中央環境審議会水質部会排水規制等専門委員会(第5回)議事録



日    時平成12年6月16日(木) 10:00〜12:00
  
会    場三番町共用会議所 大会議室(2階)
  
出席委員松尾委員長(東京大学大学院工学系研究科教授)
 浅野特別委員(福岡大学法学部教授)
 佐竹特別委員((財)日本軽種馬登録協会理事長)
 須藤特別委員(東北大学大学院工学研究科教授)
 伊藤専門委員(畜産試験場飼養環境部部長)
 田中専門委員(国立公衆衛生院廃棄物工学部部長)
 土屋専門委員(東京都環境科学研究所所長)
 中村専門委員(日本下水道事業団技術開発部部長)
 増島専門委員(東京農業大学応用生物科学部教授)
 森田専門委員(国立環境研究所地域環境研究グループ統括研究官)
 米澤専門委員(工業技術院資源環境技術総合研究所首席研究官)
  
事務局)水質保全局長、企画課長、土壌農薬課長、地下水・地盤環境室長
水質規制課長、総量規制室長
 地下水・地盤環境室 森川補佐、水質規制課 池田補佐


議事 1「前回専門委員会議事録(案)の確認」

 委員の先生方が持ち帰り検討し、意見がある場合には1週間以内に事務局に連絡することとなった。


議事 2「農業分野における取り組み等について」

(農林水産省)(資料2−1について説明)

(A 委員)環境保全型農業の普及や効果の判定はどのようにしているのか。
 もう一つは、やはり肥料をたくさんやった方がおいしく、柔らかくなり高く売れると聞くが、それは本当か。

(農林水産省)効果の判定というところだが、確かに水質といった形で見ることは非常に難しい。実際、農協では肥料や農薬の取り扱い高からどれぐらいのものが使われているかはある程度つかんではいるが、農協も経済活動であるので教えてもらえないところはある。実際に水質等の分析により効果を確認するには、数年はかかると考えており、技術会議でもそういった収支のバランス等研究中なのでその効果や、どう定量化するかということは、もう少し時間をいただきたい。
 また、肥料をたくさんやったほどおいしいのかということだが、農家ではそういう意見を持っている人もいるが、最近少し変わってきている。ただ、どうしても窒素肥料を多くやらないとだめなものもある。例えば、葉物の野菜であればホウレンソウの色をちょうどいい緑色にするための窒素量というのはある。窒素をやり過ぎるとどす黒い色になるし、窒素がないと黄緑色になる。黄緑色になるともう商品価値がないという感じになってしまう。
柔らかくなるということについては疑問をもっている。実際の施肥基準というのは、そういう品質も含めてつくられていると農家に指導している。それから、一番言われるのがお茶であるが、カテキン、要するにお茶の甘さを構成するのが窒素化合物であり、ある程度窒素をやらないと甘さが出てこない。したがって、玉露などの高級茶になればなるほど窒素をたくさんやることになる。根元にセンサー等を置いて窒素分が切れたら窒素肥料をやるという設備を補助、助成している。最近は、お茶の産地である静岡でもようやく環境に対する機運が盛り上がっていると聞いている。以前のような、けたの違うような窒素のやり方は茶の産地でもなくなってきているので、農家の意識も変わってきていると考えている。

(B 委員)施肥基準をつくって指導しているというのはわかる。例えば施肥日誌のようなものをつけさせて、どのくらい施肥をしているのか把握できれば方針も立てやすくなる。どこかでこういうモデル事業の例があるか。今後も、こうゆうようなことについて全く可能性がないのか。特に、行政が関与する形では無理だということか。それとも指導のベースでできないか、可能性についてどうか。

(農林水産省)可能性については、地域の広がりによってやり方は変わってくる。地域を限定しても、施肥量を全部記録させるとなると全農家にそれをやらせることは難しいと思うし、更に広域になれば農家の戸数で何千軒、何万軒となるのでなかなか協力が得られないと思う。ただ、その場合でも普及センターや農協の購買部・営農指導部、いわゆる営農指導をしている部局は、どこで何をやっているかぐらいの把握は可能。
 農家に施肥量を記録させるという形ではなく、農協や普及センターを味方につけた上でこういう指導をさせる、即ち、営農指導部局の協力・理解を得て、集落座談会等で実証ほ等をつけて説明することが農家には有効ではないかと考えている。

(C 委員)硝酸性窒素について、多分その窒素肥料というものに対して、それが有害物質だという認識が農業サイドにそんなにないのではという感じがする。実際には、硝酸イオンが地下水に入ってそれが10ppmを超えた水を飲むと、赤ちゃんがメトヘモグロビン血症になって病気になりますよと、こういうことについての農家生産者が理解するようなチャンネル、あるいは、なぜ10ppmになるとよくないのかが理解されないとうまくいかない感じがするが、そのあたりの情報の浸透具合はどうか。

(農林水産省)昔に比べると硝酸性窒素の話題というのは、かなりテレビなどで報道もされているし、一応農家の頭の中には入っていると思う。ただ、実際に自分のところの水道、いわゆる井戸を上水道に変えろとなると負担もかかるし、この井戸水の方が絶対においしいに決まっているという頭があるので総論としては理解しているが各論としてはなかなか理解できないところは農村部にはあると思う。先ほどの静岡のお茶の例で言ったとおり、最近は10アール当たり窒素100キロを超えるような施肥は減ってきている。これは健康に悪い項目であってそれをたくさんやることによって地下水を汚しているということがある程度認識されている結果だと思う。ただ、北陸のように米を主体に植えているところは窒素肥料をやる量が大体、10アール当たり1桁である。こういったところでは、水田の脱窒量が非常に多いこともあり自分のやった肥料は環境中に出ているという認識がないのは多分事実だと思う。それは農業の形態によって意識の差があると考えている。

(D 委員)現状の方法では、施肥基準が実際にどこまでそれぞれの場で実行されているか。そして、それがどういう方向で展開されるかということを、チェックや監視していくようなシステムは現在とり得ないという判断なのか。

(農林水産省)そういうシステムがとり得ないか、とり得るかという判断について断定はできないが、農林水産省の事業の中で、例えば県に対して施肥基準を見直せという事業は続けて来た。これは、すべての農家についてモニタリングするというわけにはいかないが、協力してくれる農家の土壌や施肥量を昔は全国で2万点程度、今は5,000点程度のモニタリングを実際にやっている。ただ、かなりの行政コストがかかるということは事実である。施肥量がわかれば施肥基準を超えているかどうかがわかる。ただ、単年度でそれを見て超えているか、超えていないかを論じるのがいいかどうかはある。アバウトではあるが地域としてどれぐらい出ているからこれくらいだとか、そういった感じではつかめると思う。過去(平成7年)に実際、行政監察として環境保全型農業を調べたことがあるが、そのときは、モニタリングの結果によるとまだ3割近くの農家が施肥基準を超えているのではないかと指摘を受けたことがある。行監には全国で押しなべてそうではないという説明をしたが、実際にアンケートをかけて調査すると施肥量を超えている事例がでてくるし、それについては営農部局として指導することは可能と思う。要するに悉皆的にといわれると難しいと思う。

(農林水産省)(資料2−2について説明)

(A 委員)施設をつくって野積み・素堀りをなくすと、それなりに地下水の汚染防止にはつながると思うが、ゆくゆくは堆肥を出さなければならないと思うが。あと、こうやって見ると4万戸あって浄化をするというのはほんのわずかであるが、これも承知のとおり、固液分離すると特にアンモニアは液の方に相当ある。
 例えば、3,000とか5,000の濃度で、地下水汚染はいいが今度は逆に、地表水の汚染につながると思う。もちろん、お金がかかる、いろいろ大変だということは承知しているが、この施設整備が地下水あるいは地表水への窒素汚染防止にどの程度貢献できると考えているのか。

(農林水産省)地下水問題は、野積み・素堀りの解消の施設整備をすることで、明らかに解消できると思っている。
 もう一つは、当然解決の方法として堆肥化をしていくと、この堆肥を一体どのように利用をしていくのかという問題がある。先ほど話があったように、まず畜産経営内で使うのは当然だが、農作物の肥料として家畜排せつ物の堆肥としての活用も当然考えられる。いろいろ分析する中では、十分国内での利用は可能であると考えている。

(B 委員)今の話に関連するが、国内の畜産排せつ物の窒素・燐の量が多分国内で必要な農業用の窒素・燐の量を上回るとの報告事例を聞いた。鹿児島でかろうじてバランスがとれているとの話だったが、今の質問に対する答えとしては少し心もとない面がある。食品循環資源の法律ができて、これも行く先が肥料になる。そうすると、畜産の方だけでもNPが既にオーバーしているのに、それにまた食品資源が入り込んでくるとますますオーバーするので、これはむしろ全体としての国の施策をどうするかというレベルの問題になってくると思う。  今回の食品循環法は、良くできていると思うポイントが1点ある。それはユーザーとの三者構成で仕掛けをつくった場合は、廃掃法の特例にするということで、3点セットにするというのは大変優れたアイディアだと思う。家畜排せつ物法のときにもそういう発想法で何か手を入れるという議論があったか。また、これは行政指導ベースだと思うが、この中央畜産会のパンフレットを見てもうまくいっているものは、大体できたものの引取先があって流れているという構造になっているから、今後、家畜排せつ物法の中でもそういう流れをどう確保しようという考えなのか。

(農林水産省)窒素過剰という話については、マクロベースでは十分国内利用が可能だと思っている。問題は、鹿児島や宮崎のような比較的畜産が盛んな地域ではむしろ過剰で、別の地域では全然足りないといった過剰・不足のアンバランスが問題である。まさにどうしようもなくてどこに持っていくのかという、言葉が悪いがふん詰まり状態という声もあるし、一方で「もっと堆肥を持ってきてくれ」という声も現実にある。そういった課題があるので、こちらとしては堆肥の需給マップをつくり、いかにそのニーズに結びつけるかというネットワークづくりを強化していく必要があるのではということで、来年度の予算の中にも積極的に出して行きたいと考えている。

(E 委員)行政サイドとして注意しなければならないことは、理論的に需給のバランスをとることと、実際にコマーシャルベースで需要があるところと供給地とがうまく結びつくかどうか。そういうことも含めて検討を進めてほしい。

(農林水産省)農林水産省の中でも畜産や食品工業、集落排水処理汚泥という形で、農地に入れたがっている部局はたくさんある。そのほかでも、林野で木くずが出るとか、漁鳥骨の関係で水産庁も入れてほしいという話もあり、全体のバランスをいうと、できるだけ品質が良く安定した堆肥として有機物の窒素の形で供給し、窒素汚染の負荷という観点を考えれば良いと思う。もちろん食品工業の残さを堆肥化したものを入れることがあるので、できるだけコマーシャルベースで民間がやっていることをどうやったら手助けできるかが重要で、農協がやる場合の助成や民間がやる場合の民活法による融資等いろいろな制度が準備されていて、今取り組みをしている。入れる方としてはできるだけ品質のいい堆肥とはこういうものだと、出す方に示して作らせる。畜産は特に他のものに比べてハンドリングが悪いのでどうやってうまく結びつけるかが重要な課題になっている。

(F 委員)農業の方は使わない方が割とコストが下がるので、農家にとってもいい。しかし、畜産の方は出てきてしまって処理しなければいけない工業系のような発生源になり得る。処理すると、費用がかかってしまい、そういう意味ではコストの考え方が反対になる部分がある。それは、消費者が最終的には高い肉を、国産肉は高いというのをちゃんと受け取れるかという辺になっていくと、WTOまでさかのぼるというように理解したし、またいろいろ複雑な問題がありそうなので改めて考えさせていただきたい。


議事 3「排水規制等の項目追加等について」

(事務局)(資料3、3−2について説明)
   
(F 委員)この専門委員会は排水規制等専門委員会ということで、従来だと排水基準を決めると仕事が終わりという気がしていたのだが、今回は対策まで入ってきてしまうような感じを受ける。その対策をある程度見通した上で、あるいは対策に注文をつけながら基準を決めるという仕掛けで考えなければいけないのかと理解しているが、そういったことも含めて従来にない物質を扱っているのだと思う。雨の問題が出てきて、肥料だけではなくて雨で発生源の中に入ってくることもある。それも面源といいながら、もとになる物質はいろんなところが発生源としてありえる。ある種の人間活動が果たしているもので影響を出しているものならばきちんと対処しなければならない。まさに総論としては理解してもらえると思う。
 もう一つは形態が変わり得るということ、これも従来にない。今回、この窒素に関しては随分時間をかけているのでそろそろある程度集約をする時期にきている。今日こういうたたき台的な問題点を整理していると、対策という部分とどう関連づけながら、具体的に数値等へ反映させるかが課題と理解している。

(A 委員)今の硝酸・亜硝酸でさらにアンモニアを加えるか、さらに全窒素までいくのか。レベルは10倍にするのかということになる。地下水も排水規制の対象物質をあわせた方がよいのではないか。

(D 委員)硝酸・亜硝酸からアンモニア、全窒素まで拡大するかどうかに関してだが、必要性は確かにあると思う。硝酸・亜硝酸だけを対象にして、それ自体の規制はあると思うが、それによっても必ずしも環境基準を守ることはできないと思っている。今の水濁法の体系では環境基準が決まって、それに対するものだと いうことになっいてるから、それとのリンクをどこまで論理付けできるかがポイントだと思っている。この関連づけが困難なら規制対象にすべきでないと考 える。
 二つ目は、仮に排水規制を行った場合、それは強制力を伴った規制になる。今の窒素問題が重要なのは、地下水対策だと思っているが、そこへの負荷として最も大きな部分に対しては、排出規制では対応できなくて、実際上強制力を伴わない指導でやらざる得ない体制である。しかも、その効果自体のチェックが定量的にやりづらいのが現状。そうした場合に強制力を伴って行う規制と、指導ベースでやる対策のバランスというのは非常に重要な問題で、それは、実際に社会的な投資の効率性の問題になるし、強制力で規制されている側にとっては効果が全くつながらない状態が続いた場合には、不公平感を増すだけの結 果になる。これからの環境行政というのは、個々の事業者自体が自発的に環境をよくしていくというインセンティブをどう大きくしていくのか、その中でより環境をよくするために努力することが、結果的に社会全体にとっていいのだという意識を譲成していくのがベストだと思う。それに逆行することになりかねない。そういう意味では、この二つの強制力を持った規制と強制力を持たない措置等のバランスをうまくとることを考えないと不公平感が広がるだけだ。
 機械的にただ10倍という議論を適用すると非常におかしくなると思っている。
 さらに、もう一つ10倍の話についていうと、これは下流の300mとか1kmという範囲がいいかというのは正しい裏付けにならない。何に基づいて判断できるかというと、今の窒素の規制の実績だろう。閉鎖性水域については現実に一定の規制値があって、それは環境基準値を想定してつくったと思う。そこで実施されている排出レベルと達成できているレベルとのバランスをこの方の議論にも使えるかと思う。極端な場合をいうと、大きな数字になりかねない要素があるが、それを実際に参考にすべきだと思っている。資料の中で、アンモニアから硝酸に変わるのが1週間ほどで全量変わるということになっているがこれはトータルとしての窒素が脱窒と、その生物への固定も含めて、減少することを見落としている。そこまで含めると単純に1対1で変わるということも成り立たない。この性格も考え、今の総量規制でやっている基準の考え方もこの規制の中で考えてもいいと思う。

(G 委員)農業面源で窒素を使う。実際に使うときはほとんどアンモニアを開放系で使っているので、開放系の事業場から開放系である地下水に硝酸が入っていく、それをどう規制するか非常に難しい。似たような問題を探すと養殖漁業の網生けすに非常に近い。網生けすは限られた水域しかありえないが、農業面源の場合は日本中にある。しかもその硝酸を動かす駆動力というのは雨で、雨の降り方と肥料をやる時期を組み合わせて考えると気の遠くなるような組み合わせで、コントロールになじみにくい性格をもっているから一般の事業所からの排水とは違った考え方をしないとだめだろう。

(B 委員)現在の水濁法の中で全くそのまま使えるとは思わないが、多少のヒントになるものがあるとすると、生活排水対策の推進というのがある。つまりある地域の環境基準が達成できそうもないと、水濁法の従来の規制の枠組みではだめなところについて別途、重点地域として指定し計画をつくる。生活排水対策は下水道を整備するぐらいでごまかしているが、何も下水道整備ということだけに限定される理由はない。これは、生活排水ということで縛りをかけているので、法改正に伴うことになるかもしれないが、究極的に環境基準を達成しなければならない法の枠組みは、環境基本法の定める枠組み。それを水濁法で全部賄えとはいっていない。要するに環境基本法は政府がありとあらゆる施策を総動員して環境基準を達成せよといっている。その中のかなり重要な柱がかつての公害系の場合には水濁法であったことは明らかなので、水濁法が機能する部分については水濁法を機能させる。
 しかし、水濁法が機能しない部分は何もしないというのは、明らかに政府としての不作為であるから何らかの方法を講じなければならない。アンモニア性窒素を効果的に削減できるのが農林水産省が持っている法律ならそれを使えばいいわけであり、水濁法との間の矛盾が生じないように調整する上で水濁法の持ち分は水濁法でやるという考え方でいいと思う。そうすると10倍でいいというのはそれですべてが解決するのが検証されている数字で普遍性があればいいが、そうでなければ矛盾を来すかもしれないし、少なくとも10倍というのはミニマムなのだからそれはそれでやっていて、それでだめな部分は他の手法を導入すればいい。
 10倍がどうであるかというのは、在来の知見のもととなっている規制が他の原因をどの程度考慮して、なおかつ10倍となっているかという論証の問題になると思う。要は、法律をつくるものが立証責任を果たしたかどうかの問題だ。だから挙証責任を尽くしたと言えるデータを出せばいい。このリスクの中で10倍でない基準が入ってきたからといっても、ちゃんと説明さえできれば問題解決になる。

(F 委員)例えば、畜産を例に挙げると畜産排水からいろいろなものが出ていて、同規模ではないかというときに、片一方は直罰を受け、片一方は受けないと不公平だというのは素人的にも第三者的にも理解できる。だから、その辺は、ある程度整合性がとれていないとまずいだろうし、ある種管理するという別の仕掛け等の何か担保する部分をどう考えるかだ。

(B 委員)ノンポイントをどう見るか。生活雑排水の原因となるのは、家庭から出てくる極めてノンポイント的なものだから全く規制になじまないという前提に立っていて、下水道が整備されれば最後の排水口のところでコントロールできるが、それができるまでの段階ではやむを得ないため計画を導入し、その部分をカバーしている。これは、考え方としてかなり似ている。だから農畜産系を全くノンポイントという扱いにするのか、それともれっきとした産業なのだから同じような位置づけをすべきか、これは高度な法政策の問題だと思う。

(H 委員)議論の対象物質は終始動く、脱窒があって消えることもあり動くわけなので、そこでなおかつ硝酸は硝酸だけ取り上げてというよりは、全窒素のような格好で抑えておかないといけないということが一つ。
 もう一つは、今の規制では畜産のふん尿処理はただ溜めているだけではないかという話があったが、でも溜めながらでも撒くときは土壌分析をやって、それに合わせて撒いたりいろいろ使い方は工夫している。浄化装置も120、60という基準を守って流す装置にしてある。だから、規制がかかっていてそれに対応しようとして農産の方もそれにあわせた格好でシステムを組んでいる。そうすると、先ほどの直罰という話になると特に農業の場合は、農家の協力なしでは絶対に実現しないという側面が片一方にある。そうなってくると機械的にやっている形で本当にいいのだろうかと疑問がわいてくる。対策レベルの範囲は別にして、物質限定の対策の取り方や格好がこの窒素問題の一番頭の痛いところだろうと思う。

(I 委員)農業の問題が絡んでくるので少し難しくなっているが、基本的には特定事業所に対する排水基準をどうするかということだと思うが、そうすると硝酸性窒素・亜硝酸性窒素に関していえば10倍というのは従来からのルールではないか。ただ、トータル窒素に対してどうするかということになると、反応系なので反応のおくれにより希釈倍率にどう響くかということはあると思う。そういうことで、農業系のものは農業系のものとして別に考えなければいけないが、排水基準を考える上で、従来のルールはルールとして考えてないと前に進まない気がする。

(E 委員)現実問題として非常に不公平感を持つだろうというのは、否定できないと思う。行政は規制を受ける側の真意や反応を考慮してやるべきだと思う。もちろん専門委員会だから、いろいろな立場からの発言があって当然だが多少行政をやった者としてはそういうことを考える。確かに法制度的には法律で政府は受任しているのだから、自由に決められるというのはそのとおりなのだが不公平感を残したまま法律的にできるか、可能であるか、委任されているからというのでやる場合には非常な大きな社会的フリィクションが起きると思う。

(C 委員)不公平感の問題というのは、本当にそうだと思う。このときにいろいろな観点があるが、とにかく国民の安全性という観点に立つとその有害な濃度で排出するという、それがだれであれ当然ある種の縛りがかかるべきである。それがどちらかというと、工業系に関しては罰則が明確にあり、1次産業系に対しては比較的お願いベースで、という話は整合性が確かにとれなく、安全という点からは、本来なら両方ともある種の規制的なコンセプトが必要かなという感じがする。だから、いろいろな立場があると思うが10倍を緩めてバランスをとるかもしれないし、肥料系の方をきつくしてバランスをとるのも選択肢かもしれない。そういう意味では、確かにバランスをとる必要があると思う。
 それから、とにかく10倍に根拠があるかどうかというのは基本的には疑わしいが、ある種の社会的ルールとしてやってきて、何となくみんな納得しているという部分で実行されてきている。これをいじり始めるとややこしいことになるので、それが工業系の方で受け入れられるのであれば10倍という線をベースに考えることが、話を前に進める唯一の道かという感じがする。

(J 委員)不公平感の話だが、もし特定の事業所にある種の不公平感があるとしたらそれを救ってやるのが行政の役割だと思う。通産省の場合は幾つかの大きな試験場を持っているし、小さな事業所で窒素の規制がかかった場合にそれをクリアするようなプロセスを開発したり、何らかの形で行政的な手を差し伸べるというのが、行政に求められている一つの姿ではないかと思う。そういう方法で不公平感をぬぐうという方法は幾つもあると思う。
 対象物質を何にすべきかという事務局側からの問いかけについては、有機性窒素も当然対象としていないと実効性という点では欠けたものになってしまうだろう。基本的には有機性窒素を含んだ全窒素を対象にしないと、意味のない規制になってしまうのではないか。レベルについては、地下浸透する場合と陸水域、表流水あるいは閉鎖性水域に放流する場合やオープンの開放系の海域に放流する場合と全て同じに考えていくのかと、きちんと議論しないとおかしいと思う。10倍という数値は根拠がないと思っているし、今まで10倍という数字で本当に環境基準が達成されているのかというと、例えば生活系で言えば富栄養化問題で効果が出ていないということできちんと見直さないといけないと思う。

(G 委員)農業面源に対して直罰は無理だといったのは、農業面源から浸透していく浸透水の濃度を確定することができない。たまたまある時期にサンプリングして10倍を超えていたので直罰をとったとすればかえって不公平感を招くだろうという意味で、最終的には農地の方は土壌基準で議論されることだが、土壌中の濃度で浸透水の水質を担保することを考えざるを得ないのではないか。

(E 委員)実際問題として、日本の上水道の普及率が97%だということ。もちろん残りの3%は問題があるがそもそも飲料水源にならないから地下水のような性質の水について、今、上水道に使わないからといって汚染していいのかというような議論があることは非常にわかるが、現実問題として農業の規制をしようとするときに説得が難しい。だが、必要ならば農業であっても規制しなければならない。当然、農林水産省はやるべきだと思う。しかし、97%は上水道水源を使って、あと3%で地下水を利用している現場に何らかの規制をかけるのは難しく、行政として責任は負えないだろうと思う。これはもういい悪いは別で今の日本の社会実態を考え何かバランスのとれた案を考えなければならない。

(C 委員)地下水の問題は非常に難しくて、先の日本を考えたときに地下水源をきれいな水として残すか、それとも捨ててしまうのかという部分がどうしてもかかってくる。しかし汚してしまっていいのかという課題はあるという感じだ。

(K 委員)農林水産省の説明の中で、適正施肥量を決めるということで生産のみならず、地下水の水質保全といった観点からも施肥量を決めるということと、素堀りや野積みを改善するためにとりあえず貯留槽を設け、施設整備をしていくということで共同処理施設や個人の処理施設をつくっていき、効果を上げていくという自主的な取り組みは非常に高く評価する。一方でリサイクルを促進するという機能もあるし、それを阻害してはならないという気がする。規制できるところと、自主的な取り組みを誘導するところの組み合わせは環境分野で大事だという気がしている。

(F 委員)地下水の説明にある有害物質の使用特定施設で、この中には畜産が集合的・大規模に集めてきて排水処理をする施設をつくるとすると、有害物質使用特定施設の対象になるのか、ならないのか。

(地下水・地盤環境室長)有害物質使用特定事業場は、有害物質の製造・使用・処理を行う特定施設を設置している事業場である。そもそも畜舎という特定施設は有害物質の製造・使用・処理を行っていないため、処理施設をつけたとしても対象にならない。

(F 委員)その幾つかのものを集めてきて、共同処理施設にしたらどうなのか。

(地下水・地盤環境室長)処理施設については例えば下水終末処理場や共同処理施設、一定規模以上の浄化槽やし尿処理施設は特定施設となる。有害物質の処理を行っている場合は、地下浸透規制の対象になる。

(事務局)(資料4について説明)

(B 委員)少なくともそこまで悩んでいたというのは、湖沼法のことを考えるとすごい進歩だと思うので高い評価をしたい。つまり湖沼法というのは、まさにアンバなことをやっていた。上乗せ基準は事業系だけにかけるということで地域計画についても面源についてはほとんど手が出なかった。それに比べると、議論できるようになったということはすごい進歩だと思う。
 先ほどの話になるが、アンモニア性窒素のようなものまで健康項目にしなければと考えているのだが、環境基準が定められている物質ははっきり決まっているので、健康項目としての環境基準が決まっている物質についてだけ水濁法で扱うとして、アンモニア性窒素のようなものは主に食品製造業から出てくるがそれは、生活項目の方でしっかり規制がかかっているのか。

(A 委員)規制はかかっていない。

(B 委員)そうすると、むしろそっちの先決問題を片づけて、水濁法の体系を保ち、ここに出ているペーパーの手法を活用して特定地域については面源対策の強化と 合わせる。アンモニア性窒素についても水道水源法のような考え方で、地域を限り健康項目に関連して強化する。非常に複雑ではあるが、今の法体系を余りいじらないでやれる美しい解決であるのだが、しかし技術的には分かりにくい。

(A 委員)いろいろ問題があるのは分かるが、結果として枠組みとしては地域を決めてやる、これで進めるのがいいと思う。生活雑排水のときにこれをやって、当初あの程度の重点地域を設けても役に立たないと思っていたが、10年たってみ中央環境審議会水質部会排水規制等専門委員会(第5回)議事録と定量的には評価できないが結構役にたっている。あのとき水濁法を改正したやり方が面源には必要なので、だから面源のことを考えたら別に生活雑排水といわないでこういうものを全部入れて違う規制の枠組みを地域を決めて入れる方法、トリハロメタンも多分類似していると思うが、そういうやり方を入れておかないといけないのではないか。
2点目は、いろいろな連携や勉強をし、またデータができたりすると、考え方も変わってくるのでやはり将来に向けて3年でも5年でも点検・見直しをやりながら進めていくようにしないと、1回決めてしまったら今までの環境基準や排水基準のように20年も30年も変わらないようだといけないと思う。特にそこのところは、気を付けないといけない。

(E 委員)やや法制局的な議論だが、前駆物質というのは法律的に直罰をかけられるのか。理論的には、限りなく広がってしまう可能性があるが法律的にはよく詰めてあるのか。それは技術的には当然の議論だと思うが法律の罰するという観点からすると、かなり乱暴な議論なので慎重にした方がいいと思う。

(F 委員)その辺はいろいろな議論の中で、水濁法の枠組みでは十分な対策ができないということ、面源の場合が特にそうなのかもしれないが、今のような意味で物質レベルを硝酸・亜硝酸は決まっているがアンモニアでやろうとか、全窒素でやろうというふうに従来の枠組みから超えるような部分がある。 
   だから、この水濁法の法律的な意味での限界が何が問題で、今回はどこに影響が出てきて、もし前駆物質をかけられるのであればその辺は余り問題がないかもしれない。どんな状況なのか。

(B 委員) 前駆物質は因果関係をどこまで明確に言えるかの問題だ。全量24時間以 内に変わることが確実に言えるのであれば構わないが、24時間でなくて他のものに変わってしまうとか、あっちこっちに行くということになると説得力がなくなる。それから見直しの話だが、大防法では既に化学物質でそういうことをやって3年たったら見直すという話があるし、最近の国会は見直し規定をよくやるので提案し積極的に政府側が言うような工夫は今後はできると思う。

(F 委員)法律で書いてあるのか。

(B 委員)今は、そういう法律がつくれるぐらいの時代になったので、やろうと思えばできないことはないと思う。

(D 委員)今の見直しの話は大賛成だ。というのは、対策すべき対象に直接対策をとれないし、強制的にもとれないのが中心だ。しかも、その効果は目に見えないの が現状だと思う。そうすると、特に法としての施策に公平感を維持しようと思うとかなり手探さぐりでやらざるを得ない面が実態的にあると思う。
 最初から低いレベルで強制的にやると不公平感を拡大するわけだから、実際いろいろな施策の有効性を担保しようとすると、チェックをして見直していく体制をこの中に取り込むというのは非常に大切なことだと思っている。

(F 委員)見直しをするのだからさっきやったように10倍を約20倍にするとか、こういうことから始めるとある種の安全性、飲み水の安全性や環境基準を守ることはあるわけだから、どちらかというと厳しくしておいて見直すというのはありえるが、緩くしていたものをだんだん厳しくするのも社会的には説得力がなく対策先行の決め方になると思うので、悩むところがある。

(事務局)環境基準に決められているものについてどのような対策手段を講じるべきかと言うのが今回の課題だと十分認識している。ただ、一般の専門家から見れば硝酸・亜硝酸について、アンモニアや有機態窒素はやはり環境中で変化して最終成果物として硝酸となる。そういった場合、硝酸だけをとらえて一生懸命硝化脱窒をやって、アンモニアを未処理で放流して別のトラブルが生じてしまうと、確かに硝酸の公共用水域なり、地下水の汚染解消のために硝酸だけをとらえてそれで果たしてよかったのかどうかということを、後々指摘されることを非常に気にしている。

(D 委員)実際の水道水汚染に対して一定の危険性があるわけだ。対策を立てるときに全部のものに対して、社会的に全部お金を投資して、全部きっちり取れますというのであれば言われるように、一番理想的なレベルの強制的な規制までかけることはできると思う。ただ、現実にとれる範囲というのは限られているし、社会的な投資コストまで考えるとその効率性をどうしてもチェックしながら見ていかないといけない。そうすると一番いいのはどこか。一番危険性の大きなところ集中的に投資をして解決をまず図る。
 その結果を見ながらさらに拡大していくことだと思う。それをやらないでやると、非常にその投資の内容自体が無駄なことになりかねない。結果的に、一番大きな問題が全然解決されないまま小さなところが強制力を持って規制されてしまうという結果を招いてしまうのではないか。寄与が小さいところでも有害物質を出していないわけでなく、確かに有害な物質を出している。しかし、それは環境全体のレベルをよくしていくため、一番大切なところに対策を集中することが一番大事で、そこが抜けてしまっている限り全体にちゃんと対策がとれているのかという議論になると思う。

(F 委員)この議論は、水濁法の基準改正といっていられなくなって、面源まで考えなければならなくなってきた。そういう意味では、今までにない水質汚濁防止の全面的な枠組みをつくらなければいけないことになってきている。そういう意味では、初めていろいろな意味で国家的というか国のレベルと全体的なバランスをとりながらやろうという議論になってきているから、今後的にはいいと思うが、ある種の暫定基準を決めてその何年後に見直しをするとか、何かそういう目標みたいなものを低くする。
 しかし、そこへ行く経過措置もあわせて考えるということは、当然あるのかと思うし、また面源的なものについていえば少し地域的に違うのだろう。そこは農業サイドが前面に出て来るのだろうが、そこは施肥の管理とか、いろいろなことを今やろうとしているからそういうものを長期的にモニタリングしながら見ていき、みんなの合意として排水基準を決める。窒素についても規制をかける。河川と地下水を守るとすれば今まで面源として放置してきたところまでテーブルについてもらい長期的に対策をとっていく。何かそういう大きな枠組みができれば、いい方向への第1歩になるし、それをもう少し定期的に見直していけばもっとよくなると思うが。

(D 委員)EPAのいろんな環境基準の決め方の中で、最終的な到達目標はこうだよという数字を出す。ただ、暫定的に今の時期はこの辺でやりましょうという数字をだす。このような数字の提示を2段階で出しているようなやり方があったように思うが、そういうやり方もあり得るかもしれない。

(水質規制課長)一つの行政テクニックといってはおかしいが、手段として環境行政の中でいろいろ経験を積んでいる。技術的に可能な範囲で最大限の努力をしながら目標に達していくという考え方からとれば、緩くする、厳しくしてという考え方ではなく、目標に達していない段階からできるだけ目標を達する段階に近づこうとすれば、段階的に厳しくなっていくのが自然な流れだと思っている。

(E 委員)行政側が秋までに何らかの処理をしたいと思っていて、現行法の中での運 用ということであれば、考え方としてこういうやり方しかないと思う。ただ、こ れは中身の問題でこれを全部行政に任せてしまったのでは、この委員会として問 題があるのだろうから、どの部分までここの委員会でやるのか、きちっと全部詰中央環境審議会水質部会排水規制等専門委員会(第5回)議事録め切るのは難しいし、考え方として、今の現行法を前提に行政としてどうしても秋までに処理したいということであれば今回の案でよいと思う。

(水質規制課長)例えば、発生源の中でバランス、対策を講じなければならない人た立場に立った公平感を阻害しないような形で進めなければならないことは確かだ。

(水質保全局長)今日出た論点につき、事前のいろいろなトレーニング、非常に類似する議論があるので論点を整理したい。
 公平性の問題なり、あとは良くなると言うことが一番重要だからその見通しの問題があり、良くすると言うこと、しかもメジャーな汚染源自体をターゲットにして、いかにその汚染の除去ということを最終目的にし、それに向けた手段とし て水濁法がある。あるいは自主的なこれからのフレームを詰めていく手法をどう するか。それまでのバランス論を考えながらどれが最適な手法なのかを、それに至る論点整理、そして延長線上にどういうフレームにするのか。少し時間をもらわないといけないと思う。


議事 4「その他」

(事務局)次回については、7月中で日程調整をさせていただき、別途連絡させていただきたい。