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■議事録一覧■

中央環境審議会大気環境部会
石綿飛散防止専門委員会(第4回)
会議録



  1. 日時  平成24年8月27日(月)9:59~13:00
  2. 場所  経済産業省別館 1208号会議室
  3. 出席者
     (委員長) 浅野 直人    
     (委 員) 青島  等 浅見 琢也
    稲垣 隆司 内山 巌雄
    大迫 政浩 大塚  直
    神山 宣彦 小林 悦夫
    近藤 充輔 島田 啓三
    武林  亨 谷口 靖彦
    外山 尚紀 中橋 博治
    本橋 健司 森永 謙二
    山﨑 淳司
    (環境省) 小林水・大気環境局長
      加藤総務課長
      山本大気環境課長
      倉谷大気環境課長補佐
      栗林大気環境課長補佐
      村井大気環境課係長
      磯崎大気環境課係員

  4. 議  題
    (1)
    解体現場、大気濃度調査等に関する現状と課題等の情報収集について
    ア 森永 謙二 委員
    イ 村山 武彦 氏(東京工業大学)
    ウ 森ビル株式会社
    エ 大阪府
    オ 川崎市
    (2)
    その他
  5. 配付資料
    資料1委員名簿
    資料2森永 謙二 委員 提出資料
    資料3村山 武彦 氏 提出資料
    資料4森ビル株式会社 提出資料
    資料5大阪府 提出資料
    資料6川崎市 提出資料
  6. 議  事

    【倉谷大気環境課長補佐】 それでは、ほぼ定刻となりましたので、ただいまから中央環境審議会大気環境部会石綿飛散防止専門委員会の第4回会合を開催いたします。
     委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。
     私、本日の司会を務めさせていただきます環境省水・大気環境局大気環境課の倉谷でございます。よろしくお願いいたします。
     本日は、労働者健康福祉機構の圓藤委員、慶應義塾大学の内藤委員からご欠席とのご連絡をいただいております。したがいまして、本日の出席状況でありますけれども、委員20名中18名の委員の方にご出席をいただいておりまして、定足数でございます過半数に達していることをご報告させていただきます。
     ここで、専門委員会の開催に当たりまして、小林水・大気環境局長よりごあいさつ申し上げます。

    【小林水・大気環境局長】 おはようございます。水・大気環境局長の小林でございます。この8月10日付で前任の鷺坂から引き継いでおりまして、先生方のいろんなご助言、また、ご支援を得て、しっかり努めてまいりたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
     それでは、開会に当たりまして、一言ごあいさつを申し上げます。
     委員の先生方におかれましては、大変ご多用のところ、石綿飛散防止専門委員会にご出席を賜りまして、誠にありがとうございます。また、先生方には、日ごろから、大気環境行政全般につきましても、いろんなご尽力をいただいておりまして、これに対しましても、この場をおかりして厚く御礼を申し上げます。
     石綿の飛散防止対策でございますが、これは古くからあり、また、新しい問題というふうに認識をしておりますが、これまでも関係省庁と連携をして対策を講じてきております。しかしながら、吹付け石綿等を使用した建築物等の解体現場からは石綿が飛散する事例が確認されるなど、まだまだ対応の強化が必要と。そのためには所要の制度改正も必要というふうに認識しているところでございます。
     この4月20日に、環境大臣から中央環境審議会に対して、石綿の飛散防止対策のさらなる強化について諮問をさせていただいたところでございます。これまで、事務局からも論点などを提出いたしまして、有識者の皆様方から、解体現場、大気濃度調査等に関する現状と課題等の情報収集ということで、精力的に活動をいただいております。また、委員の先生方からも活発に議論をいただいてきているところでございまして、大変心強く思っているところでございます。
     改めて申し上げるまでもなく、この問題は非常に重大な問題でございます。また、国民の関心、懸念というものも高い部分がございまして、これもぜひ払拭をし、また、自主的にも石綿による健康被害の防止をしっかり図っていくということが重要な課題であるというふうに考えております。
     本日は3回目の情報収集の会ということでございますが、今後はこういった情報、また、先生方のご意見をもとにして、報告書の作成、あるいは、骨子案の整理というようなところに入っていただけると思っております。
     どうか、委員の先生方におかれましては、さまざまな観点から幅広いご議論をいただき、また、ご指導をいただきまして、しっかりした報告につながっていけばと考えているところでございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。
     また、大変恐縮でございますが、本日、国会もございまして、中座をさせていただきますことをお許しいただければと思います。
     どうぞ本日はよろしくお願いいたします。

    【倉谷大気環境課長補佐】 引き続きまして、お手元の配付資料でございますけれども、議事次第に配付資料一覧を記載してございます。資料1、委員名簿、それから、資料2から資料6までが、それぞれホチキス留めになっておりますが、本日ご説明をお願いしております皆様の提出資料、ご説明資料でございます。
     資料の不足等がございましたら、事務局の方にお申しつけいただきますようお願いいたします。
     マスコミの方におかれましては、カメラ撮りは、恐縮ですが、会議の冒頭のみとさせていただいておりますので、ご協力をお願いいたします。
     それでは、以降の進行につきましては浅野委員長にお願いいたします。

    【浅野委員長】 おはようございます。今朝も早くからお集まりいただきまして、ありがとうございます。本日は3回目でございますが、前回に引き続いて、有識者からのご意見を承るということにしたいと思っております。前回8月9日には、石綿の環境濃度の測定、建材中の含有量の測定及び精度管理に関する現状と課題について2団体と1名の方から、また、建築物の解体現場における現状と課題等について2団体の方から、それぞれご説明いただきまして、7月20日に続いて、大変貴重な情報をいただくことができました。
     当初、第1回の専門委員会でご報告、ご承認をいただきましたように、当専門委員会、とりあえずは11月までに6回の会合を開き、法改正が必要であるかどうかを見極めて答申案についての取りまとめをし、その後、さらに細かい測定方法についての技術的な事項については次年度以降に検討するということになっております。ヒアリングは今回で終わりでございまして、次回からは答申素案についての検討に入るわけでございますが、これまでにも大変有益なご意見をいただき、問題点もかなり明確になってきたような気がいたします。
     本日は、引き続きまして、石綿に関する健康リスクの評価についてご説明をいただきます、また、解体現場における現状と課題、発注者の対応、あるいは、自治体の立場では、解体現場での石綿飛散防止対策をどのように考えているかについて2自治体からそれぞれお話をいただくことになっております。
     それでは、早速でございますが、森永謙二委員から石綿に関する健康リスクに関してのご説明をいただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

    【森永委員】 第1回の検討会でリスクの話が出たということで、私は第1回を欠席しましたので、事情がよくわかりませんでした。それで、とりあえず、アスベストのリスクアセスメントの主な発表した成績と日本での成績を一覧で取りまとめてみました。浅野委員長がおっしゃいましたけども、この委員の中にはリスクアセスメントに非常に詳しい先生方がおられる一方、あまり詳しくおられない方もいるということで、基本的な話も少し触れたいと思いますが、専門の先生方には当然の話なので、退屈するかもわかりませんけれども、簡単に説明させていただきます。
     歴史的なことを言いますと、アスベストの健康影響でリスクアセスメントが話題になったのは、実は、1979年3月に、ワシントンのある放送局がテレビの写真室で写真乾燥に使用していたヘアドライヤーから繊維状物質が飛散して、ネガフィルムが汚染していたという事実をカメラマンが見つけて、テレビ局がその繊維が石綿だということを突きとめて放送したわけです。
     当時、1978年にそういうことがあったとのことで、79年に放送がされたと。それで、ヘアドライヤーを112ぐらい集めて、24のヘアドライヤーに石綿が絶縁体として使われていたということがわかったと。
     ヘアドライヤーというのは狭い浴室で顔の近くで使用するので、それでは非常に危ないのではないかということが話題になりまして、それ以降、石綿のリスクアセスメント、この当時は肺がんで計算をしたわけですけれども、結果的にはあまりリスクは大きくなかった。100万人の人が一生涯続けたときに、それによる肺がんの過剰リスクは1人かそれに満たない程度だというペーパーが幾つか出てきたと。そこからリスクアセスメントが、アスベストについては非常に研究が進んできたわけであります。そのときの事情は、実は、環境省大気課が監修しています「石綿・ゼオライトのすべて」という本が1987年に日本環境衛生センターから出版されて、もう絶版になっていますので、環境省の図書室でしか見られないかもわかりませんけれども、そのときのいきさつは、今日ここにおられる神山委員が書かれておりますし、そのときのリスクアセスメントの紹介は、私が1987年に出版したその本に書いております。
     当時は、中皮腫についてはリスクアセスメントをしていないわけですが、それはなぜかというと、リスクアセスメントに至るだけの疫学調査が中皮腫については十分なかったからできなかったということであります。
     その後、リスクアセスメントについては、アスベストの場合は、疫学調査、つまり、人を対象としたコホート調査、コホート調査というのは、ある曝露を受けた集団、この場合は、石綿を取り扱っていた労働者を追跡していって、肺がんで亡くなったとか、中皮腫でなくなったとか、そういうことを調べる。その時に、後ろ向きといいまして、過去にどの程度石綿の曝露を受けたかということを職歴とか職種、それから、その当時の職場の環境濃度のデータをもとに、個人曝露量を推定して、個人曝露量と対象とする疾患の関係を調べるという方法であります。それが2枚目の肺がん、中皮腫の量―反応関係モデルということで、アメリカのOSHA――OSHAというのは労働安全衛生庁ですけれども、――のモデルで、肺がんは曝露量に比例して肺がんのリスクは高くなるという式であります。中皮腫については、実は、曝露量がkMですけども、ポテンシャルですが、むしろ、曝露を開始してからの概ね3乗に比例して、中皮腫の罹患率が高くなる、リスクが高くなるという、そういうモデルを、これは、当時はニコルソン教授、ニューヨークのマウントサイナイの研究者ですが、彼がEPAの委託を受けてモデルを明らかにしてきたわけです。
     それ以前には、ピート、これはイギリスの研究者ですけども、彼がマウントサイナイの疫学調査を利用して、中皮腫は肺がんとは違って、違うモデルが実際のデータに合うのだというようなことを立証したといいますか、そういうモデルを導き出して、ほかの疫学調査に当てはめてみると非常によくフィットするということで、以後このモデルが使われるようになったわけであります。
     ですけれども、実は、測定法のところについては、いろんな仮定が重なり合っています。というのは、まず一つは、1960年代までのアスベストの測定というのは粒子を測定した、ミリオンパーティクル/キュービックフィート(mmpcf)といいまして、粒子を測定していて、現在主流でありますフェイズコントラストのマイクロスコピー顕微鏡で測定する方法というのは、どちらかというと1960年代から変わっていったわけであります。ですから、そのときの変換係数というものを、えい、やあといろいろ推定をして出しているというところもあります。
     それから、光学顕微鏡で見るのとTEMで見るのとでは、やはり測定しているものが違うと。フェイズコントラストのマイクロスコピーでは、大体直径が0.25ミクロン以上、長さが5ミクロン以上で、長さと直径の比が3対1以上のものを測定しています。TEMだと0.01ミクロンぐらいまでの太さまでも測定できるわけでありますけれども、ただ、最近どんどんわかってきていることは、長さが短い繊維については発がんポテンシーが低いということもわかってきているわけでありまして、そういうことで、WHOは、繊維の計測の値は一応PCM法、光学顕微鏡で見た測定とTEMとの関係は1対2の関係で見ているというようなことがあります。
     それで、いろんな報告書を改めてレビューしてみたわけですけれども、肺がん、中皮腫を合わせて、しかも、男性、女性を合わせて書いてあるものが多いので、なかなかわかりにくいのですが、もうちょっとリスクアセスメントが大きく問題になったのは、アメリカの学校の吹付けの健康影響ということでありまして、それが一番下に取りまとめて書いてありますけれども、一生涯曝露ということではなくて、学校だと若い時代に曝露を受けるという想定になりますので、一番下では5歳から18歳とか、いろんな細かい設定をして計算をしてみたということになります。
     境界敷地領域がリッター当たり10本ということが、日本では大気汚染防止法に石綿が取り入れられたときに決められましたけども、このときの想定は、実はクリソタイルの曝露のみということで想定していますので、これを混合曝露、角閃石も含めた混合曝露でそれを考えるというのは、そもそも基本的な考え方が間違っているということであります。
     1973年ごろから中皮腫の発症についてはクロシドライト、これは青石綿といいますけども、一番発がん性が強いのだというようなことはわかっていたわけであります。ほぼそういうことが定説になりつつあったわけですけれども、どれぐらいクリソタイルと差があるのかということについては、定量的な考え方というのはほとんどなかったわけです。というのは、疫学調査がそもそもそこまでデータが出てきていなかったから、そこまでわからなかったというのが真相でありまして、2000年以降になって、クリソタイルとそれ以外の角閃石のアスベストの中皮腫に対するポテンシーがかなり違うということは、いろんなペーパーが出てきましたけれども、それでもまだいろんなばらつきがあるということは否めません。
     そのときに、私も一応リスクアセスメントをしました。それが下から2番目の数字でありますけれども、このときに、まだ今までリスクアセスメントをしたことがなかったので、一体何歳まで計算するのかということで非常に悩んだわけです。それで、そのときにニコルソンが中国に行かれたということで、途中に日本に寄っていただいて、いろいろ話を聞きますと、EPAのモデルは90歳まで計算したと。そうしますと、実は、肺がんの死亡率というのは、年齢階級別に見ると、70代、80代がものすごく高くなるのです。そうすると、90歳まで勘定すると、肺がんがものすごく高くなるのは当たり前です。ですから何歳まで計算するのかということがかなりリスクの値に大きく差が出てくるということで、一応、私は、その当時は73歳まで計算したらこうなりますよということであります。つまり、生涯リスクというのは、おぎゃあと生まれますと、人口100万人の方がほかの原因でも死んでいくわけです。亡くなっていかれますので、人口100万人が生命表で毎年毎年100万人より少し減っていくわけです。それに肺がんの過剰リスクを年齢階級別に掛け合わせて足し合わせると、こういう数字が出てくると、こういう計算の方法であります。
     それでいきますと、最近のペーパーではオランダの報告、これは後の村山委員の発表にも含まれていますけれども、オランダの報告、それから、ケベック州政府と書いてありますが、ちょっとこれ言葉足らずで申し訳ありません。ケベック州政府の衛生研究所の報告であります。衛生研究所というふうに追加してください。これは、テットフォードマインという鉱山の町での曝露ということを考えて、クリソタイル、テットフォードマイン、クリソタイルの鉱山ですので、その場合の生涯リスクは70年、70歳まで生きたと考えているわけですけれども、リスクは、ちょっと新しいバーマーとクランプのモデルを使うと、大体男が115人、女が48人出てくると。これは、結局、男女の差が出てきますのは、男性は当然喫煙がありますので、男性が高くなってくると。
     一番上のほうは、日本のそういう死亡率、生命表を用いて計算しますと、中皮腫は女性の方が多くなってくる。これはなぜかといいますと、男性はほかの病気で早く亡くなっていくわけですから、当然、対象とする集団が高齢化してくると減ってくるわけです。一方で、中皮腫は曝露からの経過の大体3乗に比例して高くなってくるので、リスク計算をすると、中皮腫が女性の方が高くなってくるということになります。
     もう一つ、今まで使っていた疫学調査というのは、やはり、ほとんどが死亡診断書による統計でございますので、特に、昔のデータについては、中皮腫の診断については非常に怪しいといいますか、信頼性が乏しい。逆に、中皮腫なのにほかの疾患で亡くなられているというケースもあるわけですので、過去のデータについては、そういう問題もある。
     それから、このリスクアセスメントは低濃度長期曝露という想定での数字でありますので、正直言って、今回問題なっているような場合のリスクアセスメントに果たして使えるのかというと、多分使えないと思います。
     ですので、あくまでこういう条件のもとで計算したら、こういう数字になりますよという意味合いに考えていただいたらいいと思います。もともとは、いろんな場面の想定の比較、あるいは、他の物質とのリスクの大きさの比較ということで、このリスクアセスメントというものがやられてきているという状況であるということで、今回の短期、いわば、ある程度の中等度、あるいは、高濃度曝露、撤去、特に、吹付け石綿の撤去の際の漏れということであれば、それなりに短期高濃度曝露ということも考えられるわけですから、それとは少しまた違うという。しかし、違うけれども、どれぐらい違うかという定量性の比較ということまではできていませんので、どちらかというと、安全サイドに考えるというのがリスクアセスメントの考え方ですが、ちょっと、今回のこのケースについては、こういったものはあまり適さないのかなというふうに思います。
     ちょっと簡単ですけれども、私の説明を終わらせていただきます。

    【浅野委員長】 どうもありがとうございました。
     先生、1989年には10ファイバーですか。今回の2011年のものは0.1、0.2ということですが、1989年の10というのは、先生がおっしゃっている高濃度という理解でよろしいのでしょうか。

    【森永委員】 これは混合曝露、つまり角閃石も全部含めた曝露ということで計算しております。

    【浅野委員長】 わかりました。
     それでは、ただいまの森永先生のご説明に対してご質問がございましたら、どうぞ札をお立てください。ちょっとこちらからはわかりにくいので、しっかりとお立ていただきください。近藤委員ですね、わかりました。ほかにご質問はございませんか。
     それでは、とりあえず、近藤委員、どうぞ。外山委員も札を挙げられましたね。では、近藤委員からどうぞ。

    【近藤委員】 今のお話で、推定アスベスト濃度とがんの生涯リスクの表の数字、100万人に対してです。これは、裏のページにあります肺がん、中皮腫の量-反応関係モデル式のREということですか。Roを含んだ石綿非曝露集団の死亡率も含んだ形になっているのですか。純粋に石綿だけの影響というのは、本来は差し引くべきではないかと思うのですが。

    【森永委員】 肺がんの過剰リスクですので、肺がんの場合は石綿による影響のものということで、Roは一般の肺がんですけど、それは勘定していません。

    【近藤委員】 除いてあるわけですね。

    【森永委員】 はい。

    【浅野委員長】 では、外山委員、どうぞ。

    【外山委員】 一つ、オランダの保健審議会の2010年の報告書ですけれども、これは後で調べていただきたいと思うのですが、単位がリットルではなくて平方メートルだったように記憶していますが。

    【森永委員】 これは、実は、100万人のリスクに対する数字を書いています。それを一応私の方で直しました。比較できるように直したつもりですけど。

    【浅野委員長】 よろしいですか。ほかにございますか。ほかにご質問ございませんでしょうか。
     それでは、後で村山教授からもお話を伺いますので、まとめて議論ができればと思います。森永先生、どうもありがとうございました。
     それでは、続きまして、東京工業大学の村山教授からリスクについてのお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。15分でご説明をいただくようにとお願いをしておりますが、今のところ、あまり質問がなく、時間がありますので、5分程度のオーバーがあっても今日は黙って見過ごしますが、5分オーバーするとベルが鳴りますので、よろしくお願いします。

    【村山(東京工業大学)】 定刻主義で、恐らく時間どおりに終わると予想していましたので、15分程度でまとめさせていただきます。
     今日はこういう機会を与えていただきまして、ありがとうございます。私の発表の前半は、今の森永先生のお話と重複するところがありますので、割愛をしながら進めていきたいと思います。
     内容としては、一つは、今、お話がありましたような、アスベストのリスクに関する観点です。それから、二つ目は、リスクが出てきた場合、どういうふうに判断するかという判断の目安について、お話をさせていただきたいと思います。最後に、この問題は日本に限らず、ほかの国でも問題になっておりますので、ほかの国の事例について少しご紹介をさせていただくというのが3点目になります。
     まず、リスクの観点ということですが、これまで、アスベストに関するリスクの評価がいろいろな形で行われてきたわけですが、大きく分けて二つの方法があったかと思います。
     一つは疫学調査を基礎にする方法で、先ほどの森永先生のお話も、こちらの方法によってなされたものがご紹介されたと思います。
     もう一つ、アスベストに特有な方法として、過去の死亡数を基礎にして将来の予測をするという方法があります。これは、悪性中皮腫という特殊な病気の発生がアスベストのリスクとしてあります。ほかの原因ではなかなかなりにくいということで、これまでに中皮腫がどの程度発生したかというトレンドを将来に向けて予測するという方法です。
     これについては、私も以前、医学の先生方と一緒に行ったことがありますが、ほかにも、今年になって、浜松医科大学の明神先生らの研究で、今日、委員でいらっしゃる内山先生もオーサーの一人になっておられますが、新しい結果も報告されています。
     ただ、こちらについては、ここに書いてありますように、短所として、曝露状況のモデルへの反映が困難だという点があります。つまり、どのような濃度でどういったリスクが発生するかということが直接的に評価できず、あくまで過去のトレンドを利用しているということですので、中皮腫のような特殊な病気だけに限っては利用価値があるのですが、肺がんも含めた評価になると、こちらは利用しにくいということになります。そういう意味で、曝露との関係では疫学調査を基礎にして行うということがあります。
     もう一つ強調しておきたいのは、アスベストのリスク評価では、ほかの化学物質と違って、人間を対象にしたデータが不幸にして揃っているということです。ほかの化学物質ですと、どうしても動物実験をベースにするということになるのですが、アスベストの場合、過去にかなり使われたという経験がありますので、工場の労働者の方々の曝露データを使って、こうした研究が行われているということです。
     調査の結果、モデルが提案されているわけですが、これは、先ほど森永先生がご紹介になったものと全く同じです。この中でKL、あるいは、KMという係数をどのように選定するかが非常に大きな問題になります。
     これまでにさまざまな疫学調査の報告がなされています。こちらにありますように、石綿の種類、クリソタイル単独、実際はほかのものも含まれている可能性があるということですが、あるいは、アモサイト、クロシドライト、それらが混合されているものもあります。アスベストがどのような形で工場で使われたか、あるいは、鉱山で産出されたか。それをベースにして、先ほどの係数がどのような値になるかが、それぞれの報告で提案されています。
     ただし、あくまで統計的な処理を行っていますので、どうしても誤差が伴います。
     こちらは肺がんのリスクの係数に関する報告例ですが、中皮腫に関しても同様な形で報告がされています。ご覧になっていただきますとわかるように、係数の大きさは大分違います。これは、石綿の種類の違いという影響もあれば、生産の方法によっても違う。それから、それぞれの工場でどの程度の濃度があったか。この測定の精度の問題もありますし、それから、労働者の方々がどの程度曝露していたかという、その期間についての情報も十分わからないという点があります。当然ですが、最近では、こういう生産は行われていません。あくまで過去のデータです。ですから、過去のデータに遡って、どの程度精度のよい情報が得られるか、それによっても左右されているというところがあります。
     こうしたデータを参考にして、先ほども森永先生のご紹介がありましたので、簡単にご紹介したいと思いますが、アメリカのEPA、あるいは、WHOのヨーロッパの地域事務所、こういったところを含めてリスクの評価がなされています。
     かなり荒っぽく言ってしまうと、大体0.1f/ℓ程度の濃度で10-5ぐらいの生涯リスクが発生するというふうに言われているのが、これまでの大体の目安かなと思われます。もちろん、これは石綿の種類などによっても左右されるということがありますけれども、大体これぐらいの大きさが、これまでに言われてきたことかなと思います。
     一方、職業曝露については、先ほど森永先生のご紹介がありましたので、割愛をさせていただきます。職業曝露についても同様に形で評価がなされているということです。
     疫学調査のもとになるデータは限られています。先ほど挙げたような表の程度しかありませんので、それを総合的にどう判断するかというメタアナリシスという方法が最近使われて、改めて評価がなされてきているという傾向があるように思います。
     2000年から2011年までに幾つかのメタアナリシスが行われ、それぞれの疫学調査について、どの程度の精度であるのかを評価しながら、総合的に先ほどのそれぞれのモデルの係数を推定して、改めて評価しようということが行われています。
     ここでは、2010年のオランダの衛生審議会での例をご紹介したいと思います。こちらについては、かなり厳しく疫学調査に関する精度を限定して、こちらに示しているようなアスベストの曝露に関する情報が十分にある。あるいは、先ほどの森永先生のお話にもありましたように、過去に重量ではかっていた濃度を繊維数に途中で変えているわけですが、その際の換算について必要な情報が得られている。具体的には、各疫学調査で使われた工場ごとに、こういった換算のデータがあるかどうかということもチェックをしています。さらに、職業歴の特定、これは、各労働者の方の曝露期間に関係しますので、そういったデータも十分得られているか。さらに、濃度についても、半分以上の期間についてはこういった情報があること。これはかなり厳しい条件ではあるのですけれども、こういう条件も設定して、先ほど挙げたような表の中から四つの事例だけをピックアップして、係数を推定しています。
     その結果の一つがこちらですが、職業曝露についてはこういった条件で、10-3から10-5の生涯リスクについて、このような濃度で発生するというようなことが紹介されています。ここは透過型の電子顕微鏡で濃度をはかった場合というふうになっています。
     こちらは環境曝露、同じように透過型の電子顕微鏡ではかった場合ということになっていますが、10-5の場合はクリソタイルだけでも0.28という、こういった値という数字が出ています。さらに、ほかのアモサイトやクロシドライトを含めると0.03で、かなり低い濃度でも10-5というリスクが発生するということです。
     私が報告書を拝見する限り、もとの報告書は立方メートル当たりの濃度が書かれていますので、ここではリットルに換算をして、こういうような形で設定し紹介をさせていただきました。
     これは、先ほど、0.1f/ℓ当たりで大体10-5というようなお話をしましたが、クリソタイルだけですとそれぐらいですけれども、ほかのものを含めるとかなり低い数字も出てきているということです。オランダ国内でも、それまでに比べると相当低い評価が出てきています。
     あくまで一つの例ではあるのですが、こうした評価も最近は出てきているということですので、これらも考慮しながら評価を行うことが必要になってくるというふうに考えております。
     二つ目は、今のような情報をもとにしてどういうふうにリスクを判断するかということですが、日本では、96年の中央環境審議会で一つの答申が出されました。それまで、環境基準については、閾値よりも低いところで設定をするという考え方があったと思いますが、発がん物質についてはそういうことがなかなかしにくいということで、一つの目安が設定されています。
     こちらに模式的な図をかいていますけれども、ある程度リスクとして影響が出てきたとしても、それが十分低ければ、ある程度の環境基準として考えてもいいのではないかというようなことです。
     具体的には、生涯死亡率、生涯リスクで10-5というのがこのとき提示されています。これに基づいて、ベンゼンやほかの有機塩素系の化合物について環境基準が決まってきているわけですが、あくまで、これはほかの国の傾向や自然災害などを含むリスクと比較をして、大体の程度であればよいのではないかというような形で決まっていったようです。
     ただ、あくまで当面の目標であって、ここまでであればよいという考えだけではなかったというふうに当時の資料を見ると考えられます。高い濃度をここまで低めることで、環境基準を定めるという形で考えていいのではないかということです。
     今の10-5をベースに考えてみると、現在、環境濃度は大体0.1、若干これより低いぐらいかと思いますけども、大体10-5ぐらいかなと思います。
     一方、現在決まっている敷地境界基準は10f/ℓです。これは、先ほどの考え方でいくと10-3ぐらいになっていますので、これは今の考え方からすると、高くなってしまっているのではないか。もちろん、現在では国内で敷地境界基準が設定されるような工場はありませんので、その点では問題はないのですが、往々にして、いろいろな解体現場や除去現場で、10f/ℓという数字が一つの目安になっているところがあります。そういう意味では、今のような観点から検討されることがあっていいのではないかと考えております。
     過去にいろいろな調査があるわけですが、解体現場では濃度も、それから、曝露期間も、非常に特殊なところがあります。そういう意味では、屋内や屋外、それから、施工時や平穏時というようなところを考慮しながら検討されるということが必要になるかと思います。
     これまでに、こういった観点から取組をされた事例では、特に、工事後で、文京区のさしがや保育園、それから、佐渡市の両津小学校の事例などで非常に詳細な検討がなされていますので、そういった事例も参考になるのではないかと考えられます。
     最後に、外国の関連事例として、三つご紹介をさせていただきます。
     少し観点が違うものもあるのですが、一つはアメリカの事例で、これは少し特殊ですけれども、ニューヨークのワールドトレードセンターの崩壊後の検討の一部ということです。ご承知のように、ワールドトレードセンターは途中まで吹付けのアスベストを使っていて、崩壊した後、相当飛散したということが言われています。アメリカも当然その点は考えていて、直後から濃度調査をしているわけですが、それがどの程度であれば対策がとれたか、そういった目安をどう考えるかということが検討されています。
     一つの目安として、居住者の長期間曝露、ここでは資料を十分読み込めていないところがあるのですが、大体30年ぐらいを想定しているようで、生涯死亡率としては1万分の1を使って、どの程度のレベルに抑えるかと検討し、クリアランス基準として、0.9f/ℓ当たりというような設定がなされています。
     人工繊維については、このような形で安全率を掛けて設定するというようなことを行っています。
     少しこれは特殊な例ですが、こういった例が一つございます。
     二つ目はドイツの例で、私が調べた限りでは、TRGSというもので、日本でいう有害物質に関する技術指針というものが決められていて、519という文書の中で解体や除去に対する指針が設定されているようです。
     一般の規定の中では、例外を除いてはあらゆる防護策をとる。労働環境の中ということですけれども、濃度別に規定がなされているようです。
     この例外というのは一体何かということですけれども、幾つか例示があるのですが、その中では、0.5f/ℓというような数字を使いながら、ある程度下がった時点でこの例外が適用されるということが出てきているようです。
     最後に三つ目として韓国の事例をご紹介したいと思います。ご承知のように、韓国は日本よりも後からアスベストの問題が出てきていますので、取組としては後ですけれども、ある意味で日本よりも積極的に取組が進んでいるところがあります。
     昨年の4月に制定されたものでは、含有製品の指定・管理、それから、韓国では鉱山がありましたので、自然由来のアスベスト分布や、影響の評価もここで扱っています。さらに、建築物内のアスベスト、それから、解体を含む作業域周辺の環境管理というものがあります。
     建築物内については、調査の義務、それから、この調査の結果出てきたものについては、アスベストがどこにあるかという地図をつくったり、管理基準の遵守だったり、安全管理者の指名というようなことも含まれています。
     さらに作業場周辺については、排出基準の設定や、あるいは、3段階に基づく管理システムというものが導入されています。
     それから、スレートの中でも古くなったものについては処理をしようということで、今、取組が進んでいるようです。
     具体的には、30年以上経過したものについては、除去や廃棄費用について支援する。昨年から始まっていますが、今年から10年弱でしょうか、本格的に劣化したスレートの除去を支援しようということが進んできています。
     以上、私の方から報告をさせていただきました。ありがとうございました。

    【浅野委員長】 どうもありがとうございました。
     それでは、ただいまの村山教授のご報告に対してご質問がございましたら、お出しください。ほかにいらっしゃいますか。
     それでは、本橋委員からどうぞ。

    【本橋委員】 興味深い話で、どうもありがとうございました。
     単純な質問ですけど、スライド18です。私、実は96年の答申というのはあまりよく知らないのですが、10-5に対応するもので0.1本、しかし、そのときに決めた敷地境界は10本で、100倍にはなっているのですが、これは、測定法とかなんとかも全く同じで考えて、これだけの差があるということですか。

    【村山(東京工業大学)】 私はこの時点で議論に参加しているわけではないのですが、敷地境界基準は1989年に設定されています。1996年の答申はその後に出てきていますので、そういった点が一つあるのではないかなというふうに思います。この点について詳しくお聞きをしたことはないのですけれども、そういった時間の違いがあるのではないか考えております。

    【本橋委員】 多分、環境省が決めたのは、生物顕微鏡法での計数を位相差顕微鏡法の計数から差っ引いて、クリソタイルだけとかいって決めたものですよね。計数の基準が同じで100倍というのはすごいことだと思うのですが、そういう比較ができるのですか?

    【村山(東京工業大学)】 0.1は決まっていません。これは、あくまで私がこういう形で紹介させていただいているわけです。

    【本橋委員】 だって、スライドに100倍と書いてあると、かなりインパクトがありますね。

    【村山(東京工業大学)】 私の観点からすると、100倍の大きさになるのではないかということです。

    【浅野委員長】 よろしいでしょうか。
     10-5の話はベンゼンのときにやったのですが、そのときは水の方でWHOが-5乗というのを使っていたので、それなら、大気も-5乗でいいのではないのかというような議論をやったような記憶があるのです。

    【本橋委員】 私は10-5のリスクについて議論をしているのではなくて、それに対応した濃度を0.1本にしたこと、それを10本と単純に比較していることがどうかという質問です。

    【浅野委員長】 それは決まってはいないのではないですか。これはあくまでも……。

    【本橋委員】 決まったというか、これをどう考えて……。

    【浅野委員長】 村山さんのお話の趣旨は、もう一回繰り返していただいてもいいと思うのですけども、仮に10-5というオーダーが敷地内のものについてのある種の目安ということであるならば、それで計算してみると、こうなりますという話です。

    【村山(東京工業大学)】 あくまでの私の観点ですが、このような表現になるのではないかということです。

    【本橋委員】 私の質問にもう一度言い換えると、当時決めた敷地境界基準がリッター当たり10本というのは、96年の答申は10-5のリスクに対応する0.1本よりは100倍ぐらいになっていると考えているということです。

    【村山(東京工業大学)】 そうです。ただし、あくまでこれは敷地境界基準です。一方、10-5は環境基準です。敷地境界基準は特殊な基準で、ある意味で排出基準と環境基準の間だと考えているのですが、工場の境界に、もちろん宅地はあるかもしれませんけれども、そこに一生涯住んでおられる方というのは、なかなか見られない。

    【本橋委員】 十分理解しているつもりです。それにしても100倍というのはすごい比較だなと思っただけです。

    【浅野委員長】 もともと10-5が絶対的な基準として答申したというわけではないということだけは、私の記憶の限りでは言えると思いますので、そこはちょっと誤解のないようにしていただいた方がいいと思います。
     森永委員、どうぞ。

    【森永委員】 敷地境界領域をリッター当たり10本に決めた委員の立場として言いますと、リスクアセスメントはしたのです、そのときに我々は。そのときには混合曝露のデータしかなかったわけです。だけど、その時点ではアモサイトはいずれ使わなくなるという情報を、業界がそういうふうに明言していまして、クリソタイルだけの曝露だということで考えましょうということで、最終的にWHOもリッター当たり10本という当時の案があったので、とりあえずこれでいきましょうと。実際の住民の方は、境界敷地よりもさらに離れているから、さらにそれで減衰するであろうということで決めたわけでありますので、それを、アモサイトとかクロシドライトも吹き付けてある、それの撤去の際の基準に用いるというのは、そもそもその考え方が適用できないものだというふうにして考えてほしいのです。ですから、それが誤解を生むようなことであれば、それは当然、境界敷地領域というのは、石綿の工場がなくなっているわけですから、とりあえずそういう基準はなくしてもいいかなと改めて考え直していただいたらいい。ただ、100倍というのは、クリソタイルとクロシドライトのポテンシーの差が100倍、500倍という報告もあれば、ある意味でそれはそうかなということは、当然、石綿の種類の特性からいって、考えられることだというふうに思います。
     以上です。

    【村山(東京工業大学)】 私も基本的に森永先生のお話に賛成で、今、基準は敷地境界基準しかないので、いろいろなところでこの基準が使われてしまうのですが、あくまでも敷地境界基準であって、ほかのための基準ではないということです。その点がうまく伝わっていないのではないか。
     ただ、WHOの案に10f/ℓがあったというのは、私は、それは少し違うのかなと思いますけれども。

    【本橋委員】 今の森永委員の説明でよくわかったのですが、アスベストの種類が違うと。ただ、確かに、敷地境界ですけど、条例でいくと、アスベスト除去工事のときに、そこをはかってくださいというのは、国が決めていないのですが、実際的には条例等によりかなり実施されているのです。単なる敷地基準で異なるものだとはいいにくい点があります。

    【浅野委員長】 わかりました。現状がどうであるかということと今後どうあるべきということは一緒にする必要はありませんので、幾らでも議論の余地があると思います。
     それでは、神山委員、大迫委員、大塚委員の順番でお願いいたします。外山委員がその後です。

    【神山委員】 スライドの12、13、オランダの報告の例で、今の委員の方々の質問とも重なりますけれども、これはTEMによる測定濃度ですよね。そのときには、必ずサイズを明記して測定しているはずです。サイズは明記されていると思いますが、幾つでしょうか。

    【村山(東京工業大学)】 サイズは、PCMと同じように、5ミクロン以上というふうになっていると思います。ただ、今は確認できませんので、後で確認をさせていただければと思います。

    【神山委員】 5ミクロン以上でPCMの長さに大体基本的に換算すると思うのですけれども、それ以外のところで、先ほどのものもそうですし、それから、ワールドトレードセンター、スライド22も濃度が0.9f/ℓ、これは全部PCM濃度と同等と見ていいわけですね。

    【村山(東京工業大学)】 申し訳ないのですが、WTCの事例については、測定方法に関する情報が得られていません。ですので、これについては私も認識をしていないということです。
     ドイツについては、先ほどの技術指針の中で、異相差型の電子顕微鏡で測定をするということが明記をされていますので、それの上でPCMと同じサイズのものを測っているのだと思います。

    【神山委員】 先ほどのTEMは長さ5ミクロン以上で、幅は幾つになりますか、オランダの場合は。

    【村山(東京工業大学)】 幅まではわかりませんが、恐らく形状としては1対3という形で測っているのではないかと思います。

    【神山委員】 TEM測定で少し注意しないといけないのは、サイズをきちっと明記して、幅まで明記しても、PCMが実際にどのぐらいの幅を測定しているかというのが非常にブロードで、歴史的にも違ってきたりして、同じ本数表現をしても、必ずしも一致しないという部分があったりして、TEMの測定値は非常に注意しないといけない。非常に優秀ですけれども、これによる評価と純然たるPCMで測定したものとの評価を比較する場合には、非常に注意が必要だと私は思うのですが。

    【村山(東京工業大学)】 そうですね。先ほど、森永先生の表にたしか書かれていたと思うのですが、オランダの事例でも位相差顕微鏡と透過型の顕微鏡の比を1対2という形で単純化して書かれていますので、そういった意味でも、今の神山先生のお話のように、注意深く見る必要があるのかなと思っています。そういった意味で、いろいろな調査があるわけですが、不確実性が幾つかありますので、その点を考慮して、安全側にどう決めるかという観点が必要なのかなというふうに思います。

    【浅野委員長】 よろしゅうございますか。
     それでは、大迫委員、どうぞ。

    【大迫委員】 リスクアセスメントに関して門外漢の部分もございますので、今回の問題に関しての難しさは、こういう生涯リスクでの大気環境の濃度という側面と、実際の解体、改築や、そういった工事の際のアスベストの管理をどうしていくかという側面でのリスクアセスメントということの中で、短時間での曝露をどのように考えるかということは、科学的には解はあるかとどうかというところはわからないのですが、実際にそこにどういうロジックを持ち込んで、リスクアセスメントと短時間での曝露における管理というところを結びつけるようなロジックみたいなものがあるのかということを、もし先生のお考えがあれば、お聞きしたいということ。
     そういう中で、ドイツの事例において、一般規定では大気の限界値はなしという話の中で、23ページを見ていて、もう少し何か裏にある考え方をお聞きしたかったのですが、一般規定に関して基準はないのだけれども、技術的にあらゆる対応をしていくという中で、ただ、例外としては、濃度の基準があって、これを下回るのだったら一般規定は適用しなくてよいと、この考え方が参考になるのかどうかというところがちょっとよくわからなかった部分があって、そこら辺りのコメントをいただければと思います。

    【浅野委員長】 大事な質問ですので、よろしく。

    【村山(東京工業大学)】 少し技術的になるのですが、あくまでリスクのモデルがこういう形であるという前提のもとに、非常に短期で濃度が変わったとしても、時間の要素、曝露期間を1年より短くした場合にどういうふうなリスクになるかと、そういうような計算がされている例があるということです。ただ、実際、疫学調査では工場や鉱山の曝露が基本ですので、曝露期間が長いものがほとんどです。そういう意味で、長期間の曝露によるリスクの評価の結果を用いて、短期間でどういうふうに評価するか。これはなかなかデータとしては得られないけれども、あくまでこういう前提で評価をしているということです。
     一方で、先ほどもお話ししたように、ほかの化学物質では動物実験をベースにする場合が多いと思いますので、そういう意味では、人間の曝露データをベースにしてやっているという一つの特徴はあるのではないかというような気がしています。
     それから、もう一つ、ドイツの例については、大変申し訳ないのですが、今日ご紹介した程度しか私は情報を持ち得ておりません。

    【浅野委員長】 単純な質問ですけども、労働環境を想定してこのガイドラインがつくられているのか、それとも、一般環境なのかということだけでもわかれば、非常に大きいのですが。

    【村山(東京工業大学)】 基本的には労働環境だと思います。労働環境の濃度別に規定というのは労働環境中での規定です。

    【浅野委員長】 という印象ですね。わかりました。
     大塚委員、どうぞ。

    【大塚委員】 先ほど議論にあった敷地境界基準と環境基準の違うという点についてお伺いしたかったのですが、先ほどのご議論の上で、多少質問させていただくとすれば、現在の敷地境界基準につきまして、クリソタイルのみで見るかどうかということを考慮したとしても、多分、今でもなお不十分だということになるかと思いますが、これに関して、村山先生が、今の10というのはどの程度にしたらいいかということについて、何かお考えをお持ちでしたら、教えていただけるとありがたいと思います。

    【村山(東京工業大学)】 純粋な意味で環境基準がもし設定されるとすれば、0.1ぐらいのオーダーにしないといけないのではないかと思っています。ただ、先ほど申し上げたように、敷地境界基準は非常に特殊ですので、これを今決める必要はないですね。一方で、解体やいろいろな特殊な現場が出てきていますので、そういった現場に応じてどう決めるかという議論が必要になるのではないかと思います。

    【浅野委員長】 それでは、外山委員、どうぞ。

    【外山委員】 一つだけ。スライドの19枚目の一番上に「リスク評価における不確実性の考慮」ということが書かれていて、私もこれは重要だと思うのですけれども、過去のデータ、アナリシスも限界がありますし、今の測定方法にも限界がある。あるいは、今、議論になっているように、時間の問題があります。曝露の形態ということも問題になってくると思うのですが、この不確実性の考慮、例えば、この委員会の中で基準値なりをこれから検討しようとする場合に、不確実性の考慮、あるいは、安全係数に関して、どのように具体的に考慮したらいいのかという点で、海外の事例ですとか、村山先生のアイデアなりがありましたら、ご紹介いただきたいと思います。

    【村山(東京工業大学)】 現時点で具体的な提案、お話ができるわけではないのですけれども、少なくとも、動物実験を使ったほかの物質の評価では、安全係数として10や100とか、要因別にそういった数字を使って、より厳しい濃度を設定しています。アスベストの場合は不幸にして人間の曝露データを使っているわけですが、それでもいろいろな不確実性はありますので、ある程度の安全係数というのを考える必要があるのではないかというふうに思っています。ただし、具体的にどの程度の数字を使えばいいかについては、ここではわかりません。

    【浅野委員長】 ありがとうございました。
     ほかにございますか。では、稲垣委員、どうぞ。

    【稲垣委員】 全くの素人で、ちょっと教えていただきたい。6ページを見ていただきたいのですが、先ほどの5ページ、6ページの表の関係で、先生は、曝露期間が1年未満の場合も使えるかどうかということを検討しなくてはいけないという話だった。その一番下の混合、一般人口を対象ということ、あと、上は全部鉱山とか生産、工場関係ですが、一番下の数値、一つだけ係数が非常に大きいものもありますので、これをどう理解すればいいか、ちょっと教えていただきたい。

    【村山(東京工業大学)】 これはスウェーデンの調査結果だったと思うのですけれども、これは本当に一般人口を対象にして、ある地域のアスベストの濃度がどれぐらいかというデータがあって、一方で、肺がん、あるいは、中皮腫のデータはどうかというようなことです。それをベースにしてこういう結果が出されている。そういう意味では、上は労働環境での調査結果ですので、かなり異質なものになっています。その分、少し係数が違ってきているのかなと思います。

    【浅野委員長】 それは、他の交絡因子は全部排除されていると考えていいですか。

    【村山(東京工業大学)】 調査の中でできるだけ排除しているようにしていますが、ただし、あくまで一般人口ですので、いろいろな要素が入ってきてしまわざるを得ないと思います。

    【稲垣委員】 一般人口というのが、今回議論するのに、非常に大きな問題になってくると思うのです。先ほどと違って、製造とは違って解体とか、そういう短期間、一般の人たちが入る。そういうものですか。

    【村山(東京工業大学)】 極所的な解体とか除去の影響というよりは、かなり一般的に広がっているアスベスト濃度を対象にしております。

    【浅野委員長】 森永委員、どうぞ。

    【森永委員】 このデータは症例対照研究のデータでありまして、ほかのコホート研究とはちょっと異質の調査方法のものだということであります。だから、そういう意味で違うと思います。

    【浅野委員長】 武林委員、どうぞ。

    【武林委員】 二つ質問がございます。
     一つは、オランダでのリスク評価の中ですが、ここに一覧表がありますけれども、古い疫学の場合、ほとんどたばこの情報がコントロールされていないことが多いのではないかと思いますが、オランダはどういうふうに扱われていたかということが1点。
     それから、先ほどの外山委員からのご質問の中で、先生としては、個人的なご意見としては、さらに安全係数をというふうなお話がありましたが、このオランダのモデルにしても、この一覧表にあるものにしても、ほとんど直線のモデルを使っているということで、一般的には、そこでかなり安全を見ているというふうに考えるほうが一般的ではないかと思います。先生のご意見は、そうであったとしても、もう少しいろんな不確実性をさらに考慮すべきだというふうに考えてよろしいか。その2点を教えていただきたいと思います。

    【村山(東京工業大学)】 1点目の喫煙による影響について今は情報がありませんので、後で調べてお伝えをさせていただきたいと思います。
     それから、2点目については、オランダについては、先ほども少し申し上げましたが、今までよりは相当低い濃度で同じようなリスクが発生するという結果が出されてきていると思います。そういう意味で、安全係数の理論よりは、その前の段階で条件をかなり厳しく設定して、結果が出されていると思います。
     ただ、せっかく出てきている調査データですので、ほかの事例ではできるだけ利用しようということで評価がなされているのですが、その場合には安全係数をある程度考慮すべきではないかということです。

    【浅野委員長】 それでは、また最後に総合的に議論ができると思いますので、次に移りたいと思います。
     それでは次に、解体現場の問題に関して、発注者のお立場でのお話を伺いたいと思います。
     今日は、森ビル株式会社の中島慶治部長と、それから、柏山武部長と、お二方に来ていただいておりますので、お二方からお願いいたします。15分でお願いいたしまして、この後、質問をお願いいたします。今までは少しアカデミックな議論だったので、一問一答の形にいたしましたが、これから後は質問を全部まとめて差し上げますので、メモをしておいていただいて、まとめてお答えいただくという形にいたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

    【中島(森ビル株式会社)】 初めまして、森ビルの設計部の中島でございます。今日はよろしくお願いします。
     まず、最初に、これからご説明する資料に当たりまして、参考資料等々の中に、一部守秘義務に係る企業名個人名等々が入っております。これらにつきましては今日この場限りということで、取り扱いをぜひお願いしたいと思います。
     これからご説明する我々の取組ですけれども、建物を解体するだけではなくて、既存の建物にアスベストが存在した場合に、そこを工事するというケースもあるので、両方の観点でお話をさせていただきたいと思います。
     今日は、お手元の資料にこのような資料を配付させていただいております。この場でご説明するのは上3段、当者の紹介と当社のアスベストに対する取組、それとあと、石綿対策に対する要望、ここまでとさせていただきたいと思います。参考資料につきましては別途ご覧いただきたいというふうに思っております。
     これからご説明する上で、前段で、当社の業務、組織をちょっとご理解いただきたいと思います。
     当社はデベロッパーとして、土地の取得から建物の計画、建設、建設といっても、建てること自体はゼネコンに依頼しますが、設計を実施します。できたものの営業、リーシング、それから、あと、入居された皆さんへの運営管理等々を一気通貫でやっているのが当社の特徴でございます。
     それで、ここをアスベストという視点でとらえたときに、当社では、アスベストの対策を取り組む部署としまして、赤で表記しましたけども、建物計画の設計を行う設計部と、あと、監理も設計部で実施しております。それと、あと、工事の発注をする部署、建物が竣工した後の運営・管理等々をする部署がアスベストの対策の取組の主な部署として存在します。今、こういう形でやっておる次第です。
     その中で中心的に取り組むのは我々設計の部隊でして、設計の部隊では、工事の発注の仕様書を取りまとめたりとか、あと、これは当社独自の特色かもしれませんけども、実際に工事をやっている現場の監理等々にもかなり当社の人員を注力したりして監理をしております。これらを当社が設計部として取り組んでいるということでございます。
     では、アスベストに対する森ビルの会社としての取組でございますけれども、2005年に、クボタショックで、かなり社会が騒然としたことがございました。アスベストの存在については古くからいろんな場面で議論はされておったのですけれども、2005年にかなり社会現象として大きく取り上げられたということもございまして、当社としましても、自社で管理運営する建物について、実態はどうなっているかというところを、総数139棟につきまして調査を実施しました。
     これにつきましては、やり方としては、竣工書類、あと、設計者や施工者、あと、場合によっては当社の社員が現地に赴いて現地調査もしました。そして、あと、疑わしいものにつきましては、サンプリングの調査も実施しました。ただ、アスベストはいろんな部位に使われているということもあったのと、当時、この社会現象が起きたときに、どんな製品が対象なのかということを、いろんな情報ソースとして啓示等をいただきましたけど、なかなか全体が把握できないというような中で、入居されているお客様の不安等々が懸念されたものですから、全139棟につきまして空気環境測定を実施しました。これによって飛散があるのかないのかというところを、まずもって我々としてもデータとして把握しておこうというような取組をいたしました。結果、そういう情報につきましては、入居いただいているお客様には情報はすべて開示させていただきました。
     ただ、先ほども申しましたけども、俗に言うレベル2、3というものにつきましてはなかなか特定が難しいという状況にもありましたので、ここにつきましては、我々も、2、3がどこにどういうふうに使われているというところは、正直わかりませんというようなお答えをさせていただいております。
     それと、アスベストにつきましては、我々がお客様と契約をする際の賃貸借契約の中で重要事項説明ということで、この機に定められました。以降、新たに契約をする際につきましては、都度お客様に重要事項ということでご報告をしております。
     当社の基本方針ですが、当社は、管理運営する建物について、解体だとか改修工事等のタイミングがあれば、その都度にアスベストの対策を実施していくと。対策の仕様につきましては、除去であったり封じ込めであったり囲い込みというふうに、ケース・バイ・ケースの対策をその都度計画をして実施していくと。
     それと、あと、関係法規がございます。いろんなお役所等のご指導等もございますので、これらを遵守した形で工事を実施していくと。
     あと、定期的に点検は実施しようと。点検記録を確実に残すということも実施しておりますし、レベル1が使われている建物につきましては、自主的に年1回空気環境測定を実施して、その状況をモニタリングしているということでやっております。
     これからは、我々が工事を進めたり運営をしていく上での問題点になるのですけれども、とにかく、新しい建物であれば情報が整理されているのですが、古い建物であったり、または、他社から購入した物件等々につきましては、なかなか竣工書類の情報が整っていない。散逸しているという状況がございまして、建物全体のアスベストの使用量、使用部位の全量把握、並びに、どういうものが使われているのかということが、正直なかなか難しい状況にあります。あとは、先ほども申し上げておりますけども、アスベストの混入製品が多岐にわたるというところで、なかなか特定が難しいということがございます。
     このような状況にはありますが、我々が工事するに際しましては、工事の計画の立案をする際に、困難はありますけども、これらを何とか情報を整理しながら工事していこうというふうに努めている次第です。
     実際、工事をする段になると、今度は工事の費用の適正化という議論が出てくるのですけども、これにつきましても、どういうふうに把握をした方がいいのかというようなところも工夫しながら取り組んでいる次第でございます。
     まず、実際、どういうふうにやっているかということですが、これは、プロジェクトを進めるにおいて、ある建物を解体するようなケースの場合の事例でございます。
     まず、建物の中にどのぐらいのアスベストが存在しているのかというようなことを把握する必要がございます。これは、解体業者並びにゼネコンさん等の方々に見積もりをお願いする際に、実際の全体量をなかなか把握できないというのが事実でございます。ですので、まず、全体像を把握するにおいて、これについての調査について見積もりを入札でとります。これは、複数社で調整することによってばらつきを排除するということと、大勢の方に見てもらえれば、そう外れるということはなかろうというようなところも実は期待としてございます。
     それと、あと、価格です。価格につきましても、やはり、複数社の方に入札をしていただくことによって、適正な価格を把握しようというふうにも考えてございます。価格につきましては、正直、最初に決めても、実際、工事を進めていくと、隠れた部位にいろんなものがあるというケースもあるものですから、ここで価格の適正化を図っておけば、後日、工事が変更になっても、その変更の契約も容易にできると考えて、このような取組をしている次第です。
     それと、あと、期間です。期間につきましても、入札の中で皆さんからいただいております。
     これらは、複数の方々からいろんな提案、費用、部位等々をいただくことによって、かなり精度の高い発注ができるのではなかろうかというふうに考えています。
     ただ、見積もりをいただく方に情報を全く開示しないというわけではなくて、我々が持っている情報も多少なりともございます。これらについては、限界はございますが、入札をするに当たりましては、見積もりをいただく施工者の方々にそういう情報をできる限り開示するというふうにもしております。
     今までは大きな建物を全部壊すという解体のケースですけども、片や、我々は、既存の建物の運用もしております。そこにもやっぱりアスベストが潜んでいるという中で、既存の建物の場合はどうしているのかということですけれども、やり方はさほど変わることはありませんが、ただ、既存の建物の場合は、都度工事をやると、怪しいところは調査を自社でやったりとかします。また、実際に工事をやる段に怪しいものが出てくると、そこの工事をお願いした業者の方に追加で分析も含めてやっていただくというような形で、だんだん建物に潜んでいる部位が明らかになってくるということもございますので、これらの情報をお示しした上で、どのような改修工事をやるかに応じたアスベストの対策をそこに盛り込んでいただくという形で工事のほうを進めている次第でございます。
     流れとしましてはこんな感じになります。入札をいただいて、まず、調査に関する契約をします。調査をやっていただいて、それに基づいて見積もりをいただいて、工事契約に至ると。その後、各種行政の手続、これらを進めていただいた上で、過程でいろんな関係書類が出てまいりますけれども、これらを社内の設計部の担当者が内容のチェック等を行うことで、結果がよければ工事着手というような形で工事のほうを進めております。
     実際、現場が始まった中で、アスベストの存在が疑わしい部位等々につきましては、安全サイドで、アスベストがあるというような視点で工事のほうを実施するように心がけています。
     以降は、こんな要綱を我々が見積もりを徴収する際にお示ししているという事例でございます。こういうところにちょっと物件名が出てきておりますので、これはこの場限りという形にさせてください。
     アスベストがこういうふうにありますと。アスベスト以外にもいろんなものがございますので、こういうものがあるというところを開示するとともに、今回の見積もりにはこんな調査を含めてくださいというような当社の要望項目を盛り込んだものを、見積もり徴収に当たりまして条件書としてお渡しするということにしております。
     あと、こういうふうに、こういうものがありますということが過去に我々の調査をしてわかっている部位がございます。そういうところについては積極的に情報を開示するという形で、精度の高い計画、あと、見積もりができるようにというふうに取り組んでいる次第です。
     実際に工事業者が決定した後、では、我々は品質管理をどういうふうにしようかなというところですけども、ここは、森ビル側の社内に設計部隊を抱えているというところが、ちょっと特殊なところもありまして、我々は、施工会社、元施工の会社の工事監理体制の確認、どういうふうにやっているのですかというようなチェックをさせていただきます。それと、あと、施工の計画書、これを提出いただいて、その内容について間違いはないかとか、あと、基本的な書面は各施工者がお持ちですけれども、当現場に照らし合わせときに、果たしてそれでいいのかどうかというような視点で内容のチェックをさせていただいております。それらをもって官庁の皆様の方に書類を提出する際に、細かいところはまたいろいろ協議をさせていただきながら計画のほうに反映させている次第です。
     こういう書類を提出いたしますと、その都度のタイミングで、監督官庁さんの方々の立ち入りもございます。これらにつきましても、当社係員が一緒に立ち会う形で実際のご指導の中身をお聞きして、それを実際の工事に反映するという形にしております。
     それと、我々は元施工の会社と契約をするわけですけども、ただ、元施工の会社がどういう会社に下請に出すかというところを危惧するところもございます。なので、そこで、協力業者はどういうところを使うのですかというような情報も我々に提出をいただいて、その上で工事を進めるという体制を敷いております。
     あとは、これは一般的ですけれども、工事に関連したマニフェスト、これは発注者の責任として管理保管をしております。
     これは、ある現場に出てきた施工の要領書でございます。こんなフローチャートの流れの中で、どんな工事をやりますよということがここに示されています。これらを我々の方で見まして、先ほども申し上げましたけども、チェックをこんな視点で見ながら、実際の現場に即した計画書の作成に努めている次第です。
     その中で、こういう平面を出してもらいます。点線で示しているエリアは仮囲いで、これが敷地境界に当たるのですけども、この事例はレベル1の吹付けがあるということで、ここのエリアの対策について、どういう囲いをしながら工事を実施しますかというような内容のものを提出していただいております。
     これは、実際はマニュアル等で一般に出ている内容ですけども、それに対してちゃんとやっているよねというところを書面で確認するのと、あとは、たびたび先ほども議論がありましたが、空気環境測定をどこでやるのかというようなところも、こういう形で提出を依頼して確認をしている次第です。
     実際、工事になると、監督されるお役所様、実際は労基署の方、あと、環境課の方が現場に立ち入りにいらっしゃって、確認をされるということで、これをいただいて工事を実施している次第です。
     最後に、我々発注者といいますか、オーナー側の立場として、アスベストに対して要望といいますか、ちょっとずうずうしいところもございますけれども、一言二言申し上げさせていただきたいのですが、まず、監督官庁さんが厚労省さん、国交省さん、あと、環境省さんと、多岐にわたることがあって、その都度法律がいろいろあって、実際、どこを読みに行けばいいのかというところが、なれてしまえばいいのでしょうけど、一般の方々にそれをやれというのは、かなり苦痛かなというところがございます。
     促進していく上においては、やりやすい法制度というものをちゃんとお示しいただいて、わかりやすいようなものをぜひおつくりいただきたいというふうに思います。
     二つ目としまして、石綿の規制とか対象種別、あと、分析手法が数年ごとにいろんな形で変わってくるというところがございます。例えば、2005年に我々は一斉に分析調査等をしましたけれども、それが、今度は分析手法が変わり、あと、規制値も、当初は4%とか5%とか、いろいろ数字が出てきますが、昨今は0.1%以下とか、いろんな形で数字等々が変わってくることによって、我々も、それに追随していく上において、また、手戻りを都度やらなければいけないという、正直言って苦痛なところはございます。やはり、こういうところも制度をちゃんとしていただいて、手戻りのないような形のものをお示しいただけないかなというふうに思う次第です。
     それと、3番目としまして、これは、我々が取組をする際に、国に認められた製品を使っているにもかかわらず、アスベストの含有製品を使っている我々がいかにも悪いがごとくの風潮が時にしてあることを感じます。ただ、こういうものを排除しながら我々が取り組んでいく際には、アスベストの危険性だけを風潮されるのではなくて、正しい認識を住民の皆様に持っていただいて、対策をしやすいような環境をぜひつくっていただけないかなというふうに思う次第です。
     それと、あと、取組に向けたマイナスの要因というふうにちょっと記載しましたが、これからいろんな規制がまた出てくるのかもしれませんけれども、先ほども申しましたように、いろんな制度が都度出てくることによって、対策に対するコストの増だとか、あと、時間等々が発生してまいります。これらがどんどん発生してくることによって、オーナーさんにおいては、だんだん取組に対する腰が引けてくるような嫌いがあるのではないかなと。工事をやっている期間は、場合によっては、そのエリアの収益がなくなるということもあって、場合によっては数カ月、半年収益がないということは、やはり、やりたくてもできないというふうなオーナーさんもあるのではないかなと思うのです。だから、そういうところもご理解いただいた上で制度を考えていただければなというふうに思います。
     それと、最後になりますが、先ほども申しましたけども、オーナー側の負担です。この辺の負担を阻害するというよりは、国のほうで何かバックアップできるような、そんな仕組みが施策としてできないものなのかなと。やはり、オーナー側のやろうという気持ちを後ろから押していただけるようなものがあったほうが、世の中からアスベストをなくしていこうという取組においては必要なのではなかろうかというふうに思う次第でございます。
     以上です。

    【浅野委員長】 ありがとうございました。
     中島さんは、ご紹介が遅れましたが、設計統括部の設備設計部長でいらっしゃいます。
     それでは、先ほど申しましたように、質問を全部一括して差し上げて、あと、まとめてお答えいただくという形にしたいと思います。ご質問がおありの方は、どうぞ名札をお上げください。今、神山委員と稲垣委員、外山委員が上げておられますが、ほかにいらっしゃいますか。青島委員と、それから、大塚委員ですね。ほかにご質問はいらっしゃいますか。──よろしゅうございますか。
     それでは、神山委員が最初でしたね。

    【神山委員】 私みたいな建築の素人は、アスベストの吹付けは昭和50年に禁止されて、それ以前と以降で確然とアスベスト吹付けというものは変わってきていると。吹付けがあったのは昭和50年以前で、以降は数年の数%の猶予期間があるように聞いています。五十三、四年から後の建物にはアスベスト吹付けはゼロになっているというふうに一応公式に聞いているのですが、例えば、森ビルさんのスライド2-2のようなレベル1が存在する建物は、空気環境によるモニタリングを毎年実施というのは139棟中何棟ぐらいあるのか。もしこれが公表できないようであれば、このお答えは結構ですが。
     それと関連して、スライドの4-5に細かい分析、事前調査データが出ていまして、基本的に、吹付け剤を見ますと、不検出ですけれども、2カ所ぐらいクロシドライト、アモサイトを含む場所があったりするので、この建物は昭和50年以前の建物かどうかとか、これもわかったら、公表できればですけども、質問です。

    【浅野委員長】 それでは、次は、稲垣委員、どうぞ。

    【稲垣委員】 2点ほど教えていただきたいのですが、まず、4-4ですけれど、4-4の3枚目ですか、7、その他のところです。解体中にアスベスト調査が必要と判断された箇所、こういうものが具体的にあって、こういうときには工事の一時中止というような措置もやられた事例があるかどうか、こういうものがあれば、ちょっと教えていただきたいなと思います。
     それと、6のところ、今、スライドに出ておりますが、長年規制行政をやってきた人間としては非常に耳が痛い部分もありましたけれど、特に、4番、5番、一つの考え方、少し抽象的にちょっとお話しされたのですが、今の段階で、例えば、すべての責任がオーナー負担では積極的な取組を阻害するということで、国とか、あるいは、地方公共団体が何か支援する、具体的にこういうことをやってほしいということがあるかどうか、そういう点があったら、教えていただければと思います。

    【浅野委員長】 それでは、大塚委員、どうぞ。

    【大迫委員】 退席されました。

    【浅野委員長】 そうですか。わかりました。それでは、次は外山委員です。

    【外山委員】 幾つか教えていただきたいのですけれども、一つは、居住者というか、利用者がいながら、例えば、上下階で除去工事があるというような場合もあるかと思うのですが、その場合の利用者への情報の開示とか、後は、その場合の除去中の濃度測定等、そういうことをやられているのかということ。
     あと、もう一つは、完成検査を実施されているのか。除去後、きちんと除去されているかという検査を独自にやられているのかという点。
     それから、最後のスライド6の石綿対策予防事故で、これはなかなか難しい問題ではあると思うのですけれども、今あるアスベストは誰の責任なのかということもあるかと思うのですが、一つに、石綿をつくってきたメーカーさんなどでは、やはり、防火・耐火とかのそういう利益があったからつくったのだという主張もされていると思います。それならば、防火・耐火の利益を受けたそういうオーナーさん、建物持ち主の責任ということもあるのではないのかなというふうに私なんかは思うのですけれども、また、所有者負担の原則という意味からも、所有者の責任をもっと重くすべきだという主張もあるかと思うのですが、そのような意見に関してはどのようなお考えをお持ちでしょうかという3点をお願いいたします。

    【浅野委員長】 それでは、青島委員、どうぞ。

    【青島委員】 先ほど稲垣委員のお話があった、4-4のスライドの中の7ですけど、その他の件で、アスベスト調査報告書というものを参照に提出して、それに基づいて見積もりということですが、これの調査については、吹付け石綿、吹付け含有ロックウール以外の石綿含有成形板とか、それも対象となっているのかどうかということ。
     それから、もし、それ以外の項目についてあった場合は、その上に記載している管理者が指定する業者ということになっておりますけど、これについてはどのような基準で選定をされているのか。
     それから、どのような資格を持っている方が管理者として何名森ビルさんにいらっしゃるのか、その三つについてお願いいたします。

    【浅野委員長】 ほかにご質問はございませんか。──よろしゅうございますか。
     それでは、質問者も言いましたように、お答えいただける範囲で結構でございますので、よろしくお願いいたします。

    【中島(森ビル)】 すみません、質問をちゃんととらえているかどうか、ちょっと間違っていたら申し訳ないのですけども、まず、空気環境測定をやっている物件ですが、すみません、正確な棟数は十分記憶していませんけども、三、四棟やっていると思います。
     

    【浅野委員長】 ありと書いてあるものはことごとく昭和50年以前のものという理解でよろしいでしょうかという質問でしたね。

    【中島(森ビル)】 吹付けアスベストが50年に禁止されて、じゃあ、ゼロになったのかというと、すみません、勉強不足かもしれませんけど、そのときは%が変わったのではないでしょうか。吹付け石綿の含有量を多分下げられているのですよね。

    【神山委員】 一応それがゼロになって、あと、猶予期間として3年間数%以下のものがあったという、猶予期間みたいな形が置かれたのではなかったかと思うのです。一応禁止になったのは昭和50年。

    【中島(森ビル)】 いろんなこういう事例があって調べていくと、含有率が下がったものはずっと認められていたというふうにちょっと認識をしているのですけども、すみません。

    【浅見委員】 すみません。かわりにご説明いたします。75年ですね。昭和50年に吹付け石綿として禁止になったのは5%超です。それは原則禁止で、隔離をすれば、まだ吹き付けること自体は可能でした。その後、95年に1%になっています。さらに、1%以下で意図的に入れなくても、今は基準が0.1%になっていますので、不純物の中で0.1%を超えているものがある可能性があります。
     したがって、法を遵守していても、96年に0.1%、あと、不純物として石綿を含む可能性がある鉱物、四つプラス一つですけれども、それの分析を法的に決められた96年の8月までは、まだ分析すれば、0.1%基準で見れば入っている可能性があるものは幾つかございます。

    【浅野委員長】 わかりました。
     では、どうぞお続けください。

    【中島(森ビル)】 それと、事前データで2カ所あったところですね。50年以前でしょうかというご質問ですけども、今回ご説明した事例は50年以前の建物でございます。まず、最初はこれでいいですかね。
     次に、その他で一時中止の事例はありましたかということですけど、すみません。ちょっと自分が担当しているわけではないので、そこの情報は持っておりません。
     あと、具体的な支援策というお話ですけども、簡単に言えば、まず、費用の負担を補助していただけるというようなところと、あと、我々みたいに、組織の中にそういう部隊がいるところはいいのですけども、全くいないオーナーさんというのは世の中に一杯いらっしゃると思うのですが、そういう方々の相談窓口になるような役割を担って、こういうふうに対策をしたらいいのですよという指導などを、今は環境課さんという立場のところが窓口をなさっているのでしょうけども、もう少し踏み込んでそういう相談事もやれるような部門というか、部署といいますかね。そういうのがあると、困ったときに行きやすいといいますか、そんなことがあるかなというふうに、ちょっとこれは個人的な感想ですけど、ございます。やはり、一般的には費用が大きいのではないかなと思いますけども。
     それと、既存建物の中で利用者の方がいるという中でのお話ですけども、ある部分の工事を、例えば9階を工事しますとした場合には、そこにいらっしゃる方々、あと、上下の近接した方々には、まずご案内をすることと、あと、これは港区さんの条例ですが、建物の目立つところにこんな工事をこの期間ここでやりますよというような掲示をしなさいということがございます。そんなものを建物のところに掲示して、入館されている方、あと、建物の周辺を歩かれる方等々に情報を示しなさいというご指導がありますので、そういう取組を実施しております。館内は、これは自主的に我々がやっているというものでございます。
     それと、工事中の測定ですけども、これは、規定に定められている工事前・工事中・後という測定義務がございますので、これにのっとって測定を実施しております。
     それと、あと、完成検査は、社内の人間が立ち会って、施工の方々と一緒にやるというルールにしています。ただ、これはどうかと個人的に思うのですけども、例えば、除去の場合、ゼロになるまでやったのかとか、そんな評価の仕方というのは、なかなか目視でしかちょっとできないので、ここはちょっと難しい局面があるかなと思います。ただ、ちゃんと除去して、あとは、固着の薬剤を吹き付けて完了という形にはしている次第です。
     それと、あと、ユーザーはそういう製品を使って利益を得たのではないかというメーカーさんのご意見があるようですけども、世の中的にはそういう工法が一般的になってきて、物をつくる上においては、それを採用することが法的にも正しいし、いろんな意味においてもベストだということでユーザーは選ぶわけであって、ユーザーが選んだ結果、あそこで何か得をしたのではないかというのは、あまりに自分としては理解に苦しむようなところがございます。
     所有者の責任ですけども、当社は、そうは言いながらも、自身に使っている部位があって、そういう中に、改修だとか解体とか、そういうケースがあれば積極的にやっていくということで、アスベストの対策については責任を持ってやっているというふうにご報告させていただきたいと思います。
     それと、調査報告書の中に、レベル1以外の成形板等も含めております。
     あと、現場を管理する管理者についてなんですけども、アスベスト専門の管理者というのは、実はいません。これは多分どこでもそうだと思うのですけど、ただ、その中に、石綿則の工事をする際の管理責任者という資格講習を受ける。そういう人間もいますし、あと、建物をつくる上でのメンバーがいますので、一級建築士だとか、そういう建物の情報に詳しい人間は多数社内に存在しております。
     質問はそんなところかなと思うのですが、よろしいでしょうか。

    【浅野委員長】 それでは、どうもありがとうございます。
     それでは、引き続きまして、自治体からのご説明をいただきたいと思います。自治体のご説明については、内容的にも関連いたしますので、二つの報告をまとめていただいて、その後、あわせて質問を差し上げるということにさせていただきたいと思います。
     まず、最初に、大阪府環境農林水産部環境管理室事業所指導課大気指導グループの内山一郎課長補佐からご説明いただきたいと思いますが、なお、あわせて、谷口靖彦室長もご一緒に説明に加わってくださるということでございます。よろしくお願いいたします。

    【谷口(大阪府)】 そうしましたら、大阪府の石綿飛散防止対策の状況と、各論点に対する考え方を説明いたしたいと思います。よろしくお願いします。
     まず、1ページ目をご覧ください。大阪府では、大気汚染防止法の制度に、条例で事前調査の実施を義務化するなどの制度を加えまして、対策の充実を図っています。ここの赤のところが条例、黄色のところが法律ということで、この赤と黄を足したものが大阪府の制度ということでございます。
     まず、最初に、解体等の工事に着手する前の段階ですけども、条例ですべての解体等工事に対して事前調査の実施を義務づけ、吹付け石綿など、法の対象となる工事に該当するのか、成形板に係る工事に該当するのかなどを確認してもらい、その上で事前調査の結果の表示を義務づけています。工事に着手してからの段階では、吹付け石綿などは法の作業基準、それから、成形板は条例の作業実施基準に従って作業することになります。
     敷地境界基準は、吹付け石綿など、及び成形板に係る解体等工事などに対して条例で設定し、吹付け石綿などで石綿使用面積が50平方メートル以上の解体等工事に測定の義務を課しています。
     立入検査については、すべての全ての解体等工事に事前の調査を義務づけていますので、石綿の有無に関わらず事前の調査について報告を求め、工事の場所に立ち入り、検査することができると定めています。
     2ページをご覧ください。もう少し細かく説明しますと、事前調査につきましては、工事施工者が石綿使用の有無、種類、面積を調査し、石綿が使用されていない場合であっても、3ページにありますような表示をすることとしています。
     敷地境界基準は、法の石綿製品の製造工場の基準を参考に10本/Lと定め、測定計画については、吹付け石綿などで石綿使用面積が50平方メートル以上の工事について、法の届け出に際して条例で届け出するよう義務づけています。
     測定は、作業の開始前、作業中、完了後のタイミングで、原則として敷地境界にて測定することとしています。
     測定方法は、環境省告示第93号を少し変えて、クリスタイル以外の5種の石綿も含め、6種の石綿に対応できる方法としています。
     工事期間が6日程度ある吹付け石綿除去工事の場合ですが、施工業者の測定と同時に府も測定しています。
     4ページに試料採取の様子を示しています。同じような場所2カ所で試料採取をしていますが、片方が施工業者、片方が大阪府ということでございます。
     5ページをご覧ください。基準超過している場合ですけども、条例に基準の遵守、作業の一時停止の命令、また、基準を遵守していないことの公表、命令違反の場合の罰則が規定されています。
     6ページをご覧ください。次に、法条例の施行状況を説明します。届け出件数は年によって変動はありますけれども、平成21、22年度の場合ですと、府域全体で750件程度あります。うち、条例の届け出、すなわち、1,000平方メートル以上の成形板に係るものですが、これが100件程度となっています。
     立入検査は六百数十件行っております。大阪府の場合ですと、この数字は、大阪府とそれから大阪市、堺市など、政令市などの件数も合わせたものですけども、大阪府だけの場合ですと、届け出件数が200件弱、立入検査数が130件程度、吹付け石綿の解体等の工事を中心に立入検査するようにしております。なお、立入検査は労働基準監督署と連携して実施しておりまして、検査日時が異なる場合もありますけれども、労働基準監督署も府も検査するようにしています。
     次に、7ページをご覧ください。府の立入検査では、ここに記載しております9項目を主に確認しており、養生シートの破損を修復する、適正な負圧を維持する、こういったことを指導することがよくございます。
     成形板の場合ですと、8ページの写真にありますように、飛散防止幕が作業現場の高さ以上に設置されているかを確認します。この写真の解体している屋根の部分がありますけども、それ以上にその奥に白い幕があるかと思うのですが、その高さを確認しているということでございます。
     9ページをご覧ください。これまでの不都合な事案は12件ございましたが、除去工事の業者が自主的に作業を一時停止して改善に着手したということで、条例に基づく命令には至りませんでしたが、府が改善勧告をしたことがございます。理由はここに記載のとおりです。特に、敷地境界基準を超過していた3件については、その事実の公表も行ってまいりました。
     次に、10ページをご覧ください。規制以外に、年に一、二回ですけども、定期的に行っているものとしては、関係者との連絡調整とか情報交換、それから、業界団体に対しますセミナーの開催、それから、関係機関、関係部局と連携して、あるいは、合同してのパトロールがございます。
     本年6月に行いました一斉のパトロールでは、解体現場157カ所をチェックしました。うち、82カ所において、事前調査の結果の表示を行うように指導したということでございます。この事前調査の結果の表示の遵守率が低いのですけども、原因としましては、他県の工事業者が府の条例をよく理解せずに府域で除去工事をしているというようなことが考えられますので、条例の周知を隣接付近の業者まで対象に行うように取り組んでいくこととしています。
     11ページをご覧ください。次に、府のほうへの苦情・相談について説明します。クボタショックの時期は、月に900件程度苦情・問い合わせがありました。現在では二、三日に1件という程度になっております。内容ですけども、石綿の有無に関するもの、飛散防止の徹底を求めるもの、そういったものが中心で、まだまだ対策についての不信感があるなというふうに感じておるところです。苦情があった場合には、解体現場へ行きまして、事前調査の結果を我々が確認して、その内容を苦情者に説明するということで、解決することが幾つかございます。これも条例で立入検査の権限を定めているからできるというふうに考えております。
     12ページをご覧ください。以上、説明しました状況から、各論点について大阪府の考え方を説明したいと思います。
     まず、最初に、立入権限と事前調査の点につきましては、石綿の有無をはっきりさせるということが規制の実効性を高め、不安の解消を図る上でも極めて重要でございますので、全ての解体等工事で事前調査の実施とその結果の表示を義務づけ、この義務が果たされているかどうかということについて報告・聴取などのために立入権限を定めるということが必要と考えます。
     なお、事前調査の信頼性を確保するということで、ここでは仮称として指定調査機関としていますけれども、事前調査を専門的に行って、どのような工法で除去するのかを設計する、いわゆる第三者の機関の創設も有用ではないかと考えています。
     次、13ページですけども、敷地境界などにおける測定の点についてですが、これは、健康リスクの回避・低減という観点から、敷地境界基準を規定した上で濃度測定を義務化して、超過した場合には一時停止を命ずるなどの措置が必要と考えます。
     14ページですが、測定に係る試料採取、分析の点ですけども、除去工事の期間が短いですので、迅速に分析できる方法、また、一時停止命令につながっていくわけですから、正確に分析できる方法が求められると考えています。満足できるような方法がないということであるならば、新たな方法を早く開発するということも当然必要ではないかというふうに考えています。
     それから、他の公害規制の分野では、測定に計量証明の制度があったりしますので、同様に分析事業者の登録の制度のようなものの創設が要るのではないかというふうに考えております。
     次に、15ページですけども、発注者による配慮の点についてですが、飛散防止の対策が確実に行われるためには、それに要する経費、それから、工期、この2点が適切に確保されている必要があると思います。そのため、施主さんに適切な経費と工期を確保するという責務があると考えます。このため、一時停止命令などは、施主にも命令が発せられるような規定が必要というふうに考えます。ですので、届け出者についても、施主が名を連ねるというようなことも要るのではないかなというふうに考えます。
     次に、16ページですが、法令順守の徹底と透明性の確保の点ですけども、施主の責任は重くて、法規制の趣旨を理解して適切に対応していってもらう必要があるというふうに思いますので、施主に対する法制度の周知が大変重要というふうに考えます。また、施主及び工事関係者などがきっちりやっているということを周辺住民に情報を発していくということで、すべての解体現場において少なくとも事前調査結果の掲示が必要と、先ほど言いましたように、必要と考えています。場合によっては、その事前調査の報告書を解体工事現場の事務所などで見ることができる、閲覧できるというような制度があってもいいのではないかというふうに考えます。
     次に、17ページですが、特定建築材料以外の石綿含有建材の点ですけども、府では、これまでの届け出の指導を通じまして、ダクトパッキンの除去の場合に、飛散性が高いのではないかと見られるデータを入手したことがありました。ということで、除去作業時の飛散状況が明らかでないものがまだまだあるのではないかなと思います。順次調査して、必要に応じて規制の対象にしていくということが必要と思いますし、また、そういう検証の状況といいますか、これを国民に説明できるようにしていくことが必要だというふうに考えます。
     次に、18ページをご覧ください。その他の点についてですけども、これは、規制の制度をより信頼性の高いものにするための論点かなというふうに思います。法に位置づけられた登録の制度や資格の制度で、第三者が施主や元請をサポートして、あるいは、安全に除去工事を行う制度が必要というふうに考えます。完成検査は規制のフローの最後締めくくりということですので、これも必要ではないかなというふうに思います。それから、違反者に対しては、違反事実の公表であるとか、また、登録とか、資格制度というものが法に位置づけられるということであるならば、その登録とか資格というものの剥奪というような規定が必要になるのではないかなと考えます。
     以上、府の考え方をご説明いたしました。取りまとめますと、法令順守と透明性を確保し、もって周辺住民の健康影響の回避・低減を図ると。そのため、事前調査から完成検査までを規制の範囲として押さえると。それから、基準の設定、測定の実施、行政の立入検査によって、より透明性を確保するということが基本かなと思います。また、これらの制度全体をしっかりと支えていくということで、迅速かつ正確な測定方法の開発、あるいは、第三者による専門機関の登録、そういったものが必要になると考えます。さらに、この規制制度は各都道府県とか政令市において運用されますので、新たにどのような実務が発生するのか、こういったところをしっかりと見通してもらって、どの現場であっても円滑に実施できるよう、実効性が確保できるように配慮をお願いしたいと思います。
     以上で説明を終わります。

    【浅野委員長】 どうもありがとうございました。
     それでは、続いて、川崎市環境局環境対策部環境対策課の藤田周治課長補佐から川崎市からのご意見を出していただきたいと思います。

    【藤田(川崎市)】 川崎市の藤田でございます。よろしくお願いします。では、川崎市から、建築物の解体現場等からの石綿飛散防止対策についてご報告させていただきます。
     まず、内容としては、我々も川崎市で条例によって取組をしておりますので、その条例の取組の内容と、大気汚染防止法及び条例の運用状況をご報告させていただきます。
     まず、条例の取組についてです。
     川崎市では、大気汚染防止法の補完と石綿含有成形板への対応を目的して条例を改正しまして、昨年の平成23年10月1日に施行をいたしております。
     条例の主な改正点でございますけれども、ここに示すとおりですが、1の注文者の配慮以外はすべて元請事業者さんに係るものということと、あと、石綿則等の他法令との整合を配慮しながら、事業者さんの過度の負担とならないよう、条例を策定いたしました。
     それぞれの項目については次からご説明いたします。まず、注文者の配慮ですが、施工者に設計図面等の石綿建築材料の諸状況に関する情報の提供をするよう努めることということで、努力義務です。
     あと施行方法、工期等に関して、作業基準の遵守を妨げる条件を付さないことということで、要するに、費用とか工期の面で不適正な契約をしないようにということをうたっております。元請事業者が下請に工事を委託するような場合も、元請は注文者という取り扱いをするということとしております。
     そして、事前調査の実施ですが、条例の中で改めて規定いたしまして、すべての建築物等の解体等作業が対象となります。建築物等というのは、ここでは、建築物と建築物以外の土地に定着した工作物、あと、解体等作業という言葉が出てきたときには、これは解体及び改造補修ということで表現しております。
     それで、事前調査については届け出義務と保存の義務を定めています。届け出については、まず、大防法の対象工事について、事前調査の届け出を別途出してもらうことと、石綿成形板の工事については、建築物と床面積の合計が80平米以上の建築物の解体工事で、この80平米以上というのは、建設リサイクル法の届出規模に合わせています。ですので、戸建ての解体も大分入ってきます。また、建築物の解体工事が対象で、工作物と改造補修工事を除いています。建築物の工事で、ばりばりと割られないようにということで、改造補修工事ではミンチ解体されないので、少し対象を絞っております。
     保存の義務としては、この届け出の対象の工事に加えて、床面積の合計が80平米以上の石綿建材を使用していない建築物の解体工事について義務があります。保存の期間は3年間にしております。ただし、届け出については市が30年間保存することとしております。
     そして、住民への周知ということで、対象としては法対象の工事と80平米以上の建築物の解体工事、石綿含有成形板の届け出と同じ対象になるのですけども、周知の方法としては、ひとつは事前調査結果の表示で、これは、掲示板を設置するということ。ふたつめは広告物の配布等ということで、解体のお知らせをよく周りにまかれると思うのですが、そのときに石綿の工事についてご説明してもらうということと、必要に応じて個別訪問をしてちゃんと説明するとか、説明会も実施するということを指導しております。そして、周知の範囲というのは決まっておりまして、作業区域から水平方向で20メートルの範囲で、特に、広告物の配布等の場合には、最低限それをやってくださいということとしております。
     次に、石綿濃度の測定及び計画書の届け出があります。これは、対象としては、大防法の対象工事であって、かつ、特定建築材料使用面積が50平米以上ということで基準を設けております。
     石綿含有成形板の工事については、市長が必要と認めるときという規定になっています。施行後10カ月ぐらいたちますけど、市長が認めるときというケースは今までにありません。方法については、告示93号、あとは、環境省のマニュアルということで、マニュアルについては、特に何版ということは指定してございません。
     測定地点については、敷地境界で測定することにしております。作業前後の場合は、これはマニュアルを参考にしているのですけども、風下1地点、敷地境界の風下1地点ということで、実際に風下をしっかりとるということが難しいので、そういう場合には東西南北4地点測定してくださいということにしています。作業中については、風下1地点含む4地点ですが、やはり、同じように、風下をとるのは難しいので、4地点と、大防法の工事が主になるので、集じん機の排気口の出口付近とか、前室入り口付近とかで加えて測定してくださいということとしております。
     次に、石綿排出等作業実施の届け出がございまして、これについては、石綿含有成形板の大規模工事について届け出していただくということで、床面積80平米以上で、かつ、成形板の使用面積500平米以上の建築物の解体工事が対象です。この届け出では詳しい作業方法などを確認させていただいております。
     次に、作業基準になります。大気汚染防止法にももちろんありますので、条例では石綿成形板だけに定めました。
     作業方法としては、石綿障害予防規則と同等で、手作業と湿潤化、あとは、養生の規定を設けました。また、この作業基準については、届け出の如何に関わらず、すべての建築物等の解体等作業が対象になります。
     次に、作業基準の一つとして、作業内容等の掲示で、大気汚染防止法と同じように、条例の届け出が必要な工事については、作業方法について掲示板を外に掲示することになります。
     次に、作業結果の報告と作業完了の報告で、測定結果については、条例で測定したところについては、測定結果の報告書を出していただきます。それで、濃度や測定地点の状況を確認しております。
     作業完了報告については、法対象の工事と、石綿成形板の大規模工事で石綿排出等作業実施の届け出をした工事について作業完了の報告をいただいておりまして、それで工事の結果を確認しております。
     それで、これらの規定について罰則はございません。1についてはないのですけど、2から7まで、これは元請さんに対しての規定になるのですが、勧告、公表というシステムになります。
     次に、運用状況をご説明いたします。
     大気汚染防止法の運用状況ですけれども、立入検査としては、川崎市には臨海部に工業地域がありまして、そこのグローブバックによる作業以外の工事には全部立ち入りをしています。立入件数としては、年間約200件大防法の工事が出てくるのですけども、そのうち60件程度ということになります。検査方法としては、養生の確認などは当然するのですが、主に、デジタル粉じん計を用いまして、集じん機の排出口の調査をしております。デジタル粉じん計の場合は、集じん機が正常に稼働していれば計測値がゼロになるという経験則で指導しております。
     検査状況ですが、養生が完了した後に、除去を開始する直前に立ち入りを行っています。そこで、除去の開始前と除去開始後にデジタル粉じん計の調査をします。その結果、約1割で集じん機に異常が見られています。その場合には集じん機を交換してもらうということになります。一次、二次フィルターを交換しても改善しないので、恐らく、HEPAフィルターの取りつけなどの異常と考えられ、集じん機を交換するという状況になっています。     それで、濃度の測定の義務があるということでしたが、その数値の取り扱いですが、基準値は今のところ設定しておりません。これは、条例の制定時に、国の動向を見ながら検討するということで、10本か1本かという議論はいろいろあったのですが、どちらにも決められなくてペンディングになったということです。
     行政指導の目安としては、環境濃度を当市では毎年測定しておりまして、それが大体NDから0.2本/リットルであることを踏まえて、1本/リットルを超えたら、これは石綿が飛散したということで、ちゃんと養生をしてくださいねという指導をしております。
     それで、このような指導実績ですが、昨年度は1件だけありました。濃度がそのときは最大2.5本という濃度だったのですが、これは前室の前での濃度でした。敷地境界も計っていたのですけども、敷地境界ではNDでした。
     次に、条例の石綿成形板の運用状況ですけども、事前調査結果の届け出ですが、施行当初は月20件程度でした。現在は月50件ぐらいで、施行3カ月ぐらいで50件ぐらいのペースに乗りました。かなり増えたということになります。
     建設リサイクル法の解体は、ちなみに年間約2,200件程度で、年600件ぐらいが石綿成形板の届出の対象となります。立入検査については、この600件全件立ち入りをしております。検査方法ですが、作業基準や掲示板の確認も当然あるのですが、携帯型の石綿分析装置というもので事前調査の実施状況の確認をしております。この機械の検出感度は含有率1%ですが、ほとんどの石綿成形板には1%以上含まれているという専門家の先生のお言葉と、あとは、やはり、解体現場でその場で迅速かつ容易に石綿が入っているかどうかを判断するには、もうこれしかないということで、この機械を採用しております。
     これがその機械になります。近赤外線の反射を利用しているので、黒い建材は吸収してしまいますので、検出ができないというデメリットもあります。あと、これはアスベスト専用ということではなくて、プラスチック等のいろんな資材の検出同定にも使えるものらしいです。その場合はソフトウエアを変えなければいけないようです。値段は500万円弱でした。
     それで、石綿成形板の検査状況ですけれども、事前調査の実施状況としては、約半数の現場で、届け出に記載のない石綿成形板が、この機械を持って入りますと見つかっております。
     それで、そのときの事業者の対応ですが、我々の指導で適正な処理をしていただいております。ただし、この違反の割合というのがなかなかよくならないということがあります。その理由ですけども、まず、業者さんの幅が広くて、条例の周知が難しく、今のところ、施行1年間は周知期間にしようということで、勧告や公表という厳しいところまではしていないので、なかなか徹底されていないということがあるのかもしれないです。他都市の解体業者さんからの、条例を知らなかったのだけどというような問い合わせがいまだにあります。
     それで、ここからは、主に戸建ての解体工事に言えることだと思うのですけども、大きな業者さんが入っているところではこんなことはないのですが、下請作業員の方は、立ち入りをしますと、アスベストがこの辺にあるのではないかなんということはよくわかっているのですけども、元請さんのほうで届け出をちゃんと出していないことがあります。この辺の意思の疎通というか、法令順守意識が欠如しているのかはわかりませんが、そういった状況が見られます。
     あと、そもそも石綿に関する知識が全然ないという業者さんもいます。こんなところに石綿が入っているのですかというような、本当に基本的な、軒天であるとか、そういうところにも入っているかを知らないという業者さんもいます。あと、よく言われるのは、事前調査をする時間がないということで、これについても、契約形態を変えていただくしかないのですけども、要するに、契約から解体まで少し時間を置いてもらうような契約を指導しています。
     また、ちょっとレアなケースになるのですけども、発注者に、もし石綿が入っていたら解体費用が高くなるので、事前調査をするなというようなことを言われたというケースもあるみたいです。
     その次ですけども、5割違反という話でしたが、一応、この違反の状況には大分差があります。内装、外装を含めてきっちり調査していただいたのですけども、トイレのクッションフロアだけを見逃してしまった場合もありますし、内外装のいろんなところから見つかる場合など、いろいろあります。
     あと、よく言われるのは、なぜ川崎市だけが厳しいのかということで、石綿則と同等に作業基準をつくっていますので、そういう訳ではないはずですけども、そういうことをよく言われます。
     先ほどの分析計については、よく興味を持たれます。ただ、500万円だと、大体すぐあきらめますので、安価で専用機みたいなものがあるといいなと私は感じております。
     以上ですが、川崎市からの報告を終わらせていただきます。

    【浅野委員長】 どうもありがとうございました。
     それでは、大阪府の方と一緒に前へお座りください。事務局は場所をセットしてください。
     それでは、内山さん、谷口さん、それから、川崎市の藤田さん、前に並んでいただけますでしょうか。
     それでは、大阪府と川崎市と、二つの団体からご説明をいただきましたので、ご質問がありましたらまとめて差し上げることにいたしまして、どちらに対する質問か、あるいは、両方に対する質問ということか、質問の名あて人を明確にしてご質問をお出しいただけると助かります。
     どうぞ、ご質問おありの方は名札をお立てください。今、お二方が挙げておられます。ほかにいらっしゃいませんか。外山委員。ほかにいらっしゃいませんか。もうよろしゅうございますか。小林委員は。

    【小林委員】 いいです。

    【浅野委員長】 それでは、本橋委員からどうぞお願いいたします。

    【本橋委員】 川崎市と大阪府と両方に実態のことを聞きたいのですけれど、私は実体の相場観があまりないものですから。
     実際に立ち入りが大防法で行われますが、そういう人たちは、人事異動というか、何年ぐらいやっていて、入る人たちの技術レベルは、今の話を聞いてプロだとは思いますが、どのぐらいなのかということを1点、お伺いを両方にしたいです。
     それから、もう一つ、指導をすることも随分あるということですが、戸建て住宅と大きなものは違うと思いますけど、環境省の場合ですと、守る参考として先ほど言ったマニュアルがあるわけですよね。そのマニュアルの内容みたいなことをどの程度業者が理解しているのか。今年の春に最新版が出て、ここにいる委員の人も随分書いていて、具体的にはそれを守ることになっているのですが、その認知度をちょっとお伺いしたいと思います。

    【浅野委員長】 近藤委員、どうぞ。

    【近藤委員】 まず、大阪府のほうですけども、2ページのところで敷地の境界基準として10本/Lとされておりますが、これは基本的に長期曝露の基準だと思うのですが、これを短期曝露の解体工事に適用された根拠といいますか、理由をお聞かせいただければと思います。
     それから、川崎市のほうですけども、20ページのところで、発注者が事前調査を拒むというようなことが書かれておりますが、これに関して、法規制を強化して、事前調査は発注者の責任である、責務であるとするという考え方についてどのようにお考えか、お聞かせいただきたいと思います。

    【浅野委員長】 外山委員、どうぞ。

    【外山委員】 両方の自治体にお聞きしたいのですが、今こういう立入検査をやられている人数を教えていただきたいということと、大阪府さんのほうは、14ページに、要望として、石綿繊維の分析が必要ということが書かれています。並行測定をやられていると思うのですが、これは、やはり、石綿かどうかということを確認しないと業者を説得できないという意味合いなのかという点です。携帯のみの分析では不十分だということでおっしゃっているのかという点と、あと2点、川崎市さんにお聞きしたいのですが、簡易測定器がありますけれども、これは精度管理というのでしょうかね。建材できちんと、スレート板ですとかピータイルですとか石こうですとか、そういったものを見分けられるという精度管理のようなことをやられているのかということと、あとは、成形板のほうで半数の現場で違反ということは非常に重いと思うのですけれども、これに関して、川崎市さんとして、この枠を広げるとか、あるいは、国に対してもっと厳しい規制をしてほしいというような要望などがありましたら、お聞かせください。
     以上です。

    【浅野委員長】 稲垣委員、どうぞお願いします。

    【稲垣委員】 大阪府と川崎市さんには本当にありがとうございました。一つの考え方を出していただいて、ありがとうございました。
     その中で、大阪府さんにちょっとお聞きしたいのですが、1ページのところですが、この表の中で、条例の目的が、石綿の飛散防止という点から言って、この表の一番右にあります石綿なしの欄ですけれど、着手前の事前調査、あるいは、表示というのは問題ないかと思います。条例は飛散防止のためにやるということですが、ここで、石綿がないという結果が出たものに対して立入検査をするという規定がありますけれど、これは条例の目的から外れると思うのですが、法規審査の段階でこれをどういうふうに整理されたのか、少し教えていただければと思います。

    【浅野委員長】 ほかにございませんか。──よろしゅうございますか。
     川崎市のご説明を伺っていまして、立入検査は全件600件なさったというお話ですが、これは届け出であった案件ということになると思うのです。その上で違反というのは内容的にはなんでしょうか、届け出義務違反は対象にならないわけでしょうから、どういう違反なのか。先ほどもちょっとお話がありましたけど、もうちょっとお聞きしないと、どういう違反なのかがよくわかりません。
     それから、大阪府、川崎市の両方ともに言えるのですが、そもそも事前調査義務がかかってはいるのですが、事前調査義務の遵守の有無というのはどこで担保するのだろうという点です。つまり、見つかったときは届けろということだけど、そうでなければ黙っていていいわけですから、事前調査義務違反というものはどういう形で探知されるのでしょうかという点がお聞きしてちょっとわからなかったので、私から追加してお尋ねいたします。
     それでは、ご発表の順番でお願いいたします。大阪府からお答えをいただければと思います。

    【内山(大阪府)】 内山です。
     最初は、本橋委員がおっしゃった、立入検査の人事異動はどのぐらいの周期で、技術レベルはという話だったのですけれど、石綿の立入検査を担当している大気指導グループは、私を入れて10名ですが、そのうち、立入検査を主にやっているのは8名です。人事異動の周期は、三、四年の周期で環境各課を中心に回ります。8名のうち環境系の技術職が7名、1名は事務職です。環境系の技術職は、主に大気、水質、廃棄物等の部署を回り、環境全般の知識経験を蓄積していきます。技術レベルですが、環境系の技術職は、技術的な素養は基本的にもっており、アスベストに対する知識経験の習得を業務やグループの中の研修等を通じてレベルを向上させていきます。
     ──すみません、本橋委員、先ほどの2点目の……

    【本橋委員】 業者は環境省のマニュアルがあるということを知っていますか。

    【内山(大阪府)】 各種講習会での説明でマニュアルの紹介もしておりますので、そういったところに参加してくる業者については周知徹底できているのかなと思うのですが、業界全体になると、そのすそ野まではちょっと把握しておりません。我々のほうとしてはあらゆる機会を捉え、積極的に周知徹底の啓発活動をしているというような状況でございます。
     それから、近藤委員の10本/Lの根拠です。この条例をつくったときに、なぜ10本/Lになったかということなんですが、確かに、WHOの勧告で、10本というのは常時曝露するというようなことですので、こういう解体工事が一瞬にして終わるということから見ると、厳し目ということになるのかもしれないですけれど、ただ、条例ができたのは18年1月施行でございまして、ちょうどクボタショックが17年6月に起こりまして、先ほど紹介しましたように、大体月900件ぐらい苦情の電話、問い合わせがかかってくるような状況で、また、解体等工事の敷地境界の基準がない中で、緩めると思われること自体がその当時は非常に難しかったのではないかと推察されます。はっきりした文言はなかったかなとは思うのですけれど、そういう背景があったのではと思っております。
     それから、外山委員の立入検査──すみません。もう一度。

    【外山委員】 人数はさっきお答えいただきました。あとは、石綿繊維を確認しなきゃいけないというのは、携帯だけの判断ではそういう規制をするのは難しいという、業者を説得できないからですかということです。

    【内山(大阪府)】 石綿繊維の確認……

    【外山委員】 要望の中で、14ページだと思うのですが、石綿繊維の確認が必要だというふうに書かれていると思いますが。濃度規制です。3番目の②、迅速・正確な石綿繊維の分析が必要であるということが書かれていますが。

    【内山(大阪府)】 わかりました。5-3で、大気濃度の測定対象物質の石綿が、6種類ということになっていたかと思うのですが、こういう命令とかの法的措置を生じる場合には、根拠をはっきりしておかなければならないというようなことで、石綿という定義の中に入っているものを測定分析していかなければ、行政措置につながったときに、相手に対して説得力もございませんし、また、業者のほうでも測定していますので、そこに齟齬が生じたときに争いになってしまうというようなこともありますので、石綿繊維に絞って測定分析するのが妥当なのかなというふうに考えております。

    【谷口委員(大阪府)】 稲垣委員の質問は、石綿がない場合において、立入検査をするということになるわけだけれども、それは条例の目的から外れるのではないかという質問ですね。ただ、我々は、当時これを法制文書課と議論したときの経緯まではちょっと今は調べておりませんけれども、当時のクボタショックの直後の制定ということを考えると、そういうところに立ち入って、しっかりと事前調査をしたのか、していないのかということを確認して、情報を地域の方々にフィードバックするということの重要性というのは理解されたのだろうというふうに思います。

    【浅野委員長】 結局、さっき私がお聞きしたのは、この辺で担保という理解でいいのですか。つまり、ちゃんと……

    【谷口委員(大阪府)】 そうです。最後の先生の質問もまさにそのとおりでして、事前調査の義務の違反があった場合においては、そこからしっかりと調査をしてくださいという指導になるということでございます。

    【浅野委員長】 ただ、残念ながら、事前調査を行って、不検出という届け出は必要ないわけですから、誰が調べて不検出であったかというのはなかなか把握しにくいという現実がありませんか。

    【谷口委員(大阪府)】 そうですね。そういう調査の方法が適切だったかどうか。一旦やっておるとして、それが不十分な場合の問題も当然あるわけですから、その辺は大阪府としても何らかの強化は要るのかなというふうに思うわけです。ですので、この制度は、ちょっと説明の中で申し上げたのですけども、大阪府だけ一生懸命やっても、近隣の工事をやられる方々の問題もあったりしますので、全国足並みをそろえないとなかなかうまいこといかないなということが正直に思うところです。

    【浅野委員長】 ありがとうございました。
     それでは、川崎市、どうぞ。──まだありましたか。ごめんなさい。

    【内山(大阪府)】 補足ですけれど、事前調査というのは、今は施工業者に義務づけておりまして、大阪府の提案の中で、そこは第三者機関、中立性のあるようなところにしてはどうかという提案をしています。苦情でよくあるのは、事前調査をやって、看板でアスベストがないというふうな表示をしているけれど、実際問題、正確なのかと、そういうようなことを確認したのかというような苦情です。もし立入権限がなければ、そこへ立入すらできないということになってしまいますので、確認するための立入検査権限がいると思っております。
     以上です。

    【浅野委員長】 ありがとうございました。
     では、藤田さん、どうぞ

    【藤田(川崎市)】 本橋委員のご質問ですが、まず、何年で異動するかということですけど、3年で大体異動になります。職員の技術的なレベルというか技術については、ほとんど化学職が多いです。あと、環境、特に公害関係の職種ですと、薬剤師職とか、あとは、騒音・振動の部署がありますので、電気とか機械とか、そんな人間がいる中で、3年に1回異動しているという形になります。
     ただ、研修は、昨年度にこの条例が始まる前に、JATI協会さんにもちょっとお願いして、実際に建材そのものを見ながら、どういうところにアスベストが使われているのかというような研修も昨年度はいたしております。今年はやっていないのですけども、そんなことも一応しております。
     あと、業者のマニュアルの認知度ですね。レベル1、2の工事をやるような業者さんというのは、大体、当然、マニュアルを熟知している業者さんが多いです。あと、レベル3の現場でも、大きな建物をやるような業者さんは大体見ているような感じがします。戸建ての解体を専門にしているような業者さんですと、まず、マニュアルは見ていないと思います。ただ、手作業、湿潤化とか、養生とか、その辺の三つの理屈だけは理解しているのかなというような気がします。やるかやらないかは別として、一応頭の中には入っているみたいです。そんなところです。
     あと、近藤委員のご質問ですけども、発注者の義務についてということで、もっと義務として厳しく発注者に義務をかけるということがいいのかどうかは、我々もまだそこまでわからないのですが、今のところは、先ほども大阪府さんも言われたように、川崎市だけで厳しくやり過ぎているとよく言われるので、まずは、社会的にこういうことが必要だよという、特に、今の話はレベル3の話になると思うのですけども、こういうことが必要なんですよということが広く認知されることが重要ではないかと思います。

    【近藤委員】 あと、今の件で、逆にどういうデメリットがありますか。

    【藤田(川崎市)】 恐らく、あまり厳しくやると、補助金を出せというようなデメリットが。補助金ですね。支援をしろと。今でも実は言われているのですけども、やらせるのだったらお金を出せよというふうな話になると思います。それがデメリットかなと思います。──よろしいですか。
     あと、外山委員のご質問ですが、立ち入りの人数ですが、私を含めて正規職員が4名と、あと、非常勤の嘱託職員、これは元環境対策部の管理職クラスの方々ですが、その方々が3名おります。それで、現場に行くときには必ず正規職員を1人必ず行くようにして、あとは、測定器で建材を調査するなどの補助業務を非常勤職員にやっていただいています。 あと、測定器の精度管理というか、ちょっとここはもしかしたら私は取り違えているかもしれないのですけども、この測定器は一応1%以上には反応するのですが、何%含まれているかということはわからないということと、あと、19ページのスライドにも書いてあるのですけども、アモサイトとクロシドライトはスペクトルが近似しているので、どっちがどっちという判別はできないのですが、ほかの4種類はどれが入っているかという表示は一応出ます。だから、先ほど言いましたように、どのぐらい入っているかというのはわからないということです。
     あと、違反が半数あるということで国に要望については、違反が多数あるということで、我々としては、今はもう全件現場に行って、この機械を使って調査する以外に手だてはないという状況ですけれども、先ほども申し上げたように、社会的にこういうことが戸建てでも必要だよと、もう既に法制化をされているはずですが、必要なのだということが認知されると、この違反ももっと少なくなっていくだろうと思っていますので、国としてやっていただけると我々としては助かると思います。

    【浅野委員長】 外山委員、何か。まだお答えが十分でなかったような気がするのです。

    【外山委員】 精度管理のほうは、つまり、含有がはっきりしているような材料をこれで調べてみて、きちんと入っているということがわかる、あるいは、入っていないということがわかるというようなチェックの仕方をしていますかというような意味です。

    【藤田(川崎市)】 それは一応しています。あと、サンプルをメーカーのほうでつくっていまして、それぞれの繊維で1%ぐらいとか5%とか、それで1%反応するということは、一応、確認したものを納入していただいております。

    【浅野委員長】 いいですか。
     では、中橋委員、どうぞ。

    【中橋委員】 もう川崎市さんに先ほどお答えを聞いたような気がするのですが、20ページの最後のほうの事業者の対応状況、一番下に極端なのが出ておりますが、発注者が事前調査を拒む、工期とかお金の問題です。そういう状況があって、先ほどお答えを聞いたような気がしますが、そうした場合にどのようなご指導をしていくのかというようなこと。それと、藤田さんのお話の中でも、最後の締めくくりの中で、規制が強くなると、オーナーさんというのでしょうか、施主さんというのでしょうか、どんどんお金や工期のことで後ろ向きみたいなとらえ方を私はしたのですけれども、それも絡めて、先ほどお伺いいたしましたが、そうした場合に、発注者さんにどんな程度の指導を、どのようなご指導を今後されていくのかと。

    【藤田(川崎市)】 今のところ、発注者に対する指導はしていないです。元請さんに、発注者の方に説明していただいて、ちゃんと事前調査ができるような契約にしてくださいねというような話をしているということです。

    【浅野委員長】 わかりました。
     では、他のご報告者の方々にも前に座っていただいて、さらに総合的な討議をいたしたいと存じます。
     今の続きですが、発注者が拒むというのは、森ビルの話を聞いていると優良発注者としては考えられないのですが、現実にありそうですね。これはどうすればいいとお考えでしょうか。

    【中島(森ビル)】 これは、先ほど私がお話ししたのは、ある意味、よそに仕事にいろんな営業に行ったときに受けた感触から申し上げたのですけれども、小さな物件をお持ちの方というのは多数いらっしゃるのです。個人オーナーなんかだとか、こういう方々というのは、なかなかそういう、リターンのないものに対する投資はあまり積極的になさらないのが実際にございます。ましてや、今みたいに、景気がちょっとこういうふうになっているときは、すぐその辺が後ろ向きといいますか、優先すべきものとは何だろうといったら、利益を上げるためには、あいている部屋はお客さんを引っ張ってくるということが第一優先であって、そのために、アスベストの存在が果たしてどの程度効果的なのかというところは、そうそう理解されていないと思います。だから、私も申し上げましたけども、広く認知していただくのも一つですけれども、逆に、間違った認識をなさっている方々も、大多数の方がいらっしゃいます。この方々に正しい理解をしていただいて、やっていくことによって、例えば、除去することによって物件の製品としてのバリューが上がるということが商品PRとしてできるのであれば、オーナーさんも積極的に協力されるのではなかろうかと思います。
     今の川崎市さんの、確かに難しいよねというのは、何かわかるような気がします。結構、分析してもすぐ結果は出ませんし、では、どこを分析すればいいのかという、そこから始めなきゃいけないとなると、正直言って、言われた元請さんもきっと困る話ではないかなと思うのです。では、誰に相談したらいいのだろうといったときに、よくコンサルタントという会話が簡単に出てくるのですけども、コンサルタントの人たちはそれで収益を得るというものなので、結構過大なお話をされることがあって、本当にエンドユーザーの気持ちをくみ取って適切なアドバイスをなさる方がいらっしゃるのかもしれませんが、悪くとらえれば、そういう見方もできるのです。
     そういう意味で、私がお話ししたのは、指導をなさるお役所の中においてそういう相談を受けられる窓口があって、ちゃんといろんなことで正しく相談に乗っていただければ、実際にやる段になっても、オーナー側は相談しやすいのではと。かつ、元請側も相談がしやすいではないなと、私見が随分入りますけども。

    【浅野委員長】 ありがとうございました。それは、行政の側としては、そういう相談窓口と言われたときにどうなりますでしょうか。大阪府、川崎市それぞれどうぞ。

    【谷口委員(大阪府)】 この問題は感覚的に土壌汚染の問題に極めてよく似ているなというふうなことを思っていまして、それで、土壌汚染の法律が改正を最近されたわけですけど、そのときに大阪府の条例も改正したのです。実は、土壌汚染に対する相談です。法、条例の相談ではなくて、自主的な調査についての相談というものの件数がものすごく多くて、それの対応をうちの職員は随分したのですけども、その対応の仕方が、法でもない、条例でもないということで、相手さんのお話をよく聞いて、これがいいのかなということで説明するのです。そのことがかえって、広く世間で考えられているものと違うものにつながっていって、土地所有者さんに迷惑をかけるというようなことを心配したわけです。ですので、条例において、大阪府は土壌汚染の相談を受けますよ。その相談を受けたときには、条例の基準とか制度とかに準じてアドバイスしますよという制度をつくったのです。
     今回のこのアスベストも同じようなことではないかなと思っていまして、相談には基本的に役所は受けるべきであるというふうに、まず思います。ですが、いろいろお話を聞いて、最も適当な方法をアドバイスしてよいのかと考えたときには、やっぱり、環境省のマニュアルとか、そういったものに基づいた話、すなわち、これは、誰に相談しても答えは一緒ということが非常に重要なのではないかと。そういう意味合いにおいて、これは、役所だけが相談の相手になるわけでもなく、専門家、要は、マニュアルをよく知っている専門家であれば、誰でも相談相手になるのではないかなというふうに思うわけです。ですので、そういうことができるものを一つ登録とかいうようなことで法的に位置づけてあげるということが重要ではないかなと思います。

    【浅野委員長】 川崎市はいかがでしょうか。

    【藤田(川崎市)】 相談については、先ほど、発注者が事前調査を拒むというような話をしましたが、これは戸建ての解体工事でこういう件があったということですけども、戸建ての工事の場合で、発注者の方が、要するに個人の方になると思うのですが、そういう方が市に相談をされてきたということはほとんどないです。そういう場合には、ほとんど元請業者さんということになります。あと、大きな工事であれば、もちろん発注者の場合もあるし、元請さんの場合もあるということで、相談が来れば、条例の話と、作業方法については環境省のマニュアルを遵守ということで案内をするというところで相談を受けています。

    【浅野委員長】 外山委員、NPOの役割は、こういう相談のときに何かありそうですか。

    【外山委員】 私たちも本当に微力でというか、調査ですとか、東京都の自治体から依頼を受けてアスベストの除去の監視というのでしょうか、そういう立入検査を請け負ったりしてやってきています。
     第三者が入っていくということがやっぱり重要なのかなということと、何でしょうね。第三者が入っていくということと、先ほど大阪府さんの話がありましたが、それなりに根拠のあるというか、アスベスト繊維の濃度測定をしても、携帯だけでやっぱり不十分で、きちんと規制するためにはそれなりの根拠が必要だということもそうですし、リスク評価にしても、科学的な根拠のあるものを示していかないといけないなというふうには思っています。
     村山先生の話がありましたけれども、私、佐渡の両津小学校というところでアスベストの事故がありまして、そのリスク評価をやらせていただいたのですが、その中でも、そういう事故が起きてしまってからリスクを評価するというのは非常に大ざっぱでしかできないですし、濃度測定も限界がありますし、過去のそういう疫学調査のメタルアナリストとかも限界があるので、非常に限界がある。でもやっぱり科学的にやらなきゃいけないし、それをきちんと公開していくということが大事だと思いますので、NPOの役割ということで言うと、そういう第三者性というか、公平性というか、そういったものがあるのかなというふうに思います。

    【浅野委員長】 ありがとうございました。
     内山先生、今日は二つリスクの話がございましたが、コメントがありましたら。

    【内山委員】 敷地境界の基準については、村山先生、それから内山先生おっしゃったように、あの当時は、環境省が参考にしたのは1986年のWHOと1987年のWHOの報告書だったと思うのですが、あのときは、大都市が1本から10本の定性評価では、そのぐらいの濃度のときには、リスクを明らかにするのはなかなか難しいと。それを見ると、日本ですと、大体50人程度がその当時は中皮腫になっていたので、それを疫学調査で明らかにするということは、これはもう到底無理な話だったので、その程度の段階で村山先生は多分リスク調査、アセスメントをやられて、私が一つ今まで知らなかったのは、その当時はもうクロシドライト系が使われなくなるから、今後はクリソタイルが中心だと。そういう工場の敷地境界の値が10本/Lで、しかも、その当時、環境省は敷地境界と、工場の中は当然大気汚染防止法なり、環境省の管轄外ですので、住民が住まわれる方は20メートル、50メートルのいわゆる緩衝地帯があると。その間に拡散していくから、居住区は大体1本ぐらいだろうという感覚で敷地境界基準をつくられたというふうに、私が調べた範囲では伺っています。
     ですから、私は、最初から室内濃度に使い、それから、解体現場の敷地境界というのも、そのすぐそばを人が通っているわけですから、それにすぐに当てはめるのは、これは解釈が違うだろうということは前からお話ししていたので、川崎市のほうが、逆に言うと、0.1本ぐらい、0.2~0.3本の現状で、むしろ、あんな現状は10-5ぐらいのリスク、いろいろな批判もありますけど、大体10-5リスク、これがベースにあるのだから、それ以上解体現場なり、それから、工事現場から出さないということは、リスクを押し上げるということを考えると、それが一番合理的なのかなという感じはしているところです。
     あと、もう一つは、川崎市のほうで、事前調査で大体5割が、事前調査の結果と川崎市が立ち入られたときに違うということ。事前調査なり、それから、測定を誰がやるかということがまず一つと、それから、どのぐらいの専門家なりアドバイスをされている方がやっているかというのは、第1回のときから問題になっていましたけど、今後はこれが非常に重要かなという気がいたします。ですから、森ビルのほうは非常にやってくださっているのですが、多分、測定の機関は発注者のほうが指定しているのですかね。

    【中島(森ビル)】 まず、発注者のほうで事前に分析をかけて、その結果をもってやっているケースが一つと、あとは、元請施工者の中で選んでくるケースも二つありますけれども、ただ、どこでもいいというわけではなくて、先ほども言ったように、どういう実績を持っている、どういう認証の資格を持っている等々を確認した上でゴーをかけているというのが実態ですね。

    【内山委員】 そこら辺が非常に重要だろうという。

    【浅野委員長】 神山委員、何かコメントありますか、どうぞ。

    【神山委員】 今のリスクの話ではないのですが、先ほどの大阪府さんのほうで、建材吹付け等のアスベスト除去問題というのは土壌汚染問題とよく似ているというお話は非常に興味深いのですが、よく考えますと、それは、発注者が建物をリユースする場合はそうだろうなと思うのです。建物からアスベストを除去してしまう、そうすると、より安全な建物になる。土壌のほうも、VOCとかいろんな有害物を除去すれば土地の値段が上がるという意味で、よく似ているなと思うのですが、建物の解体、消えてしまうという問題については、発注者はなかなかそういったモチベーションを持てないのではないかなと。その際にどんなモチベーションを、ただ単に余計にお金がかかると、先ほどからクレームが出るという話ですが、そこをどうクリアしたらいいかという問題について、難しい問題ですけど、何かアイデアがありましたら。

    【浅野委員長】 それでは、これで最後にしたいと思いますが、いかがでしょうか。

    【谷口委員(大阪府)】 正直、アイデアはないです。非常に難しいと思います。土壌汚染の場合は、水質汚濁防止法上の有害物質を使う特定施設が廃止になったら、その後に土壌汚染の調査をしないといけないと。廃止になるということは、業をやめる可能性もあるのです。要は、新たな展開のために土地利用をするから土壌汚染を調べるというのではなくて、やめる場合もあったりして、そのときは非常に土壌汚染の調査費を出すのが困難な状態が生じてきます。
     アスベストの場合、解体もしくは改修とか、いろいろなケースがあろうかと思うのですけども、普通は解体して次のものを建てるということですから、新たな事業活動をスタートすると。そのための第一歩が解体だと。そう考えたときに、新たな事業をやるときの総経費の何ぼかは、やっぱり環境配慮のために投資してほしいなというのが心の底にはあるのですが、環境配慮のための投資が、施主さんの思っている範囲内におさまるかどうかというところで、なかなかそこがうまいことおさまらないから、うまくいかないのだろうと思うのです。できたら、これはアスベストとは全く関係ところではあるのですけども、そういった場合に、例えば、総事業費の5%は環境投資しようぜとかいうような、そういう普及啓発というものができればいいなというふうには思うのですけれども。

    【浅野委員長】 ありがとうございました。
     村山先生にもまだコメントをいただきたかったところですが、そろそろ時間になりました。
     今日は大変貴重なご発表をいただきまして、私どもの今後の検討に役に立つ情報をいろいろお与えいただきましたことを心から感謝申し上げます。どうもありがとうございました。
     それでは、その他について、事務局から何かありましたら、どうぞ。

    【栗林大気環境課補佐】 前回の専門委員会でもご説明させていただき、ご了承いただいておりますけれども、9月19日に、大気環境部会でこの委員会等の中間報告を行わせていただきます。そこでは、この3回のヒアリングの概要、それから、これまで委員の皆様から出された意見等を整理して説明する予定にしております。その部会後に、ヒアリング概要、それから、ご意見等踏まえて、この委員会報告骨子案として整理させていただきまして、次回9月26日の第5回専門委員会でご検討をお願いしたいと考えております。
     以上でございます。

    【浅野委員長】 それでは、ただいまのその他について、何かご意見はございますか。外山委員、どうぞ。

    【外山委員】 二つほどちょっとご相談ですけれども、ヒアリングを3回行いまして、やはりちょっと、後からもう少し聞きたいなというようなことが二、三出てきておるのですが、例えば、期限を切ってやりとりをすることが可能かどうかということと。

    【浅野委員長】 わかりました。それはお願いできると思いますので、ちょっと事務局に、追加の質問をいつまでに出せということについて、期限を決めていただければ。

    【栗林大気環境課長補佐】 できましたら、1週間程度でお願いしたいと思いますので、来週、来月9月3日でしょうか、3日の月曜日までにお願いいたします。

    【外山委員】 わかりました。
     もう1点よろしいでしょうか。

    【浅野委員長】 はい、どうぞ。

    【外山委員】 この委員会が始まる当初に事務局にはお願いをしたのですけれども、国土交通省で、今、新しいアスベスト調査の資格制度を立ち上げるということが一部公表されているのですが、これをヒアリングしたらどうかという話を私は差し上げたのですが、時期的にまだ公表段階ではないということでお断りされているという状況ですが、9月初めに公表されるということを聞いておるのですけれども、この委員会の本橋委員、そちらのほうも参加されていると思いますが、こちらのほうのヒアリングなり情報収集なりは必要ないでしょうか。

    【浅野委員長】 わかりました。それはちょっと事務局と相談をさせていただきます。
     では、よろしいでしょうか。
     では、ちょうど時間になりました。本日はどうも長時間ありがとうございました。

    【倉谷大気環境課補佐】 本日は長時間にわたってのご議論をありがとうございました。
     以上で本日の会議を閉会させていただきます。ありがとうございます。