中央環境審議会水質部会海域環境基準専門委員会(第21回)
(有明海第5回)議事録 


       

1.日  時   平成12年1月18日(火)15:30〜17:00

2.場  所   通商産業省別館9階 901会議室

3.出 席 者

4.議  題

  (1)有明海の窒素・燐環境基準点の設定について
  (2)有明海の全窒素及び全燐に係る環境基準の水域類型の指定について
  (3)その他

5.配付資料

6.議  事

【事務局】 中央環境審議会水質部会第21回海域環境基準専門委員会を開催させていただく。
 本日は委員12名全員の御出席をいただいている。
 議事に先立ち、水質管理課長から御挨拶させていただく。

【水質管理課長】 (挨拶)

【事務局】 (配付資料の確認)
 それでは議事に移る。進行を委員長にお願いしたい。

【委員長】 海域環境基準専門委員会、有明海の第5回目の議論を始めさせていただく。
 議事に先立ち、資料2に前回議事録(案)が用意されているので、内容を確認いただき、修正なりコメント等があれば事務局に連絡願いたい。
 それでは、本題に入りたいと思うが、先に、前回の指摘事項を整理させていただきたいので、事務局から説明をお願いする。

【事務局】 (参考資料5と6により前回の指摘事項について説明)

【委員長】 質問があればお願いしたい。

【A委員】 参考資料6については点線部分のとおり告示を修正するということか。

【事務局】 そういう形で修正したいと考えている。

【委員長】 前回に引き続き、「有明海の窒素・燐環境基準の設定について」という議題1に入らせていただく。事務局から説明願いたい。

【事務局】 (資料3及び参考資料3、4により説明)

【委員長】 環境基準の設定については、前回議論をいただき、St. 9をどう考えるかということが議論の中心だったかと思うが、事務局で再度考え方を整理し、St. 9はあった方がよいということで、再度提案いただいたわけだが、何か質問、意見はないか。

【B委員】 もう一度確認しておきたいが、資料3の5ページで、St.9のところは、全窒素の現状水質は1.4mg/lに対し、夏季計算値と将来の夏季計算値(平成15年度)が随分差があるが、平成15年度の将来の年平均値の予測をどのように計算したのかわかりにくいので説明願いたい。

【事務局】 シミュレーションの計算は、夏季において計算を行っており、年平均値を算出するに当たり、現況の夏季と年平均値の関係を出し、その関係が将来にも当てはまるとして、将来の年平均値を将来の夏季の計算値から推定している。

【B委員】 これは比率か。

【事務局】 比率である。St. 9は、計算値と実測値がかなり乖離しており、その比率が保存され年平均値の予測値はかなり高いものになっている。

【B委員】 St. 9については、現状で差が大きすぎるのではないか。

【事務局】 ここは、澪筋の真ん中辺にあり、採水時の海域の状況によって濃度が高く出ることがある。県とも、採水には注意が必要であるということは話している。

【B委員】 まだ気にはなるが、今のようなことで結構だと思う。

【委員長】 汚れているところをあえて抜いてしまうと、という言葉もあったが、確かに流動しているところをわざわざ入れて、採水によって濃度が違うところを基準点として妥当かどうかという議論があったところだと思うが。

【B委員】 事務局の話では、それを入れて高めているというような意見であり、逆に緑川の側から見ると、水域全体に緑川を含めることで低めているというふうにもとれる。それよりは、現実的な話としてこうだと説明した方がいい。

【委員長】 場所的にも特異な点だからここは入れておかないとということか。

【事務局】 そうである。

【委員長】 特にここが議論の中心だったが、再度検討した結果、環境基準点はこの形で認めていただくことにしたい。
 議題2「有明海の全窒素及び全燐に係る環境基準の水域類型の指定について」であるが、これは、次の水質部会に専門委員会報告案として報告したいと考えているものである。事務局から説明願いたい。

【事務局】 (資料4、5、6により説明)

【委員長】 資料4、5、6で新たに変わったところはないのか。

【事務局】 変わっていない。

【委員長】 再確認ということでよいか。

【事務局】 はい。

【委員長】 前回特に議論のあった環境基準点については、再点検したということで、内容について、資料まで含めて再確認であるが意見があればお願いしたい。

【C委員】 資料5の32ページか33ページ、負荷量の推移であるが、例えば福岡県の生活系が「対策なし」と「対策あり」があるが、「対策あり」の方が悪くなるということか。

【委員長】 対策しない方がいいということか。

【A委員】 対策をやれば下水処理が増えるからか。

【C委員】 では、しない方がいいということになってしまうが。

【A委員】 窒素・燐を減らす対策ではなく、下水対策も一緒に対策になっているから、おかしい形になる。ここに書くことがちょっと気になる。

【委員長】 水質保全対策という意味であろう。脱窒・脱燐はやってないのだから、ここで言っている対策というのは、窒素除去・燐除去の対策ではなく、例えば合併処理浄化槽を推進するといったことであろう。

【C委員】 対策とは何かという解説が要るのではないか。

【委員長】 これだけを見ると、確かにおかしい。下水道をやればやるほど窒素と燐が増えるということになる。窒素・燐でみると当然そうなるが。

【C委員】 現実には意味は分かるが、表現として適切ではない。

【A委員】 有明海(イ)と(ロ)では、ノリと書いてあるが、(ニ)と(ホ)にはノリの表現がない。実際はノリの場所が出ているが、これは将来なくなることで触れていないと考えてるのか。

【事務局】 ノリ養殖の範囲は、類型Uの区分のところまではみ出しているが、ノリでも漁法が違い、水深の深いところでもできる浮き流し漁法というので湾奥部に近いところはやっている。

【A委員】 そこは窒素とか燐の濃度は低くても関係ないのか。

【事務局】 浮き流し漁法の場合は、濃度が低くても海流で常に栄養塩類が供給されることで成り立っている漁法と聞いている。

【A委員】 有明海(ニ)と(ホ)と(ハ)を分けたのは、暫定基準を設けるからこういう区分にしたのかと思ったが、それにしては、何でノリの部分も入っているのかと気になった。例えばB−4のあたりは燐の濃度がかなりきいてくる。そうすると、St−6のあたりから計算上かなり燐の負荷が大きいのがあるということになる。そういうことも含め、暫定期間が5年だが、負荷が減っていくという見通しがあるということか。
 その前からいうと、(ハ)、(ニ)、(ホ)は類型Uであり、環境基準点はこういう配置で将来的にはいいのだろうと思うが、N−10とかB−4、B−5は、水域区分線上にあり、水域区分の中央に基準点を設ける設けると何度もいっておきながら、こういう線上にあるということは、非常に暫定的なものだからこうやったと考えれば、これで構わないと思うが、それほど簡単に改善するものかと思う。

【事務局】 有明海(ホ)については、現状でかなりきれいな海域であるということで、真ん中に1点と境界線の近いところに1点設けるということで 自治体の負担もあり、必要最小限の数にしている。
 (ニ)については、むしろ中央に近いところ、K−20、N−4、HL−7といったところをおさえるようにしている。この点はいずれも浅海定線調査地点ということで、採水の便のいいところを借用している。

【A委員】 もともとあるところだから、それは仕方ないと思うが、暫定からそうでないものに移るときに、他のところでも測りながらチェックするのか、この点だけで決めていくのか。そこのところはどうするのか。別にこの場所でいけないと言っているのではないが。

【事務局】 余裕があれば、基準点も増やした方がいいとは思うが、地元自治体にとって、新設地点はすべて新たな財政負担になるということもあり、今回は若干不足ぎみではあるが、この地点数でスタートできたらと考えている。

【A委員】 将来的にはU類型になるのであれば構わないが。

【委員長】 暫定はいつ消えるのか。これは達成しないと消えないのか。

【事務局】 暫定基準は平成15年で、その時点での達成状況でまた判断することになる。

【委員長】 もし達成してなかったからまた暫定ということもあり得るのか。

【事務局】 もちろんあり得る。

【委員長】 それは5年ごとか。

【事務局】 5年ごとに再評価していくということになると思う。

【D委員】 環境基準の類型あてはめと総量規制の話とは行政として並行して出ていくわけだが、今回の案は高度処理をやらないことを肯定しているような話にならないか。つまり、行政的な矛盾のことを少し心配している。

【委員長】 これまでの東京湾等の3湾については高度処理をやって、総量規制で窒素・燐を減らそうということをやっている。有明海は、負荷が増えるということは、してないということになる。それでよいのかということか。

【D委員】 つまり、それを是認しているような方向にならないかということである。

【委員長】 窒素・燐をとらないことを肯定しているのか、という質問である。

【事務局】 高度処理をやらない下水の普及という話があったが、この海域は、し尿の海洋投棄をしている部分が今後流域内に戻り、下水処理なり他の形で処理される。あるいは農地還元されているものが浄化槽になるというものがある。その結果N、Pの負荷量増の方にきいてしまう。形式的には対策を講じたことになるが、外に全量出していたものが流域内に入ってきてしまうわけですあり、結果的にはプラスになるという面があることが、他の海域と若干状況が違うところである。

【委員長】 しかし、それはくみ取りし尿の処理でも同じである。海洋投棄でなくても、し尿処理場でほとんど完璧に処理していれば、それが浄化槽や下水道等の他の処理方法に変わるということは、負荷が増えるということになる。

【D委員】 肯定しているわけではないが、結果としてそうなるという案は、行政として並行して出すのはまずいのではないかと思う。

【委員長】 これは県か何かの事情でこういうふうにやるというのが出ているのを積み上げているわけか。

【事務局】 そうである。

【委員長】 海へ出す水については、県がまだ高度処理まで達していないということか。

【事務局】 そうである。むしろこの水域については、悪化しているというよりは、現状で水産利水にちょうど適合した水質になっており、現状を基本的には維持するような形で今回の類型指定の案もある。仮に将来、N、Pについて厳しくなってくるようなことがあれば、現時点で類型を指定しておくことによって、高度処理等も自治体が考えていく一つのきっかけになると思っている。ただ、現時点ではそこまで十分に組み込んだ対策には必ずしもなっていない。

【D委員】 環境基準が一度出ると、一般の人は、これさえ守ればいいというように、結果として数だけ出ていく。今の話のような条件のことを、例えば企業の人や面源から排出する人は考えないと思う。今のような話を発表するのだったら、少なくとも条件か、環境庁としてはこうあってほしいというようなコメントを後ろにつけていかないと、裏を理解しない人は、行政的に何かアンバランスなことをしていると思うので、そういう意味で行政的にマイナスの面があるのではないかと非常に心配している。

【委員長】 県がこれぐらいまでしかできないのを積み上げるしか環境庁としてもやりようがないのだろうとは思うが、ただ、対策をやって増えるという印象は、どう考えても、余りよくはない。

【事務局】 先ほどのような特殊事情もあり、生活系がどうしても増えてしまうというところがある。平成10年度現況、15年度予測するに当たり、積み上げられる現在予定されている対策ではたまたまそうなってしまうわけだが、施行の実施に当たっては、おかしなことにならないように自治体を指導していきたいと考えている。

【委員長】 少なくとも「対策なし」よりはイコールか下げないと、ここだけ見れば、対策しない方がいいということになってしまう。

【事務局】 そこは注で書くかどうかという問題はあるかと思う。そうはいっても、海洋投棄をそのままやった方がいいともなかなか言えない。

【E委員】 3県の海洋投棄をやっている市町村の生活排水処理計画なり廃棄物処理計画はできているのか。その上で15年は持ち込みになっているという見込みになっているのか。

【事務局】 そうである。計画があるところをカウントしてここに入れている。

【F委員】 海洋投棄は10年度ではされていたのか。

【事務局】 海洋投棄はまだ現実的に相当量ある。

【F委員】 そうすると、その全窒素・全燐の値を「対策なし」というところに積み上げることが必要なのか。

【E委員】 有明海ではなく、玄界灘の方は違う海域であるから。

【委員長】 違う海域へいっているから、有明海に入らない。今度それを入れるから、増えるのは当たり前の話。

【C委員】 非衛生的処理を衛生処理に変えたとか、系外放流が系内放流になったとか、そういう事情説明がやはり要る。さらに、将来こうであるべきだという、高度処理まで視野に置いた視点を検討すべきだとか、そういうコメントも要ると思う。これを見ただけでは、かえって一般の人が、おかしいと思う。

【E委員】 「対策なし」は、平成10年度での流域の市町村の生活排水処理計画か廃棄物処理計画に基づいてやったと。こっちのコメントでは、「対策あり」では増えないようにするための見直しか検討か何かが必要であるというコメントはやはり要るだろうと思う。

【G委員】 「対策」という言葉が悪いのだろう。N、Pに対する対策ではないのだから。

【E委員】 この対策は、極端なことをいえば、海洋投棄をやめるという対策をやるということによって、という話になってしまうので、こういうふうに増えてくる理由、背景を書いておかないとまずい。

【事務局】 そこは注書きで解説を付けたいと思う。

【B委員】 図3の負荷量の積み上げの中には、域内処理というか、海域内処理というふうなことをやるというのは、負荷量の計算に入っているのか。

【事務局】 はい。

【B委員】 では、資料3に予測した結果が出ているが、それにはそれが入っているのか。

【事務局】 入っている。

【B委員】 環境基準の案のところで理解できないのは、資料3の数値からみていくと、例えば有明海(イ)は、全燐だけに暫定目標がかかっている。これは全燐が将来予測では0.074mg/lになるが暫定目標は0.073mg/lで、0.01mg/lよくするということで、非常に微妙な、誤差範囲でないかと思うようなところで設定している。有明海(ロ)は「直ちに達成」であり、これは分かる。有明海(ハ)は、将来予測では0.043mg/lになるが暫定目標は0.042mg/lで、これも0.01mg/lよくする。そこまでは分かったが、有明海(ニ)が全窒素と全燐の両方に暫定目標をかけるということだが、この数値は資料3の将来の年平均値の予測値(H15年度)と同じ数値である。これでは暫定目標でなく、全く計算のとおりだという話。D委員の話のように、これは対策をしなくてもよいということと同じことなのか。

【D委員】 ちょっと違うが、結果としてそういうことになる。

【B委員】 その辺をもう一度説明願いたい。

【事務局】 予測値と現状が同じというのは、今説明したような特殊事情があり、対策をとった結果で、将来のプラス分とマイナス分をキャンセルして濃度が同じになっている。対策の予定されていないものをカウントして暫定基準値を作ることはできないので、現況予定されている対策を考慮に入れて暫定基準を作った結果、現状と同じ数字になったということである。

【B委員】 有明海(ロ)は「直ちに達成」だから、この水域では、結局今考えている対策しかやらないということで、やらないのだったら、(イ)が今の措置になる。何もやらなくても達成できるからこの数値をもってきたということか。一般的な努力は余りしなくてもこれで達成できるという感じの数値なのか。

【水質管理課長】 先ほどの負荷量が実は将来増えるという点を、こちらから系外放流、海洋投棄がなくなるという点を強調したので、増えている要因としてはそうであるが、「対策あり」は、総量としては増えている部分があるが、他の面では、いろいろ対策を講ずるということを前提として、結果として出てきた数字がここの地域の特殊性で高くなってしまっているということである。各県においてそれぞれ数値を出す際に、関係部局と議論してやっていると思うが、それは言われるまま、成り行きのまま負荷量を出しているということではなく、環境部局としては、できるだけ負荷量を下げるという方向で交渉して対策を進めるということでやっている。これはやむを得ないということではなく、環境部局としてとりまとめてきた成果、したがって、対策はこの暫定目標を掲げるということは確実にやってもらわないければいけない。本体の環境基準は、その先の環境基準値を今回決めているわけで、これは非常に大事なことである。その後も環境基準達成に向けて努力を傾けていくということをこの環境基準の類型あてはめは意味していることを理解いただきたい。

【事務局】 最終的な環境基準は0.3mg/lであり、暫定値を決めても、自治体には0.3mg/lに向けてあらゆる努力をしていただくということは変わりないので、努力は促進されると思う。

【B委員】 有明海(ニ)というのは、(イ)と(ロ)がかなりよくならないと環境基準は達成できないということである。他は若干影響があるかもしれないが、ほとんどが有明海(ニ)というのは、(イ)と(ロ)が影響していてこういう数字になっているということではないか。

【事務局】 有明海(イ)の海域の対策や諫早湾の流域の対策が(ニ)の海域にもきいてくると考えている。

【B委員】 有明海(イ)については燐について暫定目標を定め、そこまで対策を行い、窒素については、ほとんど現状と同じである。(ロ)については、窒素も燐も平成10年と15年の予測はほとんど同じような数値であり、有明海(ニ)というのは、暫定目標はとりあえず予測の数値だから同じ数値を入れただけで、将来に向かっての発展性がないという気がするが。

【事務局】 むしろ今回類型指定をすることによって、将来へ向けての目標が与えられ、平成15年ではプラス要因とマイナス要因にキャンセルして、現状維持がやっとという暫定目標になっているが、もう少し長期的には、類型Uの0.3mg/lを目指し対策を積み上げてもらうことになると考えている。

【委員長】 暫定目標の場合は、環境基準が適合したとは言わないのではないか。

【事務局】 そうである。

【委員長】 統計的に整理するときもそうなっているのか。

【事務局】 そうである。段階的な目標の一つのステップでしかないということである。

【委員長】 B委員、よろしいか。

【B委員】 この数値では、すっきりしないなという印象を持っている。特殊だから仕方がないのかと。特に有明海(ニ)である。現状水質を同じ数値が暫定目標に設定されていて、一つでも、少しでもいいから、低い数値であれば、それに向かって努力するのだという話になるがすっきりしない。

【委員長】 暫定目標というのは、県が努力した結果としてこうなるのであろう。

【事務局】 そうである。現時点で見込まれる対策のすべてをやった上でこういう数字になっている。

【委員長】 現時点で見込まれる努力なのか。本当はこれ以上努力してもらわなきゃいけないのだろう。

【事務局】 そうである。有明海については、今まで窒素・燐の対策は目標基準がほとんどないといったような状況なので、どちらかというと有機汚濁に対する対策をとってきている。今回の対策といっても、CODの面からみれば、平成10年に対して15年は大分減少している。ただし、窒素・燐については、今言ったような事情がある。

【委員長】 県からヒアリングをして最終的に努力したらこういう結果ですよと。だから、U類型にあてはめるわけにいかないから、暫定として、これが予測値だからこれを入れたと、こういう理解でよろしいか。

【事務局】 はい。

【B委員】 そうすると、有明海(イ)と(ハ)もそれでいいのか。

【委員長】 窒素は達成しているということか。

【事務局】 達成してる。

【B委員】 そうでなく、有明海(イ)の場合、予測値が0.074mg/lになっているが、暫定目標は0.073mg/lである。(ハ)は、予測が0.043mg/lに対し暫定目標が0.042mg/lになっている。

【事務局】 予測値が現況を超えるような場合は、現況は少なくとも悪化させないということで暫定目標は現況値に置いている。

【委員長】 そこは大事なところだと思う。

【事務局】 前回の専門委員会のときに暫定目標値の考え方を示しており、そこに2つの基本的な考え方がある。現時点で環境基準を達成していれば「直ちに達成」とするが、達成しない場合について、将来予測値が現況を下回っていれば、その値を目標値に設定する。ただし、予測値が現況をちょっとでも上回っている場合は、現状悪化を許容しないということで、現状維持を目標にするという考え方である。

【H委員】 有明海(ニ)のところで、環境基準点にHL−7を付け加えている。この地点とSt−1がすごく近いが、なぜ近いところを2つ選んでいるのかがよく分からないので、教えてもらいたい。理由は、HL−7は、なぜか知らないが、窒素・燐が随分高い濃度になっている。これをわざわざ入れることによって平均値を引き上げて、なぜそんなところが必要なのか。
 3つ目の質問は、有明海(ニ)をなぜこんなに大きく一つにしたのか。有明海(ニ)の地域、どちらかというと南半分のところ、現実に「水産1種」に相当するカニとかがとれているところと、今とれていない北半分を、クルマエビがちょっととれているようだが、なぜ一緒にするのか。分けた方が、例えば南半分は少しは環境基準の達成に近くなるようにも見える。ただ、南半分の水質が意外に悪い。その辺を教えてもらいたい。

【事務局】 海域の区分については、前回説明したが、湾口部の外海とのやりとりの多いところと、さほどでもないところという意味で、(ニ)と(ホ)に大きく括った。諫早湾のところは水深が10mになっているので、海底地形条件も違うので、別途区切ったという整理をしている。
 参考資料3の水質の図なども見ると分かるが、(イ)の海域は、全般的に同じような水質になっている。(ニ)の海域の形で大きくコンターが広がっており、そういう意味でもほぼ一体的な海域と見なしてもいいのではないかと考えている。
 湾口部との区分に当たっては、参考資料3の図2の塩分濃度の図なども参考にしながら、線を引いた。

【事務局】 HL−7については、浅海定線調査地点であるが、以前の専門委員会で、湾中央部のデータが少ないという指摘があり、平成10年度に別途調査を実施したところである。そのときの調査地点の1つがHL−7である。データとしては平成10年度のデータしかないわけだが、10年度の結果としては非常に高い濃度が出ており、予測結果と比較しても高く、この原因について検討を行ったが、今のところ原因がつかめていない状況にある。この地点は、その後も継続して調査しており、平成10年度以降についてはもう少し落ち着いた数字が出ているところである。今後、環境基準点として継続して調査していく過程で、この地点の水質の特性が分かってくると考えている。  なぜSt−1とHL−7が近接地点にあるかという理由については、この水域は、福岡県、熊本県、長崎県、佐賀県の4県が関与している水域であり、HL−7は福岡県の唯一の採水ポイントで、HL−7を除くと、この海域に福岡県は水質測定に関与しないことになることを考慮し、ぜひ入れたいという意向を持っている。

【H委員】 わざわざ妙に高い不安定な点で、しかも現にSt−1があるのに入れるというのは、論理的には余りきれいではない。行政的にはしょうがないかもしれない。それによって現在の水域、要するに平成10年度を基準に考えるときに、平均値が高くなっている。
 有明海(ニ)の水質は確かに同じように見えるが、例えば有明海(ニ)の南半分、多比良港沖、K−20ぐらいから南は今でも「水産1種」に相当する海域である。そこから上は現状では「水産1種」ではないわけであり、かつては「水産1種」だったから「水産1種」を目指す、こういう理解でいいのか。環境基準は、望ましい環境像を示すものであるので、そういうふうに理解していいか。

【事務局】 資料5の例えばカニ類の漁場を見ると、(ニ)の北部の方にもカニ篭の漁場が広がっている。そういう意味では現にこの辺は北部の方も含めて「水産1種」の水域利用が行われていると考えている。

【H委員】 その言い方をすると、ちょっと矛盾がある。というのは、今、環境基準を大幅に超えている。超えていて、「水産1種」という水利用が行われているのに、「水産1種」の水質を満たしていないことになる。現状において、本来もっとカニ、エビがとれるけれども、とれてないから目指すというふうに考えないと、環境基準がおかしいということになってしまうので、その辺は若干気になっている。

【事務局】 この水域は、例えばノリ養殖ではなく、むしろ「水産1種」に水産業が偏っている長崎県からすると、もっと水をきれいにしろという意見がある。「水産1種」の漁場を守るという立場からすれば、もう少しきれいであるべきところであると考え、U類型にしている。

【H委員】 もう一回確認するが、今の水質は間違いなく「水産1種」を満たしていない。暫定目標をつけなければならない状況にある。そのくらい悪いのに、この資料を見ると、「水産1種」の漁獲が一見あるように見える。それが若干つらい。漁獲統計をざっと見たが、この地域での漁獲統計があるわけではなく、その辺ははっきりしない。

【事務局】 「水産1種」の類型の数字を超えたから直ちに漁獲がなくなるというわけではもちろんない。

【H委員】 もちろんそうだが、暫定なんか作るから気になる。もっと別の言い方をすると、水質を測る点をもう少し実際に漁獲が行われているようなところを選べば、大分よくなって、暫定基準を設けなくてもいいことにもなるかもしれない。だから、HL−7に若干疑問を持ったのは、そんな妙なところを選んで、わざわざ高くして暫定基準を設けるというのは、本筋からずれているのではないかという気が若干している。

【事務局】 一方で、水域管理をするときに、それぞれの県がきちんと情報を把握し、水域をコントロールする必要がある。そういう意味では、佐賀県沖、福岡県沖というところにそれぞれに点を設ける必要はあるのではないかと思う。

【I委員】 質問だが、資料5の33ページ、負荷量の推移で、その他系の場合も、 10年度推定よりも15年度推定の方が、かなり大幅に増えているのもあるように感じる。しかも「対策なし」と「対策あり」で同じ数値ということは、結局、ほとんど対策しないということなのか。
 もう一つ、この資料の27ページのところに、(4)農業・畜産・養殖漁場対策というのが主にその他系になると思うが、ここには、例えばAの畜産対策では、家畜ふん尿の適正処理とか、Bの養殖漁場対策では、汚濁負荷の大きい生餌から汚濁負荷の少ない配合餌料への転換を図る。この場合の対策ということと意味合いが違うのかもしれないが、そういう措置をしようとしているのだと思うが、それでも、むしろ10年度よりも15年度の方がここの場合でも負荷量がかなり増えてしまうというのが多いというのは、どういうことなのか。

【事務局】 その他系が増える要素として、畜産の頭数が将来増えることに起因しているということである。
 もう一つの「対策なし」と「対策あり」は、畜産系については、掲げた対策によってどれだけ削減するのだという定量化ができていないということがあり、今回は基本的には同じ数字を使っている。よって、今後、仮にそういった体制が進んでくれば、これから削減される見込みはあるが、現時点においては数字としては見込んでいないということである。

【委員長】 要するに対策がないということか。

【事務局】 ここに掲げる対策の定量化が今のところできていないということである。
仮に、例えば5%、10%削減というのを見込むのは可能なのだが、それを裏付けるのもが今のところない。

【委員長】 対策をやっても定量化ができないということか。

【C委員】 この場合の「その他の対策」については、定量化できないものは削減量に見込んでいないことについて説明が要る。

【委員長】 さき程の生活排水と同じである。

【事務局】 注書きで対応したいと思う。

【委員長】 I委員、そういうわけだが、よろしいか。

【I委員】 理由は分かった。

【J委員】 有明海(ロ)で、先ほどノリ養殖が浮き流しがあって漁業形態が違うので、このような線を引いたという説明があったが、そうすると、参考資料3の例えば図5とか図6あたりのコンターを見ると、コンターはど真ん中で切れている。もし質問があったら、このあたりをどのように説明するのか。

【事務局】 これについては、何点かメルクマールがあり、1つは、ノリ漁場であるということと、ノリ漁業でも漁法が違うところは除外して考える。いわゆるノリヒビ、さおを干潟にさして漁場とする、そういった漁法に適した区域として、水深10mを一つのメルクマールにして水域の境界線を引いている。したがって、図3で見ると分かるが、10mラインも入り組んでおり、きれいに10mラインに沿っているわけではないが、概ね水深10mラインに沿って水域区分の線を引いたところである。10mより浅いところは、ノリ漁場として使われているという整理にしている。

【事務局】 水質のコンター図についは、既存のデータの得られている地点、2つの点の間を結んでおり、調査地点が密にない関係からこういうコンターになってしまう。今後、新設点のデータが得られれば、当然このコンター図は変わってくると思う。

【J委員】 海流を配慮すればそういうコンター図にはならないということでよろしいか。

【事務局】 そうである。ここについては全く海流は考慮していない。

【J委員】 とすれば、それは熊本側に行くということでよろしいか。そういう説明があればいいと思う。

【事務局】 当然のごとくもう少しずれてくると考えている。

【J委員】 資料5の27ページの養殖漁場対策というところで、配合餌料とか生餌とか放養密度とか出てくるが、有明海という水域はどの程度の魚類養殖を行っているのか。逆に非常に少ないのではないか。そういうところでこういう対策が入っているというのは適正か。

【事務局】 「有明海における目標達成のための施策」については、今回提示しましたものは、そもそも海域の窒素・燐の環境基準を設定する際に、関係6省庁で海域の窒素・燐の目標達成のための施策をとりまとめた、その文章を今回提示させていただいている。
 今後、有明海の環境基準が設定された後に、6省庁が集まり、有明海に対してどういう対策が必要かということを再度詰めて、それについてとりまとめを行って、関係自治体の方に協力を促すような形を今考えている。

【委員長】 これは前と同じか。

【事務局】 これはすべての海域で全部同じものを使っている。

【事務局】 特に養殖漁場対策にウエートがあるから挙げたというよりは、一応メニューとして挙げておいたということである。

【委員長】 環境基準点については、まだ十分に御納得いただけない部分もあるやに受け取ってはいるが、今の議論のやりとりでさらに奥深く入るほどの根拠もないようなので、ここで議論を終了することでよろしいか。

【K委員】 先ほどの「対策あり」「対策なし」の表現はどうするのか。

【事務局】 注書きをつけるということで対応する。

【委員長】 環境基準の類型あてはめについては、一応これで認めていただいたということで、「対策あり」「対策なし」の表現については、私と事務局とで相談した上で修文したい。2月8日に水質部会があり、その際この専門委員会報告を私の方から報告させていただくので、近々、注意書きについては、全委員に送るということでお願いしたい。
 有明海については、2年にわたり、非常にデータの少ない中で、各委員にも現地にも行っていただき、大変苦労をお願いしたと思う。一応これで本日の議論は終了させていただくが、本当に熱心な討論、また、長期間にわたり何かと支援をいただき感謝申し上げる。あとの手続について、事務局からお願いする。

【事務局】 この後、2月8日に水質部会を予定しており、そこで部会の答申としてまとめいただいた上で、告示の手続に入りたいと考えている。

【水質管理課長】 今後、海域についてもいろいろ見直しの議論などもあるかと思うので、専門委員会としては引き続きお願いしたい。
 いずれにしても、この有明海は非常に広いわりにデータがなかったり、測定点が少なかったりしており、また、先ほど来、負荷量についての議論があったように、若干特殊な事情を持っているところであるが、そういった中で本件の審議は2年9カ月ほどかかったということになるかと思う。
 本日も行政に対し、厳しい指摘をいただいているので、指摘のありました点を踏まえて、今後、万全を期してまいりたいと考えているので、今後とも各委員の指導、助言ををお願いしたい。これをもって閉会とさせていただきたい。

−−了−−