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中央環境審議会水質部会ダイオキシン類環境基準専門委員会(第3回)議事録


1.日  時   平成11年10月22日(金)14:00〜16:00

2.場  所   合同庁舎5号館22階 環境庁第1会議室

3.出 席 者

4.議  題

  1. ダイオキシン類の環境基準に関する他委員会の検討の進捗状況について(報告)
  2. ダイオキシン類環境基準専門委員会報告案について
  3. その他

5. 配布資料

6.議  事

【事務局】 定刻となりましたので、ただ今から第3回中央環境審議会水質部会ダイオキシン類環境基準専門委員会を開催させていただきます。それでは議事に入らせていただきます。委員長、よろしくお願いいたします。

【委員長】 お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。
  それでは早速、議事次第に従いまして議事を進めてまいりたいと思います。
  本日の委員会におきましては、ダイオキシン類の水質環境基準について、本専門委員会としての報告を取りまとめたいと思っております。ひとつよろしくお願いしたいと思います。
 早速議題に入りますが、議題の1は、「ダイオキシン類の環境基準に関する他委員会の検討の進捗状況について」ということで、事務局から御報告いただきたいと思います。

【事務局】 (資料に基づき説明)

【委員長】関連する3つの委員会、排水規制専門委員会、大気の環境基準専門委員会、土壌の専門委員会の検討状況について御説明いただきました。いずれも私どもの委員会にも非常に関連する問題でございますが、委員の先生方から何か御質問等がございましたらお願いしたいと思います。
  意見は特にございませんか。他の委員会も短期間で一生懸命やっておられるという気がいたしますけれども、特に御質問がなければ、他委員会の進捗状況は御理解いただけたものとさせていただきたいと思います。
  それでは、2番目の議題に入りたいと思いますが、これが本日のメインの議題でございまして、「専門委員会報告案について」に進みたいと思います。前回の委員会で活発な御議論をいただきまして、それ以降も事務局に御意見を寄せていただき、これらをもとに御検討いただいて報告の案を作っていただいておりますので、まず事務局の方から御説明いただきたいと思います。

【事務局】(資料に基づき説明)

【委員長】それでは、委員の先生方、何か御質問等がございましたらお願いしたいと思います。

【A委員】最終的に1pg-TEQ/lという数値は私も賛成なんですが、途中のところで少し意見を言わせていただきます。
まず最初に1ページのところで、微細粒子に含まれる形で生物に濃縮されるということが書いてあるのですが、私はこれは書かない方がいいかなという感じをしています。というのは、実際に測っているものが、本当に吸収されるような微細粒子だけであるかどうかもよく分からないし、また、測っているときのSSの濃度の高いときの水質というものが、常時そういうものと対応しているとも思えないので、これを書くとかえって難しくなるのではないかと思っております。
  それから生物濃縮係数の話ですが、ここにある生物濃縮係数というのは、私は、 5,000という生物濃縮係数で説明をした方がいいと、10,000という数値を入れない方がいいと思ったのですが、それは安全側を見て入れるということもあり得るので、そのこと自体は構いませんが、 5,000という数字を私が主張をしたのは、結局、それほどそういうような濃縮率が厳密に決まるということはまず考えられない、たとえ10年調査をしてもそんなに考えられないと思うのです。現在日本人が食べている、L委員のところでやられているトータルダイエットから日本の内海での魚の濃度と食べている量と、今環境庁が測っている水質の 0.4pg-TEQ/lとを比べると、濃縮率が 4,700となるので、 5,000という数値を出した方がいいと思います。
  それは、環境庁がやっている、非常に都市に近いところでのコイやフナの数値よりも、ともかく日本人が食べている魚の重みをかけた平均値なので、私はずっと意味が深いと思っているわけです。濃縮率というのは、魚の種類によって全然違うわけですから、どういう魚をどのくらい食べているかという情報の入った濃縮率の方がいいと思っておりまして、私はその数値を入れた方がいいと思っております。それから、この濃縮率を「生物濃縮率」と書くことには余り賛成できなくて、「見かけの生物濃縮率」とか「食習慣を踏まえた生物濃縮率」というような書き方にしてもらった方がいいと思うのです。というのは、もちろん 0.4という数値も、現状での水質の平均が 0.4だなんて思っていないのですが、一応こういう数値があるとき、こういうものとあわせる。では、海の魚をとっているところの関係はどうなるのか。それはずっと平衡係数か何か合わせていけば、ある種の値が出てきて、川の水質から近海の水質が決まっていて、その近海の水質で魚が決まっていて、こういう二段か三段か四段かの、その間の分配係数を入れていって濃縮率が決まるわけです。ですから、本当の意味の濃縮率ではないわけです。これをいわゆる学問的な意味の、例えば水槽か何かで実験をして、濃縮率が実は10万倍ですよとか、そういうようなデータと比べても困るわけですね。ですから、これは一種の食習慣を踏まえた日本の風土の中で出されている濃縮率という意味でやっていただいた方がいい。
  例えばカナダとかアメリカとかでは濃縮率は当然違うと思うんです。湖とかそういうところだけの魚が問題になるケースとはまた違うと思うんです。ですから、そこのところを少し考えていただいて、魚を食べているという現状を考慮したものである。なおかつ、それは純粋の意味の濃縮率ではないということをどこかに入れていただきたいと思います。
もう一つは、今回、底質の環境基準を作らないということはこれでいいと思いますが、一応1pg-TEQ/lというのが、SSが10ppmのときの水質で、全部が底質から来ると仮定すると、底質の基準は 100pg/gぐらいになると思うんです。多分そういう計算だったと思うのですが。私どもが調査をしているところの底質のTEQは、東京湾で40ぐらいで、霞ヶ浦で20ぐらいで、宍道湖で17ぐらいなんです。もちろんもっと高いところも当然あると思いますが、一般的なところの底質はそんなものです。これはちょっとした情報提供ですが。
最後にもう一つだけ、実は「多食者」という言葉を使わない方がいいと申し上げて、その文章を除いていただいたのですが、今御説明の中にも「多食者」という言葉があったのです。多食者というのは、水俣病以来、一つの言葉になっていて、それは大体1日に 300〜400gぐらい食べる人のことを多食者と言っていますので、そう言ってしまうと、 300や400 の人はどうなっているんだとか、 150を多食者というのは何かという議論になると思うので、ぜひ気をつけていただきたい。これでは、 300とか400 とかいうのを、ある種の魚だけ食べる人は、食習慣の改善とか、そういうことで対応するということをはっきりさせておいていただきたいと思います。現実にある種の魚をたくさん食べる人たちについては、既にダイオキシン濃度が高いということが分かっていると思いますが、そういうものはそういう食習慣を変えるということで対応するのだということをはっきりさせた方がいいのではないかと思います。

【委員長】4点ばかり御意見いただいたと思うのですが、まず、事務局としてただ今の御意見に対応してお考えがあるということでしたらお聞きしたいと思います。

【事務局】 最初の1点目については、御趣旨を踏まえて表現を工夫してみたいと思います。
  2点目の濃縮率は、食習慣を踏まえたものであって、厳密な意味で科学的な濃縮率ではないということでございましたので、これについては、6ページ目の※印のところでいろいろ根拠が書いてございますが、このあたりで、「ここでいう濃縮率とは、そういった食習慣を踏まえたものである」というような注書きを書いていきたいと思います。
  底質の件については、今後の検討の参考にさせていただきたいと考えております。
  多食者については、先生の御指摘で、このレポートの案の上からは「多食者」という表現を消したのですが、説明上申し上げてしまいましたので、今後注意したいと思います。

【委員長】 今のA委員の御意見に関連して、ほかの先生方から関連する御意見があるでしょうか。

【B委員】 今のA委員の御意見で、生物濃縮係数はまさにそのとおりで、これは必ずしも水溶解態だけではなく、粒子状も含めて −どういう粒子状か分かりませんが− 総体を見ていますので、実験から求めるというのがそのまま使えないというのは、そのとおりだろうと思います。ですから、言葉としてはどういう言葉がいいのか。「見かけの」というのが一番よろしいのかなと思いますので、「見かけの生物濃縮係数」という言葉を使ったらいかがかと思います。
  ただ、生物濃縮係数の 5,000倍を使うか10,000倍を使うかというところなんですが、私は、平均的には、A委員が言うように、食生活を踏まえて 5,000倍という形なんですが、それより超えている人は食生活を改善してというのは、どこら辺の範囲までかという話が多分議論としてあるわけですね。これは魚を食べる量だけではなくて、どういう魚を食べているか、好みの問題があります。もちろんそれも食生活の改善ということで対応していくのでしょうけれども、そこにはある程度幅が出てくるだろうということを考えると、一律に平均の 5,000でいいというのは少し厳しすぎるのかなと。もう少し安全サイドを見ておく必要があるのではないか。それがどのくらい見るのかというのは、今の段階でまだ情報がほとんどないわけですから、仮にPCBのときの10,000をとったというのは、それなりに論理があるのではないかと思っています。そういう意味で最後のところで、そこら辺のところは今後知見を集積して見直しをしましょうということでよろしいのではないかと考えております。

【C委員】 生物濃縮係数の議論ですが、PCBで10,000と決められた折りには、一応実験室内のデータを基にして、エディブルパートというのでしょうか、食用部分の濃縮係数で、 8,000ぐらいだったと思いますけれども、安全率を見込んで10,000となったのではないかと思うのです。
この実験で求めた値、PCBそのものも多くの物質の混合物でありますし、ダイオキシンについての定義ですが、今、A委員とかB委員の意見そっくりそのままでいいのかどうかというと、PCBのことを書かなければそれはそれでいいのかなと思うのですが、その辺の事務局の御意見を伺いたいと思うのですが。

【水質管理課長】 今の御質問は、PCBの場合は本当の濃縮率だという意味でしょうか。

【C委員】 はい。

【水質管理課長】 B委員に伺いたいのですが、「見かけ上の濃縮率」と言われたのは、例えば全国平均の水と生物の濃度を割算して出てきたことを言っておられるわけですね。C委員は、PCBについては見かけ上の濃縮率ではないんだということですね。では、先ほどおっしゃられたように、注釈を書く場所に留意するということでよろしいでしょうか。

【B委員】 多分、報告書の5ページのところに書いてある生物濃縮係数を10,000倍、5,000 倍の2通りにするというところは、「見かけの」と言っておいた方がいいと思うんです。実際に後ろの方の部分で、PCBのところについては見かけでないというのはそのとおりですが、ここは「見かけの」というので統一しておかないとおかしくなりますので。

【D委員】 濃縮率の件ですが、先ほど説明がありませんでしたが、報告書案の一番最後のページに濃縮係数の一覧表が整理されております。確かにダイオキシンの場合は、御承知のように、ここに掲げられているだけでも、これだけの異性体によって濃縮係数は、実験的に出しますと大きな幅がございます。現在ここで議論していますのは、これをなおかつ、TEQを算出するのに用いた異性体といいましょうか、それに関連する異性体を全て合わせた総合的な濃縮率が実は欲しいわけです。そうなりますと、実際に実験結果からそれを出すのは非常に理論的に難しいわけで、先ほどから議論をしていますように、何かの環境の実測データから大まかな値を類推するという方向しか現在のところでは知見がないのではないだろうか。そこで私は、この考え方でよろしいのではないかと思います。

【委員長】 ありがとうございました。ほかの観点からございますか。

【E委員】 生物濃縮のことではございませんが、いくつか確認させていただきたいのです。5ページの下から3行目の、公共用水域の水質濃度の全国平均が 0.4pg-TEQ/l、この数字は、単純に各測定点での値を足して、それを測定点の数で割ったという単純な算術平均ですね。

【事務局】 そうです。

【E委員】 そうすると、今度それを現在水質濃度が1pgを超えた全ての事例を1以下に1に換算して計算しているのですね。

【事務局】 そうです。

【E委員】 そうしますと、「0.27pg-TEQ/l」となるということですが、「0.27pg-TEQ/l以下」と、「以下」を入れた方が正しいですね。

【事務局】 はい。実際は分布が低い方にシフトしますので、0.27よりは低くなると思います。

【委員長】 ありがとうございます。ほかに何か御意見がございますか。

【F委員】 4ページの「底質の環境基準」という中で、ダイオキシンは蓄積場所として、土壌と底質にほとんどたまってくるわけですね。そのときに底質というのは、一方では生物濃縮というものに関わってきます。そういう意味で底質の汚染は、魚介類の汚染につながっていく要素になっているわけです。このような意味合いのことがここには書かれていません。一つは非常に大きなストック源になっているということ。それに対して、危険な濃度と思われるものに早く環境基準を作って、対処できるものは対処していくというような趣旨のことをここには入れておく必要があるのではないかと思います。

【事務局】 今の点につきましては、先ほどの説明で飛ばしたのですが、4ページの(3) のiii)で、「底質のダイオキシン類は、水中への溶出あるいは底質を摂取する底生生物を通して魚介類に移行・蓄積されるが、その機構は明らかではない」ということで、底質からの移行というものも一応、簡単ではございますが説明を入れたつもりでございます。

【F委員】 私が言っておりますのは、底質の濃度と量、水の濃度と量を掛け合わせた量を算出していくとダイオキシンが発生源から出てきて、現在環境にたまっている絶対的な存在量は、底質と土壌が非常に大きな値になってくるわけですね。そういう意味合いのことで、確かに底質から水質への移行ということは当然考えられるわけですが、底質に非常に高い濃度であった場合には、生物汚染に極めて大きな影響を及ぼしてくる、そういう意味合いになってくると思います。ものすごく蓄積量は大きいということ、それを踏まえた対策の基準値を早く作っていくということが必要ではないかと思うわけです。

【A委員】 底質について、すぐに環境基準を作って除去するということが本当に可能なのかどうか分かりませんが、これが非常に重要であり、今後、十分調査した後、対策が必要であるということは、F委員の言われるように、どこかに加えた方がいいのではないかと私も思います。

【委員長】 ほかに関連して御意見ございませんか。
  では、ただ今のお二人の御意見に対して事務局から。

【事務局】 それでは、4ページ目の底質環境基準の記述のところに、底質にダイオキシン類がストックされることを考慮すると、底質環境基準の設定が重要であるという記述を入れたいと思います。

【委員長】 ほかにございますか。

【G委員】 質問とコメントです。非常に単純なことですが、私遅れてきましたので、御説明にあったのかもしれませんが、平成11年度、水質だけでなくて今調査をやっていらっしゃいますけれども、ここの1ページのところでも、10年度の結果がデータとしてなってきているわけですが、現在、平成11年度、非常に急いでやっておられるわけですから、まだ結果は出ていないのは承知しているわけですけれども、10年度と比べたときの現在での傾向とか、そのあたり、調査のことはどこかに書いてあるのかどうかというのが一つ。
  もう一つは、3ページ 3の「飲用水としての利用を考慮する方式について」のところで、これは全くの質問なんですが、「比較的高濃度に汚染された水域の存在も考慮し、」とありますが、具体的に飲用水の水源として使っているようなところで、比較的高濃度といっても、どのあたりかよく分かりませんけれども、汚染された水域というのがどの程度、もちろんここに書いていただく必要はないと思いますが、知識として教えていただきたいのですが、どのくらいの割合であるのかということがもし分かりましたら教えていただきたいと思います。   もう一つ、6ページの「環境基準の値」というところの※印のところで、計算の根拠がずっと書いてあります。例えば真ん中のポツ、「魚介類を平均の 1.5倍量摂取している人……」と書いてありますが、このあたりで35pgになるとか、あるいは 100pgになるとか、よく読んで計算していけば分かると思うのですが、簡単な計算式でも書いておいていただいた方が分かりやすいのかなと、ここだけではございませんけれども、そういう感じを持っております。以上です。

【水質管理課長】 まず平成11年度の調査結果ですが、非常に検体数が多うございまして、実は採水のときに海が荒れて遅れたとか、そういうことがございます。実際の今の進捗状況ですが、せめて水質だけでも欲しいと思ったのですが、 500地点を測っていますが、今データ、私の手元に来ているので 300くらいの範囲です。それだけでも出せばいいのですが、東京の周辺とか大阪の周辺とかが欠けておりまして、その状態で出すとかえってミスリードする危険があります。残念ながら、利用することができないという状況でございまして、その辺は御了解願いたいと思います。

【委員長】 今後の見通しはどうですか。

【水質管理課長】 水質だけでもできるだけ早くやりたいと思っていますが。御案内のとおり底質とか生物もやっておりますので、本当にデータが出るのは年明けになってしまうかもしれないという感じです。もちろん今後、知見の充実を図る必要がございまして、その第一弾といいますか、当然その中に入ってまいります。先生方には提供いたしますし、また今後、再度議論されるときには当然その基礎データとして使っていただくということになると思います。

【事務局】3ページ目の「比較的高濃度」ということですが、ここでは平成10年度の全国調査データに基づいていろいろなデータが出ておりますが、相対的に高濃度なところということを、漠然と示しております。具体的にどこから高濃度かというのは、環境基準値がここで提案されて明らかになるのですが、例えば1pg-TEQ/lと比べると、地下水でも5pg-TEQ/lぐらいのところがあるというようなことも念頭に置いた記述でございます。
もう1点、簡単な計算式ということでございますが、本文中に余り書くとかえって分かりにくくなるということもございますので、参考資料に付けられるかどうかということを検討してみたいと思います。

【F委員】現在、水質の調査をされているのですが、本日、通産省の会議で、クロスチェックした値が非常に違うものがありまして、水の分析にはいくつか問題があるように思います。クロスチェックの極端な例では、2カ所で 1,000倍ぐらい違っているとか、 300倍ぐらい違っているのがあります。今回行われている調査の中では、いくつかクロスチェックを含めておられるのでしょうか。

【事務局】 平成10年度の全国調査では、まず測定機関の監査といいますか、分析体制等をチェックして確認しております。また、平成10年度の発表データに付いておりますけれども、統一試料の分析などをしていただいて、チェックしております。

【H委員】 F委員の意見にも少し関連するかもしれませんが、結局、水質の基準は1pg-TEQ/lにせざるを得なかったというところは、先ほどから議論が出ていますように、生物濃縮の値が非常に曖昧だということだと思うんです。
8ページの「今後の課題」のところに、「生物濃縮の知見を収集する」ということが書いてあるのですが、リーズナブルな生物濃縮を求める、そういう努力を実験系でする。あるいは飼育してやるやり方もあるかもしれませんし、あるいはHPLCを使ってやるようなやり方もあるかもしれません。あらゆるやり方を駆使して、何とかこの生物濃縮係数を求めてみようという作業をやるということも盛り込んでいただければと思います。また、F委員が言われたように、水の分析の精度が非常に悪いために、いろんな関係が曖昧になっているということもありますので、今後の調査の中では、水質の非常に精度のよい分析をやって、正しいデータを出すという努力をするということもこの中には盛り込んでほしいという気がいたします。
  もう1つは、水質基準を出すに当たって3つの方法・手続を踏んで出したわけですが、結果的には1pg-TEQ/lという数字になったわけです。恐らく一般社会の批判として、甘い値になったという批判があるのではないかという気がいたします。それで、そこのところの対応を環境庁の側としてちゃんとやっておかないといけないだろうという気がしますので、そこのところも十分よろしく御審議をいただければという気がします。

【委員長】 ありがとうございました。対応の仕方、いかがですか。

【事務局】 実験については、実は事前に各先生方と御相談したときに、そういうことも必要だなという話もございましたが、「今後の課題」の中では、 3の中の「等の知見を集積する」というところで、実験も含めて考えたいと考えております。明示するにはまだどんな形で、どのくらいでできるかというのがはっきり分からないものですから、ここでは、一応、実験を行うということも頭に置いて 3の文章を書いているというふうに御理解いただければありがたいと思っております。
  それから、水質データを正しくということにつきましては、7ページの「また、」以下のところで、今のような御指摘がございまして、「精度管理を徹底し、」ということをここで入念的に書いているところでございます。

【F委員】 7ページの一番下のところに※印が書いてありますが、上の※印のところで「1997年に提案されたもの※」、下のところで「1998年のEnvironmental Health Perspectiveに掲載されたもの。」というので、表現が一定していません。Environmental Health Perspective の方はボリュームとページ数を入れるべきであって、正式にはここに掲載されているというような書き方にしないと、同じような表現で出てきますので、混乱するのではないかと思います。

【B委員】 今、F委員が言われたところは、環境庁のほかのところでも同じようなことを使っていて、表現ぶりが多分統一されるのだろうと思いますので、そこは統一していただく必要があるだろうというのが一つ。
それから7ページの「達成期間の考え方」のところの、「可及的速やかにその達成維持に努める」の後の「等」というのは、この意味合いは何であるのかをお聞かせ願いたいのが一つ。
もう一つ、4ページの(3)のiii)のところで、底質のダイオキシンが魚介類に移行するが、その機構が分からないと書いて、大きく取り上げているのですが、それに対応して、「今後の課題」の中に、明示的にはそこら辺のところの知見の集積に努めるというところがないので、できれば表に出して、 4のところにでも加えておいたらどうでしょうか。いろんな数字を求めてきても、そこら辺のところがどう考えたらいいのか、結論が出るのかどうか分かりませんけれども、少し知見を集めてみる必要があるのではないかと思っていますので、できれば 4のところにでも、「底質中のダイオキシン類の魚介類への移行に係る知見の集積」というようなことを入れておいていただいた方がよろしいかと思います。

【水質管理課長】 わかりました。そのようにいたします。

【事務局】 先ほどの7ページの下の表記については、現在、統一表記を関係の専門委員会の担当と相談しているところでございますので、そういう形で対応したいと思います。

【B委員】 「達成期間」のところの「等」は何を意味するのか。ある程度意味があるものであれば残しておいた方がいいと思うのですが、余り想定されていないのなら、むやみにこういうものは残しておかない方が適切かと思いますので。

【水質管理課長】 この達成期間については、環境基準は、大気・水・土壌と一体化して規定していく必要があると思います。その点がありまして、ここでは、今までみたいに「直ちに達成」とすることはできず、「可及的速やか」というようなことになると思います。この段階で確定しきれないので、そういった方向性を示そうということで、「等」が奇想天外なものを考えているということではないということを議事録に残して御了解いただければと思います。

【E委員】 先ほどのH委員からの御質問と重複するのですが、確認したいのです。1pg-TEQ/lというのは、健康影響を考慮して対応し得る量ということですね。このままですと、せっかく平均が0.4pg であって、もし高いところを1pgに抑えられれば、0.27以下になるというような日本の現状なのに、1pgまで許してしまうというようなニュアンスにもとれるんです。そこのところ、どういうお考えなのかお聞かせ下さい。

【水質管理課長】 それはダイオキシンのみならず、水質の環境基準の一般的な宿命みたいなところがあると思いますが、他のものも、検出されないことというのが一部ありますけれども、数値のあるものは何とか以下ということになりますので、ある程度数字の表記上は仕方ないということと、あくまでも実際の対策としては、超えているところに着目したいろんな対策がとられていきますので、その結果としては、その周辺の下流域などについても負荷量は減っていくということで、ここはそういうものであるというふうに御理解いただければと思うのですが。

【E委員】 例えば、今まで 0.3だったのが 0.8になったという場合には、まだ基準値以下だから行政的な対応は全然必要ないということになるわけですか。

【水質管理課長】 測定値がたまたまそうなったというときに、ある程度環境基準で判定するというルールからすると、そこを取り立てて直接に何かするということは、率直に言って難しいと思います。ただ、例えば、ある水域の濃度が不自然に上昇しつつあるということは、将来的には1pg-TEQ/lを超えてしまう予兆かもしれないということがあると思いますから、それは現れ方によると思いますけれども、監視している中で、そういった異常な事態があれば、行政的には注意を払うべきものであろうと思います。

【I委員】 今、何回か話題に出ている「1」の受ける印象に関することをちょっと申し上げたいのですが、恐らく似たような視点から、1pg-TEQ/lと濃縮率 5,000倍みたいなものから、極めて短絡的に摂取量が4pgを超えてしまう、そういう計算をされる方もいるかと思うんです。そういう魚を100g食べれば、体重1kg当たり「4」を超えますので。そういう観点というのは、今のこの議論は、均一化されて平均的な魚を食べていて、平均的な汚染は0.4 とか0.27になる。だから、濃縮率 5,000倍であっても、基準が1pg-TEQ/lであっても、国民の平均としては安全ですよという論理になっているということを、ここに書き込む必要はないのですが、極めて注意して説明しないと、「1は緩すぎる。濃縮率 5,000で1ではだめじゃないか」とすぐに言われてしまうではないかという印象を私も持っています。
  そういう観点に立って、2つほど気になっていることがありまして、恐らく今言った議論は、魚の流通の偏りというのがどうしてもあるわけですね。要するに、高濃度汚染魚が売られている地域で、それをどうしても食べてしまう場合のような話です。ですか ら、後ろの方の「今後の課題」で、一応「等」が付いていますので、入っているのだと思いますが、摂取パターンのほかに流通の偏りみたいなものをある程度把握しないと、少々汚れていても大丈夫ですよという意味での上限値というのは決められない。要するに濃縮係数から環境基準を考えていった場合には、将来の課題として対応できないところが残ってしまうだろうというようなことも、入っているのだということであれば構いませんが、気にはなります。

【事務局】 「今後の課題」の知見の収集の一つの項目としてそういった視点も必要であるというふうには考えております。

【委員長】 非常に大事なことかと思いますが、これは文言の上で修正できるかどうかということは急遽検討しないといけませんけれども、一応御発言の趣旨は理解されたということと考えたいと思います。

【J委員】 議論が戻って申し訳ないのですが、先ほどE委員から御指摘があったところですが、私自身も5ページの下4行から次の6ページの1行目の記述はかねて気にはなっておりました。それで、今もずっと考えていたのですが、一番気になりますのは、1という基準値が決まれば、1以上のところはカットされるというふうに考えられますから、そのことによって結果的に平均的な濃度は0.27なり0.27以下になる。ここのところなんです。ここのところはなくてもいいのではないか。むしろない方が議論がすっきりするのではないかと思うんです。例えば、そのときに1になるとは限らないですし、1以下になることも当然あるわけです。そうでなければ困るわけですが。ほかのところも場合によって、対策をとれば、平均的にはもっと下がるかもしれませんし、どうなるか分からないですよね。
  ここでもともと趣旨として述べたかったのは、一つは全国平均として 0.4だと。この辺の数字が0.27あるいは0.54あるいは1、この辺の数字と比べてコンパラブルだというふうなことがあると思うんです。今度1で切った場合にどうなるかというのは、別の議論になりますし、私は、ここまで踏み込まなくてもいいのではないかという感じがするのですが、いかがでしょうか。これはほかの方の御意見も伺いたいと思います。

【B委員】 ここをすっぱり切ってしまうと、単純にいって数字は 0.5になるんだと思うんです。比較するものが、飲料水の方からいくと1pgという数字があって、生物濃縮の方からいったら、0.54か0.27かどっちをとるかという話になる。そうなると必然的に安全サイドを見るという考え方でいけば、 0.5にすべきだろう。そういう判断はひとつあると思いますけれども、今、J委員が言われた部分を削ってしまうとそういう結論になるのではないかと私は思うのですが。

【J委員】 もしかしたらそうなるかもしれないのですが、ただ、この0.27という数字は、結果的に1を基準にしたときに0.27になります。ですから、 0.5より大きい数字だって残るわけですし。

【水質管理課長】 この点は確認したいのですが、審議の最初の段階で、まず飲用水の観点から数字が出るということを申し上げたときに、当委員会から、魚を全く無視するというのはいかがなものかと指摘がありました。それで何らか補足的にでも1pg-TEQ/lを証明するということができないだろうかということで種々御議論をいただいて、ぴたっとは出ないのですが、今全国にある水質分布の中で、非常に機械的ですけれども1pg-TEQ/lというもので落としてみた場合に、期待される平均濃度が魚の方から導かれてきた幅のあるものとどう対応刷るかを見て検証しよう、そういう議論の流れで検討してきたものであると理解しております。ですから、この検証は、ある意味で1pg-TEQ/lというものの意味合いを生物濃縮なり水質の実態の方から見てみようと、そういう目的でございますので、1pg-TEQ/lとの対比で議論するということが必要ではないだろうか。それがこの委員会での議論だったのではないかと思いますが。

【A委員】 J委員が言われているけれども、私は0.27を残した方がいいという考えなんです。というのは、もしそれを書かないと、先ほどI委員が言われたように、1 pgで、平均値も1pgになっちゃうというような感じの計算が先行するのではないか。1にしたときに平均が0.27に下がるという印象はみんななくなってしまうのではないかとむしろ心配しているんです。だから、ここのところは本当は、0.27よりもいろんな分布を考えたもうちょっと違った推定があってもいいと思うのですが、それは余り望まないとして、これは非常に必要と私は思っているのですが。

【委員長】 今問題になっているところは、5ページ 2の、生物濃縮の観点から検証してみよう、評価してみようという観点で書かれているので、あるいは管理課長が言われた趣旨のもとで書かれている文章だと理解した上で、それで問題あるかどうかということになろうかと思いますので、そういった点を踏まえれば、J委員どうでしょうか。

【J委員】 私自身は、これはあくまでも結果論ですから、基準というのは、結果がどうなるかということで決めるのではなくて、これ以上であっては具合が悪い、これ以下であれば一応許容できるという判断で数字を決めるわけですから、1に決めれば、その結果1以上のものがカットされて、結果的にこういうふうになりますよ、この数字は10,000倍の数字でもコンパラブルなところにきていますよというのは、若干エクスキューズになるかなという感じがするのですが。これは私ももう少し考えてみますけれども。

【F委員】 私自身は、この0.27という濃度は非常に重要な意味を持ってきますので、考え方はこれでいいと思います。しかし、まず1点目については、濃縮係数を 1,0000倍、 5,000倍と明確に記述されていることです。今までの議論の中でも、この濃縮率は明確なものではなく、おおよそこの程度に見てみたらということですね。その根拠としては、PCBの値とか、濃縮率を参考にして考えると、おおよそこのようになるということですね。従ってここは明確に書く必要はなくて、おおよそこの程度もってこれるのではないかと認識する方がよいと思います。
  2点目については、全国平均が0.4であるが、1pgを基準値に設定し、1pg以上のものがなくなれば、平均値が0.27pgになるという記述内容は、一般的には理解しにくいと思います。現在の平均値が0.4pgで、1pgを超える頻度がこの程度あるので、1pg以上のものがなくなれば、平均が0.27pgになるという意味が、この記載内容からでは理解できません。従って、平均、最大、最小を記載し、1pgよりも高い濃度のところがあるということを明示しておくことが必要です。参考資料を掲載するとともに、このような累積頻度であるため、1pgに基準値を設定した場合、1pg以上がなくなるので、平均値が0.27pgになるというような記載内容にすべきだと思います。

【K委員】 私もまさに今F委員がおっしゃられたことと同じことを希望として申し上げたかったんです。それは単に最大、最小という記述のみではなくて、平成11年度の調査結果は間に合わないということは先ほど理解しましたので、平成10年度の、1ページに書かれている平均濃度は、総検体数いくらで、その濃度分布がどうだということを参考資料の方にはっきり明示していただいた方が私はいいと思います。そうしないと、今の水質の見通しに関しても、ある種の視覚をもってイメージできないところがございます。
  もう一点重要だなと思って考えておりましたのが底質の方なんですが、先ほどA委員は、かなり明確に、仮に水が1pg-TEQ/lで、これはSS10ppmとすると 100pg-TEQ/gになるという見通しを立てられたわけですけれども、今回これを見送る限りは、今のレベルが一体どのような濃度分布にあるのかということも参考資料として基本的に読み取るべきだと思うのです。もちろんほかで調査されて報告されているから、それ見てくれたら結構ですよというのも十分意味として分かるのですけれども、これは今回の専門委員会報告の中で完結させるべきではないかと思います。
  一方、PCBの方が、例の魚の3ppmに対して、底質の除去基準はたしか10ppmと決められていると思うのですが、これは両者の超過確率20%で魚3ppmを超えるもの、その濃度以上を底質の除去基準と定められているわけでして、実はこれをTEQ換算等、種々の仮定でやっていきますと、先ほどA委員が言われたようなレベルと余り齟齬のないようなところにくるのではないかというような見通しもあるように思うのですが、そういうことを今後検討するための材料という意味でも、平成10年度の一斉調査の濃度分布を底質なり水なり、ここに書かれているメディアごとにちゃんと書いた方がいいのではないかと思います。

【事務局】 ただ今の点でございますが、平成10年度の一斉調査の資料に、ヒストグラムが出ておりますので、それを参考資料に添付したいと思います。

【委員長】 いろいろ意見をいただいておりますが、この辺で終わりにしたいと思います。  私の感じでは、いただきました多くの貴重な意見のうち、大半につきましては、文言を注意して変えるということで解決がつくということは、この席の皆さん方の了解があるものと思います。ただ、慎重に扱わないといけない課題もあるわけでして、そのうちの一つが濃縮率の問題、それからただ今出ているような1pgの与える印象についてといったこと、それから多少未解決のまま終わってしまいますが、J委員の考え方の整理といったことがございます。
  要は、濃縮率そのものの知見が非常に少なくて、調査も少ないし、いろいろ考えてもなかなか科学的にはっきりとした結論が出ないというところに問題があるわけですね。そういったことは「今後の課題」というところ辺でしっかりと反映させるような文章を一応作っていただいておりますけれども、そういう形で整理させていただくことになろうかと思います。
 そこで、いただきました御意見を基に、多少とも意見の食い違う点につきましては、ここでいただいた多くの委員の意見の中の対応点を十分検討した上で修正すべきだと考えまして、それも含めて、修文につきまして、私、委員長にお預けいただけないかと思います。
  そういうことで、それも含めまして、一応このまとめの案につきまして、大方の点でご理解いただけたというふうに判断してよろしゅうございますか。

 (異議なし)

  ありがとうございます。それでは、修文等についての扱い方は、今私が申したとおりで進めさせていただきたいと思います。
  しかしながら、宿題を残した形でのまとめでありまして、一つは、底質の問題が未解決のまま今後の課題に残っていくという点も踏まえていただかないといけないと思いますし、濃縮率に関する生物関係の調査を今後どういうふうに進めるかということも課題になっているわけでございます。そういう点につきましては、今後見直していくということが必ず必要になってまいります。これが仮に一次案ということで出ていきましても、もう一度見直しがあるということで、また委員の先生方にはこのような御協力をいただかないといけないと思いますので、ひとつ御理解いただきたいと思います。
  非常に短期間に密度の高い御議論をいただきまして、重ねてここで委員の先生方にお礼を申し上げたいと思います。
  それでは、今後の扱い方等につきまして、事務局からも御説明があろうかと思いますので、よろしくお願いします。

【水質管理課長】 本日は、専門委員会報告について御熱心な御議論をいただき、方向性を出していただきまして、誠にありがとうございました。
  この報告案につきましては、冒頭も申し上げましたけれども、11月2日に水質部会がございますので、そこに提出いたしまして、その審議を経た後、パブリックコメントの手続を経て、12月上旬を目途に中環審としての最終答申となることが予定されております。
  ここで各委員の先生方に申し上げますが、この3ヵ月ほどで、委員会そのものは3回だけでございましたが、その途中で電話・ファックスその他の手段でいろいろ専門のお立場から御指導、御助言をいただきましたことを事務局としてお礼を申し上げたいと思います。
  また、委員長もおっしゃられましたとおり、非常に重たい宿題がまだ残っておりまして、今も御議論のありました生物濃縮の点とか、底質の問題は、私どもとしても重要な宿題であると考えております。事務局としては引き続き所要の調査、知見の集積を図り、またこの審議会に提供するということで、引き続きこれらの点について御審議をお願いしたいと思っております。引き続きよろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

−−了−−