく不毛の議論になってしまうので、先生おっしゃるように、どういう考え方で決めていくかという問題になると思うのですけれども。

【香川委員】 ええ。そうですからね……。

【内山委員長 】むしろ逆に、今までEPAは、こういう発がん物質なり発がんのもしそういう影響があるのであれば、これはもうすべて閾値がないというように考えてゼロに外挿していくというのが今までのEPAの考え方。これもPM2.5だけに限ってそういう考えでないというようには僕は思えないのですが。

【香川委員】 いや、じゃあ、なぜEPAはEvidence-based Considerations、Risk-based Considerationsという二つの考え方をとったのでしょうか。

【内山委員長】 ですから、risk-basedは、もう閾値がないとして、当然モデルをつくっていますよね。それから、コスト・ベネフィット、今日午前中にちょっとEPAの人とも話をしたのですが、リスク・ベネフィットなり、それもやはり閾値がないというモデルを使ってやっているのですよ。だけど、実際に疫学調査をやってみると、下に行けば行くほど不確実性が大きくなって、それをゼロに外挿するような根拠がなくなってきてしまうので、ある程度のところで幅のある閾値としてとらえていると。影響があるというところでとらえたのだというような感覚だと思うのです。これが本当に、限りなくゼロに、バックグラウンド濃度に向かって、多分、信頼の幅が広がっていかなければ、恐らく彼らはゼロに近づけていけたのだろうと思いますが。

【香川委員】 ですから、幅が広がるから、その中で、先生が今おっしゃったように閾値らしいものを評価しようとしているわけですね。だから、それはやっぱり、閾値があると考えて……。

【内山委員長】 あると考えてというよりは、それ以下はもう推測できないという。

【香川委員】 じゃあ、微小粒子そのものに、毒性学的な見地からはどういうように考えているのでしょうか。

【内山委員長】 恐らく、例えばアメリカのDEPのリスク調査もゼロに外挿していますよね。10-3、10-4のリスクをちゃんと出していますよね。ですから、それはPM2.5の中に当然そういうのが入っていれば、そこら辺の考えはPM2.5に限って閾値があるというように考えてやっているのではないような気がするのですが。ですから、結局、はっきりとは分からないところでということになってしまっていると思うのです。新田先生、どうでしょう。実際にEPAの方にもお話を伺ってきて。そこを議論し出すと、本当に、それこそ何時間やっても結論は出ないので、アメリカはもう、発がん物質が入っている、あるいは、発がん物質の単独のものに関しては閾値がないと考えると言って、だけど、それを実際に基準につくるときには、また、具体的な今度マネジメントのものが入ってきたり、コスト・ベネフィットをやったりとして決めてくる。環境基準のときは、コスト・ベネフィットは関係ないですが、排出基準なんかには、そういうものを入れて考えざるを得ないという立場ですが、少なくともモデルをやるときにはゼロに全部外挿している。

【香川委員】 時間がたちますので、今、議論したようなことを踏まえてやっていただけたらと思いますけど。

【内山委員長】 そこら辺のところをどういうように書き込むか、少し新田先生、また作業会合で議論できますか。

【新田委員】 実は、今日の資料3の最後の部分で、それを反映した形で手順として明確にしているということで、私、冒頭、香川先生の意見とほとんど変わらないと申し上げたのは、いずれにしても疫学知見から閾値があるかないかという判断ができない。その中で、WHOは、加藤委員がご説明になりましたように、基本的にはないというようなことを前提に、環境目標値、指針値でのプロセスを踏んでいる。一方、EPAはあるというようなことを念頭に置いた従来の考え方を踏襲して今回も決めているというように解釈しています。

【内山委員長】 よろしいですか。私の意見とはちょっと違いますけど。

【香川委員】 私は新田先生のご意見に賛成です。

【内山委員長】 はい。では、また後で具体的な支障が出たときにそういう考え方になっているのかどうか、ご議論いただきたいと思いますが、1のところは、他はよろしいでしょうか。

(なし)

【内山委員長】 そうしましたら、では、2の方に行きたいと思いますが、解析に用いる信頼できる疫学知見の抽出の考え方についてということで、じゃあ、また新田先生の方から修正点を中心にお話し願えますでしょうか。

【新田委員】 資料2に基づきまして、解析に用いる信頼できる疫学知見の抽出の考え方につきまして、前回の本委員会で議論されました点に基づいた修正を加えました。
 まず、大きい修正点は、先ほど関澤委員の方からもご指摘がございましたけども、不確実性に関する議論が記載不十分だというご指摘、前回の委員会でもありましたので、4ページから5ページ、6ページにかけて、疫学知見の不確実性、これも繰り返しになりますが、健康影響評価検討委員会報告書でも記載しておりましたが、特にここでは、定量評価により深い関係のある不確実性を中心に、ここで曝露評価に関する問題、統計モデルに関する問題、それから共存汚染物質等の交絡因子等に関する問題、時間的な構造の問題という四つの中で定量評価に特にかかわる内容を記載しております。基本的な内容は、健康影響評価検討委員会報告書の内容と変わるところはございません。
 それから、先ほど資料1でご説明させていただきましたように、前回この資料2のところに記載されていた内容を一部基礎的な考え方のほうに移しております。ですから、ここで前回記述があってなくなった部分の多くは、今日の資料1の方に移して記載をしているということでございます。
 以上です。

【内山委員長】 ありがとうございました。
 それでは、資料2についてはいかがでしょうか。よろしいですか。ここのところは事実を淡々と書いていますので、余りご議論がなければ、この原案のようなことでよろしいでしょうか。よろしいですか。

(了承)

【内山委員長】 それでは、また後に戻っていただくことも、あるいは全体としてご議論いただくこともあると思いますので、資料3の定量的解析手法についてということに行きたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 この部分に関しましては、冒頭に申し上げましたように、前回の委員会の資料から追加されているところがございますので、事務局から資料の説明をまずお願いして、それから新田先生の方にまた追加意見をお願いしたいと思います。

【松田課長補佐】 それでは、資料3のうち1番目の定量的解析手法について、に関して前回からの変更点と、今回新たに追加された2以降の資料について読み上げたいと思います。
 1番の定量的解析手法については、前回の委員会資料でもお出ししましたが、疫学知見に基づく影響度評価手法とリスク削減予測に基づく影響度評価手法の二つの方法があり、これがWHOや米国EPAでも使われているという話が書かれていまして、結論としては、疫学知見に基づく影響度評価手法を優先していこうという部分については変わっておりません。
 ただ、一部リスク削減予測に基づく影響度評価手法について、環境目標値の平均化時間や評価方法の検討材料に援用することを考えられるという2ページ目の記述があるのですが、ここで平均化時間と評価方法の内容について説明をした方がいいのではないかということで、実は、ここ以外にも平均化時間の記述が、資料1に戻りまして、資料1の5番目の短期曝露影響と長期曝露影響で11ページ目に平均化時間という記述を書いていますので、こちらのところに11ページ目の1段落目の3行目ですが、この平均化時間の説明として、「濃度測定データから平均値を算出する時間間隔・期間である平均化時間」ということで、平均化時間の説明をここで明示するとともに、また資料3に戻り、2ページ目に行きまして、この評価方法について「環境目標値の数値と測定データを比較して環境濃度が目標値を達成したかを評価するための評価方法」ということで、この内容について環境目標値と評価方法の内容について明示をはっきりさせることにしました。そこが一番の変更点です。2番目以降は読み上げます。
 2.国外の定量的解析手法。
 「WHOや米国EPA等では、環境目標値の目安となる数値を検討する具体的な定量的解析手法として、『疫学知見に基づく影響度評価手法』と、『リスク削減予測に基づく影響度評価手法』の二つの方法を用いて定量的な評価に関する作業が行われている。前者は米国EPAではEvidence-based approach(Consideration)といわれているものであり、Evidenceの主体が疫学知見であることから、本報告書では『疫学知見に基づく影響度評価手法』と呼んでいる。後者は、Risk-based approach(Consideration)といわれているものであり、WHOでは健康インパクト評価(health impact assessment)と呼んでいる」。
 次のページに行きまして、2.1.の疫学知見に基づく影響度評価手法の概要として、「WHOや米国EPA及びカリフォルニア州EPA(Cal EPA)では、現下の大気環境において実施された疫学知見に基づき、PM2.5の曝露と健康影響との関連性から影響が生じることが確からしいとされる濃度水準を見出し、その濃度水準を目安として環境目標値を選択している。いずれの機関も長期曝露の疫学知見を用いて、微小粒子状物質の環境目標値(年平均値)を検討するとともに、米国EPAは短期曝露の疫学知見、ならびに年平均値と24時間平均値との統計的関連性を考慮して環境目標値(24時間平均値)を検討している」。
 2.1.1.長期曝露影響。「長期曝露影響については、PM2.5曝露と死亡率との関連性を示したハーバード6都市研究やACS研究に基づいて検討が行われている。これらの研究は、データの監査、結果の再現性や妥当性の確認と、感度分析を含む再解析が実施されている(Krewski,2000)とともに、検討期間の延長や追加的な解析を実施した拡張研究(Laden,2006、Pope,2002)が実施されている。
 ACS拡張研究(Pope,2002)において推定された濃度−反応関係は、PM2.5濃度(長期曝露)と全死亡、心臓・呼吸器系疾患による死亡、肺がんによる死亡との関係のいずれも直線関係と有意に異なるものではなく、閾値の有無については明確になっていないと報告されている。ACS拡張研究(Pope,2002)において推定された濃度−反応関係の信頼区間は、PM2.5濃度が12~13μg/m3以下の範囲では幅が広がっている(図1)ことが示されている」。これは、後ろの4ページ目に図1を示しております。
 「ハーバード6都市研究(Dockery,1993)では、PM2.5濃度の長期平均値が11μg/m3の都市と12.5μg/m3の都市におけるリスク推定値は同レベルであり、14.9μg/m3の都市においてリスク推定値が明らかに上昇していることが示されている。
 EPAスタッフは、これらの濃度範囲以下では、PM2.5濃度と相対リスクの関連性の不確実性が拡大し、潜在的な閾値が存在する可能性が高まると考え、環境基準値等を提案する際には年平均濃度として12~13μg/m3を目安とした。
 WHOは、ACS研究やハーバード6都市研究の結果を踏まえ、11~15μg/m3の範囲でPM2.5への長期曝露による健康影響の可能性が示唆されることから、最も可能性のある影響レベルより低い濃度である年平均濃度10μg/m3を選択した。
 疫学研究において認められるPM2.5曝露と健康影響との関連性は、データが集中する平均濃度やその周辺において最も強く認められている。このことから、EPAスタッフは、長期曝露研究で測定されている各都市の長期平均濃度よりもやや低い濃度をPM2.5年平均値レベルの選択に考慮することが適切であるとしている。
 PM2.5の長期曝露と死亡率に関する疫学研究において報告されているPM2.5長期平均濃度は、ハーバード6都市研究(Dockery,1993)で18μg/m3(11.0~29.6μg/m3)、オリジナルのACS研究(Pope,1995)で21μg/m3(9.0~33.5μg/m3)、ACS拡張研究(Pope,2002)で解析に用いられた1999~2000年で14μg/m3、オリジナルのACS研究とACS拡張研究の両期間を合わせた平均濃度は17.7μg/m3である。また、死亡以外の症状や機能変化をエンドポイントとしたPM2.5の長期曝露に関する疫学研究として、小児の肺機能発達率の低下を示した南カリフォルニア小児コホート研究や、小児の肺機能への影響を示した24都市研究があり、これらの研究におけるPM2.5長期平均濃度は、それぞれ15μg/m3、14.5μg/m3である。
 EPAスタッフは、これらの疫学知見をPM2.5の年間平均基準値を約12μg/m3まで下げる根拠と考えた。しかし、肺機能や症状など死亡以外のエンドポイントに関する疫学研究が少ないなどの理由から、EPA長官は、PM2.5の年間基準値を従来の15μg/m3より低濃度に設定する根拠としては適切ではないと判断した。
 PM2.5の長期曝露に関連した死亡が、PM2.5濃度分布の下端ではなく平均値以上の範囲で観察されると仮定するならば、年間基準値としては18μg/m3がもっともらしい影響濃度と考えられる。加えてACS研究およびハーバード6都市研究のグラフから、さらに低濃度まで影響があることが示唆される。ACS研究では、13μg/m3のレベル以下においてリスク推定値の不確実性が観察されている。また、ハーバード6都市研究では、PM2.5が最も低い11~12.5μg/m3の都市における相対リスクは同等である。一方、PM2.5の長期的な平均濃度が14.5μg/m3以下の都市では、大きなリスクの増加は認められていない。Cal EPAのスタッフは、以上のような疫学知見から、12μg/m3は主要なコホート研究の平均濃度より低い値であり、子供の入院・死亡や、長期曝露に関連した成人の死亡に対しても更なる保護となると考え、PM2.5年間平均基準値として12μg/m3を推奨している」。
 2.1.2.短期曝露影響。「EPAでは、多くの時系列研究を取り上げ、PM10、PM2.5、PM10-2.5の短期曝露と健康影響との関連性について、図2のように過剰死亡リスクの推計値を示して検討している」。図2に、主に短期に関する知見についての図を載せております。
 「PM2.5の短期曝露と健康影響との間に統計的に有意な関連性を示している疫学研究では、PM2.5濃度の24時間平均値の98パーセンタイル値の範囲は32~59μg/m3であり、99パーセンタイル値の範囲は34~69μg/m3である。EPAスタッフは、これらの疫学知見に基づき短期曝露影響に関する環境基準値(24時間平均値)は、上記の98パーセンタイル値または99パーセンタイル値の範囲以下にするべきであると考えた。
 死亡や入院、呼吸器症状との有意な関係を報告した疫学研究では、24時間平均値の98パーセンタイル値が約39μg/m3以上の研究が多数を占め、98パーセンタイル値が30~35μg/m3の範囲内では有意な関係を示す疫学研究は少数となり、30~35μg/m3を下回るレベルの疫学研究は極めて限られている。以上を根拠としてEPA長官は、環境基準値(24時間平均値)を35μg/m3に改定した。
 また、PM2.5の環境基準値(年平均値)である15μg/m3を下回る長期平均濃度を有する地域で行われ、PM2.5曝露と死亡率との統計的に有意な関連性が認められた疫学研究であり、かつ、重量法によるPM2.5濃度の測定が実施された研究として、カナダ8都市(Burnett,2000、Burnett,2003)、フェニックス(Mar,2000、Mar,2003)、サンタクララ郡(Fairley,1999、Fairley,2003)が挙げて、年間基準値を達成しただけではPM2.5の短期曝露と関連した死亡リスクから保護できないことを示すものとして、環境基準値(24時間平均値)を設定する根拠としている」。
 2.2.リスク削減予測に基づく影響度評価手法の概要。「リスク削減予測に基づく影響度評価手法は、大気中のPM2.5濃度が、現在の濃度から設定しようとする環境目標値まで低下したときに、低減される健康リスクを予測し、濃度低減による効果をみる手法である。また、リスク推定値に含まれる不確実性や大きな影響を及ぼす因子に関する感度分析を実施し、その効果の大きさに関する評価が行われている。
 リスク削減予測手法に含めるべきエンドポイントの選択は、入手可能な疫学知見及びその他の科学的知見の根拠の程度、エンドポイントの定義の明確さ、ベースラインとなる死亡や疾病等の発生率に関する情報の入手可能性及び健康や経済的観点の影響の重要性などによって決定されている。
 PM2.5やPM10の短期曝露と日死亡率に関する時系列研究は各国で実施されており、妥当性のある一貫した結果を示していることや、全死亡率の定義は明確であることから、WHOはエンドポイントとして全死亡を選択している。EPAでは、短期曝露と関連したエンドポイントとして、全死亡、心血管系疾患による死亡、呼吸器系疾患による死亡、心血管系疾患および呼吸器系疾患による入院、呼吸器症状の変化などを選択している。長期曝露と関連したエンドポイントとして、全死亡、心血管系疾患による死亡、および肺がん死亡などを選択している。Cal EPAでは、エンドポイントとして、死亡、慢性疾患、入院、軽度障害を選択している。
 リスク削減予測による環境影響評価手法は、一般に、(1)PM2.5濃度測定値、またはモデルによる濃度予測値、バックグラウンド濃度などの大気質情報、(2)疫学知見に基づく濃度−反応関数、(3)対象都市を含む地域で収集された死亡率・morbidityのベースラインデータ、(4)人口に関する統計情報によって構成されており、これらの構成要素に基づき健康リスク予測と感度分析を実施している。
 EPAが実施したリスク削減予測による影響度評価では、候補とした多数の都市間で地域変動があることを前提として、PM2.5濃度を含む環境大気測定データや、死亡率・入院・受診などの健康エンドポイントに関するベースラインデータが整備され、精度の高い疫学研究が実施され、濃度−反応関数が推定されている9都市を選択して、各都市についてリスク削減予測を行っている。Cal EPAが実施したリスク削減予測による影響度評価では、カリフォルニア州の郡単位で評価が行われている。
 濃度−反応関数は、一般に対数線形モデルを基本としたホッケースティック型関数で表されている。ホッケースティック型関数は、仮想的な閾値(カットポイント)を設定したシグモイド関数などを代替するモデルであり、カットポイントの濃度水準とカットポイントより高濃度側における傾きによって定義される。
 評価しようとする地域におけるバックグラウンド濃度として、人為排出源に起因する部分を除いたPM2.5濃度を推計している。このバックグラウンド濃度は、環境目標値達成によるPM2.5濃度の変化量を推定するため必要であり、また、濃度−反応関数のカットポイントを設定する際にも必要となる。
 PM2.5の曝露をうける人口の大きさを設定するため、対象地域内の人口統計資料が必要となる。また、エンドポイントごとにベースラインを設けるため、各対象地域内の現状における年間死因別死亡数または死亡率が必要となる。入院等のmorbidityをエンドポイントとする場合には、その発生数や発生率が必要となる。
 3.疫学知見に基づく影響度評価における解析手法とその不確実性。
 3.1.長期曝露影響。「微小粒子状物質の長期影響に関する主要なコホート研究では、Cox比例ハザードモデルが解析に用いられている。生存時間データの解析では、生存時間の分布が左右対象ではないことや、打ち切りとよばれる研究終了時に生存している対象者が存在することを考慮した解析方法が必要となる。さらに疫学研究では微小粒子状物質による曝露のほかに、死亡のリスク要因や交絡因子で調整する必要がある。
 Cox比例ハザードモデルは生存時間を直接取り扱うのではなく、生存時間の逆数にほぼ相当する死亡率に対してモデルを仮定している。Cox比例ハザードモデルでは死亡率の対数値を時間とともに変化する部分と変化しない部分の和に分解し、時間によって変化しない部分に線形モデルを当てはめることで、打ち切りの取り扱いを容易にしている。また直接死亡率を推定するのではなく死亡率の相対的な変化(死亡率の比)を推定することで時間とともに変化する部分が消去され、これらにより特定の生存時間分布を仮定せずに死亡率の比が推定可能であるため、生存時間解析で標準的な方法となっている。Cox比例ハザードモデルの線形モデル部分に曝露要因、リスク要因、交絡因子を含めることで、多変量による調整が可能であり、疫学領域で広く用いられている。
 このようにCox比例ハザードモデルは、標準的に用いられている解析方法であるが、どんな解析手法にも解析結果が妥当であるための仮定や前提条件があり、それらが満たされていない場合、微小粒子状物質の影響推定に偏りが生ずる可能性があり、結果の解釈は慎重に行うべきである。Cox比例ハザードモデルでは上述のように、曝露要因、リスク要因などの影響は時間が経過しても変わらないことが仮定されており、また各要因の影響は対数死亡率のスケールで加算的(死亡率のスケールで乗算的)、連続的な変数の影響は対数死亡率のスケールで直線的に増加すると仮定されている。
 疫学研究では、曝露要因を対象者にランダムに割り付けることができないため、曝露と関連している要因であり、かつ死亡のリスク要因となっている交絡因子が存在し、交絡因子を無視して解析を実施すると微小粒子状物質の影響推定に偏りが生ずる可能性がある。一方、非常に強く死亡に影響するリスク要因を線形モデルに含めることで微小粒子状物質の影響を精度よく推定することが可能となり、信頼区間の幅が狭くなることが期待できる。これらの点から、交絡因子をはじめとしたリスク要因を正しく同定しCox比例ハザードモデルに含めて解析することが重要となる。6都市研究ACS研究ともに主要なリスク要因で調整を行って調整死亡率の比を報告しているが、オリジナル研究の再解析では、BMIなどの連続量の変数については線形項だけではなく二次の項もCox比例ハザードモデルに含める(死亡率に対する影響が単調増加ではなく、一度だけ方向が変わることを許している)、新しい職業曝露変数を作成し解析に含める、などの検討を行っており、結果に影響はなかったと報告している(Krewskiら,2000)。潜在的交絡因子、リスク要因の調整に関しては、追跡期間を延長した6都市研究、ACS研究でも再解析の方針を踏襲している。
 ACS拡張研究では再解析で実施された種々の感度分析を取り入れており、職業曝露と食事に関する新たな変数を含むリスク要因の徹底した調整以外にも、Cox比例ハザードモデルで必要な仮定の微小粒子状物質濃度と対数死亡率との線形性の仮定を緩めた感度分析を実施している。ACS拡張研究での図1の結果は、各都市の死亡率の比の対数値を推定し、主解析では線形ランダム効果モデルを当てはめているのに対し、感度分析としてGAMを用いたスムージングの手法により濃度−反応関係とその95%信頼区間を推定したものとなっている。
 大気汚染による健康影響に関する疫学研究は、大気汚染物質への曝露指標として都市の平均濃度を用いる半生態学的研究であることから、各都市の特性を表す要因と微小粒子状物質濃度とが区別できなくなっており、都市の特性が死亡にも影響していると潜在的な交絡因子となっている可能性がある。都市の特性がランダムに変動していれば、ランダム効果モデルにより調整可能であるが、そのような特性が距離的に近い都市間で関連があり、かつ微小粒子状物質濃度とも関連していると、微小粒子状物質の影響推定に偏りが生ずる可能性がある。ACSオリジナル研究の再解析、ACS拡張研究では、この問題に対し空間スムージングの手法により感度分析を実施しており、都市間の関連性は認められなかったとしている」。
 3.2.短期曝露影響。「大気汚染物質の急性健康影響を検討する場合、対象となる大気汚染物質濃度を説明変数、健康影響を示す事象(死亡、疾患の発症など)を目的変数とした回帰分析が行われる。そのリスク推定値は様々な交絡因子の影響を受け、かつ、その交絡因子と健康影響の事象との関連は必ずしも線形の関係ではないため、それらの関係性を考慮した統計学的モデルを用いた解析方法が工夫されてきた。交絡因子としては、時間(長期トレンド、季節)、気象因子(気温、湿度)、共存汚染物質、曜日などが含まれる。これまで、大気汚染物質の短期健康影響について検討するための統計学的手法として、時系列解析とケースクロスオーバー法が主に用いられてきた。
 時系列解析は、大気汚染物質濃度の時間変動と健康影響の指標との関連を検討する方法である。リスク比を推定するために用いられる回帰モデルとしては、対象となる大気汚染物質濃度と健康影響事象の時間単位の頻度との聞に対数線形関係を想定したGeneralized Additive Model(GAM)とGeneralized Linear Model(GLIM)が主に用いられてきた。通常の線形回帰モデルでは目的変数として連続データを想定しているが、死亡や疾患の発症を目的変数とした場合、その多くは2値(あり、なし)や離散(度数)データであり、連続データではないことが多い。GAMおよびGLIMは線形回帰モデルの拡張であり、リンク関数を用いることにより目的変数が連続データ以外の場合でも使用できる。
 GAMは大気汚染物質の健康影響を検討するための時系列解析で最も標準的に用いられてきた手法の一つである。目的変数と説明変数に関して単純な線形性の仮定を必要とせず、ノンパラメトリック回帰を用いた平滑化手法で柔軟な解析をすることができる。実際の解析では、時間(長期トレンド、季節)、気象因子(気温、湿度)について平滑化を用いて調整することが多い。曜日の調整には、GAM、GLIMともダミー変数をモデルに含めることにより行われる。
 GLIMは、ノンパラメトリック平滑化を用いるGAMとは異なるが、線形回帰モデルの拡張であるため、GAMの特殊な形といえる。気温と湿度の影響を調整するために自然スプラインをモデルに含めることが一般的であるが、時間の影響については、自然スプラインあるいはダミー変数(1~2か月毎)をモデルに含める方法がある。
 一方、ケースクロスオーバー法は急性的な健康事象の発症リスクに対する一時的な大気汚染物質の曝露要因を評価するための方法であり、それぞれの症例に関して、事象のおこった日(ハザード期間)の曝露要因とそれ以外の日(コントロール期間)の曝露要因を比較することにより、曝露と事象との関連を推定する。コントロール期間の選定にはいくつかの方法があるが、ハザード期間の同一年、同一月内の同じ曜日をコントロール期間として選ぶ時間層別化ケースクロスオーバー法が最も偏りの少ない方法として用いられている。時系列解析と異なり、長期トレンドと曜日は研究デザインにより自動的に調整される。気温と湿度については、モデルに二次の項、あるいは自然スプラインを含めることによりその影響が除かれる。リスク比を推定するために、条件付きロジスティック回帰モデルを用いてオッズ比を求め、それをリスク比の推定値としている。
 上記の統計手法により、求められた各地域のリスク比と標準誤差の推定値は、メタ解析の手法が用いて統合される。大気汚染物質の健康影響は地域により異なることが示唆されているため、変量効果モデルを用いることが一般的である。
 短期曝露影響に関する統計モデルにおいても推計における種々の不確実性がある。測定誤差や交絡の影響など一般的な問題は短期曝露影響の解析においても同様に生じうる。
 時系列研究では対象地域における交絡因子の分布が対象期間を通して変化しないと考えられる場合には、喫煙のような潜在的な交絡因子を考慮する必要がないが、時系列に変化しうるものは潜在的な交絡因子となりうる。気象因子は最も重要な潜在的交絡因子であり、その調整方法によってリスク推定値は大きく変動する可能性がある。
 短期曝露と日死亡や入院、救急受診等の健康影響に関する検討では、大気汚染濃度と健康影響指標との関連性が最も大きくなる時間的な遅れ(ラグ)が存在することが多くの研究で示されている。リスク推定の際にどのようなラグを採用するかによってリスク推定値の大きさは変動する。集団でみれば、影響が最も大きく現れるラグは広がりを持つと考えられるため、特定のラグ(当日、前日、等)におけるリスク推定値は考え得る全体のリスク推定値よりも小さいと考えられる。ラグの取り扱いにはいくつかの方法が考えられる。一つの方法は、どの地域でも同じラグ構造を持つと仮定して、複数都市研究においてもラグごと(当日、前日、等)にリスク推定値を求める方法である。別の方法として、最も大きいリスク推定値を与えるラグを用いる方法や、ラグに分布を仮定したモデル(distributed lag model)を用いて、最適なパラメータをそれぞれの地域で推定する方法もある。最初の方法は推定値の一貫性を評価する上では有効であるため、いくつかの複数都市研究で採用されている。この方法ではすべての地域で同じラグで最大のリスク推定値が得られるとは限らないことから、リスクが過小評価される可能性がある。このようなラグ構造は大気汚染物質ごとに、またエンドポイントによって異なっていると考えられ、短期影響に関する時系列解析では大きな不確実性を与える要囚となる。
 4.実施可能な定量的解析手法の考察。「前節までの定量的解析手法の内容や2及び3に示す基礎的な考え方及び解析に用いる信頼できる疫学知見の抽出の考え方に基づいた具体的な環境目標値の設定に関する定量的解析手法として、長期曝露影響と短期曝露影響の両者について、以下のような手順で検討することが考えられる」。
 4.1.長期曝露影響。
 [1]微小粒子状物質の環境濃度と考慮すべきとされたエンドポイントとの定量的関連性を示す疫学知見を選択する。疫学知見の選択は資料2の第3節で示された考え方に基づいて実施する。
 [2]選択された疫学知見それぞれについて曝露量−反応関係の信頼区間に関する検討に基づいて、健康影響が生じることが確からしいとされる濃度水準を選択する。
 [3]当該濃度水準を、環境目標値を検討するための出発点とする。「重篤度」というのは、これは削除してください。
 [4]国内知見と国外知見の取扱は資料2の第4節のとおり、総合的かつ包括的に評価することを基本としつつ、エンドポイント毎の内外の知見の共通性、相違点にも留意して濃度水準の選択に資する作業を行う。
 [5]曝露量−反応関係の信頼区間に関する検討によって健康影響が生じることが確からしいとされる濃度水準を見いだすことが困難であった疫学知見については、健康リスクの明確な上昇がみられる濃度水準を検索する。
 [6]考慮すべきとされたエンドポイントに関する毒性学知見から、濃度−反応関係ないし無毒性量が示される場合には、環境目標値の目安となる数値を検討する際の参考とする。
 4.2.短期曝露影響。
 [1]考慮すべきとされたエンドポイントに関する疫学知見について資料2の第3節で示された考え方に従い疫学知見を選択する。当該知見の中で統計学的に有意な曝露量−反応関係を示した地域の濃度水準を検索する。
 [2]短期曝露影響に関する当該濃度水準の検索にあたっては、24時間平均値の年間上位パーセンタイル値(98パーセンタイル値、等)を考慮する。
 [3][1]で選択された疫学知見において、長期平均濃度と短期平均濃度との統計的関連性を検討する。
 [4]国内知見と国外知見の取扱は資料2の第4節のとおり、総合的かつ包括的に評価することを基本としつつ、エンドポイント毎の内外の知見の共通性、相違点にも留意して濃度水準の選択に資する作業を行う。
 [5]考慮すべきとされたエンドポイントに関する毒性学知見から濃度−反応関係ないし無毒性量が示される場合には、環境目標値の目安となる数値を検討する際の参考とする。
 なお、低濃度領域における曝露量−反応関係については、考慮すべきとされたエンドポイントに関する疫学知見の基盤となる疾病構造や微小粒子状物質のバックグラウンド濃度(人為発生源以外の発生源に由来する濃度)などの大気汚染状況の国内外の差異などの不確実性が大きいことを十分に考慮すべきである。
 以上です。

【内山委員長】 ありがとうございました。ただいま事務局の方からご説明をいただきましたけれども、あと新田先生の方から追加のご説明がありましたら、よろしくお願いいたします。

【新田委員】 具体的な内容に関してということではございませんが、前回の本委員会それから本日も議論されました評価における不確実性の問題に関しましては、先ほどご説明させていただきました資料2で大枠をお示しております。それから、この定量的評価のところでは長期影響それから短期影響で最もよく用いられている統計モデルに関する不確実性はここで記述するということで、少し分けた記述になっております。
 以上です。

【内山委員長】 それでは、この資料3について、特に前回まではなかったところが追加されておりますので、上島先生、どうぞ。

【上島委員】 15ページの[2]のところの上位パーセンタイルの値が(98パーセンタイル値、等)とありますが、この98というのは何か意味が、どういう意味があるのでしょうか。何か考え方があるのでしょうか。

【内山委員長】 新田先生。

【新田委員】 この点に関しましては、我が国のNO2の環境基準の評価、それからEPAの評価の基準として98パーセンタイル値が採用されているという、そういう前提がありまして、その評価の基準に対応する統計量としてここで上位パーセンタイル値を用いてきたということで、ここでも98パーセンタイル値に――するかどうかというのはここで決める問題ではないかと思いますので、例示として括弧で等ということで、そこも考慮した上で検討するということで、先ほどから議論になっておりますが、米国のEPAの考え方、それから、我が国の従来からの考え方を踏襲したやり方をここで提案をしているということでございます。

【内山委員長】 そのほかございますでしょうか。
 椿先生。

【椿委員】 モデリングのことに関して非常に詳細に記載してくださったと思うのですけれども、一方で、この中にある今回の評価に使う共変量というものに関して、何回か前に議論あったとおりなのですけど、いわゆる多重共線性というものが避け得ないという現状があるということですね。一つは、PM2.5等と、それからSOX・NOXという従来型の大気汚染との間の共線性があること。それから、やはりPM2.5の高濃度の地域ないしは低濃度の地域が、そもそも総死亡率においてどういう状況、もともとの状況がどうであるか、それがいわゆる大気汚染等の環境に起因するばかりではなくて、どちらかというと厚生経済的な、あるいはその土地のいろいろな病院等の完備等によるものとか、いろいろな問題、もちろん第1の主要な問題はSOX・NOXとの共線性かとは思いますけれども、その辺の問題がモデルの中には、そもそもモデルの推定の中には非常に困難としてあるということ。このために、現状においては、SOX・NOX起因のリスクについてもある程度PM2.5と少し重複してカウントせざる得ない可能性があるという、その種のことは書かれておいてもいいのではないかということが第1と。
 それから第2に、欧米でGAMなどを使っているということもあるわけですけれども、そういうことに関しては丁寧に記載されているのですけれども、共変量と同時に、この場合、ある程度単純化せざるを得ないのは、いわゆるインタラクションという、相互作用的なものに関して限られた情報の中でそこまでの複雑な構造がなかなか見づらいということがあるという中で、ある程度、最終的に解析方針で示されたような4のような、まず、かなりやるべき標準的なシンプルな分析からスタートしているという状況がある、と。今後、疫学的知見ないしはデータが蓄積された段階でより詳細な検討が可能になってくるということで、恐らくこの基準自体の設定等が、こういうevidence-basedの立場に立つとしても見直しがかなり定期的に必要なものであるということがあるのではないかと思います。
 あと、非常に細かい話で、一般化加法モデルやなんかに関する線型性とかということで、ちょっと言葉遣いとしては気になっている点もあるのですが、これは非常にテクニカルに細かい問題なので、また別の機会に事務局の方に申し上げたいと思います。

【内山委員長】 ありがとうございます。
 そのほかにいかがでしょうか。富永先生。

【富永委員】 今、椿委員が指摘されたところのうちの第1点、特に交絡因子の調整のところで、共存汚染物質の調整あるいは考慮してPM2.5の影響を調べるということですが、統計学的にはいろいろモデルがありましても、実際には調整できない場合もあるわけですね。ですから、この14ページの4.1と4.2に長期曝露影響、[1]にどちらも一、二行目に「資料2の第3節に示された考え方に基づいて」と書いてありまして、資料2の第3節は、特に重要なのは7ページですね。7ページの中ほどにポツが四つありまして、その4番目に「交絡因子の調整など適切な解析手法が採用されているか」と書かれて、さらに二、三行書かれておりますけれども、ここで書くのは非常に簡単に総論的に書けるのですけれども、実際問題として統計処理をしようとすると、今、椿委員が指摘されたようにPM2.5あるいはSPM、それとSO2、NO2などは非常に密接に関係しております。もちろん、あるものは減り、あるものは減り方が少ないとか多少の差はありますけれども、過去長期間にわたって曝露の影響を受けておりますから、それらを完全に分離することは不可能です。それで、私は、不可能なことはもうやらないで、無理にしないで、調整可能な交絡因子、例えば性、年齢、喫煙とか、そういうものはきちっと調整する、それから共存汚染物質については、無理に調整しようとすると解釈ができないような結果も出てくる可能性もありますので、それはあえてしないで、香川委員が前に指摘されたような、いろんな共存汚染物質の相互関係、それぞれどれぐらい時間、空間的に相関しているか、そういうデータだけきちんと出しておいて、あと、統計学者の常識でいって、これは同時に考慮できないとかそういうことがありましたら、あえてやらないで、実際問題として今度、その中で共存汚染物質、主要汚染物質のPM2.5も含めてどれが一体影響を与えているか。この専門委員会ではPM2.5にスポットライトを当てておりますから、PM2.5が影響を与えているというように解釈しようとしていますけれども、実際はそうでない可能性もありますね。ですから、その辺は余りクリアにどれか一つに絞らないで、複合汚染物質体のような形でとらえて、その代表選手としてPM2.5を取り上げる。そして、長期影響、つまり肺がんあるいは総死亡リスクなどとの関係を調べる。これは調整可能な交絡因子は考慮する、そういうようにしてとどめておいて、それで、将来、何か環境基準のようなものができましても、ある程度の線を設定して、そこまで下げれば、その影響がコントロールできたということになれば、あえてどれが本当の原因であるかということは明らかにしなくてもいいと思うのです。
 私は、第2回の専門委員会だったと思いますが、アメリカでこういうようにタイムシリーズ的にいろいろ共存汚染物質が相関していて、それを私の解釈では、がばっとグループでコントロールするような考え方があったと思うのです。ですから、そういうように考えれば、共存汚染物質の仕分けができないというところは避けて通れるのでないかと思います。

【内山委員長】 ありがとうございます。
 そのほかはいかがでしょうか。横山委員、どうぞ。

【横山委員】 非常にこの評価手法について、僕なんか勉強させていただくところがたくさんある資料を出していただいて感謝しているところでございますが、結局、この最後の14ページ以降について、例えば長期曝露影響では[3]のところで、「当該濃度水準を、環境目標値を検討するための出発点とする。」というようになっております。それから、短期曝露影響もここで得られたものは、言ってみれば出発点濃度だろうと思うのです。このいわゆる出発点濃度は、今お示しになったいろいろな手法を検討の土台に、ここで書かれている手順によって得られたとしても、さて、それから環境目標値にどうやって持ってくるのだろうか。この委員会は、環境目標値の設定に資する手法を検討する委員会だろうと理解いたします。環境目標値の検討の出発点を求める委員会ではないだろうと思うのですけれども、この出発点濃度から環境目標値に至る過程については、新田先生、どのようにお考えになっていらっしゃるのでしょうか。もしお示しいただければと思いますけれども。

【新田委員】 この点に関して作業会合で何か結論が出ているとかということではありませんので、私自身の意見として申し上げたいと思いますけれども、基本的に疫学知見に関しては不確実性があるということで、その不確実性の程度に関しましても明確に定量的に評価できる段階ではないということで、ある程度の適切な水準ということに関しましては、それぞれ疫学知見の解釈で一定の環境目標値の出発点なり目安が出てくると思いますが、そこに幅が、それぞれの専門家で幅が出てくるのは、その不確実性の大きさからいって、ある意味当然だろうと思います。
 ですから、その後の、適切と考えられるような目安の幅があって、その中からどれが最も環境目標値として適切かということに関しましては、私、そういう審議というか検討をどうしていくのかというようなことまで、考えの、具体的に至っておりませんけれども、それぞれ専門家が最も適切だという水準に関して議論の上で決めるということなのかなと、今のところ想定をしております。ちょっと横山委員のご質問のお答えになっているかどうか、甚だちょっと心もとないところはありますけれども、今、私の考えとしては、そのように思っているということでご理解いただければと思います。

【横山委員】 今、先生がおっしゃったこと、要するに専門家が十分に討論してこれを決める。これは、よく使われる言葉で言うならば、エキスパート・ジャッジメントだと。ここで、やはり、不確実性の問題に立ち戻るのですけれども、新田先生が今お示しになったことで十分ですけれども、やっぱりどこかでそういうものが要求されるような科学的な知見の現状であると。先ほどから種々討論されていることの最後は、結局、サイエンスとジャッジメントの関係をどのようにするのかということが、本委員会でも問われるのではないかなとは思うのです。そこまで立ち入ることはないというような判断であれば、そのご判断でよろしいかとは思いますけれども。そういうように私は思っております。

【内山委員長】 椿委員、どうぞ。

【椿委員】 これからの発言は、いわゆる統計の人間としての立場ではなく、少し専門性という観点でどうかと思うので、それをまずお断りしたいのですけれども、いわゆる不確実なもとでどういう目標値をつくるかというときに、これはもう先生方のほうが大変なご専門かと思いますけれども、現在認められているリスクよりも高い水準には行かないという考え方と、それからもう一つ、いわゆる先ほどの自然状態、人間が作為的に経済活動として出した以前の状態のリスクを以下のリスクに、それを超えないリスクにするというような、そういう量的な基準以外に、いわゆる今日のお話の、最初のいわゆる閾値の問題とも関係すると思うんですけれども、最大保護の基準と言われている可能性のあるものはすべてできるだけ排除していくという基準の設け方と、evidence-basedと言われている、いわゆる証明が行われた危害というものに対しては、やはりそこは規制しなければならないという二つの考え方が対比してあると。
 いわゆる、今回のような、大変社会的な影響のあるような基準の決め方の場合に、一応、規制を行うことによってそれなりに社会が、市民がそれなりのコストがかかる、それなりの努力をしなければならないというような状況、コストがかかる状況のときに、無条件に最大保護の基準という形で、いわゆる可能性のあるものすべてに対してある閾値を設定するというような基準のつくり方というのはなかなか難しいだろうということで、私、今日伺っていて、WHOはやはり立場上、あるべき姿としての最大保護の基準というのを出してきている。それに対してEPAは、それなりに一定の社会的なものをコストということを考えてある程度evidence-basedの考え方を設定しているということで、大変、最終的には月並みな話になって申しわけないのですけど、先ほど我々は、出発点としては証明された基準というevidence-basedのものを使うにしても、その中で特に、非常に健康的にいわゆる大きな影響がある、周りに非常に重篤な影響があると考えられるものに関して、その最大保護の基準に近い側に動かすという裁量があるのだろうというように考えております。いわゆる危害度基準と言われているものじゃないかと思うのですけれども、その意味では、新田先生がおっしゃられたような形のものを初期値として、かつ、先ほど言いましたある意味でWHOがやっているようなことに近いと思うのですけど、そこへ落とし込むような、あるいは人体に非常に差し迫ったリスクというものがある現象なのか、ない現象なのかということを考慮して、それによっては可能性の基準、いわゆるプレコーショナリー・プリンシプルの方向に持っていくということがあるのだろうと、そういうように考えているわけです。
 そのために、ただ、非常にぶれが大きくなっては困る。もともと不確実性を少しでも小さくすれば、そこのぶれが、両者のぶれが小さくできるということなので、ここにございますように、専門委員会の先生方にやっていただいたように、できるだけ不確実性が多い中でもある程度少なくするような方法論というのを模索しなければならないということなのだと理解しております。

【内山委員長】 ありがとうございました。
 そのほかにいかがでしょうか。関澤委員、どうぞ。

【関澤委員】 私は、大気汚染の方は専門ではないので、もしかして見当違いかもしれませんけれども、この場合に、健康のための食品の場合では、今、椿先生がおっしゃったのでは、Appropriate Level of Protectionというのは、健康を守るためにどれだけの危害までは許せるというか、逆に、というようなのをまず設定して、実際にフード・スタンダード・オブジェクティブ、実際それを実行するときに、例えば微生物の食中毒の場合、どのぐらいの頻度でどういうときに起こるかというのを見て、それを抑えるためのALOPといいますかAppropriate Level of Protectionというのを決めまして、それで実際に食品中の微生物汚染を管理するときの実際の技術的可能性とか検出の可能性も考えて1グラム中100個以下とか1000個以下とかというように決めていくと思うのですけれども、この場合も決め方として、例えば、健康についてのALOPみたいなものを決めて、実際に例えば、これ、非常に測定上難しい問題が多分あるのだと思うのですけれども、実際上、今の技術あるいはここ二、三年頑張ったとしても各地で測定できないような基準というのを決めてみても余り意味がないと思いますので、そういう2段階、最低2段階の管理のための水準と、それから健康を守るための目標値というような形が今後の実際の検討委員会では検討されるんではないかなと思います。
 例えば、食品の場合ですと、今、農薬のポジティブリスト制というのが始まっていて、データが十分ないものについて、ある程度一律基準というので0.01ppmという非常に厳しい基準が決められたために、逆に違反率が向上していますけれども、中には測定も、今、技術がまだないというようなものがあって、非常に一部で混乱を招いているようなので、その辺はやっぱり、実際に実行される方の行政とか、あるいは測定に当たる方のことも考えて決めていくのではないかなと思われます。
 これはちょっと出過ぎたあれかもしれませんけど。

【内山委員長】 はい。今、関澤委員のご意見は、1章のところのいわゆる今までの環境基準の決め方の考え方というところでは、むしろ望ましいレベルですとか、それから健康の偏りがないようなところまでに持っていくということで、これは一応の大前提として考えていい、この委員会も、それから恐らく今までの委員会も考えてきたのではないかと思います。ありがとうございます。
 ただ、バックグラウンド濃度とか測定の問題というのは、またちょっと別の問題としてくるのですが、そこら辺のところは、田邊先生とか坂本先生、いかが、何かご意見はありますか。最後のところにちょっとバックグラウンドのもの、レベルも考慮してというのは多少ありますが、何かご意見は特にありませんか。よろしいですか。

【坂本委員】 今のところというよりは、第2章の最後7ページで先ほど、やっぱりそういったものを決めた場合、それからデータを出した場合に、その条件をきちんと示しておいて、今後そういった情報なりものが増えた時に、我々は見直せるような形のものを考えておくことの方がむしろ重要なのかなという気がいたします。

【内山委員長】 具体的には資料2のところですか。

【坂本委員】 いや、ここにもそういった形で書いてありまして。

【内山委員長】 あります。特に修正するようなことではなくてよろしいですか。ありがとうございます。
 田邊先生、どうぞ。

【田邊委員】 正しく理解しているか自身はないのですが、色々なところで色々な疫学研究がされていて、恐らく色々なバックグラウンド濃度の地域で研究がされていると思います。ですから、WHOの考え方に従ったとしても、単純にPM2.5を幾つまで下げればバックグラウンド濃度になるということは、多分言いがたいのではないかと思います。そのように考えると、例えば日本のバックグラウンド濃度がどれぐらいなのかということを意識しなければいけないと思います。
 もう一つ、話が違うところに行ってすみませんが、この資料3の4ページの図の下のあたりからの記述で、色々な疫学研究でデータが集中する平均濃度やその周辺で最も強く健康影響の因果関係が認められると、多分これはデータの不確実性が小さくなって関係がよく見えるということだと思うのですが、この平均濃度よりも少し低いところを目安にするとか、隣の5ページの3番目の段落には、今度はこの平均よりも少し大きいところを目安にするということが書いてあるのですが、ちょっとこのあたりの記述は、専門外の私には何でこういうことがここに出てくるのかよくわからなくて、ちょっと教えていただけないでしょうか。

【内山委員長】 新田先生、何か。よろしいでしょうか。

【新田委員】 田邊委員のご指摘の4ページの初めのところで、「平均濃度やその周辺において最も強く認められ」というのは、単純に統計的な意味での表現だというように思います。その図にありますように、平均値の周辺で信頼区間が狭くなる、一番狭くなるというようなことをここに書いています。これはEPAがこういうように説明しているということです。
 それから、その後の点も同じような説明を、こういう考え方で仮定すると、もう少し上の方がもっともらしいという考え方もあるというような、いろんな見方をした上で、最終的にEPAの方法でいきますと、環境基準の目安となる数値をEPAスタッフが導いているというようなことで、ここはEPAのドキュメントに関連するものがあるところを拾い出してきております。
 ですから、平均値周辺で何か探そうとすると、いろんな考え方があって、そのうちの幾つかがここに記載されているということで、何かこの考え方がどういう考え方に基づいているかというようなことをちょっと明確に、今ここでご説明するのは難しいというように思います。

【田邊委員】 3ページの2.1.1の2段落目、3段落目も多分、これは、EPAのスタッフの判断だと思うのですが、これと、この4ページの真ん中から下の部分とをあわせて12μg/m3と判断したという理解でよろしいのでしょうか。要するにこれらは一続きだということでしょうか。

【新田委員】 ご指摘のように、確かにEPAの記述と他のWHOとかの記述、少し、整理が若干不十分で、具体的にどういうデータに基づいて、その目安となる数値をEPAスタッフが出して、それを最終的にどう判断したかというのは、流れが、確かにご指摘のようにわかりにくくなっておりますので、少しここを整理させていただければと思います。

【内山委員長】 はい。ありがとうございました。では、ここら辺は少し流れがわかるように推敲していただくということで、そのほかにございますか。
 きょうご発言になっていない佐藤(洋)先生、何かよろしいですか。

【佐藤(洋)委員】 今の時点では。

【内山委員長】 はい。
 そうすると、一応、全体を見たところで、香川先生の先ほどの意見に戻りますが、香川先生、いかがでしょうか。もう少しどこかに書き込んで、はっきり、この委員会としての見解を書き込んだ方がいいか、あるいは、今のような流れであれば、それで皆さんが共有していればいいということでよろしいですか。

【香川委員】 はい。あとは作業部会で検討していただけたらと思いますけれども。

【内山委員長】 作業部会で。

【佐藤(洋)委員】 今までのこの議論を聞いていて、閾値があるとかないとかというのは、多分、どっちもやっぱりわからないのだろうと思うのですよね、今の時点では。そういう場合にどうするのかというのは、多分、原則みたいなものも恐らくなくて、それをどういう立場で考えていくのかというのをやっぱり明らかにしていくべきで、既にそういう意見も出たかと思うのですけれども、そういうスタンスを明らかにした上での進め方というのが重要なような気がするのですね。
 さっき委員長もおっしゃられたけど、閾値がある、ないというのは、それはサイエンティフィックには非常におもしろい議論なのかもしれないけど、こういうときには余り意味のある議論ではないから、そこに余り突っ込まないようにして、なおかつスタンスをはっきりさせて、多分、私個人の考えでいけば、閾値がないということを前提としてやった方が恐らくいいのだろうと思うのですけれども、そこのところをはっきりさせるべきだろうというように思っています。

【香川委員】 そのことを、私は言っているわけですから。

【坂本委員】 今の意見に関連して。私も医者とかそういう方じゃないのでわからないのですが、いわば毒性学という観点からすれば、ある物質がある反応をするという形でやられるのだと思うのですが、それに対して、今回の粒子状物質のような場合ですと、まさに混合物であることが、そういうようなものを非常にできるものなのかどうなのか。その辺が、実は私、よくわからないのですが、それは混合物であっても、その中にいっぱいいろんなものがあって、それぞれがいろんな作用をした場合に、閾値というものが果たして一定の値というものが出せるのかなというような気がいたします。その点を教えていただけたらありがたいのですが。

【内山委員長】 どなたか。武林先生、どうですか。

【武林委員】 作業会合の中では、かなりその点は議論をいたしまして、結局、この文章の中にも、きょう新田先生から報告がありましたけれども、そこ自身も、やはり非常に低濃度の領域になってきますので明確にしにくいということをやはり文章の中にきちんと盛り込もうということで、非常にあいまいだと言われればそのとおりでありますけれども、それが現実でありますので、それを反映させた形で本日説明させていただいた文章になるだろうというのが作業会合としての一つのコンセンサスというようにご理解いただければと思います。

【香川委員】 ちょっといいですか。

【内山委員長】 香川先生、どうぞ。

【香川委員】 補足させていただきますと、WHOは2000年のときから閾値はないと言っているわけです。だから、閾値がないからガイドラインは決められないと2000年のときは言っていて、それで2000年のときは、濃度−反応関数の式だけ出しているのです。その式を使って、各国がその式を参考にして対策をしてくださいと。それで2000年のときは出したのですけれども、いろんな国々が、それじゃ対応に困るから何か数値を出して下さいと言われて、2005年に数値を出している。ですから、WHOは2000年のときも2005年のときも基本的には変わっていないのです。そのことをちょっと追加して。

【内山委員長】 ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。佐藤(洋)先生。

【佐藤(洋)委員】 もう一回。最初のときにちょっと伺い損ねちゃったので、今さら伺うのも恐縮ですけれど、資料1の4ページに、もしかするとWHOの閾値がある、なしに関係するのかもしれないのですけれども、PMがバックグラウンドに存在するといったことが書いてあるかと思うのですけれども、私自身では、こういうものというのは、多分、人為的なものがほとんどだろうなというか、全部だろうなというように思っていたのですけど、バックグラウンドに存在するPMというのが一体本当にあるのかどうかということと、それから、あるとしたらその性状というのは一体どんなものなのか、その辺についてちょっと教えていただければ。

【坂本委員】 一応、バックグラウンドとは、山火事とか土壌とか、そういうものがあって、例えば南極だとかマナスルだとかヒマラヤだとか、そういったところで測定をしたものが当然ありますよね。そういうものも、恐らくいろんな知識がわかってくると、北極へ人為起源のごみがたまっているというような部分もありますし、ある程度その中に人為起源のものも入っているものは、最近の知識からすればあるのかなとは思うのですが、従来的なあれからすると、いわば南極それからヒマラヤとかアルプスだとか、そういったところのものをいわば人為起源のものがないものとして考えていて、そして、例えば地殻の構成要素に近いような成分であれば、そういった形で言えるとかというような判断をしていると思います。

【佐藤(洋)委員】 ありがとうございました。

【香川委員】 そのことが、混乱が起きないように、これに関しては政策関連バックグラウンドという考えも一つ出されているわけです。それは前回か資料が出て、政策関連バックグラウンドってどういうことかという説明が出されていますから。

【佐藤(洋)委員】 前回欠席だったもので、すみません。

【内山委員長】 よろしいでしょうか。全般のことに、今はもう資料1に戻っておりますが、そのほかに全般的なことでも結構ですので、何かご意見ございますでしょうか。

(なし)

【内山委員長】 そうしますと、今日のご意見で一応26日に――また今日出たご意見を、少し作業会合とそれから私の方と事務局の方でまとめさせて修正させていただくことになると思うのですが、特にこれをもう少しということがあればこの際おっしゃっていただくと、次回が最終ぐらいになると思いますので、その時までにできるようにというようにしたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしいですか。

(なし)

【内山委員長】 それでは、まだ時間は少しあるのですが、もしそのほかにご議論なければ今日はこのぐらいにして、次回までにまとめさせていただきたいと思いますが。
 では、事務局の方、よろしくお願いします。

【松田課長補佐】 本日は長時間にわたってご審議、どうもありがとうございました。本日の議事要旨及び議事録については、また各委員にご確認いただいた上で公開することとさせていただきます。
 今、内山委員長からもお話がありましたが、次回の委員会は11月26日の午後2時から、千代田区の平河町にございます都道府県会館の401号室で行いたいと思います。よろしくお願いいたします。

【内山委員長】 それでは、先ほど申し忘れましたけれども、今日は資料1、2、3という形になっておりますが、次回はそれに背景ですとか、あと、まとめというものをくっつけて報告書のような形にさせていただいて、またご議論いただくということになろうかと思います。
 それでは、どうもありがとうございました。