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中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会
 第16回浄化槽専門委員会議事録

平成18年6月15日

午後1時59分 開会

○松原浄化槽推進室長 定刻になりましたので、ただ今から第16回浄化槽専門委員会を開催いたします。
 議事に入ります前に、お手元の配付資料を御確認願います。資料一覧をお手元にお配りしておりますので、資料の不足がございましたらお申し付けください。
 それでは、これ以降の議事進行につきましては、委員長にお願いしたいと思います。

○加藤委員長 どうも皆さんこんにちは。
 今、松原室長の方からお話がありましたように、今日は久しぶりで全委員が御出席のはずでございます。山本さんは少し遅れられる。多分、北尾さんも間もなくいらっしゃるのではないかなというふうに思います。
 西日本の方で相当大雨が降っている。木曽さん、新幹線が遅れているとか、そういうことはないのですか。

○木曽委員 そういうことはないと思います。

○加藤委員長 西日本の方は、何か大雨だそうですが、先日、つい数日前まで、短い期間アメリカにおりましたら、アメリカはハリケーンシーズンに入ったということで、今、フロリダに小さな熱帯性低気圧が来ているのですけれども、昨年のカトリーナとか、ああいう大きな被害を受けているものですから、アメリカのテレビは、ずうっと小さな熱帯性低気圧にもかかわらず、これが果たしてハリケーンになるかどうかとか、かなり手厚い報道をしておりましたけれども、果たしてどうなったかわかりませんが、仮にハリケーンに成長すると、アメリカの観測史上で最も早いハリケーンになると報道しておりました。どういうことになるか、あるいは、なりましたか、私、その後の、ここ二、三日の動きはちょっと存じませんけれども、いずれにしてもいろいろと天候不順ということのようです。
 しかし、当専門委員会は天候不順ではなくて、いよいよ健全な水循環の構築という、重要なテーマに入っていきたいというふうに思います。これは特に須藤先生の大事な、大好きなテーマでもありますので、須藤先生は、今日は最初から御在席でいらっしゃいますので、非常に楽しみにしております。
 というわけで、今日は、水循環の構築というのと、もちろんそれに果たし得る浄化槽の役割、あるいは果たすべき浄化槽の役割について、事務局の方からいろいろな大変貴重な資料が出されていますので、それを聴きながらみんなで議論しようということですが、その前に、前回の専門委員会の席上、松田さんの方から宿題を事務局が頂いた格好になっています。それは資料でいいますと、資料1ということで、今後の浄化槽行政の在り方、これは平成5年に当時の厚生省の専門委員会から出た資料についてのその後の動きを、前回報告したところ、もう少しその後どういうふうに行政に反映されたのか、事務局から説明をもうちょっと詳しくしてほしいというのが、松田さんの方からありましたので、それに対して、まず室長の方から御説明いただけますか。

○松原浄化槽推進室長 資料1は、前回配布した資料とほぼ同様です。資料2が新しい資料で、資料1の該当部分に資料2の該当部分の番号を付しています。
 まず資料1の1ページの第2(1)集落等を単位とした面的整備については、平成6年度に市町村整備推進事業を創設し、推進しているところですが、資料2の1ページにおいては、市町村整備推進事業の実施状況を掲げてございます。一番下の欄にございますように、平成17年末現在において、205の市町村がこの事業を実施しております。また、同様に、平成18年度に更に36の市町村が、平成19年度に更に25の市町村がこの事業を実施する予定です。2ページには、浄化槽整備事業の推移を掲げてございます。平成18年度予算においては、市町村設置型として117億円余りを計上しております。
 資料1の1ページ第2(3)既設単独処理浄化槽の合併処理化については、平成18年度から単独浄化槽から浄化槽への転換の際の撤去費用を助成対象化したところでございますが、これに対する対応については、現在、多くの地方公共団体において、条例、要綱等の見直しが行われつつあるところでございますので、資料2の3ページ及び4ページにおいては、地方単独事業を掲げてございます。4ページの一番下の欄にございますように、平成17年末において255の市町村において既設単独処理浄化槽の撤去等に対する補助が行われております。
 資料1の2ページ(4)生活排水処理計画の実現のための住民指導の在り方については、平成12年の浄化槽法の改正により、単独処理浄化槽の新設について原則として禁止されるとともに、既存単独処理浄化槽について浄化槽への転換等に関する努力義務が課されたところでございますが、資料2の5ページにおいては、同年の浄化槽法改正について掲げてございます。改正の趣旨については、単独処理浄化槽は、雑排水を未処理で放流するのみならず、し尿に係る負荷も大きいため、水環境の保全上大きな弊害となっていることから、生活排水対策への社会的意識の高まりを踏まえ、単独処理浄化槽の新設廃止のための法的措置を講ずるものとされています。改正の内容については、まず浄化槽の定義の変更で、し尿のみを処理する単独処理浄化槽を浄化槽の定義から削除し、し尿及び雑排水を処理する合併処理浄化槽のみを浄化槽としております。また、浄化槽の設置義務化として、下水道予定処理区域を除き、浄化槽の設置及びこれによる生活排水の処理を義務づけております。そのほか、既存単独処理浄化槽の使用者に対して、浄化槽への設置換えに努めなければならないとされております。この改正は、平成13年4月1日から施行されております。
 資料1の2ページ(6)広域的調整等については、汚水処理関係省庁連名で、都道府県に対し、平成7年に都道府県構想の策定を、平成14年にその見直しを、それぞれ、通知したところでございますが、資料2の6ページにおいては、都道府県構想の一覧を掲げてございます。すべての都道府県において都道府県構想が策定され、多くの都道府県において見直しが行われております。
 資料1の2ページからの第3(1)浄化槽の維持管理の課題については、法定検査の受検率の低い地域にあってはその向上のため努力する必要があるとされておりますが、資料2の7ページにおいては、法定検査の受検状況を掲げてございます。一番下の欄にございますように、7条検査については8割以上となっておりますが、11条検査については全数で2割弱、合併処理浄化槽のみでも4割余りとなっております。
 資料1の3ページ(3)浄化槽設置者等の組織による適正かつ効率的な維持管理については、一部の市町村により、維持管理組織についての取組が行われておりますが、資料2の12ページ及び13ページにおいては、維持管理組織の設立状況を掲げてございます。13ページの一番下の欄にございますように、154の市町村において維持管理組織が設置されております。
 資料1の3ページ(4)浄化槽汚泥の処理等については、資料2の9ページにございますように、平成15年度において1519万キロリットル余りの浄化槽汚泥が処理されているところでございます。
 以上でございます。

○加藤委員長 御苦労様でした。
 松田さん、何か追加的なコメントなり御注文なりありますか。今のところ、よろしいですか。

○松田委員 今のところ……。

○加藤委員長 ほかの委員の先生方、よろしいでしょうか。
 毎回、気がつくことですが、自治体によって随分差があるなという感じは相変わらずしますね。法定検査の状況、非常によく頑張っているところもあるし、余りやっていないところも相変わらずあるし、維持管理組織なんかも、例えばこの表だけを見ると、長野県なんか、かなりきめ細かくやっているけれども、ほとんどやっていないところもあるという具合に、それは別にたくさんやっているからよくて、やっていないから悪いという単純なことではないですが、ただ、相当自治体によって施策が随分違うなと、こういう審議を通じて、こういった資料がいろいろと公表されていくとか、そういうことを通じて、少しずついい意味で水準がそろってくるといいなという感じは持ちますけれども、それについては、また改めて皆さんと議論したいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは、今日の先ほど来、言っております本題である健全な水循環の構築に向けての浄化槽の役割について、審議をしたいと思います。これにつきましても非常に詳細な資料が事務局の方から用意されておりますが、まず資料の3と4あたりから、ひとつお願いできますか。

○松原浄化槽推進室長 資料3は、環境保全上健全な水循環の構築に求められる浄化槽の役割に関する論点の例でございます。
 まず環境保全上健全な水循環の構築への浄化槽の貢献については、浄化槽の水質保全、水量維持、水生生物との共生、水辺地の保全等に対する貢献をどのように評価できるかということが考えられるのではないかと思います。
 また、浄化槽が特に貢献する流域や地域については、大河川の大規模な流域、小河川や大河川の支流等流域の規模などによる貢献の度合いについて、又は山間部、都市部等地域条件による貢献の度合いについてどのように評価できるかということが考えられるのではないかと思います。これは、浄化槽は、特に大河川の支流、小河川等又は山間部等において特に有効であると言えるのではないかという問題意識によるものです。
 資料4についてでございます。
 まず環境保全上健全な水循環とはということでございます。
 1ページにおいては、第三次環境基本計画の水循環部分の抜粋を掲げてございます。水質、水量、水生生物及び水辺地について、掲げられたような状態を維持することが重要であるとされています。
 次に水質及び水量についてでございます。
 2ページにおいては、浄化槽の放流水質実態調査の結果を掲げてございます。これは、先般の浄化槽法改正が行われる前の結果でございますが、ほぼBODの濃度が20ミリグラム毎リットル未満となっております。
 3ページにおいては、既往文献による中小河川等における汚濁物質の自然浄化能を測定点での負荷量を汚濁源からの排出負荷量で除した流達率でまとめてございます。下の表の一番下の欄にございますように、BODの平均で3割程度となっております。
 4ページにおいては、浄化槽からの排出量を掲げてございます。下の表の一番下にございますように、住宅汚水の標準的な水量は、1人1日当たり200リットル程度となっております。
 5ページにおいては、浄化槽設置基数の変化による流量の変化を推定してございます。坂月川においては、平成15年の河川水量は1日当たり9000立方メートル程度でございますが、同年の汚水処理を浄化槽で行った場合は1万6000立方メートル余りとなると推計されます。葭川上流域においては、同年の河川水量は同じく1万6000立方メートル程度でございますが、汚水処理を浄化槽で行った場合は2万6000立方メートル余りとなると推計されます。
 7ページからは、浄化槽整備による水量回復等のイメージで、モデルのようなものができないかという話もございましたので、あえて作成するならばということで、極めて単純な前提を置いて計算を行っております。7ページにおいては、浄化槽整備による水量回復のイメージを掲げてございます。整備前においては、水量が140立方メートルであったものが、整備後においては、150立方メートルとなります。8ページにおいては、浄化槽放流水による河川の水量保全イメージが掲げてございます。浄化槽で8割の整備を行うと、水量は148立方メートルとなりますが、排水を流域外に行うと、水量は84立方メートルとなります。
 9ページからは、水生生物との共生事例についてでございます。
 10ページにおいては、兵庫県多可町加美区の事例を掲げてございます。同区においては、最上流部の集落がいち早く浄化槽整備を始め平成17年度末には392基設置されるなど汚水処理に関する取組が行われています。町の南北を貫流する杉原川やその支流の水質も改善され、減少していたホタルも年々増加し、今では阪神間からもホタルの見学に訪れているということです。また、ばいかもの花も見られるようになっているとされています。11ページにおいてはその写真を、12ページにおいては詳しい状況を、それぞれ、掲げてございます。
 13ページにおいては、島根県邑南町の事例を掲げてございます。邑南町を流れ江の川に注ぐ出羽川には、国の天然記念物であるオオサンショウウオや絶滅が危惧されるオヤニラミが生息しているということです。平成10年まで水質が徐々に悪化する傾向にありましたが、流域の浄化槽事業等により、近年BOD値が低下し水質が改善されているとされています。
 14ページからは、徳島県吉野川市の事例を掲げてございます。15ページにおいては、同市における浄化槽整備の概要を掲げてございます。16ページにおいては、ホタルの保護について、様々な規制等が行われているなかで、浄化槽整備による水環境の保全は必要不可欠であり、確実に成果をあげているものと思われるということです。
 18ページからは、水辺地の保全事例を掲げてございます。
 19ページにおいては、愛媛県四国中央市の事例を掲げてございます。同市においては、平成2年度から約3000基の浄化槽が整備され、整備人口は1万人に及ぶということです。これにより、平成13年度からは、土居町を流れる関川中流域において、ホタルの数が格段に増加しているとされています。また、以前は垂れ流し状態で水質悪化が著しかった旧川之江市を南北に流れる金生川中流域において、数年前から、アユの放流を始めたということです。
 20ページからは、同県上島町の事例を掲げてございます。23ページにおいては、同町における浄化槽整備の概要を掲げてございます。24ページにおいては、浄化槽等の導入による水環境の改善が掲げてございます。上島町の海辺環境は、生活排水が垂れ流されていたため、汚濁が進んでいましたが、浄化槽等の導入により、水質が改善されてきたということです。
 26ページにおいては、島根県津和野町の事例を掲げております。津和野川においては、生活環境の変化により水質が悪化し水質の改善が急務となっていましたが、平成4年度から浄化槽の整備を開始し、年間約20基の整備を行った結果、近年徐々に水質が改善する傾向にあり、多くの観光客が水に親しんでいるということです。
 27ページにおいては、佐賀県唐津市旧七山村地区の事例を掲げております。同地区においては、平成15年、農業集落排水事業地域以外の集落に浄化槽市町村整備推進事業を導入し、3年間で130基の浄化槽を設置したということです。同地区の中央を流れる玉島川も以前の清流に近い水質になりつつあり、ヤマメ、アユ、ツガニ等の淡水魚が少しずつ増え始めたとされています。一番の効果は、清流が戻ることにより、福岡市を中心に都会の子どもたちが同地区にある親水公園で川遊びや川泳ぎをする姿がたくさん見受けられ、「清流と緑の自然公園の村」のイメージが実現されたことにあるということです。
 以上のとおり、浄化槽は、環境保全上健全な水循環の構築に貢献する可能性が大いにあるのではないかと考えておりますが、御意見を頂ければ幸いでございます。

○加藤委員長 どうも御苦労様でした。
 非常にたくさんある資料を短時間で御説明いただきましたので、ちょっとわかりにくい点もあったかと思いますが、要は、浄化槽は、当然ながら、いろいろな効用といいますか役割があって、快適な生活環境であるとか、もちろん水洗便所が使えるとか、いろいろなことがありますけれども、重要な一つは水循環の構築だと、水循環を非常に健全な形で維持できるというわけであります。今、御説明いただきましておわかりのとおり、では、健全な水循環というのは一体どういう視点から見たらいいのかということについては、資料4にありまして、須藤委員が主として中央環境審議会の他の部会で頑張って、水循環の項目を大きく四つほど分けていらっしゃる。これが資料4の1ページに出ているとおり、水質の観点、水量の観点、水生生物の観点、水辺地域、そういった観点でどうかと。もちろん水質、水量を確保するのは、何も浄化槽だけではないわけですが、浄化槽がどういう役割を果たし得るかという観点で見ようと。それから、特に浄化槽が活躍できる場、あるいは流域なり地域があるわけですが、それが、例えば事務局の整理によれば、こういうところが考えられるのではないかということが資料3の後半部分に出てきているというわけであります。
 以下、資料4にそれぞれに関係して、実測値ないしは実測値に基づく一種のモデル計算みたいなもの、特に資料4の5ページ、6ページあたりにありますのは、仮にやった場合ということで、例えば資料の5ページでいきますと、平成15年度を浄化槽で整備した場合の河川の水量及び水質というものを現実の姿と比較してみるとこうだと。簡単に言うと、水量はかなり当然ながら維持できる。汚水の発生地で浄化した水を、また環境に戻すというのが浄化槽の貴重な役割ですので、当然といえば当然ですが、水量はかなり確保できる。下流の方へ持っていってしまって処理をするという場合には、場合によっては水量がかなり減ってしまう場合があり得るけれども、水量が確保できる。それから水質的にも遜色がないはずだと、そういう計算が出ております。そういったものを、もうちょっとモデル的に7ページ、8ページ、そういうところで出しているというわけでございます。これにつきましても、もちろん後で委員の先生方から、こういうやり方が果たして適切かどうかとか、そういうことを含めて御指摘、御指導、御意見を頂きたいと存じます。
 それから、水生生物としては、今お聴きのとおり、非常にわかりやすいということでホタルの例が出ています。市民感覚でいってもホタルが飛び交う里というのは、非常にいい環境の里と、わかりやすいということで、ホタルについて、簡単に言うと、浄化槽を導入したらホタルが戻ってきました、ということが自治体のレポートにあるというわけであります。ただ、浄化槽とホタルがもちろん単純に結び付くわけではないわけです。ホタルが戻ってきたからといって、浄化槽のせいかどうかわからない。農薬を使わなくなったとか、たまたま気候がよかったとか、いろいろなことは考えられますけれども、地元の方々は、よかった、よかった、浄化槽などのおかげであると喜んでいらっしゃる。では、ホタル以外の生物はどうだということになると、ちょっとわかりにくいものですから、わかりやすいホタルの例が非常に出て、アユの話も出てきますが、そういうようなことで、自治体の、いわば生活実感としては、やっぱりよかったな、ということが出ているのかなと思います。これにつきましても、そう単純に喜んじゃだめだよとか、そういういろいろな御意見は専門家の皆さん方からあるかもしれませんが、それは、ひとつお寄せいただきたいと思います。
 それから、室長にちょっとお伺いしたいのですが、資料3の流域地域のことについてのあれは、後の方の資料に出てくるのでしょうか。それとも、この中に今の事例の中に読み込んだということでいいのですか。資料3の後半部分の流域と地域の話。

○松原浄化槽推進室長 直接対応している資料はないかもしれませんけれども、例えば流量の変化や水量回復のイメージに関する資料にございますように、特に小河川等においては生活排水が無視できないことから、特にそういったところにおいては浄化槽が効果的であるという御議論が成り立つのかもしれないと思っております。

○加藤委員長 わかりました。
 というわけで、私の解説は余分だったかもしれませんが、若干付けましたが、これ以降、先生方から何なりと御意見を頂きたいと存じます。いかがでしょうか。
 それでは、須藤さんあたりに口火を切っていただけますか。

○須藤委員 どうも御指名ありがとうございます。
 健全な水循環の確保ということで、基本的にはここに書いてあるとおりで、私はツールとしては小規模分散型の生活排水処理施設が、ほかの大型のものに比べて極めて貢献が大きいだろうという位置づけで、これを取りまとめていくときの基本的な視点に立たせていただきました。
 そういうことなのですが、先ほどからいろいろ御説明がありますように、水質へも、水量へも、生物へも、水辺地へも、というような貢献度が高いとは言いつつも、じゃあ、どの程度貢献があるのか、要するに健全な水循環の指標となるか、尺度になるか。水質だったらBODとか、窒素とか、燐とか、そういう濃度でいいわけです。しかしながら、健全な水循環ということのイメージとしては、確かに小規模分散型がいいというところの説明はここには書いてないですが、取水したところの量と同じ量をできるだけ使ったところへ戻しなさい、そして水質は元の水質へ戻して戻しなさい。これが基本的な健全な水循環の姿だと、私はそのとき理解していたのです。しかしながら、従来はそうではないことが多かったですよね。そういう中で健全な水循環というのを、これは総合政策部会だったですか、九つの基本計画重点項目の中で指標をつくってきなさいと言われたのですが、健全な水循環の指標というのを、何回か議論したのだけれども、水環境の専門の先生、決して水質だけではなくて、専門の先生においでいただいていっぱい議論したんだけれども、水量とか、水質とか、ここに書いてあるようなことは言えるのだけれども、では、それが本当に健全な水循環なのか、指標になるのかということは、結局、結論が出ずに、今後、健全な水循環の指標をつくりましょう、つくるためには、今言われているような、例えば湧水の復活の状況を調べましょうとか、それから、放流水の再利用をどの程度しているかを調べましょうとか、雨水の再利用をどのぐらいやっているかとか、そういうことをだんだん積み重ねていけば、そのうちに健全な水循環の構築がどの程度であるかということの定量化ができるだろうという議論で、ただし、委員長からの御質問である、浄化槽の役割は、多分、小規模分散型がいいだろう、そこに本当は、私は「浄化槽」というふうに書きたかったのだけれども、なかなか、5省の連携した、最後は内閣から出る環境基本計画なので、5省全部が合意をしなければいけないので、「浄化槽」というふうには書き切れなかったんですが、「小規模分散型」のというぐらいのところは確かに書き込んだ部分がございますので、読み方によっては、浄化槽がこれに貢献するというふうになって、今日頂いた資料を拝見してみると、おおむねそのとおりになっているんですが、ただ、何かちょっと我田引水しすぎるかなという気が、一つ一つ見ていくと、例えばホタルなんかにしても、御承知のとおり決して水量と水質ではなくて、周囲のHABITATの問題があるやら、農薬の問題があるやら、様々な活動があって、そんなに水質が効くものでもないし、水量が効くものでもないですよね。
 ですから、そういう意味で、これだけの姿を見ますと、浄化槽、最もよろしいというふうにとれるのだけれども、もう少し精査して、今後、浄化槽が、本当に小規模分散型が健全な水循環の確保にふさわしいのだということを、今日ではなくていいのですが、どんどん蓄積をしていかないと、論破されてしまう可能性もなくはないかなという気がしなくはないので、その辺は、ちょっと気にはなりますが、当然、哲学としては、だれもそう思うし、例えば大量の下水を下流が流しておいて、ポンプで上流に持っていって、これで水循環という話もなくはなかったのですよ。そういうのに比べて、それは当然費用の点、エネルギーの点、いろいろなことを考えても、それは妥当であるというのはだれでもわかるのですが、その定量化が余り示されていない。
 もう一言付け加えますと、浄化槽推進室のお仕事はどれで評価されるかというと、この環境基本計画で達成しているかどうかということで、多分これから行政評価されるだろうと思うのです。そうなったときには、今のことをきちっとやっておかないと、浄化槽が何基というだけのことでは済まないのかなと。要するに、環境基本計画をどれだけ満足したのかなというのが、行政評価の指標になるはずでございますので、そういう意味では、きょうの議論というのはすごく大切だなという気が致します。
 ちょっとまとまってはいないのですが、思いついたことから先に申し上げました。

○加藤委員長 大変どうもありがとうございました。
 恐らく他の委員の先生方も、今、須藤さんがおっしゃられたようなことに、そう遠くない御意見じゃないかなという感じがちょっと致しますけれども、ただ、それは私の感じであって、先生方の御意見を聴きたいと思いますが、簡単にいうと、須藤先生のあれは、いわば状況証拠はだんだんといろいろそろってきた、浄化槽というものが健全な水循環に働く、これは、当然ながらいいものをちゃんと水を出して、汚水の発生したところに、また戻してあげれば、正に理想的な健全な水循環ですよね。ただ、その結果として、いろいろないいことがあるはずだし、またそうであるということをよく言われるのだけれども、本当にそうなのかどうかという確証がまだ、状況証拠はいろいろとそろってきたけれども、まだ完全な定量的な分析まで含めた完全なものになっていないという、時間をかけても、更にそういったデータを積み重ねていくべきだというのが御意見だと理解してもよろしいでしょうかね。

○須藤委員 はい。

○加藤委員長 どうぞ、北尾先生。

○北尾委員 別に私、下水道のことを非難するという意味じゃないのですけれども、浄化槽との対比をクリアにするために、あえて下水道を悪く言うことになるのですが、要するに下水道というのは非常に長い距離を、地下にパイプを敷設して汚水を流してしまうものですよね。いわゆる健全な水循環という意味では、本来、水の循環というのは、土壌を介して行われるわけです。つまり降った雨は地下に浸透して、その途中で少し汚れたとしても、それは地中の生物によって浄化され、そして正常になって、また河川へ戻ってくる、とかいうような形になるわけです。ところが、下水道のパイプというのは、わざわざ地面と汚れた水との接触を断ち切って、遠いところまで運んでしまうということは、非常に自然の摂理には反した方向へ行っていると私は考えるわけなのです。いろいろ考え方はあると思いますけれども。
 それで、浄化槽の場合は、水が汚れたその場で浄化するということで、それだけいろいろな自然に生態系と汚水が触れるチャンスが多いというようなことです。つまりそういう意味でも自然の水循環ということに非常に寄与していると思うのですが、そういった意味で、例えば外国の例なんかいいますと、私は外国の例について余り詳しくはないのですけれども、少なくともアメリカでは、浄化槽の処理水というのは、すべて地中へ浸透させているのです。日本ではたまたま浄化槽の技術のレベルが非常に高いということもあるのでしょうけれども、表流水へ流すというのが一般的で、地中へ浸透させるとなると、むしろ問題が多いという考え方がされているわけです。しかし、90%除去して、更にきちっとした形で浸透させれば、ほとんど自然水に近いような状態で出てくるわけで、流達率という数値が挙げてありましたが、その流達率を更に低くするというような効果があるということが、ひとつ言えると思うのです。
 それから、水量的にも浄化槽が非常にプラスの効果があるのではないかというようなことは、当然言えるわけですけれども、では、河川の健全な水量というのはどんなものかということです。これは私も非常に浄化槽の議論をする上で重要な問題だと思うので、河川工学の専門家なんかの意見も聴いてみたのですけれども、実は河川工学の専門家にも、どういう流量が望ましいかということは、ほとんど議論もされていないし、わかってもいないと、はっきりおっしゃるわけです。いろいろな参考書を調べてみても、そういうことについて何も載っておりません。あくまで治水とか利水とか、そういう観点でしか、ほとんどの本には書いていないわけです。
 ですから、私は少なくとも、こういう素朴な議論ならできるのではないかと思うのは、人間が人工的にいじくり回す前の河川の状態に戻すのが、少なくとも一番弊害が少ない河川の状態ではないか。そういう意味では、都市あるいは都市周辺の河川は、いじくり回され尽くして、雨が降ればどっと濁水が出てくるし、雨がやめば、あっと言う間に川底に石ころがごろごろしているような河川になっちゃうわけで、こんなものは生態系も何も、ほとんどないという川がそこいら中に転がっているわけですね。
 だから、浄化槽がそういうものに対して、どの程度、水量的に自然状態に近づけることができるかというようなことを議論したら、多少は定量的な議論ができるのではないかなというふうな感じが致します。
 それから、これはコメントですけれども、流達率についてまとめていただいたのですけれども、実は流達率というのは、その地域の状況によって非常に大きく変わるのです。私なんか、よく一般の方々を集めて浄化槽の講演をするときに申し上げるのは、わかりやすいように言うわけで、皆さんの前で恐縮なのですが、大体1平方キロメートルに200人ぐらいしかいないようなところの生活雑排水等は、ほとんど自然に浄化されて、流域の末端へ出てこない。出てきてもパーセントオーダーしか出てこないと言われているのです。逆にその100倍ぐらいの人口密度のところというと、東京の下町のぎっしり住んでいるようなところ、高層のアパートが建っているようなところ、もしそういうところで汚水の垂れ流しをやれば、ほとんど全部、その地域の末端まで汚水がそのまま浄化されずに出てくるというふうに言われていまして、それは、実際の調査に基づいてそういう定量的な結果が、これは随分古い調査が行われているわけですが、言われているわけです。浄化槽の設置されるところというのは、大体人口が何千人というようなところです。それで90%除去しますと、先ほど言った人口が200人以下なら、ほとんど流出してこないというところと同じ負荷になるわけです。
 だから、浄化槽の効果というのは、汚水を浄化するとともに、自浄作用の効率を高めるという効果と二重にあるのだということを、私なんかは、よく人の前で話すわけです。ただし、残念ながら、それについて定量的に、私自身も調べようとしたのですけれども、余りはかばかしい結果が出なくて、あくまで、今、申し上げたことは理屈を結び付けた上で成り立っているということですけれども、浄化槽というのは、そういう一種の人口密度を差し引くみたいな、薄めるみたいな効果があるのだというふうなことを、よく申し上げるわけです。

○加藤委員長 ありがとうございました。
 他の委員の先生方。吉田さん。

○吉田委員 今、お二方の御議論に関連して、同じ資源でどうやって効果を上げるということで、環境経済の立場からいうと、費用効果あるいは費用便益分析という方法がありまして、先ほどの資料4の8ページのデータで、合併処理浄化槽で80%整備、下水道で80%整備というところで、データが出ているのですけれども、そういう効率とか費用の面での比較のデータがなくて、これが一番大事で、人口密度が低くなって分散しているところで下水道をやった場合と、そうでない、こういうふうな合併あるいは浄化槽でやった場合の、そこではっきり費用便益あるいは費用効果の差が出るわけです。つまり下水道でやった場合、物すごく費用がかかるわけです。ですから、そこのところでのこれまでの先行研究なりデータがあれば、こういう分野ではこっちをやった方が効果的だと。ですから、私もいつも言うのですけれども、経済と環境と社会、この三つをいかにバランスとるかということで、その面で浄化槽の役割というのがデータ面でも、今、私が申し上げたようなデータがあれば説得的になるというふうに思います。

○加藤委員長 ありがとうございました。
 その点、取りあえず、今の段階で、室長、何か、今の吉田先生のコスト関係の資料について、今までも予算がどうであるとか、いろいろな形では出ていますけれども、何かそのものずばりみたいなものはあるのでしょうか。あるいはこれからつくらにゃいかんのでしょうか、その辺、ちょっと……。

○松原浄化槽推進室長 費用も大切だということについては、私どももそのように思っておりますが、今回は、まずは環境の保全から見てどうかについて御議論いただければと思います。

○加藤委員長 それでは、そういう議論になったときには、吉田委員から、今、お尋ねがあったような資料もできる限り配布していただきたいと思います。
 山本さん。

○山本委員 遅れてすみません。
 今、先生方の御意見を伺っていまして、そのとおりだと思いますし、私も分散型のシステムというのを理想として水循環を形作っていくべきだと思っておりますので、地下浸透も含めて考えていくべきだと思っています。
 ただ、身内の議論にならないために、それはやはり、下水道ばかりが悪いわけではなくて、いいところ、悪いところ、あるわけです。それから、水質管理の面で、分散型で小規模になればなるほど、どういうふうに水質を管理するのかという問題が出てきます。そこに関して、今の、お話のコスト計算にしろ、単に建設費だとか、通常の水質が出ることを前提にした維持管理だとかいうこと以上に、水質モニタリング費用が数が多くなればなるほどかかるはずなのです。だから、そういうことに関してもきちんと、身内の議論ではなくて、しっかりと計量して、それで考えるべきこと、それは技術開発の問題かもしれないし、そういうことをきちんと議論しておかないと、自己満足に陥ってしまうような議論では先に進まないと、私、思いますので、その辺のところは気を付けてやらなければいけないなと思います。

○加藤委員長 ありがとうございました。非常に大切な御指摘、ありがとうございました。私もそう思います。この専門委員会もひいきの引き倒しにならないという、そういう自戒は最初からあるとは思っていますけれども、私自身も別に下水道はそれの機能はまたある、雨水排除を始めとして、東京に代表されるような、こういった人口超密のど真ん中で排水処理をするというのは、集合以外にあり得ないというふうに、私自身も思っていますし、ですから、単に下水道対浄化槽とか、単純な比較論ではなくて、今、山本さんもお触れになった、それこそ健全な水循環を維持するためには健全な水質を常に確保しておかなければいけない。それはたくさんあればあるほど、トータルとしては手間暇かかるわけです。そういったことも、吉田先生の言われるコスト計算の中にきちっと入れるべきだと、全くそのとおりだと思います。ありがとうございました。
 新美さん。

○新美委員 今の議論とも非常に密接に絡むのですけれども、今、集合型ではない分散型のシステムを考えるときには、コストがそういう意味では多様になるということなのですが、その裏腹に効果も相当きめ細かく測定しないとまずくなる。例えば先ほど北尾先生、おっしゃったように、本来の姿での河川といいますと、せせらぎ、支流、本当に水源に近いところについてまで、水量なり何なりが確保できるようになるわけです。これは先ほど須藤先生おっしゃったように、下水道の場合に、上にポンプアップして流したら水量を確保できるではないか、と言われたときに、ポンプアップしたときには点から点でしか循環できないわけですね。ところが、浄化槽の場合には取水したところに戻すということになりますと、ポンプアップしたのと違った効果が出てくる。そういう点も踏まえて、要するにコストのとらえ方もきめ細かくやる必要があると同時に、別途の、どういうものなのかというのは、かなりきめ細かくとらえていく必要がある。その上で、他の汚水処理システムとの比較をしていくということが、ある意味で浄化槽についての評価がより適切に行われるようになるのではないか、そういうふうに考えます。

○加藤委員長 なるほど。ありがとうございました。これまた貴重な御指摘、ありがとうございました。
 松田さん。

○松田委員 私も浄化槽の推進派の一人なので、何とかこれを広めたいと思っているわけですけれども、今までの政策のつくり方の中で、これは質問なのですけれども、国としては下水道普及率というふうなデータベースがあるのですけれども、そのときの「下水道普及率」と言った中には浄化槽は入れずに普及率というものを出しているのですかね。

○加藤委員長 これは室長に、あるいはどなたからでも……

○松原浄化槽推進室長 文脈によると思うのですが……。

○松田委員 そうなのですか。

○加藤委員長 では、ちょっと足立補佐の方から補足的に……

○事務局 3省庁で、今、汚水処理人口普及率という形で、下水道と農業集落排水事業と浄化槽等の汚水処理施設を足し併せて出しているものがございます。あと、省庁ごとに自分の所管している部分で、どのくらいの人口というのを出しておりますので、「下水」と一言で言ったときには、通常、今の統計であれば下水道、汚水処理という表現であれば、汚水処理施設全体を表すことが多くなっております。
 ただ、過去のものにつきましては、ちょっと文脈的なものもございますので、それは個々のものにより判断するものとなります。

○松田委員 今までの国の政策のつくり方を見ていますと、汚水処理のところをきちんとしているかどうかという施策の中でのパーセンテージの取り方が、今、足立さんがおっしゃったように、取り方の中で、内容よりもパーセンテージの高い方向へ行くことが、政策が進んでいるというふうにとらえ方をしていたのではないかなという気がしておりまして、21世紀型の循環型の水循環の話をするときには、汚水処理のデータではなくて、排水処理の部分でのデータベースの見直しというのを、各省庁が統一したものを持っていっていただけると、私たち市民は、とってもわかりやすいと思います。そうすると浄化槽にするのか、下水道にするのかというところのコストの負担というところを考えてみると、今、くみ取り便所が、結構都市の中で残っているわけですけれども、くみ取り便所式のところの方たちも浄化槽へと変わっていくということも、施策の展開としては大きなものだと思いますので、省庁間のデータベースの取り方を統一するということと、生活排水をきちっとするための手段として、データベースをどういう形にとると、浄化槽の普及率はこれなのだということで、明確なデータをつくっていただいて、それを何年後には、これくらいの達成率に私たちはしたいので、そのためには国の施策の展開というのを、こういうふうな形で予算をつけてください、というふうにしていくと、実現可能性が見えてくるかなという気がしているのですけれども、いかがでしょうか。

○加藤委員長 恐らく、正にこれから私どもが12月の末ぐらいに向けてつくろうとしているビジョンの中の一つになるのかなと、私、聴きながらそう思いました。正に松田さんがお触れになりましたように、かつては日本の下水道の処理率が30%、非常に低い。ところがイギリスは九十何パーセントだ。こんなに先進国で恥ずかしいということをよく言われて、下水道予算をもっとよこせ、よこせという、そういう運動に使われたことがあるわけです。「使われた」というのは変な言い方ですが、そういうのをてこにして大いに下水道予算を確保した。そのこと自体は別に悪くはないのですが、ただ、諸外国のデータのつくり方と、日本の場合には各省縦割なものですから、簡単にいうと、旧建設省の下水道の部分と、農林水産省の農集排というものと、当時厚生省、今、環境省ですが、の浄化槽と、それぞれ別々であって、例えばイギリスが九十何パーセントというのと相当するものでいくと、イギリスだと日本でいえば浄化槽みたいなのを実は全部含んでいるわけです。それを一種の数字のトリックみたいなものがあって、実は私と、ここにいらっしゃる河村さんと一緒にヨーロッパ、イギリス、フランス、ドイツなどを見にいって、調べて、その結果を「月刊浄化槽」というものに出しまして、統計の取り方がおかしいということを大いに言いました。正に諸先生方もお触れになっていますように、処理、処理といっても、例えばイギリスの九十何パーセント処理とよく言われましたけれども、実際は垂れ流しのところも結構あるのですね。スコットランドだとか、そういうところは北海にいきなり流してしまう。処理もしないで出してしまう。だけれども、通常、我々がよく目にするイギリスの下水道の普及率は九十何パーセントですよ、という中には、それが入っちゃっているわけです。だから、そういう意味で、やや悪口的にいうと一種の数字のトリックみたいなものがあったのだけれども、その当時は、まだ下水道予算を確保するということは、それなりに大事なことだし、意味があったから、そういう使い方をしたのでしょうが、今は、先ほど、足立補佐が御説明になったように、汚水処理率ということで、一応統一的には説明をしようとしているのだと思うのです。ただ、その辺のところ、さっきから何度も出ていますコストとの絡みで、コストといっても単なる建設周囲だけでなくて、維持管理なども含めたコストの中で議論していくときに、松田さんがお触れになった問題をもう一度取り上げて、きちっと議論したいなというふうに思います。
 ほかの委員の先生方、いかがでしょうか。もしだったら一とおりお話しになって、この後、少し、もちろん浄化槽に関係しますが、小規模事業場等の取扱いとの一種の整合性みたいなところに、ちょっと議論が行きますが。
 それでは、まず河村さん。

○河村委員 先ほどからの水循環ということで、イメージなり何かということ、あるいはここで言われたりしていることは多分わかるのですけれども、日本の場合は水道がほぼ100%普及している状況の中で、取水する場所と放流する場所は水系的に必ずしも一緒ではないようなことも十分あり得ると思うのです。そういう意味で水循環ということを考えるときに、ある種のコンセンサスを得ておかないと、例えばどこから来た水であれ、自分のところで使ったものを、すぐそばに返すという意味での言葉が多分成り立つと思うんですけれども、水量の収支的な意味で、本当にある一つのところで循環していくかどうかというのは、必ずしも当てはまらないなと思いますので、その辺、皆さん御存知だと思いますけれども、再確認しておいた方がいいかなと思います。

○加藤委員長 水道は、もしかすると10キロ、数十キロ離れたところから水を取ってきて、それを飲んで……

○河村委員 同じ河川の上流ではないところも十分あるということです。

○加藤委員長 ですから、循環という意味を、本当の意味では少し厳密にする必要があるということですね。ありがとうございました。
 木曽さん、お願いします。

○木曽委員 今まで、諸先生方から指摘されたところは、正に私も同感で、そういうように思っておりますが、今回の、特に資料4の最初のあたりで、モデル計算が幾つかなされておりまして、これがひとつ、考えるための土台といいますか、たたき台として、我々考えていけばいいだろう。ただ、これが常に成り立つのかどうかという検証が非常に難しいのだろうと思うのですけれども、現実に二つを比較することがなかなかできないということがございますので、そういう意味では、そういうものにできるだけ事例の調査なんかが、今後なされるようなことが必要かなというふうには思っておりますけれども、それに加えまして、これをたたき台にしたときに、こういうモデルの中で、何が今後追加して検討すべきことなのか、何が欠けているのか、追加して検討すべき水質の問題だとか、そういう問題がほかにはないかというようなことを、これを土台にしながら積み上げていくという、こういう作業が必要なのではないかというふうには思っております。

○加藤委員長 ありがとうございました。今の木曽先生の御発言から、私も思い出しましたが、先ほど事務局から御説明のあった資料4のあたりの、ある種、大胆な仮説を置きながら計算をしているようなところもありますので、先生方から、何かここはちょっとおかしいのじゃないかというところがあったら、どうぞ御指摘いただきたいと思いますし、また、これ以外のいろいろな自治体から寄せられた資料がありますが、それ以外にも、例えば浄化槽の効果が非常に明瞭に出ている何か事例だとかあったら、また事務局の方にお寄せいただければ、私どもの審議がより厚みのあるものになっていくのではないかと思いまして、ぜひそういう事例がありましたら、事務局の方にお寄せください。お願いいたします。
 国安さん、今までのところでいかがですか。

○国安委員 水質改善効果について、先程の説明にもあったように水量や水質、特にBODなどの数値によって表そうと思うと、水量やBODの測定点を何処にすればよいのか、測定回数は。浄化槽による改善効果が表れやすい小河川の場合、自然系も含め水量・水質が非常に変動しやすいので、測定回数を多くしなければならず、経費がかかる調査になるし、結果の評価も難しいと思っています。
 そこで、今後、水質改善効果を表すものとして水生生物に関するデータを活用できないだろかと思っています。例えば、国土交通省の河川水辺の国勢調査や環境省の自然環境保全基礎調査など、定点を定め、水生生物の種類や個体数の経年的な調査結果、このようなデータの活用等を含め、市町村設置など面的な整備が行われている地域で、長いスパンで水生生物の変遷というものを追っかけてみたいと思っています。BOD等の水質の測定値よりも、総合的な評価が可能だし、住民に対する説明資料としても理解しやすいものとなるだろうし。さらに、できれば水辺の管理も含めた活動も、水辺に繁茂した植物を放置すれば、当然、そこで枯れて水質を悪化させてしまいますので、地域住民の参加による河川管理のような活動と連携して、生物の種類や個体数の変化などを継続的に実施できればと思っています。以上です。

○加藤委員長 なるほど。ありがとうございました。
 今、国安さんのお話を聴いていまして、長野県佐久市の三浦市長さんが非常に頑張って、いろいろな生物調査をやっているのを思い出しました。確かにホタルだけでなくて、たくさんの魚とか、かなりきめ細かな生物調査をやっていらっしゃる。私がそれを市長さんから、ほら、こんなに調査したのだぞ、というのを見せられたことを、今のお話から突然思い出しました。佐久市は非常に熱心、正に市町村で頑張っていらっしゃるところですから、そういうデータもお使いになると、ホタルとアユだけでなくて、もうちょっと多面的に、かつ単に思いつきの調査とか、思いつきのデータでない、かなりシステマティックな調査をやっていますので、そういうものも活用できるかなというふうに思います。どうもありがとうございました。
 国安さん、何かそういうのを御存知だったら、是非事務局の方に、またいろいろとデータを教えてください。

○国安委員 私の知っているのは、須藤先生が関与された埼玉県、彩の国の河川に関する資料があると思いますが。

○加藤委員長 それじゃ、須藤さん、それに関連して。

○須藤委員 必ずしも健全な水循環の構築を目指して、ではないのですが、「ふるさとの川の再生を目指して」というので、埼玉県の河川を27流域に分けて、それぞれの特徴をいかして、どういうふうに水質改善や、生物の多様性を確保していくかとか、水量を確保していくかというようなことまとめてございますので、これは、先ほどの水循環の構築のところの検討にも使わせていただきましたので、もちろん河村委員は御存知ですけれども、ほかの先生、御存知なければ、もしかしたら資料として配っていただくのを、本当は印刷してあるのがいいのですけれども、全部使われちゃっているので、水環境課にあると思いますので、もし時間があれば、それを先生方に渡していただきたい。
 もう一つだけ、さっき、私言い忘れたことがございます。先ほどの水循環の構築のことで説明させていただいたのですが、そのときの議論の中で、ちょうど資料3の2番目に書いてあるように、まずは流域管理で水循環を考えようというのが一つです。もう一つはここに書いてある山間部、都市部、農村・都市郊外部というふうに、それぞれの流域によって場が違うのだから、それぞれに応じて水循環を考えましょうと、当然河村委員もおっしゃっていただいたので、全部上から下まで同じ考えではないわけです。多分、浄化槽の役割もそれぞれに違うでしょう。というふうになっていることが一つと、ここに抜けているのですけれども、私がこれを言うと、また嫌がられちゃうのですけれども、閉鎖性水域の保全のためには、これは第3次基本計画の水循環に新たに付け加えたところで、結局、閉鎖性水域が悪いので、窒素、燐の問題があって、それは別に山間部、都市部とかいうのではなくて、閉鎖性水域は閉鎖性水域として、もうちょっと水循環を新たに考えましょうというようなことが記載されていますので、ぜひその辺のところも議論があって、そういうふうに記載されていますので、念頭に入れていただきたいということで、ここで放流水の続きで入れられないのは申しわけないけれども、そういう意味です。ある地域によってはそういうことがありますよ、ということだけ申し上げておきます。

○加藤委員長 ありがとうございます。今、須藤委員のお触れになった窒素、燐につきましても、今回、簡単な資料を用意してございまして、また後で事務局の方から資料説明していただきまして、御議論いただきたいと存じます。
 それでは、一とおり、先生方から資料3、4について非常に貴重な御意見を頂いたということで、それを基に、更に12月に取りまとめるであろうビジョンに向けて内容を厚くしていく。そのときに、再度のお願いで恐縮ですけれども、先生方のお持ちの事例なり、資料なり、論文なり、文献なり、そういったものも事務局の方にお伝えいただければと存じます。
 次の課題は、これまでも当専門委員会で繰り返し繰り返し議論になったのは、浄化槽について規制を強化するのはいいのだけれども、水濁法上、他のいわゆる、すそ切り以下の施設とのバランスが核じゃないかという議論がよくありました。特に窒素、燐なんかの場合、浄化槽にばかり、なぜそんなに規制なり、一種の負荷をかけるのか、ほかの例えばレストランとか、旅館だとか、そういうところはすそ切り以下ということで、事実上規制がほとんどかかっていないにもかかわらず、なぜ浄化槽ばかりやるのだと。それに対して、また委員の中から、浄化槽は、むしろ先導的な役割を果たすべきだ、モデルの役割を果たすべきだというようなお話も、もちろんありまして、単にネガティブな議論だけでなくて、ポジティブな議論ももちろんあったわけですが、事務局の方で、この問題について、現時点で資料を整理してもらっていますので、ちょっと御説明を、資料5と6だと思いますが、お願いいたします。

○松原浄化槽推進室長 資料5については、前回までの委員会において御発言があった浄化槽により処理可能な小規模事業場の雑排水の取扱いについての論点例でございます。まず雑排水として浄化槽で処理可能な小規模事業排水についての浄化槽の活用状況がどのようになっているかということが考えられると思います。また、浄化槽により雑排水として処理可能な新たな業種があるのかないのかということが考えられると思います。さらに、小規模事業場の排水対策への浄化槽の更なる貢献に当たり、検討すべき事項はないかということが考えられると思います。例えばどのように周知すればよいか、マニュアルが必要ではないかという御議論も考えられるのではないかと思っております。
 資料6でございます。
 まず、小規模事業場の状況等についてでございます。
 1ページについては、水質汚濁防止法の体系を掲げており、図の下に排水基準に関する説明がございます。国が定める排水基準については、健康項目として27項目、生活環境項目として15項目に関する基準値が設けられておりますが、生活環境項目は、1日当たりの平均的な排出の量が50立方メートル以上である工場又は事業場に係る排出水についてのみ適用されております。
 2ページにおいては、生活排水項目の詳細を掲げておりますが、この備考においても、この表に掲げる排水基準は、1日当たりの平均的な排出水の量が50立方メートル以上である工場又は事業場に係る排出水について適用するとされております。
 3ページからは、水質汚濁防止法における特定事業場の状況でございます。一番右側の欄が1日当たり平均排水量が50立法メートル未満である事業場の数でございます。
 10ページからは、平成11年度小規模事業場業種別負荷量の推計値で、東京湾及び伊勢湾を取り上げております。
 次に浄化槽法による事業系排水の取扱いについてでございます。
 12ページにおいては、環境省関係浄化槽法施行規則の抜粋を掲げてございます。浄化槽法第3条第3項においては、浄化槽を使用する者は、浄化槽の機能を正常に維持するための浄化槽の使用に関する準則を遵守しなければならないこととされておりますが、これがその準則に当たります。この第4号においては、浄化槽にあっては、工場排水、雨水その他の特殊な排水を流入させないことが掲げられております。
 具体的にどのような排水を流入させないことが適当かについては、まず、13ページにございますように、JISにおいて多くのサービス業の施設について浄化槽で対応することが念頭に置かれております。
 また、製造業の施設についても、14ページ及び15ページにございますように、別添に示す業種の排水であって、1日当たりの平均的な排出水の量が50立方メートル未満であるものについては、浄化槽により処理可能な雑排水として扱っても特段の支障がないとされております。
 これらについては、必ずしも十分に周知が図られているとは言えないことから、一層の周知を図るべきであるという御議論はあり得るかもしれません。
 これら以外の業種についてでございますが、16ページからは、事業場への浄化槽技術の利用状況を掲げてございます。これは、浄化槽法の浄化槽自体による排水処理は行っていないものの浄化槽の技術を使用した排水処理を行っている事業場の事例を一部の浄化槽製造業者からお聴きしてまとめたものです。御説明した業種以外の業種についても浄化槽の技術を使用しているようでございます。
 水質保全行政一般の立場からも、19ページにございますように、当時の水環境部において、病原微生物の問題や有害物質の問題がなく、生物処理を行う上で問題がない場合は、生活排水と事業場排水を一括処理する総合処理が極めて効果的な処理法になることは当然と考えられるという見解が示されています。
 したがって、これまで浄化槽により処理可能な雑排水として扱っても特段の支障がないと明らかにされた業種以外の業種についても浄化槽により処理する余地がないか精査する必要があるのではないかという御議論があり得るのではないかと思います。
 以上でございます。

○加藤委員長 浄化槽に大変お詳しい先生方はこの議論が何であるかというのを、よくよくおわかりだと思うのですが、もしかすると、何でこんな議論をしているのかなということがあるかもしれませんので、私が理解する限りをちょっと申し上げたいと思うんですが、浄化槽というのは言うまでもなく、浄化槽の定義によれば、し尿と雑排水を処理する施設、これが浄化槽です。し尿と雑排水。
 ところが、雑排水といっても、例えば小さな豆腐屋さんとか、そういうことを考えてみると、豆腐のしぼり汁とか、いろいろなものが出てきて、それは別途、浄化槽とは別にああいう施設を使って、もしかしたら処理ができるかもしれない。あるいは一緒になって小さな事業場だったら、一緒に処理をしてもいいかもしれない。そういうときは、どういうふうになっているかというと、そういうものを入れてはいけませんよと、必ずしもなっていなくて、ある特定の条件が満たされれば、それを受け入れてもいいということになっていたわけなのですが、それが資料6でいうと、12ページの浄化槽の4番目、アンダーラインが引いてある部分ですが、浄化槽にあっては、工場廃水、雨水その他特殊な排水を流入させないということになっているのですが、逆にいえば、特殊な排水がなければ流入させていいものがあるかもしれないというわけです。例えば、さっき言った私のわかりやすい例では豆腐屋さんみたいな例です。それをどのくらいまで受け入れたらいいのかなという、そういう問題が一つありますねと。なぜそんな議論が出てくるかというと、浄化槽の技術が非常に発達していって、処理能力が非常に高まってくれば、例えば豆腐屋さんでも、豆腐屋さんのトイレと台所と風呂場の汚水だけを処理しなくとも、作業場から出てくる汚水も合わせ一緒に処理したって、十分にきれいな水質を出せることがあり得るじゃないか。では、入れてはだめなのですかという、そういう議論も一つあります。そういうものについて、次の13ページ目に出てきます「浄化槽に受入可能となっている事業場排水」ということで、少しずつ広がってきているということです。そういうことがある。
 それから、もう一つ、今私が申し上げた例とは、またちょっと違って、浄化槽でいろいろと処理ができるようになってくれば、もしかすると、すそ切りと言われた部分について、50立法メートルをもうちょっと下げたらいいじゃないかという議論が、あるいは起こるかもしれない。これは、当専門委員会での議論ではなくて、審議会でいえば他の部門での議論なのですが、浄化槽の技術の進歩によって、いろいろなものを受け入れることができて、しかも、なおかつ、非常にきれいな水を安定的に出せるということになれば、今まで50立法メートルで、すそを切っていたのを、もうちょっと下げたっていいじゃないかという議論に発展する可能性がある。私どもが積極的にそれをするというよりは、そういう議論が起こり得るかもしれない。たまたま須藤先生が今も部会長さんでいらっしゃる、そういう場面もありますので、そういうことがあり得るかもしれない。そういうことですね。そういうことを含めて、この辺の資料5と6について、多少私の方の、場合によってはミスリードがあったかもしれませんけれども、御意見があればお聴かせいただきたいと思います。
 いかがでしょうか。

○須藤委員 浄化槽技術を小規模事業場排水の対策に利用していくという方向性は、当然同じようというか、有機物の排水ですから、それはもうよろしいのですが、克服しなければいけないことがあります。ですから、それをどういうふうに一個一個克服していくか、あるいは連携をしていくことかが大切だろうなと思うのです。

○加藤委員長 例えば、どんな。

○須藤委員 例えば先ほどの製造業の3業種のがありましたね。14ページです。これを水質規制がやる当局の人が、地方でこれを浄化槽と一緒にやってもいいと知っている人というのは、多分余りいないですよね。私はそれなりに理解はしていたのですが、これがどのぐらい使われているかということについては、私は非常に不十分だと思います。もちろんこの3業種だけではなくて、製造業だって同じようなのが、先ほど委員長がおっしゃるようにいっぱいありますから、これを増やすというのはいいのだけれども、増やしても使われなければ余り意味がないのですよね。それなので、どういうふうにしたら使われるのかということを考えなければいけないのかなという気がします。さっきの健全な水循環に戻っちゃうわけだけれども、それも一つの健全な水循環につなげなければいけないですよね。それなので、水質規制当局とうまく連携していかないと、浄化槽法の範疇ではなくなっている議論をしなければいけませんね。先ほど50トン、50トンとおっしゃっているのだけれども、50トンは承知をしているんですけれども、県によっては20トンまでやっていますし、30トンもやっているし、10トンもあります。ですから、そういう中で規制を同じように水濁法の規制にしていけば、それは同じようにかけられると思うのですが、工場排水については1トンというまではなかなか無理ですよね。せいぜい10トンまでかなという気がするのですが、そういう現実があるのと、今のような連携を図らなければいけないことがあるので、要するに浄化槽法の枠組みの中で小規模事業場排水対策をやっていく難しさというか、克服しなければいけない問題点をきちっとやっていかないと、方向はすごくいいし、これからあの技術を生活排水だけに閉じ込めてはいけませんよね。それは絶対やっていった方がいいのだけれども、それを克服するための問題点がすごく多いので、これは、ここでいえば環境省の水環境課等とも十分連携をとってやった方がいいような気がしますし、地方でいえば、浄化槽部局と水質規制部局とやらないといけない。さっきも申し上げたように、一般の人は余り、専門家であっても、これを一緒に混ぜていいよとか、そういう問題を知らないです。ということを、まず申し上げておきたいと思います。

○加藤委員長 ありがとうございました。
 国安さん、今、須藤さんの方から、知らない人が多いという話でしたが、これはどうですかね、浄化槽関係者でも余りこういうことは知られていないものなのでしょうか。

○国安委員 余り知られていないと思います。このような施設が整備されれば、維持管理する側、特に汚泥の取扱いになどついて、地方行政や関連業者に周知徹底が図られるはずです。これまでは、このような施設の整備を促進させるような方策は行われていないのが現状だと思います。
 例外的な事例としては、先程の資料の17ページの真ん中当たりに事業場の種類でミルカー排水がありますが、北海道で農林水産省の関連事業で、ミルクタンク、搾った牛乳を貯めているタンクの廃液・・・・

○加藤委員長 H10と書いてあるものですね。

○国安委員 ええ。確か、タンク廃液を処理する前処理部分を農水省の補助事業で行い、前処理後の汚水と生活排水を併せて浄化槽で処理するもので、地域限定で実施されています。適用地域が拡大されたり、補助額が増額されれば、このような事業場でもっと採択しやすくなり、施設数が増加すれば、浄化槽に携わる方々にも理解が深まるというか、情報が伝わっていくような気がします。これ以外、浄化槽で処理をする事例は聞いておりませんし、このような事例についてもほとんど知られていないのが現状だと思います。

○加藤委員長 ほかに……。山本さん。

○山本委員 余りにも素人的な意見を申し上げるかもしれないので、申しわけないと思うのですけれども、この環境保全に資する目的という位置づけを浄化槽にするのであれば、それは生活排水だけの問題では決してないので、産業排水も当然範疇に入れてしかるべきだと基本的には思うのです。ですので、この産業排水の条項があって、かつ、これは生物処理を前提にしていて、生物処理に懸念のあるものを排除して、安心なものの枠を広げていくという発想ですよね。こういうものを幾ら延長してもしようがないと思うのです。だから、基本的には浄化槽法上の体系の中では、こんな条項を消してしまって、きっちり、もし有害物質も対処できるようなものなら、それでもいいという姿勢で、生物処理に支障を来すおそれのあるものがあれば、それをきっちり、取り除いてからやりなさい、とかいうような姿勢でやった方が、すっきりするのではないかと、私は思うのですけれども。

○加藤委員長 なるほど。この問題は、先ほど須藤先生がおっしゃったように検討すべき課題がいろいろとあると思いますので、今すぐこれをどうするこうするという問題じゃないのですが、ビジョンの中にどんなふうに書けるか、更に検討してみたいと思いますが、それに先だって、どうぞ、先生方御自由に。まず順番で、松田さん、新美さん、北尾さんという順番で行きましょう。

○松田委員 単純な質問なのですけれども、排水処理を行う事業場というのは、下水道処理があっても、工場自体に何か規制があって排水のところではきれいな水を出しなさい、というふうなことがあるので、合併処理施設を使うというふうに判断したらいいのでしょうか。その辺、よくわからない。

○加藤委員長 いかがでしょうか。

○松原浄化槽推進室長 事業者がどういう事情で浄化槽技術を使用しておられるかはお聞きしていないのですが。

○松田委員 下水道には流してはいけないものを出している、例えばお豆腐をこした濃い汁だとかいうのは、下水道に直接出すと下水道の負荷が大きすぎるから、工場の中できれいにした水を出しなさいという、そういう規制の中で、この浄化槽というのは付けた方がいいですね、というふうに判断していいのですか。

○松原浄化槽推進室長 必ずしもそのような前提では……

○新美委員 質問にも絡むのですけれども、水濁法は、50立米以下について手をつけないということで、何の処理をしなくても罰則はかからないわけです。

○加藤委員長 法律上はですね、先生が触れましたように、条例が別途ありますと。

○新美委員 ですから、処理するかどうかというのは別のところなのですね。ですから、浄化槽に流し込むという語弊がありますけれども、そちらに移転させるためのインテンシブが水濁法に全然ないわけなのですね。ですから、問題は50立米以下は何もしなくてもいいというのではなくて、条件をつけて、今、浄化槽が出てきていますので、排出基準は適用しないけれども、しかるべき措置を講じなさいと、そういうことを規制当局には注文するということが必要だと思うのです。例えば、そのための準備として浄化槽ではここまでできます、コストもこれぐらいでできる、中小規模の事業場に対しても十分耐え得るのだということを示していくことが、浄化槽法のスタンスとしては重要なんじゃないかと思います。ですから、働き掛けで規制すべきだとはなかなか言えませんので、十分浄化槽で受け皿としてはできますよ、例えば10立米以下になると難しいかもしれないけれども、浄化槽で十分対応できるということをデータで示していけるようにすれば、水濁法の方でも対応可能になるのではないかというふうに思います。

○加藤委員長 今の新美さんの御意見に対して、須藤さんはどんなふうに思いますか。

○須藤委員 新美先生、おっしゃるとおり総量規制制度というのを御存知ですね。総量規制制度は、50トンまでなのですよ。50トン以下は報告聴取ということで、どういう処理をやっていて、どういう水を出しているのかということを、それぞれの事業者に監督官庁から聴く義務があるのですけれども、先ほどもおっしゃるように数も多いこととか、正直に言うと、報告聴取というのは余り機能していないと思うのです。これをもうちょっときっちりやれば、今のおっしゃるようなことが、浄化槽を使って処理しておかないとヤバイかなとか、そういう動機になると思うので、一応制度はあるので、それを機能させるように規制当局が働けば、おいこら方式の排水基準をかけるということでは、これはなかなか、今、すごく難しいと思います。30トンも20トンも、BOD20にしましょうとか、そういうふうに言ってしまったら、これはなかなか大変なので、とっても合意が得られない。今程度のことを、もう少し制度があるので、まずはそれをきっちり動かそうと。
 それが一つと、もう一つは、今日、まだ話題が全然出ていないのだけれども、環境省の中ではモデル環境実証モデルがあって、こういうような排水について、いろいろモデル事業というか、実証モデルをやっているのですね。河村先生、あれは十幾つになったかね。要するに、いろいろなプロセスが一応実証されているのです。多分、環境省の水関係は、あの辺をもう少し機能させていこうと思っているのではないかと思うので、ですから、この浄化槽もそうだし、今言った実証モデル事業もそうなのですけれども、幾つかのモデルを出して、何かをやりなさいよということを、もう少し地方に対しても言っていただくことが必要なので、浄化槽だけではなくて、今のようなモデル事業も随分動いていますので、それを使っていただいたらいかがでございましょうか。

○加藤委員長 なるほどね。私自身も頭の整理をもう一度繰り返したいわけですが、そもそも浄化槽というのは、し尿と雑排水を処理する施設というわけです。雑排水というのは何ですかというと、伝統的には台所と風呂場、それ以外もあるかもしれませんが、主として台所と風呂場の水、それとトイレの汚水と一緒になって処理するのが浄化槽ということだったのですが、浄化槽の技術が非常に進歩していって、特に最近、膜処理技術だとか、そういうものが、十分にパワーがあって、まだもうちょっと受け入れてもいいですよと、こういうことがあり得るわけです。
 ところが、浄化槽の、これまた室長から御紹介があったように、浄化槽にあっては工場排水、雨水その他の特殊な排水を流入させないというのが昭和59年の時点からあったわけです。だから、要するに浄化槽というのはそれ以外の余分なものは入れてはまずいよという雰囲気がずうっとあって、それで先ほど来、浄化槽関係者は余りほかのものを入るのに消極的である、ないしは非常に自己規制的だったというわけですね。ただし、特殊な排水を流入させないであって、特殊でなければ、浄化能に相性のいいものなら入れてもいいということだったのですが、浄化能の相性のいいものというのは何ですかというと、少しずつ技術の進歩に伴って広がってきて、最近はかなり広がってきましたねと。そうなると、そういう技術も使えるということならば、諸先生方がおっしゃったように、何も50立米以下は、国のレベルでは、すそ切り以下ということで規制対象外になっていたものを、もうちょっと拡充してもいいではないかという議論が当然起こり得る。ただし、これは繰り返し須藤さんが御指摘になっている、なかなかこれは微妙な問題だし、そもそも当専門委員会の、多分権限を超えるもので、規制を何にすべきかということはあれですが、ただ、新美さんがおっしゃるように、おいこら規制的に言うのではなくて、推奨的に技術の進歩というものを素直に取り入れていくという一種のリコメンデーション的なやり方が、取りあえずあるのかなという感じは致します。それは、今後、私どものビジョンの中に、それをどういう形で書き込んでいくかというのが一つの課題かなというふうに思うのですが、何か、北尾さん。

○北尾委員 今、相性がいいというような言葉を使われたのですが、確かに浄化槽に相性のいいような工場排水を入るということは、非常に排水処理としては合理的な面が多々あると思うのですけれども、問題は出てきた汚泥が一般廃棄物として扱われるわけですね。本来なら、産業活動によって出てきたものは産業廃棄物として扱うべきであるのに、浄化槽が下手をすると産業廃棄物が一般廃棄物に化ける隠れみのになるというような危険性もあるということで、私は決してだからいけないと言っているわけではないのですけれども、無条件にそれを肯定すると、またちょっと、そういうような弊害もあるということを、ちょっと言っておきたいと思います。
 それから、もう一つ、それに関連して、ここで出てきている議論として、浄化槽が先か小規模排水が先かということで、私は、50トンとか30トン以下の小規模排水のこともさることながら、一律排水基準のBOD日間平均120、それから最大160というのは、どういう根拠から定められたかというと、実は生活雑排水は垂れ流しということを前提にして、それで三位一体というのですか、同条件だというようなことから出てきている数値なのですよ。ですから、例えば、それは規制の基準ではないにしても、浄化槽でBOD20云々というような議論がされているときに、この数値が残っているということ自体が、もちろん必要に応じて環境基準を定めて、それを達成するように上乗せは行われるわけですけれども、ベースがここになっている。これは非常に不十分ではないかと。それこそ一律排水基準の日間平均値を20に持ってくるのならバランスがとれるというふうに考えているわけです。
 それから、もう一つ、新美先生がおっしゃったことと同じようなことなのですが、30トンとか50トンとか以下の排水を、何らかの規制の対象にする、規制といっても50トン以下のようなやり方の規制ではないにしても、便宜的な規制をするにしても、非常に事務量が増える、その割に効果が少ないということが、よく言われるわけですけれども、私ども、30トンとか50トン以下のものを何らかの処置をしろというふうに言っているときは、必ずしも大規模と同じような扱いにする必要はないと思っています。現に小規模事業場というのは、何十万箇所とあるらしいですけれども、現に浄化槽というのは 600万も700万もあるけれども、それなりの扱いによってコントロールしているわけですから、一定の規模の事業場に浄化槽と同じように、浄化槽だって、人数は同じでも実際の状態というのは本当は千差万別ですよね。それでもそれなりにコントロールできているのですから、浄化槽方式のようなものを小規模事業場に当てはめる。つまり設置するときの入り口は割合厳しくして、そのかわり、1日立入検査というようなものはせいぜい法定検査程度のものにするとか、そういうふうにすれば、十分報告聴取だけではなくて、有効な対策が採れるのじゃないかと。そういう前提で、卵が先か鶏が先か、というような議論をしているつもりですので、これ以上そのことは言いませんけれども、一応、そういうことですので……。

○加藤委員長 大変重要な御指摘で、私自身は大変おもしろいなと思いますが、ただ、私、元役人としては、あれ、そういう議論をするのはこの専門委員会に与えられた権限を超えるのではないかとか、つまらないことなど、ちょっと思ったりしますが、しかし、権限とか何とかじゃなくて、権限は別かもしれませんけれども、小規模の、要するに浄化槽の延長から来たものとして、この規制を、今、北尾先生おっしゃったように、120よりも20にしろ、というのが適切かどうかというのは、それを検討する委員会がまた環境省内の別の中央環境審議会の中にあると思いますので、そこへ投げかける、私どもがこうすべきである、というよりは、浄化槽の方から議論をしていったら、こういうふうなことになりますよ、そこから先はそちらの方でひとつ御検討くださいと、そういうことになるのかなと思いますが、いずれにしても、今、部長さんもいらっしゃいますけれども、部長がお求めになっていらっしゃる新時代の浄化槽のビジョンといったものをつくってくれ、というときの議論の中に、それをどう書き込んでいくか、またもう少したって皆さんともう一度相談したいなと思います。
 では、国安さんと河村さんに御意見を頂いた後、窒素、燐、N・Pの問題について触れたいと思います。

○国安委員 すみません。ちょっとお時間を頂いて、先程、松田先生から16ページから18ページの施設がどのような目的で設置されているのか、との御質問がありましたが、それを推測できる情報が資料中に記載されています。具体的には、放流水質を見ていただくと、BODとして600とか300とか200というものがありますが、下水道の除害施設における一般的な排水基準は、BODが600未満ですから、おそらくこれらの施設は下水道の除害施設としての位置付けだと思います。それ以外、BODが10から60ぐらいまでのものは、処理水を公共用水域に直接放流するために設置されているものだと思います。
 それと、先程、新美先生や北尾先生から御指摘があったように、小規模事業場の排水処理に浄化槽技術を適用する際には、私も、排水基準の適用を除外する必要があると思います。一律、BOD20以下を適用しようと思うと、小規模事業場の場合、生活排水以上に水量や水質の変動が激しいことがあるので、20以下がリミッターとなってなかなか普及しないことが想定されるので、このことが非常に大事なことのような気がしております。

○加藤委員長 河村さん。

○河村委員 ちょっと話が離れるかもしれませんけれども、このビジョンづくりの中の一つとして海外展開というのがあると思うのですけれども、日本の場合はあくまで日本の法律に縛られた形でやりますが、恐らく海外の場合は、その国によって事情が違うと思うのです。そういう場合においては、十分小規模という視点もあり得るのかなというふうな気は致しております。ちょっと付け加えさせていただきました。

○加藤委員長 ありがとうございました。木曽さん。

○木曽委員 一言だけ、資料6の14ページに、平成12年の通知というので、合併処理浄化槽への事業場排水の受入可能な業種ということが示されておりますけれども、先ほど来の議論の中では、実際、須藤先生が、これはほとんど知られていないのではないかということが懸念されておりますので、むしろこういう合併処理浄化槽に受け入れている事例というものが、現状どの程度あるのかということが把握できますでしょうか。また、それが可能であれば、それをむしろ、受入可能な工場排水のより拡大といいますか、無条件に拡大というわけではないのかもしれませんけれども、水質保全対策の施設としての浄化槽の機能を社会的にもっと拡充するという観点からは、こういう事例についても少しお教えいただければと思っております。

○加藤委員長 その事例は、一応把握していますかね、室長ないし足立さん。

○松原浄化槽推進室長 今後調べたいと思います。

○加藤委員長 どうぞ。

○山本委員 北尾先生のおっしゃったことは、確かにそうだと私も思いますが、私自身はこれから廃棄物の分類、産業廃棄物とか一般廃棄物の分類そのものを見直すべきだと思っておりまして、その辺のところは、廃棄物・リサイクル部会の多分話題になっていくのだろうと思いますが、浄化槽汚泥についても関連する部分でもありますので、きっちりこういうようなことを議論していくついでに、廃棄物のとしての扱いというようなことに関しても、ここでも一応議論してもいいのではないかなとは思います。

○加藤委員長 なるほど。ありがとうございました。
 委員の先生方から非常に貴重な御意見を頂きました。これについて、繰り返し言っていますように、将来、将来といっても、そう遠い将来ではありませんが、議論を集約する中で、ビジョンという形の取りまとめの中で、今出ました問題についても、私どもの思いを非常に適切に反映したものにしていきたいと思っておりますので、ひとつよろしくお願いいたします。
 それから、この専門委員会発足当初から非常に課題であった窒素、燐、これは一口で言えば、中間取りまとめ、それから水質基準の設定をする段階では一種の先送りをしているわけですが、単に先に送っちゃっただけではだめなわけで、これは今後ともフォローしていかなければいけないということですが、それについての資料を事務局でつくってくれましたので、御説明ください。

○松原浄化槽推進室長 資料7及び資料8でございます。
 資料7においては、浄化槽による窒素及び燐対策についての論点の例を掲げてございます。委員長からも御発言がございましたけれども、窒素及び燐対策については、中間取りまとめにおいても様々な御指摘を頂いているところでございます。例えば、浄化槽による窒素及び燐対策を実施するためには、今後様々な情報を把握する必要があるとされています。この情報としては、水質、安定性等窒素及び燐除去型浄化槽の性能に関する状況、管理方法、管理費用等窒素及び燐除去型浄化槽の維持管理に関する状況、公共用水域の窒素及び燐に関する水質状況及び生活排水の負荷に関する状況等が考えられますが、委員の皆様から御意見を賜れればと思います。また、同様に、浄化槽による窒素及び燐の対策を実施するためには、様々な調査研究が必要であることも指摘されています。この調査研究としては、安価で安定した処理が行える技術の開発、使用者の負担も考慮した検査方法及び維持管理方法等が考えられますが、これについても委員の皆様から御意見を賜れればと思います。さらに、浄化槽による窒素及び燐対策の基本的な進め方について、全国的な対策か地域的な対策か、地方公共団体ごとに異なる対応は可能か、助成による推進か規制による推進かなどの論点も考えられるのではないかと思います。
 資料8の1ページからは、閉鎖性水域における窒素、燐の状況でございます。1ページは海域について、2ページからは湖沼についてでございます。汚濁負荷源は水域により大きく異なっており、例えば、TN及びTPを見ますと、2ページの霞ヶ浦においては、浄化槽と単独処理浄化槽との合計で2割から3割程度でございますが、6ページの野尻湖においては、ほとんどゼロとなっております。
 22ページにおいては、設置費用及び維持管理費用の推計を掲げてございます。まず設置費用については、5人槽で通常型が81万円余り、窒素除去型が90万円程度、窒素及び燐除去型が120万円余りなどとなっています。維持管理費用については、同様に、通常型及び窒素除去型が6万円弱、窒素及び燐除去型が7万円余りなどとなっております。特に窒素及び燐除去型は、通常型に比べて相当の費用が必要であると言えるのではないかと思います。
 23ページにおいては、高度処理型浄化槽の整備についてでございます。浄化槽の出荷基数のうち10人槽以下のものについて見ると、平成16年度において通常型が18万基余りであるのに対して高度処理型は2万基弱にとどまっております。
 24ページ及び25ページにおいては、放流水の測定結果を掲げてございます。中ほどのグラフにございますように、ある程度のばらつきが見られるようでございます。
 以上でございます。

○加藤委員長 窒素、燐につきましては、先ほども言いましたように、当専門委員会当初から非常に重要な問題ということで来ておりますが、取りあえず、現時点で資料7のような論点をもう一回挙げてみまして、これを今後どう活用といいますか、ここは論点が挙がっているだけですが、これについてどう答えを出していくか、またどういうタイミングで出していくかという問題が残っておりますが、これについて、須藤さん、いかがでしょうか。この窒素、燐は終始非常に御関心の深い……。

○須藤委員 当初からの窒素、燐の放流水の水質基準を決めるときから、両方とも入れてほしいということを私はお願いしたわけで、少し早すぎるのではないか、データも不十分だし、維持管理のやり方等も、あるいは施設の設計等についても、まだ不安定だから、というようなこともあって、そういうことで継続審議ということになったわけですが、私も全国どの地域も、窒素、燐除去を採りなさい、なんて申し上げたつもりは、あのときもないわけでありまして、例えばさっき霞ケ浦の例もあったのですが、今、湖沼水質保全計画を先行している5湖沼が、今、決めている最中ですよね。本年中に決めるわけですが、やはりどうしても放流水の水質基準が決められていないがために、その普及を促進する手かがりがなかなか得られないのです。それで、こういうものは、一応国がある程度の方向を定めておかないと進まないので、ある特定の水域あるいは地域については、窒素と燐の放流水質基準を定めておいていただきたいということで、その水質は、また後日議論すればいいことなのですが、そういうことで、ですから、最初の資料7に行きますと、私は全国的にやるのではなくて、あるいは地域とか、水域とかで、もう少し広くいってしまったら湖沼地域と、どんな小さな溜池という意味じゃないですよ、例えば指定湖沼を中心とした湖沼域と、それから海の、要するに総量規制地域、これについては定めるべきではないかな。浄化槽法で地域指定ができるかどうか、これはまた別の議論だと思うのですが、放流水の水質基準はその二つですか、総量規制地域と湖沼地域にかけてよろしいというふうに決められるのかどうかは、また別途議論して、取りあえずそういう意味で、やろうと思っても今のところできないという現実があって、そうすると、また5年後また10年後になっちゃうので、ぜひ、その辺の部分は早目に追記してやっていただきたい。だから、ここでいうと、全部地方公共団体ごとに異なっても、これは水濁法だってそうなので、場所が違ったら違う対応をしたっていいと思いますので、ということを申し上げたかったわけです。

○加藤委員長 ほかにいかがでしょうか。ほかの委員の皆様、何か。私ども半年前に一応この問題については一とおり結論を出して、正に先送りといいますか、継続審議といいますか、先送りというのは継続審議ですね。ただ、今、須藤先生がおっしゃったように、やらないというと進まないじゃないか、技術も進まないじゃないかと。だから、数字はいろいろとあっても、将来やるのだということだけでも明確に出しておいてほしい、という趣旨だと思うのです。それとあと、全国一律ではなくて、地域、流域ごとの特性を持ったものでいく、そういう方向だけでも出しておいてもらうといいのではないかと、こういうことですね。
 新美さん。

○新美委員 私もその方向に賛成です。取り分け浄化槽が寄与している割合の大きい水域については、きちんと排出基準なり何なり、水質基準を一応示すべきであろうと、そういう方向だけでも確認した方がいいと思います。
 それから、その際に、規制方式でいくのかどうかという問題がありますけれども、ちょっと今の段階で規制というのはなかなか難しいのではないかと思いますので、助成方式ですね、何らかの当該水域に対して予算措置を講じていくというようなことを考えるのが、現実的ではないのかというふうに考えます。ですから、地域優先度の高い、閉鎖性水域の優先度の高いところで、かつ浄化槽の寄与の程度が大きいところ、そういうところを中心に助成型の対応をしていくというのが現実的ではないのかというふうに考えます。

○加藤委員長 なるほど。ほかにいかがでしょうか。山本さん。

○山本委員 私も地域で、それこそ指定して、そういう形で考えていくのが合理的だと思いますし、賛成です。ただ、同じ流域でも、例えば河川に直接流れて、すぐ入り込むものと、例えば地下浸透させるものと、違いますね。だから、その辺のところの少しきめ細かな考え方というのも必要じゃないかなと思います。それに関して、今まで議論されたように、ある種のバックデータが必要だと思うのですが、そういうことも併せて考えていくべきではないかなと思います。

○加藤委員長 ほかに何か御意見がありますか。ここですぐいきなり結論を出すというわけではなくて、もうしばらく、また先生方の頭の中で、この窒素、燐という問題を暖めておいてもらって、ビジョンの中に書くか書かないか、書くとしたらどういう書き方があるかということになろうと思うのですが、北尾先生は、どちらかというと半年前に議論のときは、やや慎重派だと私は理解しているのですが、何かどうですか。

○北尾委員 私、今まで黙っていたのは、基本的には須藤先生の御意見と私は同じなのです。BODと同じような扱いで入れるときには、ちょっと早いのではないかということを申し上げたのですけれども、必要に応じて窒素・燐対策をやっていくということですね。そのことに関しては、それほど違和感がある議論をしているつもりはないのですけれども。

○加藤委員長 わかりました。国安さん。

○国安委員 助成による推進か、規制による推進かについては、新美先生と同じ意見で、 私も、助成による推進が望ましいと思います。その際、設置費用に関しては国庫補助が行われていますが、現在設置されている燐除去型や窒素除去型の場合、BOD除去型に比べ、電気代や燐を除去するための鉄材の交換費用等、維持管理費が高くなる部分についても助成する必要があると思います。先程、放流水質の実態調査に関する説明がありましたが、あれだけ放流水質がばらついているのは、1万円なり、維持管理費用が高くなる部分を浄化槽使用者が負担し切れていないためで、能力はあるのだけれども、鉄材の交換や循環水量の安定化等、適切な管理が行われていない施設があることに由来しています。
 ですから、特に燐除去型の場合、設置費用と維持管理費用をセットで助成する、できることならば市町村設置型のように、しっかりした管理体制を構築しながら普及を図らないと、実際、目にみえる効果が得られないと思います。

○加藤委員長 なるほど。大変ありがとうございました。松田さん。

○松田委員 先日、埼玉県のいろいろな施設を、小さいのから大きいのまで御担当の方と一緒に拝見させていただきまして、現場で聴くと、なるほどコスト、高いなというのを実感として持ちました。ですから、燐の導入は大賛成なのですが、社会的なシステムとして普及していくときに、どういうふうにしていけば普及が進むのかということも、浄化槽全体の話でもなるのですけれども、どこかできちっとソフトの面で考えたり議論したりしていきたいなというふうに思っています。

○加藤委員長 なるほど。ありがとうございました。どうぞ、まず河村さん。

○河村委員 質問ですけれども、24ページとか25ページのデータは、恐らく小型のデータですよね。ですから、準備できるかどうかわかりませんけれど、まず規模の大きな、規模別に窒素とか燐というのがどうなっているか、というデータもそろえていただいた方がいいのかなと思います。というのは100人規模のところだと、家庭の20軒分、1か所で20軒分になったりする効果のことを考えると、その辺の規模の問題が要るのかなと思いますので。

○加藤委員長 その辺は、国安さん、そういうデータもあることはありますか。

○国安委員 あります。

○加藤委員長 それでは、またこのデータがあればお出しいただければ大変ありがたく思います。
 そのほか窒素、燐の問題で、木曽さん。

○木曽委員 きょうの最初の議論のときに、山本先生の方から、分散型の場合、維持管理のコストがかかるという問題は無視できない。窒素、燐に関しまして、結局、例えばBODであれば透視度が一つの簡易な指標になり得るわけですけれども、N・Pになるとそういうわけにいかない。維持管理をするためには、それにも水質を把握するという点でも、コストがかかってくる、こういうふうな問題が内在しておりますので、そういうものを簡易に評価できる、若しくは大ざっぱでもいいから評価ができるような、そういう技術の開発とか、導入とかを含めて考えていかないと、維持管理の技術そのものがついていかないという、そういう問題を含んでいるのではないか、そういうことも、ちょっと懸念される要因ではございます。

○加藤委員長 ありがとうございました。恐らく、この窒素、燐の問題は、須藤さんが冒頭におっしゃったように、一応私どもは半年前にあの問題について結論を出したときは、一種の先送りということになった。それは私どもは何にも検討しないで、あるいは議論もしないで先送りにしたわけではなくて、大いに議論もし、検討もして、その結果として先送りした。しかし、外から見ると、ああ、何だ、環境省はもうN・Pはやらないのだなと、そういうふうにとられてしまうと、技術の進歩も、あるいは自治体で頑張ってやろうとしているところも、ディスカレッジをするかもしれない。ですから、それは避けなくてはいけない。そうかといって、急にまた、ではまた水質基準で全国一律でやりましょうという話になれば、維持管理のコストの問題、測定の問題、その他いろいろと問題が出てくるということで、様々諸先生方から、すべて同じ方向を向いた知恵を出していただいたと思います。そういったものを踏まえて、少し、窒素、燐は別に私ども全く手を放してしまったわけではないのですよ、ということをメッセージとしてきちっと出せるようにして、そうはといって、余り現実離れした話をしてもしようがないですから、現実を踏まえながらも、しかも前に進めるような、何かいい答が、先生方のきょうの御発言からもかなり出てきたように思いますので、この問題にもう一度、答を私どもがいろいろな議論をした上で、ビジョンの中に何らかの形で書きたいなと、そういう感じであります。そのときはまた改めて御議論いただきたいと存じます。
 それでは、きょうは一とおり健全な水循環という話をめぐって、水量、水質の問題、あるいはコストの問題、窒素、燐の問題、あるいは小規模の工場、事業場に対する規制のはね返り、そういった問題について短時間でありましたけれども、非常に密度の濃い議論をしていただきましてありがとうございました。私としても非常にビジョンを書くときの大変な参考になるお話が出てきたと思っています。ひとつ、よろしくお願いいたしたいと思います。
 次に、室長、次回は7月だったと思いましたが。

○松原浄化槽推進室長 次回は、7月27日14時から開催する予定でございます。

○加藤委員長 テーマはどんなテーマになりますか。

○松原浄化槽推進室長 後ほど御連絡いたします。

○加藤委員長 というわけで、7月27日、場所はまだ決まっていないようですが、時間はもう既に決まっていましたね。14時からということで、テーマその他改めてまた御連絡いたします。いずれにしましても、この前見ていただいたものの中から、一つ一つ拾って、今日のように議論を詰めていきたい。それを最終的にビジョンというものの中に書き込んでいきたいというふうに思っております。
 どうもありがとうございました。では、7月27日にまたお目にかかります。

午後4時13分 閉会