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中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会
第6回浄化槽専門委員会議事録

平成17年8月10日

午前10時00分 開会

○鎌田浄化槽推進室長 おはようございます。定刻になりましたので、ただいまから第6回浄化槽専門委員会を開催いたします。
 吉田先生につきましては、少々遅れますとの御連絡をいただいているところでございます。
 それでは、議事に入ります前に、お手元の資料を御確認願います。
 本日の資料は、取りまとめ(案)1つでございます。問題があれば事務局の方へ御連絡ください。
 それでは、これ以降の議事進行につきまして、加藤委員長にお願いしたいと思います。

○加藤委員長 おはようございます。非常に酷暑といいますか、そういうときが続いておりますが、皆さん、お元気でこうやってお集まりいただいてうれしく存じます。
 きょうは、かねてから御連絡してありますように、そしてまたきょうの議事次第にもありますように、これまでの私どもの専門委員会での審議、もちろん関係団体や学識者からの御意見なども取り入れたもので、中間取りまとめ(案)というものをつくってございます。これは今、お手元に資料の2として、私どものさまざまな議論を反映して、かなり分厚いといいますか、かなり量の多いものになっていますけれども、資料の2として取りまとまっております。
 これは、ごらんになればすぐおわかりになりますように、「はじめに」ということで、浄化槽についてのこれまでの経緯といったようなもの、あるいは浄化槽の意義といったようなものが書かれております。それから、3ページからの2というところでは、私どもの当面の課題である浄化槽法改正に伴う省令の改正事項といいますか、省令の事項についてのこれまで議論してきたこと、意見を各界から聞いてきたことをまとめてございます。
 それから、その後の3といいますのは、これはページでいうと8ページになっていますけれども、「浄化槽の維持管理に係る業務の在り方」という部分について、私どものこれまでの議論をまとめてあります。ただ、ここは前回も鎌田室長の方からお話のありましたように、いろいろな方々からいろいろな意見をいただいておりまして、まだ私どもはそれを聞いたという段階で、余り本格的な質疑はまだしておりませんので、どちらかというとこういう意見があった、ああいう意見があったという具合に、いわば列挙方式に書いてあって、物によっては少しニュアンスが異なる、ないしははっきり言えば少し相矛盾するような意見も書かれていますけれども、8月末以降、9月以降になって、ここについては私どもの意見を集約していくと、そういうことになりますが、これまで出た意見を出してございます。
 それから、13ページ以降で「その他」ということで、既に当委員会でも出ました、単独浄化槽はどうするんだとか、それから、国民がまだまだ浄化槽というものを正しく知らされていないよね、あるいは知っていないよね、もうちょっと国民に知ってもらう努力を一層促進すべきではないか。さらに、研究の面でもそういった、まだまだ足りない面もあるのではないか。調査研究というものも進めていく必要があるし、さらに汚泥の処理体制についても確保すべきではないかとか、さらに技術開発等々について触れてあると、こういうわけでございます。
 そして「5.終わりに」というところ、これはコンクルーディング・リマークスといいますか、文字どおり今後の課題なども含めて書いてあると、こういう構成になってございます。
 これ全体について、きょう御審議いただくということで、そして、これもかねてから、当初から申し上げていますように、8月29日に予定されております次回の会合でもって、中間取りまとめについては取りまとめたいというのが私の希望でございます。また、そうしないと省令の改正に私どもの意見が適切に反映されないと、こういうことになってしまいますので、少なくともその部分については、まず中間取りまとめをして、そのほか浄化槽の全般的な問題についてはもう少し時間をかけて、今まで出た意見をもとに、もちろんそれ以外の意見も含めてまとめていく。これは環境省側からは年内ぐらいにとりあえずまとめていただきたいというわけであります。ただ、浄化槽専門委員会自体はそれで終わりということではなくて、浄化槽についてのさまざまな重要な問題を専門的な立場から審議するという、そういう機会は引き続き残っていると、こういうふうに私は理解をいたしております。
 そういう前提で、きょう御審議いただきたいと思うんですが、何せ大部ですので、ずっと朗読してもらうと平板になってしまいますので、最初に、「はじめに」の部分と、それから2の省令改正事項の部分、具体的に言うと8ページの頭のところまで、まずお読みいただいて、それについての意見を聞き、そして、その後残りの部分について、また一応朗読していただきまして先生方の意見を聞くというふうにしたいと思います。
 それでは、お願いします。

○事務局 お手元の資料2を御覧ください。資料2に基づきまして、今から読み上げさせていただきます。

中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会浄化槽専門委員会中間取りまとめ(案)

1.はじめに
 浄化槽は、処理性能が優れており、健全な水環境の保全に寄与する恒久的な生活排水処理施設である。一般の家庭向けのものは自動車一台程度の広さがあれば設置でき、設置費用が安い上に、地勢の影響を受けにくく、かつ、短期間で設置できることから、経済的で投資効果の発現が早いという特長を持っている。戸建て住宅向けだけでなく、集合住宅向けの一定規模のものもあれば、関西国際空港に設置されているような超大型のものもある。また、生活排水を発生源で処理することから、身近な小川や水路に処理水を放流することで河川の水量を維持することができるとともに、清流を回復させる効果もある。さらに、近年では、地震等災害時における被害が少なく、被害を受けても復旧が早いことも注目されている。
 浄化槽の普及状況を見ると、平成15年度末現在で全人口の8.1%、1,030万人が浄化槽を使用していることとなっている。これを市町村の人口規模別に見ると、人口100万人以上の市町村では0.4%であるのに対し、人口5万人未満の市町村では14.4%と高く、人口規模が小さくなるにつれて浄化槽の普及率は高くなっている。今後の生活排水処理施設の整備は人口密度が低い中山間地域等が中心となり、これらの地域では平地が少ないという特性にかんがみれば、経済性・効率性に優れた浄化槽の整備が更に進むことが大いに期待されているところである。
 このように、現在においては、浄化槽は下水道などと並んで生活排水処理施設の柱として重要な役割を担っているが、ここに至るまでには国民のニーズや経済的・社会的な状況が変化するなかで、浄化槽の果たす役割、社会における位置づけも大きな変容を遂げてきた。
 高温多湿な我が国においては、古来、し尿は貴重な肥料として取り扱われ、都市部で発生したし尿も近郊の農村で使用されるという衛生的なリサイクル体系が存在していた。一方で、生活雑排水は排水路等により家庭や都市から排除するシステムが広く普及していた。昭和30年代以降、都市化により、近郊農村との人口バランスが崩れるとともに、化学肥料が普及したことにより、これまでのリサイクル体系が立ちゆかなくなった。このため、欧米のライフスタイルの急激な流入によって衛生概念が変わりつつあったことと相俟って、し尿処理施設の整備が急速に進められるとともに、大都市を中心として下水道の整備が進められていった。
 し尿のみを処理する単独処理浄化槽については、くみ取り便所式の時代に、欧米を真似て水洗化という快適な生活を求める比較的裕福な家庭に「贅沢品」として設置されるようになっていた。その後、所得水準の上昇を背景に都市部を中心として水洗化の要求が急激に高まっていったが、財政的にも時間的にも下水道の整備が追いつかなかったことから、昭和40年代以降、一般家庭向けの単独処理浄化槽が爆発的に普及することとなった。しかし、この単独処理浄化槽は、下水道が整備されるまでのいわゆる「つなぎ施設」と見なされていた。
 また単独処理浄化槽は、その構造や維持管理の不十分さから、多くの地域において臭気や処理水に対する住民の苦情が頻発し、地域住民にとっては「迷惑施設」として規制するべき対象として意識されるようになった。そうした状況を解消するべく、民間を中心とした浄化槽関係者が働きかけ、昭和58年、浄化槽の製造から施工、維持管理に至る各段階において規制をかけて管理する浄化槽法が制定されるに至った。
 浄化槽法は、「迷惑施設」としての単独処理浄化槽の適正な管理を目的とするものでもあったが、一方で、既にし尿に併せて生活雑排水を処理する大型の浄化槽は普及していたことに加え、ちょうどその頃、有機系汚水処理技術としての生物膜法の浄化槽での利用技術が確立し、それまで技術的に困難と考えられていた高性能の家庭用小型浄化槽の実用が可能となったことから、その普及促進も狙ったものであった。浄化槽法には、浄化槽の設置に対する援助のための規定があるが、これは、浄化槽を定着、普及させるためには、規制のみならず国や地方自治体の援助が必要との考えによるものであった。
 こうした状況を踏まえ、浄化槽は、下水道に並ぶ生活排水処理施設になるのではないか、との考えから、大いなる社会的実験として、昭和62年度に国庫補助事業(現在の浄化槽設置整備事業)がモデル事業として創設された。以来、他の生活排水処理施設と相互調整を図りながら、その拡充が図られ、平成6年度には市町村自らが設置主体となって面的整備を進める事業(特定地域生活排水処理事業、現在の浄化槽市町村整備推進事業)が創設されるなど、当初1億円のモデル事業で始まった国庫補助事業は、現在では264億円にのぼる予算額となっている。
 浄化槽の整備が進められるなか、環境保全、水環境の改善の観点から水質汚濁の主要な原因の一つである生活排水への対策の強化が急務となり、浄化槽の大半を占める単独処理浄化槽が問題視されるようになった。このため、やはり民間を中心とした浄化槽関係者の後押しにより、平成12年に浄化槽法が改正され、合併処理浄化槽のみを浄化槽として規定するとともに、単独処理浄化槽の新設を原則禁止することとなった。
 しかしながら、立法当時、浄化槽のほとんどが単独処理浄化槽であり、立法趣旨としても単独処理浄化槽の適正管理が色濃く出ていたことから、その後の浄化槽の更なる普及や環境意識の高まりなどを踏まえ、法制度としても恒久的な生活排水処理施設である浄化槽にふさわしいものとするよう強く求められるようになった。さらに、浄化槽への期待が大きくなるにつれて、実際に環境保全に寄与していることを示し、国民の信頼を確保することが必要となり、特に、法定検査の実施率が低い状況であることに対し、検査の確実な実施や指導監督の徹底が求められるようになった。
 このため、平成17年の浄化槽法改正において、目的に公共用水域等の水質の保全等の観点からし尿及び雑排水を適正に処理することを明記するとともに、その考えを具現化するものとして放流水の水質基準を設けることとなった。また、課題となっていた法定検査についても、行政による検査の代行という本来の意味に立ち返り、維持管理等に対する都道府県による監督の強化が図られることとなった。
 こうした逐次の予算の拡充や法制度の改正により、生活排水処理施設の柱としての浄化槽にふさわしい体制が整えられつつあるが、解決するべき課題も依然としてある。維持管理に関する信頼性の向上は古くて新しい課題であるが、設置者の信頼に応えるためには、一つ一つ解決策を講じていかなくてはならない。また、循環型社会の構築、健全な水循環の確保という時代の要請に併せ、浄化槽の果たすべき役割を明確にしていく必要がある。さらに、我が国で独自に開発・発展を遂げた浄化槽については、専門家の間では国際的な評価も高く、世界の水問題、環境問題の解決に貢献するのではないかと期待されている。このため、環境省としては初めて、中央環境審議会廃棄物・リサイクル部会の下に浄化槽専門委員会を設け、これら一連の事項を検討することとした。
 本報告は、平成17年5月の本専門委員会の設置以降○回にわたり関係者のヒアリングを含めた審議を行った結果を中間的に取りまとめたものである。具体的には、今般の法律改正において環境省令に規定するよう委ねられた浄化槽からの放流水の水質基準など維持管理に係る技術的事項や、維持管理の業務の在り方などについてである。
 なお、これまで浄化槽に関しては、その時々の課題について様々な検討の場が設けられてきたが、本専門委員会は、水環境の保全に資する恒久的な生活排水処理施設としての浄化槽を一層推進する考えから永続的なものとして設置したものである。したがって、残された課題だけでなく、浄化槽行政の在り方や浄化槽を巡る諸問題について、今後も適宜検討していくこととする。

2.平成17年の浄化槽法改正に伴う省令事項等について
 (1)浄化槽からの放流水の水質基準について
 [1]省令案として考えられる事項
 浄化槽からの放流水の水質基準は、浄化槽の処理性能を定める構造基準に反映されるものであり、その基準値は、現実的に汚濁負荷の削減が可能なレベルで定めることが適当である。すなわち、浄化槽の開発・普及状況や現行の国庫補助の対象としている浄化槽の処理性能を踏まえて、現時点で適用可能な技術を採用する方向で、具体的な基準を定めることが適当である。また、平成12年改正により合併処理浄化槽のみが浄化槽として位置付けられ、更に今回の法改正により公共用水域等の水質保全を法目的に加えたことから、放流水の水質基準は浄化槽を対象とすることが適当である。
 このため、省令案としては、「法第4条第1項の規定による放流水の水質の技術上の基準は、BOD(生物化学的酸素要求量)20mg/L以下及びBOD除去率90%以上とする。ただし、法第3条の2第1項ただし書に規定する設備又は施設については、適用しない。」とし、当該省令は、法施行(平成18年2月1日)以降に新設する浄化槽について適用することが適当である。
 なお、国庫補助の対象となる浄化槽の処理性能や建築基準法令に基づく浄化槽の性能評価において適用されるBOD値は日間平均値であることから、放流水の水質基準についても同様とすることが適当である。こうした放流水の基準の性格や、検査結果の評価の仕方、その評価を踏まえた指導の考え方等について早急に検討し、上記省令改正と併せ、都道府県や指定検査機関に周知する必要がある。
 おって、法施行までに既に設置されている浄化槽については、それぞれの浄化槽の所期の処理性能が発揮されているか否かを確認するため、上記省令と併せ、第11条検査に際しての判定項目、検査結果を踏まえた判定基準などを示すことが必要である。
 [2]今後の課題
 ア.窒素・リンの扱いについて
 閉鎖性水域の水質の濃度が十分な改善を見せておらず、また、海域の富栄養化現象の発生も見られることから、中央環境審議会は「第6次水質総量規制の在り方について」(平成17年5月答申)をとりまとめ、指定水域における水環境改善の必要性を訴えたところである。また、湖沼における環境基準の達成がはかばかしくなく、改善効果が十分でないことから、同じく中央環境審議会は「湖沼環境保全制度の在り方について」(平成17年1月答申)をとりまとめ、それを踏まえ、先般、湖沼水質保全特別措置法の改正がなされたところである。
 このように閉鎖性水域における水質保全は重要な課題であり、とりわけ富栄養化は、赤潮やアオコの発生、異臭味障害や酸素濃度の低下による魚介類の死滅等を引き起こすなど広く影響を与えることから、富栄養化対策として窒素・リンが水域内に流入することを抑制することが必要となっている。特に、前述の湖沼水質保全特別措置法の改正においては、農地・市街地等からの流出水の水質の改善のために必要な措置を講ずることとされたが、併せて、湖沼の水質保全に資する事業として浄化槽の整備が位置付けられるなど、窒素・リン対策において浄化槽の果たすべき役割は大きい。
 窒素については、以前から一定程度除去されてはいたが、生物膜法の浄化槽での利用技術の確立や移送能力を有する汚泥循環装置の開発により、より多く除去することが可能となった。その結果、現在では、その使用方法や維持管理などの条件に左右されるが、相当程度除去されている。また、リンについても、一定程度汚泥へ変換することから、汚泥を回収すればするほど除去できる。さらに、大型の浄化槽については従来から窒素やリンを除去する技術が実用化されていたが、近年では、一般家庭向けの浄化槽についても、鉄電解法など新技術が開発、実用化され、その普及が進められているところである。本専門委員会での審議において、水質汚濁防止法では一定規模以上の浄化槽は特定施設として窒素・リンに関する排水基準が適用されていることや、大型の浄化槽については窒素・リンを含めた構造基準が定められることもあり、公共用水域等の水質保全の観点から、BODだけではなく窒素・リンに関する水質基準をもうすることが必要との指摘がなされた。上述のように、浄化槽においても窒素・リンは一定程度除去されるものであるが、一般家庭向けの窒素・リン除去型の浄化槽の普及は始まったばかりであり、その一層の普及を促進するとともに、窒素・リンを安定して除去できるよう新たな技術や維持管理の手法などが課題となっている。したがって、こうした窒素・リン除去型の浄化槽の普及の状況や適切な維持管理体制の整備状況を見極めた上で、窒素・リンに関する水質基準を設けることが適当である。具体的には、窒素・リン除去型の浄化槽の設置費の補助の充実等を図ることにより、より高性能で効率的な浄化槽の開発を促しながら、これまで以上に普及させることが必要である。また、現に設置されている窒素・リン除去型の浄化槽について、処理性能や維持管理状況に関する実態を把握するとともに、効率的な維持管理手法について検討し、窒素・リン除去型の浄化槽が広く普及しても適切に運営される体制を作る必要がある。
 イ.放流水の測定方法や測定試料の採取場所について
 浄化槽内においては、炭素質の有機物を分解する細菌のほかにアンモニアなどの窒素化合物を硝化する細菌が繁殖し、結果としてBOD濃度が高くなることから、硝化による酸素消費量を制御する試薬を添加して測定するべきであるとの指摘があった。また、塩素消毒により硝化細菌が減殺されることにより硝化による酸素要求量も減衰し、BOD値が低くなることから、下水道など他の生活排水処理施設と同様に、消毒後の処理水を測定してはどうかとの指摘もあった。
 浄化槽については、現在、硝化による酸素要求量を加味した上で性能評価や法定検査がなされているが、そのこととの整合性の問題に加え、調査では8割から9割の浄化槽がBOD20mg/L以下となっていること、更には浄化槽の処理能力の考え方にも関連することから、今後の課題として議論することが適当である。なお、浄化槽の処理水の測定値は消毒前のものであり、他の生活排水処理施設と同様に消毒後に測定すれば一定程度更に低くなることについては、必要に応じて説明するべきであるとの指摘があった。
 ウ.既設の浄化槽の扱いについて
 既設の浄化槽については、その処理性能であるBOD値が新たに設けられる水質基準のBOD値より高いもの(例えば、BOD値60mg/Lの51人槽以上の浄化槽やBOD値30mg/Lの501人槽以上の浄化槽)があるが、これらについては、維持管理の方法などによって、BOD値が低くなるとの指摘がある。このため、これらの浄化槽から放流される水の水質についても、新たに設けられる水質基準のBOD値を満足させることは、公共用水域等の水質保全にとって有益であることから、その汚濁負荷の削減方策についても調査・検討することが必要である。

(2)第7条検査の検査時期について
 [1]省令案として考えられる事項
 現行の第7条検査の検査時期については、浄化槽法が制定された時期の技術水準や単独処理浄化槽がほとんどであった状況を踏まえて「その使用開始後6月を経過した日から2月間」と規定されているが、現在新たに設置される浄化槽は合併処理浄化槽であること、製造及び管理技術の進歩により、浄化槽の機能が安定するまでの期間が短縮されていることから、検査時期の前倒しを行うことが必要である。一方、検査期間についても、現行よりも幅をもたせることにより、指定検査機関の負担の軽減に資することになる。
 このため、省令案としては、「使用開始後3月を経過した日から5月間」とすることが適当である。なお、設置の時期や設置後の使用実態によって浄化槽の機能が安定する時期は様々であることから、第7条検査の検査時期の見直しに併せて、こうしたことを考慮して第7条検査を行うように都道府県や指定検査機関に周知することが必要である。
 [2]今後の課題
 第7条検査は、当該浄化槽がその機能をおおむね発揮した時点において、所期の処理性能を有するか否かに着目し、設置の状況を中心として行うものである。しかしながら、現在、第7条検査の結果として排水管の未接続、浄化槽の傾き等明らかな施工上の問題と思われる事例が多くあり第7条検査で工事の良否が判明する状況となっているといった意見がある。また、現状では使用開始後半年以上経過して発見されるため、設置者と施工業者の間でトラブルを招いたり、修理に係る設置者の費用負担が増大したりするなどの問題が生じているといった指摘がある。こうした浄化槽工事の欠陥や単独処理浄化槽の違法設置を早期に発見し是正するためには、まずは、建築基準法の確認及び完了検査又は浄化槽法に基づく浄化槽の設置届に対する都道府県等の審査の徹底を求めることが必要である。
 これに対して、実効を上げるためには、指定検査機関が浄化槽の完了検査の代行を行い、施工上の品質検査を行うべきとの提案があった。また、第7条検査を適正施工の確認のための検査とし、実施時期は設置完了前とするべきとの提案もあった。今後、現行制度の徹底を求める一方で、必要があれば、第7条検査について、その目的を含め検討することが必要である。

(3)指定検査機関から都道府県への検査結果の報告について
 都道府県が浄化槽の維持管理に対して適正かつ効率的に指導監督が行えるようにするため、平成17年度の浄化槽法改正において、指定検査機関は、水質に関する検査を実施したときは、環境省令で定めるところにより、遅滞なく、環境省令で定める事項を都道府県知事に報告しなければならないことと規定されたところである。
 当該省令案としては、以下のとおりとすることが適当である。
○報告時期:毎月末日までにその前月中に実施した検査について実施。
○報告事項:
 ア.第7条検査又は第11条検査を行った年月日
 イ.浄化槽管理者の氏名又は名称及び住所
 ウ.浄化槽の設置場所
 エ.浄化槽のメーカー名及び型式名
 オ.第7条検査の結果又は第11条検査の結果
 カ.浄化槽の工事、保守点検、清掃を行った業者名(第11条検査においては、浄化槽の保守点検、清掃を行った業者名)
 キ.検査の結果、不適正な場合はその原因
 なお、指定検査機関から都道府県への検査結果の報告は、その検査結果を踏まえて都道府県が効果的な指導を行うために必要な仕組みであり、浄化槽の維持管理に関する状況を適時・的確に把握するとともに、経年的な状況についても整理しておくべきとの指摘もあることから、都道府県や指定検査機関の事務負担にも配慮しつつ、電子情報技術等を活用した効果的かつ効率的な仕組みを検討することが必要である。併せて、指定検査機関が設置届出に関する情報を把握する仕組みを構築することにより、都道府県及び指定検査機関相互の連携を図ることが必要である。

(4)廃止の届出に関する事項について
 浄化槽の設置状況の確実な把握を図るため、平成17年の浄化槽法改正において、浄化槽の使用を廃止したときは、環境省令で定めるところにより、その日から30日以内に、その旨を都道府県知事に届け出なければならないことと規定されたところである。
 当該省令案としては、以下のとおりとすることが適当である。
 ア.浄化槽管理者の氏名又は名称及び住所
 イ.浄化槽の設置場所
 ウ.使用廃止の年月日
 エ.浄化槽の種類(単独処理浄化槽、合併処理浄化槽の区分)
 オ.廃止の理由
 なお、浄化槽の設置状況を確実に把握するためには、上記省令と併せて、都道府県に対して浄化槽設置台帳を整備するよう指導することが必要である。この際、既に廃止されている浄化槽及び設置の届出がなされていない浄化槽などについてもその把握に努めるよう指導することが必要である。

○加藤委員長 どうもありがとうございました。
 室長の方から何か補足はございますか。いいですか。
 以上、かなりの字数にわたって、これまでの議論を整理していただきました。環境省の事務局が中心となって、先生方のこれまでの御意見を取りまとめたということですが、御苦労さまでした。
 さて、この部分について、早速委員の先生方から忌憚のない御意見をいただきたいと思いますが、順番として、「1.はじめに」という部分。「はじめに」という中に、私のような古い人間にはなかなか思い入れのある表現がいろいろとありまして、浄化槽の過去の歴史、経緯、それから最近の改正の趣旨だとか、そういうことが書かれてあると、こういうわけであります。単なるはしがきというよりは少し重いものになっているかなというふうに思います。たしか前回、須藤先生が格調高いものを書けと言われたことに対する一つの答えにもなっているのかなというふうに思いますが、まずは1番について、何か御意見なり御注文なり御質問なり、何なりとどうぞ。
 それでは、須藤さん。

○須藤委員 意見の前に、ちょっと質問を2つほどさせていただいてよろしゅうございますか。
 1つは、今、1と2を読んでいただいたんですが、2のところが確定すれば、省令案としてはこれでよろしいという理解で、要するに、3以降の問題は後でゆっくり議論をする余裕があるので、2が確定すればまずよろしいのかということですね。1は前書きですからよろしいのかということが1つ。
 それから、もう一つは、前回もいろいろ議論があって、現在パブリックコメントをしていただいているわけですが、パブリックコメントの意見が、3以降は議論があるから、幾らいろいろなことがあってもいいんですが、例えば今の1、2のところでの御意見があった場合に、それがどういうふうに反映されるとお考えなんですか。その上で、あとは次に意見を申し上げます。

○鎌田浄化槽推進室長 2つの御質問について、同じことについて、その側面という理解からあわせてお答え申し上げます。
 まず、手順といたしましては、今日、報告書の案として省令に関する部分、法律改正に伴う省令改正事項ということについて御検討いただき、それで、今回の御意見を踏まえ、次回、8月29日にまとめていきたいというふうに考えているところでございます。
 また一方で、前回お願いし、お認めいただきましたが、事務的な手続としてのパブリックコメントを併せて実施しているところでございます。そこで出た意見につきましては、やはり次回、8月29日、どういった意見が出たか。また、それについて事務局としてどういう考えを持っているかということを併せてお示しいたします。それで、それを併せて最終的に次回に決定していただく。そういうことで、今回の法律改正に伴う省令事項についてはまとまるというふうに考えているところでございます。
 パブリックコメントで非常に大きな問題があって、どうしても事前に先生に聞かなければいけない事態が発生すれば、それなりに事務的に考えられるんですが、基本的には、先ほど申し上げましたように、今日の御意見、それからパブリックコメントで出た御意見を踏まえて、次回の審議会で最終的に決定していただくということを考えているところでございます。

○加藤委員長 パブリックコメントの期限はいつまででしたか。

○鎌田浄化槽推進室長 今月の22日でございます。

○須藤委員 余り時間が……。締め切ってから29日ですよね。そのときに、今のお話ですと、際立って大きなというか、これでない意見がたくさん出てきた場合の取り扱いなんかが生じるんではないかなという気がしなくはないものですからね。大体これでいきたいという事務局の御希望は、私もそれなりに理解はしておりますので、それはそれでよろしいんですが、どういうふうに反映させるのかということですね。これと同じ意見でしたら、多分賛成意見ですから大いに結構なんですけれども、大体パブリックコメントというのは、私の経験でも、これにどっちかというと抵抗があるというか、賛成意見よりもどちらかというと反対意見なり考えていただきたいという意見が多いので、その取り扱いがあった場合にはどうされるのかというのをあらかじめ伺った上で私も発言をしようかなと、こう思ったわけです。

○加藤委員長 今も室長が言ったとおりですけれども、一応22日までの期限で、我々の最終回答が29日ですから、約1週間の時間的余裕があります。それを反映して、もちろん今日の意見と、それからパブリック意見、そういったものを反映して、29日にはそれを踏まえた、今皆さん方に資料2としてお出ししているもののリバイズド版というものが出てきて、それについて御審議いただきたいと、こういうことになると思います。
 ただ、私の個人的希望を言えば、関係諸団体が、今の案については概ねよろしいという御意見をずっといただいていますし、先生方からもいただいていますので、そう大きな意見はないかなというふうに思っておりますが、それは意見が出た段階で判断をするということになろうかと思います。よろしいでしょうか。
 それから、あえて言うまでもないと思うんですが、省令というものは、もちろん役所がつくるものです。行政、大臣がつくるものというものです。私どもは省令をつくるための専門家としての、専門委員会としての意見を申し上げるということですから、この2の部分がそのまま省令になるというわけではもちろんない。内容的にはそれを十分に、恐らくほとんどそのまま取り入れていただけると思いますが、文章そのものは役所の責任において役所が最終的につくるというものが省令だというふうに理解をしております。
 それで質問、どうぞ。

○須藤委員 ですから、可能な限り、もう一度再度申し上げますと、パブリックコメントはどのぐらい──私は前回に、100ぐらい出るんじゃないでしょうかと申し上げたんだけれども、100じゃなくて200になるか、それはわかりませんけれども、丁寧に時間のある限りお答えいただいて、例えば私は、かねがね窒素・リンの水質基準を入れてほしいということをお願いをしておったんですが、今の段階ではなかなかそれが難しい。今のこの段階では難しいということの理解は一応したつもりでございますので、再度そういうような意見もあるのかもしれないということもありますので、その対応を丁寧にしていただきたいということであります。
 今、2の意見は言っちゃいけないんですね。1のところの部分だけでいいんですか。1と2、読んでいただいたことは両方いいんですか。

○加藤委員長 そうですね。すみません。とりあえず意見は1についてまででいいですか。

○須藤委員 「はじめに」のところだけですね。わかりました。
 それでは意見は、1のところで、これはもしかしたら2のところで書き込んでいただきたい部分があるのかもしれないんですが、浄化槽のそもそもの経緯とか、大きいものがあるとか小さいものがあるとかということで、先ほど委員長が言われましたように、私から見れば大変格調の高いものにしていただいたというので、事前に室長にもそういうお話をしました。私が想像したよりもずっとよく書いていただいたということで、それは評価をまずはしたいと思います。
 ですが、字句等について、まだまだいろいろさらに修正をしていただきたいような部分は多分あるんですが、一つ「はじめに」の中に何が少し抜けているのかなと思ったんですが、浄化槽から始まっているから浄化槽でいいんですが、生活排水対策が我が国の課題で──生活の快適性は別ですよ。そういうことがあって、現在でもなお生活排水対策を推進しなくちゃいけないのは、別にこれは閉鎖性水域だけじゃなくて、これは大きな課題だと思うんですね。まだ雑排水の未処理放流というのは3割ぐらいありますし、それから、あるいろいろな水域についての負荷源は、窒素・リン、それからCOD、あるいはBODにしても、場合によっては7割とか8割というような部分もあるわけですよね。そういう中での生活排水対策の重要性があって、全部の対策を負っているわけじゃないけれども、下水道と分け合ってそれを負ってきているんだということで、さらに浄化槽の重要性というのが、やはり1行でも2行でも入っていないと。
 要するに一言で言うと、なぜ生活排水対策なのかというところが、どこかにこの前書きの中にないといけないんじゃないかなとまずは思いました。それが初めに来るのがいいのか、その後ろの方に来るのがいいのか。前書きが余り長いのもよろしくないという意見もあったようですが、どこかにそれを書いておいていただいた方がいいんではないかなという気がしましたので、それがまず1についての私のコメントです。取り扱いは、それはどちらでもよろしいんですが、お願いします。

○加藤委員長 どうもありがとうございました。
 どうぞ、北尾先生。

○北尾委員 2ページの一番上と、その次の段落ですが、浄化槽が迷惑施設であるということが非常に強調してと言うと言い過ぎかもしれませんが、かぎ括弧で囲って2カ所ほど書いてあるわけです。確かにある時代に単独処理浄化槽が非常に近所等の家庭から顰蹙を買ったという時代があったことは事実ですけれども、しかし、あの時代において、もしそういう機能的に非常に満足な単独処理浄化槽といえども、なかったらどういう事態が起こり得たかということを考えると、つまり、具体的に言いますと、ある作家の書いた随筆の中にこういう記述が出てくるんです。昭和37年ごろの渋谷あたりの喫茶店だとかバーだとか、そういうところは、トイレが水洗でないと客が来てくれないので、トイレが水洗になっていた。しかし、その排水は裏の小川へ直結していたというようなことが書いてあるんですよね。ですから、そういう時代に、とにかく無処理のし尿というものを大規模な形で環境へばらまかなかった。一部にはそういう不法行為があったにしても、それは、やはり単独処理浄化槽というのが不十分とはいえ、一定の処理を経た上でし尿を環境へ出すという上で非常に大きな役割をしたわけです。
 要するに、私が言いたいのは、文言まではまとまっておりませんが、単独処理浄化槽は、かつては一定の歴史的な役割を遂げたけれども、いろいろ迷惑施設であったということとか、現代の要請に合わないというようなことから合併処理浄化槽が必要とされるんだというような書きぶりということにしていただく方がいいんじゃないかということでございます。

○加藤委員長 ありがとうございました。
 先生方、どういう御意見でもどうぞ。松田さん。

○松田委員 私のような浄化槽のことを初めて勉強する者にとっては、「はじめに」というところは、歴史がわかってとてもわかりやすいと思って、なるほどと納得しました。
 1つだけ私が頭の中で整理できなかった文脈があるんですけれども、「高温多湿の我が国」という文脈と、それと「衛生的なリサイクル体系」というところのつながりがよく見えてこないんです。我が国においては、古来、し尿は貴重な肥料として取り扱われていて、農村で使われているということがあって、それがリサイクル体系が存在していたということはよく理解できるんですが、「衛生的な」という表現。私、田舎育ちなんですけれども、ふん尿を畑にまいていく姿を見ているんですが、あれを衛生的というふうに理解するのかなとか思ったり、それから、高温多湿なこととふん尿のリサイクルがどういうふうにかかわっていくんだろう。高温多湿でなければ、し尿は肥料にはならなかったのかしらとか、そういうことを思ってとまってしまいましたので、ここを具体的にわかりやすく説明していただければ、さらに理解が深まると思います。
 それと、北尾先生と同じように、やはり迷惑施設というふうに、ともすれば私たちは廃棄物の問題を考えがちですけれども、決してこれは迷惑ではなくて、システムが不十分だったからの話ですから、それを改善しようというふうにいくんであれば、北尾先生と同じように、やはり時代に果たす役割をちゃんと評価した上で、さらに生活排水対策が必要なんだというふうに書き込んでいただけると、さらに理解できる人たちが多くなるだろうと、以上です。

○加藤委員長 ありがとうございました。
 建設的な意見──建設的な意見というと、建設的でない意見があるみたいに聞こえて大変恐縮ですけれども、もちろん須藤さん、北尾さん、松田さんの意見、ありがとうございました。改訂をしていきたいなと思っています。
 ほかにどうぞ。吉田さん。

○吉田委員 前回、前々回、欠席させていただいてすみません。
 今の御意見とも関連して、それから、須藤先生の御意見にも関連して、1ページ目の4パラグラフのところで「一方で、生活雑排水は排水路等により家庭や都市から排除するシステムが広く普及していた」というふうに書いているんですけれども、これはそんなに排除するシステムが普及していたのかなというところ。そうじゃなくて、やはり一緒に排除しないで流してきたから問題が出てきたんじゃないかということで、これは私は余り専門じゃないんですけれども、この辺のところで、もう一度専門家の御意見を……。

○加藤委員長 システムという言葉がちょっと気になるということですね。

○吉田委員 それから、もう一つは、その次の水洗について、欧米の真似をして水洗化という快適な生活を求めるというふうに書いてあるんですけれども、欧米の真似をしてというふうに、必ずしもこういうふうに言っていいのかどうかということが、やや抵抗があるということ。
 それから、2ページ目で、迷惑施設の問題は、今は迷惑施設というと、いわゆるごみの埋立地とか、そういうところに対してアメリカなんかはノット・イン・マイ・バックヤードということで、来てほしくないという意味で今の段階では使われているので、だから、これが先ほどから出ている意見とも関連して、使い方がちょっとずれているんではないかという印象があります。
 それからあと、2ページ目の真ん中のところですね。国庫補助事業のことが書いてあって、これは非常に重要な指摘なんですけれども、これについては、ここで書く必要はないかと思いますけれども、経済的に言うと、いわゆる下水道事業との比較対比とか費用便益というような問題もありますので、ここに書くかどうかは別にしても、先ほどの人口1割弱について使っているということがあって、それにかけている費用と下水道事業との対比というのも本当は必要ではないか。ただ、ここで書く必要は、それは判断だと思いますけれども、その辺が気になりました。

○加藤委員長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。山本さん。

○山本委員 私も「はじめに」のところは、ある種の思い入れのようなものが読み取れて、私はこれはこれでいいのではないかと思っております。大体北尾先生のおっしゃっているようなこと、皆さんのおっしゃっているようなこと、そうだと思いますし、先ほどの吉田委員との関連で言うと、やはり下水道の予算との対比なんかは、ここにあるとおり、いかにわずかな金しか使ってこなかったかということも明らかになるんではないかと思いますので、そういう部分があってもいいんじゃないかと、そういうふうに思います。
 それから、非常に細かいことで申しわけありませんが、最初のパラグラフで、思い入れの気持ちはわかりますけれども、「超大型」の「超」という言葉は別に要らないんじゃないかと思います。関西国際空港に設置されている「超」。気持ちはわかりますけれども。

○加藤委員長 家庭からあんなでっかい施設まであるんですよと、こう言いたかったんでしょうね。ありがとうございます。
 ほかにいかがでしょうか。

○由田廃棄物・リサイクル対策部長 今の迷惑施設という言葉でありますが、まさしく今は、ノット・イン・マイ・バックヤード、NIMBYシンドロームというのが国際用語にまでなっているわけでありますが、私の感じ取っている、この迷惑施設という浄化槽との関係では、実は今、産業廃棄物などの分野でも住民同意と流入抑制問題というのを取り上げまして、別途どういうふうにやるのかということをかなり長い間、環境省として勉強もしているわけでありますが、実はかなり早い時期に住民同意、放流同意という問題と並びまして始まりましたのが、実は浄化槽の世界であります。これは実は当時、一番末端の廃棄物の行政をしておりましたものが保健所というところが担当しておりまして、当然廃棄物の処理の全般的な所管を最前線の行政としてやっておったんでありますが、当時、昭和40年代の後半、浄化槽の爆発的な普及の時代に、御自身のところは水洗便所ということが維持できるわけでありますが、なかなか当時の浄化槽に関しましては、北尾先生がおっしゃるように、それなりの役回りを果たしたのでありますが、一方で、雑排水が未処理放流であることに加えまして、くみ取り便所に関しては処理水がその場で放流される。場合によっては、清掃を怠ったような場合に、いわゆる汚泥が集積したものがストレートに出ていく。いわゆる当時で言いますと「生が出る」と、こういう苦情が多発した時代がございます。
 そういう時代に一方で、先ほど、そういう意味での修正を私もさせていただいた方がよかろうと思っておりまして、一定の役割、それなりの役割を書かせて、こういう迷惑施設の面があったというような書き方の方がいいのかなと思っておりますが、ある意味では、そのあたりが廃棄物問題全体の原点になっておるというふうに思っておりまして、この浄化槽のものがその後の進展によって、まさしく全く逆に迷惑施設という立場から、いわゆる環境問題を解決するためのキーワードとして、この浄化槽が現在進展している姿が、まさしく循環型社会を我々がこれから構築していく上での一つのモデルケースとなり、基本となっているんではなかろうかという思いが、この迷惑施設というところに実は書かれているということを少し御理解いただければなと、そういう意味で、修文はさせていただきますが、名前だけは残させていただいたらと、このように思っております。

○加藤委員長 ありがとうございました。
 北尾さん、わざわざかぎ括弧を2カ所もつけなくたっていいじゃないかと、そういう御意見もありましたし、また、松田さんの言うような御意見もありまして、私も一委員としても、まさに北尾さんがおっしゃったような歴史的な役割を果たしてきたというのは触れていいんじゃないかなというふうに思いますね。
 それから、下水道との比較というのも、これもまた単純な比較をすると、片やふえた、ふえたと言ったって二百数十億ですよね。下水道で使っている何兆円というお金と比べれば、たしか国費だけでも1兆円を超えている。単純に比較すると、すごく向こうが使ってこっちが使っていないということになるんですが、一方で下水道というのは、言うまでもなく、浄化槽では絶対できない雨水排除の機能とか、都市部の洪水排除とか、そういうまた一つ別の機能、かつ非常に大きな機能もまた一方ではあるから、単純な比較というのは必ずしもできないんですが、ただ、サイズを示すという意味では、なるほどということを見てもらうという意味では、何らかの形でどこかに置いたらいいかなという感じは私もいたしますね。
 いずれにしても、皆様方から大変いい御意見をいただきまして、微調整をさせていただきたいというふうに思います。
 それから、須藤先生から、思ったよりもいい、格調高いぞと言われて、事務局の皆さん、大変おめでとうございましたと言うのはちょっと早いかもしれませんけれども、御苦労さまでしたと申し上げたいと思います。
 ほかに何かありますか。もし後でもお気づきになったら、細かいところでも結構ですから。
 例えば欧米を真似てなんていうのは、吉田先生がお触れになりましたけれども、確かに欧米をまねてというと、何かちょっとあれだなと。そうかといって、欧米のライフスタイルというものが、じゃ全然影響を与えなかったというと、そんなことはやはりないとは思いますね。ですから、欧米を真似てという表現がちょっとよくないのかもしれませんが、欧米のライフスタイルがいろいろな映画だとかテレビだとか、そういうものを通じて私たちのライフスタイルに大きな影響を与えていることは事実である。
 一方で、最近の便座みたいなものとかというのは、逆に日本製のものが欧米にかなり大きな影響も一方ではあって、それは全然浄化槽とは違った話ですからあれですが、そういうぐあいに……。それから、システムという、そんなシステムがあったのかいという吉田先生の御指摘も、確かに勝手に流れちゃっただけであってシステムがあったわけではないと、そういうことかもしれませんね。ですから、雑排水を排除するシステムというものが強固に存在したわけではなくて、勝手に流れちゃったと、こういうことかもしれません。ですから、そういう先生方からのきめ細かな御指摘、ぜひ事務局ともども直して、それから冒頭に須藤さんからも御注意いただきましたように、パブリックコメントでいろいろなものが──パブリックコメントはこの部分は来ないと思いますけれども、当然ながら反映していくということです。現時点で最良のものにして出していきたいというふうに思っております。
 そうしたら、後でまた1に戻ってくださっても結構ですが、じゃ、次に2についての御意見をいただけますか。
 河村さん、どうぞ。

○河村委員 まずちょっと言葉の問題なんですけれども、5ページのイのところです。硝化細菌が減殺されることにより硝化による酸素要求量も減衰しというふうな表現があるんですけれども、こういう言葉は余り見たことがないので、「硝化細菌が不活化」という言葉がいいのかなと思います。

○加藤委員長 不活性化という意味ですね。不活化という言葉がある。

○河村委員 それで、減衰の方も、これは何となく時間に従って減少するというような意味合いがあるかと思うので、低減でいいんじゃないかというふうに思います。それが1点。
 それから、その次の6ページの[2]の今後の課題の中で設置の状況ということがあるんですけれども、何となく具体的な内容が見えない。その下にあります工事の良否も、ある意味で設置の状況の一つじゃないかと思うんですけれども、そういう意味で、ちょっと何となくここの感じがすっきりこないなという感じがしました。

○加藤委員長 どうしたらすっきり……。

○河村委員 いや、ちょっとわからないんですけれども。設置の状況の意味合いの中身が非常にあると思うんですけれども、その辺との兼ね合いがあるかなと思います。
 もう一点は、7ページの廃止の届出に関する事項の中で、廃止した後に、その浄化槽をどういうふうにするつもりなのかとか、そういうことを何か届け出というか、明記する必要はないのかなという疑問を感じております。

○加藤委員長 今、河村先生が最後におっしゃった部分は、廃止の理由というのではちょっと足りないということですね。廃止の理由はもちろんあるんでしょうが……

○河村委員 廃止した後、埋め戻すのか、何かに利用するのかとか、撤去するのかとか、そういうのを示す必要があるんじゃないかと。

○加藤委員長 その辺。

○鎌田浄化槽推進室長 浄化槽を廃止したらどうするかというと、基本的に処理ということになると思うんですが、途中、団体からのヒアリングでも、その廃止をどうするのかとか、適正に処理するようにしなきゃいけないんじゃないかとか、あるいは、その中に入って汚泥等の処理をきちんとやることが必要ではないかということはあります。その問題の重要性とか必要性はそのとおりでございますが、それを届け出に書くかどうかということは趣旨として違うのではないか。したがって、我々が考えているのは、こういったことを省令等の施行に際してきちんと、廃止した後の浄化槽についてもきちんと処理していただきたい、汚泥も含めて処理していただきたいということは言っていきたいと思います。

○河村委員 汚泥の処理だけじゃなくて、これを埋め戻しをするのか、あるいは撤去するのか、あるいは、例えば雨水貯留槽みたいな形で利用するのかとか、そういう情報も得ておいた方がいいのかなということで、御検討いただければと思います。

○新美委員 今の点に関係するんですが、今言った汚泥の処理なんかをどうするのかというのは、むしろそれは廃止のための条件みたいな感じを受けるわけですね。ところが、廃止後どういうふうにするのかというのは、これはある意味で財産権をどうするのか、自由じゃないかという話と絡んできますので、同じレベルではちょっと議論できないんじゃないかという気がいたします。ですから、この省令の案というか、ここに書いてありますように、その辺については踏み込まないというのは一つの考え方であろうかというふうに思います。

○加藤委員長 ありがとうございました。
 須藤さん。

○須藤委員 先ほど、大変全体として格調が高くなったということで評価をさせていただいたんですが、それは私の意見を受け入れてくれたということで評価をしたわけじゃなくて、全体としてという意味であります。特に私がずっとこだわってきたのが、BODだけであるというところにこだわってきてまいりまして、今の段階になって、窒素・リンを加えなさいとかということを申し上げるのは、議事運営上混乱を招きますので、それは申し上げませんが、パブリックコメント等で、この辺のところでたくさんもし出てくるような意見があったならば、その取り扱いについてというようなところで、少し、例えば速やかにこれを対応するとか、何かそんなようないろいろ表現もあるだろうと思いますので、窒素・リンが大事であるということは、私はこれを読んでもわかりますので、それはそれでいいと思うんです。ちょっと参考までに、行政対応で一、二例申し上げておきたいと思います。
 というのは、茨城県は特殊だと言えば特殊なのかもしれませんけれども、霞ヶ浦、牛久沼、涸沼、これは特に窒素・リンは上がって、多分霞ヶ浦なんかも上がっているんですね。何とかしてこれを対応しなくちゃいけない。もちろん皆さんがおっしゃるように面源負荷もあるし、ほかのこともあるんですが、浄化槽についても何とか放流水の水質基準は窒素・リンで対応していきたいというので、一昨日もそういう委員会もあったんですが、実は、この環境省の浄化槽の基準の中に窒素・リンを入れていただくことを期待していたわけですよね。それは多分期待できないでしょうというふうに私は申し上げてあります。ですが、そうなってくると、もう条例対応しかないのかなということで、実際には一つの県であるけれども、条例対応で窒素・リン除去型の普及をするためには、そういう水質のある目標を定めなくちゃいけないということもあり得る。しかしながら、先ほどおっしゃっていただいているように、予算等のそういう補助体制も確立するとか、そういうようなこともあるので、何が先進かわかりませんけれども、先進的に進まなければいけない。そういう窒素・リン除去型浄化槽をやらなくちゃいけないようなところには、これでいいんですけれども、ぜひやっていただくということをしていただかないと、国が何となくこれが不要だというふうにとられないことが必要で、これをちゃんと読めばわかるんですけれども、ちょっとその辺がやはり気になったので、この間のような意見を申し上げましたが、現実にそういう問題が出ている。行政は困っている部分もあるんだということは知っていただきたいということだけはお願いでございます。
 ですから、どこをしなさいということじゃなくて、もしパブリックコメント等で、あるいは県からどういう意見が来るかわかりませんけれども、私は県からも意見を出しなさいと言っておきましたので、その辺のところの対応は十分丁寧にしていただきたいと、こういうふうに思いますし、応援をしていただきたいと思います。

○加藤委員長 どうもありがとうございました。
 ほかに。どうぞ、木曽さん。

○木曽委員 ちょっと表現上の細かいことになるんですが、5ページ目の真ん中辺、イというところの2つ目のパラグラフですが、「浄化槽については、現在、硝化による酸素要求量を加味した上で」という、これ、加味した上でというふうな、意図的に何かをやっているような気がするので、これはあえて加味しているわけではなくて、例えば酸素要求量を含むBODによる性能評価とでもいいますか、そういうちょっと文言の問題があるんではないか。
 それから、同じようなことなんですが、6ページ目の(2)の7条検査の検査時期についての[1]のところの第1パラグラフの下から2行目なんですが、検査時期の前倒しを行うことが必要であるというふうにここでは述べられているんですが、その上の説明では、必要性を必ずしも言われていないんですね。むしろ前倒しが可能になったことを言われているような気がいたしますので、今までの議論でも、前倒しをすることが必要なんだという必要性のことは余り議論できていなかったような気がします。前倒しができるような状況になったと、こういうふうな議論ではなかったかなというふうに思っているんですが、そういう意味で、その後ろの文章で、検査の効率的な実施という観点から前倒しをすることは必要だろうと、こういうふうに思うんですが、ちょっとその辺が細かい文言かもしれませんけれども、議論の流れの中で少し気になりました。
 それから、これは指摘というよりは御意見を伺いたいということなんですが、5ページに戻りまして、イの放流水の水質の測定場所等につきましての2つ目のパラグラフの4行目に、BODの測定方法等につきまして「今後の課題として議論することが適当である」というふうに……。これも今までこういう議論なんですけれども、要するに、今までATU-BODでありますとか、放流水でBODをはかることが適当であるとか、こういう議論がなされてきたと思うんですが、現状の消毒前のBODということで、今、省令案として出されているわけですが、どういうことが解決できれば、採水箇所を変えることができたり、測定方法を変えることができるのかということを今後ちょっとまた議論していただければと、こういうふうに思っております。どういうことをクリアすれば採水場所が変えられるのかとか、そういうこともちょっと今後また御議論いただきたいと、こういうふうに思っております。

○加藤委員長 ありがとうございました。

○国安委員 まず、用語についてですが、「放流水」と「処理水」という言葉の使い分けがされていますけど、それが意図されて使い分けられているのでしょうか。また、浄化槽の規模等を表す表現として、「一般家庭」と「戸建て住宅」の2種類があるのですが、それぞれもう少し正確に使う必要があると思います。
 5ページのイの「放流水の測定方法や測定試料の採取場所について」というところの第1パラグラフで、塩素消毒により云々の部分で「BOD値が低くなることから、下水道など他の生活排水処理施設と同様に」という表現があるのですが、たしか、委員会では、公共用水域に及ぼす影響、そういった観点から、下水道と同じ場所で採水した方がよいのではとの提案で、結果として従来法のBODよりも測定値が低くなる。現在の表現だと、BODを下げるために消毒後の水を採取すべきであると誤解される可能性があるのでは、そういった議論ではなかったと思いますが。
 また、順不同で申し訳ないのですが、4ページ目のアの「窒素・リンの扱いについて」の部分の下から8~7行目、窒素除去型の記述で「生物膜法の浄化槽での利用技術の確立や移送能力を有する汚泥循環装置の開発」云々、この部分は窒素を安定的に除去するためには、硝化液を脱窒工程に安定的に移送することが必須であること。例えば、戸建て住宅の場合には毎分1~3リットルと非常に少ない量を安定的に移送しなければならず、むしろ、安定した移送能力を有する循環装置が開発されたので、5人槽と小さな規模でも安定した窒素除去が期待できるようになったという表現の方が望ましいと思います。
 さらに、6ページ目の(2)「第7条検査の検査時期について」、[1]の「省令案として考えられる事項」の上から4行の部分で、早く実施できるようになった理由として「製造及び管理技術の進歩により」という記述がありますが、製造と言うよりも、処理技術と管理技術の進歩によりと表現した方が適切であると思います。

○加藤委員長 どうもありがとうございました。
 今まで先生方に具体的に修文を御提案いただいて、例えば一、二の例でいくと、河村先生の減衰を低減にした方がいいとか、減殺ではなくて不活化だとか、こういったものは、事務局にわかりやすいように後でメモで、この原案に書き込んでもらって簡単に送っていただければと思います。そうすると、修文作業に非常に先生方の御意図を適切に反映できるようになろうかと思います。ある特定の先生がAをBに変えろということだけで、それで決めてしまうということではもちろんございませんが、参考としていただいて、次回までにはどこがどう変わったかということがきちんとわかるようにしたいと思います。
 どうぞ。

○須藤委員 ちょっと先ほど、私、字句のところというか表現のところを申し上げなかったんですが、水濁法にしても、そのほかの法律も、リンというのは平仮名だったんじゃなかったかなと思うんですけれども、ちょっと確認をしてください。リンはみんな片仮名で書いてありますよね。ですから、そういう用語は、やはり環境省で出すので、法律的に使われる言葉、表現の仕方がよろしいかなと思います。
 それから、先ほど河村先生や国安先生が言っているような部分もあるんですが、5ページのイはバクテリアなので、「硝化する細菌が繁殖」じゃなくて、これは多分増殖ですよね。用語としては増殖が妥当だと思いますし、それから、河村先生、不活化とおっしゃったんだけれども、硝化細菌なので、これは殺滅の方がより妥当かなというふうに思います。
 そういうようなことで、幾つか……

○加藤委員長 専門家から2つの意見があったんですが。

○須藤委員 ウイルスだったら不活化でいいんですが。河村先生、そうじゃないですか。ウイルスと細菌では……

○河村委員 病原菌の場合は、よく不活化という言葉を使うので。殺滅ですか。

○須藤委員 死ぬんでしょう、ここは。

○山本委員 いや、全部死ぬとも限らない。

○須藤委員 じゃ、不活化でいいのか。死ぬんじゃないですね、ここは。じゃ、不活化でいい。それは、もし死なないんだったら不活化でいいです。

○加藤委員長 いずれにしても、先ほどちょっと諸先生方にお願いしましたように、表現について、御発言なさったところ以外でも……。ただ、先生方からいただいた意見をそっくりそのままというわけでは必ずしもないとは思いますけれども、事務局及び私の方の参考までに、ぜひいただきたいと思います。
 山本さん。

○山本委員 字句の方はまた後で指摘することにいたしますが、一つ、今後の課題の窒素・リンのところで、私も、必要なところは窒素・リンの除去を進めていかなければいけないというのは、そのとおりだと思っております。ただ、この文言の中で、もちろんそうではないんですが、読み方としては、窒素・リンを同時にいつも除去するような方法を今後開発ないしは推進していくべきだというふうにも読み取れなくもないわけです。それは、今後健全な水循環をつくっていく中に、私、都市の中でも浄化槽は水循環装置として入れるべきだと、下水道の更新の中で入れていくべきだという意見を持っているんですけれども、その場合に地下浸透ということも十分考えられるわけです。そうすると、地下水汚染を引き起こす窒素は除去しなければいけないが、リンは必ずしも取る必要はないかもしれない。そういう事態もあるので、ここは必要に応じてだと思うんですね。要するに、窒素・リンというのをいつも同じようなキーワードでくくってしまうと、両方いつも何か取らなきゃいけないんじゃないかというような言葉になってしまうといけないので、その辺はやはり文言として気をつけて、窒素を取るだけでもいいかもしれない、あるいはリンを優先して取らなきゃいけない場合もあるかもしれない。そういう部分を含めて、技術開発は非常にそれで決まりますから、そういうような部分をきっちりわかるような形で書くべきだと思います。
 一文としてですが、例えば5ページの8行目ですけれども、ここを「窒素・リン」とは書かずに「窒素やリン」と書けば、そのニュアンスが伝わるんじゃないかと思います。

○須藤委員 その意見には私も賛成です。

○新美委員 今のところに絡むんですが、これは文章の問題と中身の問題と両方絡むんですが、今の一つ下の行になって、「具体的には」という表現がうまくつながらないんですね。その前のところは見極めて、最後は水質基準を設ける……

○加藤委員長 先生、何ページの何行目。

○新美委員 5ページの9行目ですね。この「具体的には」というのは、むしろそうではなくて、そこに至るまでの当面の課題としてはというような趣旨じゃないんでしょうか。何を具体化したのかというのがよくわからないので……

○加藤委員長 もっともだと思いますね。
 大体よろしいですか。まだ恐らく御意見があろうかと思いますが、別のところもまた重要ですので、ちょっと進ませていただいて、時間があればまた戻っていただいて結構ですし、それから、御発言いただかなかったことで、後でもう一回読み直してみたら気がついた修文とか、ぜひ事務局の方にお寄せいただきたいと存じます。
 それでは、次の文を事務局、読んでください。8ページの半ば以降ですね。

○事務局 では、8ページをごらんください。読み上げます。

3.浄化槽の維持管理に係る業務の在り方について
 浄化槽の維持管理に係る業務の在り方についての検討は、平成17年の法律改正に伴う省令事項等の検討とともに、本専門委員会の設置に際して、急ぎ行う必要があるとした事項である。
 このため、省令事項の検討に併せ、浄化槽関係団体や有識者に対してヒアリングを行うなど、精力的に検討してきたところであるが、維持管理の業務に関しては様々な課題が指摘され、また、関係者も多いことなどから、これまで議論が尽くされたとは言えない状況にある。したがって、本中間とりまとめには、本専門委員会における審議やヒアリングにおける意見や要望を整理し、列挙するに留め、年末のとりまとめに向けて引き続き審議を行うこととする。
 浄化槽を適正に維持管理することは、浄化槽が水環境の保全に資する施設としての機能を発揮するためには不可欠のことである。しかしながら、浄化槽が本格的に普及して以来、維持管理の向上は常に課題となってきたことは否めない。また、環境意識の高まり、技術革新の進展、人口構造の変化など浄化槽をとりまく社会的・経済的な状況の変化によって新たな課題も出現している。さらには、汚水処理施設整備交付金の創設にみられるように、公共投資の効率化が求められるようになっており、浄化槽への期待が高まっている反面、投資の効果として水環境の保全、改善に確実に寄与することが求められている。
 ここに列記する意見や要望は多岐にわたり、中には主張の内容に大きな隔たりがあるものもあるが、それぞれが維持管理の業務のみならず浄化槽や浄化槽行政にとって重要な指摘であるのも事実である。その一つ一つについて答えを出し、実行に移していかなければならないが、検討に際しては、問題とされる事象のみにとらわれず、浄化槽にとって必要なことは何か、使用者のみならず国民は何を望んでいるか、環境保全のためにはどうしたら良いか、といった広い視野を持つことも必要であろう。

(1)浄化槽の維持管理全般にわたる意見について
 浄化槽の維持管理として、浄化槽の点検、調整又はこれらに伴う修理をする「保守点検」、浄化槽内に生じた汚泥、スカム等の引出し、その引出し後の槽内の汚泥等の調整並びにこれらに伴う単位装置及び附属機器類の洗浄、掃除等を行う「清掃」があり、これら浄化槽の保守点検及び清掃が適正に実施され、浄化槽の機能が正常に維持されているか否かを確認するための「法定検査」がある。しかし、関係者から、
 ・保守点検、清掃及び法定検査といった維持管理それぞれの役割や必要性について、浄化槽設置者の理解が必ずしも十分に得られていないのではないか。
 ・特に法定検査については、保守点検や清掃を行えば十分と考えている浄化槽設置者が多く、これが法定検査の受検拒否や低い受検率の原因につながっているのではないか、
 との意見があった。
 また、保守点検は浄化槽管理士又は都道府県の登録業者が、清掃は市町村の許可業者が、法定検査は都道府県が指定する検査機関がそれぞれ行っているが、
 ・清掃、保守点検及び法定検査が各関係者それぞれの都合で行われるなど、関係者間の連続が不十分であることが、浄化槽設置者に「わかりにくい」と感じさせ、不信感を持たせる原因となっていることから、各関係者が連携を図り、作業実施月等の調整をルール化することが必要なのではないか、
 との意見もあった。
 さらに、浄化槽の維持管理については民間事業者が行い、それを公的機関が監視する仕組みをとっているが、平成17年の浄化槽法の改正により、浄化槽の公共用水域等の水質保全に資するという役割が明確になり、維持管理業務の重要性が増したとして、
 ・市町村又はそれに準じた公的関与の強い維持管理体制の確立を推進するべきではないか、
 ・維持管理費用への公的資金の導入を考える必要があるのではないか、
 との意見もあった。

(2)浄化槽の保守点検に関する意見について
 浄化槽の保守点検については、その技術上の基準に従い、環境省関係浄化槽法施行規則(以下「省令)という。)第6条に定める回数を実施することとなっている。具体的には、省令第6条第1項及び第2項において、通常の使用状態において、処理方式や浄化槽の種類ごとに定められる期間ごとに1回以上とすることとされており、また、省令第6条第4項において、駆動装置又はポンプ設備の作動状況の点検及び消毒剤の補給は、前述の規定にかかわらず、必要に応じて行うものとすることとされている。
 この保守点検回数については、
 ・省令第6条に規定する保守点検の回数について見直しが必要ではないか、
 との意見があった。
 具体的には、まず、省令第6条第1項及び第2項中の「通常の使用状態において」という規定に関して、
 ・「通常の使用状態において」とあるのを「使用状態に応じて」に改め、実態に即した保守点検を行う規定とするべきではないか、
 ・「通常の使用状態」の定義を明文化する必要があるのではないか、
 との意見があった。これに関連して、
 ・通常の使用状態でないことが原因で、保守点検の技術上の基準の範囲では、性能基準を満足しないと認められるものの扱いを明文化するとともに、その際の解決策として、メーカーの開発担当者が個々の事例に対応する等、メーカーの義務を具体化することで解決できる部分もあるのではないか、
 との意見があった。
 また、省令第6条第1項及び第2項中の「以上」という規定に関して、
 ・保守点検回数が増えれば増えるほど、清掃を年1回以上実施している割合は多くなっており、適切な汚泥管理を確実に実施するためにも点検回数の増加は必要不可欠ではないか、
 との意見がある一方で、
 ・保守点検回数については、全国的にばらつきがあり、業者独自の法解釈や監督官庁の様々な判断の下、設置者の理解が十分得られない中で業者が一方的に回数を決めていることが設置者に不信感を与える原因になっているのではないか、
 ・毎月点検(年12回点検)は、通常の4倍の基数を行わなければならなくなり、必然として「5分間点検」となってしまい、設置者に不信感を抱かせる最大の原因となっていることから、浄化槽の処理方式及び種類に応じて保守点検回数を明確にするため、省令第6条第1項及び第2項にある「以上」を削除するべきではないか、
 との意見があった。
 さらに、省令第1条第4項中の「必要に応じて」という規定に関して、
 ・省令第6条第4項の適用範囲を広げ、通常の使用状態以外や構造例示型以外又は構造例示型で高度処理型のもの等に、この条文を反映させることが必要ではないか、
 ・第11条検査において不適正と指摘されている内容の3項目(設備の稼働状況、消毒の実施状況、残留塩素濃度)は点検回数が増えれば確実に減少することから、点検回数を考える上で省令第6条第4項を一層重視し、第11条検査結果を反映させた可能な限り頻繁な保守点検の実施を実現するべきではないか、
 との意見がある一方で、
 ・消毒薬やブロワーについては、製品の性能の向上や維持管理の仕方により一定期間安定的に機能を維持することが可能となっていることから、毎月点検を行う必要はなく、駆動装置又はポンプ設備の作動状況の点検及び消毒剤の補給については、「必要に応じて」ではなく、「定期点検時」に行うものとするべきではないか、
 との意見があった。
 さらに、保守点検の費用については、
 ・毎月点検(年12回点検)は、1回の料金を下げても、年間の費用は高くなり、設置者に過大な費用負担をかけることになるのではないか、
 との意見がある一方で、
 ・浄化槽の保守点検にかかるコストは点検回数とは無関係であり、むしろ点検回数が少ないほど清掃のコストがかさむ傾向にあることから、今後、保守点検及び清掃のトータルコストを検証する必要があるのではないか、
 との意見があった。

(3)浄化槽の清掃に関する意見について
 浄化槽の清掃については、その技術上の基準に従い、毎年1回行わなければならないと規定されている。
 清掃の回数について、
 ・年1回の清掃の遵守徹底へ行政指導・行政施策の強化を図るとともに、通常の使用状態以外や構造例示型以外又は構造例示型で高度処理型のもの等についても、その扱いを明文化する必要があるのではないか、
 との指摘がある一方で、
 ・清掃の回数については、どういう使用状態であっても年に1回以上とされているが、少子高齢化の進展により、今後老人の一人世帯や二人世帯の増加が予想されることから、アメリカのように5人槽を1人で使えば5年に1回でいいというような決め方の方が合理的であり、その際には、その使用状況に併せて適切な清掃をしているか、コストの代替である料金も適正であるかを第三者機関がチェックする仕組みを構築することが必要ではないか、
 との意見があった。
 このほか、
 ・濃縮車の使用は、汚泥の処理及びリサイクルを行う上で好都合であり、また、処理水の張り水としての利用は省資源化と浄化槽の立ち上がりを早める効果が期待できることから、清掃作業の実施に濃縮車の使用を奨励する行政指導を行うべきではないか、
 ・新しい技術開発を促進する受け皿を整えることが必要であるが、例えば汚泥が出ない浄化槽が開発された場合、その普及段階においていろいろな横やりが入れば、新しい技術開発を阻害することとなるのではないか、
 との意見があった。

(4)法定検査に関する意見について
 法定検査は、浄化槽の保守点検及び清掃が適正になされているかを確認するものであり、都道府県が浄化槽の保守点検及び清掃に関し適正な指導監督を行う上でも必要不可欠な制度である。
 そのうち、特に第11条検査については受検率が低く推移しているが、
 ・受検拒否者が増えている現状においては、指定検査機関の努力に委ねるだけでなく、検査の依頼などについて積極的な行政の関与が必要なのではないか、
 ・保守点検業者との連携が必要であり、浄化槽行政として何らかの制度上の方策が必要なのではないか、
 といった行政の積極的な関与を求める意見があった。また、受検率が低い理由が、検査体制や検査費用にあるとして、
 ・検査労務や受検者のコストを軽減するため、一定年数の検査結果が良好であれば、その後の検査内容を簡素化するなどの措置を講じることが必要ではないか、
 との意見もあった。
 また、第11条検査の実施時期や回数については、
 ・使用人員が人槽人員の80%を超えると、汚泥の急速な堆積のため清掃後10ヶ月頃からBODが著しく悪化しており、第11条検査は本来の意味からも意図を持たずランダムに実施する必要があるのではないか、また、この急激な汚泥増加に対処するため、保守点検の点検期間は短い方がより対応しやすいのではないか、
 ・第11条検査は抜き打ち、無差別に行うべきであり、全ての浄化槽において毎年1回行う必要があるのか疑問。特に、既設の単独処理浄化槽については、費用対効果で見れば第11条検査によって得られる効果は希薄なのではないか、
 との意見があった。
 このほか、
 ・不適正率については、全国的にばらつきが見られるため、国として法定検査の判定について統一した基準を作成し、指定検査機関の検査員に対し再教育の実施と公正さを担保するための国家資格の付与が必要ではないか、
 ・検査に関する負担を軽減するため、例えば、透視度が一定程度であればBOD検査を不要とするなど、検査方法の簡素、合理化を図ってはどうか。また、こうしたことは、汚濁負荷を減らすインセンティブやそのための努力に対する評価としても検討が必要ではないか、
 との意見があった。
 そもそも法定検査は、保守点検や清掃の際に保健所職員が立ち会い、監視するといった民間による管理業務を公が監視するという自治体の業務から始まったものである。その後の単独処理浄化槽の普及により、自治体自らが立ち会うことが困難となったことから、第三者性と公共性を確保しつつ、実効を上げるために、都道府県に代わって指定検査機関が検査を行う仕組みとしたものである。平成17年の浄化槽法の改正は、こうした法定検査の位置付けと仕組みを前提として、法定検査の確実な実施とその結果を踏まえた都道府県による指導監督の強化を図るものである。こうした経緯を踏まえれば、法定検査の確実な実施のための努力が一層求められるが、上記のような指摘を踏まえ、行政と指定検査機関の連携、検査体制の在り方、検査の方法などについて検討する必要がある。また、法定検査の結果を踏まえ都道府県も指導の徹底、強化を図ることとなるが、必ずしも浄化槽の維持管理に求められる保守点検や清掃がなされていないとの指摘もあった現状も改める必要がある。

4.その他
 (1)既設の単独処理浄化槽の浄化槽への転換対策について
 単独処理浄化槽は、し尿よりも汚濁負荷の大きい生活雑排水を未処理のまま放流し、更にし尿由来の汚濁負荷の低減も不十分であることから、水質保全面から問題となっている。また、平成16年8月に総務省がまとめた「湖沼の水環境の保全に関する政策評価書」において、生活雑排水を処理しない単独処理浄化槽がいまだに相当数設置されており、単独処理浄化槽の解消についてなお一層推進を図ることが指摘されていることからも、早急に浄化槽へ転換する必要がある。
 これまでも、単独処理浄化槽の浄化槽への転換は浄化槽行政にとって重要な課題となっており、平成7年6月には、旧厚生省の「単独処理浄化槽の廃止に向けて」と題する単独処理浄化槽に関する検討会の報告において、21世紀初頭には既設の単独処理浄化槽もすべて合併処理浄化槽に転換することが目標とされた。
 この目標を実現するため、浄化槽に関係する業界団体を中心とする努力により、平成12年に浄化槽法が改正され、単独処理浄化槽の新設を原則禁止とするとともに、既設の単独処理浄化槽を浄化槽等に転換する旨の努力義務規定が設けられた。これを受け、浄化槽タウンミーティング等を通じ、単独処理浄化槽の使用者に対し浄化槽への転換を図るよう普及啓発を進める一方で、一部の自治体においては、単独処理浄化槽の撤去費用に対し補助を行うなど独自の取組が行われてきた。
 しかしながら、平成15年度末現在において、全国に単独処理浄化槽は約651万基あり、約215万基ある浄化槽の約3倍にものぼる。単独処理浄化槽の1日1人当たりの汚濁負荷は浄化槽の約8倍であることから、単独処理浄化槽による総汚濁負荷の規模は浄化槽の約24倍と推計される。さらに、平成12年の改正浄化槽法が施行された平成13年度から15年度までの3年間の単独処理浄化槽の年平均廃止基数が約24万基であることから、このままのペースでは、すべての単独処理浄化槽が廃止されるには、約27年間かかると推計される。
 こうした状況にかんがみれば、従来の使用者に対する普及啓発を中心とした取組や自治体独自の支援だけではなく、国としても、単独処理浄化槽の撤去に対する財政的な支援を行うなど単独処理浄化槽から浄化槽への転換を促す措置を講ずる必要がある。

(2)違法単独処理浄化槽への対策について
 平成12年の浄化槽法改正により、単独処理浄化槽の設置は原則として浄化槽法及び建築基準法に違反することとなったが、依然として、単独処理浄化槽が違法に製造され、設置される事例が見受けられるところである。
 違法に単独処理浄化槽を製造、設置することは、単なる法令の不遵守という字義どおりの問題にとどまらない。汚濁負荷の高い未処理の生活雑排水を恒常的に放流することにより、公共用水域等の水質汚濁を招き、将来にわたって国民の快適で豊かな水環境に支障を生じさせることになるのである。
 今後は、行政と業界団体が一致協力して違法単独処理浄化槽への対策を強力に推進することが求められている。具体的には、行政において、建築確認及び完了検査における確認等の徹底や浄化槽工事業者に対する指導の強化が図られるよう環境部局が建築部局及び土木部局に協力を求めるなど、関係部局が連携して違法単独処理浄化槽対策を進める必要がある。また、違法に単独処理浄化槽が製造されたり、設置されたりするのを実際に知りうるのは浄化槽関係者や住民であることから、業界や住民と行政の連携が重要である。特に、行政に代わって法定検査を行っている指定検査機関の果たす役割は大きいと言える。

(3)国民への普及啓発の一層の促進について
 浄化槽は、経済性・効率性に優れた生活排水処理施設として、多くの自治体において整備が進められているが、今後の浄化槽整備の中心が中山間地域となることを考えれば、経済性・効率性に優れた浄化槽の特長がますます発揮されることが期待される。また、浄化槽が整備され、適正に維持管理されることにより、清流が回復し、ホタルが棲む水辺環境が復活した地域もあるなど、水環境の改善を身近に実感することができることも浄化槽の特長である。
 しかしながら、こうした浄化槽の機能や特長については、関係者の長年の努力にもかかわらず、理解が十分に行き渡っているとは言えない状況にある。具体的には、自治体の関係者の中には浄化槽が「つなぎ施設」であるとの認識が残っており、必ずしも浄化槽の整備に積極的でないとか、あるいは、設置者から浄化槽の維持管理の必要性について理解が得られておらず、これが法定検査の受検率が低迷する一因ではないか、との指摘がある。
 このため、浄化槽の整備促進、適正な維持管理の確保のためには、法制度の整備や予算面の拡充だけでなく、浄化槽本来の機能や特長、維持管理の重要性について、自治体や設置者を始めとする地域住民の理解と協力が最も重要である。今後も浄化槽タウンミーティングやトップセミナーなどを活用して、関係団体の協力を得ながら、一層の啓発活動を実施していくことが必要である。
 さらに、浄化槽は、し尿や生活雑排水を、その排出者である住民が暮らしているところで処理することから、日常生活による環境負荷、水環境の汚染などについて考えるきっかけを与えるものである。地球規模の環境問題もその原因をたどれば日常生活や事業活動に起因することを考えると、こうした浄化槽の特長を活用することは有効である。しかし、環境保全活動・環境教育推進法の制定を機に、地域住民の諸活動や学校教育の場において、環境保全のための様々な取組がなされているが、小中学校の教科書において浄化槽を取り上げているものが全くないなど、浄化槽に関する活動は盛んとは言えない。国民一人一人が水を大切に使いつつ水を守り育てる気運を高めるためにも、このような機会に浄化槽が積極的に取り上げられることを通じて、浄化槽の機能や特長について一層の理解を求めることが必要である。

(4)浄化槽の整備による効果の調査研究の推進について
 浄化槽については、学識経験者を始めとする専門家や技術者の努力によって浄化槽本体による処理性能の向上が図られ、恒久的な生活排水処理施設にふさわしい性能を有するに至った。他方、浄化槽の整備による効果として、身近な河川の水量の確保や清流の回復などが注目されているが、水環境の保全や改善に果たしている役割や機能については、実証的な研究に乏しい。こうした浄化槽による効果を具体的なデータとして把握することは、今後の浄化槽に関する施策の知的基盤として不可欠である。このため、浄化槽が水環境にどれだけ貢献するか、浄化槽からの放流水が自然浄化を通じて公共用水域の水質改善にどれだけ効果があるかなどについて詳細に調査することが必要である。また、浄化槽は、市町村あるいは国による投資という面で見ても、その投資効率は極めて高い上、浄化槽の工事業者、保守点検業者及び清掃業者は地元密着型の業者が多く、浄化槽の整備による地域経済に与える効果も低くないと推測されることから、浄化槽の整備を一層促進する上でも、浄化槽の整備による経済や社会に与える効果・影響について定量的な分析を進めることも必要である。

(5)浄化槽汚泥の処理体制の確保について
 浄化槽汚泥は、一般廃棄物として市町村がその処理全体を管理する責任を有しており、その処理計画に基づき適正な処理を行うこととなっている。また、浄化槽法においても、当該市町村の区域内で収集された浄化槽汚泥は当該市町村のし尿処理施設で処理することが努力義務化されている。さらに、現状を見ると、浄化槽の普及に伴い浄化槽汚泥の量が増加した結果、全国では浄化槽汚泥が計画収集量の約2分の1を占めるに至っている。しかし、一部のし尿処理施設では十分な対応ができず、浄化槽汚泥の受入れを制限するため、浄化槽の清掃を適切な時期に実施できないという指摘がある。浄化槽の適正な清掃は浄化槽の所期の機能を発揮させるために必要不可欠であることから、必要に応じて浄化槽汚泥をすぐに引き出し、運搬できるよう浄化槽汚泥の処理体制を整えることが必要である。さらに、循環型社会を構築する観点からは、浄化槽汚泥のリサイクル技術の開発などにより、地域におけるバイオマスのリサイクルシステムづくりに組み込んでいくことが求められる。

(6)浄化槽の海外展開について
 今世紀は環境と水の世紀と言われるが、世界の多くの国々では、水不足や排水処理などの問題を抱えている。こうした問題を解決するために、処理性能に優れ、経済的であり、かつ、水循環の確保に寄与する浄化槽の果たしうる役割は極めて大きい。平成15年に京都で開催された第3回世界水フォーラムにおいても、生活排水のオンサイト処理・管理のシステムとしての浄化槽の有効性が大きく取り上げられ、浄化槽の海外での普及の必要性が訴えられた。また、平成17年の浄化槽法改正により創設された放流水の水質基準をBOD20mg/L以下とした場合、世界で最も厳しい基準となると見込まれ、例えば、アメリカのETV(環境技術実証制度)の活用等により、開発途上国のみならず先進国への技術の移転も極めて有効であるとの意見もある。さらに、処理水や浄化槽汚泥の農業利用を併せて提案すれば、海外での普及も進むのではないか、という声もある。浄化槽を海外で普及させ、定着させるには、単なる技術移転にとどまらず、汚泥の受入れ施設も含めた維持管理のシステムの導入も必要であり、施設の運転や整備の技術、電気などの基礎的なインフラの整備も不可欠である。水事情だけでなく、技術水準やインフラの整備状況などは、国ごとに異なっていることから、相手国の制度や地域特性を十分に検討した上で、官民を挙げて浄化槽の海外展開を推進することが求められる。

(7)技術開発の促進について
 浄化槽が公共用水域等の水質保全に一層寄与するものとなり、また、環境意識が高まりつつある中、国民のニーズに応えたものとなるには、浄化槽の更なる技術開発が不可欠である。現在の浄化槽ほか体系においては、設置後数十年にわたって使用されるよう、その構造や機能について製造に際しての規定があり、設置後についても、その性能のフォローアップがなされている。平成12年の建築基準法の改正によって設けられた性能評価を踏まえた大臣認定制度は、新技術の開発促進を図るものであったが、より技術開発が促進される環境を整える観点から、諸制度について見直すことが必要である。また、今後は、浄化槽の処理能力そのものの高度化はもとより、維持管理における負担の軽減、省エネルギー化、処理水の再利用といったエンドユーザーたる国民の便益に資する観点からの技術開発も望まれる。

5.終わりに
 本専門委員会では、中間取りまとめに向けて精力的な審議を行ってきたが、約3か月間という短い審議期間ということもあり、平成17年の浄化槽法改正に伴う省令事項を中心とした検討となったことから、当面の検討課題である浄化槽の維持管理に係る業務の在り方については、年末のとりまとめに向けて引き続き審議を行っていくことが必要である。また、これまでの議論の大きな焦点であった浄化槽による窒素・リンの削減についても、適宜議論の俎上に載せる必要があるほか、処理水の打ち水や水やりへの利用といった使用者の視点に立った提案も真摯に受け止めなければならない。
 これまで、浄化槽については、生活排水の適正な処理のための施設、地域における生活排水のリサイクルのための施設、身近に環境保全を実感することができる施設、投資効率の高い社会資本としての役割に着目し、浄化槽行政が推進されてきた。こうした観点からも引き続き取り組むべき課題がある一方で、環境政策は、循環型社会の構築、脱温暖化社会の形成といった新たな方向に進み出しており、環境基本計画に持続可能な社会の構築のため目標として謳われている、循環、共生、参加及び国際的取組の観点から、浄化槽を捉え直すことも必要である。なかでも、健全な水循環の確保については、人の生活や自然の営みに必要な水量の確保、水質の浄化、多様な生態系の維持、水辺地などを視野に入れると、オンサイトの処理システムとしての浄化槽の果たす役割は極めて大きい。少子高齢化などの国内の社会経済の変化のみならず、地球規模での環境保全との関わりを考慮しながら、浄化槽が新たな環境政策の要請にどう応えていくか、このために浄化槽行政はどうあるべきかといった議論を行うことも必要である。
 比較的短期に対策をまとめるべきものもあれば、腰を据えて中長期的に検討するべきものもある。冒頭に記したように、本専門委員会が永続的な検討の場として設けられた趣旨や意義を踏まえ、これらについて今後も議論を深めることとしたい。

○加藤委員長 どうもご苦労さまでした。
 非常に、諸先生方及び関係団体や有識者の方々の御意見をできるだけ最大限漏らさずに取り入れた結果、かなり長いものになりましたが、改めて読んでみますと、私ども専門委員会としての役割、責務というのもかなり大きな宿題。夏休みの宿題どころか、かなり相当な年限にわたって、夏休み、冬休み、春休み、全部入れた宿題みたいなものがまだまだあるなというふうに思っております。
 繰り返し申しましているように、とりあえず省令に対してどう考えるかというのが、私どものまず第一義のあれですが、今読み上げていただいた部分は、これから冬から、さらにもうちょっと長期にわたって検討していくべき課題がずらっと並んでいるというわけであります。先生方も、この点に非常に御関心があろうと思いますし、また、こちらに座っていらっしゃいます傍聴の席にいらっしゃる浄化槽関係団体や浄化槽に御関心のある皆様方にとっても、多分前半以上に熱い思いでお読みになったと思います。そういう意味で、いわば今後、これから以降検討すべき課題がたくさんあるんだ。しかも非常に重要な問題がたくさんあるんだということのリストといいますか、課題が上がってきました。その課題のリストの中には相異なる意見がありますね。例えば点検回数をたくさんやれという意見もあったり、そんなにたくさんやるなという意見があったり、そういうぐあいに相異なる意見もあって、かつ、これも特に実際それでもって業をしている皆様方にとっては非常に切実な問題であり、大変熱い問題でもあるというふうに私自身も考えております。そういうことを含めて、当専門委員会としては、繰り返して恐縮ですが、きちんとした現時点での最も高い視点と長期的な視点を持った答えを出していきたいなというふうに私自身も思っております。そこで先生方の意見を伺います。
 それから、きょうは一応予定は12時ということになっていますが、せっかくの機会でありますので、12時を少し延ばさせていただいて──とはいっても、1時、2時までということはあり得ませんので、12時半ぐらいまでには何とかというふうに思っております。
 北尾さん。

○北尾委員 私がこれから申し上げます意見というのは、この取りまとめのどの部分に対応するということではなくて、全般的なことに関連して申し上げたいと思います。
 維持管理に関しては、保守点検の回数についての議論というのが非常に多く述べられているようですが、私は、保守点検の回数というのは余り本質的なことじゃないと思うんです。要は、必要にして十分な保守点検が行われるということが大事ですけれども、いい保守点検の作業をやった者が報われるような仕組みができていないということが一番大事な問題じゃないかと思うんです。要するに、法定検査が行われて、その結果不適というような判断がされれば、それは管理者へは伝えられるけれども、実際に保守点検なり維持管理作業をやっている人たちにとって、いい保守点検をやったからといってどうということもないし、逆の場合もそうであるというような状況なんですよね。ですから、やはり結果がいい場合については、あるいは悪い場合についても、何らかの形で公表するなり、保守点検の内容が悪ければ、それなりの不利益を受けるような仕組みというのを構築することが大事なんじゃないかと思います。
 それから、もう一つ、保守点検及び清掃ともに言えることですが、この浄化槽の維持管理基準というものを、たしか昭和63年か64年ごろ小型合併処理浄化槽が補助対象になって、それから、それに関する構造基準が決められて、それを受けて小型合併処理浄化槽の維持管理基準等、原案を検討したことがあるわけですが、そのときに決める上での一番の第一原則というか、大前提というか、それになったのは、従来の単独処理よりも費用負担をふやさないということだったわけです。ですから、保守点検の回数についても単独処理と同じ回数でいい。それから、汚泥の引き抜きですね。清掃についても、大体単独処理浄化槽の1年分に相当を、全量を抜くのと同じ程度の汚泥の引き抜き量で十分清掃ができるというようなことを配慮してやったわけです。
 ところが、現在においては、既に2年ほど前に浄化槽法が改正されて、単独処理浄化槽というのは原則認められなくなったわけですから、現在においては、もはや昭和六十三、四年当時とは状況が違うわけですけれども、しかし、また別の意味で保守点検とか清掃の費用負担ということが大きな問題になってきている。それは、この取りまとめにも述べられているように、少子高齢化が進んでいるという中で、老人1人世帯等において非常にこの浄化槽の維持管理費用というのが大きな負担になっているという例が増えているということですね。そういう意味において、とにかく水質はよくなった、あるいは汚泥も完全に抜かれて適正に処理されたけれども、浄化槽が嫌われてしまったというようなことにならないように、やはりするということが大事なんじゃないかと思います。
 現在、既に技術上の基準では、浄化槽の嫌気濾床第一室については全量、あるいは第二室については適正量となっておりまして、そういう配慮がされているにもかかわらず、全量を引き抜くというようなケースが非常に多く見られる。多くかどうか知りませんが、決して少数例ではないという程度に見られるということは非常に問題じゃないかと思っております。
 それから、例えば浄化槽の人槽算定ですね。処理対象人員の算定において、例えば田舎なんかで非常に住宅の坪数が大きいために、やはりお年寄りが1人か2人しか住んでいられないのに10人槽を用いているというようなケースがままあって、それで、数年前にそういうことについて、会計検査院から余りにも無駄使いじゃないかというような指摘が行われて是正されたというような経緯があったわけですが、この浄化槽の維持管理に関しては、いまだに、例えば10人槽を1人で使っていようが、10人で使っていようが、費用負担は全く同じであると。もちろん設置費もそうですし、それから維持管理費もそうですし、電気代もそうであるという状況が何ら是正措置が講じられていないわけですね。だから、そういうことも含めて、浄化槽に対しても経済的なインセンティブが働くような仕組みづくりというのが大事じゃないかと思います。
 それから、清掃料金についても、私は素人なりに人から聞いた受け売りみたいなものですが、地域によって非常に料金の幅がある。例えば1立米の抜き取りに対して1万円ぐらいから3万円ぐらいの幅があるというようなことも聞いております。なぜそういう幅があるのか。実態として、それは妥当なのかどうなのかというようなことも、いろいろ実態調査をもっとやって、そしてもし不適当であれば何らかの処置を講じるとか、そういう議論をもっとやっていくべきじゃないかというふうに思っております。

○加藤委員長 どうもありがとうございました。
 今の北尾先生の御意見というのは、これまでおっしゃられたことにプラスするような意見が随分あったように思うんですが、やはりこの課題リストの中に追加した方がいいというふうに……

○北尾委員 もししていただけるものなら、お願いしたいと思います。

○須藤委員 それ以後のところで、3点ほど申し上げたいと思います。
 4の13ページ以降は、「その他」というくくりで全部ひっくるめられてあるんですね。それぞれ読んでみますと、既設単独処理浄化槽への転換についてから始まって、今までの議論したのと同じぐらいの重さ、あるいはもっと重要なことが書いてある。その他としてひっくるめるには、少し妥当ではないんではないか。それぞれもう、ここが4であるが、4、5、6、7、8、9と番号がふえるかもしれませんけれども、何となく私は、それはその他でひっくるめる問題ではないんではないかなという印象を持ちましたので、項目を挙げていただく方がよろしいんではないかとまず思いました。それが1点目。
 それから、2点目は、北尾先生もおっしゃっているし、ほかの先生もおっしゃっている部分と関連をするんですが、費用対効果の部分の解析が非常に不十分だし、これは詰めなくちゃいけない問題なので読んでみますと、先ほどの調査研究の中なんかにも書いてはあるんですが、項目としてやはり別に下水道より優れているとかということではなくて、きちんとそういう解析をされるべきだと、こういうふうに思いますので、費用対効果の解析の推進というか、その辺の評価をして欲しい。これは新たな項目というよりも、その中でわかるようにしていただきたいと、こういうふうに思います。
 それから、3番目が、これもほかの先生方との意見も出たのかもしれませんが、国民の、あるいは役所と言ってもいいんでしょうか。公的資金のこともあるんですが、浄化槽について費用負担をどうすべきか。何となくすべて公的資金につくる方も維持管理の方も求めていくという、そういうような印象が、浄化槽の場合なくはないんですね。御存じのとおり、廃・リ部じゃなくて別の部局では、環境税を取ってCO2というか、温室効果ガスの対策まで国民のそれに応じて負担をしていただこうと、こういう時代になっているわけですね。我々が水の中で汚濁源を出すときに、それなりの費用負担は当然私はなされるべきだと思うし、CO2だってそうなんだから、水だって多分そういう放流負荷料だか何か、そんなものがあってもいいわけですよね。そういうことでありますので、公的資金に求める部分はどこで、それから、我々が負担しなくちゃいけないのはどこだというような、そういう費用負担のあり方というのは、当然この中で議論をされるべき問題で、若干触れているんですが、その辺のところを感じましたので、やはり時代が昔と違っているわけですね。要するにCO2まで対策費用を求めようと言っているわけですので、水についてもその辺の部分はきちんとなされるべきだと、私はこういうふうに思います。

○加藤委員長 どうもありがとうございました。
 吉田さん。

○吉田委員 今のお二方に関連して、私は、このその他のところの全体のまとめで、やはり水環境負荷をどうやって費用効果的に下げるかという視点からまとめる必要があるんじゃないか。これは私見ですけれども、その際、やはり大きな柱が2つあって、1つは、現在の保守点検等の合理化の問題が1つと、それからもう一つは、やはり一番汚染負荷が高い単独浄化槽問題をどうするかということがあると思うんですね。それで、まず単独浄化槽問題について、やはり転換促進をどうするかということで、今、須藤先生がおっしゃったように、公的負担、補助金の部分と、それから例えば税をかける。つまり単独浄化槽の人については、やはり負荷が高いわけですから、負荷に応じた税を取るということだってあり得るわけですね。また逆に対応して補助金をつけるということもあるわけですから、その選択肢として、単独浄化槽でも、一方で新設を禁止しておきながら、既設については何もしないということは非常に不合理なわけですよね。ですから、その促進について、税を取ることも含めて、どうやって補助金も含めてやっていくかということ。これがやはり先ほどのリンとか窒素の話もありますけれども、これは大事なんだけれども、トータルでいったら、これほど単独浄化槽がやはり負荷をかけているわけですから、この問題をどうするかということを、やはり前面に私は掲げるべきだと思うんですね。これはデータ的にもはっきりしているわけですよね。だから、その意味で、やはり水環境負荷をいかに費用効果的に減らしていくかという視点で、この問題はやはり後ろの方じゃなくて、もっと前に掲げるべきではないかというのが1つ。
 それから、もう一つ大きな柱は、保守点検問題についての先ほどの御指摘もありましたけれども、合理化ということですね。これは私、ユーザーの視点から言いますと、年に何万円か取られているわけですけれども、アメリカの事例とか、それからユーザーから見ると、例えば車を保有していて検査を受ける。車検が1年なり2年で来て、かつ通常、日常点検というのをやっているわけです。普通の人で浄化槽を持っている人は、それ以上の意識はほとんどないわけですよ。そういう人たちに対して、非常に今の制度がやや複雑で、かつ何のために取られているか、何でその料金になっているか、そしてその回数はどうかということを、私のところなんかも、要するに最初、毎月やっていたのが、業者が「これはやり過ぎだから」と言って半分に減らしているわけですね。これでもいいんだというようなことを言っているわけです。その辺は、普通の人はほとんどわからないわけです。たから、そういう意味で、やはり保守点検についての合理化と透明性ということがないと、これ以上ユーザーに対する負担というのは、その限りでは余りいかないんじゃないか。
 ただ、先ほども言ったように、特に単独浄化槽を持っている人に対しては、それだけ負荷を出しているわけですから、それに対するやはりペナルティーという面もあるし、転換促進という面もあって、補助金、税の使い方も含めた抜本的な検討をすることが最大の水環境負荷を減らすことにつながると私は思うんですね。いずれにしても、要するに保守点検の合理化と単独浄化槽の転換促進というのをどうやるかというのが、私は一番「その他」のところで、その他だけれども非常に大事であるというふうに思っています。

○加藤委員長 どうもありがとうございました。
 それでは、まず河村先生、それから木曽先生という順番でいきましょう。では、河村さん。

○河村委員 今まで皆さんがおっしゃられたように、今回、水質基準をつくるということになってきた段階で、やはり設置者の方に十分理解してもらったり、あるいは意識を高揚してもらうという意味で、ここにも書いてはあるんですけれども、保守点検、清掃、検査の役割、あるいはそのときにおける料金設定というものに対するある種の説明責任というのが生じてくると思うんですけれども、そういう形の対応をすることが必要だと思います。
 それともう一点、これはそういう内容じゃないんですけれども、この本文の中で浄化槽設置者という書き方をしてありますが、これは法律的には管理者だと思います。こういう報告書に書くときに設置者でいいのか、やはり管理者と書くべきなのか、その辺、ちょっと御検討いただいて、ルールに合うような形にしていただきたいと思います。

○木曽委員 先ほど、単独の浄化槽の転換ということの重要性、ここの中にも指摘されていますが、逆に今の吉田先生なんかのお話では、単独悪者論ということになっているわけですが、一方で、浄化槽も設置しないでし尿のくみ取りというのも現在残っているわけですね。そのときには、やはり雑排水を未処理で放流していることになります。
 それから、既に2回目ぐらいのときだったか、1回目だったかで北尾先生が指摘されていますように、公共用水域の水質汚濁を抑制するということでは、水濁法にもともと関連していまして、法的には50トン未満未規制ですし、条例ではおおむね30トン未満未規制というような状況の中で、家庭の雑排水だけが悪者扱いされるということであれば、公平性を欠く状況にはならないかということがあろうかと思います。逆に言うと、合併処理のいわゆる浄化槽を普及させるために、促進するためとは言いながら、現在の単独処理浄化槽をも同列に否定してしまうような、そういうことになりはしないか。その点ではちょっとバランスを欠く議論がひょっとして進むんではないか。そのためには逆に言うと、水濁法で規制すべき排水も、やはりもっとこれから検討していただかないといけないんではないか。生活排水だけが悪者になるということも問題ではないかというふうに思っております。

○加藤委員長 どうもありがとうございました。
 山本さん。

○山本委員 木曽先生のおっしゃることは、もっともだと思うんですが、ただ、ほかがだめだからこれもやらなくていいということでは決してありませんので、課徴金とかの問題は別にして、やはり私は、単独処理の転換というのは、早急に進めるべきだと思います。ここで21世紀初頭においてなくすという宣言があったわけですから、今後27年もかかるようじゃどうしようもない。そのためには、いわゆる都市の下水道に集中投資して、都市の水環境は改善されたわけですから、今後こういうものに国策として集中投資をして改善を早急に図るべきだ。5年ですべてなくすべきだとか、そういうような具体的な提言があってしかるべきだと私は思います。今のが1点です。
 それから、「終わりに」のところは非常に格調高い文章だと私も思って読んでいたんですが、その前の海外への展開についても、私もこれもかなりそういう意味ではよく書かれているとは思います。私もこれは賛成です。やはりこれからパブリック・プライベート・パートナーシップという、PPPという展開で、この浄化槽のシステムを官民挙げて外で展開していくようなシステムづくりをしていくということは私も賛成でして、その辺を今後さらにここでも検討していただきたいと思います。

○加藤委員長 ありがとうございました。
 国安さん。

○国安委員 私からは2点ほど意見を述べたいと思います。
 まず、11ページ目の法定検査の部分について、先ほど北尾先生からも御指摘がありましたが、保守点検や清掃といった作業が適正に行われているかを確認し、浄化槽の維持管理に関する信頼性を担保するものが11条検査だと思います。今改正で、信頼性の向上に関し行政の役割が強化されたことを踏まえて、特に11条検査の実施率が飛躍的に上昇することがなければ、法定検査、特に11条検査についてその必要性そのものが問われるような気がしています。
 このような状況を考慮した場合、11~12ページ辺りの記述が不十分ではないでしょうか。具体的には11条検査受験率の全国平均値は、これまで20年間、指定検査機関の努力にもかかわらず年平均0.5~0.6%程度の伸びであり、昨年度でも16.5%と低い値で、これまでと同じ方法では飛躍的な上昇は期待できないと思います。そのため、受験率の向上を目的に、11ページの最後から12ページの冒頭部分で、行政だけではなく、「保守点検業者との連携が必要であり」と記述されていますが、当然、清掃との連携も必要なことから、「保守点検業者や清掃業者との連携が必要であり」と修正をお願いします。
 また、検査内容についても、これまでも必要に応じて一部修正は行われておりますが、主要な部分は20年ほど前に決められたもので、浄化槽の種類や規模等の違いにかかわらず、一律同じ内容です。先程の北尾先生の御指摘や、ヒアリングの時にも関連業界から御提案があったように、適切な保守点検が継続的に行われている場合や、積極的に合併処理化を行わなければならない単独処理浄化槽と恒久的施設である合併処理浄化槽とでは、検査に要を変更する必要があると思います。今回、この議論を行わないと、11条検査をすべての浄化槽で実施しようとすると、検査員の数を現在の5~6倍に増やさない限り対応できません。9月以降の会議では、浄化槽の種類、規模、維持管理状況に対応した検査内容の見直し、受験率向上に向けた具体的な体制作りについて、最優先事項として御議論をしていただければと思っております。
 2点目としては、16ページの(7)「技術開発の促進」の部分についてですが、例えば、戸建て住宅規模の場合、平成12年度以降、構造基準から性能規定への流れの中で、新たな処理方式のものの開発が加速されています。毎年、10種類程度の新しい製品が流通し始めていますが、そのほとんどが通称、性能評価型と呼ばれる物で、(社)浄化槽システム協会の資料によると平成16年度における工場生産浄化槽の出荷台数に占める性能評価型の割合は約9割を占めるまでに急増しています。このような性能評価型のものを上手く活用するためには、保守点検、清掃だけでなく、施工をも含め、新しい製品の特徴に対応した技術が習得されていなければ、いくら処理性能がいい浄化槽でも、所期の性能は発揮されない可能性があります。したがいまして、新しい技術をどんどん開発することも大事なのですが、当然、それに連動した形で、検査員だけでなく、施工、保守点検及び清掃等の関連業者に対しても技術研鑽が必要であることを記述する必要があると思います。

○加藤委員長 ありがとうございました。
 ほかに。
 松田さん、この部分ではいいですか。

○松田委員 専門家の先生方のお話を、なるほど、なるほどと思いながら、浄化槽というものが社会の表側に出てきて、これで私たちユーザーがしっかりと連携していく土台ができたんだなと、心強くこの委員会の存在を思っています。課題が大きいことはわかってまいりましたので、御一緒に市民の立場で浄化槽が普及できるように、今後すごい勉強をしていきたいと思います。決意になってしまったんですけれども、先生方のお話、本当に興味深く伺っております。

○加藤委員長 ありがとうございました。
 もう12時20分近くなってきまして、とりあえず先生方の御意見を一通りお聞かせいただいたというふうに思います。私も、費用の負担の問題、検査であれ清掃、保守点検であれ、一体だれがどういう理由によってお金を負担するのか。すべて設置者といいますか、ユーザーが負担するのか、あるいは公的資金を入れる部門があるのか。公的資金を入れるとしたら、どういう理由で入れるのか。それから、そもそもそういった、今数万円払っている費用がジャスティファイできるのか。本当に必要な費用を払っているのか、過大な費用を払っていないのかとか、そういう非常に大きな国の財政にかかわる費用負担のあり方。もちろん下水道だとか、その他の部分との絡みでそういう問題も出てきましたし、また、一人一人の個人のユーザーからすると、先ほど吉田先生がおっしゃっていたように、何だかわけのわからないうちに、12回来ていたのが突然6回になって、お金がこうなった、ああなったと言われると、一体これは何じゃと、そういう不信感とか、それから透明性を欠くとか、そういうことになりました。
 今、世の中は、浄化槽に限らず、あらゆる分野が透明性であり説明責任を求められる時代にますますなってきていますので、浄化槽の分野だけは、もちろん何か不適正なことをしているというふうに私も思っておりませんけれども、より説明責任、透明性が求められる時代になってきている。そういったものに関係者が対応していかなくちゃいけないというふうに思っております。それが非常に大きな課題かなというふうに思っております。もちろん単独浄化槽を何とかしなくちゃいけないんじゃないかと、山本先生のような強い御意見もあります。全くそのとおりだろうと思います。この文章の中にも、結局単独から来ている負荷量の大きさというのを見ると、確かにこれをこのまましておいていいのか。27年かかりますよと言っていていいのかというのは、全くそのとおりだと思います。
 そういうことを考えると、確かに須藤先生がおっしゃったように、「4.その他」というのは、ちょっと軽い感じがするかなと。せめて書くんだったら「その他の重大な課題」とか、あるいは、そんなことを言わないで順番をつけて、シークエンションにつけていくというのも一つあるかなというふうに思っております。確かに「その他」というと、何か軽く扱っているなという印象を……。恐らく、私たち、この専門委員会、永続的と書いてありますが、永続といったって千代に八千代にというわけじゃないでしょうけれども、少なくとも5年や10年という意味だと思うんですが、5年、10年であるとすると、かなり大きな課題になっていく。むしろ「その他」に書かれている分が、これこそが進化を問われる部分になってくるというふうに思いますので、確かに室長、「4.その他」というんじゃなくて、何か工夫を要すると思いますね。
 そういうわけで、大体よろしいでしょうか。何か言い落として──それから、繰り返して先生方にお願いしておりますけれども、具体的な修文については、メールでも、この紙の上に書き込んでも何でも結構ですから、事務局にわかるように出していただければと思います。
 もしよろしければ、今後の29日について、室長の方からどうぞ。

○鎌田浄化槽推進室長 どうもありがとうございました。
 今、委員長からございましたように、次回は8月29日月曜日10時から、同じくこの第1会議室で開催いたします。時間については、きょうも多少延びて御迷惑をかけておりますが、次回も10時から12時半程度になるんじゃないかと考えております。議題といたしましては、きょう御意見いただきましたお手元の中間取りまとめ(案)につきまして、皆様からいただいた御意見等を踏まえ、格調の高さを失わず、さらに重厚さを増すような形でまとめて事務局からお出しします。あわせまして、御指摘ございましたが、現在行っております省令事項に対するパブリックコメントの結果などにつきましても御報告させていただきます。その上で、8月29日に中間取りまとめということをしていただければと考えております。

○加藤委員長 どうもありがとうございました。8月29日といっても、考えてみると2週間少々しかないわけですね。3週間足らずということで、いろいろな先生方のきょういただきました貴重な御意見を適切に取り込んでいく。それから、パブリックコメントを取り込んでいくというのはなかなか大変で、室長以下、事務局の若いスタッフの皆様は、恐らく暑い夏の上に、夏休みもろくろくとれないというようなことになりかねないですが、体に気をつけてやっていただきたいなというふうに思います。
 何か部長、ありますか。よろしいですか。

  それでは、この委員会はこれでもって終えまして、8月29日午前10時にまたここでお目にかかります。どうもありがとうございました。

午後 0時23分 閉会