中央環境審議会第17回廃棄物部会議事要旨

1.日 時 平成10年6月22日(月)14:00〜17:00

2.場 所 法曹会館 高砂の間(2階)

3.議 事
・総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策の基本的考え方(ワーキンググループの検討結果)について
・今後の審議の進め方ついて
・その他

(事務局) (新任委員の御紹介)
(水質保全局長あいさつ)
(配付資料確認)

【総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策の基本的考え方について】

(部会長) (資料2について,概略の説明)
− 総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策の基本原則として,「とぎれのない」,「効率的な」,「隙間のない」物質循環の確保という3つの考え方を整理したこと
− このような考え方をベースとして,対策の対象となる物について,消費,排出から再利用に至るまでの物質循環全体にわたってとらえていくことが必要であること
− 各主体の役割分担については,汚染者負担の原則をもとにして,排出者,製品生産者,行政といった役割を整理したこと
− 健全な物質循環の確保のための手法について,適切に組み合わせる際の基本的な考え方と具体的な手法の例を整理したこと
− 総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策を支える基盤として,情報整備の重要性を指摘したこと
(事務局) (資料2及び参考1〜11をもとに説明)
(資料9に沿ってドイツ・オランダ調査結果について説明)

○ ワーキンググループのメンバーとして,2点ほど補足したい。
第一点は,処分場の後始末やダイオキシン問題等に関し,たたき台に言及がないことについて御指摘があろうかと思うが,これらの問題については,先般,大幅な廃掃法改正があり,この改正には中環審としても「中間とりまとめ」において指摘をまとめ,処分場の廃止に係る行政による確認制度等がとりあげられている。さらに,第1次答申において,特に処分場関係は既に整理しており,廃掃法に基づく命令の改正等で手当もされたこともあり,繰り返しとなるのを避けることと,上流までさかのぼった総合的な対策が中心となっているため,たたき台にはあえて記述はしなかった。また,ダイオキシンによる土壌汚染と原状回復については,廃棄物処分場だけでなく土壌汚染問題全体の中で考えるべきものでもあるので,今回のたたき台には言及していない。
第二に,処理技術やゼロエミッション技術などの技術開発の重要性はあまり明示的には言及していないが,今回は社会システム全体の大枠の整理をしたので,技術開発の重要性はわかっていながらあえて明示的な言及はしておらず,リサイクルに係る情報基盤の整備に関する記述の部分で若干ふれる程度とした。今後御指摘もあろうかと思うので,議論をした上で入れ込んで行くべきものであると考えている。

○ ワーキンググループのとりまとめに敬意を表する。特段の異論というわけではないが,「健全な物質循環」の語義が明確でない。色々な意味で使われているように感じるが,どのような意味で使っているのか。物質は本来,大気,水,土壌といった環境全体で循環しており,そのような趣旨を第1章の趣旨・背景で書き込んではどうか。
また,技術と社会システムは廃棄物・リサイクル対策の両輪。技術の重要性をもう少し明確に位置づけるべきではないか。

(事務局)モノが社会の中で回っていくことという意味で循環という言葉を使っており,モノが回っていく中で,その各段階で大気,水,土壌に出る環境負荷をできるだけ少なくする,という意味で「健全な物質循環」という言葉を使っている。
技術開発の重要性については,今後御議論頂いた上で織り込ませていただきたい。

○ ハードの技術は重要で,明確に言及するべき。ゼロエミッションは理想であるが,そこに到達するまでに廃棄物は必ず出るものであり,その高度な処理やリサイクルのための技術の開発は不可欠。
本部会は廃棄物部会であるので,対象は主として固体かまとまった液体を扱うのであろうが,本来物質は気体もある。前々から指摘しているとおり,例えば二酸化炭素やエネルギー等への配意も趣旨・背景や前文の部分で良いから言及して欲しい。<> 本部会は廃棄物部会であるので,対象は主として固体かまとまった液体を扱うのであろうが,本来物質は気体もある。前々から指摘しているとおり,例えば二酸化炭素やエネルギー等への配意も趣旨・背景や前文の部分で良いから言及して欲しい。
役割分担のところで,「消費者」の観点からの記述が弱い。Not In My BackYardという言葉もり,処分施設設置などの際に住民投票をすれば反対の意見が多くなるが,消費者も他人事ではないのだから,その役割をもっと位置づけるべき。
ドイツのORE(公法上の処理業者)は自治体のようだが,静脈産業にももっと眼をあてていくべき。

(部会長)消費者,国民の役割については,(一般廃棄物について)排出者としての立場からの役割を担うというなどの提案をしている。

(事務局)技術については,先ほども御指摘いただいているところ,今後の御議論のなかで補足すべき点は書き込ませていただきたい。
エネルギー等の問題については,マテリアルとサーマルとの関係,とぎれのない物質循環の確保の中でのリサイクル等に伴う環境負荷に言及していること等,いくつか個別的には言及しているが,総論としての言及が弱いという感はあり,御議論いただきたい。
消費者の観点からの記述はあるが,汚染者負担原則を踏まえた重点的な整理を試みたので,排出者や製品生産者を中心として整理している。御指摘があれば入れ込みたい。

○ たたき台に示されている「とぎれ」「隙間」のない物質循環の確保,という方向は賛成だが,その実現に当たっては,特に対象物の範囲・分類についてもっと具体的に言及すべき。参考でドイツ等の例が挙げられており,この例もすばらしいものであると思うが,このような例を挙げるという意図は,このような趣旨を今後たたき台に入れ込んでいくということか。

(部会長)参考をつけたのは,ドイツの循環経済法のようにリサイクルも範囲として入れていこう,という考え方の現れ。ここでは,一案を示し,今後御議論を頂きたい,という趣旨でこのようにまとめさせていただいた。

(事務局)今回はたたき台。今後,部会はもちろん広く国民の皆様の御意見を頂いていきたい。

○ ドイツは現に今施行されている例。一方で,日本も施行されている制度があり,その実態を調べていかなくてはならないし,また,概念も包括的に整理していかなくてはならない。今回のたたき台は,包括的な概念整理の考え方を試作品として示したもの。参考資料の4,5は具体的な姿をつかもうと苦労して作ったもの。これに対して,様々な立場からコメントをいただきたい。

(部会長)「こうすべき」という具体的なものは示すに至らなかった。今後,積極的に御意見を頂き,この部会で集約していきたい。

○ たたき台を作成頂いた委員に敬意を表する。とぎれなく,効率的に,隙間のない物質循環を確保するというのは大変結構だが,現実は,とぎれがあり,非効率な部分もあり,隙間だらけというのが現状ではないか。しっかり取り組んでいく必要がある。
3ページの「政策の優先順位」について,経済的に見合わないという理由からリサイクルが進まない,という現状がある。また,マテリアルリサイクルでなくサーマルリサイクルの方に流れてしまうという傾向もある。こういう傾向を是認し,今まで地道に取り組んできた人たちの活動を無にすることがないよう,しっかりとした姿勢を示すべき。 環境ホルモンやダイオキシンといった問題は具体的に言及して欲しい。
また,廃棄物・リサイクルに係る情報基盤の整備は最も重要なものの一つで,現在欠けている部分であり,もっと多くの記述をするべき。

(部会長)ワーキンググループでも情報基盤の整備の部分の重要性は強く指摘されたところであり,今後部会での御議論の中で補強していきたい。

○ 参考1の排出者課徴金の海外事例の内,デンマークのごみの量に応じた課税の例があるが,市町村が直接処分する廃棄物に対する課税はどうなっているのか。
アメリカのペンシルベニア州やニュージャージ州ではごみに課徴金をかけ,その90%相当をリサイクルの実績に応じて市町村に還付するというアメとムチを組み合わせた手法もある。
役割分担の部分の排出者責任の明確化は賛成。また,取り締まりの充実強化や処理への公共関与といった行政の役割の拡充も必要。処理を公共が行い,その費用を排出者が負担するという責任の果たし方もある。
また,家庭から出る廃棄物について生産者がほとんど責任を負わないという体系を変えることが必要。
ドイツの例は,リサイクルに回るものも全て対象としてとらえ,循環と適正処理を徹底しようという考え方であると思われるが,多くのものは再生利用できると考えれば資源としての側面からどんどん使っていこうという考え方もできるのではないか。

(事務局)海外事例については次回までに御指摘も踏まえ精緻にしたい。
ドイツでは,循環経済法の施行によりごみが減っているが,我が国では出てくる廃棄物を焼却や埋立でさばくことに手一杯の状況。ダイオキシン対策等も必要である一方で,21世紀に向けてドイツのような状況を目指すことも必要。明示的には言及していないが,ダイオキシン対策等の根本的な解決策が循環型社会をつくってごみを出さないようにすることと考えている。
デンマークの事例については,埋立や焼却をする者に対して課すland-fill tax の一例であると思うが,原典に当たって調べさせていただく。

○ ドイツのDSDシステムについては,一人一日当たり10円程度の負担を価格転嫁を通じて国民がしている。

○ 環境負荷の下流への負担のしわ寄せ,という現状の指摘はそのとおり。自治体として,租税による処理費用負担の限界を実感している。従量制による処理費用の徴収も約半数の市町村に拡がっているが,このような仕組みが発生抑制やリサイクルの促進につながっていって欲しい。
また,自治体のリサイクルプラザの整備に関して,財政的な支援が行われていけば,自治体において滞っているリサイクルが進展していくだろう。 環境ホルモンやダイオキシンも今日的な話題であり,はっきり固有名詞を書き込むべきではないか。このような問題に対する製造段階への規制にまで踏み込むべきではないか。
デポジット制度について,不法投棄対策としての有効性を検討していくことが必要。また,関連して販売方法の見直しも必要。例えば日本は(飲料の)自動販売機が欧米では見られないほどに非常に多い。このようなことについて,海外の成功例も調べてみてはどうか。

○ ワーキンググループの議論を一つ紹介する。市町村等における処理の費用負担に関し,税金による処理か有料化かという問題については,国民の選択の問題であろう。その際,有料化するのであればその分の税金は徴収しないことなどが考えられるが,現状の日本の税制は固いのでそのような選択ができない,などいろいろな議論があった。ごみ処理の費用負担の問題については,今後も議論すべき事項であろう。

○ 6ページの6.(2) にある「柔軟な仕組み」の構築は大変結構だが,そのためには行政の縦割りを越えた柔軟な行政対応の枠組みが必要なのではないか。
ドイツ環境統計法の枠組みができた社会的背景はどのようなものであったのか。

(事務局)総合的な対策が実現するかどうかは,行政機関の連携が重要なポイント。中央省庁再編基本法においては,廃棄物対策を環境省に一元化するほか,モノごとの所管官庁と環境省がリサイクル(資源の循環的再利用)を共管することが明記されており,行政内の横糸が機能しないと進んでいかない。今後の新設置法の議論ではあるが,連携がうまく機能するよう努力していきたい。
ドイツにおいては,統計については,個別の統計法においてその対象や項目を決めるという仕組みになっており,環境統計法も何度も改正されている。現在は,循環経済・廃棄物法に対応した証明を必要とする廃棄物やリサイクルに向かうモノの情報,オゾン層破壊物質や温室効果ガスに関する情報など,幅広く集めることになっている。

(部会長)情報については,日本は各省庁がバラバラに持ってはいるが,統一されたシステムがない。ドイツの環境統計法を見て,我が国においても環境行政に必要な情報を全体として把握するシステムが必要であるとの思いを強くした。

○ 環境庁は規制のある部分についてはその規制の実効性をあげるための情報を集める仕組みはある。また,統計法に基づく指定統計に指定されている統計は集まる。さらに,事業所管官庁が任意に縦割りで集めている情報もあるが,政府全体として利用されてはいない。行政目的のために平準化された情報を共有できる仕組みがなく,縦割りの問題がここにも出ている。
環境行政については,環境情報が必要で,その整備については,現在は手つかずの部分。今後,廃棄物も有害物質も含めて全体的に環境に関する統計情報を集める手だてが必要。中環審の他の部会でもこの点は指摘していきたい。

○ リサイクルは,長期的な視点での利用という観点があっても良いのではないか。例えば,下水汚泥や焼却灰など,リンが豊富に含まれているようなものは,現在は閉鎖性水域で富栄養化が進んでおり,利用できないにしても,将来的に貧栄養化したときに使えるよう長期保管しておく,という利用の仕方もあり得るのではないか。

(事務局)2ページの(2) の「動学的な効率性」は,御指摘のような趣旨を直接に意図したものではないが,長期的な視点ということから広く読めば入りうるのではないか。また,十分ではないかもしれないが,今般の最終処分場の維持管理基準の改正により,処分場に埋め立てられた廃棄物に係る情報の保管が処分場の廃止までの間なされることとなった。また,平成3年の廃棄物処理法改正により処分場跡地に係る台帳制度が設けられている。

○ 全体としてよくまとまっており,特に異論はないが,あえていくつか論点を述べる。
サーマルリサイクルに関してネガティブな御指摘があった。確かに従来のようなサーマルリサイクルでは問題があることは否定できないが,現在は,サーマル,マテリアル,ケミカルといったリサイクルは複合的に行われており,リサイクルは様々な形態がある中でまとめて一つとしてとらえていってはどうか。また,LCAの観点から考えれば,サーマルにマテリアルが優先するとは一概にはいえず,そのような断定的な言い方は今後のリサイクルの進展を阻害しかねない。
健全な物質循環の確保に当たっては,リサイクルの原料となる廃棄物の安定的な確保とその利用先の確保が重要であり,6ページの6.にあるように,色々な手法を適切に組み合わせていくことが必要で,全ての主体が自主的に,というだけではうまく回らない。国として何をどのように循環させていくのかについての基本的な政策を明らかにすべきで,こういうものは出してはいけない,こういうものはリサイクルすべき,こういうものは処分すべきという,主体の取組の土俵となる部分を環境庁が示していかないと循環は進まない。
また,廃棄物・リサイクルには大変な金がかかるという事実をもっと国民に理解してもらわないといけない。例えば,ドイツのグリーンポイント(DSDの容器包装リサイクルシステム)はトン当たり70,000円もかかっている。

(事務局)サーマルとマテリアルのリサイクルの優先順位については,環境基本計画にこのような記述があり,そこから踏み出すには至らなかった。ワーキンググループの御議論においても,マテリアルやサーマルだけでなく,フィードストックリサイクルなど技術の進展に応じて様々なリサイクルの形態があり,サーマルとリサイクルという割り切りは時代遅れではないか,という議論があった。たたき台においても3ページに「環境負荷低減の観点からのより高次なリサイクルを進めていくという視点も重要」という指摘がなされているところであり,今後の検討課題の一つ。
循環の促進のための役割の明確化や社会の仕組みの構築等の公共政策の重要性は御指摘の通りと認識。それに加え,循環の促進のため,廃棄物の出所と利用先に関する情報ネットワークも重要で,9ページの7.で指摘されている。

(部会長)本日のたたき台は基本的な考え方で,技術開発の重要性については,今回も御指摘いただいており,次回にまた御議論いただきたい。考え方としては,リサイクルの形態を細かく議論するのではなく,技術開発の進展をベースとしたリサイクルの高度化ということをまとめていくことになろう。

○ マテリアルとサーマルの関係については,環境基本計画に規定してしまっているが,LCA的に考える,という視点は重要で,要は「環境負荷の最小化」が大前提であり,マテリアルが絶対であるとは限らない。技術の進展に応じて,環境負荷のより少ない技術がでてきており,そのようなことに関する情報の普及も大事であろう。
ゼロエミッションについては技術と社会システムの両面からのアプローチがされており,愛知県では研究ベースでゼロエミッションについて社会システムという側面からアプローチしようという試みがある。

○ 2ページの「我が国への資源の安易な新規投入」という視点はもっと強調されるべき。物質収支からの視点をもっと明確に位置づけてはどうか。

○ 汚染者負担の原則を明確に打ち出したこと,製品生産者の責任の明確化は特に評価する。ミュンヘンにある自動車会社の研究所を見に行ったことがあるが,そこでは自社製品のみならず他社の廃車もビジネスとして引き取ってリサイクルしている。このように,引取り責任の明確化がビジネスチャンスを生み出していく,という側面もある。
9ページの7.情報基盤の整備に,今後の課題であるかもしれないが,データベースの整備や有害廃棄物に関する情報といった言及がない。アメリカではTRI(有害化学物質放出目録)により,有害物質に係る情報の報告を義務づけ,その情報をデータベース化している。こういった議論も今後していきたい。

(部会長)本日頂いた御指摘はたたき台に十分反映させ,次回の部会にお諮りしたい。

【今後の審議の進め方について】

(事務局) (資料3に沿って説明)

(部会長)特にお気づきの点がなければ,今後の審議の進め方については,
@次回も引き続き議論のたたき台について審議すること,
A全国3ブロック程度でヒアリングを行うとともに,全国的な活動を行っている各種団体からも東京においてヒアリングを行うこと,
Bヒアリングの結果を整理し,それを踏まえて数回部会で審議を行い,年内を目途として総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策の在り方についての議論の整理を行うこと,
ということでよろしいか。

(異 議 な し)

(部会長)それでは,本日の議題については,欠席された委員にも事務局から御意見を伺うとともに,本日御出席の委員の方々も,お気づきの点があれば6月末日までに文書で事務局へ御意見を寄せていただきたい。また,ブロック別ヒアリングの際には,委員各位のご協力をお願いする。

【その他(報告事項等)】

(事務局) (参考12に沿って特定家庭用機器再商品化法について説明)
(参考13に沿って廃棄物処分場に係る共同命令について説明)

(参考14に沿って廃棄物等の一般環境中でのリサイクルに係る環境 保全ガイドラインについて説明)

(事務局)あらかじめ委員の皆様方にご予定を伺ったところ,
−たたき台及びヒアリング等の具体的な進め方に関するご審議をお願いする次回の部会は,7月31日(金)の午後,
−最初の部会ヒアリングは,8月27日(木)の午後
が一番ご都合がよろしいようなので,候補として日程を確保させていただきたい。後ほど,欠席された委員とも調整し,正式にお知らせする。

−−−−−−<閉会>−−−−−−