自然環境保全審議会自然公園部会小委員会議事要旨


1.開催日時    平成12年7月5日(水)11:00〜15:00

2.開催場所    霞山会館「うめ・さくら」の間
            (千代田区霞が関3−2−4霞山ビル9階)

3.議題

 (1)諮問事項
[1] 十和田八幡平国立公園(八幡平地域)の公園区域及び公園計画の一部変更について
[2] 若狭湾国定公園(京都府地域)の公園区域及び公園計画の変更について
[3] 国立公園事業の決定及び変更について

 (2)その他
秩父多摩国立公園の名称変更について

4.議事経過

(1)十和田八幡平国立公園(八幡平地域)の公園区域及び公園計画の一部変更について審議がなされ,適当であるとの答申がなされた。
(2)若狭湾国定公園(京都府地域)の公園区域及び公園計画の変更について審議がなされ,適当であるとの答申がなされた。
(3)国立公園事業の決定及び変更について審議がなされ,適当であるとの答申がなされた。
(4)秩父多摩国立公園の名称変更について審議がなされ,小委員会報告としてまとめられた。

なお,主要な発言は以下のとおりである。

・十和田八幡平国立公園(八幡平地域)関係
委  員: 今回,国立公園に追加する区域(2ha)の土地所有関係はどうなっているか。
事務局: 国有林(岩手県岩手郡西根町内国有林盛岡森林管理署岩手事務所527林班の一部)となっている。
委  員: 追加する区域(2ha)の境界は,何をもって定めるものか。
事務局: あわせて計画に追加する焼走岩手山線歩道をもって,境界とするもの。
委  員: この焼走岩手山線歩道は,登山道か。
事務局: そのとおり。
委  員: 周辺の公園区域外にも,今回追加する箇所と同様のカラマツ林が広がっているが,なぜ2haのみの追加なのか。
 風致景観的には,一体のはず。
事務局: 風致景観的には一体だが,関係行政機関との協議が成立した箇所について,今回追加することとしたもの。
委  員: 歩道沿線の風致景観を維持するためには,歩道沿線の両側ともを公園区域とするべき。
事務局: 公園区域として追加するためには,関係行政機関との協議が必要であり,今後の課題としたい。
委  員: 仮に公園区域に追加できないとしても,今後林野庁に対して,せめて歩道から50mないし100mは伐採しないように協議できないものか。
事務局: 今回追加する箇所を含めた一帯のカラマツ林は,過去に伐採実績があり,現行の森林施業計画も踏まえあわせると困難。
委  員: 歩道をもって公園区域の境界とすることは,管理面からは非常に現実的な対応であり,今回の変更案は適当ではないか。
委  員: 焼走岩手山線歩道を追加することにより,現行の上坊岩手山線歩道の扱いはどうなるか。
事務局: 焼走岩手山線歩道は,登山口に,岩手県岩手郡西根町による国際交流村の施設が整備されており,今後とも利用者の増加が見込まれることから,新たに計画に追加するもの。
委  員: つまり,既存の上坊岩手山線歩道とあわせ,両方から岩手山への登山を可能とする計画か。
事務局: そのとおり。
委  員: 先ほどの話に戻るが,たとえ国立公園区域外であっても,歩道沿線については伐採しないように,林野庁と「覚書」を取り交わすべきではないか。
事務局: 国立公園区域外において伐採しないように,という旨の「覚書」を取り交わすことは,一般的にあり得ない。
委  員: せめて,伐採しないようにという旨を,環境庁から「要望書」という形で林野庁に提出できないものか。
事務局: 八幡平地域については,今後とも公園区域及び公園計画の変更(再検討)にむけて,林野庁を含む関係行政機関と協議を進める必要があるので,その協議の場を通じて,調整はしていきたい。
委  員: よろしくお願いする。ところで,今回計画に追加する大場谷地園地は,既に木道が整備されている。
 木道や登山道などの歩道については,どのような考えで整備を進めるものか。
事務局: 今回園地計画を追加する大場谷地は湿原で,利用者による踏み込みなどの荒廃を避けるため,既に木道が整備されているもの。
委  員: 木道の高さは。
事務局: 水の状態により様々。
 大場谷地では,高さが50pから1mくらいのところもある。雪の重みにより,横にかしいでいる箇所が数多くあり,危険なため,今後再整備を図っていく考え。
委  員: 湿原において高さ50pないし1mの木道を整備することは,人が湿原を踏み荒らさないという意味で大変素晴らしいこと。
 木道のかしいでいる下の段を補修すれば,今後とも利用可能と考えられる。
 登山道の整備は,いかがか。
事務局: 登山道の整備は,荒廃防止が一番の目的。特に土砂が流出している箇所について,土砂流出防止柵や木階段を整備するなど,流出を防ぐ工夫を考えている。
委  員: 登山道は,雨水など水の逃げ場となる。水の逃げ場のため,土砂が流出してしまう。 コンクリートを使わず自然のものを活用して,土木工学的な視点で,土砂流出を防ぐ方法を考えるとよい。
事務局: 基本的に木材を使用し,整備をしていきたい。
委  員: 今回計画に追加する大場谷地園地について,既に整備されている木道は誰が整備したものか。
事務局: 秋田県鹿角市。
委  員: 木道の整備は公園計画に基づくものではなく,工作物の設置許可で対応したのか。
事務局: そのとおり。
委  員: バリアフリー化への対応は,どのように考えているか。
 アメリカでは,車椅子の方でも通りやすいようにと歩道などの整備が図られているが,日本ではあまり見かけられない。
事務局: 今回は,3箇所の集団施設地区について,バリアフリー化も視野に入れた整備計画の変更などを考えているもの。
 山岳型の国立公園では特に顕著だが,バリアフリー化を進めるにあたり,多くの地形的制約を受ける。
 このため,バリアフリー化を視野に入れた整備は,集団施設地区とその周辺を考えている。
委  員: バリアフリー化にあたっても,コンクリートなどの人工物を使用せずに,整備を行って欲しい。
事務局: 車椅子での利用のしやすさも考慮し,整備することとなる。
委  員: 国立公園内なのでコンクリートの使用は極力避け,視野に入る部分には木材を使用するなど,行き届いた整備を希望。
委  員: 歩道計画は11路線を変更するとのことだが,具体的に何が変更となるものか。
事務局: 現行歩道計画の決定位置と現況の登山道とに一致しない箇所が認められるため,一致させることを目的に,計画を形式的に変更するもの。
・若狭湾国定公園(京都府地域)関係
委  員: 若狭湾国定公園は福井県と京都府とで構成されるが,福井県地域の公園計画の見直しは必要ないのか。
事務局: 福井県地域についても,作業を進めているところ。
委  員: 砂浜における砂の供給は,どのようになっているか。
事務局: 以前から天橋立では砂浜の浸食が問題となっており,昭和20年代から京都府を中心に,様々な試みが続けられている。
 現在,これまでの経験を参考に,砂浜を維持していく方策を検討しているところ。
委  員: 地域の生活者にも配慮しなければならないため難しい課題だが,背後地の砂防堰堤も含め,総合的に砂の供給確保について検討していかなければならない。
委  員: マツ枯れ問題について,地元ではどのように対応しているか。また,環境庁では。
事務局: 環境面に配慮しながら,地元では薬剤による殺虫など,個別に対策を講じているもの。
  国定公園の管理は都道府県のため,環境庁としては直接に対策を講じているものではない。
委  員: マツ枯れの原因はわかっているのか。
 原因を究明せずに対処療法だけを行っているものか。
事務局: 原因究明を行った後,京都府を中心に対策が講じられているものと思う。
委  員: 国定公園ではあっても,環境庁も一緒に対策を講じていくべき。
 対処療法だけで風致景観を維持することは困難。
事務局: 今後とも,京都府と相談していく所存。
委  員: 天橋立は,若狭湾国定公園の核心的な風致景観のひとつだが,現行の公園計画では第1種特別地域。
 特別保護地区への格上げを,検討していないのか。
事務局: 今回の変更にあたっては,検討していない。
 環境面の保全を図るとともに,利用面の充実を進める必要がある。
 今後,さらに保全の強化を図るべきと判断されれば,より規制の厳しい特別保護地区へむけて検討する必要が出てくるかもしれない。
委  員: 核心的な風致景観は絶対的に保全するという姿勢を,環境庁として意思表示するべき。
 関係行政機関との協議が必要なため,当面は困難としても,今後とも保全の強化を図るべく努力して欲しい。
・国立公園事業関係
委  員: 西海国立公園川内峠園地事業について,現地における風の強さはどうか。
事務局: 採草地となった峠は風を遮るものがないため,風当たりは比較的に強い。
委  員: 採草地は減少する傾向にあるが,園地の整備にあたっては,全て芝生とする予定か。
事務局: 当該案件は,採草地の周辺に広がる林地に園地を整備しようとするもの。
委  員: 草地は植生的にも貴重なため,全て芝生として整備するのではなく,草地の意義などを案内板などで説明するようにして欲しい。
 林地であれば芝生広場を整備するなど,効果的に活用して欲しい。
委  員: 桧原湖磐梯山線道路(歩道)の決定について,桧原湖方面の歩道の現況はどのようになっているか。
事務局: 公園計画上の歩道は,桧原湖方面から南下し,今回の事業決定区間につながっている。
 既存の歩道はあると思われるが,現時点では整備の予定がない。
委  員: 公園計画の目的を果たすためには,この区間の整備も必要である。
 弘法清水小屋付近のトイレの整備は,どうなっているか。
 トイレの整備にあたっては,‘利用者たまり’などに付帯施設の整備も必要となるため,何らかの考慮が必要。
事務局: 今回の事業決定は歩道の改良が目的であり,トイレの整備は入っていない。
 今後,適切に対処したい。
委  員: 一般的に,歩道の案内板など,美的センスに欠けるものが見受けられる。
 国立公園では,美的センスに優れた機能的な標識を積極的に整備してもらいたい。
事務局: 国立・国定公園では,順次,整備を行っているところ。
 公共事業となり,一部から,整備し過ぎではないか,との批判を受けたため,自然公園内での歩道整備のあり方について,検討を進めているところ。
委  員: アメリカやヨーロッパの諸外国と比較した場合,日本の自然公園内における標識は,やや野暮ったいとの印象を受ける。
委  員: 近年は女性登山者も多く見受けられるので,女性用のトイレも増やした方がいいのではないか。
事務局: 環境庁としては,山小屋のトイレ整備などに努力しているところ。
 今後とも,適切に対処したい。
委  員: 国立公園の入口部には,標識を積極的に整備すべきではないか。
事務局: 従来より,努力しているところ。
 国立公園の境界にあたるため設置場所が限られることや,土地所有者との調整など課題があり困難な場合もあるが,今後とも積極的に整備を進める所存。
委  員: 速やかな整備を希望。
・秩父多摩国立公園の名称変更関係
委  員: 名称変更については,@まず小委員会で検討,Aその結果を自然公園部会に報告し,自然公園部会で報告を踏まえた上で審議,B最終的に,環境庁長官が決定,との手続を経るわけだが,仮に名称変更の結果に不満を唱える県がいる場合,どのように対処するのか。
事務局: 事前に,関係4都県に対して「名称変更については,審議会で審議いただき,その結果に基づき決定する」旨の照会を行い,文書で「異存ない」旨の回答を得ていることから,どのような結論になろうとも,それなりに受け入れてもらえるものと考えている。
委  員: 公園区域の拡張を伴わずに名称変更を行うのは,今回が初めてか。
事務局: 「阿蘇国立公園」を「阿蘇くじゅう国立公園」に変更した前例がある。
委  員: それは,くじゅう地域を追加したための変更ではないのか。
事務局: くじゅう地域は,もともと阿蘇国立公園として指定されていた地域。
 「阿蘇」は熊本県をイメージするため,大分県をイメージする「くじゅう」を名称に追加したもの。
委  員: それも地元からの要望によるものか。
事務局: そのとおり。
委  員: 環境庁としては,今後とも名称変更について地元から要望のある場合は,全て対処していく方針と考えてよいか。
事務局: 検討はしていくべきだが,必ず対処するか否かは別の問題。
委  員: 過去に「秩父多摩甲斐国立公園」の案で,審議会において検討した経緯があるにもかかわらず,今回3案を含めた形で検討するのは,長野県が平成10年頃から要望を始めたためか。
事務局: 平成4年の小委員会では,山梨県が要望する「秩父多摩甲斐国立公園」で検討をしているが,結論は出ておらず,審議途中となっているもの。
 当時は,他の1都2県が「秩父多摩甲斐国立公園」で内諾していることを前提に検討したわけだが,その後,長野県から正式には内諾していないとして,別の案で要望があがってきた。
〔名称変更の検討を行うことについての是非〕
委  員: 国立公園の名称は,公園を代表する地形地物,または,地域を総称する固有名詞が好ましいものであり,よほどの理由がない限り,国民に定着している名称を変更しない方がよい。
委  員: 地元が納得し,また,その国立公園を的確に表現するものでなければ,名称変更は行わない方がよい。
委  員: 秩父多摩国立公園の名称問題は50年来の懸案事項のひとつであり,名称変更を行うことについて異存はない。
 秩父多摩国立公園の名称問題は,地域を総称する適当な名称が見当たらないという点にある。
 関係都県からも「異存ない」旨の回答を得ていることから,先延ばしするのではなく,今回決着をつけるべき。
委  員: 「秩父多摩」では埼玉県と東京都をイメージし,当該公園の最大面積を有する山梨県がイメージされない。この山梨県の主張は,もっとも。
 かなり長い間の懸案事項であり,今回決着をつけるべき。
委  員: 昭和25年7月10日に秩父多摩国立公園として指定されるまでの経緯を調べたが,国立公園として指定するという点では一貫して作業が進められているものの,名称は,指定されるまでの間,絶えず一貫していない。
 おそらく,風景形式を代表する適当な名称が見当たらず,何が適切かよくわからないままに国立公園に指定されてしまったのではないか。
 今後,国立公園として,自然環境の保全強化や利用の充実を図っていくためにも,今回名称問題は決着をつけるべき。
 そもそも「秩父多摩」という名称に問題があったと解釈される。
〔「秩父多摩甲斐国立公園」,「秩父多摩甲信国立公園」,「秩父多摩甲斐佐久国立公園」の3案で検討することの是非〕
委  員: 3案で検討する前に,この地域を代表する名称がないかどうかを検討するべき。
 国立公園の名称は,公園を代表する地形地物,または,地域を総称する固有名詞が好ましい。
委  員: 指定当時から,この地域を代表する適当な名称は見当たらなかったと思われる。
 関係都県からも「異存ない」旨の回答を得ていることから,このことについては,これ以上議論する必要がないのではないか。
委  員: 山梨県は「秩父多摩甲斐国立公園」で要望しているが,この他に具体的な案はないのか。
事務局: 過去には「昇仙峡」など個別にいくつか案はあったが,最終的に山梨県全体の総意として,「秩父多摩甲斐国立公園」という案に決まったとのこと。
事務局: この地域には日本百名山が6つもあり,それぞれ国民に親しまれる有名な山だが,地域全体を総称する適当な名称はないと思われる。
委  員: 事前に調べた範囲では,この辺りの山岳を表す総称は「奥秩父」,あるいは,「秩父」が適当と思われる。
 しかし,「秩父」という表記では,国民は埼玉県をイメージしてしまう。
委  員: 事前に,山によく登る東京在住の大学院生に尋ねてみたところ,この地域を代表する山岳は甲武信ヶ岳で,通常は「奥秩父」と呼ばれているとのことであった。
 甲武信ヶ岳を中心とする奥秩父山地が,この地域を代表する呼称であり,地域名としては,「奥秩父」が適当と思う。
 指定当時の「秩父多摩」に決まった経緯をみると,この国立公園の名称は東京側の考えで決まったように思われる。
〔「秩父多摩甲斐国立公園」,「秩父多摩甲信国立公園」,「秩父多摩甲斐佐久国立公園」の3案で検討〕
委  員: 地域を代表する名称がないのであれば,旧国名のような名称を使うことで仕方がない。
 3案の中から選択するのであれば,過去からの要望経緯が長く,面積,あるいは,利用者数という点で圧倒的に山梨県が優位だが,ここは山梨,長野両県を立て,「秩父多摩甲信国立公園」とするべきではないか。
委  員: 登山家の間ではこの地域は「奥秩父」と呼称されており,「奥秩父」が適当と思われるが,これまでの経緯や他の国立公園への名称変更運動への影響も考え合わせると,「奥秩父」への入山者は山梨県側からが多いこともあり,「秩父多摩甲斐国立公園」が適当ではないか。
 「甲信」は,いかにも役所的な発想であり,イメージされる地域の範囲も広すぎる。
 「秩父多摩甲斐国立公園」とした方が,当該国立公園の位置を的確にイメージできる。
委  員: 「甲斐」という名称は,具体的には山梨県全域を指し示すため,むしろ,やや漠然とした抽象的なイメージの「甲信」が好ましい。
 新しい名称に「甲斐」という旧国名を使用するのは,あまりに芸がない。
 一方,「甲信」という言葉は,天気予報では関東甲信地方として使用されている。
 「甲斐佐久」は音の響きはともかく,表記したときなどに長すぎる印象を受ける。
 よって,「秩父多摩甲信国立公園」が適切と思う。
委  員: 国立公園の利用者の視点に立つことが肝要。
 利用者の約50%が山梨県域であり,また,過去の審議会における検討の経緯から勘案しても,「秩父多摩甲斐国立公園」が自然だと思う。
委  員: 「秩父多摩甲斐佐久国立公園」は,長いだけでなく,郡名や旧国名をただ列記したとの印象を受けることもあり,避けるべきだと思う。議論の対象から外してよいのではないか。
 「秩父多摩甲斐国立公園」と「秩父多摩甲信国立公園」との比較に際して,山梨県域での利用者が多いということは,重要な検討要素のひとつ。
 また,今回の「秩父多摩国立公園の公園区域及び公園計画の変更について(再検討)」の変更案に際しても,山梨県は特別地域の増加など自然環境の充実強化に努力しており,「秩父多摩甲斐国立公園」の方がよいのではないか。
委  員: 海外で日本の国立公園を説明するときのことを考えても,「秩父多摩甲斐佐久国立公園」は,長すぎるとの印象を受ける。
 「甲斐」は,耳心地よく,今回の変更案の調整に際しての山梨県の努力を考え合わせた場合に適当とも思えるが,そもそも「甲斐」は山梨県全域を指し示す名称。
 長野県側にも千曲川源流標があるなど,素晴らしい地域が多く含まれている。
 特別地域の核心的な地域は,山梨,長野両県の県境付近に多くあり,長野県域の面積は小さくても,相当の価値は認められる。
 このため「秩父多摩甲信国立公園」が適当。
 詳しい説明をせずに,事前にこの問題について,山によく登る東京在住の大学院生に尋ねてみたところ,若者の直感としては「秩父多摩甲信国立公園」が適当との意見であった。
委  員: 私も,事前に大学生に意見を求めたところ,逆に「秩父多摩甲斐国立公園」が適当との意見であった。
 名称から場所をイメージするという意味で,「甲信」は範囲が広すぎる。
 「甲斐」とだけ表記すれば山梨県全域を指すが,国立公園の名称として「秩父多摩甲斐」と並べた場合,誰も山梨県全域が国立公園に含まれるとは思わない。
〔「秩父多摩甲斐佐久国立公園」は,長すぎるなどの理由で,議論の対象から削除〕
〔「秩父多摩甲斐国立公園」,「秩父多摩甲信国立公園」の2案で,さらに検討〕
委 員: 他の国立公園でも,面積の占める割合の大きな県から名称変更の要望があった場合は,今回のように検討するのか。
事務局: ただ単に面積の占める割合だけで対象とするのではなく,利用者数,公園区域の拡張,保護規制計画の充実強化,利用計画に基づく整備の充実など,総合的な観点から検討することになると思われる。
委  員: 名称変更の判断項目として,
 @名所変更に十分な理由があること,
 A地元を中心に名称変更を行うことについて合意があること,
 B変更後の名称が一般に受け入れ易いものであること,
 C名称変更により当該国立公園の保護,利用に良い影響を及ぼすものであること,
 D他の国立公園の名称変更要望活動への影響,
 Eその他,
 が事務局から示されているが,「秩父多摩甲斐国立公園」,「秩父多摩甲信国立公園」ともに甲乙つけがたい。
 ひとりでも多くの国民に親しみをもってもらうという観点から,山梨,長野両県を反映した「秩父多摩甲信国立公園」の方がいいのではないか。
委  員: 判断項目の@〜Bでは甲乙つけがたいが,C,Dについて判断した場合は,「秩父多摩甲斐国立公園」が適当ではないか。
 Cの「名称変更により当該国立公園の保護,利用に良い影響を及ぼすものであること」では,利用者数,面積比率,今回の公園計画の変更案に際しての山梨県の努力など,山梨県の要望する「秩父多摩甲斐国立公園」が,長野県の要望する「秩父多摩甲信国立公園」に比べて勝っている。
 Dの「他の国立公園の名称変更要望活動への影響」についても,主にCと同様。
 長野県域の面積は,全体の約8%を占めるに過ぎない。
委  員: Cの「名称変更により当該国立公園の保護,利用に良い影響を及ぼすものであること」については,今回の「秩父多摩国立公園の公園区域及び公園計画の変更について(再検討)」の調整過程で,山梨県は環境庁の行政指導に従い,特別地域の拡張など自然環境の充実強化に努力した実績があり,山梨県の要望する「秩父多摩甲斐国立公園」が,長野県の要望する「秩父多摩甲信国立公園」よりも勝っているといえる。
 名称変更を考える場合は,この点を十分に勘案しなければならない。
委  員: 判断項目の@及びAでは甲乙つけがたいが,B〜Dで判断した場合,「秩父多摩甲斐国立公園」の方が,「秩父多摩甲信国立公園」よりも勝っている。
 Bの「変更後の名称が一般に受け入れ易いものであること」は,約50%が山梨県域での利用者であり,山梨県の要望する「秩父多摩甲斐国立公園」に変更する方が,一般に受け入れられ易いのではないか。
 Cの「名称変更により当該国立公園の保護,利用に良い影響を及ぼすものであること」についても,今後,さらに山梨県は,自然環境の充実強化に努力するのではないか。
 Dの「他の国立公園の名称変更要望活動への影響」についても,仮に「甲信」とした場合,長野県域の面積は全体の約8%を占めるに過ぎないことから,他の国立公園からも今後同様の名称変更要望が相次ぎ,最終的に収拾のつかない事態に立ち至ることも予想される。
 今回をもって,要望する県の面積比率,利用者数などが少ない場合には,名称変更の対象とはならない旨の前例とするべきではないか。
〔小委員会報告の調整〕
原 案 まず,提案のあった3案の内,「秩父多摩甲斐佐久国立公園」については,名前が長すぎること,一般的にもなじみにくいことから支持する意見はなかった。
 次に,「秩父多摩甲斐国立公園」,「秩父多摩甲信国立公園」の2案について比較検討した。
 まず,山梨県域は面積,利用者数が関係都県の中で最も多いというだけでなく,山岳,渓谷,温泉などの景観資源も多数分布しており,国立公園の資質を表現する上で山梨県域にちなむ「甲斐」を付加することが好ましいとの意見が多くあった。
 さらに,この国立公園の名称変更は,最大面積率を有する山梨県域にちなむ名称が入っていないことに端を発し,名称変更の前提として,今回の公園計画変更に際して山梨県に相当の協力を要請してきた経緯がある。これについては,山梨県分の特別地域面積率が他の都県に比較しても増大していることなどからも評価できるとともに,今後の地元の公園管理の協力を得る上で効果が期待できるとの意見も多くあった。
 しかしながら,「甲斐」は山梨県全域を表現するものであること,長野県域も8%程度の国立公園面積率があり,山梨県側と同様すばらしい自然を有していることから「甲信」を付加することが良いとの意見も少なくなかった。
 この意見に対しては,県域がこれ以上の面積率を有していても名称に反映されていない事例は他にもあり,この程度の面積率を有していることを理由に当該県域を表す名称を付加することは,他の公園の名称変更にも波及するとの否定的意見もあった。
 以上の検討を総括すると,名称の表現性や地域のイメージでは両案とも甲乙つけがたいが,特に名称変更による効果や他の公園の名称変更要望への波及,その他審議会の経緯などに鑑み,小委員長判断として,小委員会としては「秩父多摩甲斐国立公園」に名称を変更することを推したいと思う。
委  員: 最初から3案についてのみ議論をしたわけではない。
 国立公園の名称は,本来,その地域を代表する地名を名称とすることが好ましいが,当国立公園については適当な名称がないため,議論を進める中で,「秩父多摩甲斐国立公園」,「秩父多摩甲信国立公園」,「秩父多摩甲斐佐久国立公園」の3案の中から検討を行うに至った旨を明記する方が,より適切ではないか。
最  終 国立公園の名称は当該国立公園の地域を適切に表現する簡明な名称が好ましいが,現秩父多摩国立公園に関してはそのような名称がないため,これまでの経緯や関係都県との調整状況などを踏まえ,環境庁から提案のあった「秩父多摩甲斐国立公園」,「秩父多摩甲信国立公園」及び「秩父多摩甲斐佐久国立公園」の3案について検討することとした。
 まず,提案のあった3案の内,「秩父多摩甲斐佐久国立公園」については,名前が長すぎること,一般的にもなじみにくいことから支持する意見はなかった。
 次に,「秩父多摩甲斐国立公園」,「秩父多摩甲信国立公園」の2案について比較検討した。
 まず,山梨県域は面積,利用者数が関係都県の中で最も多いというだけでなく,山岳,渓谷,温泉などの景観資源も多数分布しており,国立公園の資質を表現する上で山梨県域にちなむ「甲斐」を付加することが好ましいとの意見が多くあった。
 さらに,この国立公園の名称変更は,最大面積率を有する山梨県域にちなむ名称が入っていないことに端を発し,名称変更の前提として,今回の公園計画変更に際して山梨県に相当の協力を要請してきた経緯がある。これについては,山梨県分の特別地域面積率が他の都県に比較しても増大していることなどからも評価できるとともに,今後の地元の公園管理の協力を得る上で効果が期待できるとの意見も多くあった。
 しかしながら,「甲斐」は山梨県全域を表現するものであること,長野県域も8%程度の国立公園面積率があり,山梨県側と同様すばらしい自然を有していることから「甲信」を付加することが良いとの意見も少なくなかった。
 この意見に対しては,県域がこれ以上の面積率を有していても名称に反映されていない事例は他にもあり,この程度の面積率を有していることを理由に当該県域を表す名称を付加することは,他の公園の名称変更にも波及するとの否定的意見もあった。
 以上の検討を総括すると,名称の表現性や地域のイメージでは両案とも甲乙つけがたいが,特に名称変更による効果や他の公園の名称変更要望への波及,その他審議会の経緯などに鑑み,小委員長判断として,小委員会としては「秩父多摩甲斐国立公園」に名称を変更することを推したいと思う。

※自然公園部会小委員会資料は,請求があれば公開する。
  ただし,「国立公園事業の決定及び変更について」に関する資料のうち,事業費に関しては,特定の者のプライバシーなどに係る情報に該当することから,これを伏して公開するものとする。

5.問い合わせ先

  環境庁自然保護局国立公園課
           課   長  田部 和博 (6440)
           公園計画専門官  番匠 克二 (6444) <国立公園計画関係>
                                      <名称変更関係>
           事業係長  藤森 貞明 (6448) <国立公園事業関係>

  環境庁自然保護局計画課
           課   長  小野寺 浩 (6430)
           審 査 官  吉中 厚裕 (6436) <国定公園計画関係>