土壌農薬部会議事要旨

中央環境審議会土壌農薬部会土壌専門委員会(第1回)議事録


1.日  時   平成11年9月7日(火)14:00〜17:00

2.場  所   通商産業省別館901号会議室

3.出 席 者

4.議  題

5.配付資料

6.議  事

【事務局】定刻となりましたので、ただいまから第1回中央環境審議会土壌農薬部会土壌専門委員会を開催させていただきます。   まず、議事に先立ちまして、遠藤水質保全局長よりご挨拶申し上げます。

【水質保全局長】本日はご多忙中かつ残暑厳しき折りにもかかわらずご参集いただきまして大変ありがとうございます。
  ご承知のとおり、さきの通常国会におきまして、「ダイオキシン類対策特別措置法」が成立いたしまして、7月16日に公布されたところであり、来年1月15日までに施行となります。この法律に基づき、今後土壌関係におきましては、土壌環境基準の設定、対策地域の指定要件の設定などを行う必要がございます。このため中央環境審議会に対して、7月14日には土壌の汚染に係る環境基準の設定等について、9月3日には土壌汚染対策地域の指定要件についてそれぞれ諮問させていただきました。そして、これらの諮問は土壌農薬部会に付議されているところでございます。
  一方、ダイオキシン類以外の物質に対する対策として、本年2月22日に、ふっ素、ほう素、硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素について、人の健康の保護に関する知見の集積、あるいは公共用水域及び地下水の検出状況の推移、これらを踏まえまして、公共用水域と地下水の水質汚濁に係る環境基準の項目追加がなされました。こうした状況を受け、7月14日に土壌の汚染に係る環境基準の項目追加等について諮問させていただきました。この諮問も土壌農薬部会に付議されております。   そこで、これらの問題を総体的にご審議いただくために、土壌農薬部会におきまして、本専門委員会の設置が決定された次第でございます。
  ダイオキシン類に関する諮問につきましては、非常に国民の関心の高い重要な事項でございまして、法律の施行に間に合うよう結論をいただきたいと考えております。また、これと並行して、大気、水あるいは廃棄物の最終処分基準などの討議も行われておりますが、別の委員会におきましてはそれぞれの分野の整合性をどうやって図っていくのか、という問題も提起されており、そういう点につきましてもいろいろご配慮賜ればと思います。また、硝酸性窒素等につきましても十分なご審議を賜りたいと思います。今後とも、非常に厳しいスケジュールでございますけれども、よろしくお願いいたします。

【事務局】本日は第1回目でございますので、委員の皆様方をご紹介させていただきます。資料1-1として名簿を用意いたしておりますので、ご参照いただければと思います。名簿順にご紹介いたします。
(委員の紹介)
 豊田委員、山本委員におかれましては、本日ご欠席とのご連絡をいただいております。
  引き続きまして、事務局の紹介をさせていただきます。
(事務局の紹介)
  続きまして、配付資料の確認をさせていただきます。
(配付資料の確認)
  それでは、林委員長に議事進行をお願いいたします。

【林委員長】本日はご多忙のところお集まりいただきましてありがとうございます。この専門委員会は、参考資料1-1のとおり本年7月14日に中央環境審議会土壌農薬部会に設置されまして、土壌の汚染に係る環境基準の設定等について、専門的事項の調査検討を行うことになっております。
  同日付けで部会長より指名を受けましたので、大任でございますけれども、委員長を務めさせていただきます。それでは、議事次第に沿いまして進めさせていただきたいと思います。
  まず本専門委員会の公開の取扱いについてでございますが、こちらについても7月14日の土壌農薬部会において、部会長と専門委員長が相談の上で決定することになっております。そこで、資料1-2のとおり、会議そのものは非公開とするが、会議資料は原則公開とし、会議録、議事要旨は公開ということで、会議資料及び会議録を公開することにより、公開性を高めたいと考えております。   部会長には事前に了承いただいておりますけれども、特別のご意見がなければ、この案に沿って進めさせていただきたいと思いますが、ご意見ございますでしょうか。
(意見なし)
  それでは、この資料1-2のとおりに進めさせていただきたいと思います。
  次に、議題2の「ダイオキシン類に係る土壌環境基準等に関する調査検討の進め方について」に入りたいと思いますが、まず、ダイオキシン類関係の諮問の内容とこれまでの調査検討状況について、事務局から説明をお願いします。

【事務局】(資料1-3、1-4、1-11、参考資料1-2、1-3について説明)

【林委員長】どうもありがとうございました。資料1-4の「土壌中のダイオキシン類に関する検討会第一次報告」は、武田委員が座長として取りまとめられたものですので、武田委員から何か補足がありましたら、お願いいたします。

【武田委員】この検討会の座長を務めさせていただきまして、8回にわたって皆さんに検討していただいた結果、第一次報告として出させていただいているわけでございます。
  ただいま事務局から説明いただきましたので、ほとんど補足させていただくところはないかと思いますが、説明にもございましたように、居住地等において直接的摂取に限って検討したということですが、資料1-4の14ページにございますように、大気経由、皮膚接触、土壌摂食といった単純で、途中に他の媒体が余り関与しない経路に限定して考えましても、この直接的摂取に係る要素が非常にたくさんございます。例えば、土壌をどれだけ摂食するのか、あるいは吸収率がどうなのか、といったさまざまな要素が関与してまいりますが、残念なことに、データがそれほどないし、あるデータにもかなりの幅がありまして、その中で一つのシナリオとしてまとめてある数字を出していくというのは、非常に困難な作業であったということを申し上げたいと思います。
  もう一つは、先ほど説明がございましたが、子供の遊び場に対してどう考えるかということは、最後まで議論になりまして、先ほどの説明のとおりドイツは別の基準を持っているということですが、最終的に第一次報告の中では、子供に特に配慮する特別の理由が見当たらないことと、一生涯の曝露で評価するという基本姿勢をとるということで、特に子供に対して別のものを考えてはおりません。これにつきましては、実態調査が必要だということで、現在、環境庁の方で調査を進めるべく検討していただいているところでございます。以上でございます。

【林委員長】どうもありがとうございました。資料1-4の検討会第一次報告は、今後の検討に当たりまして基礎的な資料になると思いますので、非常に貴重な資料だと思います。
  それでは、先ほどの事務局からの説明に対して何かご質問がございますでしょうか。

【A委員】「居住地等」というのはどの範囲をいうのでしょうか。

【事務局】第一次報告の50ページ、第6章の「暫定的なガイドライン値」というところで、注書きでおよその概念を説明してございます。「この暫定ガイドライン値が適用される場所は、例えば、住宅地の他、住宅地周辺の通路、休憩・休養・運動の場所など、一般の人が自由に立ち入ることが想定される場所が含まれ得る。ただし、実際のこのガイドライン値を個々の場所にあてはめ、対策の必要性を検討する際には、現地の実情を踏まえ判断すべきである。」ということで、ここですという限定はかけていないのですが、日常生活の中で一般の人が自由に立ち入ることが想定される場所と説明しております。

【A委員】この間テレビで、セントラルパークで、そこらに生えている植物を直接食べるのがトレンディになっている、というニュースがありまして、ちょっとぎくっとしたのですが、そういうことになると、直接摂食にプラスアルファの条件を考えなければならないのではないかという気がしますが。

【事務局】先ほど武田先生からも補足的な説明をいただきましたが、第一次報告の14ページの図にある各種経路の中で特に土壌の直接摂食にまず注目したのですが、残された問題として、農用地で栽培した作物を経由して人間の体に入ってくるときの考え方についても、これは一つまた違うルートかと思います。
また、ダイオキシンの場合には、土の上に落ちて、それが河川に流れ込み、さらに海洋に行き、場合によっては魚などを経由して非常に長い経路をたどってまた人間に返ってきます。そのような曝露経路も重要かと考えられており、これについてどのように考えるか、というのが2つ大きな課題として残っておりまして、引き続き検討会において検討していただきたいと考えております。また、この場でもご意見がございましたら、ぜひお願いします。

【B委員】資料1-4の(4)評価のところで、土壌中のダイオキシン濃度を 1,000pg/gという前提で計算した直接摂取量として、不確かなところが多いので難しい計算だと思いますが、一応の目安として0.31pg-TEQ/kg/dayを出しておられます。そうすると、TDIの4pg-TEQ/kg/dayという数字に対して、食物からくる量と土壌 1,000pg-TEQ/gを前提に計算した量を足しても、十分それを下回る数値になるわけです。ですから、かなり余裕があるというような印象を受けます。それにもかかわらず、そこから 1,000pg-TEQ/gというのが適当な数値だという結論が出る過程がわかりません。

【事務局】食品と大気については、第一次報告33ページの上から5行目に、この時点での最新の調査結果として、食品では3種類のコプラナーPCBを含めて2.41pg-TEQ/kg/day という調査結果があり、大気からは0.17pg-TEQ/kg/day という調査結果がございましたので、食品と大気と合わせて2.58pg-TEQ/kg/day ということでございました。ただし、食品については平均値でして、日本人全体の摂取については分布があり、ある程度の確率で食品だけで4pg-TEQ/kg/day近く摂取する方もいるだろう。それぞれが幅のある値なので、それをどういうふうに考えるかという点が1点議論になりました。
  もう一つは、実は土壌については、資料1-4の概略にもお示ししておりますが、土壌に吸着したダイオキシンは、食品と同程度には吸収されないのではないかということで、吸収率を掛けておりますが、TDIを計算するときに、食品もある程度吸収率を見込んでいるということで、吸収率の見込み方の土壌と食品の違いなどがありますので、ぎりぎり4pg-TEQ/kg/dayまでとるということはしないで、1,000pg 程度が、諸外国の基準などと照らして、総合的に判断して、適当ではないかという結論になりました。厳密な説明ではないのですが、幾つかの要素から総合的に判断されたものでございます。

【B委員】私の質問の趣旨は、TDIから出発して、それから考えられるいろいろなファクターを差し引いて、土壌に許容される量がこれぐらい、ということから逆算して濃度がいくらというふうに出るのが筋ではないかと思ったものですから、はじめから 1,000pg-TEQ/gを仮定して、そのときの数値がこうだからということで 1,000pg-TEQ/gに戻るというのが、論法が逆のような気がします。

【事務局】1,000pg-TEQ/gを出す過程の中で、TDIの4pg-TEQ/kg/dayを、食事からいくら摂っていい、大気からいくら摂っていい、土からいくら摂っていい、といった考え方に立っておりません。先ほどの説明のとおり、土から摂りそうな値、完全な数字ではないにしても、これは非常に確率の高い範囲でこの程度摂るであろう値をまず試算し、それを4pg-TEQ/kg/dayと比較しているのです。

【C委員】環境基準の設定は6ヵ月以内ということになっておりますが、暫定的な数字として出すことは許されるのでしょうか。6ヵ月以内に縛られすぎて、わけの分からないものをただ集めてきて、それで決めてしまって、後で問題になってくるのも困ります。大体、こんなやり方で本当に決められるのかどうかさえ心配な方が多いと思うので、そういうときに暫定的に、今回やった値ではこうであった、これはこれから先の研究でいくらでも変えられるというような余裕を残した決定ができるかどうか。

【事務局】まず、基準の設定が可能かどうかについて、結構決められるものがあるかもしれないので、その辺をまずはご論議いただきたいと考えております。
  また、ダイオキシン類対策特別措置法の中にも、ダイオキシンに関してはかなり不確定部分が多いので、科学的事実を今後積み上げていってその都度見直そうという条項がございます。環境基準が設定される時点におきましても、不確定部分を少し含んでいるというのは認識されたものになっております。

【林委員長】ほかに何かご意見ございますでしょうか。
  なければ、諮問に対して具体的に検討を進めていくのにあたり、検討材料となります資料が用意されているようですので、事務局から説明をお願いします。

【事務局】(資料1-5、1-6、1-10、参考資料1-4について説明)

【林委員長】ありがとうございました。これらの資料を基にして諮問に対する検討を進めたいということですが、まず、これらの資料についてご質問がございましたら、お願いいたします。

【林委員長】先ほど事務局から、諸外国でのガイドライン等の設定状況の中で、スウェーデンでは1,000pg-TEQ/gを超えたらリスクアセスメントを実施して検討するとの説明がありましたが、スウェーデンでそのようなサイトが今まで実際にあったのですか。

【事務局】スウェーデンは、ダイオキシンだけではなく様々な物質について一斉に土壌中の濃度についてのガイドラインを定めているようで、そのガイドラインを入手しております。その目的については、資料1-5の8ページのとおり、リスクアセスメント又は浄化目標設定の際の参考と書いてございました。
  また、スウェーデンのウメオ大学に、ダイオキシンで有名なラッペ先生という方がいらっしゃるのですが、その方からの手紙によりますと、スウェーデンでは2ヵ所ぐらいしか土壌中のダイオキシンが問題になっていないとのことです。実際にその2ヵ所についてどういう対策をしたのかは、残念ながら分かっておりません。
【D委員】緊急全国一斉調査の結果は100pg-TEQ/g等がそう多くないようですが、そのようなところの汚染土壌の広がりについて、もちろんデータはないと思いますが、推定できるような状況でしょうか。というのは、土壌摂食量のデフォルト値は恐らくそう狭いものを考えていないでしょうから、比較的狭い場所の土壌汚染だと、その濃度の土壌をこれだけとるとは思えませんので、もし分かったら教えてください。

【事務局】汚染土壌の広がりについてのデータはあまり持っておりませんが、大阪の一般廃棄物焼却施設周辺のダイオキシン汚染の例について申しますと、焼却施設周辺で1,000pg-TEQ/g を超える面積の範囲が概ね2ha程度あったと聞いております。

【事務局】一つ補足させていただきます。これは焼却炉の例でございますが、第一次報告の44ページの図5-3に、サンプル採取の概念図がございます。真ん中の円、この場合は焼却炉を想定しておりますが、この円が 500mだったと思います。この中で採取したサンプルを比較すると、かなりばらつきがありまして、濃度が均一に分布しておりませんでした。まだ更に調査が必要かと思っておりますが、その結果からは、汚染の範囲はそれほど大きなものがないのではないかと想定しているところです。

【C委員】 カドミウムの場合は、水田ごとに汚染の有無についてコメのカドミウムの含有成分を調査していますが、ダイオキシン類についてはそれをどのように考えるのでしょうか。ダイオキシン類対策特別措置法の体系の中でも地域指定が盛り込まれておりますが、その地域の決め方が問題だと思いますので、その辺りについてのお考えをお聞きしたいのですが。

【事務局】農用地土壌汚染防止法での調査の方法につきましては、かんがい用水を経由しての汚染の面的な広がりを主に考慮して、通常は 2.5haに1点との割合で調査を実施し、それで指定要件を超えるものについては線引きをしていくという形をとっております。
  今回のダイオキシンの場合には、基本的に、市街地での調査方法である5地点混合法、すなわち10m四方で5サンプルを採取し、等量混合してその地点を代表するという方法で採取しております。
  ご指摘の、どのようにして土壌を調査していくかという点については、これから法律に基づき常時監視が始まりますが、常時監視の手法を今後法律の施行までに自治体に示す必要があり、一つの課題かと思っております。一つの考え方として、汚染が発見されたらすべて5地点混合法ではなくて、1地点ずつ押さえていって地域を絞りこんでいくという方法はどうかと今のところ考えております。

【E委員】汚染の広がりについてですが、1つは、一般環境で例えば約10〜20pg-TEQ/gのレベルのところは、相当広いのではないかと見ております。つまり、その辺り一体が、バックグラウンドという言い方は変ですが、そういう形になっているのではないか。それに対して、かなりはっきりした発生源がどこかにあるという地点では、距離が急激に減少するといった意味で面積が狭いのではないでしょうか。

【F委員】資料1-5について、対策要件と環境基準のことですが、今は土壌中のダイオキシン類に関する検討会で作られた対策要件が既にあるということでこのような整理の仕方になるのでしょうが、対策要件ありきで環境基準が決まるというのは本末転倒だと思います。あくまでも環境基準を決めて、それに対する社会的な投資を考慮して対策要件を考えていかないと、議論がおかしくなるでしょう。
  二つ目に、対策要件を考えるときに非常に困るのは、対策の方法は様々なものがあるわけで、極端な話をすれば監視も対策の一つという考え方もできるわけです。また、流出しないように表土を覆土するというのも、剥いでしまって処理するというのも一つの対策です。そのあたりを明確にしておかないと、対策の要件といっても、なかなかはっきり決められないでしょう。
  三つ目に、資料1-5に場所ごとで対策要件を設定するという話がありますが、この場合、河川等への流出を根拠にしてというのが多分一番難しいと思います。水の環境基準についても現在検討しているところですが、それに基づくと土の対策はできないとなったときに、先ほどのスウェーデンのような考え方があり得るのかなと思います。例えば、これは対策要件の話になるかもしれませんが、ある程度のレベルを超えたときに、河川水を測り、さらに流出先の川や海で水や魚を測ることによって、因果関係はよく分からなくとも、問題があるかどうかを判定していく、という考え方もあると思います。全国一律の環境基準にというわけにはいかないかもしれませんが、考え方を少し整理し直して、その辺をどうするか検討しないといけないかなと思っています。

【林委員長】どうもありがとうございました。
  それでは、ただ今の資料を基に諮問に対する検討を進めたいと思いますが、本日は第1回目ですので、ここで委員の先生方全員にご意見をいただきたいと思います。環境基準、対策要件のあり方等について、既に一部厳しいご意見をいただいておりますが、よろしくお願いいたします。

【F委員】資料1-5の5ページに、対策要件で、農用地、居住地、山林原野の3段階があるのですが、実際のバックグラウンドというときには、逆に山林原野が一番低くて、居住地、農用地の順になります。そこら辺の矛盾というか、ずれが少し生じてしまうというのが問題点だと思います。

【A委員】案が幾つか出ていますが、ここでどの案でいくべきかというのははっきり申し上げられません。
  従来、農用地での重金属関係の対策要件と環境基準については、あの場合は指定要件が先にできて後から環境基準になったわけですが、イコールとして運用してきたわけです。ただ、重金属とダイオキシンとは、汚染物質の特性からみて、同様に考えていいかどうかという点については、もう少し考えさせていただきたいと思っております。

【B委員】先ほど対策要件について、対策の中身をはっきりさせる必要があるというご意見がございましたが、私も同意見です。事務局の説明にありましたように、ある基準でリスクアセスメントをするとか、住民の健康調査等をするというような段階を経る国もあるようですので、対策の際に、1,000pg-TEQ/g で切っていきなり土壌を除去するというだけはなくて、いろいろな段階を踏むというようにきめ細かく決める必要があるのかなという印象を持っております。

【G委員】深度別の調査が記載されておりまして、大体表層から5cm置きにとっているわけですね。その数値は、恐らく30cmまでの平均値という格好で概ね表現されているのではないかと思います。そうしますと、土壌の吸着機能からいいますと、まず第1に、ダイオキシン類は0〜5cmの表層に高濃度に分布していて、その部分が実際に我々の生活に大きく影響するわけですから、むしろ、こうした表現は、細かく0〜5cmとか5〜10cmと分ける必要があると思います。
  第2に、土壌中の有機物の量によってもダイオキシン類の吸着あるいは脱着に非常に大きな影響があります。例えば、最近の農用地は、畑作の場合は雑草一本生やさないような農地が非常に多く、こういうところでの風が吹いた場合のドリフトは相当量になりますので、有機物の多少についても重要な一つの視点に入れていただきたいと思います。

【H委員】今までの土壌環境基準は、飲料水や地下水の安全性を確保する観点と、食糧を生産するという観点という2つの観点から考えられており、土を食べるという観点から議論するのは恐らく今回が初めてですが、土をいくら食べるのか、土からのダイオキシンの吸収がどうなのかといったよく分からない部分が多うございます。そういう点で、不確定な要素をこのような基準の中に盛り込むのかというのは難しい議論かなと思います。
  また、先ほどのご意見のとおり、公共用水域への土壌からの溶出について考えるのは相当厳しいものになるかもしれません。
  3番目に、このような基準を設定するときに、サイエンスとしてこの数値が一番適当であると決めきらない部分が多分に残りますので、数値を2つ3つおいて、ある種の目標値を設定した方がいいということがあるかもしれません。
  4番目に、今までの幾つかのダイオキシン汚染事例を見ますと、犠牲になっているのは人ではなくて生き物だというケースが多いと思います。例えばイタリアのセベソでは、工場爆発により周辺環境に飛び散ってその地域を汚染しましたが、そこで野生のウサギ、ネズミ、牛等がばたばた死んでいます。幸いにして人間の中毒は比較的軽くて、子供を中心にクロルアクネが見られているということです。
  また、タイムズビーチのミズーリ州での、廃油が道路にまかれたことで起こった汚染事例につきましても、最初に死んだのは昆虫で、野ネズミが死んで、やがて馬が死に始めて、それでCDCの調査が入っています。人間については、体重が半分に減ってちょっと危なかった女の子が一番重症ですが、生き延びています。そういう意味で、人のリスクアセスメントだけではなくて、野生生物もある程度視野に入れられるといいのではないでしょうか。

【C委員】とても大変だというのがまず最初の印象です。本当にできるのかという感じもしないではありません。
  対策要件と環境基準との間にグレーゾーンを設けるのは望ましい方向だと思いますが、実際は環境基準の方がどうしても優先して、環境基準を超えたらすぐ対策をしなければならないということになってしまうので、設けても意味がないという感じになってきそうだという懸念があります。
  決めにくいということを考えると、先ほどのご意見のように、スウェーデンのようにある値を超えたときにアセスメントをするというぐらいのことがあっていいという感じがしております。

【I委員】1,000pg-TEQ/gといったオーダーの土壌汚染は頻繁にないという感じがします。というのは、最大の発生源である一般廃棄物の焼却炉は、設計するときに排煙を処理したうえで煙をできるだけ拡散しようと考えているので、アッシュがどうなったとか、特異的に中で濃縮くしてしまうとか、あるいは拡散がきちんとされてないとかいうところが汚染地域になるのではないでしょうか。
  そういう意味で、環境基準を決める際には、どれくらいの地域で超えうるのかある程度推測する必要があると思います。それによって対策基準等が出てきますし、現実にはあるリスクで対策しなければいけないということになるわけです。結局、こういうことをやる場合は、実態をよく考えた上で進めていくのがいいのではないかという感じがいたします。

【E委員】まず最初に、8月31日に開催された第9回の土壌中のダイオキシン類に関する検討会において、この環境基準について少し議論をしたときに出てきましたご意見を披露させていただきたいと思います。
  まず、水との関係として、例えば土壌と水の分配係数を使えば、水質基準との関係から一定の土壌の基準も考えられ、多分 1,000pg-TEQ/gより小さくなるのではないか、というご意見をいただいています。
 また、農地との関係として、植物の吸収などを勘案するべきであるから、今の 1,000pg-TEQ/gというのは当てはまらないだろうというご意見がございました。
  さらに、1,000pg-TEQ/gとTDIとの関係は少し曖昧なところがあるのですが、結果として、土壌で食品や大気の残り分を全部使ってしまうという考え方は、少なくとも環境基準の考え方とは相いれないのではないか、というご意見をいただいています。
  それから、資料1-5の案3の関連ですが、例えば既存の重金属に係る含有量参考値のように、分布から95パーセンタイル値等を使って策定できないだろうか、というご意見がございました。
  PCDD、PCDFといった今まで「ダイオキシン類」といわれてきたものとコプラナーPCBについては、毒性換算の段階では一緒に扱ってもいいのですが、例えば濃縮の仕方とか吸収のされ方は違うので、その際には別に扱うべきではないかという、かなり難しい、非常に重要なご指摘をいただいております。
  私は、個人的には、1つは、1,000pg-TEQ/gは、いろいろ問題はあるにしても、健康への影響を考慮された数字であるわけでして、強引ですがこれが環境基準だと言えないないことはない。もちろん、これは居住地の直接摂取だけを考えているという点で問題はございます。
  一方、他の重金属の場合は何らかの用途として世の中で役に立っているのですが、ご承知のようにダイオキシンというのは何の役にも立っておらず、できるだけ少ない方がいいものであることと、自然界でも、非常にゆっくりではあるけれども分解可能であること、そういう特性を考えたときに、必ずしも対策要件と環境基準を一致させなくてもいいのではないかと考えております。特に、全体の流れとして現在の状況を更に悪化させないという方向になっている時期ですので、少なくとも、そこまで汚していいとは決してならないようなものにしなければいけないのではないかと感じております。

【D委員】まず、第一次報告で対策要件として出されている 1,000pg-TEQ/gという数値は、今の段階ではためらわれると思います。もう少し低い数値でないといけません。なぜなら、例えば第一次報告の32ページの一番下に書かれております土壌由来のダイオキシン類の曝露量を試算結果の0.31pg-TEQ/kg/dayについて、4pg-TEQ/kg/dayに対しては10%以下であるという考え方でしょうが、これはあくまで吸収量の合計ですから、2pg-TEQ/kg/dayに対してというふうにしないといけません。4pg-TEQ/kg/dayの半分の2pg-TEQ/kg/dayが吸収されるというのが、WHOの4pg-TEQ/kg/dayというものの考え方です。そうすると、TDIに対して一挙に倍の15%になるわけです。1,000pg-TEQ/g という数字は、諸外国で基準にしているということもあって、よりどころとしては便利ですが、たとえこのデフォルト値に問題があるとしても、最大の安全率をとらないで出したTDIに対して15%の数字を世の中に出して、その少し下ぐらいのところに住んでいても結構ですよとは言いにくいと思います。ですから、今の段階ではもっと低い数値でなければならないと思います。
  それから、対策基準については、例えば表土を入れ替えるということまで考えるとするならば、そう広大な面積を取り入れるわけにはいきません。しかし、監視、あるいは汚染の広がりをよく調べて個別に評価するというようなことも段階として対策に含めるならば、例えば100pg-TEQ/gという数値を環境基準にして対策基準と一致させてしまうことも可能ではないでしょうか。それができないならば、2段階にすればいいと思います。
  基準の考え方としては、健康の問題ですからほぼ皆さんが納得していただけるようなレベルでなければいけないし、それに水への流出も個別に試算して、全部勘案して決めるのはどうでしょうか。

【J委員】第一次報告をまとめさせていただいた一人としては、この時点での科学的知見を精一杯考慮して作ったもので、1,000pg-TEQ/g というのは、数字として妥当かどうかは別として、ガイドライン値としては、この時点としては妥当なものであろうと理解しています。ただ、今のご意見のように、新たな科学的な知見等に応じて変えていくべきものであるということについては全く異論がございません。例えば子供の遊び場や水域への流出を考慮すべき場合では、値が下がってくることはあり得ると思います。
  また、ガイドライン値と環境基準との関係については、一般的なリスクアセスメントですと、論理的には一致させないとおかしいことになると思います。先ほどの御発言のようにグレーゾーンを作ると、対策上非常に曖昧な部分ができてしまいますので、基本的には、ガイドライン値の変更があるにしても、ガイドライン値と環境基準とは一致させるべきだと思います。

【K委員】第一次報告の中間とりまとめが公表されたときに、子供の遊び場についてなぜ対応しないのかという意見が随分あったように思いますが、そこに対してはまだ毒性的なアプローチがはっきりしておりません。何とか数年以内にその辺を解明するような情報や実験を積み重ねて、こちらに反映させたいと思います。少なくとも子供ということで、子供の遊び場は1,000pg-TEQ/gではだめで 100pg-TEQ/gだという意見がありますが、いわゆる急性の影響というふうに誤解する一般の方がいますので、それだけは避けたいと思って、第一次報告の最初の方にもその辺は書き込んであります。

【L委員】環境基準と対策要件の関係については、もう少し勉強させていただきたいと思います。ただ、グレーゾーンを設ける際には、先ほどのご意見のとおりどういう対策をするのかが決められないといけないのではないかと思います。
  また、ドイツの農用地のところで5〜40pg-TEQ/gと幅をもったガイドラインになっておりますが、こういう幅をもったガイドラインを決められたのはどういう理由なのか、もし分かりましたら次回までにできれば教えていただきたいと思います。

【事務局】ただ今のドイツの件については後で担当から答えさせますが、全般的に、事実関係を少しだけコメントさせていただきたいと思います。
  1つ目に、資料1-5に示しておりますいくつかの案でございますが、これはこの中から先生方に選んでくださいというものでは決してございません。こういった考え方もありますということを資料として出さない限り、議論していただく材料が乏しいのではないかという思いで、かなり大胆に書いてございますので、ひとつご配慮のほどお願いしたします。
  2つ目に、対策の中身はいろいろあるのではないかというご意見がかなりの先生方からございましたが、これにつきましては、法律の第5章、参考資料1-2の9ページの第31条に対策の条項があります。対策する際に対策計画を立てるという条項ですが、第2項のイあるいはロのところに、この中で決めていかなければならないことについて書いてあるわけです。イとして「ダイオキシン類による土壌の汚染の除去に関する事業の実施に関する事項」、ロとして「汚染されている土壌に係る土地の利用等により人の健康に係る被害が生ずることを防止するために必要な事業の実施」と書かれております。そういう意味で、資料の中で書いている対策として念頭に置いておりましたのは、少なくともかなり土に対して何かするといったものでございます。

【事務局】ただ今ご質問のありましたドイツのガイドライン値でございますが、ドイツでは、1991年に農用地に関するガイドラインを連邦と州の共同作業で提案しております。今回、連邦土壌保全法がドイツで施行されまして、その曝露経路として、直接摂取、農作物経由、地下水経由等様々な経路での基準が決められているわけですが、ダイオキシンについては直接摂取のみで、農作物経由については設定されておりません。ですから、いまだに1991年のガイドライン値ということで法規制基準になっておりません。
  それから、5pg-TEQ/gにつきましては、この値を下回る農用地であれば、何ら農用地の使用には支障がないということです。数字の根拠につきましては、バーデンヴュルテンベルク州での汚染されてない農用地の実測値の90パーセンタイル値ということで5pg-TEQ/gとしています。5pg-TEQ/gを超える場合には、牛乳中のダイオキシン類の濃度を調査するという対策を講じているということです。
  また、40pg-TEQ/gの求め方ですが、ドイツでは牧草地での牛乳への移行をある一定の仮定の下に算出しました牛乳のガイドライン値3pg-TEQ/g-fatというのがございます。その牧草地だけでのリスクアセスメントから40pg-TEQ/gを出しておりまして、通常の農作物については科学的な設定根拠はございません。

【林委員長】それでは、ただ今の先生方のご意見にさらにご質問、ご意見ございますでしょうか。

【A委員】このダイオキシン類の基準は、時間的な余裕がないので、4部会で並行して進めなければならないという話が先ほどございましたが、底質は水域の方で議論されるわけですね。日本では水田土壌が非常に多く、水田土壌と水域の底質というのは、物質循環から見て非常によく似たところがあります。水田土壌にもドジョウやタニシのような底生生物がおり、それを人間が食べるという場合もありますので、恐らく曝露リスクモデルは共通の部分がかなりあるのではないかと考えられます。そういった点で、水質部会の審議との情報交換を綿密にやっていく必要があるのではないかと考えます。

【林委員長】この諮問に対する検討の結論は、今日すぐに出るということでもありませんので、本日先生方からいただいたご意見を踏まえて、事務局で次回の検討の資料を作っていただきたいと思います。
  続きまして、「硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、ふっ素並びにほう素に係る土壌環境基準の項目の追加等に係る調査検討の進め方について」の議題に入らせていただきます。まず、諮問の内容とその背景、これまでの調査検討状況について、事務局の方から説明をお願いします。

【事務局】(資料1-7、1-8、参考資料1-5、1-6について説明)

【林委員長】今までのご説明にご意見がありましたらお願いします。
  なければ、今後の調査検討の進め方について説明をお願いします。

【事務局】(資料1-9について説明)

【事務局】ただ今説明申し上げた件につきまして、事務局から一つお願いがございます。資料1-9に示しましたように様々な調査検討事項がございますが、このうち、もちろん事務局でも資料の収集等に努力していきますが、特に既存の文献収集、その評価などにつきまして、ご専門の先生方のお力添えをいただきたいと強く思っておりまして、よろしくお願いできないでしょうか。

【林委員長】まず、資料1-9について何かご質問、ご意見ございますでしょうか。
  では、ただ今事務局の方からご要望がございました、専門委員の先生方のお力添えをいただきたいということですが、案がございますでしょうか。

【事務局】
  資料1-9に沿って 1.(1)Bについては中杉先生、
  2.(1)@について、山口先生、松久先生、
  2.(1)Aについて、松久先生、駒井先生、
  2.(2)@について、松本先生(海外)、増島先生(日本)
  2.(2)Aについて、上沢先生、
  3.(1)@について、中杉先生、
  3.(2)Aについて、上沢先生、
  4.(2)Aについて、上沢先生という分担案を説明。

  誠に勝手としか言いようのないお願いでございますが、是非よろしくご理解を願いたいと思います。

【林委員長】どの分野も非常に専門的な知識とご経験が必要でございますので、私の方からもぜひお願いしたいと思いますが、お引き受けいただけますでしょうか。
(わかりました。)
  どうもありがとうございました。
  それではその他の議事としまして、今後の進め方について事務局の方から説明をお願いします。

【事務局】今後の進め方につきまして、資料1-12「今後のスケジュール」をご覧ください。
  次回、第2回土壌専門委員会の日程につきましては、あらかじめ先生のご都合をお伺いしたところ、10月6日(水)の午後とさせていただきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。場所等につきましては、また追ってご連絡いたします。次回は、ダイオキシン類による土壌の汚染に係る環境基準等のあり方ということで、ダイオキシンを中心にご検討いただきたいと思います。
  それ以降につきましては、10月下旬に第3回土壌専門委員会をお願いしたいと思います。ここで、ダイオキシン類関係の専門委員会報告案を取りまとめていただきたいと考えております。その後すぐに第20回土壌農薬部会を開催しまして、ダイオキシン関係の答申の案を取りまとめていただき、その後1ヵ月間、国民からの意見を聴取するパブリックコメントの期間を経まして、12月上旬に再び土壌農薬部会を開催し、答申を取りまとめていただきたいと思います。この答申を受けまして、関係政令等の公布の手続を開始し、平成12年1月にはダイオキシン法の施行を迎えるというスケジュールを考えております。
  土壌専門委員会につきましては、ダイオキシン類関係の専門委員会報告をまとめていただいた後、1月下旬に第4回専門委員会を、3月下旬に第5回専門委員会を開催して硝酸性窒素及び亜硝酸性窒素、ふっ素並びにほう素に係る調査検討をご検討いただき、、それ以降も継続してこの3物質に係る調査検討をお願いしたいと考えております。

【林委員長】どうもありがとうございました。
  最後に、本日の資料の公開についてですが、先ほど決定いたしました公開の取扱いの1.(2)では、「会議資料は、原則として公開とする。ただし、非公開を前提として収集したデータが記載されている資料、関係者と調整中の資料など公開することにより公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼすおそれのある場合又は特定の者に不当な利益若しくは不利益をもたらすおそれのある資料は、専門委員長の判断に基づき、「委員限り」である旨を明記し、非公開とする。」とされております。本日の資料の中で、特に非公開に当たるべきものはないと思いますので、いずれも公開することとしたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。
(異議なし)
  それでは以上でございますので、進行を事務局にお返しいたします。

【事務局】それでは、これをもちまして第1回土壌専門委員会を終了いたします。
  ご検討ありがとうございました。