中央環境審議会水質部会排水規制等専門委員会(第4回)議事録




日    時平成12年5月12日(木) 10:00〜12:00
  
会    場通商産業省別館946号会議室(9階)
  
出席委員松尾委員長(東京大学大学院工学系研究科教授)
 浅野特別委員(福岡大学法学部教授)
 須藤特別委員(東北大学大学院工学研究科教授)
 伊藤専門委員(畜産試験場飼養環境部部長)
 土屋専門委員(東京都環境科学研究所所長)
 中村専門委員(日本下水道事業団技術開発部部長)
 増島専門委員(東京農業大学応用生物科学部教授)
 森田専門委員(国立環境研究所地域環境研究グループ統括研究官)
 米澤専門委員(工業技術院資源環境技術総合研究所首席研究官)
欠席委員田中専門委員(国立公衆衛生院廃棄物工学部部長)
 佐竹特別委員((財)日本軽種馬登録協会理事長)
  
事務局)水質保全局長、企画課長、地下水・地盤環境室長、総量規制室長
 地下水・地盤環境室 森川補佐、水質規制課 池田補佐


議事 1「前回専門委員会議事録(案)の確認」

 委員の先生方が持ち帰り検討し、意見がある場合には1週間以内に事務局に連絡することとなった。


議事 2「これまでの指摘事項について」

(事務局)(資料2〜3について説明)

(A 委員)資料2これは、現在、全窒素規制がかかっているところでは、効果的な対策が実態的にとられているのではないかと考えたが、暫定とか、その辺の問題もあるし、実際の対策の必要性をピックアップするのに参考になると考える。

(事務局)資料2の5ページ、3つ目の酸又はアルカリの表面処理施設を見ると、上から「なし、一律、上乗せ」と書いてある。規制がなしであれば濃度が比較的高いだろう、また、一律や上乗せがかかっている場合は、基準を超えているものがあるものの、比較的超えている割合が少ないであろう。

(B 委員)上乗せがあるところにもかかわらず結構高いのが出ている。こういうこともあるから今の体制だけでは無理というか、新たな枠組みが必要だという感じが出てくるのかもしれない。
 単独浄化槽では硝酸性窒素等はそんなに高くないがアンモニアというか、前駆物質みたいなもので出す可能性があるということか。

(C 委員) 普通の使用状況だと、単独浄化槽では120mg/lをクリアできると思うが、 215mg/lとか159mg/lとかがあり、これは、例えば尿が多いということがあり得る。普通の使用状況では原水では100mg/lを少し超えるぐらいの値かと思うので、これぐらいのばらつきは妥当かと思う。

(事務局)(資料4について説明)

(C 委員)ふっ素とほう素について、現状の処理技術のいずれかを使えば環境基準ぐらいまで低下させる技術は、既にあると結論してよいか。
 それと、ランニングコストは水だけで、汚泥処理は含まれていないのか。

(事務局)今回は、適用事例に非常に関心をもっていたわけで、具体的に工場に導入されているのか、あるいはまだ実験室レベルの話なのかということで比較した。
 排水基準が、環境基準の何倍になるか分からないが、処理が不可能ではないと思っている。ただ、汚泥とかコストの問題、また、不純物が入っているので実際に適用できるかは、直ちには判断できないが技術がないわけではないと理解している。なお、ランニングコストには汚泥処理は含めていない。

(A 委員)実際にほう素で対応をとっているところはほとんどない。事業場等でこれらの処理をやっている例を幾つか聞いているが、共存物質の問題もあり、メーカーのいうスペックどおりになっている例は非常に少ないのが実態だと思う。
 例えば、ふっ素の場合は、結果的にその事業場の持っている他の工程の排水を使って希釈して、何とか基準をクリアしているのが実態。
だから一般的に、取り上げる水量の小さな事業場の場合はかなり高い数字が出てしまう傾向にある。

(事務局)(資料5について説明)

(D 委員)「罰金の対象」という書き方がしてあるが、説明の中では課徴金という説明があったりして罰金なのか課徴金なのかよく分からない。
 それから、スウェーデンの課徴金は、メーカーが払うということは自動的に価格に上乗せされて購入者が課徴金分について割高のものを買うという仕組みになっているのだと思うが、そういう理解でいいか。

(事務局)順番が逆になるが、スウェーデンの方は既にメーカーの販売価格に上乗せされて自動的に払っているということである。
 罰金について英語でlevy、そういう意味では課徴金が正しいと思う。

(C 委員)この三国の窒素の汚染状況だが、スウェーデンは別としてオランダ、ドイツは日本と比較して地下水が少し汚れている、地表水は硝酸の濃度で見るとかなり汚れていると考えていいか。
 2番目は、オランダ、ドイツの窒素汚染は、肥料よりも畜産糞尿という印象を受けた。化学肥料の問題は特に取り上げなくて、畜産糞尿を中心に取り上げているのか。

(事務局)例えば、地表水の硝酸性窒素は4〜5mg/lのレベル。

(C 委員)4〜5mg/lは、日本の中では高い。
 地下水は、50mg/lが日本の10mg/lに対応する。超過率は11%で、日本は5%ぐらい。ということは、日本より相当進んでいる。

(地下水・地盤環境室長) 要監視項目としての調査結果が5%程度であった。環境基準項目として全国調査をやると5%ぐらいになるのか、もう少し高くなるのか、低くなるのか我々にもまだ分からない。
 これまで測定しているところでは、5〜6%で環境基準項目になったので、今後、今までの物質と同様に測る必要があり、そうなったときにどうなるかというのは今からである。

(E 委員)地下水の場合は、浄化槽の問題があるのでどこからとってきたかが気になるので、超過率だけでどっちが汚れているとはいえないのでは。

(事務局)また、後半の質問について、EUの硝酸塩指令は、畜産糞尿を主にやっていて、化学肥料のことは優良農業規範の中で位置づけている。ただ、オランダについては化学肥料についても同様に対策すべきという提案をEUにしている。
 スウェーデンでは、先行的にこれに対する課徴金を設定している。ドイツにおいても直接的な規制手法ではないが、各農家に肥料の適切な使用の調査とか記録の保存等を義務づけている。

(F 委員)オランダ、ドイツでは、いつ頃までにどのくらいの水質にしようとしてこの数値が決められているのか。例えばオランダだと、EU硝酸指令170kgN/haに対して250kgN/haを使っている。これでいけば、いつ頃までに表流水あるいは地下水中の硝酸性窒素等がどうなるのかという計画をもっているのか。
 また、スウェーデンの場合、脆弱地域は富栄養化のおそれがあるところということだが、富栄養化に対する効果が表れているのか。

(事務局)オランダについては、彼らの説明では2003年から50mg/lを達成する目標をとっている。2003年になったら、彼らの調査に基づき50mg/lを達成できるレベルまで規制を厳しくするので、その時点で達成されると考えているようだ。
 現実には、地下水の流動等もあるのでどうかと思っている。
 富栄養化の効果まで調べていなかったが、少なくとも、資料の8ページ目の(4)に書いてあるように、「課徴金が最も高額であった1991-1992年は窒素肥料の使用量が最も少なかった」、これは翌年の引き下げに伴い、使用量が16%増加したとの報告があった。直接的な効果としては、10%の使用量を削減する効果があったとの報告もある。富栄養化との関係は調べきれていない。

(B 委員)ヨーロッパだから畜産というか、動物性の職業がいかに負担が多いかという問題でもある。昔から伝統的な農法だから、食糧の構成がヨーロッパはそうなっているから大きな影響があるのだろう。
 富栄養化の話は、旧ソ連のバルト三国が何もやっていないということから、スウェーデンだけでバルト海の富栄養化が下がるとは言えないと思うが。

(事務局)スウェーデンだけで対応できる話ではないと思うが、スウェーデンのレポートによると課徴金によって、2020年までに富栄養化がなくなるようにすべく、2000年までに海域への窒素流出量を半減しようとしているが、今のところ25%までしか達成できていない状況である。

(D 委員)オランダの肥料法で記録申告義務があり、ドイツでは調査結果の保存義務がある。スウェーデンのLRFが自発的に目標を決めて取り組んでいるところが日本の参考になるとの説明であったが、むしろこういう記録や報告義務は非常に大事だと思う。日本ではこの種の話をすると必ず「そんなことはできない」とか「農家は無理」という回答しか返ってこない。ドイツ、オランダではどうしてできるのかだが、例えば裾切りのようなものがあるとか、導入に当たってのコンフリクトとか、その辺は調べているのか。

(事務局)LRFは参考になると説明したが、もちろんドイツの記録保存義務も参考になる話で、最低こういったものをやっておかないと、漫然と肥料を撒いていくら使ったか分からない現状において、使用量が分かるようにその記録を保存しておく、必要があれば報告してもらうという制度は日本においても取り入れられる制度ではないかと思う。

(事務局)(資料6について説明)

(D 委員)今までの水濁法の限界がどこかということを、はっきりさせることは必要。大気の方は、汚染物質がどこから出てくるのか分からない。それで大防法は少なくとも煙突に目を付けて、そこから出てくるものを抑える。粉じんはそれではだめなので、構造基準とか導入した。アスベストでは敷地境界線基準を導入し、中でどういう対策を講じるかは勝手だが、敷地境界線でこれ以上出してはならないという基準を作った。有害大気汚染物質では、それでもだめなので、自主的にやって下さいというところまできた。
 水の方は、特定事業場から公共用水域に流れ込む出口で抑えればいいのだから、対象は公共用水域であってそれ以外のところは関係ないと割り切ってきた。
 今までの対象物質はそれで抑えられるものだったが、今回は、特定施設のところで抑えても全部抑えきれない。トリハロメタンには、水濁法のフレームを無理矢理押し込んで作ったから余り機能していない。今度の場合、それがもっとはっきり出てくると予想され、では規制は全くゼロでいいかというとそうはいかない。バランスのとれる範囲内では在来手法をとりながらそれに全部ツケを回すやり方では、全く解決しないということを認識しておく必要がある。

(事務局)水濁法の限界について、今の水濁法の体系では工場・事業場から公共用水域に排出される水を規制するのが目的であり、どういう物質を対象にするのかが先である。次に、その物質を排出するのがどういう施設なのかということで、特定施設を位置づける。その特定施設を有している事業場を特定事業場として、特定事業場から流れ出る水全部を規制するものである。
 そういった意味では、農地でまかれた肥料が排水として排出されるといえるか、あるいは特定施設という概念でとらえられるのかが大きなポイント。
 また、トリハロメタンだが、平成5年当時水濁法になじまないということがあり、水道水源法を別途作ってトリハロメタン対策を進めてきた。趣旨としては、こっちの方がまだ近いのかもしれない。

(C 委員)この窒素汚染というのは、有害物質としてとらえているが21世紀の環境問題の中で最も環境問題らしいもの。複雑に絡んでいることと対策がしにくいことも含めて非常に重要で、この問題はおろそかにしてはいけないと思う。硝酸性窒素が10mg/lを超えたからどうかとか、その程度の話ではなくて、もっと全般的に窒素問題を考えるべきであり、富栄養化との関係は、本当は別の話であるが切り離せない問題だと思う。
 従来の健康項目は、発生源対策で何とかなったが、発生源対策で多分うまくいかない問題が非常に多い。ただし、そうはいっても事務局のいうような従来の仕組みの中でも何千とか何万という排出実態もあるのでそれは当然やらなければならないが、別の仕組みを抱き合わせてやっていくことを考えてもらいたい。

(A 委員)水濁法のシステム自体を将来的にどう見直していかなければならないかということの議論のスタートになるのではないか。これがそういう物質かと思っているので、現在の水濁法の枠にとらわれないでいろいろな観点から議論をスタートできればと思っている。
 そういう観点からいうと、資料6に「ナショナルミニマム」という対策が議論されているが、ナショナルミニマムの対策を考えるときに、どれだけ効果が上がっているかということが見えるような形、ないしはその進捗状況をフォローしながらミニマムのレベルを替えられるようなシステムをどう入れるかというところが大きいと思っている。
 特に、この資料の中でも施策の公平性とあるが、今のところ、対策費として事業者が自分のお金で払う形になっており、それは個人的な支出になっている。そのアンバランスが結果的に公平性の問題につながってくることもある。結局、個人に強制されてしまう施策自体が結果とどうつながっているかが見えるような形で基準や施策の方法を考えればと思っている。
 そうすることによって、質的に違うものを、全く違う対策をとらなければならないものに対しても、バランスよく考えるやり方がでてくるのではないか。

(B 委員)非常にベーシックな議論だと思う。今の話で面白いと思うのは、ある種の時系列的な中で対策と効果を見ながら次の対策。日本の今までの制度だと、枠は動かせないというのが前提であった。様子を見ながら変えていけるというその辺が非常に重要な感じがした。

(D 委員)ヨーロッパの話を聞いて、課徴金の話もいくつかの段階に分けて、考えて利用することができるのではないかと思った。つまり、下手なことをすると金を払えばやってもいいのだろうというとらえ方をされてしまう危険性が大きい。
 だから今のところ、そういう形の議論は出ていないがそれはあり得るわけだ。最低限これ以上は許さないという基準はあるはずで、それから先可能な限りもっと下げてほしいし、そこで課徴金を使って真面目に努力する人と、そうでない人との間のバランスをとってやる。
 そのときの課徴金の使い方もこの分野では、経済学者がいったような議論は通用しないと思う。つまり肥料を少なくすることによって収量が減った人は、多量に施肥をして収量を上げて儲ける人との間のバランスを欠くわけだから、そこのコンペンセーションに充てるという手法がそこで出てくるかもしれない。
 今度はもう少し深刻な現実の中で、例えば従来クリーンアップということをいっていたが、限られた地域の中で高濃度汚染があれば、10万円で浄水器を配ればクリーンアップはしない。そのための費用は課徴金から出すということもある限られた時期、限られた地域の中で緊急対策としてはあるかもしれない。
 いろいろな使い方もできるので、経済学者が温暖化のときに言っている課徴金のような考え方を余り教科書的にここに持ち込まないで、政策を構成することはできるのではないかという気がした。

(B 委員)本当にそうだと思う。どこまでその枠を広げながらこの問題を考えていくかというのは、非常に面白い課題であるが、今のようなことまで考えると、大変なことまで入ってきてしまうのではないか。そうすると、汚染とは何かとか、そういう問題まで出てくる。
 これも飲料水がもとになっているところだから、飲料水に使っていない水域はいいのではないかという話まで出てくる可能性もある。そうすると、今までの環境基準の考え方の基本的なところ、どういうことで決めるのか、それに対してどうなのかという話まで戻ってしまうから余り遡及して、過去のものが全部おかしかったとなってもまずい部分がある。
 だから、余り拡大解釈はしない方がいいが、21世紀のこういう問題をどう考えるかという非常に良いケーススタディであると思う。従って健康項目全部を見直すような、あるいは規制の仕方を見直すことまではしないが、窒素というのは非常に特別な物質ということを考えて今後は柔軟な対応をしながら、何が問題で、その被害を最小限にしながら、しかも対策もリーズナブルな範囲でできるものを使う。でも、どうしてもやらなければならないものは、やらなければならない。そういうメリハリをうまくつけるべきテーマだと思う。

(C 委員)具体的な論点として排水基準の濃度や対象物質について、アンモニア性窒素を対象にすべきというのは従来から議論が出ており、硝酸性窒素等から速やかに硝化するというのは誰も知っている。
 しかし、アンモニア性窒素というのはアミノ酸とか、低分子の有機態窒素から脱アミノ作用で速やかにアンモニア性窒素になる。  どっちが速度が速いかといえば、いい勝負だと思うぐらいなので、そういう意味からすれば、もちろんかなり分解性の悪いのもあるが、おおまかにいえば、全窒素が潜在的な硝酸性窒素等の前駆物質になると思っている。
 モニタリングなどをする上でも、ある物質だけ測るのはすごく大変。
 例えば、アンモニアはともかくとして有機態窒素でどこを測るかは、既に生活環境項目に全窒素が挙がっているのだからそれと抱き合わせればモニタリングする立場から考えても、全窒素でよいのでは。

(事務局)硝酸性窒素等が例えばトリクロロエチレンのように、もし従来の有害物質と同じであれば、全国的なナショナルミニマムとして排水規制をやる。ただ、硝酸性窒素等には前駆物質があり、非常に大きな論点になっている。土壌に撒かれた有機態窒素は、最終的には硝酸性窒素に変化するものと理解している。
 もう1点、資料にも書いてあるが従来と同じ物質であれば硝酸性窒素等をターゲットにすべき話なのかもしれないが、そういった意味で前駆物質は最大限、窒素化合物全般みたいなところがあるが、以前、環境基準の専門委員会の場で、従来、下水道はアンモニアを直接放流しないよう硝化させてきた経緯もあり、それはそれで衛生なり利水という観点では非常に有効な施策であったと思っている。
 そういったことを踏まえて、どこまで対象にするかについてご意見をいただければと思っている。

(A 委員)確かにこの物質自体の自然環境中の変化の仕方からすれば、窒素化合物全部というところまでは多分論理的にいくのだろうと思う。ただ、法律上の議論からして健康項目と排出基準の連動からすると、どこまで拡大するかは、かなり議論のあるところだと思う。先ほどの議論の中で規制としての議論もあったと思うが、例えば一つの考え方として硝酸性窒素等は一応右から左に決める。そうすると、残ったものに関しては、例えばガイドライン的な形や自主的なものでやるようなやり方もあり得るのかもしれない。
 硝酸性窒素等だと、電極法でできたが、全窒素になると、たしか値段も大分違ったと思う。今の規制でケルダールを測らせているところはかなりの数、全国的に見るとそう多くはないが必ずしも全国一般ではないから、計測の費用の点から考えてもそんなやり方もあるのではないかと思う。

(B 委員)法律上、硝酸性窒素等を決めているにもかかわらず、規制の方は全窒素だというと難しさが残るかもしれない。

D 委員)水道水源法のときはトリハロメタンの前駆物質ということでやったわけだから、因果関係さえはっきりしておけば全く無茶な議論とは言えない。
 ただ、定量的にどうやって抑えるのかということで行き詰まる可能性がある。
 全窒素は既に規制されているが、規制の目的が生活項目ということで違っており、その因果関係をどううまく説明できて、説得できるか。
 また、定量的にもある程度明らかにできるということであれば、水道水源法の方式もとれないことはないだろう。それから、ターゲットになるものははっきりと環境基準が決められている物質にしておいて、その周辺部分は別の措置を講じるということもある。中間的なやり方としては、全窒素で決めておいて、かつもう一つの括りを作って、硝酸性窒素になりやすいものを余計含んでいる全窒素とそうでない全窒素があるなら、そこは格差をつけるなど、ダブルスタンダードにすることもあるかもしれない。これはひとえに、どこまで数字できちっと説明できるのかの問題に尽きると思う。

(E 委員)今の問題に関していえば、結局窒素ということになって農業で施肥削減をやるといえば、有機物質の化学肥料も有機物質である堆肥も全く同列に窒素として扱うわけなので、水の中のことを考えると、厳密にいえばN−BODくらい。BODの中で酸素が窒素の酸化に使われる部分くらいかという気がするが、それを実際どういうふうに測定して基準にするかということはとても考えられないので、全窒素でいいのではないかという感じがする。
 その前の議論、農業に関わる部分だが今日配られたこの論点整理は基本的には賛成だ。これでいいと思うが、農業に関わる部分については今までやってきた従来的な対策では十分でない、難しいということは確かだが、環境基準が硝酸性窒素等10ppmで、排出基準がイコールということには多分なりえないだろう。排出基準が5ppm とか1ppmになったら大変な話だがそうでない限り農業の関係の対応はそんなに難しいものではないと思っている。現に、肥料をやって収量が増していくという段階はもう過ぎているし、報酬限界のプラトーに達している。
 それでも、農家はなお肥料をやる。それは保険的な意味でやっているわけだ。それが、必要がないということが分かれば、農家は金を出して肥料を買っているのだから協力は得やすい。そのために、施肥基準の見直しをやっている。でも、どうしてもそれだけではいかないわずかな部分が残るだろう。それについては、別の考え方をもっていかざる得ないだろう。

(G 委員)全体の話からいくと、今日の論点整理で議論させてもらっていいと思う。
 一つは、先ほど時系列的な考え方の導入という話があったが、これは是非お願いしたい。そういうことが法律的にできるかどうかは分からないが暫定値をおきながらという方法は前にもやったけれど、アクションとそれの効果を見ていかないと窒素というのは、とらえどころがない。それ自体の姿がくるくる変わってしまうので、そういう意味ではアンモニア性窒素を測るとか、有機態窒素を測るという話も考えるが、相手がくるくる動くのでとりあえず全窒素で抑えておくべきという感じがする。
 また、家畜の方は横軸に蛋白の給与量をとって縦軸に生産量をとると頭打ちになる。それでも、農家は今まで栄養が欠乏すれば生産性が落ちるけれど、過剰症はそんなに問題がないという方向ができている。そこのところをアミノ酸のバランスさえとってやれば、今の糞中への窒素排泄量を約3割減らせるという実験データが出ている。そういう家畜の飼い方がすぐには普及していかないが、農家にしてみれば蛋白を食わせ、量を減らすことができるから、餌代も少しは節約になる。ただ、技術の普及というのはかなり遅いものだ。
 もう一つ、出てきた糞尿の始末も今いろいろやっている最中ということもあって、先ほど話があった糞尿の法律もできているので、処理の技術もかなりしっかりしてくると思う。そういう意味から、くるくる形態の変わる窒素を抑えながら効果を見極めていくという段階がこの問題にとっては必要ではないか。

(F 委員)下水道ということではなく窒素全体のマスフローを考えると、多分、窒素は外国から入ってきていると思う。それが水系に出ていくから窒素汚染の問題になっている。それを抑えるために窒素を出さないようにするとなると、どこかにためるしかない。あるいは、インプットを減らすか脱窒で窒素ガスにして飛ばすしかない。
 窒素ガスにして飛ばすというのは、炭酸ガスの問題、地球温暖化の問題に転化されると思う。前にも言ったが下水道の場合には脱窒まで行うと、エネルギー消費量1t当たりの処理水が倍ぐらいになる。そういうことを全部含んで今ここに書いてある論点整理の方法で本当に20年、30年サステイナブルになっているのかというのが、よく見えない感じがする。逆にいうと、入ってくる窒素が今のままであると、ブレークスルーするような技術がない限りは依然、窒素汚染は広がってくるだろう。先ほど言われた富栄養化の問題というのは、まさにそういう現象が現れているのだと思う。本当の環境行政というのは、サステイナブルな方法を場合によっては国民に説明してライフスタイルを変えて下さいというところまでいかないとだめかもしれない。

(事務局)前回も議論があった窒素循環についてはどこまでこの専門委員会で踏み込めるかは別として、一つは、家畜排泄物は素堀で地下浸透させてきた。もちろん排水についても上限がなくてそれほど配慮はされてなかった。肥料についても、作物に良いと思って多めに撒いていた。全く窒素を使うなとも言えないと思うので、ある程度節度というか、そういったものは今回必要なのかと思っている。
 また、家畜の法律もできたのでそれがどこまで軌道に乗るかというのは、非常に関心のあるところだが適正な肥料としての使用とか、そういった循環的なところが軌道に乗っていけばいい。もちろん下水道の汚泥なども有効利用されているので、方向性としてどこまでサステイナブルな方向にもっていけるか分からないが、方向は全く逆ではないと理解している。

(H 委員)基本的にこの共通認識で良いと思う。それから、面源などのことも考えると全窒素で考えていかないといけないと思う。

(I 委員)この種の論点の中でポイントになっているのは2つ。一つは、健康項目という切り口から接近しているのだが、特に閉鎖性水域の窒素問題をどうするか。
 それを構造的にどう解くかというのが裏側にある。それをできればこういう機会に解いてしまいたい。
 もう一つは、今までの工業系からあったもの以外のウェートが現在確実に大きくなっていて、農業系あるいは生活系からくる部分をどうコントロールするか。それなしには問題解決しないという構造も一緒に解かなければいけない。
 それが一方でありながら、しかし、現状のアプローチで整理していくと、こういう論点になるということだろうと思う。したがって、この流れで一応進めていって問題の背景みたいなものは絶えず整理しておく必要があるかと思う。


議事 3「その他」

(事務局)次回については、6月上旬から7月中旬あたりで日程調整させていただき、別途連絡させていただきたい。