中央環境審議会水質部会排水規制等専門委員会(第7回)議事録




日    時 :平成12年9月1日(金)10:00〜12:00
会    場 :合同庁舎5号館環境庁第一会議室(22階)
出席委員 :松尾委員長(東洋大学工学部教授)
     佐竹特別委員((財)日本軽種馬登録協会理事長)
     須藤特別委員(東北工業大学土木工学科客員教授)
     伊藤専門委員((財)畜産環境整備機構畜産環境技術研究所研究開発部部長)
田中特別委員(岡山大学環境理工学部教授)
     土屋専門委員(東京都環境科学研究所所長)
     中村専門委員(建設省土木研究所下水道部部長)
     増島専門委員(東京農業大学応用生物科学部教授)
     森田専門委員(国立環境研究所地域環境研究グループ統括研究官)
     米澤特別委員(工業技術院資源環境技術総合研究所首席研究官)
欠席委員 :浅野特別委員(福岡大学法学部教授)
(事務局)水質保全局長、企画課長、水質管理課長、土壌農薬課長
地下水・地盤環境室長、水質規制課長、総量規制室長

議事 1「前回議事録(案)の確認」

  委員の先生方が持ち帰り検討し、意見がある場合には1週間以内に事務局に連絡することとなった。

(事務局)(資料2−1、2−2、2−3、3,4について説明)

(A委員)資料3の3ページで超過地点数についての報告があったが、ふっ素に関して事業場由来が7カ所とあるが、6年度から10年度の間で増えつつあるのか減りつつあるのか。実際にそれがどういう業種であるか。また、数種類の業種が絡んでいるような事例があるのかどうか。そういったことが分かればこれからのふっ素対策の議論のベースになると思うので教えてもらいたい。

(事務局)平成6年度から順に2カ所、平成7年度2カ所、平成8年度1カ所、平成9年度ゼロ、平成10年度2カ所。8年度の1カ所というのは7年度に続いて2年連続で超えている。事業場について、主なものとしてガラス加工、石英ガラス、また電子部品産業もあり、確かにふっ素を使用する可能性のあるところではある。具体的な排水濃度について、例えば検証しているもので、石英ガラスの排水濃度は1.6r/l〜12r/l、また排水量は届出では45t/日、実績では約30t。超過状況については最大で1.3r/l〜1.8r/l、平均は0.8r/l〜0.9r/l。

(B委員)温泉という定義は、ふっ素2r/l以上あるいはほう素5r/l以上が温泉である条件の一であるという意味か。また、それ以上のふっ素・ほう素を含むということは、これより高いものは当然多数ある。
 こういうものが公共用水域に流されていても要監視項目だから測られていない。結局は、汚染がないという整理をしているようだが、環境基準ではないから汚染がないということがわからないと判断してはいけないのではないか。

(事務局)ふっ素については前回専門委員会に提出したとおり、生活環境項目になっているのでその範囲でデータを集めた。

(B委員)それは15r/lか。

(事務局)15r/lとして。50m3/日未満はなかなか集め切れない面もあるが、またほう素やふっ素についても、自治体が持っているデータを出してもらった。それが排出先の公共用水域にどれくらい影響しているかについては、残念ながらすべて把握しているわけではない。また、要監視項目は環境基準並みに測っているものではないので、例えば温泉排水によって水域の汚染が見つかっているかどうかまでは今の段階では分からない。

(B委員)これを読むと、今まで汚染がないのではと受け取られかねない。すなわち測らないで汚染がないと受け取られれば、規制をやっていく意義を失ってしまう。本当なら環境基準が決まったのだから全部測り、これだけ出ているからと言えればいいが。

(事務局)そういった意味では温泉に由来した汚染については十分には分かっていないと言わざるを得ない。要監視項目の超過原因で自然由来のものがあるが、それにもやはり温泉水が含まれているのではとも思う。

(B委員)自然由来をどうするのかという問題がある。砒素の時も随分議論があったと思うが、やはり何から出ようと健康に影響するのは同じ。工場から出ようが、人為的に引き出すのだから、それを自然由来にしてしまってはおかしい。人間への影響を考えれば、どこから出ようが同じだと思う。

(C委員)発がん性物質についても同じ問題がある。これは閾値がある物質とない物質との違いはあるが、発がん性物質は自然界にも多く、これをどういうふうに扱うかが悩みであると書いてあった。例えば焦げた焼き魚が発がん性物質だというのは規制のかけようがない。だから、規制する場合にはいろいろな角度から考えなければならない。一般論ではあるが、自然由来となると自然由来の発がん性物質もどうするのかという話になる。

(水質規制課長)補足させていただくが、温泉については昭和49年に規制をかける段階で、現に湧出しているものについては当分の間は適用しないが、その後出来たものについては規制をし、そしてまた公共用水域の砒素の汚染状況の広がりを見ながら必要に応じ規制の準備をしている。決して自然であるからといって最初からギブアップしているわけではく、実態に合わせて対応している。

(B委員)自然というものは本当の自然と、人間が自然を変えて出てきた部分とあり、やはり、人間が自然を変えたところは本当の自然ではないと思う。

(D委員)非常に哲学的な要素も入ってきているようだが、危険だと言われればそれを食べない。自然だからといっていいというわけではないし、恐らくそういうものをみんなが食べなくなったり、取らなくなったり、当然砒素で汚染されている地下水があれば、その水は使わない。だからそういう意味ではフィードバックがかかるから、あるレベルを超えて汚染させることは抑制する。自然であろうとも何もしないということにはならないのではないか。

(E委員)資料3の3ページについて排水規制を作ったときの有効性は特に環境白書に出ているように、調査地点数に対して超過した地点が幾つあるか、これは年々どれ位減っているかという健康項目の図がある。この表を見る限りでは排水規制という方法では、ふっ素については6,709分の47で、7つ減っても大きく分子が減るということにはならないのでは。ほう素については2,279分の125の分子が変わらない。排水規制という方法で本当にふっ素とほう素の環境基準が守れるのかどうか疑問に思う。また、4ページに未然防止とされているが、未然防止という考えで排水規制をつくるのは、世の中に数万という有害物質があるのに、なぜほう素とふっ素だけか分からない。
 あと、9〜10ページ目にふっ素とほう素の処理技術が書いてあるが、環境庁として新たに排水規制の対象となる物質の処理技術を自ら開発するのか。それとも誰かにやらせるのか。

(事務局)例えばふっ素については既に事業場由来が7地点となっており、また今の規制は生活環境項目である。有害物質にすると基準値を決めなければならないし、規模要件も厳しくなる。そうすると事業場の排水については所要の対策ができ、それでも汚水が解消されなければ自治体が上乗せ排水規制等を実施する。ほう素については今のところ見当たらないが、ふっ素については現在わかっている汚染は軽減もしくは解消できる。要監視項目はどうしても代表的なところに限ってやっているので、温泉排水に由来したひどい汚染があるのではないか、あるいは取りこぼしがあるのではないかということについてはまだ分かっていない。国レベルで現に排出しているものに規制をかけられなければ、地方レベルではできない場合も予想される。もちろん事業者がほう素、ふっ素の基準を超えないようガイドラインをつくって取り組むところもあるかと思うが、無関心であれば結果的に汚染が生じるのではないかと懸念している。
 処理技術だが、今後の対応的な部分もあるので、環境庁でできる範囲のことはやりたいと思っているが、予算や他省庁との関係もあるのでどこまで主体的な役割をとれるか。

(水質規制課長)ふっ素については既に生活環境項目ではあるが、規制してその上でなお超えているところがある。技術開発だが環境庁は国の試験研究機関が行う公害防止に関する調査研究費を一括計上する権限を持っている。その配分を通じて環境庁所属の国立環境研究所だけでなく、他省庁の試験研究機関の力も借りて研究を推進するといったツールも持っているので、そうした直接、間接的な手段を通じて技術開発の実現に努めていくことは可能である。

(E委員)温泉排水に対して排水規制をかけるのがいい方法なのか、それとも温泉という自然に湧き出ているものは、いかんともしがたいと思うのか。最近は無理やり温泉をくみ取るために井戸を掘っており、すると温泉に対して排水規制するよりも、むしろ温泉井戸を掘る段階で何らかの手だてをとるという方法を考えないとだめだと思う。そういう意味では環境基準を達成するための手段としてこの委員会の「排水規制等」の「等」の部分をもう少し広げるような形の施策を打つべきではないかと思う。

(D委員)温泉も人工的に掘り出して排水していれば、ポイントソースではないかと思う。だから厳しい排水基準を適用すれば、事業者は無理な採掘までしなくなるし、さらに掘った以上は処理をして流すということになるので、温泉をつくるなというよりは、排水規制でそういうことまで考えてもらうこともある。

(A委員)ふっ素に関して、先ほど規制課長から現在の規制でやっている中で、まだこれだけ超えているものがあるという発言があった。しかし、先ほどから数字を見ていると各年度2つで、しかもその年度で固定されている。年度に渡って出ているものが1カ所だけという実態が確かにある。そうすると各都道府県で実際にそういう排出に関して、現在の規制の中で実態的に指導及び排水対策や対応が効率的にできているという見方もできるのではないか。それから場所によっては上乗せ規制もあり、現在の規制自身が効果的に進められていると理解している。これは以前から何度か言っているが、PRTR制度が来年度から実際にスタートし、各事業者自身が自分のところで環境に排出しているものについてチェックするという体制ができてくる。だから、その効果が現状の水質汚濁防止法の生活項目での規制の上に積み重なるのではないか。
また、単順に排水規制に期待すると、その目的のための排水処理の技術において、汚泥を大量の固形廃棄物として環境に出してしまう問題が伴ってくる。これは、ふっ素、ほう素の2つの物質についてはかなり特徴的なものであり、そこまで含めた対応をとろうとすると、今のPRTRのような形ですべての事業所からの排水形態をトータルで抑えていくという形をとらないと、なかなかふっ素、ほう素の排出からのリスクだけでなく、全体の環境排出に対するリスク削減には行き着かないだろう。そういうことまで考えると、単に水質汚濁防止法だけで規制することで、その後生じる社会的な投資を考えれば、より合理的なやり方を考えた方がいいのではないか。だから、特にふっ素に関してだけだが、現行の排水規制をベースにして、他のやり方をこの上に積み重ねるやり方がこの物質に対するリスク削減の方法ではないかと考えている。もう一つは、ほう素は実態的にそれぞれの調査の中ですぐにいい処理法はないということもあるが、汚染がないということから考えれば強制力を持った規制をすぐにかける緊急性がないのでは。
仮に、何か対応をとらなければならないとするならば、それは先ほど言ったPRTRのようなシステムで、すべての事業場からの排出を監視することでしばらくは環境の調査とあわせてチェックする。それで、汚染の拡大傾向が認められるのであれば、そこで初めて強制的な規制を考えていいのでは。

(事務局)合理的な対策の手法については、専門委員会でいろいろな提案や議論をお願いしたいが、事実関係として一つは要監視項目の超えているところで、周辺にそれらしき発生源があり濃度が高かったときに、事業者に対する濃度の低減につき依頼したり、あるいは一部下水道に放流してもらうなど苦しいところがある。仮に他の有害物質についての排水規制は守るが、排水規制がかかっていないふっ素、ほう素をなぜ守る必要があるのかと拒まれた場合に、自治体は頭を抱えてしまう。

(F委員)2点だけ指摘したいが、5ページ目のふっ素について排水基準が海域への排出に対しても適用されるというのは、もう決まっているということか。そもそも見直すべきではないかと思うが、自然状態での濃度を大幅に上回らないような対応という点では同意するが、本当に大幅に上回らないために基準を適用することによってコストに見合う効果が上がっているのかが、極めて疑問。河川での希釈あるいは環境基準と排水基準との関係、海域への対処という点では同じように10倍というのもおかしい。
 それからもう一つ、一般市民にも規制するのがいいのか、悪いのか、よくわからない典型的な例だと思う。特に最後のところで、汚泥が大量に発生する、消石灰、硫酸バンドを追加して資源が大量に使われる。その結果、有害産業廃棄物が発生する。その管理が厳しく問われて、埋め立て処分場の確保が極めて難しい中で新たな問題をもっと深刻にする。こういうことを考えると本当にプラスかマイナスか、廃棄物サイドから見ればマイナスの方が強いと考える。

(D委員)それは非常に難しいところである。だから、やらなくていいのかということになるし、しかし、今のままでいいのかというと、多分そうではないと思っている。だから、コストと効果の議論が入り始めると、コストは計算できるが効果はできない。

(F委員)何か方法はないものか。

(D委員)しかし、健康にかかわる項目だということが重い意味を持っている。

(F委員)海域の場合はどうか。

(D委員)海域もだんだん海産物に入ってきて、人の口に入ったり、いろいろな可能性が出てくる。

(F委員)増加分に対する影響か。既にあるバックグラウンドに加えることのリスクの増加分か。

(D委員)健康にかかわる部分での効果をコストと比較できるようにするにはどうすればできるのか、そしてどこまでだったらいいというように出せるのか。そういうレベルの数字を出せる根拠があるなら、それをここで言っていただく方がいい。コストや効果ばかりの計算を求めることは、逆におかしな議論にもなりかねない。コストに見合う効果はどれだけあるのか、何ppm下げることの効果は幾らかと言ったら誰も計算できないと思うが。

(F委員)はっきりしない場合に規制することが、本当にいいのかどうか。

(D委員)効果が表れなければ、規制しないという立場をとれるのか。どういうふうに考えるかだが、これはかなり際どい議論になってくる。

(C委員)農薬にしても、水道にしてもリスク評価をやっている。だから、海域について今、生物濃縮といわれたが、ほう素について生物濃縮という話は余り問題にしていない。問題にされてないからいいというものでもないが、共通の尺度がないと困る。危険な物質は沢山ある、有機塩素系等も含めれば大変な数になるし、その中でやはりプライオリティーをつけていかなければいけないと思う。
しかし、環境基準が決まったからといって排水基準を決めなければならないというのは疑問だ。それは法律の論理としてはそのとおりだと思う。だから、一応規制するということも考えてもいいのではと思うけれども、実質的な合理性がないと負担をする人たちに対する説明は大変つらいものがあるのではないか。ただ、環境基準が決まったから排水規制をかけなければいけないということを認めた上でどうやったら合理的な、皆が納得する方法をとれるのかを前提に議論している。

(B委員)ふっ素、ほう素のリスクアセスメントに戻ってきている感がするが、この議論は環境基準をつくるときにかなりあった。環境基準の委員の中には、医系の先生もいたし、薬系の先生もいて、そういう方面の専門の先生の意見も十分聞いた上で0.8mg/l、1.0mg/lと決めたと思う。当然0.8mg/lというのは斑状歯の問題、1.0mg/lというのは毒性評価した値であった。それはほかの有害物質よりも多分データが少ないので、あるいは0.8mg/lか1.0mg/lかというような意見も特にふっ素の問題は斑状歯の問題であったので、0.8mg/lを1.0mg/lにしなくてはならない根拠はなかったように記憶していて、それは従来からの0.8mg/lを動かすことによる混乱もあって一応議論が済んでいる。もし具合が悪いというのだったら、もう一度議論し直すべきと思う。それを踏まえて排水規制をどうするのかというところを今問われているので、排水規制を海にも入れるべきと思った。やはり水が循環しているし、食物、魚介類を通して戻ってくることを考えたら、環境基準はつくるべきだと思ったが、海はかけないという結論になった。そのときの議論では、だからといって排水規制はしなくてもいいということではないということが結論であった。それを受けてどうするかということで、もし、海は不要なんだという方向が決まれば、それはそれで結構だと思う。しかし前の議論をまた同じようにすることは混乱してしまい、新たな根拠があるなら説明してもらった方がいい。そうしていかないと環境基準の委員会と排水基準の委員会をもう1回ここでやり直すことになってしまう。

(A委員)先ほど魚経由で人へ戻ると話があったが、少なくともほう素についての水道水の基準を議論された中では、食品からの負荷とそれ以外の負荷とを分けて、その水からの負荷に関してはどうするかという点で水の基準ができた。だから魚を経由して人に入ってくる経由はここでは、少なくとも評価された中で水の分としてどうかという議論になっている。だから、生物濃縮というプロセスの話は少なくともこのほう素に関してはない。

(D委員)何リットルも海の水を直接飲むことはないから、そういう意味で、先ほど言った海産物に濃縮してといった話はトータルの負荷量が増えれば、そういう方向にいく可能性があるということを言っているのであって、今の趣旨とそう違うことを言っているものではない。そういう意味で海の水、飲みもしないところに飲料水の環境基準でいいのかということは、ダイオキシンの時も同じようにあった。窒素もそうだと思うが、要するに今の環境基準の決め方が、その水を何リットル飲んだときという話になっているから、そういう意味ではベースになるが、飲まない水にまで環境基準を決める必要があるのかという話がまた一方で出てくる。だから、排出水域ごとにもう少しきめ細かい環境基準の決め方や、排水基準の決め方はあってしかるべきと思う。それは今後いろいろな規制行政を全体の中で見直していくことが必要だろうと思うが、それを今ここで議論し始めるわけにはいかないので、考えとしては今後の対策という意味でしばらくいろいろなことを考えながらやっていく。ここを数値だけを決める委員会にはしたくないと思っていて、そういう意味では今までいろいろ議論したことを次の委員会等に生かせるようにしていきたいと思っている。

(水質保全局長)この問題について、環境基準を決めてもらった専門委員会がこの前段階にあったということで、これは有害性のあるものという前提に立って、排水規制等委員会において、どういった規制のあり方を行うべきか議論をしてもらっている。ただその際に委員から指摘があったように、規制のあり方によっては別の負荷が生じてしまうという問題も抱えている。あるいは別の規制でも対応出来るのではないかという議論もあった。従って、環境庁としては、そういうこともトータルに考えて、何か段階論的にベストではないが、事前の対応を考えていかないといけない。議論が実質的な中身に入っているので、できたら水質規制課長からその部分の資料を説明してもらい、議論をしてもらいたいと考えている。

(水質規制課長)(資料5について説明。)

(F委員)1ページ目の有害物質に位置づけることが適当であるとのくだりだが、ふっ素についてはいわゆる有害なダイオキシンや、ゼロにしなくてはならない有害物質とは違って、ある程度の量は有益だというところが他の有害物質と違うのでは。だから有害物質になると限りなくゼロに向かっていく、そういう対応がとれるものではない。そこのところはどこかに明記した方がいいのでは。

(G委員)有害物質や有益な物質の議論は、健康に関していろいろな議論が飛び交っているし、海に投入されたときに食物から入るという議論も若干あったので、少し事実関係を整理しておきたい。まず、元素というものはすべて大量に入れば有害であり、それから多くの元素は非常に微量では必要なことが多いことがある。これはすべて元素の特性であり、また水銀やカドミウムについての有益性を証明する自然化学的な知見はないが、一部のレポートでは水銀やカドミウムすら必要であるという論文も出ている。明確に必要性がはっきりしていて有害物質に位置づけられているのはセレンであり、セレンは我々の生存のためのウインドーといっているが、非常に狭くて、少し超すと有害性があらわれる。それが少ないと不足症状が出てくるという、その幅が狭く一桁ちょっとぐらいしかない。そういう意味でふっ素とほう素についても人に対する有益性は今のところは明確には証明されていない。しかしその可能性がある。ほう素について言えば、多分植物についてはかなり必要な元素だと考えられている。しかし、人にとって必要かどうかは今のところ証明されていない。したがって書きぶりだが、ふっ素とほう素についても人に関して非常に微量では有益性があり得ると、しかし量的に多いと有害だというのが事実関係だ。
 第2の問題は、これは多分、先ほどの海の議論等も若干あったが、この種の元素は非常に長い間地球ができて以来、溶け込んでは海に溜まってきた。そういう歴史的な背景の意味では海水の中に少しづつ溶け込んで濃縮し溜まってきている。またそういった長い海の利用の中で、海産の動物等は積極的にふっ素を利用している。例えばサメの歯はフルオロアパタイトでできていて、それが非常に丈夫な歯をつくっている。したがって、サメをふっ素のない環境で飼うというのは多分難しいと思うし、またほう素も海草の中にはたくさん濃縮しているものがあり、このことはほう素の摂取量の議論の中でどのくらい反映したかはわからないが、ある種の植物はたくさんのほう素を持っている。そういったほう素が我々の健康にどういう意味を持っているかというのは今のところ完全には理解されていない。ただ、ここの議論の中であるように、自然状態の海域濃度を大幅に上げたとき、そこに住む生物、それを介して人にどういう影響を及ぼすかについては今のところ完全には予測できないが、恐らく概念的には余りよくないことが起こり得るだろうと、今のところそのくらいかと思う。いずれにしても、どこかからか掘り出してきたホタル石を国土に持ち込んできて、それを最後どこに捨てるかというところに落ち込んでいると思う。陸水域に持っていくか、あるいは最後は海に捨ててしまうのか、それを人の健康とここには書いてないが、多分、環境中に住む生き物にも大きな影響が出ない程度に緩やかに出すしか答えはない。そういう意味ではこのあたりの基準が、技術的な要素もあるが守るべき領域に存在しているという感じがする。

(B委員)全体としてふっ素、ほう素の対策についてこの流れでいいのではと思う。特に暫定排水基準の部分について、いろいろなところから話をきいているが、聞けば聞くほど技術上対応がすぐには難しいとの印象を受けている。とりあえずは暫定という形で、できるところからやっていく、そのためには目標をしっかりと設けて、技術というのは期間があれば必ず達成すると思うので、そういう目標を与えるのが大切だと思っている。
 それから10倍の議論はいろいろあるが、これもここで変えるわけにもいかないのでこれでいいと思うが、ただ、それでは海の場合はどうするのかというのは、やはり海水のふっ素が1.5mg/lでほう素が4.5mg/lぐらい、それよりも低く流すことを考えるのは無理。この基準はそれなりに考慮して、陸水域とは別な対応を設定する。それより濃度の高いものを設定するのが妥当なのかと思う。しかし、ふっ素は15mg/lという値が生活環境項目にある。それよりも高い濃度は不適切ではないかと思う。というのは一度規制をやっておいて、それよりは濃度が高くなるというようなことをやるのは不適切で、どんなに高くてもここは15mg/lにしてほしい。海については最大限15mg/lにしてほしいと思う。

(A委員)最初の、有害物質に位置づけることが適当であるかどうかとの点について、この委員会自体の議論として結論づけるような話ではないと思っている。この委員会では毒性の判断をきちっとやって一定の判断をしているわけでは決してない。むしろここではなく、水質基準の委員会の結論であれば分かるのだが。 排水基準に関しては対策の効果と投資とのバランスを考えてやるべきだろうと思う。今すぐ最大限一番いい環境にまで持っていけないとしても、その展望を示しながら排水基準を作っていくのが一番適当だ。だから、ふっ素に関しては、陸水域だが現在の基準をベースにして考えるべきで、抜けている部分をどういう形でやるか考えていいのではないか。その中で多分技術開発等も追いついていくだろうし、またコストも下がるだろう。どこに焦点を絞って規制を拡大していくべきかはっきりしてくるだろうから、その段階で決めればいい。一旦決めた排出基準は未来永劫動かしてはいけないものでは決してないので、そういう観点で見ていこうということだ。
 ほう素に関しては、少なくとも現在の陸水域についての汚染は見られないこと、また適当な処理技術がないことから、これについては今すぐ排出基準を設定して対策しなければならない必然性はないだろう。むしろ他のやり方を使って、全体的な汚染のレベルを監視していくことが一番合理的な方法ではないかと考えている。
 海域に関してだが、先ほどからふっ素に関して少なくとも現在15mg/lという数字がある、それで海域の濃度の10倍等という数字を持ってくるのはおかしい話だ。これは健康項目とは別の生活項目である。それから生活項目は主として我々の生活の上の快適性という問題があるけれども、生活項目の中のふっ素の決め方というのは、海産物、自然の生物に対する問題として出ているわけだから、異なる別の基準であっていいだろう。環境基準に関しては、ヒトの生活と健康だけでなくて、そういう環境生物影響への基準はもう一つつくっていくべきと思う。その2つがごちゃ混ぜになっているので、かなり議論がややこしいことになっている。むしろ将来的には整理する方向で考えて、今ここで健康項目としてあえて生活項目と異なる基準ができたとしても構わないと思っている。
 あと暫定の方だが、現在の処理技術からすると、仮にどういう数字になったとしてもどうしても考えていかざるを得ないと思っている。少なくともふっ素に関しては、現在の処理技術としてはフッ化カルシウムで落とすのが一番汎用的なものだし、他の処理法、例えば吸着イオン交換でやったとしても、最終的にはその再生のプロセスで必ずフッ化カルシウムで戻してしまう。これ以外の環境に戻し得る良い化学形態で、コストの安いものが考えられない。あとはリサイクル等でうまくカバーするのを考えるか等、他の措置をとらない限り最終処分場は解決しないだろうと思っている。そういう意味では暫定をとらざるを得ないのと考えている。
 ほう素に関しては特にこのことは重要だと思っている。ほう素は処理の過程で最終的にはホウ酸でしか戻すことはできない。非常に特殊な化学形態で溶解度が低いものもあるが、やはり一番一般的な化合物の形態としてはホウ酸であろう。この形態で排出されるものをどううまく処分するかが問題で、閉じ込めていくのであれば幾らでも膨大な社会投資を必要とするので、別な経路を考えてうまくリサイクルに回すということを社会全体として追求しないと、うまくこの問題は解決しないと考えている。

(事務局)水質汚濁防止法の有害物質に位置づけることが適当だと書いてあるのは、水質汚濁防止法の有害物質としてという法律的な用語である。
 あともう1点、暫定の扱いの意見があったが、排水基準を決めないで暫定というのは、法律的に難しい。

(H委員)基本的には今日の資料でいいと思っているし、それから前回、事業者のヒアリングをしても、必ずしも製造工程に工夫をしたというようなことではないので、暫定基準を設定することによっていろいろこれから工夫をしてもらえるのではないかと期待したい。

(I委員)今、提案にあった資料5の取り扱いで基本的にはいいのではないかという感じがする。これは今までの流れを尊重するというと少し変なことになるが、一応ここはこれで暫定基準ということもこの中で述べているし、ほう素の点に関しては、生態系の中の循環がまだわかっていない点があり、陸水域の植物でもかなりほう素を要求するものがあって、これは日本で非常に広く分布している火山灰土壌はほう酸の吸着力が強いこともあり、将来、循環利用の可能性があると考えている。

(J委員)具体的なふっ素、ほう素の問題というのは、今日議論になった考えから結局、象徴的にいえるのは微量なら不可欠だが、ある程度を超えると人間を含めた生態系にかなり影響があるという物質をどう扱うかという問題だと思うが、いろいろな方法で取り組んでいかないといけないと思う。もう一つは、これは環境問題全般だと思うが、つけ回しはなるべく避けないと、たまった汚泥をどうするかという問題が出てくる。つけ回しをなるべく避けるような方向を何とか考えないといけない。それと暫定でおいておくというのは賛成で、今の段階だと超過についてかなりパーセントが低い、このパーセントが右肩上がりで増えていくのか、平行でいくのかはやはりトレンドをきちんと見ながら、規制を強くするなり、何か考えていかなければいけない問題だと思う。だから、双方向的にふっ素の規制が効果的に働いているんじゃないかと思う。ただ、そうでなくやはり少しづつ右肩上がりで増えていく話だと何か考えなければいけないというようなことになるのだろうと思うので、対策としては資料5の考え方で大筋いい。

(C委員)資料5であれば関係者が納得するのではないか。これは今後の運用についての希望、細かい部分は行政の判断になると思うが、あくまでも法律の形式的な論理だけではなく細かいところまで全部とはいかなくても、実質的に納得してもらい行政を進めるようにその点を慎重に運用されることを希望する。

(D委員)窒素もそうだが要するに生態系や生物に対する影響というのが抜けている感じが今の体系の中にある。それから、他の手法を、PRTR等を使いながら総合的にやればどうか、自主管理的なものをもう少しきちんと評価すれば規制手法自体も多様化するだろうと思う。だからそういう意味では、体制自体を見直すことも考えてもらいたい。しかしそうは言っても、今回の規制対象物質に対しては、やはり対策はとらなければならないというのが基本的な考え方だ。もう少し関係行政の事務的なところと検討してもらい、次回までに事務的に詰めてもらいたい。

(A委員)この3物質は、環境行政の方向転換を議論する非常にいい具体例だと思っている。

(D委員)最初、議論をした時期もあったが、しかし今対策をとらないことを合理化することが非常に難しいのではと思っていて、そういう意味では何らかの対策をとることと合わせて検討する。そういう組み合わせが今の段階でとれる最善の方法ではないか。いろんな意味で投資効果の問題は非常に重要な点だと思うし、今後どう扱うか、つけ回しの問題もあるが対策をしない理由にはならないと基本的に思う。だから、出さないようにすることをどうやって工夫するかに尽きる。だから対策をとるためにはある種の基準値を出さざるを得ない。しかし、暫定的な要素をこの際従来のものよりは少し幅広く、いろいろなことを考えながらやっていかざるを得ない。しかし事業者にとっても、ほかの事業者が努力しているレベルぐらいには当然やってほしい。非常にばらつきの多いところがあれば、少なくとも真ん中ぐらいまでは他と同じように当然やらなければならないレベルだと思っている。だから、暫定の決め方も非常に際どくなってくると思うが、今までどおりでいい、現状で明らかな影響が見えないから現状のままでいいのではというのはマイナス過ぎて、やはり他が努力しているレベルぐらいまでは努力してもらう、守ってもらう方向に進めるべきだと思う。

(G委員)今後の対応の部分で生態系の影響を含めた総合的なリスク評価のようなことを今後考えるべきだというところを少し入れてほしい。

(D委員)規制手法全体の問題でもあると思う。

(事務局)(資料6について説明。)

(A委員)内容に関してではなく、この資料の位置づけだが、窒素の問題に関してはやはり面源だけの問題でなく、ポイントソースなどとの関係もかなり重要だと思う。だから、これだけ切り離して中身を検討するのはどうかと思うが、その対応をまとめて議論する方がより効果的ではないか。

(地下水・地盤環境室長)この部分だけ切り取って議論してくださいということではない。前々回の委員会において、硝酸性窒素対策のあり方の全体枠として、資料6の1ページ目で示したような形とすることについて各委員のご了解が得られた。ただし、施肥対策についてもう少し具体的な内容を明らかにすべきとのご議論があったので、委員会以降、農水省と具体的な対策について検討してきたものであり、本日はその結果をご紹介させていただいた。こうした内容で特段問題がないということでご了承が得られれば、次回、硝酸性窒素対策全体のパッケージの中で議論していただきたい。

(B委員)この調査は大変いいと思う。施肥実態と地下水汚染の、要するに地下水の硝酸性窒素濃度との関係というのは、もちろん土壌やその他の関係もあるのだろうが、そういうものはこのデータから出るのか。地下水濃度等は測るのか。

(地下水・地盤環境室長)硝酸性窒素対策の施肥だけではなく、全体の枠組みとしての考え方だが、環境基準の常時監視をした結果、高い地点があればその周辺を調査する。汚染範囲がどれくらいあるのか、汚染原因はどういったものが考えられるかということを当然検討してもらう。

(B委員)施肥も当然その中に入るのか。

(地下水・地盤環境室長)そうだ。それでその原因究明の中で、この地域は土地利用状況や他も踏まえて施肥が原因ではないかということになれば、今回紹介した形で施肥の対策をやってもらうことになる。

(I委員)やはり硝酸性窒素の問題は、面源の負荷がかなり大きな問題で、点源、ポイントソースからの排水と同列に議論できない点があるから、こういう形でも仕方なかったのではないかという気がする。というのは、土壌と地下水の間のインターフェイスが空間的に特定できないので、こういう対策しか出てこないのかという気がするが、ただ、施肥基準に基づく適正施肥の指導の徹底というところに頼り切っているような感じがあった。現在の施肥基準というのは、別に地下水中の硝酸性窒素のことを考えてつくっているものではないので、施肥基準というのは決して固定されているものではなく常に農業関係の試験研究機関で改定しており、やはり地下水中の硝酸性窒素を念頭においた施肥基準というものを確立していくことがまず第一だと思う。2ページの留意事項では農協による地域内連携が重視されているが、確かに農村というのはこういう性格を持っている。実は農協による地域内連携を離れて農業活動をしようという空気がかなり強くなっていて、いわゆる産地直販や大手スーパーとの連携による生産、そういうところでは果たしてどういう施肥が行われ、どういう土壌管理が行われるかということは将来多少の不安がある。そういうものに対して施肥量の削減指導が徹底できるかどうかということも考えていかなければならない。それは施肥量の削減指導といったときに、その施肥、土壌、水という流れがあって間に土壌が入るから、かなりの部分はこれから論議されるであろう。これは土壌専門委員会の問題になってくると思うが、そこで土壌のモニタリングが地下水とリンクできるかどうかに重点がかかってくるのではないか。ここでは指導の徹底ということが今まで指定湖沼の流域でも盛んに言われて、琵琶湖周辺の水田からのSS等がかなり成功している例もあるが、指定湖沼の例を見てもすべて十分な指導が徹底されているかというと必ずしもそうはいえない。これはかなり徹底させるに当たってのきめ細かな方針を明らかにしなければならない。

(事務局)(資料7について説明。)

(C委員)ISOをそのまま使うことはできないと思うが、そういう発想で、環境に優しい栽培方法をとっているということを、何らかの役所が絡むのは必ずしも適当ではないと思う。第三者が認証するシステムも検討に値するのではないか。特に生協等が直販している場合にはそういう方法が有効になると思うので消費者も入って、そういう組織をつくることも一つの考え方ではないか。
 木材についてはISOとは別に独自につくっているようだ。

議事 3「その他」

(事務局)次回の専門委員会は10月4日(水)14:00〜17:00環境庁第一会議室を予定している。委員の先生方には正式な開催通知を追って郵送する。