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中央環境審議会水質部会ダイオキシン類環境基準専門委員会(第2回)議事録


1.日  時   平成11年9月28日(火)10:00〜12:00

2.出 席 者

3.議  題

4.配付資料


5.議  事

【事務局】 定刻となりましたので、ただ今から中央環境審議会水質部会ダイオキシン類環境基準専門委員会の第2回を開会いたします。

【委員長】 それでは、議題に沿いまして審議を進めたいと思います。
  本日は、ダイオキシン類の水質環境基準の設定に当たっての基本的考え方について御意見を主としていただくということを考えております。
  それでは議題の1でございますが、まず、事務局より、ダイオキシンに関連する他の委員会、土壌、大気のダイオキシン類の環境基準専門委員会の審議の進捗状況をお聞きしたいと思います。

【水質管理課長】 前回の委員会で委員長から他の環境基準の進捗状況について適宜報告するように御指示がありましたので、今日は、関係する大気と土壌のそれぞれの専門委員会の検討状況について、それぞれ担当局の担当者から簡単に説明させていただきます。
  なお、両委員会ともまだ審議は始まったばかりの状況でありますので、まだ不確定の要素がございます。

【大気保全局企画課】(参考資料1について説明)

【土壌農薬課】(参考資料1について説明)

【委員長】 それでは、ただ今の説明に対して、何か御意見等ございますか。
  特段の御意見がないようですので、議題の2に入りたいと思います。議題の2は「ダイオキシン類の水質環境基準の設定の考え方について」でございます。これが本日のメインの議題になろうかと思いますので、十分御検討いただきたいと思います。それでは、まず事務局から資料に沿って御説明いただきたいと思います。

【事務局】 (資料2に沿って説明)

【委員長】 ただ今事務局から、基準設定に関して、多くの調査事例を基にその考え方を御説明いただき、かつ推定を行い試算された結果を御説明いただきました。それでは、専門委員の先生方からただ今の御説明に対して御意見を伺いたいと思います。いかがですか。

【A委員】 基準設定の考え方の根拠の一つということで、飲料水のことを考慮した場合ということで整理していただいておりますが、特にこの中の考え方、具体的には2ページの一番上の(2)とか、3ページの4の「水質環境基準の試案」の(1)あたりのことなんですが、私自身、それから厚生省の水道担当ともこれまでいろいろ御相談にあずからせていただきまして、ある程度非公式にですが、我々の方からの意見も事前に申し上げさせていただいております。そういったことをある程度踏まえて、案をお作りいただいておりますので、基本的には、特に飲用水という点に関しては、厚生省という立場で申し上げるのですが、大きな異存はございません。
  ただ、何度もいろいろな場でくどくど申し上げているのですが、非常に気になるのは、実態として飲み水からのダイオキシンの摂取量は非常に少ないですね。御説明はまだありませんでしたが、参考資料3にもそういうデータは出ております。こういったことは、水道の方のこれまでの限られた調査からもある程度確認ができておりますし、また、今、追加の調査もやっております。いずれにしても、水道あるいは飲み水からのコントリビューションというのは非常に限られておりますので、そういったものを根拠に水についての環境基準を決めるというのは、本来あるべき方法では必ずしもないのではないか。次善の策ということで理解すべきではないかと思っております。ですから、結果については、こんなものかなと考えておりますが、あくまでもターゲットになるのは食品であり、その中の特に魚の摂取だとお考えいただきたいと思います。また、最終的にどういうふうに結果がまとまって公表されることになるにせよ、そういったことを重々踏まえた形で表に出すようにしていただけるとありがたいと思っております。

【B委員】 水道水を表に出して基準値を作るということは、説得力がないと思いますし、多くの人の問題をそらすという小手先の議論だというふうに受け取られると思います。もちろん、魚類というものを正面に出して基準値を決めるということが、そもそもTDIが決められたいきさつからして、問題があるということは現実問題として承知しておりますけれども、やはり私は、魚類のことをきちっと書いて、あるいは2本立てで並列で説明根拠を出すのがいいかと思います。
  先ほどから出ております、相関があるかないか、生物濃縮率がどの程度かというようなことですが、コプラナーPCBもダイオキシンも全部一緒にしてしまっていますし、何しろダイオキシンだけでも分子量が倍に近いものを一緒くたにしてTEQで濃縮率をとって出るわけがないということと、水については、このような特殊なものについて環境基準を設定するときに、SSを規制したらどうかと思っているんです。SS10mg/l以下のものについての環境基準という形にしないと、濁質が流れ込んだみたいなときの水の水質を測っても、意味がないのではないかと思って、いろいろな意味で相関が悪いのは当たり前だと思います。
  もう1つは、いずれにしろ、現実問題として値頃感みたいなものがあるわけですから、必ずしも正確な濃縮率が分からなくても、大体の見当でやるということで、例えば水銀の場合に 800という濃縮率でやっていますし、PCBの場合10,000でしたか、それも根拠がそれほどあったわけではないと思いますので、そこのところはもう少し考えて、魚をきちっととらえてやる。
  それから、多食者のこととか何かももうちょっと別の取扱いをするようにしたらどうかと思います。例えば、もちろん通常の意味で基準値を決めるときには、そういう多食者の幅も考えて、その中で基準値を決めなければいけないわけですが、もともとTDIが日本人の平均摂取量とすれすれのところで決めざるを得ないという現実できているわけですから、環境基準のところだけそれを持ち出しても、実は無理なわけです。そういう意味でいえば、ダイオキシン、ことにコプラナーPCBなどは、基本的に過去の汚染であるということが分かっているケースについて、それの遺産を引き継いでいるというところであえて環境基準を決めるという特殊なケースであるということを重々説明して、TDIを決めるときに既に幅、感受性とか環境摂取量というようなものを考慮しているということを考えて、とりあえずは考えないで環境基準を決める。その上で、そういうものを非常に多量に摂取しているケースについては、やはり個別に食事指導などで対応する。何も環境基準だけで全てを解決する必要はない。環境対策の在り方というのは、非常にたくさんのオプションがあって、その中から最も経済的でみんなが守りやすいものをやっていくということなので、そういう事情をよく説明して、TDIをこういう値に決めざるを得ないという現状の中で、私たちは環境基準をどう決めるのか、そこのところを十分分かってもらった上で、なるべく全体としては無理のない議論に、あるいは国民の関心をそらさないような議論にしていただいた方がいいのではないかと思っています。

【委員長】 事務局の方でただ今のB委員の御意見に対していろいろと御説明もあろうかと思いますが、B委員の内容に関連してほかに御意見をお持ちの方ございますか。

【C委員】 僕も基本的にはB委員の考え方に賛成なんですが、もう少し突っ込んでテクニカルなことをお伺いしたい、あるいはこうしたらどうかという案があるんです。水生生物、魚と水質との間の関係をとって、関係は認められなかった、あるいは底質と水との間に関係は認められなかったということですが、ダイオキシンもコプラナーPCBもそうですが、魚の体の中では脂に溶けているんですね。あるいは底質であれば、底質表面の有機物に溶けているわけですね。したがって、こういう関係を見るときには、脂肪重量当たりの濃度あるいは有機物当たりの濃度で表示して、それで関係をとるべきではないかと思うのですが、こういう処理はされたのでしょうか。

【事務局】 事務局の方からB委員の御意見にも関連して御説明いたしますと、実は、本日の資料には一部コプラナーPCBとPCDDとPCDFを分けたグラフが、例えば9ページでは分けて解析しているわけですが、必ずしも相関がとれていないという状況がございます。事務局の内部作業としては、脂肪重量当たりもやっているのですが、必ずしも状況が改善されないという状況です。さらに、異性体ごとに全部ばらしたらどうかという御議論もあるわけですが、そこまでいくと、今度はデータ数がどんどん落ちてしまって、必ずしも意味のある結果にならないということもございまして、現状のところではいろいろ手を尽くしてはみたのですが、使い得るような関係は出てこなかったということでございます。

【D委員】 B委員、C委員の言われることはそのとおりだろうと思うのですが、資料の書き方がまだ少しおかしいのではないかと思います。考え方としては飲料水で決めているというのが見えるのかもしれないのですが、2ページの(3)の「今後の対応方針案」の最初のポツで、「当面『飲用水としての利用を考慮する方式』により水質環境基準を算定する」と書いてあります。これは作業の流れを淡々と書いているのだろうと思うんです。そういう意味でいくと、「当面」という話ではなくて、まず飲料水の安全性の観点も考えなきゃいけないわけで、その観点から数字を出してみると、1という数字が出てきた。
  今度は、もう一方で「生物濃縮を考慮する方式」から補足的に示すという話ではなくて、これもそちらから具体的な数字が出てこないので、仮に1pgという数字で生物濃縮を考慮したときにどうなったかということを検討してみた結果、私も最後のところでB委員と似たような意見なんですが、これを読んでいくと、必ず飛び出している人はいる。平均的にはいいけれども、ばらつきのところが飛び出してしまう。それについては、何らかの形のものがついてこないと、これでは皆さん納得しない話になる。ですから、そういうのを後ろにつけざるを得ない。
  もう一つ、生物濃縮は確かにC委員が言われるように、魚種とか脂だとかあるのですが、それで分けてやってきれいな数字が出るとしても、こういう基準を考えるときには扱えないわけですね。魚の構成がどうで、その比率がどうだという議論をしなきゃいけないし、魚の中で脂がどうという話をしなきゃいけないので、これもB委員の言われるように、漠としてやらざるを得ない。ただ、それを割り切るにはもう少しデータが欲しいということではないのだろうか。そのために今年調査をやられたということではないかと私は解釈しているのですが。
  そういう意味では、(4)の「留意事項」のところで、「運用に当たってどのように考えるか」ということもありますが、「暫定的な環境基準」という言葉は多分使えないだろうと思うのですが、「可及的速やかに」というと言い過ぎになるかわからない話になるだろうと思うんですが、場合によっては時間を切って見直しを行うというふうなことで理解してもらうということが一つの方策ではないかと思います。

【事務局】 ただ今の、例えば 1.5倍多食者あるいは平均的なレベルでみたときに必ずはみ出る人が出ることについてどう考えるかということについては、むしろ、今の食事の実態を考えると、どこで線を引いても必ずはみ出る集団があるわけでございまして、それは2ページの(4)の「留意事項」のところに書いてございますが、ここはむしろ先生方からいろいろ御示唆をいただければと思います。どこで引いても必ずはみ出る人はどこかしらにはいるということを前提にしたときに、どういう運用があるべきだろうかということをどこか最後の方に書いておく必要があるのではないかと考えております。
  それから、当面、飲料水の観点からということですが、万全を期す意味ではいろいろな数字を積み重ねて、生物濃縮の観点から作ってはどうかという話もあるかもしれませんが、時間的制約もございますので、今ある情報である程度の確度をもって言える数値として作れるのは、飲料水の観点にならざるを得ないのではないか。ただ今私どもの方で行いました説明でも、生物濃縮の観点で試算はしておりますが、いくつかの仮定を置いております。こういう仮定の上に積み重ねている試算でもありますので、現時点で飲料水と同列に扱うのはなかなか難しいのではないかと考えております。そうはいっても、先生御指摘のとおり、本来、生物濃縮ということを念頭に置いて作るのが理想型だとは思いますので、当面、飲用水で数値を定め、今後さらに現在行っております予備費の調査データとか、いろいろなものを活用して、生物濃縮の観点からきちんとした数字が作れるような努力は継続していきたいと考えております。
  また、飲料水の観点からでも、環境基準を早く設定することによって、全国での常時監視あるいは測定の体制づくりにつながってまいりますので、そういう意味でも、まず今の使い得る情報の中で基準を設定することは意味があるのではないかと考えております。

【委員長】 ほかに御意見ございませんか。
  ただ今まで4名の委員の先生方から御意見をいただきましたが、それぞれ制度的な面あるいは技術的な面で本質を突くような御意見であったかと思います。しかし、このダイオキシン法の施行が1月15日という期限がある中で皆さんに御討議いただいているわけですが、この委員会をつくることを御承認いただきました水質部会におきましても、現在のダイオキシンの汚染状況を考えて、国民の皆さん方の不安を考えた場合に、仮に問題は山積みしていても、来年1月までにこういったことを決めていかなければならないのだという意見をいただきまして、この委員会ができたわけです。多分、他の専門委員会も同様にできたのではないかと思われます。
  そういう背景がありますもので、その中で一つの基準の考え方を事務局からお示しいただいたわけですが、A委員がおっしゃったように、水道の問題からいけば、こう決めざるを得ないのだけれども、水道の飲み水のことだけでこの基準が決まったわけではないということをはっきり分かるように示さなきゃいけないとか、あるいはB委員がおっしゃったように、環境基準一本で全て今後規制していくということではなくて、特に魚の資料がない中で、個別対応でもって環境を制御していくといいますか、考え方を進めていく必要性があるのではないか。そういったことを踏まえて、今討議していただくことがまとまっていくとするならば、そういう背景があるぞということで、D委員がおっしゃったようなことも踏まえて、これが最終的な決定ではなくて、見直しということも含みを置いて考えていくべき基準であるということを認識すべきではないか、というお話ではなかったかと思います。

【E委員】 3ページのところでWHOの1%でとらえていますけれども、13ページの方に説明が若干書いてあるのですが、その中で私の知りたいのは、1%のところで「等9物質」と書いてあるのですが、この「等」にはほかに何があるのかです。確かにここに掲げられている1%とされている物質というのは、フタル酸エステル類の可塑剤系統と有機塩素系農薬系統ですから、他の媒体、食品を通して入ってくるのが多いわけです。

【事務局】 基本的には、例示で書いてございますようなフタル酸系統や農薬の類が多かったかと思いますが、後ほど整理して先生に御報告したいと思います。

【E委員】 もう一つは、直接的に水質のものと関係あるかどうかよく分からないのですが、全国調査と水質との相関が余りなかったというお話ですが、例えば10ページのコイの場合、左のカラムの2番目のところを見ると、若干ありそうに見えなくもないということで、例えば、あったとして、ここら辺のところから、生物濃縮、係数的なものを若干試算してみて、先ほど御紹介のあった水質濃度にどこら辺に当てはまるのかとか、そういった計算も試算としてできないかと思いましたので。

【事務局】 例えば底質と水生生物、水質と水生生物、部分的に一部の集団を繰り出すと多少相関のいいものもあるのですが、それを全体に押し広げるのはなかなか技術的に難しいということもございまして、うまく整理できなかったという扱いにしております。

【F委員】 これまで諸委員の先生方がお話しされたことについては、特に異論はないのですが、水質環境基準の試案ということで1pg-TEQ/l、これはTDIのことから、環境庁の方でいろいろ資料を調べられて検討されたところで、飲料水の基準というか飲用が非常に大きい、そのことを第一義的に考えて決めるとこういう値になるということですけれども、一つ、測定法の方で、このあたりのところで、例えば、ここにJISの案も資料としてありますけれども、今回の一斉調査で平均が 0.4pg/lという話があるのですが、このあたりを測定しようとすると、試料を数十l とって、いろいろな方法がありますけれども、いわゆるダイオキシン類を抽出して、かなり手間とサンプリングのところでもいろいろ問題があろうかと思うんです。
  そのことで、実はISOの方でも、水中のダイオキシン類の測定方法を作ろうじゃないかという話がありまして、この間ワーキンググループがあったのですが、そこでは、イギリスの方から1l の試料を使って最小の定量限界、ミニマム・ディターミネーション・リミットといっていますけれども、定量限界 4.4pg/lという案が出てきました。日本としては、それはとても高すぎて賛成できないと言っているのですが、諸外国ではそのくらいのことで考えているところもあるんです。日本の場合には、先ほどからも話がありますけれども、魚をたくさん食べるので、もっと低いレベルまで測れることが必要であるということを主張しているのですが、そんなこともあるということが一つ。
  もう1つは、これは環境基準の話ではありませんけれども、環境基準が決まっていくと、排水基準とか土壌の基準とか、みんな関連していくというところがありますので、これは排水基準の委員会の方できちんと検討していただければいいことなんですが、今までの考え方でやると、環境基準があると、大体10倍で排水基準が決まってというのが通常ですね。そうすると10pgとかいう話になってきますけれども、業種によっては、ここまで下げるのは、これは対策技術の問題になりますけれども、厳しい問題もあるということがあろうかと思います。ですから、私、1というのがいいのか、2がいいかというのは、何とも言えませんけれども、これは計算の上から出てきているわけですから、やむを得ないのかなと思いますけれども、そのあたりのところは、例えば排水基準の委員会とかで十分考慮していただければと思います。
  もう一つは教えていただきたいのですが、資料2の6ページに<参考1>PCBの水質環境基準というのがあります。先ほどもお話がありましたけれども、この場合の水の寄与率というのは、何%になっているのでしょうか。例えば、PCBの場合、10%と考えているのでしょうか。

【事務局】 PCBの場合は、先ほど御説明しましたように、魚の基準から濃縮係数を考慮して基準値を定めておりますので、特に水の寄与率ということは数値の算出には使っておりません。

【委員長】 排水基準との関連ですが、この委員会と同時にできました排水基準専門委員会で現在ほぼ並行して議論しております。私が聞き及んでいますのは、まだ具体的な討議の結果というのは、中間報告という段階にもいっていないということです。

【水質規制課長】 排水基準の方は8月の末に最初の会議がありましたが、明日、第2回の会議があります。また、関係業界の方々からのヒアリングも予定しておりまして、その上で、現在進めております平成11年度の排水の調査結果も踏まえ、10月の半ばから加速して最終の結論を得たいと思っております。まだ議論の方向性は定まっておりません。

【委員長】 そのような状況ですので、御理解いただきたいと思います。

【G委員】 今のF委員等の話とも関連するのですが、水の直接摂取をベースに設定しつつ、生物濃縮を補足的にという今回の設定の仕方、今の時点で最大限の努力をしておられることは十分に理解しております。ただ、最終的に、仮に試案の1pg/lに抑えられれば、生物濃縮のレベルもほぼ満足できるというロジックが立てられているわけでして、そうなりますと、1pg/lに抑えられるという見通しがあるのかどうかというところが、今F委員の言われた排水規制との関連で非常に重要なポイントになるのではないかと思っているわけです。そういった意味で、今回の全国一斉調査の中で、仮に1pgあるいは10pgを超えたようなところも散見されるのですが、発生源との関係である程度制御の見通しがあるのか否かという点について、少なくとも今公表された資料からはそのあたりの見通しを全く読み取ることができません。その辺は判断できないところですから、ぜひ事務局の見解をいただきたい。
  それと、仮に1pgということになりますと、今の雨水自体が1pgを超えるケースというのは、恐らく散見されるのではないかと思っております。特に降雨初期の濃度が少し高いとか、これは逆にいいますと、大気の方の環境対策を施していくことでもって下げられるという見通しとも関連してくるポイントになります。そういったところを見ていく中で、いくつかのロジックを立てて、最終的に1の妥当性をかなり論理立てて説明されているがゆえに、その1つが崩れたときに少し心配しているという意味合いで、今の実態調査等との関係はいかがなんでしょうか。

【水質管理課長】 そもそも環境基準を決めるときに、達成可能性をどのように考慮するかというのは、非常に難しい議論がありまして、「望ましい基準」というのがまずあります。私どもは、1pgを超えるものが何カ所かありますけれども、ここを詳細に調べて、これは達成可能であるということを個別に判断しているわけではございません。ただ、平成10年度の調査は、比較的発生源の近くとか、大都市部中心の地域の測定結果が多うございまして、1pgを超えているものも総じてそういった場所のデータが多いということは確認しておりますので、対策の可能性のある場所であろうというくらいの検討はつけておりますけれども、個別にこの場所は何を抑えればこれだけいくという検討はいたしておりませんし、恐らくそれは今私どもが持っているデータからは不可能ではないかと思います。

【G委員】 そういうことでしたら、ぜひ最終の報告の中では、今回の環境基準の性格が未然防止のための基準であるということを明確にうたっていただく。これは環境基準の性格も、歴史的ないろいろな変遷があるというふうに私どもは理解しておりますけれども、汚染の進行を止めるというようなニュアンスの中で、あるいは汚染対策ということも勘案しながらというのはかつてとってこられたわけですから、そういう中で環境基準の性格が水の場合は何だということをかちっと明示していただく必要がまずあるのではないかと思います。

【D委員】 さっきB委員も少し言われて、今G委員の言われた話なんですが、確かに環境基準というのは、環境基本法を読むと「望ましい基準」であって、さりながら日本の今までの環境基準自体が「達成可能性」というのをかなり色濃く反映したものになっているんですね。そういう意味で、G委員が言われるように、今回は「達成可能性」というよりは、むしろ「あるべき姿」というところを取り込んでいるとは思うのですが、逆にいうと、そうすっぱり言うと、またつらくて、それでは生物濃縮の方はどうなんだと。望ましい姿になると、極端な話をすると、B委員が言われるような多食者、よっぽどずれた人でなければ、安全を確保できるというのが、望ましい環境基準だろうと思うのですが、今回のは決してそんなことはできないだろう。
  それから、恐らくG委員もそういう意味で言われたのだろうと思いますが、これから排出規制をどんどんやっていっても、そう簡単には環境基準は達成できない。全体量として1pg以下に抑えると平均ではこのぐらいになると言われていて、現実問題として、今厚生省のトータルダイエットの調査でも一応調査の範囲では納まっていますが、高い方は4pgぎりぎりぐらいであるし、環境庁の調査の結果で、能勢と埼玉県の場合に4pgを超えている。あれがこの基準をやったからといって、すぐによくなるという保証は恐らくないだろう。現実問題として、こういうふうに定めたからといって、そう簡単にならないだろう、そこは理解してもらう必要があるだろうと思います。そういう意味で、すっきりした選択ができない。前から私は申し上げているように、環境基準自体の考え方を少し根本的に整理し直す時期にきているのではないかと思いますが、それをしている暇はないものですから、今、G委員が言われたように、ストレートに明確に打ち出すというと、また舌をかんでしまうようなことになるのではないかと私は懸念いたします。事務局の方でうまく裁いていただければと思います。

【事務局】 どうやって達成するかというのは、次の議題の達成期間とも関係するのですが、最終的には、他媒体の基準の設定状況とか、全ての媒体における対策を総動員して下げていく。ダイオキシンの性格上そういうことにならざるを得ないのではないかと思います。
  先ほど雨水1pgというお話がございましたが、水の環境基準の場合は、公共用水域に落ちた段階で基準点で評価するということになっておりますので、初期降雨をつかまえて超えているじゃないかということにはならないかと思います。

【A委員】 今までの議論をお聞きしておりまして、話がさかのぼって恐縮なんですが、今日冒頭に大気とか土壌についての基準設定等のお話をいただきました。それぞれについて、大気であれば大気だけ、あるいは水質であれば水だけというわけにいかない。環境中の動態を考慮しながら、大気なら大気、水なら水について基準を決めていくというスタンスで検討されているわけです。そういったことを考慮しますと、先ほどの話にも若干関連すると思うのですが、例えば環境中の動態なり、あるいは最終的にターゲットになる人による摂取に至るまでの経路とか、そういうことについてどういうふうに環境庁として理解するのか。あるいはもう少し突っ込んで言いますと、これは可能でないということになるかもしれませんが、そのときの量的な関係はどうであるとか、そういったことについて、これは個別の分野、水であれば水とかということではなくて、全体を通してこういうふうに理解しているとか、その中で水の基準を決めると、こういうふうにここのところで抑制が変わるというふうな整理ができるのではないかと思いますし、した方がいいのではないかと思います。これまでの行政のやり方も経緯もあるでしょうから、そういうことがなじむのかどうか分かりませんけれども、少なくとも個別にやるということだけで済ませるのはどうかと思いますが、いかがでしょうか。

【水質管理課長】 御指摘の点は、環境庁内でもまさにそういった認識を持っております。今、個々に法律が求める基準が各媒体ごとにそれぞれ決められておりますので、それをしなければいけないということでありますが、並行して私ども、大気、水、土壌で相互に連絡をとると同時に、全体を合わせた説明ができないものだろうかということは考えております。ただ、現時点でその明確な見通しを得ておりませんので、その方向で努力しているということを申し上げたいと思います。

【委員長】 それでは、いろいろ重要な御意見をいただきましたが、この後で環境基準の適用に関しての議題がございますので、必ずしもこの基本的考え方がこれで決まったわけではございませんが、一応事務局から提示いただいた試案をこの専門委員会のこれからの方向というふうに御理解いただきまして、次の議題に入りたいと思います。議題の3ですが、「ダイオキシン類の水質環境基準の適用に関する考え方について」でございます。まず事務局から御説明願いたいと思います。

【事務局】 <資料3について説明>


【D委員】 適用する水域のところですが、従来の考え方は、地下水も公共用水域と同じであるという考え方なんですが、先ほどから議論になっているように、従来の環境基準というのは、ほとんどが飲料水経由で、生物濃縮を考慮したのは、PCBは若干そうですが、そういう形ではないわけですね。ほとんど飲料水経由なので、そういう意味では、地下水も公共用水域も同じ考え方でいいのであろうと思うのです。今回は、その差をつけるということをしないので、飲料水経由で出された値を使うという形なので問題はないかと思うのですが、将来的には、当然のことながら、生物濃縮というのを地下水の方に適用するのかどうか議論する必要があると思います。水産等に養殖用水というのも地下水の利用の中に入っていますから、そこをどうするかというのはもちろん議論があるのだろうと思います。単純に「ダイオキシン類についても同様とする」というのは、適当と必ずしも言い切れないのかなと思います。

【事務局】 今回お示しした試案については、飲料水の観点から主として定めているということもございますので、そういう意味では、従来と同様に、地下水も合わせて取り扱ってもいいのではないかと思います。

【H委員】 細かいことかもしれませんが、毒性等量の算出に関して、定量限界、検出限界というのが、ゼロでも1/2でもいいのですが、十分小さいという値を明記して保証するような形をできればとっていただいた方が、不統一な値が出ないのではないかという気がいたします。

【I委員】 現在、ISOとして水質・排水の測定法を我が国として提案していると聞いていますが、国際的な考え方では定量下限値以下は定量下限値の1/2を使うことなので、今回環境庁で提案されている「2−2」の項の内容は、国際的にも合致しますので、1/2という方がいいのではないかと思います。そして、JIS規格には、目標定量下限値も記載されていますけれども、分析機関で定量下限値が不統一なところもありますので、1/2を使うことによってかなり無謀な分析もできなくなると思います。そういうことでは、「2−2」の項の1/2を使っていくということが国際的にもマッチしますし、より正しい評価が可能になるのではないかと思います。

【B委員】 定量下限値の1/2を入れるかどうかということなんですが、1/2を入れて計算された値でまた濃縮率を計算したりすると、科学的な意味がすごく不正確になってくると思うんです。一応環境基準値を1/2の値を入れて表現するということは、様々な条件を考えて、それ以上ではないという意味でいいとは思いますけれども、そういう値を本当に濃縮率を計算するときに用いていくと、どうなるのかよく分かりませんが、少なくとも見かけ上は濃縮率は低くなりますから、環境基準値を高めに設定してもいいということになるのか。どのぐらい数値があるかによりますが。ですから、そこのところは、こういうのは行政的な数値であって、科学的な数値でないということは、本当は区別しておくべきだと思います。これからの調査が、単に現状を報告するということではなくて、それをもって濃縮率を決めて、環境基準値を決めていくというのに使われていくとすれば、そこのところに十分な注意が必要だという気がします。
  もう1つは、全体的なことなんですが、今日、相関係数があるかどうかという議論で、この作業をやっているのが事務局であるとすると、ちょっと問題があるのではないかと思います。もう少し専門家の人に、この委員会のメンバーでもいいのですが、委託してやった方がいいのではないかと思います。例えば、水みたいに水質の変動の激しいものを、たった1回の測定値をもってきて、そこでとってきたコイと相関をとるということ自体非常におかしいことですよね。ですから、その値が一体どういうグレーの中の値なのかということが当然表現されなければいけないのに、そういうことをやっていませんよね。そういうのは、もう少し専門的に、必ずしも濃縮率がきっちり決まると思ってはいませんが、また、それを使わなきゃいけないとも思っていないのですが、余りにも初歩的過ぎて、この図をこの委員会の結果として出すのはちょっと恥ずかしいという感じがするので、お願いします。

【事務局】 濃縮率の計算のときに1/2を入れるのはどうかというような御指摘ですが、濃縮率の計算に当たっては、またそれぞれに適した考え方を専門家とも相談しながら使っていきたいと考えております。ただ、データとして効いてくるのは、N.D.に近い方のデータが効いてまいりまして、一方、濃縮率として意味のある数値が出てくるのは比較的濃度の高いときのデータですので、そういう意味では、余り効いてこないのではないかという感じもしておりますが、いずれにしても、濃縮率の計算に当たっては、先生の御指摘も踏まえて、きちんと配慮していきたいと思います。
  それから、先ほどの相関係数については、この専門委員会のメンバーの半数ぐらの方にお願いいたしまして、何回か議論を重ねていろいろなトライアルをしております。その結果、ここでは御紹介しておりませんが、私ども単独ではなくて、専門の先生方と御相談しながら整理したものというふうに御理解いただければと思います。

【D委員】 今のB委員の御意見はそのとおりなんですが、実際には変動を示すデータというのは、平成10年度の調査結果では全く得られていない。これしかできないというのが現状です。だから、そういう意味では、今度の平成11年度の調査のところでは、不十分ではありますけれども、変動みたいなものをとる努力はしてみようと。それでもものすごく限られたものにしかならないと思いますけれども、相場感みたいなものを少し見てみようということは検討して調査を組んでいるのですが、これは平成10年度に実態調査ということでやられたものを使って解析したということで、今言われたように、問題点は非常に多いだろう。それも十分織り込み済みでやってみたということでございます。

【I委員】 そういう意味から言いまして、恐らく今後の調査の中で、ある程度より正しい生物濃縮のデータも出てくると思いますが、それ以前に、大気も水質も非常に濃度が変動しやすいということもありまして、ある程度長期的なサンプリングに基づかないと、なかなか正しい汚染データが出てこないと思います。そういう意味から、今後のことに関しては、水質についても、従来の測定法にこだわらず、もう少し長期サンプリングに基づいたデータを基礎としていろいろなことを考えていく必要があるのではないかと思っています。

【委員長】 関連して御意見ございますか。
  いろいろ貴重な御意見をいただいているようでございます。適用に関して今御意見を得たところですが、後で事務局の方から御説明があるかと思いますが、次回には専門委員会としてのまとめに入っていく必要がございます。ということで、今日の御議論が非常に重要な背景になるかと思うので、まだ少々時間がございますので、今まで取り上げてきました基本的考え方あるいは適用といったもの全体あるいはそれに関連した御意見がありましたら、この機会に伺っておきたいと思います。

【G委員】 実は前回、TDIのアロケーションに関する方針に関して質問させていただいたのですが、アロケーションによらない基準設定の方法論もあり得るということで、その辺を両にらみで検討を進めたいという方針であったかと思います。今日のペーパーで基本的には、一定のアロケーションをすることでもって基準設定にいくという方針を示されましたので、それに関しても同意しているような次第なんですが、少なくとも摂取媒体の中で食品を除いた他のメディアからの一定のアロケーションというのは、環境庁全体としての調整の下で一定の結果が出てくる、そういう方向にあるというふうに理解させていただいてよろしいでしょうかということを再度確認させていただきたいと思います。

【事務局】 アロケーションという形で明示的になるかどうかというのはございますが、先ほど水質管理課長の方から御説明いたしましたように、各媒体を通じて全体としての媒体間のバランスあるいは汚染の移流・拡散の流れ、こういったものを整理して、全体として説明ができるようにしていきたいということは考えております。ただ、これも作業途上なので、現時点で確たることは申し上げられないのですが、一応そういう方向で媒体間の調整をしていきたいと思っております。

【委員長】 他にございますか。
  それでは、ただ今までいただきましたいろいろな意見を反映していただき、事務局の方でよく御検討いただきまして、次回に当委員会の報告のまとめ案を作成していただくよう御準備いただきたいと思います。第3の議題はこれで終わらせていただきます。
  「その他」について、事務局の方で何かございますか。

【事務局】 「その他」でございますが、お手元の参考資料4に「ダイオキシン類緊急全国一斉調査結果」というのがございます。これは先週の金曜日に発表したものでございますが、簡単に御説明したいと思います。

 <参考資料4について説明>

【委員長】 この調査結果の御説明について御意見ございますか。
  それでは、「その他」も含めて、これで全体の審議が終わったようでございますが、特に委員の先生方から全体を通して何か御意見ございますか。

【F委員】 資料2の2ページに「底質環境基準についての考察」というのが書いてございますが、私聞き落としたのかもしれませんが、この書き方ですと、ダイオキシンの特別法の中では、「水質環境基準(底質も含む)」という文言があったと思うのですが、底質の環境基準については、例えば次の会議とか、あるいは次年度とか、そういう形になるのでしょうか。この書き方からどういうふうに読み取ればよろしいのでしょうか。

【水質管理課長】 この部分は、底質について環境基準を定めることが法律上求められておりますが、現時点では設定が難しいのではないかということです。ありていに申し上げれば、法施行当時は、水域の環境面では、水質の環境基準を最低限決めますが、底質についてはもう少し時間をいただいて、この場でまた改めて御審議いただいて決めていくということにならざるを得ないのではないかと考えております。

【I委員】 先ほどの大気の関係の会議においてもみられたことですが、従来のコプラナーPCBが入っていないデータと、今後入ってくるデータがあるのですが、そのときの表示の仕方を工夫する必要があると思います。調査結果でも「PCDD及びPCDF」と書いてあるりますが、PCDD+PCDFという意味合いで書かれていると思いますが、いろいろな表現を見ていますと、プラス、合計値という意味にとりにくいようなこともあります。もう少しプラスという意味にとれるような表現に統一されたらどうか。コプラナーPCBが入ってくるデータ、入ってこないデータがあるのですが、そういうときにどうしても「PCDD及びPCDF」という表現がでてますが、PCDDとPCDFがそれぞれ単独であるような意味合いにとれて、プラスまたは合計という意味にとりにくい表現になっていますので、ぜひ統一されて意味がとりやすいようにしていただいたらどうかと思います。

【水質管理課長】 今の点は、関係する部局に関わりますが、今後、ダイオキシン法に基づいていろいろな監視測定を行い、徐々に統一した表現がとられていくことになると思いますが、御指摘を踏まえてさらに検討したいと思います。

【委員長】 他にございませんか。
  それでは、本日は非常に本質的な問題を含めた貴重な御意見をたくさんいただきました他になければ、第2回の水に関する環境基準専門委員会の審議はこれで終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
 
−了−