中央環境審議会第19回廃棄物部会議事要旨

1.日 時 平成10年8月27日(木)14:00〜17:00

2.場 所 中央合同庁舎5号館別館共用第23会議室

3.議 事
・廃棄物・リサイクルに関する全国的な活動を行っている団体からのヒアリング
・その他

(事務局) (配付資料確認)

【意見発表(発言概要)】

(1) デポジット法制定全国ネットワーク(資料3−1)(以下「デポネット」と略称)
(取組状況)
− 市民によるデポジット法の制定を目指す市民団体。シンポジウムの開催,アンケート調査等の活動をこれまで行ってきており,今後,議員立法を目指した国会議員との法制化プロジェクト等を行っていきたい。
(循環型社会構築に向け必要なこと)
− デポジット制度の効果については欧州各国等で実証されており,まず飲料容器から,さらに対象を拡げてデポジット制度の導入が必要。また,製造者責任の明確化,ドイツ循環経済法のような基本理念を定めた法律の制定が必要。
(「基本的考え方」について)
− 基本原則の中に「汚染者負担原則」,「公平な費用負担」を明記すること,費用負担と効率性についての検討,デポジット制度についてより十分な説明,等が必要。

(2) 塩ビ工業・環境協会(資料3−2)(以下「塩ビ協会」と略称)
(取組状況)
− 塩ビに関する環境,安全等に係る調査研究,普及啓発が主な業務。塩ビは年間約200万トン生産され,リサイクルについては農業用ビニルハウス等年間約12万トンがリサイクルされている。塩ビは,マテリアルリサイクルが可能な素材であること等から有効な素材と考えている。
(循環型社会構築に向け必要なこと)
− 一廃・産廃両方処理できるような仕組みとすること,塩素を含む樹脂を処理できる施設を整備すれば塩素を含まないものも同時に処理できることから,表示の如何に関わらず処理できるため,そのような施設の整備,などが必要。

(3) 社団法人全国産業廃棄物連合会(資料3−3)(以下「全産連」と略称)
(取組状況)
− 産廃収集運搬・処分業者約15,000社が加盟しており,専門誌の発行,マニフェストの頒布等が業務。産業廃棄物の再生処理については813社以上,全国に分布しており,18種類の産廃を再生処理し,そこから得られる再生品は建設業,製造業等ほとんどの業種に販売されている。
(循環型社会構築に向け必要なこと(現状の取組を進める上で,障害になっている点))
− 廃棄物の定義・分類,排出者の委託の責任,都計法・建築基準法との整合性等の産廃処理に当たっての制度的障害,再生品の規格が決まっていないこと,再生品の需要の不安定さ,長期的な採算性の不安等の再生利用を進めるに当たっての障害がある。
(「基本的考え方」について)
− 一般的に,さらには業界として課題として取り上げてきたことが網羅されており,今後,この考え方に基づいて具体的な施策が検討されることを期待。不法投棄対策について等の記述が必要。

(4) 地球環境とごみ問題を考える市民と議員の会(資料3−4)
(取組状況)
− 1990年に発足。廃棄物処理・リサイクルに関する立法についてシンポジウム等の開催と意見具申等を行ってきた。
(循環型社会構築に向け必要なこと)
− 循環型社会の構築に当たっては,政治経済の仕組みの変革,まちづくりの考え方の変革,教育,共生社会の構築,情報開示をすすめ,既存の関係法令を抜本的に改革し,長期的な視点に立った「循環型社会法」の制定が必要。
(基本的考え方について)
− 現行法令を厳しく運用すればここに示された考え方の8割は実現できるのではないか。
(その他)
− 循環型社会の構築に当たっては,広範な社会的合意が必要。また,もっと時間をかけて審議をすべき。

【質疑応答】
○ (全産連に対し)連合会としては広範囲なものを取り扱っているが,中間処理部会以外の部会での活動のポイント如何。また,産業廃棄物処理について,その技術が専門化している中で,御指摘の障害(資料U2.(1) )への対応はどうしているのか。

○ 減量化・リサイクルについては中間処理部会。その他,最終処分部会等,業態と処理物に応じて部会を設置している。また,障害として挙げている6項目は,問題提起。(全産連)

○ (塩ビ協会に対し)意見要旨の中に「汚染者負担原則(PPP)」という表現は後ろ向きだから避けた方が良い,という御指摘があるが,PPPという考え方自体はOECDにおいて確立した概念。外部費用を適切に内部化するとの観点から,公害時代の汚染者というよりも,間接汚染者も含めて公平な役割分担を整理するためにここではPPPという考え方を用いている。このような前提であれば理解いただけるか。
(デポネットに対し)消費者の役割分担という言葉で製品を消費しない者までもひとくくりとされていることに注意が必要,との御指摘があったが,「基本的考え方」においてはむしろ「消費者の役割分担」というあいまいな言葉は避けており,「排出者」の役割,としている。また,自治体の費用負担による回収について費用負担と効率性について検討が必要,との御指摘だが,これは排出者負担を徹底すべき,という趣旨と理解してよろしいか。

○ 感覚的なものとして「汚染」という言葉に発展性がない,という印象を受ける。(塩ビ協会)

○ 汚染者負担の原則については委員の指摘のとおりであり,そのような意味で汚染者負担原則という言葉を注意深く使っているのであれば理解できる。また,自治体負担の問題については,自治体の費用負担が廃棄物処理の困難性を増していると認識しており,汚染者負担の原則を徹底させるべきと考えている。ただし,現実的にどこまで徹底するか,という点は議論の余地はある。(デポネット)

○ (塩ビ協会に対し)年間約200万トンの塩ビ使用のうち,産業用と家庭用の比率如何。家庭用の塩ビ製品についてはリサイクルが難しく,この分野の塩ビ使用を減らせないか。

○ 家庭でストックされるものを除けば,容器・雑貨等で約20%。リサイクルを進めたいと考えているが,まとまって排出されないので難しい。(塩ビ協会)

○ (塩ビ協会に対し)リサイクル率向上のためには選別が重要だが,選別技術の現状如何。
(全産連に対し)再生技術の技術開発に対する取組状況如何。

○ 農業用ビニルハウス等まとまって排出されるものについてはマテリアルリサイクルしやすい。高炉吹き込み等については,塩素の入っているものに対応した設備を整備すれば選別の必要がなくなる。選別と選別不要の両方の道を拡げていきたい。(塩ビ協会)

○ 技術開発については,社団としては取り組んでおらず,各業者ベースで取り組んでいる。(全産連)

○ (全産連に対し)処理請負の際に,コスト条件について安くたたかれがちではないか。このような料金のダンピングが不法投棄を招いている,という面もあると思うが,処理料金の現状如何。また,マニフェストの現状如何。

○ 収集運搬,最終処分については,それぞれ概ね各社ごとの料金に差はあまりない。中間処理については,廃棄物の性状と処理方法によって大きな差がある。しかしながら,処理料金の多寡によって不法投棄が発生する,という状況は極めて少ない。不法投棄のうち処理業者の行うものは3〜6%,大部分は排出事業者がしている。
また,マニフェストについては,本年12月から全面施行されるが,7〜8年前から都道府県の要綱レベルで(特別管理廃棄物以外の産業廃棄物にも)実施されているものもある。全体として2000万枚以上頒布されている。(全産連)

[休 憩]

【意見発表(発言概要)】

(5) 日本生活協同組合連合会(資料3−5)(以下「生協連」と略称)
(取組状況)
− 生協では1983年に牛乳パックの回収を開始以来,食品トレー,アルミ缶,ペットボトル等の回収・リサイクルを進めている。併せて,これらの再生物を利用した商品の販売を行っているほか,レジ袋の削減についても取り組んでいる。
(循環型社会構築に向け必要なこと)
− 廃棄物発生抑制の強化・製品中の有害物質の含有量の削減とこれに係る情報の開示,国内で発生した再生資源の優先使用や再生品の利用拡大,廃棄物の種類と量に応じた排出者負担の徹底,適正処理の徹底が必要。
(基本的考え方について)
− 「とぎれのない物質循環の輪の構築」「政策の優先順位」については賛成。家庭ごみの有料化,業種や地域を越えた再生利用の推進とそのための法規制の見直しが必要。

(6) 日本感材銀工業組合(資料3−6)(以下「感材銀組合」と略称)
(取組状況等)
− 写真感光材料である銀を回収している業者の組合。銀のリサイクルに当たって,一次資源との価格差があり,純度は高いにも関わらず再生銀は相対的に安く,再生業者の経営は不安定。
(循環型社会構築に向け必要なこと)
− 銀のリサイクルに当たっては,法的措置が必要。この際,システムとしては販売店によるデポジット,リサイクルコストについては排出者負担が適当。製造メーカーが少ないので,制度はくみやすい。

(7) 廃棄物処分場問題全国ネットワーク(資料3−7)(以下「処分場ネット」と略称)
(取組状況)
− 廃棄物処分場設置反対運動を行う市民団体のネットワーク。活動としては,環境汚染監視活動に係る指導,処分場のいらない社会を目指したリサイクル推進のための住民活動,廃棄物問題の解決のための提言活動等を行っている。
(循環型社会構築に向け必要なこと,基本的考え方について)
− 資源消費の絶対量の抑制,再利用率の向上を前提として,環境負荷低減型製品の普及や再生品利用拡大への誘導施策,製造者の製造物引取り義務化等の上流対策の強化,建設廃棄物・汚泥等の産業廃棄物の再生利用の推進などが必要。これを踏まえ,既存の関係法令を体系的に整備し直すことが必要。
− 循環システムは,地域完結型とするべき。

(8) 全 国 町 村 会(資料3−8)(以下「町村会」と略称)
(取組状況)
− ごみの不法投棄が大変多く,この防止が町村の共通の課題となっている。このため,まずは環境整備,また,住民の普及啓発が重要。また,ごみ処理には大きな費用がかかり,これを行政が負担している。
− 添田町では,処理費用の4分の1を住民の手数料でまかなっている。また,リサイクル率は5%程度で,紙やプラスチックは可燃物となっている。リサイクルを進めるためには,分別排出等を担う住民の意識が重要であり,このために環境教育は重要。リサイクルの推進には費用がかかり,町村ではその負担は無理。
(循環型社会構築に向け必要なこと)
− ごみは減量化が大前提。また,メーカーは処理の場面を考えた製造をすることが大事。最終処分場については,ダム建設でやっているように地域に対して補償をすることを考えてはどうか。
(基本的考え方について)
− この考え方は結構だが,その具体化に当たっては市町村に過大な費用負担がいかないようにすることが必要。

【質疑応答】

○ (生協連に対し)これまでの取組に係る経済性と組合員の意識についてどのような変化があったか。

○ 年間の経済負担として(容器包装リサイクル法の義務履行を除き)3,200万円,全国主要16生協とあわせれば2億3千万円。これらの負担については,事業者として果たすべき役割を積極的に果たしていこう,という考え方のもと行っている。また,組合員の意識については,生協の活動はむしろ組合員の自主的活動から始まっており,組合員の意識は高い。全国の生協の売り上げ3兆円のうち370億円が環境に配慮した商品だが,これは十分な数字とは思っていないため,これをもう一歩進めることが必要と考えている。(生協連)

○ (塩ビ協会に対し)塩ビのリサイクルは農業用ビニルハウス以外のリサイクルの実態如何。ダイオキシン問題を踏まえ,市町村は小規模焼却炉の転換を迫られており,このための市町村の負担は大きい。塩ビの代替はできないのか。
(生協連に対し)生協をはじめとした販売者等との連携を進めていけばより一層の取組が進むのでは。

○ アルミ・スチール缶等と比べ,塩ビに限らずプラスチックのリサイクル率は低い。これは回収ルートが整備されていないこと,再生物の利用先がないことが問題。また,代替については,塩ビとダイオキシン発生については(因果関係は)解明されておらず,オランダでは関連はないとされている。欧州においては塩ビの使用量が増えている。(塩ビ協会)

○ 基本的考え方のなかに事業者の自主的取組が位置づけられているが,事業者は環境マネジメントにより自ら環境負荷を把握し,自主的に削減していく取組が重要。これを進めていけば,その情報は自ずと拡がっていく。我々としても自らの取組については積極的に情報開示していきたい。(生協連)

○ (処分場ネットに対し)自区内処理を強調されていたが,一方で広域処理を進めるべき,という議論もある。特にリサイクルについては広域処理が進まないことがネックであるという指摘もあるが,リサイクルについても自区内処理が望ましいと考えているのか。
(町村会に対し)現状の,(添田町における)処理費用の4分の1の住民負担について,今後その負担比率を増やしていくつもりはあるか,また,それは困難か。

○ 廃棄物処理についていえば,一廃は市町村単位,産廃は事業所単位が適切と考えている。リサイクルについては,リサイクルと称した不適正処理でなければ,数県単位でもいいと考えている。(処分場ネット)

○ 住民の直接負担はなかなか難しい。負担比率を上げるには,環境教育を進めることにより意識を高めるとともに,上げる理由を説明すれば受け入れられるのではないか。(町村会)

○ (生協連に対し)環境教育をさかんにして,処分場ネットの御提言されたようなばら売り・量り売り等の需要が高まったとして,大型店でも量り売り等の普及は可能か。

○ 94〜96年にかけて,ノートレイ,ノー包装を進めたが,肉,魚は難しい。野菜は可能。これをもっと進めるためには,流通システムそのものを変えていくことが必要だが,逆にそれが実現すれば大型店でも可能。また,容器包装リサイクル法の完全施行に向け,容器包装の軽量化,削減は進んでいくものと考えている。さらに,地域住民の環境意識の高まりと環境保全への取組の推進等も有効。(生協連)

○ (感材銀組合に対し)再生銀が一次銀よりも安いにも関わらず売れない,という状況の理由如何。

○ 銅鉱石の製錬の副産物として金,銀がとれるが,これら副産物の使用の確保の鉱山からの意向により再生銀がはじかれる。(感材銀組合)

○ (生協連に対し)組合員への意識啓発の取組の方向性,容器包装の回収率及び回収後の流通経路如何。

○ 昨年,21世紀までにグリーンコンシューマーをどれだけ増やすか,という目標をたて,そのための取組を進めている。その一つとして,CO2の削減に自分たちの生活がどうつながるのか,を念頭に置きながら取組を進めようとしている。また,商品の環境負荷に係る情報を商品に盛り込んでいこう,と考えている。さらに,これらの取組をまとめ,目標を各生協で立てている。
(回収後の流通経路について)パックについては紙を納入している紙業者に渡している。アルミ缶については有価で販売できる。ペットについては,大阪の業者まで運んで繊維原料にしている。今後は,全ての商品に係る環境負荷低減に取り組んでいきたい。(生協連)

○ (感材銀組合に対し)再生銀の需要が制限されているとの状況について,これは写真のフィルムというモノの特殊性に起因しているものと考えてよろしいか。
(全産連に対し)再資源化に当たっての障害として,原料となる廃棄物の確保難を指摘しているが,廃棄物の確保難の意味及び循環型社会が進めばこれは確保されるものと考えているか。

○ 一次銀と比べても再生銀の品質は同等。先ほどご説明したように,銅鉱石から副産物として出てくる銀の供給におされているというのが理由。(感材銀協会)

○ 産業廃棄物がリサイクルに回る流通システムが確立されていない。このシステムが確立されればうまくいくのではないか。廃棄物からの再生物はコスト高であるうえに質が一次資源と比べて悪い。これが再生物の需要難につながる。(全産連)

○ マテリアルリサイクルを進めると,一方でCO2の排出が増える可能性がある。リサイクルとCO2対策との折り合いをつけないといけないのではないか。また,ごみをださないためにはごみになるものを買わない,というのは究極の減量化だが,一方でこれは経済不況を呼ぶ。リサイクル・廃棄物減量化と経済問題も折り合いをつけないといけない。

○ (塩ビ協会に対し)リサイクルを進めた場合,研究開発,生産等の場面で雇用が創出されるものと考えているか。

○ 技術開発・研究には人材は必要となる。研究者の絶対数が増えていくかどうかは一概にはいえないが,増えていく可能性はある。(塩ビ協会)

(部会長)本日頂いたご意見は今後の審議に十分に反映させていきたい。

[次回の日程] 9月27日午後を予定

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