土壌農薬部会議事要旨

中央環境審議会土壌農薬部会土壌専門委員会(第2回)議事録


1.日  時   平成11年10月6日(水)14:00〜17:00

2.場  所   中央合同庁舎第5号館共用第9会議室

3.出 席 者

4.議  題

5.配付資料

6.議  事

【事務局】定刻となりましたので、ただいまから第2回中央環境審議会土壌農薬部会土壌専門委員会を開催させていただきます。
 早速ですが、本日の配付資料について確認をさせていただきます。
(配付資料の確認)
 それでは、林委員長に議事進行をお願いいたします。

【林委員長】それでは、議事次第に沿いまして進めたいと思います。
 最初は前回の議事録の確認ということで、事務局からご説明いただきたいと思います。

【事務局】資料2-1の第1回議事要旨及び資料2-2の第1回議事録(案)は、第1回専門委員会でご確認をいただいた公開取扱要領に従いまして、まず事務局で会議内容を議事要旨と議事録(案)として調整いたしまして、資料2-1については既に林委員長のご了解をいただきまして議事要旨とさせていただいております。資料2-2の議事録(案)については、既に第1回出席委員の皆様に一度確認をいただいたものです。本日最終的にご確認をいただければ、これを公開資料とさせていただきます。

【林委員長】では、資料2-2についてご確認いただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
                 (意見なし)
 それでは、事務局では確定されたものとして取り扱ってください。
 次に、議題2の「ダイオキシン類に係る土壌環境基準及び対策要件等の考え方について」ということですが、事務局からご説明いただきたいと思います。

【事務局】(資料2-3の1(1)、2-4、参考資料2-2について説明)

【林委員長】資料2-3では非常に幅広い課題が示されておりますので、いくつかに区分したいと思います。まず、「1(1)環境基準の位置づけ」について検討していただきたいと思います。先日武田先生を座長として検討会が開催されたそうですが、武田先生の方から補足がございますでしょうか。

【武田委員】昨日に検討会がありまして、本日と同じ資料を基に議論させていただきました。
特に環境基準の位置づけについては、例えば大気、水といったフローの汚染と、土壌、あるいは底質というストック汚染とでは少し差があるのではないかという意見が出ております。 それは、大気、水の場合には、環境基準と排出基準がありますが、土壌の場合は、環境基準そのものが対策のための基準となりうるという特殊な事情があるということだと思います。
 特に、環境基準を超えている場合に、大気、水を入れ替えろという議論は起こらないわけですが、土壌については、除去等の対策をとれという声が出てくることが必至ではないかということです。そうすると負担を伴うことになってまいりますので、科学的な根拠が相当堅固である必要がある、ということが指摘されております。
 一方で、例えばWHOの出しているTDIにしても1〜4pgと幅がありますし、従来厚生省では10pg、環境庁のリスク評価指針値では5pgというふうに幅があって非常に分かりにくい部分がありました。それから、直接曝露の場合でも相当不確実な部分があるわけですが、さらに間接的な曝露、例えば水系に移行してそれを生物濃縮していくという、非常に複雑な経路を考えますと、不明の部分が多いということで、クリアにやっていくことは大変難しいという認識でございます。
また、直接的曝露を基にした1,000pg-TEQ/gという暫定的なガイドライン値そのものを環境基準として使うのは、TDIのうちである程度大きな部分をここで使っている可能性がある等、いくつかの点で問題があるのではないか、というご意見もございました。それから、現状の土壌濃度と比較すると1000pg-TEQ/gは非常に高い値ということで、非悪化、これ以上汚さないという観点からすると、受け入れることができる数字なのか、という意見もありました。
 そういった議論の中で、環境基準と対策要件の間に、いわゆるグレーゾーンができてもいいのではないか、というご意見がありました。  ただし、その場合にもグレーゾーンの扱いが非常に問題になりやすいことから、グレーゾーンのところでは何をするのか。例えばモニタリングや監視をするのだというようなことを明確に記載する必要があるだろうという議論でした。

【林委員長】どうもありがとうございました。ただ今の1(1)についてご質問等ございますでしょうか。
 まず先に、環境基準値を説明していただいた方がいいかもしれませんので、「1(2)環境基準値」のところを事務局からご説明お願いします。

【事務局】(資料2-3の1(2)、2-4、参考資料2-1について説明)

【林委員長】資料2-3の討議用資料と検討参考資料を踏まえまして、環境基準の位置づけについてご質問等ありましたらお願いいたします。

【A委員】最初に、環境基準の考え方ということで、未然防止、進行防止、回復目標の3つを挙げておられますが、多分、土壌の場合は、水質や大気と違う意味合いがあり、土壌のところには蓄積して残ってしまう。残ってしまうということは、他の媒体の汚染源になりうるということが非常に重要な意味合いを持ってくるのだろう。そういう意味でいくと、汚染源対策という意味で、その目標としての土壌環境基準、水とか大気でいうと排水とか排出基準、排出ガスの基準みたいな意味合いがあるのだろうと思います。そういう意味でいくと、4つぐらいに敢えて分ければ分けられるのかなと思いました。
 では、環境基準はそのどこに合わせるのかという話ですが、「人の健康を保護する上で維持することが望ましい」という言い方であれば、当然のことながらその中で一番低いレベルに合わせて設定するのが本来環境基準の趣旨であろう。「望ましい基準」というのであれば、考え方を整理していくと、一番低い、この場合、恐らく未然防止という観点になるのではないかと思います。
 先ほどの資料2-3の説明の中で、何らかの対策をやるのは 1,000pg/g以上という形で書かれているのですが、その他の環境基準との整合をとっていくという観点を考えたときに、現状で水の方はまだ決まっておりませんけれども、1pg/Lと仮定すると、これまでの結果で9%ぐらい基準を超えている。その汚染原因が何であるかというのは、まだはっきりしておりませんが、多分土壌も何らかの関わりを持っているだろう。そうしたときに土壌が、1,000pgという数字ですと、ほとんど現状と変わらず、対策をやられるのはごく一部であるということになるわけです。
そういう状況で、1,000pg 以下は監視だけだよと言ったときに、他の環境基準がクリアする、ひいては、正確かはわかりませんが、大気保全局の調査で言えば4pgを超えている人が中にはいるだろうという状況が、改善されるという説明が必要なわけです。土壌の方は対策をしない、大気や排水の方は対策をやる。それによって土壌の方は1,000pgでも大丈夫ですよという説明ができないと筋としては通らないだろう。このままでは今の状態が続くということになりかねないということを懸念いたします。

【事務局】今の先生のご意見に対して、非常に悩ましいのは、他の媒体に対する影響はあろうかと想像はできるのですが、ただ、いったいその寄与はいくらなのか示せと言われたときに、確固たる科学的な根拠のあるデータは少なく、ほとんど想像の域を出ないぐらいのものしかありません。ある程度の推定といいますか、モデルのような計算の中で何かできるかもしれませんが、しかし、そこに使う確定的なデフォルト値などを多分示せないでしょう。そういったものを根拠にして基準を設定すると、それを基に比較的根拠の薄い形で非常に厳しい対策を求めるという問題が起こるのではないでしょうか。
もう一つ、少なくとも 1,000を超える事例はそれほど多くはないかと思いますが、ただ、まだ全国網羅的に調査されたわけではありませんので、これから調査が進みますと、まだ事例がある可能性はかなりあります。1,000を超える汚染につきましては、明らかに対策をとればなくしてしまうことができるわけでして、現状のまま何もせずに放っておくのでなく、対策が進むことになるのではないでしょうか。

【A委員】もちろん 1,000pgを超えているところはないわけではなくて、そこをやればいくらか減るということは確かですけれども、そこを対策したことによって、全体として、例えば、先ほどの話でいえば、水について1pgを9%超えているという実態が、他の排出規制と併せて減りますよということを何らかの形で説明していかなければならないだろうという話です。

【事務局】そういった形での環境基準というのは考え得るかと思うのですが、しからば、先ほど申しましたように、そういったものに対する科学的根拠をどこまで示せるのかというのがあるかと思います。より低いのがいいというのは確かに一つの考え方ではあろうかと思いますが、それをもって国民全体が納得していただけるだけの科学的根拠を我々は示さなければならないだろうと思うわけでございます。

【A委員】先ほど申し上げた未然防止という観点が重要です。そこに環境基準を設定するという考え方であれば、今の調査結果を評価することによって何らかの数字が出てくるだろう。汚染をしていないところというのは、先ほどの95パーセンタイルのところなのかどうかわかりませんが、そういうものを見ることによって、概ねこのぐらいだろうというような形、全く汚染がないところに相当するかどうかはともかく、ある程度は納得できる数字が出せるようには思います。

【事務局】今のご指摘は、直接摂取というよりは、恐らく公共用水域に対する汚染源という土壌の持つ特徴かと思います。資料2-3の3ページで公共用水域経由についての課題が記述されておりますが、まさに、今基準を作るに足るほどデータが不足している状況です。土壌についても、ノンポイントとしての原単位を形成するほどのポイント数で測定されていません。流域ごとに水に対する負荷がどうなのか、ノンポイントが占める割合がどのくらいなのかという点についても、本来的には、例えばCODで総量規制をやっているように、ある程度のオーダーとしても、流域ごとにもだいぶ違ってきます。その辺を推計できるのか。また、それに伴って、先ほど公共用水域が9%超過という話がありましたが、土壌だけが原因ではないだろう。 100%ではないとすると、何%なのかという点と、現在の調査結果では1,000pgを超えているところが少なく、発生源周辺では95パーセンタイル値は 1,000を下がっておりますけれども、数カ所はあるわけでして、そういうのが9%に対してどのくらいの寄与になるかという点について、そういう大ざっぱなところもなかなか推定できないなと思っているところです。

【A委員】今申し上げた話で誤解があったようなので修正しておきます。未然防止という観点で考えるのであれば、現状の土壌濃度がどのくらいであるか、極端なことをいえば、バッググラウンド濃度がどのくらいであるか。3つの目的で、私が最初に申し上げたような、一番厳しいところに基準を作る、環境基準とはそういうものだという考え方にもしのっとるのであれば、環境基準はバッググラウンド値であるべきではないか。そういう意味で考えるのであれば、今の土壌の調査では、それでも足らないという話になるかもしれません。土壌の調査結果はかなり積み重ねておられるので、例えば統計的にみて、どこら辺かの数字、これぐらいがバッググラウンドであろうというふうな判断はできるのではないかということで申し上げました。

【林委員長】他にご意見ございませんでしょうか。

【B委員】非常に難しい問題で、水の環境基準が1pg/Lなのかどうなのかわかりませんが、それを確保するために土壌の環境基準を、というか、対策の要件になるのかもしれませんが、1,000pg というのを、もっと対策を進めるために下げておくべきだ、極論すればそういう話になるかと思いますけれども、そこまでの論拠を組み立てていくのは非常に難しいと感じております。一方で大気経由も、例えば葉っぱの上に落ちて、またその葉っぱが落葉して、それが土になるというような複雑なものまで含めて、説得力のあるものを作るのは非常に難しいと感じております。
ただ、以前、委員から、土壌と水との関係について、10,000倍ぐらいの濃縮で考えると大体このくらいという話がありまして、そういう関係も少しはみるべきだというご意見もありましたが、その程度のことならみられるかもしれないのですが、対策基準について、水の環境基準を守るために 1,000pg-TEQ/gだというのは、非常に難しいかと感じております。

【C委員】1(1)ですが、まず、7月に設定された対策をとるべき暫定カイドライン値を、健康リスクを考慮して 1,000pg-TEQ/gとしたということは、実際このとおりだと思いますが、その後並行して水の環境基準ができつつあって、その水の基準と土壌基準とがうまくつながるかという問題が残っています。例えばオランダでは、1,000pg-TEQ/g が1pg/Lという数字とつながっているのではないだろうかという議論がなされておりますが、水と土の間がちょうど 100万倍の分配係数に相当します。ただこれは、完全に解明しきれていないのですが。根拠となるデータが必ずしもそろっていないという印象なのです。
水と土の分配係数にはまだいろいろな議論が残っているところがあります。例えば、土壌基準について従来溶出基準を使っていますが、それに相当するようなデータがあれば、これはつながるかと思います。もし、例えばこれまでの重金属等でやられているような溶出条件を適用したときに、水の1pg/Lに相当する土壌の濃度、これは多分、土壌の構成成分とか、土壌の種類とか、ダイオキシンが土壌に負荷されてからの時間とか、いろんなファクターによって変わり得るのだろうと思いますが、その様子が分かっていれば、そこもつながるかなという感じがします。
今のところ、それ以上の断定的なことは言えないのですが、例えば 1,000以下のところにもし何か数字をおいたときに、その条件下では、少なくともそこで溶出試験をやっても1pg/Lを超えないということが実現されていれば、非常に望ましいと思います。

【A委員】先ほどのご意見については、私は、2ページ目の「環境基準値」のところに書いてある対策の発動要件と環境基準とを混同してはいけないという考え方ですので、あくまでも、先ほど申したような未然防止という観点で、それに対してイコール発動基準とは考えておりません。
それから、今の御発言について、土壌の分配平衡定数は、カーボンに対する分配係数、つまりKocでやっていますね。実際の土壌濃度のままにすると、もう少し低いのかと思います。EPAがKow、つまり水オクタノール分配係数から推定して、オーガニックカーボンあたりで約 700万という数字を一応出してあるので、それで計算してみたのですが、もし 1,000pgとすると、それで約3pgになるだろうと思います。これは2,3,7,8-TCDDですから、他のものについてはもう少し土壌濃度は大きいかもしれません。

【D委員】今の御発言について、科学的根拠を一つ一つ蓄積して、例えば文献などで水オクタノール分配係数等について、しっかりした論拠のあるパラメータのデータを蓄積することによってこの数字が変わり得るものでしたら、基準というものは当然望ましい方にいくべきだと思います。ただ、今のようなパラメータの話とはまた別なのですが、土壌については土質が全国で非常に不均質という特質がありますので、こういったモニタリングで出てきた値をそのまま使って統計的に処理すること自体かなり無理があるのではないかという気もします。ですから、この中で95パーセンタイルとして出てきたものが、母集団として本当にそういうものなのかどうかという点も検討する必要があろうかと思います。

【林委員長】他にございませんか。
なければ、また元に戻るといたしまして、「1(3)対策要件」のところから続けてご説明いただけますか。

【事務局】(資料2-3の1(3)、2-4について説明)

【林委員長】この議論については、1,000、もしくは1,000でないとしても、 ある値が適切かという観点からの議論をしないと進まないと思いますが、何かご意見ございますでしょうか。

【E委員】居住地以外の土地利用について、曝露頻度が小さいとは言い切れないだろうと思います。例えば太平洋岸では、春先風食が多いわけです。そうすると、東京都内の居住地に飛んでくる風食の土は、ほとんど居住地以外の土地利用のところから飛んでくるわけです。ですから、「曝露頻度の小ささを勘案して、」というのは除いておいた方がいいのではないかという気がします。

【事務局】どの程度飛ぶか、今のところデータを十分持っていないものですから、そこに住むと考えた場合に、外からたくさん飛んでくるということをあまり考慮しておりません。したがって、その辺のところについては少し調べる必要があるかと思いますが、例えば、全く山林原野の中にごくわずかの汚染があった場合に、直接摂取ではこのようなことも考えられうるという感じで考えたものです。

【事務局】もう一点補足させていただきます。検討会の方でご指摘いただいたのでご紹介させていただきますが、日本の土壌は、風という自然現象以外に、建設工事などに伴い、実際に掘削されて、それが別の場所で土地造成などに使われるという点での移動があり得る。ですから、もし諸外国のように分けるのであれば、移動に当たっては監視することも検討しなければならないかと思います。

【A委員】先ほどの繰り返しになるのですが、私自身確たる証拠はありませんけれども、1,000pgで安全かと言われたら、何をもって安全だということは申し上げられない。そういう意味では、恐らく1,000pg-TEQ/g が上限で、それ以下のところにあるのだろう。現状で明確にそれがいくつなのかというのは、それこそ実際の対策可能性、実行可能性を考えるべきだろうと思います。
もう一つ、対策要件といったときに、対策の中身がいろいろございます。掘削して処理、分解、溶融あるいは封じ込めという形での対策が一つあるのと、そのほかに、植栽をするとか流出防止という対策があります。対策要件はその辺りを考慮するべきですが、一つの値を基に決めてしまうのであれば、誰もが、掘削除去してやるというような判断をせず、一番コストの安い対策しかしなくなる。私の感覚的な言い方で申し訳ないのですが、掘削除去して何らかの対策をするという意味の相場観として1,000pg-TEQ/gは妥当な数字かと思いますが、1,000pg-TEQ/g以下であれば植栽や覆土等の流出防止も一切要らないという考え方には、残念ながら賛成というわけにいきません。

【事務局】この 1,000pg-TEQ/gという数字を出していただく際に、検討会にお世話になりながら、私ども事務局なりに考えてきたりデータを集めてきたのですが、そういった検討の過程で、 1,000 pg-TEQ/g以下で何かが必要だという根拠につきましてもなかなか難しく、今のところ蓋然性の高い数字として 1,000 pg-TEQ/gという数字があるのではないかと感じております。

【A委員】確かに今のところ、1,000 pg-TEQ/gより低いところに確たる根拠を示せと言われれば私も示せないわけですが、確実に 1,000pg-TEQ/gでいいかというと、難しいと判断しています。そういう意味で正確に表すのであれば、現状で判断できる対策要件は 「1,000pg-TEQ/g以下」というのが正しい言い方だと思います。

【林委員長】他にご意見ございませんか。
 環境基本法での解釈である「未然防止」という立場から、1,000 pg-TEQ/gが健康影響という観点で未然防止の対象となる値であるという根拠が明確であれば、それはそれでよろしいのだと思います。その意味で根拠をはっきりさせる必要があります。
2番目の「進行防止」というのは、1,000 pg-TEQ/gには達してないけれども、明らかに汚染が進行しているということが言える値になれば、何らかの対応を考えるべきであろうということになりますが、具体的な値が問題になります。

【事務局】一つは、直接摂取に限ってみた場合の健康リスクと 1,000 pg-TEQ/gの関係でございまして、これは土壌中のダイオキシン類に関する検討会第一次報告の中にありますように、吸収ベースで考えたとして、食事や大気からの平均的な摂取量をみても、一応TDIの範囲内に少し余裕をもって収まっているということであります。ただし、 1,000 pg-TEQ/gが安全だからといって、1,000 pg-TEQ/g以下だったらいくらでもよいかというと、一つは、ダイオキシンというのはそういう意味では低い方がよいものでありますし、進行を逆に 1,000 pg-TEQ/gまで許すものではないということは言えます。
 しかし、ダイオキシン法に基づく浄化対策をする場合に、どこまで求めるかを定めるとすれば、きちんとした根拠が必要になります。

【林委員長】要するに 1,000 pg-TEQ/gという値が健康リスクの未然防止という観点から適切であるというデータがきちんとあれば、流出の防止とかいう対策の観点からすれば多少問題はあるとしても、1,000 pg-TEQ/gでもいいと思うのですが、とにかくそういう明確な科学的に示し得るデータが必要だと感じます。

【B委員】先ほどの「回復目標」のところで「環境基準の程度まで」となっているのですが、これは999でいいということをここでは言っているのではないはずなので、その辺は誤解がないようにしていただいた方がいいと思います。
それから、検討会の方でアメリカのHHS/ATSDRのガイドラインが紹介されており、50pgを超えたときにある種のスクリーニングレベルとしている。これは、50pgを超えた場合には曝露経路、気象、それから例えばそこの土壌をどのくらい食べる確率があるかということについて、サイトの固有のパラメータを集め始めるレベルとして提案している。 1,000pg以上になった場合には、あるまとまった集団に対しての公衆衛生上のアクション、例えば健康診断等を始めるということが米国保健省ののガイドラインでは示されています。監視ということだけに限定すると、単にモニタリングしているということになるのでしょうが、そこの土壌がどの程度流出しやすいのか、どこの河川を具体的に汚染する可能性があるのか、といったような調査まで含めて考えるのであれば、水との関係であるとか、そういったことがもう少し明らかになってきて、より合理的なものになるのではないかと私は感じております。

【事務局】今の件につきましては、第1回の専門委員会でも少しご紹介いたしましたが、検討会第一次報告に直接には記載されていないのですが、アメリカの保健省の方では、保健の関係から50pgを超えたら情報を集め始め、 1,000pgを超えたら健康診断等をするというような例であったかと思います。
 監視といっても、土壌の測定には現実にお金がかかっているところもございますので、ある意味例えば情報の収集のような形で、監視だけではなくて、もう少し広く調査を行うということは可能なのではないかと思っております。

【事務局】少し補足させていただきますと、アメリカの土壌汚染対策は「サイトアセスメント」といいまして、国全体のアクションのとり方をあらかじめ決めておくのではなくて、それぞれの場所の状況に応じて何をしなさいというのを決めており、この場合もそれの適用だと思うのですが、例えば50を超えたときであっても、様々な状況、例えばそこにほとんど人が住んでいないとか、この土はほとんど飛ばないとか、そういうことが分かれば結局は何もしない。仮に 1,000 pg-TEQ/gを超えていたとしてもそうだろうと思います。そういうことで、それと同様の考え方で50 pg-TEQ/gというラインを出して、この値を超えたらリスクアセスを開始する、というようなことに使っているようです。
 1,000 pg-TEQ/g は、先ほど健康診断という話もありましたが、実際にはその中に除去等の対策もアクションの一つとして並べられている、ということです。

【A委員】そういうサイトアセスメントの考え方が日本に導入されると非常に土壌汚染対策がやりやすくなると思います。日本ではまだなじんでいない制度ですので。将来的には多分そういう方向へいくだろうと思いますが、今は何らかの形で基準を決めていかなければいけないでしょう。幸いにして土壌の場合、環境基準と対策発動要件の二本立ての考え方で、それをうまく使えると、先ほどから議論しているような話が整理できるのかもしれませんが、法律の方でなかなかうまく使い分けることができないような仕組みになっているのが一番つらいところだろうと思います。

【林委員長】他にございませんか。
 では、とりあえず次の「1(4)環境基準及び対策要件の適用対象、評価方法」をご説明いただけますか。

【事務局】(資料2-3の1(4)、2-4、参考資料2-1について説明)

【林委員長】それでは、この点についていかがでしょうか。
「労働者の安全衛生の確保の観点は対象外としている」というのは、例えば工場の土地ということですか。

【事務局】工場の敷地内で、一般の方がいないということです。、ただし、表現が非常に難しいのですが、一般の方が大勢来るような場所であるかどうかというところにも依ると思います。その辺りについては、従来の大気環境基準についての適用の考え方なども参考にしたいと思います。

【林委員長】こういう規制をするのは環境庁でないのですか。

【事務局】労働者の安全衛生の確保の観点については、労働安全衛生行政の方で担当しております。

【林委員長】例えば有害物質を含んだ土壌は風で動くかもしれないので、そういうものの移動を考慮すべき、という話が先ほどありましたが、どうなのですか。

【事務局】具体的にどのぐらい移動があるかというのは、もっと一般的に言いますと、例えば大気でアスベストの規制のように、風によって粉のようなものがどう動くかということと同じような考え方がとれるのかもしれませんが、今土壌についてのそのような具体例やデータを把握しておりません。

【林委員長】労働者の安全衛生は環境庁の仕事ではないとしましても、今のようなことがありますと、環境庁と労働省との十分な調整は必要だということになりますね。

【事務局】ダイオキシン対策につきましては、政府一体となってやろうということが一つの前提になっておりますので、当然そういったことが必要かと思います。

【A委員】市街地の土壌汚染の調査手法に準じて調査・評価することはどうかというお尋ねですが、基本的には他の物質と変えるという意味合いは余りないだろうと思います。ただ、市街地土壌の調査にあるように、1,000uに1ヵ所を採取というのでどれだけ汚染を反映できているかというのは、いろいろ議論があるところです。しかし、実行可能性から考えると、これで割り切りという社会的な合意でやる話ですから、ダイオキシンだから特にメッシュが小さくなる、細かくやらなきゃいけないという話ではない。もちろんそこで見つかった場合には、さらに細かく調べていくという手順に入るのだろうと思いますが、これはやむを得ない話ではないかと考えます。

【林委員長】他に何かございませんか。
もしなければ、1(4)の適用対象と評価方法については、資料2-3のとおりで大体よろしいということですか。
 次に、2の「農畜産物経由」と3の「公共用水域経由」を事務局から続けてご説明いただけますか。

【事務局】(資料2-3の2,3、2-4について説明)

【林委員長】何かご意見等ございますか。

【E委員】農畜産物経由については、多分ここに書かれているとおりだろうと思います。過去に1回だけ、PCB汚染について、PCB濃度の高い水田で水の中に倒れた稲の穂を取って分析された例がありまして、そのときは玄米中のPCB濃度がかなり高かったということがあります。  土壌浸食云々の問題は、確かに土壌というのは、ダイオキシンからみれば一種のモレキュラーシーブ(分子篩)なのです。土壌に接触することによって次への拡散は少なくなるわけです。ただ、この場合は溶出試験のように水相に出てくるというよりは、固相のまま、SSに付着して次の媒体に移っていくということが問題になりますので、この場合は、先ほどからの御指摘のとおり、土壌の種類によって非常に違ってくると思います。関西に多い花崗岩質の砂質の土壌と、関東に多い火山灰土壌では非常に違った挙動を示すのでしょうが、はっきりしたデータはまだなく、それについては何とも言えないのが現状だと思います。

【A委員】先ほどから議論していて、私も適切なところで議論しなかったと思いますが、対策要件1,000 pg-TEQ/g云々の話は、土壌の直接接触に関しての対策要件 1,000pgが納得できないと申し上げたわけではないということをまずお断りしておきます。
 それから、資料2-4の6ページ、農用地土壌と農作物中とのダイオキシン類濃度の関係のところで、極端な場合とは何であるかという議論が必ず出てくると思います。33pg/gで0.13pg/g-wetという現実の結果があるわけで、どうしてこのようなものが出てくるのか何か考えておく必要があると思います。

【事務局】検討会の中でも今のご指摘がありまして、第一次報告の中に書いてあるのですが、現在農作物あるいは植物と土壌中ダイオキシン濃度の関係についてのいくつかの研究がございます。これを見ますと、ごく一部の植物では、根から地上部に吸収される可能性があるという報告があるのですが、根からよりも大気中からのダイオキシンの移行についての論文が非常に多いため、このケースがそれに当たるかどうかはよくわかりませんが、そのようなことを考えていく必要があると感じております。

【林委員長】畜産の方は何かデータはございますか。

【事務局】どちらかというと、そのデータの方がございます。ヨーロッパでは、要するに大気経由の発生源の周りに家畜に草を食べさせる牧場のようなものがある地域がありまして、その場合はかなり鮮明に大気経由で牧草や土壌の汚染が生じており、それからそれを食べた牛のミルクにも移行することがあるというデータがありますが、、日本でそのような状況を当てはめるのは難しいのではないかという感じがいたします。

【林委員長】それは一般の方々の大きな関心対象になると思いますので、よろしくお願いいたします。

【事務局】ただ今のご指摘について補足いたします。
我が国では土壌と牧草あるいは畜産物が一体となった調査のデータはあまりないと認識しております。諸外国では、例えば第一次報告の77ページ、オランダにおきましては、1990年頃に焼却施設周辺で牛乳のダイオキシン汚染に関する事例が発生し、そのときに土壌中濃度も測定されております。ただし、この場合、焼却施設の対策を講じたところ、牛乳中のダイオキシン濃度が下がったため、その牧場の土壌に対する対策は全く講じられてなかったという事例です。

【林委員長】他に何かございませんでしょうか。
 なければ、また後でということで、次の4の「達成期間について」ご説明いただけますか。

【事務局】(資料2-3の4、参考資料2-1について説明)

【林委員長】ご意見ございますでしょうか。

【F委員】1,000 pg-TEQ/gという問題もそうですが、結局今実施している様々な調査は現時点での調査ですが、ダイオキシンの土壌への蓄積というのは、土壌がシンクとなるとすれば、現状の数値がどう変化するのかが問題になってきます。先ほどからの 1,000 pg-TEQ/gの例にしても、今のところ汚染源の大部分は炉ですが、炉が整備されればそれ以上悪くならないということになり、その辺も考えていかないといけません。達成期間についても、土壌がシンクになって何でもため込んでしまうということになれば、達成期間はむしろ大気や水の方に依存してくるという格好になってしまいますので、達成期間を決めるのはちょっと無理なような気もします。
ただ、「現状程度の水準を維持する」という考え方からいえば、1,000 pg-TEQ/g以上になっているところを片端から対策を行って、そこがきれいになったということで達成期間とする以外にないような気がいたします。

【A委員】これは多分、達成期間で対策をやって、その結果、環境基準が守られるまでという話だろうと思います。よくよく考えてみると、対策というのは非常に色々な中身があって、一方、環境基準については、仮に今の形とすれば含有量なわけです。溶出防止として覆土や植栽といった対策を行うのは、必ずしも含有量を下げる対策ではないわけです。その辺りをどう整理するのか。そういう意味では、対策を一律に議論しているところに問題がありそうな感じがいたします。

【林委員長】事務局としてはいかがでしょうか。

【事務局】2つお答えしたいと思います。1つは、対策の中身を整理するという点ですが、それにつきましては、検討会第一次報告の5章の中で、ある程度これまでの市街地の土壌汚染対策に対応した形で考えております。それは具体的には第一次報告の46〜47ページに示しておりますが、大きくは、掘削除去するのか現地で対策をするのか、さらにそれぞれに対して曝露経路の遮断のみをするのか、土壌そのものの浄化をするのか、というようにさらに分けられるかと思います。いずれにしても、最低限曝露経路の遮断をするということが、少なくとも 1,000 pg-TEQ/gを超えたようなものに対しては必要であろうと考えております。その場合には、適切に曝露経路としての土壌表面なりが被覆をされたかどうかが判断基準になるのではないかと思いますし、浄化については、先ほどの説明の中でも申し上げましたとおり、低い目標にして浄化をするのが判断基準ではないかと思います。あるいは掘削除去を行うときにはどこまで掘削をするのか、これらの辺りをご指摘のとおり整理していきたいと思います。

【林委員長】ほかに何かございませんか。
 資料2-3の4ページの課題にある、「環境基準の達成期間については同様の考え方としてよいか」の「同様の考え方」というのは、「ダイオキシン類についても今までどおりの考え方」を適用していいのかと理解してよいのですか。また、「可及的速やかにその達成維持に努めるものとする」という、漠然とした表現になっておりますが、これでよろしいのですか。

【事務局】土壌の場合は、現実問題として調査してデータが出て汚染が判明してから、掘削でも覆土でもいいのですが、対策をとるまでの間に、例えば詳細な調査の期間とか、法律的な手続の期間とかを要し、すぐに明日にでも対策をとるということにはなりません。  逆に一方、大気や水質のように発生源対策を段階的に講じるなどによって何年後に全国規模で目標が達成するというものでもないという、土壌の特性がありますので、そういう意味で、例えば 1,000pgを超えるような部分については括弧書きのような書き方をして、もし監視のようなことを考えるのであれば、その間については「現状程度の水準維持」というイメージでございます。

【林委員長】基本的にはこれでよろしいかと思いますが、何かご意見ございますか。
 もしなければ、基本的にはこの事務局案でよろしいのではないかということでよろしいでしょうか。
次に、資料2-3の5「調査・測定方法及びNDの取り扱い」について説明をお願いします。

【事務局】(資料2-3の5、参考資料2-1、2-6について説明)

【林委員長】最初の測定方法について何かございますか。

【C委員】参考資料2-6の土壌調査暫定マニュアルにつきまして、一応この場でご了解をきちんといただいた方がいいかと思われますのは、もちろん分析の技術面については大体JISのメソッドその他ともつながっており、余り問題はないのですが、サンプリングの部分で問題があります。
土壌中のダイオキシンというのは、大抵大気汚染経由なものですから、表層で高く、下に行くにつれ徐々に低くなるという特性があり、どの程度の深さまでダイオキシンを測るのが適当だろうかというのは絶えずついてまわる問題です。諸外国の多くの調査例が表層から5cmないし10cmの深さでサンプリングしているということと併せて、このマニュアルでは原則として上層5cm、水平方向は中心点から東西南北に適当な距離を離したところで5点採取し、それを混合して測定するというサンプリング方法になっております。
しばしば新聞紙上等で、例えば行政がやった測定値が低くて民間がやった測定値が高いということが起こっておりますが、その一つの原因としては、サンプリングにあります。以前、この専門委員会で表層こそ人に接する、あるいは口に入る機会が多いのだから、そのように考えるべきではないかというご意見があったかと思いますが、一応 1,000pgという数字も含めて、今のところ5cmで議論をしております。さらにいえば、サンプルをとるときに、例えば木の葉っぱが上に重なっているとか、あるいは草が生えていて、1cm、2cmの土を有効にとるのが非常に難しいとか、そういう実際的な問題もありまして、5cmになっています。
2番目にNDの取り扱いです。最近、定量下限値以下の測定値のいわゆる検出下限の取り扱い方法によってずいぶん違った数字になるということが起こってきました。起こってきた原因は、分析機関によっては検出下限値が極めて高いところに設定されており、それを足すか足さないかによって大きく数字が変わるという現象が起こったためであります。
環境庁の調査は、全般的に定量下限値をできるだけ低くして、そのような誤差が発生しないように従来からずいぶん取り組んできておりますので、その差は極めて小さくなっておりますが、まだ民間のラボあるいは外国へ出した測定値によってはそういうことが起こりえて、それもまた議論の対象になっております。このような状況もあり、この機会に環境庁の他の媒体のやり方と土壌の定量下限値の数字の取り扱いは同じにしておいた方がいいと思います。

【林委員長】そうしますと、まず測定方法について、このマニュアルを基本とすることについては、いかがでしょうか。基本ということですから、場合によっては変わりうるということですが。

【A委員】通常の土壌であればダイオキシンは表層にありますので、これで問題ないと思います。ただ、元廃棄物処分場が土壌となったときに少し引っかかりますが、実際問題としてリスクで考えると、直接口に入れる、又は表面から流出していくという観点でいけば、やはり表層を調べるのがいいのでしょう。ただ、その場合、5cmくらい覆土がありますから、表層を調べたときにそこの土壌にないからといって、今度上を除去したときにもう一回測ってみる必要があるという状況は起こるのでしょうが、実際リスクを考えると、余り深いところまで測る必要はないかと思います。ただ、先ほどのご発言のように、溶出試験云々という議論を始めた途端にむしろ問題になるのは、帯水層に近いところでしょう。もし溶出試験をやらなければいけないというふうになると、その辺りが悩ましいと思います。

【C委員】多分今のは、ダイオキシンの汚染源は一体何なのかという議論と絡んでおりまして、1980年代以前は主として化学産業の廃棄物みたいなところがありまして、それは必ずしも空から降ってくるということではありません。非常に高濃度のダイオキシンを含んでいるものが土の中に埋められていて、1mぐらい覆土してあるものが存在したときに、それは環境基準の対象になるのかというのは、この辺と絡んできます。ただ、今のところ「原則として」とあるので、ケース・バイ・ケースと判断する余地はあるのかなという感じがしています。
【事務局】参考資料2-6マニュアルの15ページから、サンプリングの方法について具体的に記載されております。ただ今お話のございました5地点混合方式の図、表面に落葉等の被覆物がある場合の取り扱い、16ページには深度5cmに係る記述がございます。この深度につきましては、53ページに参考資料2として、5cmの妥当性について当時の委員会で検討された経過がございます。また、55ページには、諸外国でのサンプリングの深さ等の調査結果がございまして、これらを総合的に勘案して原則として5cmということにしております。

【事務局】補足ですが、検討会第一次報告の46ページに、排ガスという経路以外の汚染源の可能性、例えば表面から油と一緒にしみ込む場合もありえなくはないので、さらに、下層に汚染のおそれがあり、当該土壌を掘削するおそれがあるような場合には、さらに20cmぐらいまでやって、なお超えている場合には別の排出原因の可能性があるので、資料等調査、つまり、そもそもその場所で一体過去に何が行われたのかを調査の上で、場合によってはすごく深く調査をするべきではないかとされております。
 また、49ページに全体的な調査のフロー図を示しておりますが、これは一般的な市街地土壌汚染の調査方法を参考としておりまして、一番大事なのは、調査をする前に一体どの辺りに汚染のおそれがあるか、又は対象地の過去の履歴等を資料等でよく調べてから、ポイントを絞るということで、その辺を踏まえた上で、先ほどの原則5cm等のマニュアル分析法ということでご議論いただければと思います。
 もう一点だけ、NDの方の補足ですが、参考資料2-4として食品からのダイオキシンのトータルダイエットスタディ調査結果があります。この3ページにトータルダイエットスタディによるところのダイオキシンの一日摂取量がありますが、定量下限をゼロとした場合に加えて、定量下限の1/2とした場合、検出下限の1/2とした場合の差が付記されております。このように、濃度が低いものについては非常に効いてくるようですが、この調査では現在のところゼロを基本として1/2を付記という形になっているようでございます。

【林委員長】原則でない場合の具体例が挙げてあればいいと思いますが、これでよろしいですか。

【E委員】表層0〜5cmの間でダイオキシンの濃度勾配があるのかないのかという問題ですが、例えば攪乱されている土壌であればさほど大きくないのかもしれませんが、多分濃度勾配はあると思います。そのデータ数がここに挙がっているだけでは少なくて普遍的傾向とは言えないのではないか。そうすると、もう少し深度の浅いサンプリング方法を考えなければならないということになりますが、サンプリングの面から考えると、5cm以下の厚さでサンプリングするのであれば、標準化が非常に難しくなる。誰がやっても同じサンプリングができなくなる可能性が大きくなります。現状では5cmでやむを得ないかなという感じはしております。
それから、先ほどのご意見についてですが、土の上に落ちた落葉は、直接関係ないかもしれませんが、土壌学では死んでいる有機物は土壌に入れています。

【C委員】実際はふるいをかけますのでそれを除いているのですが、本当に何がよいのかは少し分からないところがあります。

【事務局】確かに先生のご指摘のように、一部の例が参考資料2-6に挙げられており、この中ではふるい、メッシュのサイズ、それから54〜55ページに深度別の濃度分布などのデータがございます。国内での詳細なデータはそれほど多くないのですが、ただこれ以降にもこの類のデータが出ており、諸外国での様子もみますと、土壌の採りやすさ、均一なサンプルの採りやすさ等をみて、5cm〜10cmぐらいで多くはなされているようでございます。
 もう一点は、攪拌という話が先ほどございましたが、農用地の場合はどうしても耕すという行為が出てまいりますので、参考資料2-6の中でも、農用地についてはもう少し深く、30cmくらいまで採るというようにしてございます。

【E委員】この土壌中の垂直方向の濃度勾配次第によっては、また 1,000pgという数字に影響してくる可能性がありますか。

【事務局】諸外国と違うサンプリングの深さを採用しますと、諸外国との比較もなかなかしづらくなる。外国はこうなのに日本はこうだと、様々な場面でこのような話になるので、できるだけここは国際的に深さを合わせた採り方をした方が比較可能かと思いまして、このようになったということです。

【林委員長】では、その次にNDの取り扱い方ということで、国際的な整合性を考えますと、定量下限値の1/2ということになるのでしょうが、そうなると、土壌として問題があるのですか。

【事務局】資料2-3の4ページ「NDの取り扱い」にありますように、測定結果につきましては、土壌の場合、対策要件と非常に結びついてきます。測定結果によって線引きがされて対策を講ずべきエリアが決まり、そこで事業者負担、または、不明な場合には公費で対策事業を行う、そういう仕組みが働く調査結果になります。ですから、NDの取り扱いは法的に意味があります。先ほど事務局から説明させていただいたように、基本的に土壌の場合、有効数字2桁で取り扱っておりますので、1,000とか、そういう大きな数値でいきますと、NDを1/2あるいは1としても余り効いてきませんが、1桁くらいの低いレベルになりますと、影響してくる可能性は否定できないと考えられます。

【林委員長】このNDの扱いについては、土壌については余り問題はないということですね。

【A委員】先ほど、他の環境基準あるいは排出基準の方でどのような扱いをしているか整合をとる必要があるだろうというご意見がありましたが、排出基準と環境基準とかで同じ扱いであればそれに合わせるだけなのでよいのですが、他で違ったときにどちらに合わせるか、というのは論議が必要だろうと思います。負担ということを考えると、排出基準の方に合わせるというのは一つの考え方かと思います。

【林委員長】今の問題についてご質問、ご意見ございませんか。
 もしなければ、この2つの事務局案は基本的によろしいということでお認めいただけますか。
 そうしますと、資料2-3の2ページ (4)以降は一応ご承認いただいたわけですけれども、一通り終わりましたので、「1土壌の直接摂取」の(1)環境基準の位置づけ、(2)環境基準値、(3)対策要件にもう一度戻ってご議論いただきたいと思います。

【A委員】先ほど申し上げたように、健康リスクを考慮の上で設定する基準値というのが 1,000pgという数字だと判断できるかというと、1,000pg以下というぐらいのニュアンスではないだろうか。
もう一つ問題になりそうなのは、監視を行う上で基準を設定したときに、健康リスクを考慮した上で設定した数字を下回っているのだから問題はないのでしょう、何故そこで監視をさせられるのですかということです。ダイオキシンの場合、特に濃度的にそう変動するとは思えないものについて、対策も何もやらないで動きだけ監視しなさいというのはなかなか難しいのかなと思います。
 地下水汚染の浄化をしたときに、あるところまで浄化するとそれ以上対策をしても濃度が下がらず、これ以上はお金がかかるから後は様子をみていこうというのはありえますが、この場合はあくまでも濃度が少しずつでも下がっていく。一方、ダイオキシン類の場合も全く下がらないわけではないと思いますが、対策を全くせずに監視して濃度が大きく変化するものであれば、何となく理解できるのですが、監視の頻度をどうするかとかいうところでいやらしい議論になるのではないだろうか。
さらに、先ほど委員長も言われたように、 1,000pgで健康ですという論拠を出していただけるのであれば私は全く異論ございませんが、先ほどの溶出試験云々の話を考えてみると、これで大丈夫と胸を張って言える数字ではないように思います。

【C委員】先ほどの議論の中で、アメリカのHHS/ATSDRのガイドラインに係るご指摘がすごく気になっております。環境基準又は対策基準が一方にあって、そして対策のメニューはモニタリングと処理対策といった議論になっておりますが、例えば 1,000pg/gを超えたときに、住民の健康診断を含めたソフトな対策というのは要らないのだろうかというのは気になりました。
それから、アメリカではごみの焼却以外の曝露シナリオを考えているからだろうと思うのですが、つまりもう一つ下の方のレベル、例えば50pg/gとなったときに、その地域で本当に高い曝露を受けるような人々がいるのかどうかチェックするようなアプローチが本当に要らないのか少し気になりました。そのことがまた、場合によっては基準の考え方等に反映する可能性があるかなという感じがしました。

【A委員】今のような話をもし考えるのならば、直接口に入れるところが中心で、農作物も若干考えてという話になるのでしょうが、水系というのがどうしても頭に一番ありまして、それを考慮するとその住民だけという話では必ずしもないだろうと考えられます。
 同じような考え方をとろうとすると、水系に対する総負荷量をどうとらえるかが非常に難しいわけです。例えば農地であると水尻や農業排水路から河川へ出てくるところで、総負荷量が大きい場合には何か考えていくというようなことも必要ではないでしょうか。
例えば、先ほど隣の水田と違うという話もありましたが、実際に環境基準のモニタリングをするという農地の場合に、例えば2.5haに云々ということ自体も、それで適切かという懸念もあります。実際に評価するところは、もちろん環境基準で評価しなければいけないのでしょうけれども、そんなにすんなりいくような話ではなく、もう少し工夫ができないだろうかと思います。法律で形が既に決まっていますので、単に環境基準、対策基準という形でやらなければいけないのでしょうが、実際の運用のところでは何か知恵を出す必要があると思います。
 そういうことで、逆にいうと非常に曖昧な表現をしてしまいましたが、例えば1,000pg/g以下なんて言い方はよく分かりませんが、今のところ、我々科学者が答えを出せと言われたら、自分の良心に従うと「○○以下」としか言えないということになるのです。そういう曖昧な数字自体が、もちろんそれが受けられるかという議論はあるでしょうが、現状を一番反映しており、一番正しい数字ではないかと思いますが。そのように設定することによって、後で色々実質的な工夫が使えるようにならないといけません。その辺りは研究者の一つのアイデアで、行政的にはちょっと分かりませんが。

【G委員】公共用水域等に対する二次的な汚染源になり得るということで、もし溶出を考えるとなると、また違った物差しでものを考えなければいけない。今までのお話で、1,000pgと溶出で何か論理的な結びつきができるならば、いいのかなという気もするのですが、その辺を整理しておかないと、なかなか先に進まないような感じがいたします。
それともう一つ、この 1,000というのはあくまでもTDIが4pg-TEQ/kg/dayに対応する数値ということですが、平成10年度の国民の平均摂取量が2.2であれば、4まで認めるのがいいのかなと思います。むしろ、非悪化ということになると、そういうものに対応するということもあるのではないかという感じがいたします。

【B委員】1,000pg-TEQ/g以下ということについての問題ですが、第一次報告の14ページには、土壌から人体へいく曝露経路を書いて、その中で、地下水、河川等に対する影響については当然土壌は持っている。その結果として、例えば食品あるいは飲料水という形で経口摂取されるという経路が書いてあります。ただし、1,000をここで出したのは、直接摂取である飛散、揮散、皮膚接触と摂食という太線で書いた部分について検討しているわけです。その中で、いくつか不確定な要素、曖昧な要素はありますけれども、ともかくTDIの中に何とか収まっているということできているわけです。
 もう一方で、参考資料2-4のトータルダイエットスタディ調査結果を見ましても、幸いなことに若干ずつ個々の食品から入ってきている分は下がりつつあるという傾向ですし、大気についても、余り明確ではないようですが、緊急調査報告を見ますと下がり気味の傾向がある。そういう中で、土壌から河川等という経路あるいは土壌から地下水という経路が、この度環境基準を各媒体について設けるというところで関係が出てきてしまったわけですが、土壌のところから河川の基準を守らせるのだというところは、不明確なメカニズムのところになりますので、そこを余り強調していただくと非常にこっちは苦しいなというところは正直ございます。ここのところは、例えば飲料水の段階でどうなっているというところで対応することにして、少なくとも一次報告書ではそのように考えているということはご理解いただきたいと思います。

【A委員】一次報告書についてはもう構わないわけで、今回についても、最初から他は分からないから直接摂取だけでやるよという判断はあるのだと思います。資料の中にある水質の方も、生物濃縮の方は分からないから飲料水でやりますよとしています。明らかに飲料水は曝露の形態が小さく、寄与が小さい。ですが飲料水で設定して、そういいながら寄与が大きいのだから生物の方の話も今後考慮していきますよという形で最後のまとめになっております。一方土壌については、健康リスクを考慮の上で設定する基準値として1,000pg をいきなり出すと、この次に、仮に話が水の方へいったときに問題が大きくなる可能性は非常に高いわけです。それから、この環境基準とはそもそも何なのかという議論が出てきてしまって、平均的な人をみるのであれば、1,000pg のところに線を引いて、全体で1,000pgを超えないようにしていれば、あとはばらつきがあるから大丈夫だろうという話にはなるのかもしれませんが、極端な話はどうなのか。
 水俣病も、仮に水俣の漁民の人が市場に出した魚を食べていれば、あんなことは起こらなかったわけです。でも、やはりそういう場合を想定して環境基準を考えざるを得ないだろう。今の段階でそこまですぐ検討しろというのは、時間の制約から難しいかもしれませんが、少なくともそういう方向でいくべきでしょう。そうなると、基準値を線切りしてしまっているというのがどうも気になります。

【C委員】多分ある数値で切らざるを得ないのです。1,000というのは除去対策基準と考えているわけで、 1,000を超えたら危険であるから、お金を投入してでも何か対策をしなさいと求めることが前提になるポイントです。どこかに線引きは要りますから、それを強制させられる側にとっても十分に納得できる数字でなければいけないという点からいくと、 1,000というのはそんなに悪くはないかなということ基本的には賛成しているのですが。
 問題は、 1,000以下のところに絶対安全かというふうに持ち込まれると、それは強制させるほどではないけれども、何かちょっと不安だなという要素が全然ないわけではない。ただ、まず介入基準としての1,000というのは、余りいじらなくてもいいかなと感じます。

【A委員】これも感覚的にものを言って申し訳ないのですが、先ほどからの議論、溶出云々の話も含めて、もっといえば、流出の話を含めて、そこはunknownなわけです。
 直に言ってしまえば、先ほどの飲料水と魚の曝露の話と同じことですが、土から直接摂取するというのは明らかに曝露経路としては小さいわけです。そこだけを焦点を当てて、そこで安全だからといって切ってしまうのがいいのかどうか。後で知見が出てきたときに、当然そこで変わってくる可能性はあるわけです。それを見込んだ上で、とりあえず今、特に対策するのは 1,000ですというのは、反対するわけではございませんけれども、そういうふうにいきなり切って、健康リスクを考慮の上で設定する基準値といって、健康リスクというのはどこまで考慮しているのですかということになりかねません。
 極端な話、これを出したときに国民が、「それでは、土壌を1,000pgでやれば水の基準がどんどんよくなっていって、魚も、かなり極端なケースにあたる人もTDIが4pg-TEQ/kg/dayを超えないという状況がつくれますか。」という問いに答えを何か用意しておかなければなりません。現在設定できないのなら、「では、平均的な人なら大丈夫なこのぐらいで我慢してください。将来的にはさらに詰めた形で知見を重ねて、その辺りをクリアしていくような基準に改めていきます」という流れだろうと思います。全体としてまだ文章になっていないので、その辺りがどう書かれるか見てみればまた違ってくるのだろうと思いますが。

【企画課長】基準は健康リスクを考慮の上で設定されるべきであり、1,000pgは直接摂取という健康リスクを考慮して算定されたものです。いろんな前提はございますけれども、安全側に立った計算をして、一応赤信号という数字です。
 では、その 1,000pgだけでいいのかという議論を昨日も武田先生の下で侃々諤々やっていただきまして、その下のところも、平たく言うと、赤信号とは現時点では言えないけれども黄色信号の部分があるであろう。したがって、1,000pgという一つの数字だけではなくて、1,000pgと併せてもう一つ何らかの数字を作って、その間のグレーゾーンについても関心を持っていかなければいけないのではないか、そういう基準を作ったらどうかということです。
それから、ダイオキシン法の措置についていいますと2つありまして、一つは土壌を除去する等の対策、もう一つは都道府県による常時監視という措置がございます。したがって、国が補助して都道府県に特に監視していただく土地はどの辺なのかということを判断するメルクマールも必要であります。その2つのことを考えて、こ<れは我々が、どういう基準やメルクマールを持っておくのがいいのかという悩みをそのまま表現したような形にもなっておりますが。

【A委員】監視も対策の一つだよということを言われたのだろうと思いますが、そうであれば、逆にそこまで含めた形での対策要件で、対策要件の中でランク分けをして、その中で1,000pg以上はこういう対策をしなさいという整理ができるのではないか。例えば、このグレーゾーンの間は監視という対策をやるのですよ、そういうふうな整理の方がよっぽど分かりやすいだろうと思うのですが。

【企画課長】上の値は評価基準であり、対策発動の必要条件であります。それから、1,000pgを下回っても下の値以上の部分は監視しなければいけないということです。

【A委員】だから、監視するというのも対策であれば、そこの部分が対策の発動要件で、発動された対策の中身が監視であり、上の方はもっと除去するという整理だという考え方があってもいいのではないでしょうか。対策を一本で考えると非常につらいのです。先ほど言いましたように、1,000pgというと、もうそれだけで線切りしてしまうような感じがするのですが、その辺りは分けられないのでしょうか。

【F委員】今問題になっているのは、下の値をどうするかというところだろうと思いますが、要監視という監視という意味がよく分からないので、問題になっているのだと思うのです。
 前回のときにも発言したのですが、スウェーデンのように、ある値になったらアセスメントをしよう、つまり監視というのを、ただ見ているのではなくて、ある数字になったら何か対応を考えるべき数字として決められれば、1,000pgという必ず対策しなければいけない数字と併せて納得を得られるのではないでしょうか。

【林委員長】どうもありがとうございました。先ほど事務局から、「単なる監視ではなくて、この監視の中には調査なども含まれている」という説明がありましたが、それは先ほどのスウェーデンのリスクアセスメントにもつながり、監視に調査とリスクアセスメントが含まれると明らかに一つの対策ということではないか、ということなのですね。

【F委員】補足ですが、1,000pgという数字が先ほど議論になっていたのですが、もっと低いところで何らかの措置をとるとすれば、1,000pgは皆さん納得されると思います。1,000pgという数字は、検討会一次報告においていろいろなことを検討されて決められた値ですから、1,000pgではいけないということになれば、また同じぐらいの委員会をつくっていろいろ検討し直さなければいけませんので、そういう意味では1,000pg はできるだけ何らかの形で生かしていきたいという感じがいたします。

【A委員】私もそのとおりだと思うのです。基本的には1,000pg/g というのは、直接摂取に基づいた健康リスクを中心として設定した値であり、それを超えたものについては例えば除去する、どのぐらいのレベルにするか、そういう直接的な対策をやる。私は、モニタリングというのは対策だと常々主張しているのですが、そうしないと、環境基準を満たすまで対策しなければいけない。土壌・地下水汚染対策の場合、回復目標として環境基準を設定したときに、それを達成するまで絶えず一生懸命手を動かしているということは実質上不可能なのです。そうすると、最後にはモニタリングというところまでが、対策の一連の中身だよというふうな整理をしないと、土壌とか地下水の場合、非常に苦しいのです。
 ですから、そういうふうな整理をしていただいて、とりあえず今、1,000pgというのが一つの尺度としてあって、これで何かやっていただくのを決めましょうという判断で、また今後、例えば新たな知見が出てくれば、例えば水の基準が決まったり、さらに生物濃縮が検討されたりした場合、水の方でも今の考えでそのままいくか分からないわけですから、それに対応して考えていったときに、必要であれば、そこの段階で、対策要件も環境基準も変えるわけではなく、実際に行う対策の種類についての一つのまた判断基準といいますか、そんなものが付け加えられる、という整理の仕方が適切ではないかと思います。

【林委員長】では、1,000pg-TEQ/g の値を一般集団での健康リスクの未然防止のための値として適切と考えてよろしいでしょうか。何か異論ございますでしょうか。

【C委員】もちろん異論はなくて、それでいいと思うのですが、一応理解していただきたいのは、この 1,000pg/g-TEQ/gというのはそれほどの余裕はないという認識です。
なぜそういうふうに判断しているかといいますと、まず 1,000pg-TEQ/gという数字の基になった土の摂取量ですが、これは普通の量としています。つまり特異な子供が大量にとるということを前提にしていません。
第2は、土の表面は、例えば5cmの深さでとった平均値で1,000pg-TEQ/gを評価していますが、土の表面はもっと高い、という場所もないとは言えません。それから吸収率も一応25%と考えていますが、これは食品の方では既に50%としていますので、土からはそれよりも低い割合で吸収するものとして計算しています。従って、1,000pg-TEQ/gを超す地域で住むのは、何らかの危険を包含しているという認識でいた方がいい数字ですので、ここのところは、むしろ積極的に対策をとった方がいい。
 そのことについては、対策を義務づけられるとしても十分納得できる数字だ、という意味で理解しておいた方がいいという感じがします。

【林委員長】そうしますと、1,000pg-TEQ/gというのを一応お認めいただけるということですね。
次に、対策についての考え方ですが、事務局の方はいかがですか。

【事務局】1点整理させていただければと思います。先ほど来御指摘を受けているところですが、法律上の「対策」という用語と、いわゆる土壌汚染の世界で用いている、最後のモニタリングによりながらというような対策手法も、例えばトリクロロエチレン等については導入されつつあるのですが、その話を分けた方がいいかと思います。ダイオキシン法でいうところの対策要件というのは、それを超えると除去等の対策が必要で、もちろんそこに監視というのがないわけではないのですが、内閣総理大臣の同意を得た計画の承認をした上で、事業者にも費用負担をし得るという意味で、まず大きな根本的対策のようなものを一つ位置づけておくというのがございます。
もう一つ、都道府県知事が常時監視をすることになっておりまして、土壌汚染については、原因者が単なる発生源管理というような意味での対策をすることには法律上はなっておらないということと、環境の状況の常時監視だけではなくて、いろいろな調査を国や地方公共団体はできるということになっておりますので、1,000pg-TEQ/gと、それよりもう一つ下に監視のための基準みたいなものを設けて、公共用水域の不確実さという意味合いを含めて、ある値を超えたら都道府県知事が行政として調査・測定をする。それが場合によっては土壌だけではなくて、周辺の公共用水域も、土壌で何かあれば、周辺についても環境の調査をするといったようなことが可能ではないでしょうか。
さらに、対策をするときの目標値、例えば浄化であれば、下限値以下を目標にするような場合に、途中ぐらいまで化学的な方法で浄化ができて、あともう少しなどというときの、いわゆるナチュラル・アテニュエーション的なものについては、むしろ逆にもともとの対策の一環としての事後モニタリングみたいなものはあり得るのではないかと考えているところです。

【A委員】今のご説明について必ずしも十分把握できてないのかもしれないのですが、現在欧米でいわれているナチュラル・アテニュエーションというのは、事後というのではなくて、最初からナチュラル・アテニュエーションという考え方も十分あるわけで、先ほどの法律条文での「除去等」の「等」というのをどう読むのか、これは非常に難しい話ですが、「等」というところで読めるものであれば、広く読んで、それを都道府県知事が監視する、それはいわば当たり前の話です。しかし事業者と両方オーバーラップするという話は全然問題なくて、事業者は対策の一つとしてやり、都道府県は別な意味でやる、という整理ができれば、先ほどのご指摘のような話で整理できるのではないかと思います。そこら辺は、それこそ行政の方はご専門でしょうから、お考えいただければと思います。

【林委員長】時間がなくなってまいりましたけれども、全体を通じて何かご意見ございませんでしょうか。

【F委員】今の議論の整理は大体ついたようですが、監視のための値をいくつにするかという議論をどこかでどういうふうにされるのか、それが問題のような気もします。
 それと「監視」という言葉は、先ほど言いましたように、もっとアセスメントをして、対策をとるのならとる、とらなくてもいいのならとらなくてもいいという、その辺りまで含めた積極的な意味でしょうか。調査というのは、その結果、対策をとるかとらないかというところまでいって初めて調査の意義がありますから、この監視の意味も、監視をするだけではなくて、監視をしてどうするのかというところまで深めないといけないと思います。

【事務局】 具体的な検討という部分はまだ少し残りますが、まさに今先生からご指摘があったような感じのイメージを我々は持っておりました。人間で言いますと、最初の診断を受けてちょっと観察しなさいといった話になって、その後入院が必要ですというようなイメージを持っていたということです。

【林委員長】環境基準値の1,000pg-TEQ/gとは異なった値を設定する際の根拠を健康影響に求めると誤解を招くと思うので、やはりこれは別の観点から作るべきであると考えますが。