中央環境審議会水質部会(第11回)議事録(案)

中央環境審議会水質部会(第11回)議事録(案)


1.日 時:平成8年5月27日14:00〜15:30

2.場 所:通産省別館共用826号会議室

3.出席者: 合田 健 部会長             村岡 浩爾 委 員  

加藤 郁子 委 員      恩田 怡彦 特別委員
加藤 壱将 委 員      清瀧昌三郎 特別委員
岸  ユキ 委 員      七野  護 特別委員
木原 啓吉 委 員      須藤 隆一 特別委員
櫻井 治彦 委 員      中島 哲生 特別委員
佐竹 五六 委 員      林  裕造 特別委員
猿田 勝美 委 員      樋口 敬一 特別委員
清水  誠 委 員      福井 経一 特別委員
新宮 康男 委 員      田中 克彦 専門委員
隅山 克己 委 員      出島  茂 専門委員
高橋さち子 委 員      東  軍三 専門委員
高橋  裕 委 員
(浅野直人委員、小早川委員、藤野慎吾特別委員、三上徹専門委員欠席)
嶌田水質保全局長       西川土壌農薬課長      
西尾企画課長                  田部瀬戸内環境保全室長
南川水質管理課長       八木調査官
飯島水質規制課長       森谷総量規制室長

4.議 題:
(1) 前回議事録の確認について
(2) 地下水の水質の汚濁に係る環境基準の設定について(諮問)
(3) 播磨灘北西部等の全窒素及び全燐に係る環境基準の水類型の指定について
(諮問)
(4) その他

5.配付資料
資料1  中央環境審議会水質部会第10回議事録(案)
資料2-1 地下水の水質の汚濁に係る環境基準の設定について(諮問)
資料2-2  地下水汚染対策の経緯と汚染の現状
資料2-3  地下水の水質の汚濁を防止するための水質浄化対策の在り方に
    ついて(中央環境審議会答申)
資料2-4  水質汚濁防止法の一部を改正する法律案
資料2-5 公共用水域の水質汚濁に係る環境基準
資料2-6 土壌の汚染に係る環境基準
資料3-1 播磨灘北西部等の全窒素及び全燐に係る環境基準の水域類型の
    指定について(諮問)
資料3-2  瀬戸内海類型指定対象水域
資料3-3 播磨灘北西部等瀬戸内海6海域の概況
資料3-4 化学的酸素要求量(COD)に係る総量削減基本方針の策定について
資料3-5 窒素及びその化合物に係る削減指導方針の策定の指示について
資料3-6 海域の全窒素及び全燐に係る環境基準
資料3-7  東京湾、伊勢湾及び大阪湾の類型指定状況
資料4-1 中央環境審議会水質部会の専門委員会の設置について(改正案)
資料4-2 地下水環境基準専門委員会名簿(案)
資料4-3  海域環境基準専門委員会名簿
資料5   中央環境審議会水質部会名簿

6.議 事
・定刻となったので、ただいまから第11回中央環境審議会水質部会を開催させていただ
く。本日は、委員総数25名中22名の委員に出席いただいているので、既に部会開催の
要件を満たしている。
なお、前回の部会で決めていただいたところにより、本日の部会は公開とさせていただい
ている。従って今回の議事録は、作成後、委員に御確認をいただいた上、公開されること
となる。

・議題1「前回議事録の確認について」であるが、御一読いただき、何かあれば後日事務
局まで御連絡いただきたい。
次に議題2「地下水の水質の汚濁に係る環境基準の設定について」については、環境庁長
官より諮問があり、当部会に付議されているので、事務局より諮問文を朗読した後、諮問
の趣旨について説明をしていただく。

・先にいただいた「地下水の水質の汚濁を防止するための水質浄化対策の在り方につい
て」の答申を踏まえて、国会に提出した水質汚濁防止法の一部を改正する法律は、現在審
議中であり、近く成立する見込みである。
前回の答申では、「今後の課題」として、「地下水の総合的保全の一層の推進を図るため
に、環境基本法に基づく地下水の水質汚濁に係る環境基準について、設定と適用のあり方
を検討」すべきであるとの御指摘をいただいているが、本日の諮問はこれを受けたもので
ある。
地下水は、生態系における健全な水循環を構成する重要な要素であり、全国3千万人の飲
用水として利用されるなど貴重な淡水資源であり、昨今の渇水等を勘案すると、その重要
性は、今後益々高まるものと考えられる。
今回の水濁法の改正は、緊急用措置として健康被害のおそれを防止しようという制度改正
であり、重要な地下水の水質の保全に大きく寄与するものではあるが、本来清浄であるべ
き地下水の総合的保全の一層の推進を図るためには、施策の目標となる環境基準を定める
ことが不可欠であると考えている。
審議に当たっては、環境基準項目と基準値だけではなく、地下水の水質の健全な保全の観
点から、基準の適用の在り方、監視や評価の在り方等についても幅広く御議論いただきた
いと考えている。

・説明について質問等あるか。

・今後の検討にあたっては、これまでの小委員会における環境基準についての議論も十分
踏まえていただきたい。

・地下水は災害用の飲料水としても重要である。硝酸性窒素、亜硝酸性窒素による地下水
の汚染の実態が良く知られていない状況があり、環境基準を設定することによって地下水
の測定が促進されることになる。ぜひ、環境基準の適用は全国一律としていただきたい。
・本日の諮問事項「地下水の水質の汚濁に係る環境基準の設定について」は、専門分野の
方々に少人数で集中的に検討することが適当と思う。
本諮問事項については、中央環境審議会議事運営規則第9条に基づき、専門委員会を設置
して、そちらで御検討願うこととしたい。資料4-1のとおり地下水環境基準専門委員会を新
たに設置することに異議ないか。

(各委員 異議なし)

・特段の異議がないようなので、専門委員会において検討を進めていただくことにする。
専門委員会の委員は、中央環境審議会議事運営規則第9条第2項により、部会長が指名す
ることとなっているので、私の方で委員の人選を行い、資料4-2に委員の名簿を用意した。
また、地下水環境基準専門委員会の委員長は、猿田委員にお願いしたい。よろしいか。
(各委員 異議なし)

・よろしくお願いする。諮問事項についての検討は、専門委員会の委員の方々に進めてい
ただき、その結果については、できれば半年後程度を目途に報告を願いたい。
それでは次に、議題3「播磨灘北西部等の全窒素及び全燐に係る環境基準の水域類型の指
定について」については環境庁長官より諮問があり、当部会に付議されているので、事務
局より諮問文を朗読した後、諮問の趣旨について説明をしていただく。

・環境庁においては、海域の富栄養化の防止のため、平成5年8月27日に全窒素及び全
燐に係る環境基準を設定し、まもなく3年が経過することになる。
この環境基準は、水浴等の水域の利用目的に対応して複数の類型が設けられており、個々
の水域にいずれかの類型を当てはめることによって、具体的な水質目標が示されることと
なっている。また、類型指定は水域に応じて、環境庁長官又は都道府県知事が行うことと
されており、この別は政令において定められている。
現在は、海洋植物プランクトンの著しい増殖をもたらすおそれがある海域として環境庁長
官が平成5年に告示により定めた88海域のうち、国によって、東京湾、大阪湾、伊勢湾
の3水域、地方自治体によって七尾湾等の8水域計11海域において類型指定が終了した
ところである。
目標がないと対策は進んでいかないことから、環境庁としては平成10年度までに全ての
水域で環境基準の当てはめを行いたいと考えている。
今回の諮問は、東京湾等に引き続き、瀬戸内海の6水域(播磨灘北西部、備讃瀬戸、燧灘
東部、燧灘北西部、広島湾西部並びに響灘及び周防灘)の類型指定について、審議会での
御議論をお願いしようとするものである。
瀬戸内海は比較的広く、海流の扱い、発生源の扱い等検討の必要のある点も多いが、9年
初頭を目途に取りまとめを行いたいと考えている。来年度は有明海について類型指定の検
討を進めたいと考えている。

・本日の諮問事項「播磨灘北西部等の全窒素及び全燐に係る環境基準の水域類型の指定に
ついて」は、専門分野の方々に少人数で集中的に検討することが適当と思う。
本諮問事項については、既に水域類型の指定がされている、東京湾、伊勢湾、大阪湾と同
様に専門分野の方々に検討していただくことが適当と思う。引き続き、資料4-3のとおり海
域環境基準専門委員会において検討を進めることとしたい。異議ないか。

(各委員 異議なし)

・特段の異議がないようなので、海域環境基準専門委員会において検討を進めていただく
ことにする。
また、委員長は引き続き須藤特別委員にお願いしたい。よろしいか。

(各委員 異議なし)

・須藤特別委員、よろしくお願いする。諮問事項についての検討は、専門委員会の委員の
方々に進めていただき、その結果については、できれば半年後程度を目途に報告を願いた
い。
それでは次に議題4「その他」だが、全体を通して質問等あるか。

・瀬戸内海に現存する水浴場が減らないよう御検討いただきたい。一般の人が水辺に近づ
けなくなってきている現在、水浴場の存在は重要である。
一人一人は多少生活の不便さを我慢することとなっても、環境を良くするよう配慮すべき
である。

・水浴場については毎年水質調査が行われ、その結果をもって水浴に適しているか否かが
判断されている。今年もそろそろ公表の時期と思われる。

・瀬戸内海の環境基準類型指定の審議においては、現在及び将来の水域利用目的を勘案し
て議論・検討を行って参りたい。

・水浴場の水質調査については現在結果をまとめており、6月下旬に公表を予定してい
る。

・資料3-3中の利水目的の工業用水とは海水か、淡水か。何を指すのか。

・海水である。大半は冷却水であり、一部製塩業の原料である。

・昭和30年代の頃と比較して東京湾の水質はよくなっていると実感しているが、先日東
京湾で釣った魚が油臭かったことがあり、また水質が悪化しつつあるのか懸念している。

・瀬戸内海においては、1960年代から70年代にかけて入浜運動が起こるなど、環境
権を主張する住民運動が盛んであった。類型指定の検討に当たっては、地元の住民、
NGOの声も十分反映させていただきたい。

・日本における窒素及び燐の環境に与える影響も踏まえつつ物質循環を明らかにしていた
だきたい。これは非常に難しく、作業量も膨大であり、行政としての組織的な対応が必要
と考えられる。世界中から持ち込まれた窒素と燐は、最終的には海に流れ込んでいるのが
現状である。また窒素・燐の除去は大変エネルギーを消費する。以上を前提条件として海
洋環境の保全に取り組んでいるという現状を一般の人に理解していただきたい。
経済の効率から国際分業論を主張する人もいるが、議論の前に事実の認識が必要である。
国際的視野においても、物質収支のみでなく環境にどの程度インパクトを与えているか、
全ての人にデータを示し御議論いただくことが必要と考える。
ぜひ、環境庁からデータの提示をしていただきたい。

・検討させていただきたい。

・一般の人に環境に係る諸情報を伝えることが重要である。自分の行動が環境にどのよう
な影響を与えているのかを知っている人は少ない。気軽に買われ、捨てられる缶・発泡ス
チロールの容器等が意外と高価なことはあまり知られていない。阪神大震災の際、クリーニン
グの溶剤が流出し環境中から検出されたこと等もあまり知られていなかった。クリーニングの溶
剤には危険なものもあるが、クリーニング代の価格差と溶液の安全性には関わりがあるのか。

・ごみに係る問題については環境庁及び厚生省において広報活動に取り組んでいるところ
である。

・クリーニングの溶剤に関しては平成元年の水質汚濁防止法による地下浸透規制以降、法
規制がかかっており、厚生省の指導の下、厳重に管理を行っている。廃液処理についても
環境庁の指導の下適切に処理している。

・一般の人に情報を伝達するということに関してだが、化学工業界では、環境や健康に係
る問題等において自分自身で責任をとろういうと国際的な運動をしているところである。
化学工業は情報がなかったこともあり、環境や健康に係る問題等については社会における
信頼が薄かったという経緯もあり、実践に当たっては行った努力を正しく評価してもらう
ことが重要である。互いに努力を認めあいながら、小さな努力を重ね、前進していくこと
が肝要と認識している。

・毎日使われるトイレットペーパー等についても手拭きに利用する等、使用者によって使
用量に隔たりがある。古紙回収に際しても混合物が多く、分別に大変な労力がかかる。環
境保全については個人のモラルによる部分が多く、教育・PRの側面も重要。私どもも環
境問題についてPRに力を入れている。規制のみではなく、一人一人の意識の啓蒙を図る
べき。

・疫学においても予防の知識を得ることは非常に重要である。一般的に伝染病は対応する
薬ができる前から感染者が減る傾向があるが、これは予防知識が広まることによる生活様
式の変化が主要因である。これからは環境が健康障害を予防していく時代であり、環境問
題についても予防の観点からの社会教育も含め、環境教育が重要である。

・例えば窒素や燐についても、日本列島という一つの生態系で考えると、国内に入ってく
る量に対し、現在明らかになっている国外へ出ていく量は非常に小さい。明確に数値で把
握しうるデータが必要である。モラル、教育も重要だが、それだけでは足りず、研究もや
はり重要ではないか。

・窒素・燐の物質収支の把握は重要であるが、非常に難しい課題である。かなり調査に時
間を要する検討事項と考えるが、事務局はどのように認識しているか。

・海洋法条約が今国会において審議されているところでもあり、海洋環境の保全も水質保
全行政の大きなテーマであり、海域も含めた国内の窒素・燐の物質収支に関しては、非常
に重要な課題と認識しており、長期的な課題として鋭意取り組んで参りたい。

・本日の議事は終了とし、事務局にお返しする。

・本日の議題の一つである「地下水の水質の汚濁に係る環境基準の設定について」の諮問
については、本年2月に「地下水の水質の汚濁を防止するための水質浄化対策の在り方に
ついて」としていただいた答申において、今後の課題とされたものであり、環境庁として
も、今後の地下水の水質保全対策を総合的に進める上で重要な課題と考えている。幅広い
観点からの御審議をいただくようお願いしたい。
なお、二月の答申の主たる内容であった汚染された地下水の浄化措置については、水質汚
濁防止法の一部改正により対応すべく国会に法案を提出した。国会の審議もほぼ終了し、
衆議院本会議での議決を待つばかりの状態となっている。
もう一つの議題である「播磨灘北西部等の全窒素及び全燐に係る環境基準の水域類型の指
定について」の諮問については、既に、答申をいただいている東京湾、伊勢湾及び大阪湾
に係る類型指定に引き続くものであり、瀬戸内海の富栄養化防止対策の一層の推進のた
め、環境基準の類型指定について種々の御審議をいただきたい。

                 −終了−