■議事録一覧■

中央環境審議会土壌農薬部会土壌専門委員会(第8回)議事録


  1. 日  時  平成12年11月7日(火)14:00~17:00

  2. 場  所  環境庁第1会議室

  3. 出席者

    (1)委員
    林 裕造
    上沢 正志
    中杉 修身
    山口梅太郎
     委員長
     専門委員
     専門委員
     特別委員

      駒井 武
      増島 博
      山本 出

     専門委員
     専門委員
     専門委員

      土屋 隆夫
      松久 幸敏

     専門委員
     専門委員
    (黒川 雄二 専門委員、櫻井 治彦 委員、武田 信生 専門委員、
     豊田 正武 専門委員、松本 聡 専門委員、森田 昌敏 専門委員は欠席)

    (2)事務局
    遠藤 保雄
    伊藤 洋
     水質保全局長
     水質保全局土壌農薬課長 他

  4. 議  題

    (1)前回議事録の確認
    (2)土壌の汚染に係る環境基準の項目追加等について(報告)(案)について
    (3)その他

  5. 配付資料

    資料8-1中央環境審議会土壌農薬部会土壌専門委員会(第7回)議事要旨
    資料8-2中央環境審議会土壌農薬部会土壌専門委員会(第7回)議事録(案)
    資料8-3土壌の汚染に係る環境基準の項目追加等について(報告)(案)
    参考資料8-1水質汚濁防止法に基づく排出水の排出、地下浸透水の浸透等の規制に係る項目追加等について(報告)
    (委員のみ再配付 第7回土壌専門委員会資料7-3、7-4、7-5、7-6)

  6. 議  事

    【事務局】 ただいまから中央環境審議会土壌農薬部会土壌専門委員会第8回を開催する。
     冒頭、水質保全局長より御挨拶申し上げる。

    【水質保全局長】 (挨拶)

    【事務局】 議事に入る前に本日の配付資料について御確認いただきたい。(資料の確認)
     なお、本日は黒川委員、櫻井委員、武田委員、豊田委員、松本委員及び森田委員からはあらかじめ御欠席の連絡をいただいている。それでは、林委員長に議事進行をお願いする。

    (1)前回議事録の確認

    【林委員長】 それでは、議事次第に従って議事を進める。
     まず前回の議事録の確認について、事務局から説明をお願いする。

    【事務局】 前回の議事録の確認について説明する。まず資料8-1の議事要旨については公開取扱要領に従って事務局で会議の内容を議事要旨案として整理し、既に林委員長の御了解をいただいている。
     資料8-2の議事録(案)については、本日事務局案を委員に配付したところである。前回御出席された委員の御確認をいただいた後に氏名を伏せて公開資料としたい。

    (2)土壌の汚染に係る環境基準の項目追加等について(報告)(案)について

    【林委員長】 続いて土壌の汚染に係る環境基準の項目追加等について審議を行う。前回の委員会ではふっ素、ほう素並びに硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素について御審議いただいた。本日は、前回の論点整理をもとに委員の御意見を踏まえ、事務局が資料8-3「土壌の汚染に係る環境基準の項目追加等について(報告)(案)」を準備しているので、これに基づいて議論を進めたい。まず事務局から資料8-3について御説明いただいた後、項目ごとに委員から御意見をいただき専門委員会の報告として取りまとめたい。

    【事務局】 (資料8-3について説明)

    【林委員長】 では、報告案の1「はじめに」と、2「基本的考え方」について何か御意見あるか。(意見等なし)では、3について、別紙1、2を含めて何か御意見あるか。

    【A委員】 Ⅲ-1の物質の特性と人の健康影響の項について、最初の段落に、「このうち、ほう素については、植物の生育に必要な微量要素であり・・・」と、ほう素については言及されているが、ふっ素については言及されていない。しかし、ふっ素は生体にとって必須微量元素の1つである。ふっ素についても、生体にとって必須な微量元素であるということで言及するのが適当ではないか。

    【事務局】 では、ふっ素は人の生体に必須とであるということで修文する。

    【B委員】 最初に基本的な考え方について申し上げてから質問をしたい。
     基本的な考え方については2つの観点から私の認識をお話しする。
     1つは、環境基準はそもそも何かということである。維持することが望ましい基準であり、本来この実行可能性等は考慮すべきものではないだろうと私は認識している。ただ、実態的には土壌環境基準が処理対策の目標になり、処理対策を始めるときの基準にも使われ、処理の後の目標にもなっていることから、現実はそのような点も考えなければならない。しかし、本来的な趣旨は今申し上げたこととだと思う。
     リサイクルについての考え方だが、リサイクルは本来埋め立て処分となるものを他の有用な用途に使うことである。有用な用途に使うことは必ずしもそこで利益を生み出すという考え方ではない。そもそも廃棄物の処理にあたってリサイクルを始めたときには、dump feeという考え方、投棄する料金が安くなる、つまりリサイクルをすれば安くなるという考え方があったのだろう。必ずしもそこで利益を上げるという考え方ではなかっただろう。
     ただ、現在は法律上、許可がなければお金を払って廃棄物の処理を行えないという議論がある。つまり、金銭を支払ってリサイクル物を引き取ってもらうことはできないが、1円でももらえばいいという議論になる。本来、そこまで議論した後にリサイクルの可否について論ずべきである。
     また、極端な話をすれば、その廃棄物を出す側の経済性の問題となる可能性がある。
     ただ、実際は、そのような認識で少し議論をして、本来リサイクル促進のための別制度を設けるべきだろう。リサイクルのために、環境基準の見直し等はすべきでない。本来、環境基準は、人の健康を守るという観点でどこまで譲れるかという観点で考えるべきだろう。そのような基本的な認識のもとで、8ページの記述が最も議論になる。その点についていくつか質問したい。
     まず、「当該再利用物による地下水汚染の事例は報告されていない等の実状にかんがみ」について、本当にそれだけの調査が十分なされているのだろうか。これは、環境庁土壌農薬課の「土壌汚染調査・対策事例及び対応状況に関する調査」によると、重金属等の汚染で周辺環境、地下水を汚染した事例が皆無ではなかったと思う。このようなものでも汚染がなかったわけではない。ほう素・ふっ素については周辺環境や地下水への汚染がないと十分証明されているのか。その点を明確にしないと、このような記述について、明確な説明ができなくなるのではないか。
     次の質問は、サンドパイルについての案2「支持力の及ぼす範囲」という記述に関してである。支持力が及ぶとは、おそらくパイルに支持力が及んで強度を持つという意味だろうが、堅くなった際、どの程度の性状なのかという点が問題になるだろう。対象土壌も様々だろう。サンドパイルを相当軟弱な土壌に打ち込んだ際、サンドパイルが入ったところは透水係数が下がるだろうが、下で押されて固まる部分は、一般に10-5と言われている透水係数以下の状態になるのだろうか。その点は確認済みなのかという点が問題になるだろう。
     もう1点気づいたのだが、7ページの「海域に接している土壌」、8ページの「海域に隣接した地域」は非常に微妙な表現である。「海域に接している土壌」は、結局は土壌の特定ができない。「海域に隣接した地域」についてはどのように考えるのか。両者は同じなのか違うのか。どのように特定するのか。この点も議論になるのではないか。
     更に指摘すると、サンドパイルを打ち込んだ下の土壌については基準適用外とすると、その上でほう素・ふっ素を大量に投棄してもそこは環境基準適用外という極端な例もあり得るのではないか。工場が建てられて、適用外だから溶出してもよいということが起こり得るのではないか。道路については、本来建物を建てる場所ではないのでそのようなことは起こり得ないだろうが、そういった議論までされてしまうと、十分に人の健康を守れると言い切れるだろうか。そのような考えで、7ページの「海域に接している土壌」については、場合により臨機応変に判断する方が適切ではないか。決して一律に可否を決めるものではないと思う。
     以上の点について疑問があるので、お答えいただきたい。

    【事務局】 地下水汚染の記載については、正確に言えば、現在事務局が把握している範囲では、現実にこの再利用物による地下水汚染の報告事例はないという趣旨である。もし修正が必要であれば、そのような方向での修正を考えたい。
     2つ目の支持力の及ぼす範囲についても、事務局では、今回用意した資料以上の情報がない。ある程度の力が及ぶため、少なくとも何らかの変化は生じていると思われるが、目で見て分かるほどの変化かどうかは分からない。資料8-3参考資料の最後のページにある、近接しているところまでがいわゆる地盤として硬質の層に近いところであれば、ある程度硬化しているのではないか。しかし、粘土層等を挟んで施用した場合、この粘土層の状況についての情報は十分持っていない。むしろ、委員の中でこのような情報等を御存じであれば御教示いただきたい。
     それから、海域に隣接しているか接しているかについては、細かく整理している訳ではない。「隣接」は「接する」より少し広い認識である。「通常」とは、現在のところは海域だけの利用ということであるが、海域だけで特化しているという趣旨ではない。従来までは海域の利用だけであるが、別にその内陸の方の軟弱地盤での適用も当然考えている工法であるという趣旨である。「隣接」については、それほど深い意味があって仕分けをしているのではなく、「接する」より若干広く取れる意味合いで書いている。
     サンドパイルについては、こちらがお答えするよりむしろ、委員から御意見をいただいて考える方がよいと思われるので、御検討いただきたい。

    【B委員】 「隣接」と「接する」については、適切な表現で整理しなければならないだろう。
     それから2番目のところは、例えば、透水係数が10-5cm/sとは一般に水が通りにくいところであるので、改良されるのはそのような所だろう。道路路盤材の下の遮断層は本当に水が通りにくいのか疑問はあるところだが、道路路盤材自体は地下水からかなり離れたところに施工されるだろう。サンドパイルの場合には必ずしも地下水から離れていない場合も多いかもしれないので、やはり水が動かないという保証がある程度は必要なのではないか。サンドパイルに囲まれている部分については、ある程度スラグが入り、それで囲まれているという形の解釈をしてもいいのかと思うが。
     また、「海域に隣接した地域で施工されている」については、表現としては、「施工されるものについては」という意味ではないということだが、矛盾がある。海域に隣接している土壌ではこういう条件があると前に記述しておいて、それを引いてこちらで海域に接している土壌について記述するのであれば、おそらくどの範囲かを決めるのが非常に難しいだろうが、場合によっては下の地盤が十分強度のある土壌でなくても許容できる範囲はあるだろうと思う。それをまた内陸まで一律に適用してしまうと、先ほど最初に私が基本的な認識で申し上げた健康の保持というような観点から見ると、若干の疑念が残ったままだという感じがする。

    【林委員長】 そうすると、先ほどの「地下水汚染の事例は報告されていない等の実状」は、これまでに「問題が上げられてこなかった」とすればよいのか。

    【事務局】 もう少し正確に書くと、例えば「これまで再利用物による地下水汚染の事例は報告されていない」ということか。

    【林委員長】 それでよろしいか。では、そのようなことで、今の案1、案2のスラグのサンドパイルの問題について御意見をいただきたいが、その前資料8-3参考資料の図とあわせて案1及び案2について具体的に説明していただきたい。

    【事務局】 資料8-3参考資料の1枚目が、いわゆる道路用の路盤材の状況である。そのページに、アスファルト舗装及びコンクリート舗装の2つの図がある。これは道路用の路盤材の利用の形態である。文章中にあるように、舗装部分は上から表層、基層、下層路盤までである。遮断層を含むその下層の約1メートル程度が路床である。コンクリート舗装についてもおおむね同じような整理になっている。
     それから、今度はサンドパイル、いわゆるくいを打ち込むような場合については、2つの図を用意した。軟弱地盤にくいを打ち込むことによって地盤を強化するという構造で、イメージとしては図にあるようにくいを打ち込んだ状態である。その場合に考えられるものとしては、どのくらいくいを打ち込めば全体の地盤に影響を生じているかということである。1つの整理として改良地盤という土木的な考え方で整理ができないかという観点によるのが案2の方である。この場合に例えば2ページ目の図中で曲線内がいわゆる支持力の及ぶ範囲である。その部分全体がいわゆる改良地盤とおおむね同じような範囲を示している。
     ただ一方で、3ページ目の図にあるように、例えば軟弱地盤のすぐ下が硬質層である等粘土層を挟まない場合には、硬質層のかなり近くまでくいは打ち込まれるという状況もある。この場合は、この斜線部分がいわゆる改良地盤というような整理ができる。土木の世界ではおおむねこういうような考え方であり、そういう考え方で線を引くのが案2である。
     案1はそれと比べると、2ページ目の中段の図で申し上げると、砂層に打ち込んで、そこの打ち込んだパイルの外枠をずっと囲んだ部分をもって改良された地盤とし、その部分を土壌環境基準の適用外とするというものである。例えばそのくいとくいの間の土壌はその中に埋没するような形で整理してはどうか。ということで、案1と案2では範囲が違ってくる。それはその場合によって、範囲にほとんど差がなかったり、あるいは多少とも範囲が広がったりするというのが案1である。これをベースに、委員で御議論をいただければということで御用意した。

    【C委員】 資料8-3の2ページ目の最後についてお伺いする。ここでは対象物質の「利用又は処分を目的として現にこれらを集積している施設に係る土壌については、適用しない」と読めるが、ここでの話というのは、今申し上げた考え方を基に議論しているのか。多分、路盤もサンドパイルも利用を目的として集積している施設であるから、周辺土壌については適用しないということでここでの話がなされていると思われるが。

    【事務局】 直接的にはそういうわけではない。そこで書かれているように、「汚染がもっぱら自然的原因によることが明らかであると認められる場所及び原材料の堆積場、廃棄物の埋立地その他の対象物質の利用または処分を目的として現にこれらを集積している施設に係る土壌」とは、例えば廃棄物の埋立地のように、いわゆる施設で、ある程度の管理がされているものを考えている。管理型あるいは遮断型といった管理がされている埋立地の中に入り込んでいる土壌は適用外だということである。あるいは、その廃棄物の上に蓋をしたような場合、その部分の土壌には土壌環境基準を適用しない。あるいは、土壌自体をいわゆる構造物としてそこを遮断するような形で、例えば壁として利用している場合も、広めに考えれば施設に係る土壌になるということである。事務局としては、例えば単に直接土壌にまかれているものを「施設に係る土壌」として理解はしていない。
     このあたりを念頭におきながら、どういう形でこの再利用物の利用も含めながら整理をすべきかという点について御議論をいただきたい。

    【D委員】 2つの再利用物の形態が挙げられており、ブレーンストーミングする上では非常にいい題材と思う。
     まず、路盤材の問題だが、資料8-3参考資料の図を見ると、下部にある路床で遮断されるということあれば、一体としてみなせるのではないかということで、妥当なものだと思う。
     次にサンドパイルについては、事務局から2つの案が示されているが、やはり実態として観測や調査をするという観点からは、どうしても2番目の案にならざるを得ないのではないかと思う。その理由は、サンドパイル間の土壌を採取するのはまず難しいこと、それから地表については、別途考えるとしても、やはり一体として見なさなければ、観測やモニタリングが非常に難しいという実態があろうかと思う。
     もう1点は、例えば地下水の透水性のような問題、あるいはどの程度コンパクションがされているか、そういったデータがまだ不足しているという感じがする。先ほどB委員からも指摘があったが、こういった事例を中心にもう少し踏み込んだ議論が必要ではないかと思う。

    【E委員】 結局、今の議論は、特にふっ素の水質基準値が0.8㎎/Lと決まっており、これが変更できないためにいろいろ問題があるのだと思う。この0.8㎎/Lを決めたのは、慢性毒性症の班状歯の防止という観点である。その結果、人の健康保護の観点から見て、班状歯の問題はこれでいいのだろうかという議論になってしまう。ほかの健康被害の問題はより深刻である。班状歯は審美的な問題だが、人の健康を保護するという問題が一緒になって、数値は班状歯の方で一応0.8㎎/Lに決まっている。その値は、基準値として非常に厳しいところで決まってしまった。そのような状況のため、今まで様々な場面で普通に使われていたものが使えなくなり種々の問題が起きていると思う。
     環境負荷軽減の観点から考えれば、今以上にリサイクル製品を使用すべきではないかということになるが、その際にこの0.8mg/Lという数字が妨げになる。
     もう0.8mg/Lという数値が変えられないならば、その厳しい中でもまた従来いろいろ考えてきた、普通に使われてきたものが使えなくならないように何とかできないかということで、海水の様々な影響についても議論になっている。
     見直しはしないとしても、できるだけ矛盾を少なくするためにこの運用ができないかということで、今議論していると思う。様々な表現の中で、うまく説明しにくい点があっても仕方ないという気がする。

    【林委員長】 ただいまのD委員とE委員の御意見について、まず最初のD委員のモニタリングの立場からは案2かもしれないという点、まだデータが不十分であるという点について、事務局から何かあるか。

    【事務局】 データは引き続き収集できるが、現時点ではここまでしか集めることはできなかった。データが非常に不足しているが、どちらの方向で進めていけばよいかという方向でも出していただければ非常にありがたい。

    【B委員】 D委員の案2が良いという御意見について、実際にモニタリングできるかどうかと環境基準を決めることと結びつけるべきではないと考えている。D委員の御発言のとおり、実際にこの部分についてモニタリングされることはあまりないだろう。
     しかし、それで環境基準の適用外だと判断することは、理論的には正しくないと思う。

    【D委員】 御意見はよく分かる。もう1つの観点として、例えば案1について、資料8-3参考資料の3ページ目にサンドパイルの周辺を破線で切ったような図があるが、こういった取り扱いは、イメージとしてはわかるが、サンドパイルの周辺何センチといったオーダーの話では、やはり実態的に環境基準の適用範囲が把握しづらいのではないだろうか。

    【B委員】 多分そういった話があるだろうが、実際には、その支持力が及ぶ範囲も、より不明確である。支持力が及ぶ範囲は、サンドパイルから何センチとすれば見ればわかるが、支持力が及ぶ範囲を実際に測れば把握できるかというと、これも分からないと思う。
     そういう意味では、実態的な話としては案1を適用しても、その下の部分は省かれることは、D委員の御意見のとおり、そこをサンプリングすることは実際には余りないと思う。論理的に見ると、どの程度固まっているかということも不明確な段階では、案1を考えておいた方がいいのではないか。

    【F委員】 案1の方がわかりやすい。支持力が及ぶ範囲はどの範囲なのか、わかりにくいと思う。

    【C委員】 水質の環境基準を決める際、もちろん班状歯を問題として決めたのだろうが、安全係数というか、不確実係数も入れて考慮したのだろうか。

    【林委員長】 班状歯については不確実係数で、私の記憶では入れている。

    【C委員】 どのくらいの大きさか。

    【林委員長】 多分人の疫学調査から考えているから、普通は10である。

    【C委員】 そういうことであれば、私は案2を支持したい。
     農薬の場合は、発がん性、肝臓への影響、生殖毒性といった非常に顕著な毒性に対して無作用レベルを設定し、さらに安全係数を掛けてるというプロセスで考えている。班状歯は一体人の健康にどのくらい影響するのか。どうもそれほど大きくない気がする。今回はあまりには余りに微妙なところでどちらにするかということを議論するより、路盤材やサンドパイルを入れた土壌は適用外であるという基本的な考えであれば、あとは使いやすいようにしておいても良いのではないかというのが私の意見だ。

    【林委員長】 実は、班状歯は非常に審美的な問題だけと思われがちだが、骨組織がダメージを受ける際の、最初の非常に良いマーカーである。班状歯自体は確かに審美的問題かもしれないが、その持つ意味はかなり大きい。骨組織の形成不全につながるので、それほどいいかげんなものではないことだけはお含みおきいただきたい。

    【C委員】 そこでかなりの安全係数を入れているのであれば、更にその先でまた安全係数を取り入れる必要はないのではないか。

    【B委員】 ふっ素については、班状歯が大きな問題になっているが、より深刻な過剰障害としては骨の異常ある。これが現れる濃度レベルは、斑状歯の現れる濃度とppmの基準でほとんど変わらない。数倍程度の違いしかない。今回の基準が非常に厳しいという数字では必ずしもないことを認識しなければならないだろう。その数倍程度の違いが微妙に効いてくるのかもしれないが、ふっ素の基準は厳しいという批判があるが、一概に非常に厳しい数字とは言えない。E委員がおっしゃった、安全係数を見ることについては、他の物質では例えば103ぐらい見ている。ふっ素では、人間の疫学調査で確実に出ているので10倍くらいで見ていると思われる。そういう意味では安全係数も、非常に少なく見ていると考えていただいた方がよいだろう。

    【A委員】 初めにこの改良地盤の件について、案2では支持力の及ぼす範囲があいまいだという話もあったが、これは土木の方で、荷重計算をするときに計算の対象にする範囲があるはずであり、これを支持力の及ぼす範囲と呼んでいると思う。だから、それほどあいまいなものではないと思う。そういう意味で、ここでいう改良地盤としてとらえた場合の範囲は、土木技術的には割と明確にとらえることができるのではないか。むしろその方が土木作業をした場合に、一般的に認識がしやすい単位ではないかと思う。よって案2の方が具体的で適当ではないか。
     それから、0.8mg/Lというふっ素の水質基準についていろいろな方にお話を聞いても、どういう基準で決められたか、必ずしも明確でない部分がある。あるいは自然環境での大きな変動の中で、どういうデータに基づいてどのような場所が水質基準を超過するかという検討は必ずしも明確でないように私は受け取っている。だから、そういうものを前提にして非常に微細なところまで土壌基準を決めることは、少々不安である。
     資料8-3の6ページの①及び②について、この記述からは、土壌環境基準が必要だとは必ずしも読み取れない。これを見る限り非常にあいまいな状況にあるという印象が第一である。正直なところ、E委員の御発言のように、水質基準が決められたから、その背景にある土壌基準も決めなければならない。すると、土壌基準は溶出基準という方法でやらざるを得ない。だからという、非常に単純な論理だけでもって話が進んでおり、実態について必ずしもまだ詰め切れていないという印象がある。そういう背景の中で細かな議論がされているように見える。社会的影響が非常に大きいことを慌てて決めてしまうのはいかがなものかというのが正直な感想である。

    【G委員】 私は案1でいかざるを得ないだろうと思う。案2では、確かに支持力の及ぼす範囲内というのは、設計上ははっきりした区別があるだろうが、必ずしもそれがふっ素の動態と一致しているかどうかという保証は今のところない。透水係数から見れば、勿論ある程度は関係するだろうが、その関係が明確でない現状では、やはり案1にせざるを得ないと思う。

    【H委員】 水質基準から土壌環境基準を決め、かつデータもそれほどきちんと集積されていないことであれば、なるべく再利用が可能なようにしてはいかがか。案1や案2、あるいはその土木用地盤改良材の前書きの部分で「通常海域に隣接した地域で」とあるが、なるべく周辺土壌とは区別するものとするというところに、比較的広目にしておくべきではないかという漠然とした意見を、今のところ述べておきたい。そういう意味では、現段階では、その「周辺土壌とは区別する」という部分を幅広に解釈できるようにする必要があるのではないか。そのかわり、ただ自然的要因によって測定値が高い地域は既にきちんと除かれているから、特に一般的形容詞もいらないのではないか。私の理解では、案2の方が区別する部分が広くなると思うが、これで理解がよろしければそういうふうに、今日の段階では規定しておいた方がいいのではないか。案の1では、パイルで囲まれた外側でパイルについている土壌が対象外になるのか不明であり、モニタリングの際に疑問が残る。

    【林委員長】 事務局から何かあるか。

    【事務局】 委員の意見が分かれているので、事務局としては何とも判断しがたい。

    【E委員】 私も、H委員の御意見のように、比較的広めにいろいろとっておくことと、10ページにあるリサイクルガイドラインを策定して、リサイクルを進めるのに当たって今回の基準の決め方が逆に締めつけにならないようにするという考え方でまとめてはどうだろうかと思う。

    【C委員】 私の先ほどの発言は、これまで地下水汚染の問題が起こっていないことが前提になっている。ただ、利点ばかりを議論するというわけではない。先ほどから議論を聞いていると、支持力の及ぶ範囲をどの範囲とするかについて、この専門委員会の委員はそれを決めるのに的確かという問題がある。本委員会は基本的な考え方を明確にし、あとの詳細については、環境庁と業界あるいは建設省といった関係者間で詳細にすりあわせすれば良いのではないかと思う。

    【B委員】 何人かの委員から御意見があったが、A委員から御指摘のあった水質基準の決め方については、私も委員会に出席したので多少説明すると、ふっ素の健康影響をどう評価するかについては、E委員からの御意見のように、様々な健康影響があり、骨ふっ素症といった疫学的なものから出していこうとことだが、実際にどんなところでどんな汚染だったかについて、かなり調査をしている。海と海以外の地点、汽水域とそれ以外の地点ということで、実際にどの程度の汚染があるかについては、一応把握しているつもりである。これは中環審の、専門委員の報告書に記載がある。
     1つの議論として、先ほどから今まで使用していたものが使えなくなるからだめだという議論があるが、他の物質についての規制も、今まで使えたものが使えなくなるのは同じである。今まで使えたものが使えなくなるからだめだという論理は、全くおかしい。それは、どこまで制限するものを少なくするかという話だろうと思う。
     そういう意味でいくと、資料8-3中に「通常海域に隣接した地域で施工されている」いう表現がある。通常海域に隣接した地域で使われているのならば、それ以外の場所で安全側に立って使用を止めても、それほど制限したことにならないのではないか。その通常海域に隣接している地域を比較的広い範囲としてとらえてもいいのではないか。現在の利用状況を全く阻害してはいけないことになると、また本来の趣旨と違ってくるので、そのあたりをどう考えるかということだろう。そのような意味で、「通常海域に隣接した地域」はどのような意味かと考えていた。
     もし、かなりの部分がここであれば、例えば土木用地盤改良材についてはこういう地域、定義は難しいが、一般的に塩が入ってくる、あるいは通常飲料水として使わないような地域は適用外という考え方が合理的ではないだろうか。これは確かにこの部分で、これは非常に特殊なものではあるが、ここで1つ特殊なものについて一般的な例外を作ると、全てがそこから崩れてしまう。そもそも最初から議論すべきとのE委員の御意見は確かにそのとおりだが、基準を決めた段階で議論するべきだろうと思う。そういう意味では、実態的に、全面的禁止ではないというおさめどころが必要だろう。本文中の案にはないが、「通常海域に隣接した地域」という概念をもう少し生かすということができないだろうか。
     実態的には、案1を採用しても案2と同じ効果を持つと私は思う。

    【G委員】 案1を採用しても案2と同じ効果を持つというB委員の御意見については、私も全く同意見である。案1と案2が対立するかのようにとらえられているが、「全体を囲む地盤部分」というだけで、参考資料の絵にかなり左右されているような気がする。だから、この「全体を囲む地盤部分」が、サンドパイルの深さを水平方向に伸ばしたものという解釈も成り立つことになる。そういった点は、先ほどのE委員の御意見のように、おそらく今後考えられるであろうリサイクルガイドライン等で詰めればよろしいではないか。文章としては案1でも良いと思う。

    【D委員】 今の御指摘では、どちらでも同じようなイメージとのことだが、改良地盤という土木的な用語が、この報告書に入るのと入らないのでは取り扱いはかなり大きな問題になると私自身は思う。土質工学や海洋埋立ての分野では、改良地盤という言葉は結構頻繁に使われているからである。案1、案2のどちらにしても、この言葉をぜひ入れていただきたい。

    【林委員長】 内容について御意見はあるか。

    【D委員】 案1・案2のどちらでも、イメージはあまり変わらないように思う。

    【林委員長】 ただ用語としては、汎用されている「改良地盤」の語を入れた方が良いという御意見か。

    【D委員】 そのとおり。

    【F委員】 これは言葉の問題であるから。

    【B委員】 D委員の案について確認したい。案1について「全体を囲む改良地盤という部分を」という表現でよろしいのか。軟弱地盤に施工されているスラグのサンドパイル全体を囲む改良地盤部分と解釈したのだが。

    【D委員】 同じ意味だ。

    【B委員】 多分、説明をつけると、それについてまた議論になってしまうだろうから、非常にあいまいだとされるかもしれない。案1の方が、考え方によっては案2より広い概念かもしれない。
     この点については、先ほどG委員が発言されたように範囲を計算できるものの、具体的に一律に決められるわけではなく、その場その場で考えていかざるを得ない部分がある。そのため、実態的にはわからない部分を残すより、案1で良いと思う。私も「改良地盤」の語が入っても別に構わないと思う。それでよろしければ、その案に賛成する。

    【林委員長】 では、案1でよろしいか。ほかに何か御意見等あるか。

    【A委員】 言葉の問題だが、資料8-3の8ページに「道路用の路盤材」と非常に限定的に書かれているが、それでよろしいのだろうか。道路以外の道路に準ずるような部分、例えば駐車場などにも、おそらくかなり使われているのではないか。これは道路に準ずるのだが、ここは「道路用」より「道路等」といった表現の方が適切だと思う。

    【事務局】 御指摘のような利用状況もあると認識している。「等」を入れることにしたい。

    【D委員】 B委員から御指摘があったが、「海域に接している土壌」について、よく読むとやはり矛盾点、整合性がとれない部分が何点かあるように思う。
     まず、ペンディング部分の「海洋汚染及び海上災害の防止に関する法律」の施行令に規定されている埋め立て等は対象外ということは分かるが、その周辺あるいは地表部については、ここではなかなか読めない。
     また、前回も指摘したとおり、やはり海域に接している土壌は海洋の影響を強く受けており、それをそのまま採取して分析してもあまり意味がないので、直接接している部分についてはここで議論する意味があまりないように思う。
     それから、そのほかにさまざまな形態が恐らくあるだろうから、どういう形態が実際に行われているか、事務局に整理をお願いする。ここで1つ例題として「海洋汚染及び海上災害防止に関する法律」関係があるが、その他にも色々あるだろう。例えばしゅんせつもあるだろうし、さまざまな問題があり、それを土壌とみなすか否かという点をもう少し整理する必要がある。これで整理できたとは言い難いのではないか。

    【事務局】 今、ペンディングとしている部分は、そういった事実を踏まえてペンディングとした。これは実はもう既に環境基準を設定させていただいた時にも、もう少し事例を入れている。例えば提出の処理・処分に関する暫定指導指針中にも、実際には色々な基準をそこで運用というか利用して書かれているものであるが、そういうものを埋めた場所についても、その施設に係る土壌環境基準は適用しない。これと同じような趣旨で幾つかの法律に基づいて整理されている分も例示としては出している。その辺の表現を踏まえながら、もう少し事務的にわかりやすく書けないだろうかということで調整中とした。そこは従前数値があるからということではなく、必要に応じてこういう場合はどうだろうかということを書くということであり、ここは今の委員の御指摘を踏まえ、修正をさせていただく。実際はそういうことを念頭に、もう既に整理を考えているというふうに御理解をいただければと思う。

    【D委員】 この資料を読んでいくと、やはりこの文章で果たしていいものかという疑問点がたくさん出てくるのではないかと思う。この場で修正するのはなかなか難しいが、もう少し議論が必要かと思う。

    【林委員長】 この部分も事務局で調整中とのことだが、特に補強すべき点について、D委員の御意見を少し反映させていただいてはどうか。

    【D委員】 基本的な点だが、海域に接している部分について土壌基準をいうこと自体が非常に難しいと思う。それはやはり自然的な原因であり、ふっ素が海水中に大量にあって、多分海水から土壌に移行する方が多い。ここの部分、特に海域に接している土壌についてはやはり最初から適用外ではないだろうか。そうでなければ論理の組み立てが、非常に難しくなるのではないか。修正というより、恐らくその海域に接している部分は適用できないという感じになる。

    【B委員】 当然海水の濃度が高いから適用外という論理はあるが、極端な例として、海域に接している土壌に土壌環境基準の100倍や200倍という、ほう素・ふっ素の濃度の汚染土壌が投棄されたらどうするのか。適用外だから問題はなく、放置するのかという話になるだろう。海域への排水基準も必ずしも無制限ではない。その状況を勘案して陸水域より高く基準を設定しているという状況を考えるべきだろう。
     これは、「海域に接している」という解釈が非常に、先ほど隣接しているのと言ったが、実際には土壌が海水で洗われているようなところというだけではなく、地下水に海水が入ってきているところは、当然海域に接している土壌であると解釈をせざるを得ないだろう。現在のところはもっぱら人の健康を優先して考えているので、その地下水をまず飲用しないことが重要。そういう意味では、その解釈は、実際には一律に定義しがたいためにこのような表現になっていると思う。しかし、先ほどのサンドパイルの上について極端な例を申し上げたが、そういう例まで一律に基準適用外であるとすると、もうそれは何もしなくていい、管理ができていないとなってしまうので、やはりこのような表現でよろしいのではないか。

    【林委員長】 適用外とした場合に起こりうる問題を考えると、確かにその方がいいという感じがする。ほかに御意見あるか。(意見等なし)
     1点教えていただきたい。5ページの3段落目に、「潅漑水中の水質レベルで0.3㎎B/lを超えると生理障害が生じる危険性があり得る」とあるが、この生理障害は人での生理障害か。

    【事務局】 農作物である。

    【林委員長】 では、そのように書いておいた方がいいだろう。
     では、Ⅲ「ふっ素及びほう素」はひとまず終わる。次のⅣ「硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素」も前回の論点整理をもとに取りまとめたものだが、何か御意見あるか。

    【B委員】 G委員に、表現の仕方についてお伺いしたい。12ページの4行目から「また、硝酸性窒素は陰イオンの形で存在する」となっている。ほかは「硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素」だが、この段落だけ「硝酸性窒素」となっている。「硝酸性窒素」でも構わないのかもしれないが、亜硝酸性窒素も陰イオンで存在するからここだけ「硝酸性窒素」となっているのは揃っていないようにも思える。その点が奇異に思えたので、委員の御意見をお伺いしたい。

    【G委員】 理論的に言えば、亜硝酸性窒素も加えるべきだろう。

    【事務局】 亜硝酸性窒素は、硝化作用の中間生成物であり、特殊な条件下で亜硝酸性窒素から硝酸性窒素への代謝が阻害されると蓄積することもあり得るが、一般の土壌環境ではその可能性は低い。そのため、「硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素」という項目の全体を示す言葉と、実態上の言葉を使い分けて記述した。必要があれば修正したい。

    【林委員長】 私も同感だが、C委員の御意見はいかがか。

    【C委員】 私は硝酸性窒素だけでよいと思う。

    【林委員長】 理論的にはB委員の御意見のとおりになるが、実態を表すということではこれでよいということである。

    【C委員】 御指摘の部分は「硝酸性窒素」でよいが、他の部分で「硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素」となっているところは、本当にこれでよいのか、再度確認する必要がある。

    【林委員長】 それは事務局で少し御検討いただきたい。

    【事務局】 「硝酸性窒素」と「硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素」の使い分けについては確認する。

    【C委員】 国の役割について、色々書かれているが、これらの所管はどこか。

    【事務局】 硝酸性窒素問題については、施肥及び土壌管理の問題も含んでいるため、全体の枠組みを排水規制等専門委員会で総合的に議論した中で、特に土壌の部分については土壌専門委員会で専門的な観点から検討することになっている。土壌の関係する部分は、施肥関係等の営農的な部分も結構あるため、その対策の実施分については、農林水産省がかなり行わなければならない。環境庁と農水省で連携を密にして行かねばならないと考えている。

    【林委員長】 ほかに何か、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素について御意見あるか。なければ今の御議論を踏まえ、事務局で修文していただく。
     では、Ⅴの「今後の課題」について何か御意見あるか。

    【D委員】 最後の段落について、前回の委員会で、私とB委員で溶出基準に変わるものについて議論をしたと思う。ここの内容を読んでみると、溶出基準に加えて直接摂取の影響も考えるということで、基準を強化するような書きぶりになっている。つまり、「溶出基準や農用地基準のように飲料水や農作物を経由した間接的な影響ばかりでなく、直接摂取の暴露経路も含めた評価について検討を進めることが重要である」となっている。
     これは、実をいうと全く誤解である。溶出基準で評価すること自体が、先ほど議論にあったように安全係数が非常に高く設定されていると解釈できるため、実際リスクベースで評価することにより、むしろ科学的に解明をした方がいいということで指摘した。だから、本文中のこの表現は修正していただきたい。

    【事務局】 前回の御議論のときに、D委員からの御指摘を踏まえて整理したつもりである。それで、私どもは、確かに土壌環境基準25項目あるが、うち24項目は溶出基準である。銅は農用地だけの項目であり、カドミウムと砒素は農用地にも別途定められている。従来の主な土壌汚染は農用地の汚染問題で、全国で7,000ヘクタール以上のところでこのような問題が起きて、昭和45、6年頃から対応をしており、相当程度実績が上がってきている。
     今日も委員には御議論いただいたが、溶出基準については、やはり主として地下水及び公共用水域への影響、特に土壌環境基準から意図するのは、地下水の問題だと思う。したがって、例えば平成8年の水質汚濁防止法の改正によって、土壌汚染問題にも相当効果も出てきており、従来からの対策はそれなりに評価出来るものだったと思う。
     ただし、これが今後土壌の環境基準をすべて溶出基準で扱うかについては、我が国のダイオキシン類の環境基準では直接摂取の観点から設定しており、ヨーロッパでも直接暴露の考え方で土壌汚染問題を扱っており、ここに記載した、いわゆる直接暴露という考え方も必要である。
     「間接的な影響ばかりでなく」という箇所が、何かが重層的に加わるように聞こえたかもしれないが、地域的な問題等もあわせてそれぞれ使い分ける等といったことも少し考えてねばならない。いずれにせよ、従来と全く同じ場所で、あの規制もこの規制もかけるということを必ずしも意図しているわけでない。そういうことも複合的に考えねばらならないのではないかと書いたわけで、これも前回の御議論を踏まえて整理した。

    【B委員】 今のD委員の御意見は、まだ一段階先の話だと思う。当然、環境基準をどうするかという話は、直接暴露も考慮し、さらに広めようとするものである。その環境基準がそのまま浄化対策の発動要件になり、浄化対策の処理目標になっているが、浄化には大きなコストがかかるため、その点を考えなければならないという御発言が前回の委員会であったと思う。そういう意味では、そこら辺も踏まえた形での、簡単な修文をしてもよいと思うが、総合的な評価という形でも読めるかわからない。今回の議論もまさにその点が一番重要なので、総合的な評価という意味合いも含めて、少しそれを踏まえた形のものの表現をした方がよいのではないかと私も思う。

    【林委員長】 これを読むと前回委員会でのD委員の御意見は入っているように思えるが、表現がよくないと思う。例えば、「溶出基準や農用地基準のような~間接的な影響」とあるが、基準は決して影響ではない。人への暴露量の間接的な指標である。前回の委員会で、D委員は、指標による有害影響の評価だけでなく、もっと直接的な摂取量に基づくリスクの根拠をベースとする等のリスク評価を今後やるべきであるとおっしゃったように思う。この文章の一番下の3行目を少し変えられればD委員の御意見が入ると思う。後で私が考えてもよいが、D委員にも考えていただきたい。事務局の方でもお願いしたい。

    【C委員】 この案をもう少し練った上で各委員の御意見を入れて成案にするとのことだが、そうするとこれは中間答申になるのか、最終答申なのか。

    【事務局】 事務局としては、本日いただいた意見も踏まえ、さらに近々予定している土壌農薬部会までに一応最終案をまとめたいと思う。さらに本日は詰め切れなかった部分については、修文したものを再度林委員長や関係の委員に相談させていただくという形で詰めたいと思う。御意見は、なるべくこの場でいただきたい。

    【林委員長】 ほかに何か、今の問題も含めて御意見はあるか。(意見等なし)
     では、この報告書案をこれまでの御指摘の修正を行った上で、専門委員会の報告として取りまとめてよろしいか。

    【事務局】 とりあえず、報告案中、特にペンディングとしてあるところについては、少し事務局で整理をさせていただきたい。
     それ以外の部分について、案1・案2に関して、本日いただいた修正意見等を踏まえて修正したい。
     また、15ページについては、林委員長とD委員から御意見をいただき、それを取りまとめて最終的に確認をさせていただきたい。もしよろしければ、D委員から御意見をいただき、委員長のところで統合したい。

    【林委員長】 それでよろしいか。また、本日欠席した委員の御意見についてはどうするか。

    【事務局】 本日御欠席の6人の委員には、資料を早急にお送りし、各委員から個別に御了解をいただき委員長に御報告したい。

    【林委員長】 では、御欠席の委員の修正意見も含めて事務局で修正案を作成して、御意見をいただいた委員から確認を取って最終的にまとめるということでよろしいか。

    【C委員】 10ページの一番最後にある「再利用物の利用実態に即したリサイクルガイドライン」の中身がわからない。例えば先ほどから議論になっている、海域に隣接した地域で施工される土木地盤改良材の利用について案1、案2があり、議論がいろいろと分かれているが、これらはここに入るのだろうか。

    【事務局】 土壌環境基準の適用外である、いわゆる再利用物に関して、土壌環境基準及びその測定方法が援用されているが、例えば常に細かくした状態で分析するなど、再利用物の形態を無視をした形で、援用されている実態がある。そういった点も踏まえ、現状有姿や利用形態に応じた考え方を導入する必要があるのではないか。あるいは、そもそも再利用物のリサイクルについて、どのような安全性の評価があり得るのかという点も踏まえ、もう少し広い観点から再利用物に関しての検討をしたらどうだろうかという趣旨である。委員の御指摘も踏まえ、土壌環境基準という側面からではなく、再利用物に対してどういう形で安全性の評価をしていくのかという点を真正面からとらえて、御議論いただくようなことが必要ではないかという趣旨で書いている。

    【C委員】 このような案件があると、先ほどの案1、案2はなるべく抽象的に書いておいた方がよいのではないか。

    【A委員】 先ほども申し上げたが、6ページのふっ素・ほう素についての基本的考え方について、土壌環境基準に追加する根拠として①、②が書いてあるが、その文面からすると、例えば、人為的な汚染原因が明らかな地下水汚染事例は報告されていない、肥料等が意図的に投入されるような場合でほう素過剰になった事例はほとんどないと書いてあり、唯一この基準に追加する根拠となりそうなのは①の最後のところに、この事業場内における土壌からの土壌汚染に起因する水質汚濁が懸念されるという、そこだけが土壌環境基準に追加する根拠のように読み取れるが、そういう理解でよいのか。

    【B委員】 従前の環境行政は、汚染が起こってそれに対応するという形で動いてきた。それでは対応しきれないという様々な事例が出てきて、地球サミット等でも予防的な考えで対応していこうというのは世界的な流れだろう。水環境基準等もそうだし、もう少し予防的にということで、規制の前段階といったものも設定しているとおり、そのおそれがあるものは予め絶っていくというのが、世界的な流れではないかと考えている。

    【事務局】 少なくとも、今御指摘の2番の方の農用地基準の設定を行わないというのは②で書いたような状況を踏まえて、その必要性がないというところから出しているが、1番に関しては特に今の時点で地下水の事例は報告されていない。これは明らかに人為的原因についてはないが、少なくとも重金属に関して頻繁に地下水の汚染の事例があらわれているのは、今の環境基準の項目であっても、あってはならないだろうし、それが頻繁にあるとは思っていない。
     ただ、少なくともその事業場用地は、他の地域と比べても少なくとも高い含有量であるため、そこから見込まれる溶出量というのは、今の水質環境基準を超えているという実態があるという懸念を最初に指摘し、このように書いている。汚染が地下水までいってしまえばこれはまた相当な問題だという認識もあり、ある意味では前回の論点のときにも議論いただいたように、こういうレベルでやはり土壌環境基準というのは検討すべきであると考えている。
     ただ、そういう事例も全くない場合には、「とりあえず現時点では」という言い方ももちろんあると思うが、そういう整理を事務局としてはしたつもりである。

    【D委員】 C委員の御指摘にあった、最後にリサイクルという文言があるので、それが生かされるならば、案1、案2というような表現より、もう少しトーンダウンしたような表現があるのではないかと思うが、その辺はいかがか。

    【林委員長】 案1や案2は、御議論いただいた結果1つにまとめるのか。

    【事務局】 今のところ、先ほどの御意見を踏まえて案1、案2をなくし、「軟弱地盤に施工されているスラグのサンドパイル全体を囲む改良地盤部分」といった感じに整理したいと考えているところである。

    【林委員長】 専門委員会報告案に関する今後のスケジュールについて、事務局より御説明いただきたい。

    【事務局】 まだ修正等を要する部分はあるが、事務局としては本日御検討いただいた委員会報告については、11月17日に開催予定の土壌農薬部会に林委員長から御報告していただき、土壌農薬部会の御審議で、御了解をいただければ中央環境審議会答申案としてパブリックコメントの手続に入ることを考えている。
     なお、そのパブリックコメントをいただいた後再び土壌農薬部会を開催し、これらも踏まえて最終答申案を出すというのが現在事務局で考えているスケジュールである。

    【林委員長】 表現については課題が残った部分等の修正、確認を行い、最後的にまとめられたものについては、本日御欠席の委員等の了解を取り、部会に報告させていただく。

    (3)その他

    【林委員長】 本日の資料の公開については、第1回の土壌専門委員会で決定した公開の取扱いでは、「会議資料は原則として公開とする。ただし、非公開を前提として収集したデータが記載されている資料、関係者と調整中の資料など公開することにより公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれのある場合又は特定の者に不当な利益若しくは不利益をもたらすおそれのある資料は、専門委員会の委員長の判断に基づき委員限りである旨を明記し、非公開とする」となっている。
     本日の資料の中で、まず資料8-3の専門委員会報告案についてはどうなるか。

    【事務局】 ペンディングであった部分、本日御意見をいただいた部分については、御意見を踏まえて修正し、案という形で公開したい。

    【林委員長】 それでは、修正し、公開することとする。資料8-1の議事要旨については公開とする。資料8-2の議事録案は出席委員の確認がとれるまでは非公開として、確認がとれたら公開するということでよいか。

    【事務局】 来年1月6日に省庁再編が行われ、殆どの省庁が名称も変わり、組織体制も大幅に変わる。環境庁も環境省となり、新体制となる。当然、ほとんどの部局が再編され、水質保全局も環境管理局の中の水環境部として整理される。これに伴い、各省庁の審議会も大きく改組されるが、環境庁の中央環境審議会についても大きく変更されると聞いている。
     本日の土壌専門委員会では、専門委員会報告はまだ案という形であるが、修文を終えて改めて各委員の御了解をいただければ、土壌専門委員会して土壌農薬部会に報告することになる。
     よって、今回が土壌専門委員会として最後の開催になる。この間、各委員におかれては、御多忙中いろいろ専門的な視点から御指導、御鞭撻いただきましてありがとうございました。とりわけ今回のふっ素・ほう素、硝酸性窒素・亜硝酸性窒素については、諮問の前から非常に難物といわれており、今日も水質基準まで立ち戻っての議論をいただいたが、長期間、様々な環境問題の中の1つの縮図として、多面的に検討しなければならないということで、林委員長をはじめ各委員には色々と御迷惑、御苦労をおかけしたと思う。この場を借りて御礼申し上げたい。
     なお、1月6日以降の体制は、平成11年4月に閣議決定された審議会の整理合理化に関する基本的な計画に沿った形になるのことである。現在も環境庁内でも作業中であり、私どもも詳細まで承知しているわけではない。方針が固まったら、改めて各委員に御相談させていただくことになるのでよろしくお願いしたい。
     これまで長期にわたり、この土壌専門委員会でいろいろ御議論いただき、ありがとうございました。

    【G委員】 専門委員会は最後とのことなので、1点申し上げる。今回の報告では修正しようがない測定方法の問題だが、資料8-3の17ページにある検液の作成方法についてである。これは廃棄物の測定方法からずっとこの方法で測定しているが、3の試料液の調製で、溶媒を純水に塩酸を加え、水素イオン濃度指数が5.8以上6.3以下となるようにしたものとなっている。純水ならそれで構わないので、全く意味がないのではないか。もし将来改定する機会があったら直していただきたい。むしろこのとおり測定しようとすると、非常にややこしいことになってしまう。

    【林委員長】 これは、この部分だけ除けばよいのか。そういう修正はできないか。今からではなかなか難しいか。

    【事務局】 ほかの様々なものにも響くので、その点については、これまでG委員御指摘のように、pH調製のために形で塩酸が少し入っているが、今回だけ修正するとなると全てバランスを崩す。この件については、総合的に検討すべきだが、今後の宿題としておきたい。

    【G委員】 了解した。

    【林委員長】 では、これで土壌専門委員会を閉会する。

    (以上)