中央環境審議会大気・交通公害合同部会
第5回自動車排出ガス総合対策小委員会

                                      
1.日  時   平成12年7月7日(金) 10:00〜12:00
 
2.場  所   通産省別館901会議室
 
3 出席者  

    (委員長)  岡 田   清
    (委 員)  伊 藤 桂 子       香 川   順
           河 野 通 方       猿 田 勝 美  
           大 聖 泰 弘       永 田 勝 也
           松 下 秀 鶴       横 山 長 之
           (五十音順)
    (説明者)  環境行政改革フォーラム
           全国公害患者の会連合会
           大気汚染測定運動東京連絡会
           (財)公害地域再生センター(あおぞら財団)
           日本弁護士連合会
    (事務局)  大気保全局長        企画課長
           自動車環境対策第一課長   自動車環境対策第二課長 他
4 議 事

   (1)NGOヒアリング
   (2)その他

5.配 付 資 料

  資料1  自動車排出ガス総合対策小委員会委員名簿
  資料2  今後の自動車排出ガス対策に関する意見(環境行政改革フォーラム)
  資料3  全国公害患者の会連合会資料(全国公害患者の会連合会)
  資料4  自動車NOx総量削減方策検討会報告書に対する意見
       (大気汚染測定運動東京連絡会)
  資料5  自動車NOx総量削減方策検討会報告書を読んで
       ((財)公害地域再生センター)
  資料6  自動車公害対策に関する緊急提言等(日本弁護士連合会)
  資料7  自動車NOx総量削減方策検討会報告書に対する意見募集とりまとめ
  資料8  自動車排出ガス総合対策審議スケジュール(案)
  資料9  第1回自動車排出ガス総合対策小委員会議事録
  資料10  第2回自動車排出ガス総合対策小委員会議事録(案)
委員限り



【事務局】 それでは定刻となりましたので、中央環境審議会大気・交通公害合同部会第5回の自動車排出ガス総合対策小委員会を開催させていただきたいと思います。
 本日は、小委員会の委員12名のうち9名の委員の出席が予定されておりますが、永田委員だけまだお見えでございませんが、現在8名お見えでございますので既に会議の開催要件を満たしております。
 会議に先立ちまして資料確認をさせていただきます。
 議事次第がございます。そのあと資料一覧が1枚ものでございます。資料の1は委員名簿でございます。資料の2は、きょうはNGOからのヒアリングということで予定しておりまして、まず第1番目に環境行政改革フォーラム幹事鷹取様からの資料でございます。資料3は、全国公害患者の会連合会からの資料でございます。資料の4は、大気汚染測定運動東京連絡会、藤田様の資料でございます。資料の5は、財団法人公害地域再生センター(あおぞら財団)の研究主任、傘木様の資料でございます。資料の6は、日本弁護士連合会からいただいた資料でございます。資料の7は、以前に部会でご説明いたしました自動車NOx総量削減方策検討会報告書というものがございましたけれども、これを4月にいわゆるパブリックコメントにかけさせていただいておりまして、そのときにいただいたご意見等を取りまとめた資料でございます。資料の8は、今後の審議スケジュール(案)でございます。資料の9は、若干おくれて申しわけありませんでしたが、第1回の小委員会の議事録でございます。これは委員に目を通していただいておりまして、委員の固有名詞を除いて印刷させていただいております。資料の10は委員限りということでお配りさせていただきます。まだ委員のチェックを受けていない段階の第2回の小委員会の議事録でございまして、これは委員の方々にごらんいただきまして何かご意見等ございましたら、7月14日、次回の委員会が7月14日ですけれども、それまでに事務局の方にご連絡をいただければと思っております。その後、先生方の固有名詞は伏せて公表いたしたいと思っております。資料等、過不足等がございましたら事務局の方にお願いしたいと思います。
 それでは、議事は岡田委員長にお願いいたします。
【委員長】 今日はご多忙のところをお集まりをいただきまして、どうもありがとうございます。ただいまから、議事の1、NGOからのヒアリングということで説明をいただきたいと思います。
 早速ですが、環境行政改革フォーラムからまず説明をいただきますけれども、ご説明をされます方は環境行政改革フォーラム主任研究員の鷹取敦様でございます。わざわざご出席をいただきまして、どうもありがとうございます。よろしくお願いいたします。
【環境行政改革フォーラム幹事】 環境行政改革フォーラムの鷹取と申します。本日はこのような意見を申し上げる場をいただきましてありがとうございます。
 それでは、私は今日は、先ほどご案内のありました自動車NOx総量削減方策検討会報告書、それを拝見した上で私のこれまでの自動車公害対策にかかわる取り組みの中から感じた率直な意見を述べさせていただきたいと思います。
 まず、お手元の資料2にきょう申し上げることが大体書いてあるのですけれども、まず前半に自動車公害対策全般についての意見を申し上げて、後半に個々の対策の提案について申し上げたいと思います。
 まず第1番目に、「汚染者負担の原則」を明確にしていただきたいということです。これはどういうことかと申し上げますと、これまでの自動車公害対策の検討の過程を見ておりますと、事業者ですとか自動車交通の利用者に対する負担が大きいということで見送られていた対策がたくさんあると思います。その中で大きな効果の期待できる対策もあったと思います。今回いただいた報告書の中にも「汚染者負担の原則に立って」と述べられておりますし、東京都の対策についても自動車交通を使うことということは即ち交通公害の加害者であると明確に書かれております。そのような視点に立ってこれから積極的に汚染者負担を求めていくような視点で対策を検討していただきたいと思います。それによってこれまで難しかったと考えられていた対策も実現していただきたいと思います。
 次に2番目に、対策効果の実効性の確保をとあります。これは今回の報告書を拝見して思ったのが、これまで行われていた単体規制ですとか車種規制のような既に行われてきた対策については、実効性については問題は少ないと思うんですけれども、まだ行われていない対策についてはこれからそれをどうやって実現できるのかということがちょっと足りないように思います。全体的には早急に実行性のある施策の具体化を求めるですとか対策の充実強化は必要であると書いているのですけれども、では実行するのに難しい対策についてどうやったら実行できるのかということが示されていない。
 一方で課題の部分に掲げられているのは、その難しい対策をどうやって実現するのか、そのためどうしたらいいのかではなくて、どうしてその対策が実現が難しいのか、あるいはどうして猶予が必要なのかという理由が書いてあるように思います。この報告書を拝見する限りでは、やはりここでたくさん対策は掲げられていますけれども、やはり難しいということで先送りになる可能性が高いものが多いのではないかと思いました。
 次に3番目です。対策効果の定量的検討・費用対効果の検討をと二つ項目が書いてありますけれども、まず1番感じたのがNOx法のときに車種規制が導入されましたけれども、今回の報告書にも当時の環境庁からの報告でもNOx法単体というか、車種規制単体で一体どれだけの削減効果があるのかというのを拝見したことがないように思います。
 新しい対策を考えるときには、特に車種規制のような対策は負担が大きいわけですから、それによってどれだけの効果があるのか、あるいはどれだけしか効果が得られないかというのをあらかじめ検討しておくべきだと思います。それによって効果が少ないから、ではやらなくてはいいのかということには必ずしもならないと思うんですけれども、では効果が少ないのであればまだ足りないのだからもっとやらなければいけないということになると思いますので、あらかじめ定量的な効果は検討して、それを公表しておくべきだと思います。
 それからもう一つ、費用対効果についても検討するべきだと思います。実行はしやすいけれども非常に費用がかかる。だけれどもなかなか効果は期待できない、あるいは効果はどれだけあるのかわからないというものについてもう一度見直して、その対策の重点の置き方というものを考え直す必要があると思います。
 次に4番目です。排出量による目標設定の問題点とあります。これは今回の報告書の中の千葉県のNOxの排出量を拝見したのですけれども、千葉県は全体でNOxの目標削減量を達成しています。それにもかかわらず環境基準は達成できていません。その原因は幾つかあると思うんですけれども、その一つに千葉県全体で目標を設定したことにその理由があると思います。例えば千葉県全域の中で大気汚染の悪いところというのは東京の都心よりの地域ですとか、千葉市のような都市部のようなところであって、それ以外の周辺の地域にはないと思います。その周辺の地域も含めてNOxの排出量の目標を掲げて対策することによって、本当に目標が達成できているのかという評価、進捗管理が難しくなっていると思います。
 次に5番目です。定量的な対策の進捗管理をとあります。これは上の話にもかかわるんですけれども、まず今回の報告書を見て思ったことは、目標年の直前の年です、これを検討されたのが。それ以前からこのNOx法による環境基準の達成が難しいというのは、この検討を行う前にわかっていたはずだと思います。それにもかかわらず今までこのような検討を行わなかった。検討を行えば当然目標にまだまだ足りないということがわかるわけですから、対策の見直しなり新たな対策をやらなければいけないという話になると思うんですね。それをこの平成11年度まで行われて来なかったというのも現状の一因であると思います。
 報告書にも書いてあるのですけれども、今後必要なのは定量的にどれぐらいの効果があるのかというのが把握可能な対策が重要だということ。それから、その定量的な効果の把握の可能な対策を立案して実施する際には、毎年毎年定量的に進捗管理をして、ではどこが足りないのか、どこが課題なのか、まだほかに新しい対策をやらなければいけないのかというのを常に見直していかなければならないと思います。
 これが自動車公害対策全般についての考えです。
 次に個々の対策の提案について述べたいと思います。
 これはちょっと順不同で八つほど並べてあるのですけれども、まず第1に走行時のNOx排出に応じた負担をということなんですが、負担の話以前の話として、以前から言われてきたことだと思うんですが、NOxの排出規制値の走行モード、それと例えば東京都内における走行モードではNOx排出量が大きく乖離があると指摘されています。たしか平成元年度答申でもそれは課題として掲げられていたと思います。それがいまだに見直されていないということで、例えば将来予測を行うときに現状の排出量に対して規制値の削減割合をかけて将来予測を行うわけですね。そうすると、実態よりもNOx排出量が下がるという将来予測になるわけです。それによって将来に必要な対策の量というのが少なく見積もられてしまうわけです。ですから、走行モードをまず見直す必要があると。
 それと、実際に走っている自動車、シャーシダイナモに乗せてはかっている測定値ではなくて町中を走っている自動車の排出量というのは、シャシダイナモに乗せた車よりももっとばらつきもあると思います。これは市場のユースにもよると思いますし整備の状況にもよると思います。東京都は相当の数をシャシダイナモではかっていると思うんですけれども、例えば規制年次別ですとか重量区分別に分けてみると一つ一つの区分の中ではかっている台数というのはどうしても少なくなります。全体的に相当な数、種類の自動車がありますのでどうしても少なくなります。それでは現状を本当に反映しているのかというのは、疑問な点も多くあると思います。
 汚染者負担という点と、あと負担の公平性という点からいってNOxですとかSPMのような大気汚染をたくさん排出されている自動車の使用者については、その負担をたくさん負うべきだと。仮に同じメーカーの同じ型式の車を使っていてもちゃんと整備をしてあって、自動車の大気汚染の排出量の少ない車については負担は当然少なくてもいいと考えるべきだと思います。
 今、自動車に取り付けて排出量をはかるようなセンサーも開発されているようですので、そういうものを個々の自動車につけて、例えば車検のときにそれを集計することによって大気汚染の排出量に対して負荷金を課すような形でそれぞれの負担を求めることによって、ではその負担をもっと減らしたいからちゃんと整備しようとか、自動車の走行を少し減らそうとか、もっと排出量の少ない自動車に買い替えようというインセンティブになると思います。
 次に2番目です。ディーゼル車・ガソリン車一律の単体規制をということですが、ディーゼル車とガソリン車はエンジンの型式が違うという理由で技術的な問題から排出基準に差があります。だから、差があることによって同じ大きさの同じような車でもガソリン車ではなくてディーゼル車を使用することによってたくさん大気汚染を出してしまうことになりますね。
 これはどういう技術を用いるかではなくて、自動車を使用することによってどれだけ大気汚染が排出されるかに対して規制を設けるべきです。これからはディーゼル車・ガソリン車だけではなくていろいろなLPG車ですとかCNG車ですとか電気自動車ですとかいろいろ出てくるわけですから、エンジンの型式にかかわらず一律に厳しい単体規制をするべきだと思います。それによってあえてディーゼル車対策というのをしなくても、ディーゼル車で基準がクリアできないのであればガソリン車に変わるしかないわけですし、ディーゼル車で例えばDPFをつけるなどによって基準がクリアできるのであればディーゼル車でもいいということになると思います。
 次に3番目です。使用過程車に対する対策の充実をとあります。これは今までの対策の中で一番効果が大きかったのは単体規制です。これは当然だと思うんですけれども、買い替えることによって確実に大気汚染の排出量は下がってくる。ただ、その効果があらわれるのに買い替えまで時間がかかりますのである程度年月が必要になる。車種規制についても使用過程車はある程度早く代替することによって早めに効果を得ようということで、使用過程車に対する配慮はある程度あるとは思いますけれども、それでも使用実態に応じた猶予が設けられておりますので、なかなか効果があらわれない。
 効果があらわれないうちに、一方で単体規制が進んでいますので、単体規制を行った場合に猶予期間後の車種規制単体を考えたときに、その車種規制単体への単独での効果というのはどうしても少なくなってしまうと。単体規制に追いつかれてしまうということがありますので、現状の大気汚染が改善されない状況を考えると、その使用過程車をその使ったままでどうやって大気汚染を少なくするか。DPFの装着でも構わないのですけれども、使用過程車を買い替えると当然今まで使っていた車は廃車になってごみになって廃棄物になるわけですから、使用過程車を使用過程車のままで大気汚染の量を減らすという対策ももっと重点的に考えておく必要があるのではないかと思います。
 次に4番目です。自主的取り組みでは効果は期待できない。全く効果が期待できないわけではないと思うんですけれども、自動車の自主管理計画ですとかいろいろとキャンペーンされていますけれども、自主的に皆さん、大気汚染は大変ですから使用を控えたり大気汚染の少ない車に買い替えることによって環境をよくしていきましょうと呼びかけてきました。ただ、自主的な取り組みということは、自主的に取り組んだ人に対して一方的にコストの負担がかかるわけですからなかなか進まない。今までNOx法以前からそういう取り組みによってなかなか効果が得られなかったというのはわかっているわけですから、ある程度規制的な措置なり負担を求めることによって取り組みの担保を、実効性を確保するべきだと思います。
 それから、物流事業者については荷主が物流事業者に荷物を運ぶことを委託して自動車を使うわけですから、自動車の利用者という点では本質的には荷主にも責任があるわけですね。荷主に対しても、例えば先ほど申し上げた排ガスの測定値による排出量に対する負担を求めることによって、こちらの物流事業者よりもこちらの事業者の方がより低公害車をたくさん使っていると、それによって自分たちの負担も少なくなるんだということによって、より低公害の車に押し変わっていくのではないかと思います。
 次に5番目です。使用過程車に対するメーカーの対策に対する評価を。これは先ほどの3番目と同じことなんですけれども、メーカーというのは今まで大気規制をクリアした自動車を売ればそれでよかったと。単体規制をクリアするのは非常に大変な努力なり取り組みがあったと思うんですけれども、売って終わりではなくて、その売られた車に対して一番よくご存じなのはそのメーカーなわけですから、使用過程車に対してメーカーがこういうふうな装置をつけましょう、こういうようなことをしましょう、それによって大気汚染が少なくなりますよというのを利用者に対してサービスをすると。そういうサービスを提供することによってメーカーもその努力を評価されるような、それがインセンティブになるような対策を行うことによって、より使用過程車に対する取り組みが進むのではないかと思います。
 次に6番目です。長期的には自動車交通に依存しない社会への転換をと書いてあります。例えば、単体規制のような規制は、騒音ですとかNOxですとかSPMですとか個別の項目に対する規制です。ですから、それ以外の未知への物質に対してどうなのか。あるいは自動車の総量がふえることによって交通事故の問題ですとかいろいろな社会問題がありす。そういうものを根本的に解決しよう、低減しようと思ったら自動車そのものを減らさなければいけないわけですね。
 自動車そのものを減らす対策としては、例えば流入規制ですとかロードプライシングのようなものもあると思いますけれども、もっと言えば例えば都市のつくり方、そいうもの、都市のつくり方そのものが自動車にできるだけ依存しないような形に転換していく必要があると思います。それについての取り組みというのは今までちょっと迫力に欠けるというか、足りないかなと思います。
 それから、今の環境影響評価制度、アセスについてはそれぞれの事業について環境の影響評価をします。例えばその事業によって環境基準を超えない、だったらオーケーだ。あるいは超えてもその影響が軽微であるからその事業はオーケーだと。結局、自動車の大気汚染を排出することによってその事業がとまるということは今まであり得なかったと思います。
 ただ、首都圏ですとか近畿圏のような特定地域で新たに自動車の交通をふやすということは、それだけ現状の大気汚染が軽微であれふやすということになりますね。その一つ一つの事業の影響が積み重なることによって全体で少しずつ大気汚染がふえていく。例えば1%、2%大気汚染がふえたとします。それを削減するためにどれだけの努力が必要なのか、単体規制を実施してあれだけの負担のある単体規制を実施してでは何%効果があるのかということを考え合わせると、影響は軽微であるからその事業を認めていいのかというと、それは少なくとも大気汚染の問題の大きい地域においては問題なのではないかと思います。それよりも大気汚染なり自動車公害の負担を減らすような方向にまちづくりを転換していくべきではないかと思います。
 それから、自動車公害防止計画、環境基本計画などで自動車にかかわらないで、環境基本計画の場合は自動車問題にかかわらないんですけれども、環境に対して配慮していきましょうという計画を立てます。ただ、その上位計画というか、総合計画ですと、都市計画ではそのような視点はちょっと足りないように思います。当然項目の中では今の時代ですから掲げてあるのですけれども、まちづくり全体をどうやって、自動車の話で言えば自動車により依存しない自動車交通の負荷が少ないようなまちにしていくかという視点が足りない。既に走ってしまった交通の事情はそのままにしておいて、出てしまった交通の負荷をどうやって減らすかと、エンドオブパイプの対策に終始していたというのが今までの対策の限界だったと思います。
 次に7番目です。ちょっと話が戻りますけれども、局地対策における対象地域に関する課題。かなり小さな話なんですけれども、例えば川崎の南部地域、それから板橋区の大和町の交差点。たまたまあそこに自動車排ガス局が置いてあった。それによって日本一、例えばある年には大気汚染の濃度が高かった。では対策をするときに、そこの自動車排ガス局の前だけすればいいのか。
 川崎の南部についてもその前については、効果はどれだけあるかは別として、車線の中央に緑の壁というものをつくって対策をしたり、あるいは土壌の浄化装置をつけて対策をしようとしたりしていますけれども、本当にそこが一番悪いのか、そこだけが悪いのかというと、そうではないと思います。例えば川崎の南部地域といえば、あの沿道はずっと端から端まで大気汚染は悪いでしょうし、たまたま自動車排ガス局を置いていなかった。あるいは道路からちょっと離れた位置に置いてあったところでももっと悪いところはあると思います。
 そういうものを把握するのは、そこらじゅうに自動車排ガス局を置くわけにはいきませんので、ある程度シミュレーションによって推計して悪い地域はどういうふうに広がっているのか。その大気汚染の悪い地域全体に対してどういうふうに対策をしていくのかという視点が、その局地対策において必要なのではないか、ちょっと今まで足りなかったのではないかと思います。それに関してちょっと資料をつけてあるのですけれども、最後の3ページです。
 これが先ほど申し上げた板橋区の、板橋区は1996年の環境月間に設置したシステムです。これは板橋区の一般自動車排ガス局からテレメーターで毎時間毎時間、大気と気象のデータが区役所の方に上がってきます。そのデータを使って自動的にパソコンが毎時間シミュレーションするわけですね。
 ここに例示してある六つの画面は、ある一日の中から12月1日ですから、大気汚染の高濃度時期ですが、その中から6時間をちょっとピックアップしてみました。白黒で非常に見にくくて申しわけないのですけれども。左上の図は、カラーで見るとかなり青だったり緑だったりして非常に濃度が低いです。同じ一日の中でも濃度が低い時間帯ということになります。それが右の4時から5時、8時から9時、12時から13時とだんだん時間がたつに従って幹線道路を中心に大気汚染が刻々と広がっていくのがわかります。
 これを見てもわかりますように、大気汚染の悪いときというのは、自動車排ガス局の前だけが高いわけでもないですし、大気汚染の高濃度時期というのはずっとその間じゅう高いわけではないわけです。ある路線のある時間帯について高かったり、それを中心としてある時間はその全域が、この図で言うと一番右下の図ですね、板橋区全体が大気汚染の濃度が高かったりするわけです。
 ですから、一年じゅう自動車の通行規制をするというのは事実上、難しいと思いますので、例えばこのような大気汚染の地域的な分布をリアルタイムで把握して、では大気汚染の悪いときについてはちょっと自動車をとめてもらおうとか、自動車の量を少なくしようという、あるいは大気汚染の少ない地域を通ってもらおうという対策も局地汚染対策の一つとして考えられるのではないかと思います。
 ちょっと時間との関係みたいな点でわからないのですけれども、最後に8番目です。道路建設による対策の見直しについて。これはちょっと上の話と違って対策の提案とは少し違うんですけれども、川崎南部地域についてだけではないのですが、自動車公害の対策のメニューというのはたくさん掲げられていますよね。多いところでは50とか60とか掲げられているのですけれども、その中で比較的早く取り組まれるもの、たくさん予算を使われているものが道路建設だと思います。
 例えば立体交差化ですとか迂回路をつくるですとか、広域的に言えば環状道路をつくるですとか、右折専用のレーンをつくるとか、広域的なものですとか地域的なものですとかいろいろあると思うんですけれども、そういうものは比較的早く取り組みやすいものですからたくさん費用を使って今までされてきたと思います。川崎南部についても特に実施のしやすいところは既に取り組まれている対策としてそういうものがたくさん掲げられていました。ただ、道路建設をすることによってどれだけの効果があるのかという評価は、定量的な評価は余り見たことがないように思います。
 費用対効果の話なんですけれども、ではそれだけの費用を使うことによって自動車公害はどれだけよくなるのか。あるいは道路建設の場合は悪くなることもあると思います。交通量の円滑化というのを一般的には目的としているのですけれども、首都圏のような場合には交通量を円滑化することによって潜在的な交通需要というのはまだまだありますので、そのような交通がまた新たに入ってくるわけですね。道路をつくることによって一時的にはよくなると。長期的に見るとまた自動車がふえて再び渋滞になるという実態もありますし、新たに道路をつくることによってその道路の沿道、今まで幹線道路がなかった地域に幹線道路をつくることによって沿道の環境は悪化します。それから道路による立ち退きもあります。それだけ社会的な負担なり費用の負担を求めたものがどれだけの効果があるのかというのはもう一度見直していただきたいと思います。
 以上で、ちょっと雑駁ですけれども私の意見とさせていただきます。
【委員長】 どうもありがとうございました。
 ただいまの説明につきまして何かご質問などございますでしょうか。
【委 員】 貴重なご意見ありがとうございました。ちょっと一つお伺いしたいのですが、1−3のところで、費用対効果あるいは実効性の低い対策メニューということ、大きな効果の期待できる対策を重点的に実施するのが重要だという先ほどのお話がございましたが、例えばこういうものはというのが何か具体的にご支持いただければ、何かありますでしょうか。
【環境行政改革フォーラム幹事】 例えば、一つは非常に参考にすべきだと思ったのは東京都の取り組みなんです。東京都の取り組みはロードプライシングの話ですとかディーゼル車対策というのがあるのですけれども、あれはどこを参考にすべきかというと、ちょっと今のご質問の趣旨とずれるのですけれども、一つは自動車公害というのが自動車の利用というのが、1−1にありますように自動車を使うことによって自動車公害の加害者になるんだということを明確に言って、ではその中の対策をどうしようと。今までの東京都の自動車公害防止計画にたくさんの対策メニューがありますが、その中で効果のありそうなものを狙い打ちしてやりましょうということでディーゼル車対策とロードプライシングの話をまず二つ大きく持ってきたと思うんですね。そうすることによって世の中に対するアピールも大きいですし、難しいものを1点突破的とういか実現していこうというところだと思うんですね。その姿勢は非常に見習うべきだと思います。
 それで、今おっしゃった何が実効性が高いのかということなんですけれども、それはちょっと後ろに述べた私が幾つか申し上げさせていただいた対策が実効性が本当に高いのかどうかというのは定量的に評価してみなければわからないと思うんですけれども、やらないよりはやった方がいいとか、ほかの都市でやっているからこれも入れておかなければいけないとかという観点ではなくて、ではどれをやれば本当に実効性が高いのか。実効性の低いものも一緒に盛り込むことによって対策をする側の負担が大きくなるわけですから、効果の低いものはこれは思い切ってやめましょうと。もっと効果の高いものだけにしましょうという見直しを改めてする必要があると思います。
【委員長】 よろしゅうございますか。大変、網羅的にご説明いただきましてありがとうございました。まだ具体化する過程の中でいろいろな問題が出てきます。さらに、こんなことを申し上げていいかどうかわかりませんが、非常にフルーラリズムと言いますか、交通政策というのは非常に多元的なんですね。いろいろな政策、一つで済むものではないというところに難しさがある。それをウエイトをかけろというお話だろうと思います。しかし、ウエイトをかける場合でも、そのウエイトのかけ方によって今度は大衆の受けとめ方はまた別なんですね。そこら辺にこの自動車交通対策の非常に難しさがあるわけですね。
 提案というのは、皆さんからいろいろな提案が昔から出ているんですね。特に経済学者はロードプライシング1本槍で押しているわけです。これに対して皆さんの目で見てロードプライシングはできるのと、あるいはできるとすればどういう効果があるのと、こういうふうな疑問と言いますか、これはやはりやってみなければわからない部分もあったりしまして難しいので、今後そういうこともぜひいろいろな角度からご意見をいただければありがたいと思います。きょうは時間の関係もありますのでここら辺にさせていただきますけれども、本当にありがとうございました。
 それでは引き続きまして、全国公害患者の会連合会にご説明をいただきます。ご説明いただきますのは、全国公害患者の会連合会常任幹事の梶浦鈴枝様でございます。よろしくどうぞ。
【全国公害患者の会連合会】 私は全国の大気汚染公害被害者を代表して、特に東京の被害者として東京公害監査会に属する梶浦が意見を述べさせていただきます。
 本日は特に我々被害者がどのような苦境に立たされているかというところで、あえて生存権と言うか、そういったことを主張しながら述べさせていただきたいと思います。
 ことし1月31日の尼崎裁判判決は、この生存権の中の一つで最も基本的な身体権というものを認めた判決だったと思います。もっと言えばまともな空気をまともに吸える、そういう権利を患者は持っているし、そういう権利を侵してはならないということではないかというふうに思います。
 私たち公害被害者は全国では各地で裁判に立ち上がり、その都度和解、決着してきましたが、裁判のそもそもの目的は大気汚染をなくすことでした。これまで西淀川、川崎、倉敷、いずれも裁判が長期化した結果、差止め請求が認められないままやむなく和解という形で終結してきました。しかし、少しでも地域の環境をよくしていくために、それらの地域では和解金を充ててまちづくりという形で地域再生に頑張っているという状況です。
 ようやく、尼崎裁判で差止め請求が認められました。被害者を被害者として認めた判決です。国は言うまでもなく22年間このまま大気汚染をひどいままの状態でそのままにしてきたということで、被害はひどくなる一方で、その中でも私たちの住む東京の状況は深刻です。被害者ですから被害の状況を皆さんにお訴えしながら、私たちは何を求めているのかということをお話ししたいと思います。
 全国の自治体の条例患者は既に9万人を超えています。さまざまの制約を持った条例ですけれども、それでも9万人を超えていまして、東京都の条例認定患者数は既に1978年から平成11年3月末までに5万人以上にふえているという状況です。亡くなった方も、補償法の認定患者ですけれども全国では4万人を超え、東京では1万人近くになっているという状況です。
 この中には若くして亡くなっていった私たちの仲間であった鈴木芳枝、加藤恵子などの実態を述べながら被害の状況はどうであったかということを述べさせていただきます。
 鈴木芳枝は北区に生まれました。そして、青年期に気管支ぜんそくを発症、繰り返される発作で定職につくことができなかった、結婚もあきらめざるを得なかった。そして発作の繰り返す中で肺気腫を併発した結果、88年に、この88年というのは指定地域解除が3月にされたときですけれども、40歳にして重積発作で亡くなったわけです。彼女は私どもの会の事務局長であったわけです。
 また、加藤恵子は生まれた地元群馬で過ごしているうちは、いたって健康優良児的な身体を持った人でした。高校時代はバスケットの選手として活躍していました。希望を持って東京で大学生活をおくるわけですけれども、まもなくぜんそく発作を発症、何とか大学は卒業し、薬剤師の大学でしたから病院に薬剤師として就職したということです。病院ですからぐあいが悪くなると点滴をしたり薬をもらったりということで勤務することができたわけです。その間、かなり発作は起きていたと思います。
 92年2月に勤務先の病院前で昼休みにちょっと外出した後、帰ってきたときに大きな発作で倒れたということで、たまたまその病院の院長が呼吸器の先生で一生懸命蘇生しましたけれども、意識不明が8日間も続いてしまってかなり体にダメージを受け、もうあきらめかけたわけですけれども、それでも奇跡的に回復しました。ところがいろいろ言語障害、手足の障害など出していまして、リハビリをそのあとずっと行ってきたわけです。
 その年の11月から12月にかけても小発作、大発作を繰り返していましたけれども、結局、大発作を起こして救急車を自分で呼んだ後、自宅で倒れたということで、とうとう病院で帰らぬ人になってしまったわけです。
 加藤恵子も私どもの会の事務局長でした。92年の地球サミットNGOの代表に選ばれ、ブラジルに行こうと張り切っていたわけですけれども、結局果たすことができませんでした。もし、85年に環境基準が達成していたら二人とも命を落とすことはなかったのではないかなということで、ご本人は本当に残念で無念でたまらないと思いますが、私たちも大事な仲間を失って残念でなりません。
 加藤恵子は不自由な言語で92年の総行動デーに環境庁長官に訴えています。「大臣、公害病は死に至る病気です。大気汚染は決してよくなっていません。くやしいことですが、私が身を持って証明することになってしまいました。私のような犠牲者を二度とつくらないために空気をきれいにしてください」このように訴えています。
 その後、私たち東京では96年、自動車排ガス公害をなくすために裁判を始めました。原告の中には認定患者もいますけれども、たくさんの現在発症したばかりの未認定の患者もたくさんいます。原告Aはその一人です。生まれ育った北海道で小学生のころ小児ぜんそくを発症したが、高校時代にはほとんど薬も使わないほど治っていました。しかし、やはり東京で働き出した途端に再発したわけです。繰り返される発作ですが、医療費、生活費を得なくてはいけません。ですから一生懸命我慢して薬を飲んで点滴を打って働かざるを得なかったわけです。しかし、とうとう無理がたたって30代で肺気腫になってしまって、今もまだ30代ですけれども酸素を手放すことができず、酸素ボンベを引っ張りながら行動しているという状況です。
 患者はその病気の重い軽いはありましょうけれども、多かれ少なかれ未認定の患者というのは同じような状況に置かれています。私たちはそういうことを早くなくしたいということで、こういう犠牲者を早くなくしていきたいということでやむなく裁判を起こしたわけです。
 国は2000年度達成目標はもう困難ということで、三たびの裏切りというふうに書きましたが、これは本当に被害者を被害者として認めていなかったことではないかと。現在進行形の大気汚染はぞくぞくとぜんそくの方が、犠牲者が、被害者が出ていること、そういうことをはっきりと国は認めるべきではないかというふうに私たちは思いますし、そういう立場をそういう法廷で今度の改正もしてほしいと切に願ってます。
 私たちは当面、旧環境基準を求めます。東京都の環境白書では東京都が直面する環境の危機に挑むためには、従来からの延長線上にはとどまらない思い切った政策の転換が必要であるというふうに書いてあります。また、環境の危機の核心は都民の健康への危機であるというふうに書いてあります。被害者を被害者として認めるということは当然のことながら、汚染者負担の原則に立って再度救済制度を確立することが必要ではないかというふうに思っています。
 さきの尼崎判決では被害者を出した最大の原因はDEPであると指摘し、SPMの一定量以上の排出を認めないという原告の身体権を認めた上で差止め請求を認容したのではないかというふうに考えます。もうこれ以上、被害者を出してはいけないということだと思います。
 6月27日、リスク評価検討会の作業部会が「ディーゼル車の排ガスは発がん性を有していると見られる」という報告素案をまとめられました。肺がんの発がん性については以前から指摘されてきたことですが、ディーゼル排ガス対策の抜本的評価が本当に必要なのではないか。私どもは呼吸器の患者の団体ですけれども、こういった肺がん、その他さまざまな病気を起こし、悪さをしているというのがディーゼル排ガスではないかというふうに私どもも思います。
 首都圏を初め、中部圏、大阪圏など自動車排ガス、DEPによる被害者が国の対策の強化を一刻の猶予も許されないということで下記の対策を求めます。簡単に書いてあります。
 これ以上、幹線道路はつくらない。このことが大事だと思います。これについてはイギリスの調査報告でも明らかになっているかと思うんですけれども、道路をつくれば自動車交通の増加はふえているという報告が出されています。ぜひこれ以上、幹線道路はつくらないでほしいというふうに思います。
 それから、思い切った流入規制を強化してほしい。特にディーゼルの大型車、それからマイカー規制といっても特にディーゼル乗用車、これを強化してほしい。それから実効ある交通流対策を行ってほしいというふうに思います。
 それから貨物輸送の自動車使用をできるだけ制限させ、その他、これについてはさまざまな方々から出されると思いますが、簡単に訴えさせていただきますけれども、鉄道、船舶に切り替えるような対策を講じてほしいというふうに思います。思い切ってそういう対策を講じることが必要だと思います。
 それから、特に都内など環境基準未達成地域には、大型ディーゼル車の乗り入れを全面的に禁止していくという措置をしていほしいというふうに思います。
 それから軽油優遇税制を是正し、ディーゼル車からガソリン車への転換を図るようにしてほしい。これらもやろうと思えばすぐにできることではないかというふうに私どもは考えます。
 それから軽油の硫黄分規制を一層強化することをお願いします。
 それから7番目に、ディーゼル車の単体規制を厳しくし、低公害車への切り替えができるような補助制度を設けること。
 また、NOx、SPMなどの測定箇所をふやすことをお願いします。それから、気管支ぜんそくを発症させるDEP、これこそ私どもの病気をつくっている元だと思いますので、測定体制を早期につくってほしいと思います。
 最後に、自動車メーカー、国、燃料メーカーなどの負担による被害者救済制度を新たにつくってほしい。私ども救済されることが目的ではありませんが、とにかく空気がこのような状況の中で被害者が急増しているときにはやはり被害者を救済する、そのための財政負担はもちろんその被害・大気汚染を出している自動車メーカー、国、燃料メーカーなどに負担させてほしいというふうに私たちは要求します。
 以上です。どうもありがとうございました。
【委員長】 どうもありがとうございました。ただいまの説明につきまして、ご質問などいただければと思いますが。
 勝手な解釈で恐縮なんですが、今のお話は一応、これはイギリスでもやっている健康被害という問題が自動車対策の中で最も優先されるべきだと。この点は外国でも国によってちょっと違いまして、最近こういう被害が出る違いがあるということもあるかもしれませんが、イギリスでははっきり健康効果と言いますか、健康効果の観点をもっと重視するべきだということを言っているということを私も何かで読んだことがありますけれども、恐らくそういうご主張だと理解してよろしゅうございますか。
【全国公害患者の会連合会】 そうですね。やはり私たちも生きる権利ということもありますし、また被害を発生してその対策をとること自体やはり最初からきちんと対策をすることと、どっちが経済効果があるかというふうなことも東京都の環境白書などにも出ておりますが、やはりそういった面からも必要なことではないかというふうに思います。
 ただ、やはり一番大事なことは私たちは主権者たる国民なんだということを多いに主張したいというふうに思います。だからこそ私たちは健康で働きたい、健康でいろいろなことをしたいというふうに思います。働くことができないから今、さまざまな肩身の狭い思いをしているということもありましょうし、実際に病院通いしかできない患者がいっぱいいるわけです。そういうことをいつまでも認めてていいかというと、そんなことはないし、やはり子供においても勉強すら阻害されてしまう、学校へ行っても家にすぐ帰らなければいけないとか、また体育の時間も常にできなくてそばで見てなくちゃいけないという子供が結局ぜんそく患者の場合はたくさんいるわけです。ですから、こういった子供たちもやはりなくしていきたいというふうに私たちは非常に思います。
 ですから、私たちは一度ぜんそくにかかってしまったら、もう治り切らないだろうというふうに思います。ですから、薬をたくさん使ってこういうところにも来ているわけですけれども、やはりこういった私たちの苦しみはもう私たちだけで結構ですと、もうこれ以上被害者を出さないでくれと。実際それで亡くなる方というのは、子供すらたくさん亡くなっているという状況ですから、こんな深刻な問題というのはないと思うんです。アメリカで銃で何人も殺されているというふうなことがありますけれども、銃規制をするということと同じようにやはり大気汚染も同じように銃であると私たちは思っているんです。殺されているんです。そういうちょっと過激な発言ですけれども、極端に言えばそういうことですので、ぜひ本当にここで思い切った対策をとらなければいけないというふうに思いますし、先生方には特にそういう立場でこれからの対策を考えてほしいというふうに思います。
【委員長】 時間の関係もございますのでこの辺で終わりにしたいと思いますが、大変貴重な意見をお示しをいただきましてどうもありがとうございました。また、何かのご意見などをいただくことがあれば、またご意見いただきたいと思います。どうもありがとうございました。
 それでは続きまして、大気汚染測定運動東京連絡会でございますが、ご説明される方は大気汚染測定運動東京連絡会事務局長の藤田敏夫様でございます。よろしくお願い申し上げます。
【大気汚染測定運動東京連絡会】 本日は、この小委員会にお招きいしてありがとうございます。私は大気汚染測定運動と申しまして、毎年6月に全国でNOが約3万5,000箇所、酸性雨が約300箇所、それからSPMが約150箇所、それで市民によって皆測定を展開して環境公害のモニタリングを行っております。座ってお話させていただきたいと思います。
 東京では24年前から行っておりまして、この6月の測定で第46回目を迎えました。延べ測定数は約45万箇所に及んでおります。大気汚染を測定すれば、モニタリングをしていればよくなるというものではありませんで、私たちも随分今まで行政にいろいろなことを要請してまいりました。きょうはこの小委員会で自動車NOx総量削減方策検討委員会の報告書に対して意見を申し上げたいと思います。
 この報告書を読ませていただきますと、かねてから私たち市民側から提起してきた施策が大変たくさん取り入れられておりまして、評価できる面が多いのですが、しかしながらこれまでの都市計画が良好な都市環境の創出ということをうたっておりますけれども、お上の計画であって市民側の意見が余り取り入れられてきませんでした。言ってみれば、そこに住んでいる住民をよそに上からの計画の押しつけで都市改造は行われてきたと言えます。自動車NOx削減問題は都市計画と深く関連しておりまして、この検討会でもこの問題の真の解決のためには都市計画のあり方についての理念を欠くことはできないと思います。
 したがって、この理念を明確にした上で、関係省庁や自治体を含む都市づくりの基本政策における環境政策にどのように反映させるかが最大の課題ではないかと思います。
 前置きはそのぐらいにしまして、施策のオプションについて意見を申し上げます。
 その前にまず環境基準、NOの環境基準について申し上げたいと思います。大気汚染、特にNOとSPMの環境基準については、環境基本法で環境基準とは「人の健康を保持し、生活環境を保全する上で維持することは望ましい値」とされています。あくまで「望ましい値」、言うなれば「ゴール」であります。達成することは法的に担保されていないわけです。
 したがって、1978年の改定のときに7年後の85年までにその上限値を全国至るところで達成するということが公約されました。それにもかかわらず環境庁は22年後の今日まで4回にわたってギブアップ宣言をしてきたのであります。こういう事態を続けることは行政としては厳に避けなければならない。そこで私たちは環境基準を法的に拘束力のある基準「スタンダード」に変えることを提言したいと思います。これは大変必要なことだと思います。
 それから、環境基準そのものについて申し上げますけれども、78年のNOの環境基準の改定のときに専門委員会からの答申で、長期曝露の影響が強調されました。健康影響判定基準がNOの年平均値で提起されたわけです。しかし環境庁は、73年に環境基準を設定したときに日平均値で定めた関係で、年平均値ともっとも相関のよい日平均値として日平均値の年間98%値を採用いたしました。
 しかし、この関係はあくまでも統計的な関係でありまして、22年間の間にこの両者の経験的関係が微妙に変化してまいっております。このような不安定な値を基準値とすることは不適当です。もとの答申に立ち返ってNOの環境基準は年平均値で定めるのが適当ではないでしょうか。そういうことを申し上げたいと思います。
 それからNOの短期曝露の指針でありますけれども、この専門委員会答申ではNOの短期曝露の基準として1時間値で0.1〜0.2ppm以下とされました。しかし、私どもがいろいろと行政のデータを点検しておりますと、23区内の1時間値では秋から冬にかけてこの値が0.1ppmを超えて0.2ppmに近い、こういう時間帯が数時間も継続することが数多く見られます。
 例えば、この近くにあります東京タワー125メートルではかられた1992年12月の値を見ますと、125メートルにおいてすら0.1ppmを超える時間帯は5時間続いています。しかしながら、こういう問題について余り発言がありません。環境庁側でもそういうことは黙視しております。そういう意味でこの問題は大変重要な問題だといふうに思います。
 次に、特にSPMですけれども、最近大変にぎやかに議論されていますけれども、PM2.5、微細粒子でありますけれども、この健康影響が非常に重大だということがアメリカその他各欧米で指摘されておりまして、日本でもそういうことが言われています。しかし、日本はまだ測定が行われておりません。常時測定は行われておりません。測定体制を早急に確立して、これの環境基準を徹底することが重要だと思います。 次に、これまでNOx排出総量削減計画というのが何回か立てられました。1985年、大都市におけるNOx対策の中期展望。88年、NOx対策の新たな中期展望。そして92年の自動車NOx削減法並びに特定地域における削減計画。こういうものが立てられておりますけれども、これにもかかわらず実態は、この下の図にあらわしたように推移しております。
 この点線が削減計画、新たな中期展望における削減計画でありましたけれども、実線の方は実態であります。こういうふうに非常に大きく乖離してしまっている。この原因がただ単に自動車保有台数の増大とかディーゼル化だとか大型化という言い訳で済む問題ではありません。この主役の施策とか計画に根本的な欠陥があったとか、あるいはそれがよくてもそれが実行されなかったという面がこういう図に反映されていると思います。この点は非常に深く反省していただかなければいけない問題だと。この計画が若干緩やかになったというならまだそういうことはその範囲にあると思いますけれども、逆行してふえてしまっている。そういう点では、まさにこれは大きな失敗ではないかというふうに思います。 次に、車種規制の強化についてお話し申し上げます。この車種規制については最近いろいろと新たな短期・長期が出ておりますけれども、余り複雑な規制をしないで国民にわかりやすい規制にしていただきたい。例えば、最近はガソリンとかLPGに対する新規制値が出されましたね、2003年、そういうのが出ていますけれども。これは既に後追いではないだろうか。既にプリウスとかその他、現行の基準の10分の1程度のものが先に出てしまっている。こういう状態では行政は非常に後追いになっているのではないかと。
 それから3.5トン以下のディーゼル自動車はガソリン車と同じ規制にしていただきたい。先ほどもお話がありました。こういうことは非常に重要なことだと思っています。
 それから規制モードですけれども、これはテンモードとかイレブンモードとかいろいろありますけれども、最も汚染がひどい東京都内の実走行モード、これに切り替えるべきであると。これも先ほどお話がありました。
 それから、SPM排出規制値を一刻も早く欧米並み以下にすること、これが必要ですし、実現可能であろうと思います。
 次に、事業者におけるNOx排出抑制対策の強化ですけれども、これはこの報告書にあります方法としては@のオプションが非常に重要で、私たちも賛意を表したいと思います。
 それから、自動車メーカーに対するNOx排出総量規制の義務づけであります。NOx排出抑制を総体として行うためには、自動車メーカーに対して全販売車両に対してメーカーごとに使用過程車も含めてNOxの総排出量を規制すべきだと思います。そうすれば、一部排出量の多いものがあっても低公害車をつくらざるを得なくなってくると思います。全体としての総量規制、排出規制ということは重要だと思います。
 特に最近、いろいろとこの報告書にも出ていますけれども、販売カタログに排出量を表示すること、これを義務づけることには大賛成です。 次に、自動車交通需要抑制(TDM)について申し上げます。当面は大気汚染の激甚地域、例えば東京都心の4区などがそうですけれども、この激甚地域への自動車の乗り入れを時間帯を限って禁止する。ただし、消防車、救急車、タクシーは除外していいと思います。
 それから大気汚染防止法第21条で、公安委員会への要請条件が今はCOに限られていますけれども、これにNOxあるいはSPMを加えてこういう要請を地方自治体から行うことができるようにすべきであるというふうに思います。
 それから交通規制が実施されたもとでのNOの削減がどういうふうになるだろうかというのは、この後の方の資料に私が研究いたしまして学会に報告いたしましたレジュメがついていますので、後でごゆっくりお読みたいだきたいと思います。この例は昭和天皇が亡くなられたときの1989年2月24日と、その1週間前の17日のNOあるいは交通量を比較したものでありまして、見事にこの交通規制が行われた時期はNOが激減しているのであります。それは、その通過車両が通った高井戸地区だけではなくて全都的にそういうことが起こっております。後でごらんください。
 大都市の幹線道路は1車線削減して、自転車専用道路を建設する。これは非常に、いわゆる幹線道路を通りにくくすると。一時は大変混乱するかもしれないけれども、こういうふうにして1車線削減して通りにくくすれば自然に交通量は減ると思います。そういう点で自転車専用道路、これを建設していただきたい。
 それから次に経済的措置でありますけれども、先ほどもお話がありましたとおり軽油引取税はガソリン税よりも若干高くする必要があるということが必要ではないかと思います。これは一番ディーゼル対策での決め手になるかもしれません。排出ガス量に比例して自動車関連税を高くする。そして逆に低公害自動車は税金や高速道路料金を安くする。こういう政策も非常に効果があるのではないかと思います。
 それから、局地汚染対策でありますけれども、現在、東京でもほかの都市でも、国道43号線の尼崎もそうでしたけれども、幹線道路の上に二階建てに建設された高速道路、これが大変今悪い影響を及ぼしております。大和町もそうですし、今まだ自動車排ガス測定局のない目黒区の池尻なども非常に低いところでこういうことが起こっていまして、大変局地的に悪い状態が起こっています。こういうところはこれをやめて、思い切って高速道路は順次地下化していくと、ああいうものは本当に環境によくないという象徴だと思います。そして排ガス浄化装置を取りつけていくということが必要です。
 それから、汚染激甚地域については、先ほども申し上げましたとおり車線を削減して両側に緑樹帯を建設して、その中に土壌脱硝装置を設置するということが必要であります。昨日もお伺いしたのですが、この近所で環状2号線が西新橋二丁目につくられますけれども、東京都はそれを地下にいたしましてその両側に植樹帯をつくって土壌脱硝装置を設置するということを説明しております。
 それから東京板橋区大和町、これは象徴的に言われていますけれども大田区の松原橋、これも超汚染道路であります。こういう汚染の激しいところでは時間帯を限って一定期間を大型車の進入禁止をするような措置をとる必要があるのではいかと思います。これもTDMの一つだと思います。
 それから次に、先ほどもお話が出ましたけれども、大型幹線道路の建設の問題点、生活道路の改善、これが急務であります。幹線道路の建設で交通量が増大するということは東京都の環境白書2000やメトロポリスの都市交通、これは市政調査会で最近出た本ですけれども、こういう本に示されていますように、大都市における幹線道路の建設が自動車の潜在交通量を顕在化して都市交通量を増大させることは明らかであります。
 我々がかつて95年に出版いたしました「くるま依存社会」という本の中で寺西先生、水谷先生などが調査された結果が出ていますけれども、建設省の道路交通センサスによりますと、首都高速道路の延長は20年間に約1.7倍にふえているにもかかわらず、渋滞自体は逆に2.2倍にふえたということ、この数字は今は若干不正確ですけれども、逆にはなりません。そういうことで、このことは道路の供用状態を無視して自動車生産が飛び抜けて増加していることを示しているのであります。
 都心部の通過交通は都内の交通量のわずか5%にしかありません。東京都の自動車公害防止計画、その他の資料を見ますと、東京都で他県から都心を通過して他県へ向かう、いわゆる通過交通、これは都の調査で都内の交通量のわずか5%に過ぎません。都内の内外交通、都内だけで動いている車は79%です。こういうことから考えても建設省や石原都知事が主張している三環状高速道路を建設しても都心の渋滞緩和には役立ちません。それよりも、今日の財政硬直化の中で1メートルの建設費が1億5,000万円というような中央環状新宿線のような高速道路は、財政上からも大きな問題をはらんでおります。
 さらに、東京では大気汚染が一般居住地にまで広がっています。東京都の調査では住宅地における汚染の82%は道路から来ているということが調査されております。原因は大型車の増加を初め、居住地を通り抜ける車の氾濫です。大気汚染だけでなく交通事故が多発しています。
 そこで私たちは特定地域内にある道路幅が6メートル未満の道路では自動車の一方通行を実施することを求めたいと思います。そこでは車速が20〜30キロメートルに厳しく制限させることによって騒音を防ぐことになります。こうすれば歩道を両側に拡幅できて歩行者の安全を確保することができると思います。
 最後に、自動車排ガス新規規制の前倒し実施をお願いしたいと思います。現在、東京では大気汚染による被害認定患者だけでも7万4,000人を超えておりまして、非認定患者を加えますとその数は数十万人とも言われています。今や健康被害を根絶する抜本的な緊急対策を確立しなければならないときです。このような観点から、自動車排ガス削減新規目標の実施が7年後の2007年では、その間の被害者の増加はどうするのか、まさに人権問題です。したがって、新規目標は前倒し実施が必要だと考えます。
 以上であります。どうもありがとうございました。
【委員長】 どうもありがとうございました。大変貴重な具体的なご提言をいただきましてありがとうございました。
 何かご質問などございますでしょうか。
【委 員】 ちょっと一つ教えていただきたいのですが、2−2のところで環境基準は年平均値というお話が出ておるのですが、これは専門委員会の答申の中で長期曝露の関係で現行の環境基準で0.02から0.03、日平均値を年に直しますと。その中でここであえて年平均値で定めることが適当というのは、それであと短期曝露の問題もございます、そういう時間的な変動というものも必要だろうと思うんですが、ここであえて年平均値を強調されたことをちょっとお伺いしておきたいのですが。
【大気汚染測定運動東京連絡会】 長期曝露ですから年間曝露されている量、それを評価するわけですけれども、日平均値の98%値というのを採用しているのは、あくまでもこれは78年当時に年平均値を2倍するとちょうど98%値になるという統計的な関係があったんですね。それを使って0.02を0.04に、0.03を0.06にしただけなんですね。ところが、その2倍という関係が現在では崩れてしまっている。1.7倍ぐらいになってしまっているというわけでありまして、年々そういうものは変わっているわけです。ですから、そういう不確定なものではなくて年平均値で十分ではないだろうかと。どうせ1年間たたないとこういうものは評価できないわけですね、98%値にしても。ですから、1年たった段階での年平均値でやれば一番適当ではないだろうかということで、最近、環境庁の方々もときどきお話をしますと年平均値という話が出てまいります。ですから、そういう点では不確実な98%、しかも非常にわかりにくい値でありまして、こういうものはやめて年平均値にされた方がいいのではないだろうかという話です。
【委員長】 一つ教えていただきたいのですが、大変意見が分かれそうなテーマが一つございまして、ここでは環状道路の建設は控えるべきだとご指摘をいただいている。ところが、東京都も環状道路は、これは都市の交通の救済に役立つという視点をとっているかと思います。当然、ほかの省でも環状道路の建設というところに非常に高い評価を与えておられますね。ここのところは通過交通量がわずか5%に過ぎないからというお話で立証されているようにも思うんですが、幹線道路、環状道路ですか、そこら辺の幹線道路と環状道路を私はちょっとちゃんぽんにしているかもしれませんが、道路建設ということについて必ずしも多くの方は否定的ではない方がいらっしゃるんですね。その辺はどう理解したらよろしいのか。
【大気汚染測定運動東京連絡会】 確かに最近非常に大きなキャンペーンがなされています。新聞なんかでも1面2面全部使って建設省が新聞社の広告として出していますけれども、これは非常に大きな問題だと思います。東京都が環状道路が必要だと言っているのは、他県から入ってきて東京都心を通って、例えば埼玉県から都心を通って神奈川県へ抜ける車、そういうものは排除すべきであるということで、そうすると環状道路をつくれば都心を通らなくてもいいだろうという議論であります、簡単に言えば。
 ところが、そういう車はわずか5%しかないんだと。全体の79%は東京都内だけで走っている。それから三多摩と23区を行き来する車は4.5%だということになりますと、環状道路をつくっても余り効果がないと、5%の車が全部減るかどうかわかりません。ましてや2〜3%しか減らないかもしれない。そういうことが東京都自身の調査で出されているわけですね。
 ですから、私たちはおかしいと思いますし、最近の東京都の環境白書2000、あるいはさっき言ったメトロポリスの都市交通、こういうものを見ますとイギリスでもM25というロンドンの郊外を外周する環状道路をつくったら、大体予想交通量の2倍になってしまった、そいうところは。パリもそうですしニューヨークもそうです。ですから、そういう轍を踏まないようにやるべきではないかと。そうすることによって東京全体の大気汚染をよくすることができる。
 例えば申し上げますけれども、レインボーブリッジがあります、副都心に行く。あのアセスメントでの交通量の予測は年間1万6千台でした、一日に。ところが、その後事後調査が行われまして首都高速道路公団が事後調査をしたら5万5千台になっていました。私どもは昨年11月とことし3月に12時間毎時間交通量をはかりましたら、芝浦側が5万5千台、それから台場側は6万7千台です。したがって、あの周辺は大変な大気汚染、騒音、そういうことが行われていまして、そういうアセスメントといっても実際に本当に機能していない状態であります。
 それはどうしてかと言うと、その事後調査報告書にも書いてありますけれども、その2ページ目につけました図ですね、先ほどの削減計画、このアセスメントで削減計画を使って予測しているわけです。したがって、将来はバックグランド濃度が減るということで過少に評価してしまっている。ところが実際はそうなっているわけですから、当然のことでバックグランド濃度は上がっているわけです。したがって、先ほどのようなことが起こってまいります。そういう点ではぜひこの問題は重要視していただきたいというふに思います。
【委員長】 どうもありがとうございました。よろしゅうございますか。また、何かといろいろ教えていただければと思います。
 それでは続きまして今度は、財団法人公害地域再生センターの方からご説明をいただきます。ご説明をされる方は公害地域再生センターの研究主任、傘木宏夫様でございます。よろしくどうぞ。
【(財)公害地域再生センター研究主任】 きょうは貴重なお時間をいただいてありがとうございます。
 私の方は資料の5が私の発言の概要になっておりますので、ごらんいただきたいと思います。座って説明させていただきます。
 この資料5の表紙はどんなことを話すかというサマリーになっていまして、1ページ目からが本文になっています。これを全部しゃべったら時間がなくなるので簡単にいきたいと思いますが。あと付属として後ろの方に、さきの尼崎の対策で5省庁の連絡会議が出した対策案に対する私の意見をつけています。それから、浜松で行われたトランジットモールの社会実験、これで沿道の環境に大分効果があったみたいだよという、そういう資料。それから最後には、これは大阪市の調査で、いわゆるボトルネックを解消したらよけいに大気汚染がひどくなったという結果を調べた3カ年調査のデータをつけてあります。そういったものをごらんいただきながら私の話を聞いていただければというふうに思います。
 まず初めにあおぞら財団、ご存じのように西淀川公害訴訟の和解金で設立された財団ですけれども、建設省との和解で設けられた連絡会、そこでの政策協議を推進するために患者会を支えながらいろいろと調査研究等を進めております。
 この間、その和解の前はこういう道路提言、西淀川道路環境再生プラン、これがパート1ですけれども、それからそのあとパート2、パート3という形でいろいろと提言を出していきました。こういった活動をしている立場から発言していきたいというふうに思うんですけれども、まずはじめにのところで苦言を申しているのは、法の体系に対するきちんとした反省がなくて、オプションの範囲で意見を求めるというのはいかがなものかということをまず言っております。
 もう一つは、自動車NOx法は環境基本法の後に制定されたものですけれども、当然、見直しに際しては環境基本法、環境基本計画が目標としているところの循環、共生、参加というところをきちんと踏まえたものであるべき。そういう観点から言うと単体規制、車種規制といったことだけではなくて、きちんと車に依存しない社会をつくっていくという、その本旨に基づいて法律を組み直すべきだというふうに考えています。 1番目に、悪用された総量削減計画、先ほど藤田先生がこのことについて最後に触れられたので私は言いませんけれども、私は今の仕事をする前は地域開発のシンクタンクで仕事をしていたのですけれども、総量削減計画というのはNOxの削減には貢献しなかったけれども、特定地域における自動車建設には非常に大きく貢献したというふうに認識しております。
 それから「要請限度」のことについて2番目に触れています。ここにちょっと引用しているのは、芦屋市の山手幹線道路の予備調査、事前調査の中の記述なんですけれども、結局、要請限度はここまでなら仕方がないという形で騒音、振動については使われているんです。そういう実態からするとNOxやSPMに要請限度を設定するということを提起しておりますけれども、大丈夫かなというのが率直なところです。
 それともう一つは、検討会報告書はCOのことを例に挙げていますけれども、COの形で要請限度を使うよりも、対策が後手に回るのではないかなといふうに思っているんです。むしろ、報告書は否定的に書いてますけれども、光化学スモッグのような注意報とか警報とか、または昔に東京都がやっていたかもしれませんが週間予報みたいなやり方で、むしろマスコミを使っていろいろと注意を喚起するというようなやり方の方が私は妥当ではないかというふうに思っています。
 3番目には、自動車は広域に移動しますので、やはり府県計画のレベルではなくて圏域計画、特定地域、東京圏と大阪圏、今度はぜひ中京圏を入れてほしいと思うんですが、そういう圏域での計画をつくるべきだと。今度は省庁再編で国土交通省は地方分局の方の役割が強化されると言っていますけれども、そういう点においても特にこのことは大事だと思っております。
 しかし、残念ながら環境庁というのは地方において全然何も基盤がないわけなんですよね。この尼崎の対策においてもそうなんですけれども、実際には5省庁連絡会議の中央の事務局は環境庁が行っているんだけれども、尼崎対策なんかでも実際にイニシアティブを握ってやっているのは近畿地建がやっているわけなんです。やはり各圏域においてきちんと環境面からコミットしコントロールする、そういう拠点が、少なくともNOx法で特定地域というのを設定するのであれば、それに対応した体制というものをとってほしいというふうに思います。
 それから4番目には、局地汚染対策のことについてですけれども、今回その点について計画をつくろうということが言及されていまして歓迎します。資料をつけていますけれども、私は局地汚染対策ではTDMというのが非常に大事ではないかと思っています。ただ、今、全国でTDMは盛んですけれども環境の視点が入っていないんです。環境という問題は、むしろ福祉的なものとしてあります。これはやはり対策としては環境対策としてきちんとバックアップするガイドラインを環境庁の側から整備するであるとか、または各地域の環境行政がコーディネートするように権限を持たせるであるとか、またはそれを裏づける財源が必要だと思います。
 その財源のことについて5番目に書いています。NOx法が結局、総量削減計画が実効性を持たなかったのは財源的な裏づけがなかったからだと私は思っています。今、自治体は財政が非常に大変な状況です。そういう中でやはり自治体が対策を進める上で、財源の調達方法としては公害財特法の活用というのがあると思うんです。そういう意味では公害防止計画ときちんと連動した総量削減計画にしてほしいというふうに思います。
 今、公害防止計画の方の見直しを進められていると思うんですけれども、中環審で。ここら辺が私は非常に骨抜きになるのではないかと危惧していまして、きちんと大都市部においては沿道公害対策に対して集中的に財源が投与されるように、これまでのように廃棄物処理施設をつくるぐらいに少しお金が回る程度の対策ではなくて、きちんとしたものにしてほしいと思います。
 一方、国の方も台所は火の車でして借金をいっぱい抱えているわけですけれども、もっと環境行政を財源論に踏み込んで問題提起してほしいなというふうに思います。自動車特定財源制度を環境対策に思い切って回す、健康対策に思い切って回す、そういうことをきちんと提起してほしいと。そういうことの上にグリーン化税制、自動車関連税制の徴収をグリーン化するということも乗せてくるのはわかるんだけれども、何か小手先の方が先に回っているのが私にとってはどうも不満だなというふうに思っているところです。
 6番目には物流の問題を言っています。私たちが最近提案した西淀川道路環境再生プランのPart3では、このことについて社会実験をしようという提唱をしています。今、私はこれを持って兵庫県下や大阪府下のいろいろな関係機関や業界団体を回っているところなんです。いろいろ対話をさせていただくと非常に歓迎されているんです、この提案が。こういう提案がNGO、NPOの方から出てきていることに対して歓迎されておりまして、またそれに対していろいろな具体的なご意見もいただいております。
 この対話を通じて、細かいことは読んでいただいたらいいと思うんですけれども、特に通産の施策等と連携させたらどうかとか、またはぜひ低公害車のレンタカーシステムとか共同利用だとかそういう拠点を設けてほしいとかいろいろありますけれども、私はその事業者にけるNOx抑制対策の強化というのは物流の情報化、効率化というトレンドの中でぜひ組み込んでいっていただきたいなと。そういう意味では通産と環境の共同事業という形で物事を進めてほしい。残念ながら、今、通産が考えている物流需要情報プールシステムというのもあるのですけれども、こういったものも環境の視点が弱いんです。やはりそういうのは環境庁がきちっと手を握って、環境の視点でそういったものが動くようにコントロール、コントロールと言っては通産に失礼ですけれども、コーディネートしてほしいなというふうに思っております。
 私たちとしては今、西淀川にある中島工業団地というところでそういった実験をやろうということを今、話し合っておりまして、おととい工業団地の専務理事とぜひやろうと。
 それからその次に出てくる通勤手当のグリーン化ということについても、工業団地に今度新しくバスを導入するということもあってやってみようと、事業者案の中でマイカー通勤をやめて公共バスを使ったり自転車で通勤する人にメリットがあるような通勤体系にしようではないかということを今話し合いをやっているところです。これについてはぜひ中央の方からも、労働省なりどこになるかしりませんけれども、通勤手当のグリーン化ということを提唱してほしいと思います。
 8番目には、ロードプライシングについて書いてあります。私たちもロードプライシングを提言のPart1の段階から提唱しています。これについて尼崎の対策で盛り込まれたことはよかったんですけれども、これが湾岸線の延伸とセットで提唱されたことについて非常に頭にきています。
 これはどうなるかというと、結局、明石大橋からそれまで六甲山の裏側を通っていた車を、料金を低くすることによって神戸の方にがっと入るようになってくるということなんです。私は2年間神戸に住んでいましたから毎朝神戸の空の様子を山の上から撮っているんです。神戸は山と海に囲まれた狭いところですから逆転層が生じると、快晴の日なんですけれども地表面が真っ黒になって30階建てのビルの頭しか見えないような状況が出てくるんです。これはあの狭いところに湾岸線や高速道路や港湾施設や工場が集中しているからでして、湾岸線のロードプライシングというのは交通需要を喚起するような形でやってしまっては私はだめだというふうに考えています。
 それで、ここの検討会ヒアリングの第2回の資料を見させてもらいましたが、建設省というのは相変わらず渋滞緩和政策というものが環境対策だというふうに勘違いをしております。これは非常に非現実的な対策であって、西淀川でも今、それに基づいてそういう対策が進められておりますけれども、人の安全でありますとか、人の人権でありますとか、そういうことを非常に無視したものだと思っております。また環境対策にはならないというふうに思っています。ぜひ、このNOxの総量削減については、ボトルネック対策というのはあくまでも自動車交通を優先した発想の対策であって環境の対策ではないということを明記してほしいと思ってます。
 最後に市民参加の問題です。自動車NOx法は環境基本法の後にできたものですので、ぜひ参加ということを環境基本計画を踏まえて充実してほしいと。これは計画の策定段階だけではなく計画の実施、そして評価の段階において取り入れてほしいと。私たちはその点について交通環境教育ということをぜひやろうではないかというふうに言っています。今、私たちは阪大の交通工学のところと環境教育学会の近畿支部と地元の学校の先生らと一緒になって、平成13年からの総合的な学習の時間の導入に向けて西淀川らしい交通環境学習プログラムをつくろうという、3カ年の計画で今やっているところであります。そういったものもぜひ全国的に広めていければなと思っています。
 それと私も免許は持っていますけれども、免許の更新時に環境のかの字もありません。実は免停をくらったことがありまして一日講習も受けたことがありますけれども、一言も環境は出てこないんです。せめてアイドリングストップも含めて環境について講義の中で10分でもいいから話すような、スライドを流してくれるような、そういうことも中央の方から働きかけてほしいというふうに思っております。
 非常に雑駁なお話ですが、以上です。どうもありがとうございました。
【委員長】 どうもありがとうございました。大変貴重な話をいただきまして。どうぞご質問などいただければと。
【委 員】 今、高速道路等の新設、延伸と連動したロードプライシングは有害というご説明があったのですが、ちょっとよくわからなかったので詳しく。
【(財)公害地域再生センター研究主任】 これは神戸のことが中心になるんですけれども、神戸の場合は43号線を通る車を湾岸線にシフトさせよう、これは我々も提言しているんです。でもこれは、今の湾岸線が六甲アイランドというところでとまっているというのが前提なんですね。公団と建設省の計画はそれをポートアイランドへ、ちょっと地理がわからないかもしれませんが、そこからさらに須磨海岸をつぶして明石大橋までつなげるという、それを今回、尼崎対策の中で環境対策として打ち出してきたわけなんです。
 そうすると、山陽道とか四国や淡路島から明石大橋を渡ってきた車も、それまでは六甲山の裏側を通って、そして近畿道から大阪の方とか京都の方へ行くという手があるんですけれども、そうではなくて湾岸線を通って大阪へ直接、関空の方も含めて直接行けるようになる。しかも、ロードプライシングで今検討されているのは、これは公団の方も言っていましたが、今のロードプライシングは料金を上げる形ではちょっと難しい、景気状況からしても。それは当然湾岸線の料金を引き下げるというあなたたちの提案に沿ったものになるでしょうと言って料金を下げたらどうなるか、湾岸線はもっと車が入るようになるわけなんです。六甲山の裏側を通るよりも安い湾岸線を通った方が便利になるわけですよね、しかも安いということになると、さっき言ったように狭いところに車がどんどん入り込んでくるという状況になるのではないかということを危惧しているということなんです。
 ですから、ロードプライシングである一定の路線に交通をシフトさせるのはいいんだけれども、それがかえって地域全体の交通量の総量を上げてしまうようなことになってしまってはいけないということを申し上げているだけなんです。
【委 員】 4ページの3のところなんですが、いろいろ貴重なご意見ありがとうございました。ここで圏域計画の策定ということで、私はこれに中京圏を加えるべきであると考えるということが書いてございますね。それに対してなぜ中京圏か。
 それでその下に、自動車交通、中でも環境負荷の大きい貨物自動車の移動の広域性にかんがみということで、その広域性というこで首都圏、近畿圏、その途中に中部圏があるわけですけれども、そういう意味での広域的な移動というのを含めた中部なのか、あるいは現在の中部の環境の状況から見て当然というお考えなのか、その辺なぜ中部ということをここでご指摘いただいたかということをちょっと伺っておきたいと思います。
【(財)公害地域再生センター研究主任】 ちょっと道路の環境を視察する機会があって、名古屋の南部と四日市の国道へ行かせていただきましたけれども、あそこは沿道法の適用を受けているところですが、非常に交通量の多い道路がありまして、やはり四日市から名古屋南部の工業地帯にかけた地域というのは非常に物流の往来が激しいところで環境がひどいなと。それで、阪神間と大して変わらない状況だなと。こういうところであるから、やはりこういうところも特定地域という形で対策が導入されるようにすべきではないかなというふうに思ったということです。
【委員長】 ありがとうございます。一つ伺いたいのですが、大変いっぱいの交通流というものをベースにしてモニタリングをしっかりおやりになっているということで大変敬意を表したいのですが。そこで、地方政府とモニタリングをだれがどうやってどういうふうな対策につなげていくのかという制度の設計ですね。ここら辺について何かご意見がおありになれば教えていただければと思います。
【(財)公害地域再生センター研究主任】 広域計画が必要だといった話と関連ですけれども、私の活動している、住んでいるところは西淀川区、すぐ隣が尼崎、兵庫県です。全部ここで対策が切れるんです。でも車の流れは全然切れていないわけです。工場のばい煙もそこから流れてきて被害があったわけです。
 今回、尼崎の対策が出てきていますけれども、新聞報道なんかでもロードプライシングは、中島というのは西隣のところなんですけれども、そこで切れるんです。そうするとそこから、では兵庫圏域でロードプライシングが切れると西淀川のところで車が下りてきて43号線に入ってきたら、そういうバイパスがあるんですけれども、結局、兵庫県下で対策をとったことが西淀川にツケに回ってくるという。これでは元も子もないわけなんです。だから、そこはきちんと圏域でどうするかということを考えてほしいということを言っている。
 そのためにもやはり私は、先ほども言いましたけれども、各省庁の出先機関が、近畿なら近畿の出先機関できちんと連絡調整をし、地元の自治体との情報の交換をしてやるということが大事であり、環境庁はそういう体制がないじゃないですかということを申し上げたいということなんです。
【委員長】 これからのあるいは課題なのかもしれませんが、今のご指摘な点が最も重要な問題だと理解しておりますので。またいろいろな意味でご意見をいただければと思います。それでは時間もございますので大変、どうもありがとうございました。
 それでは最後になりましたけれども、お待たせをいたしました。日本弁護士連合会からお出でいただいております。ご説明をされる方は日本弁護士連合会公害対策環境保全委員会大気部会員様よろしくどうぞ。
【日本弁護士連合会】 時間の関係がありますので、早速、意見を表明させていただきたいと思います。
 日弁連の公害環境委員会というのは既に30年以上にわたってさまざまな公害環境問題について意見表明をしたり、あるいは提言をしてきました。とりわけ、大気汚染問題については工場からの排煙が問題になっている時期から提言をさせていただきました。とりわけ、今問題のこの自動車排ガスの問題に関しましては、きょう資料6で三つの提言あるいは意見書の骨子の部分だけつけさせていただきましたけれども、これはいわゆるNOx削減計画が現在のが問題になっているときから私たちがこの9年間ぐらいにわたって3回にわたって出した意見書、あるいは提言の本当に結論部分だけ。実際は一つ一つ非常に厚いのですが、つけさせていただきましたので、これをご参照いただきたいというふうに思っております。
 今まで私たちが提言してきた基本的な内容なんですが、今まで率直に言って環境庁初め、行政の皆さんが進められてきた対策というのは基本はやはり単体、あるいは車種規制もそうですが、自動車1台当たりのNOxの排出量あるいは有害物質の排出量をどう減らしていくのかというところが、やはり基本的な内容になっていたと。
 しかし、これは現在の計画の段階から、それだけで本当に計画が達成できるのかという、むしろ経験上からいっても幾ら1台当たりの排出量を減らしても車がふえていけば、走行量がふえればその効果は減殺されるというのは、ある意味ではかなり前から指摘をされてきた。私たちもそういう基本的な視点から、その1台当たりの排出そのものを減らしていくことは大事だけれども、しかし同時に自動車の全体の交通量そのものを抑制、あるいは削減をさせていくという基本的な問題意識をやはり持っていかなければならない、そこが大事だというのが1点目です。
 もう一つは、地域の環境を考える場合によく言われるように、やはりその地域の環境容量というものがあるだろうと。つまり、地域全体の例えば環境基準を達成しようとしても、一つ一つの施策をそれでやっていくということだけではなくて、やはり全体でどれぐらいまで削減しなければ環境基準が達成できない、環境容量の中におさめることができないという、そういう発想がやはり基本的に二つ目の問題として重要だろうということです。
 対策面では弁護士会の、ざっと見ていただければわかるんですが、自動車が関連をするさまざまな局面からどんな対策が可能なのか。さっき言ったような視点から可能なのかということで出しております。つまり、まずはつくるところからです。製造・販売というところから排出をどう削減していくのかという問題。二つ目は使用するという問題です。使用の問題では二つあります。一つは、当然のことながら車というのは道路がないと走れないわけですから、車が走る道路の精査という側面からの提言という問題があります。もう一つは実際に使用する、その自動車使用という側面から対策を考えなければならない。
 さらに現実の問題でいうと極めて高濃度の汚染地域があります。したがって、そこでは緊急対策が必要だという、そういう問題があります。 さらに最後には、そういうことをやっていく上で効果的にやっていくためにはどんな、言ってみれば、よく言われる直接規制・間接規制と言われるものがあると思うんですが、その規制の手法をどういう方法が必要なのかという。整理すればそういうところからそれぞれの提言をさせていただいているというのが現状であります。
 そこで、今回の検討会の報告書を読ませていただきました。率直に言いまして、オプションも読ませていただきましたし、現在の計画の評価も読ませていただきましたけれども、今まで弁護士会はさまざまを言ってきてなかなか日の目を見なかったと言ったら変ですが、取り上げてもらえなかった施策がかなり内容的に今回の施策の中に取り入れられてきているんだろうという点では、私たち大変その点では評価をするといってはちょっとあれですが、喜んでおるところであります。
 ただ、そうではありますが基本的な問題で1点だけちょっと指摘をさせていただきますと、対策強化の視点というところの問題で、私はやはり対策の緊急性という問題を一つのキーワードとしてきちっと書いてほしいというふうに思っています。
 というのは、これは今までも指摘されましたので、被害が続いているという問題、司法で既に差し止め判決まで出ているという問題、それから三つ目は環境基準の達成の約束が既に20数年間守られていないという問題。この三つから言うと、緊急性という、行政施策がこれほど長期間にわたって達成できないというのは大変なことだろうというふうに私は思っています。そういう面でいうと、視点のところで一つのキーワードとして対策の緊急性があるんだということをぜひ明確にしていただきたい。総合性だとかいろいろあってそのとおりでありますが、もう一つはそこにあるんだろうというふうに思っています。
 さて、オプションの点については五つぐらい意見を表明させていただきたいと思います。
 1点目は、先ほどからも出ていますし、私も先ほど指摘しましたけれども、やはり対策の基本の最重要の柱として自動車交通量、とりわけ大型車の交通量の抑制・削減という問題と、それから先ほど言った地域の環境容量から見てNOxの総量の全体の管理をきちっとしなければならないということを最重要の柱としてやはり位置づけてもらいたいという問題があります。これはまた後で指摘をします。とりあえずその点を指摘をしたいと思います。
 1点だけ言いますと、現在の計画は、実は平成2年度から平成12年度が目標ですけれども、交通量が伸びることを前提にしているんですね。その上で対策をどうするかということになっています。私はそこにやはり甘さがあったのではないか、先ほどから言っているように。
 今回の計画で言えば、基本的には交通量は伸びない、あるいは減少させるということを、これは大変なことだろうと思いますけれども、そこをやはりターゲットにする必要があるのではないかというふうに思っております。
 二つ目の問題、施策自身がさまざまな、私たちにしてみれば今回重要な施策が含まれていると思うんですが、問題は実効性の問題だろうと思うんですね。その点で言いますと、日弁連の提言の問題で1点だけ指摘させていただきたいのですが、二つ目の提言で1996年8月31日に出した意見の要旨というのがありますけれども、これはカリフォルニアにおけるいわゆる販売規制が実施をされる検討されるという段階で調査に行きまして、今までの日弁連の提言を含めて提言した内容です。
 ここでは基本はやはりメーカーに平均排出量規制を行うべきだということを提言をして、その上で、しかしそれだけだと結局、車の使用がふえていったらどうにもならない。そうなると、とりわけ大型車の問題でいうと事業者の自動車利用を抑えるという問題、そこをどうコントロールしていくかという問題がありますので、事業所ごとに許容排出量を割り当てて規制をしていくという、この二つをやはりセットでして、そしてさらにおのおのの事業所なりメーカーがよりそういう方向で対策を進めていくインセンティブを持たせるためにも経済的な、例えば利益、クレジット・デビットとアメリカの方では言われていますけれども、こういうものをこの対策を実施するに当たって大いに取り入れていったらどうかと。
 直接的な規制と同時に経済的にはその対策をやればやるほどそのメーカーなり事業所にはメリットがある。しかし、それをさぼったらやはり経済的な不利益が課されるという、こういうことを思い切ってこの二つの制度を同時に採用するときに実効性あるものとするための施策として考えたらどうかということを、これは96年に提言しているのですが、ぜひ今回、せっかく二つがオプションとして乗せられておりますので、ただもちろん私たちも弁護士で、技術的な問題等、いろいろ検討課題はあると思いますが、基本的な方向としてそういう方向を1回検討していただけないかということを二つ目の点でお話しさせていただきたいと思います。
 三つ目は、これは先ほどから問題になっていますけれども、やはり道路建設問題はどう考えるかというのは重要な問題だと思います。弁護士会はことし出した、これは第12次の道路整備計画が出た段階で意見書を出させていただいたのですけれども、基本的な私たちの考え方としては、やはり高濃度汚染地域については新たな道路の建設、これは慎重であるべきなのです。したがって、結論づけは、いずれにしても一時凍結をして、地域の環境容量に基づく自動車交通総量の抑制ができるかどうかという観点から、もう一度その建設の是非について検討すべきではないかと。そこがやはり必要ではないかと。
 少なくとも私は今回の報告書を見ますと、現在進められている削減計画では、私はいつも大阪の検討委員会のメンバーで発言しているのですが、対策の中に例えば環状道路をつくるとかが対策の一部として上がっていたんですね。しかし、今回のこれを見ると少なくともそこは触れられていない。これは私は一つの前進だろうと思っております。
 そうであればもう一歩踏み込んで、この幹線道路問題について、先ほど言ったような方向を出してもらえないかというのが三つ目の問題として指摘をしたいというふうに思います。
 そのことはもう一つは、例えは環状道路の問題でも本当に環状道路だけが選択肢なのかという問題があろうかと思います。道路は今後、環状道路をつくっても何十年かかるかわかりません。となると、例えばいろいろな問題で環状の貨物の鉄道をつくるということだって、同じスパンで考えて費用の問題を考えて、もう一度そういう選択肢も思い切って考えるということもあり得るだろうというふうに思います。
 例えば私たちの調査では、オランダではこれもかなりの年数をかけてオランダからドイツへの新たな貨物鉄道をつくって、これはロッテルダムからドイツへの輸送の手法ということで建設が始まっていることも聞いております。こういう方向もこの問題は含めて考えれば、そう道路だけをつくらなければならないという問題になっていかないのではないかと、こういうふうに思っております。                あと、これは先ほど指摘された、1点だけ。日弁連でも既に言っていますが、今度の計画はPM2.5もやはりターゲットにする。削減対象の物質にする、このことをぜひ行っていただきたいというふうに思っています。
 最後に、先ほど言いましたように私は大阪弁護士会なんですが、大阪弁護士会の推薦の委員ということで大阪府のNOx削減計画の検討委員会のメンバーでこの数年間参加させていただきました。そこの感想を言いますと、自治体の職員の皆さんは非常に能力もありますし、熱心にやっておられます。ただ、やはりその自治体に、その大阪の地域、あるいは関西の地域はそこの自治体の職員の皆さんが本当にやらないとできないんだということを、もっと自覚的にやってもらうという面でも、やはり自治体にその地域に合った独自の対策を実施する権限をもっと大幅に与えてやっていただきたい。
 これは計画というよりも恐らく私はNOx法の改正の中で上乗せ条例的なものを明確に認めるということを今回は改正の中で明記していただきたい。私はそのことが、その自治体が本当にその地域の環境問題に責任を持ってやっていこうという意欲にもなりますし、やはりそこが基本だろうというふうに思いますので、もちろん中央の対策としてやっていくとともに、各地域に基づいた対策をきめ細かくやっていく面でもぜひそのことを盛り込んでいただきたい。こういうことを最後に申し上げたいと思います。
 以上でございます。
【委員長】 どうもありがとうございました。非常に貴重な話をいただきました。何かご質問ございませんでしょうか。
私の方で一つ伺ってよろしゅうございますか。
 大型車問題というのは、これは大阪府のヒアリングでもご指摘がありました。今もトラックの大型化はやるべきではないというお話、イギリスのメジャー政権はことしから41トン車まで認められるという方向に出ているんですね。しかも、外向海運から国内輸送になりますときにはどうしても大型のコンテナが動けるようにすべきである、トレーラーが動くようにすべきだという意見が一方ではあるんですが、これは要するに都市内だけについてそういうことをやるべきではないというふうなお考えなのか。幹線区間も、日本は今、25トンで通っているわけですね。ここら辺もやはり踏まえてでしょうか。そこら辺どうなんでしょうか。
【日本弁護士連合会】 要するに貨物、モーダルシフトをどうやっていくのかという問題での、都市内だけではなくて都市間をどうするかという問題ですね。私はむしろ、これは私の認識の誤りかもしれませんけれども、都市間の方がある面ではモーダルシフトという面では、例えば海運の利用だとか、それから鉄道がなかなかどこまでできるかという問題はありますけれども、ただそこももう少し分析をしなければならないのは、都市間といってもかなり長距離の場合と短距離の場合なんです。だから、例えば船舶はかなり長距離なのは思い切って船舶にという問題もあると思います。それから鉄道ももう一度、先ほど言ったように貨物シフトをつくるというのはなかなか難しい問題があろうかと思いますけれども、やはり全部が全部トラックにというものではなくて、バランスをそこはやはり考える必要があるのではないかなと思います。
 今、弁護士会もそこまでなかなか検討はできていませんけれども、しかし都市間の方が、都市内にすぐ鉄道をつくってモーダルシフトというのはなかなか難しいもので、むしろそこを低公害車を利用するとか何かの方法を考えていくという問題はあると思いますけれども、むしろ都市間の方がより思い切ったその辺のシフトが可能かというふうには思っております。
【委員長】 その場合は環境税のようなものを使って、これはこれからのテーマですが、モーダルシフトが起こるようにとか、何かそういうことで政策的な組み立てをどうするかという点は何かお考えになっていることはありませんか。
【日本弁護士連合会】 弁護士会の環境委員会としては議論としては基本的に環境税みたいなので税制をクリーンなものにしていく。提言の中でも若干そういう面がありますけれども、やはりそういう方向は大いに併用していっていただきたいとは思います。
 ただ、私はやはりそこが難しいのは、難しいというかぜひ単なる間接的なそういうのだけの誘導でいくかどうか。つまり車というのは非常に利便性がありますから、利便性があるけれども非常に非効率だと全体的には思うんですが、だからそこは余り軽視できない問題がある。そうなるとやはり一定の直接的な規制という手法もあわせてやらないと、単なる経済的な誘導なりのところだけで引くのかというのは、私たちの議論の中では非常に疑問を持っている意見が非常に強いというのはご紹介させていただきます。
【委 員】 いろいろとありがとうございます。一つお伺いしたのですが、先ほど先生のお話の中で事業所ごとに総量規制が必要でありますと。そうであるとちょっと具体的なことなんですが、現在の自動車NOx法でいきます特定地域でございますね。その中に立地している事業者というのがある。それから、そのほかにも全国規模で展開している運送業者があるわけです。この場合の事業所、これは事業所と先生はお話になって、事業所というと特定地域にあるものを言うのか、事業者として全国規模でやはり総量抑制すべきなのか、その辺ちょっとお伺いしたかったんです。
【日本弁護士連合会】 基本はその特定地域内だと思います。あとはそこから流れ込んでくる車をどうするのかというのはまた別の手法があるかと思うんです。実は、これのもとになったのは、これは大阪府が前回の削減計画の策定に当たって、これは環境庁も含めてシミュレーションしていますよね。車を5台以上持っている事業所はどうなのか、100台とかいうのがありますので、あれなんかは一つの参考になるのではないかというふうに思っております。
【委 員】 今年度目標年次がいろいろ、それに対するご批判もあったわけですけれども、結局、特定地域以外に事業所を移してしまえばということもあり得るわけですね。その辺、何か今までの中でご検討なさったことがおありになればちょっと教えていただきたいんです。
【日本弁護士連合会】 よくそういう話はあるんですが、基本的な考えですけれども、そう簡単にいくのかという問題があると思うんです。だから、それは一つの考え方としてすり抜けを考えれば、そうやればいいじゃないかとかいろいろあるんだろうと思うんですが、それは全体のこの政策をやっていこうというときに、私は商売とは言いませんけれども、仮にそういうことですり抜ける業者があったとしても、それを許すというわけではありませんけれども、そのことによってそういう全体的な有効な施策を実行しないことの理由にはならないというふうに基本的には考えているんです。
 それからもう一つは、地域外のところから、例えば非常に悪い車とかそれが流入するという問題は、今、東京都でも検討されているようなフィルターの義務づけだとか、やはりここを走る場合には地域外の車もそれなりに対策を持ったものでないと走ってはだめだという、そういう方面からの規制という形は十分あり得るので、先生の言われるご指摘は私はよくわかるんですが、それが主要な内容になって対策ができないということで基本的な発想はすべきではないのではないかというふうに思っております。
【委 員】 交通量の抑制をやっていかなければいけないというのは大概の人は認めているのですけれども、結局その際に移動や経済活動の自由の抑制というようなことと関係してくると思うんですね。それを実際に、ロードプライシング一つとってもそうですし、TDMでもそうですし、そういうふうに細かくブレークダウンして実際の規則をつくるというときにやはり私権の侵害ということが起きてきます。環境全体としてはそういうものはある程度犠牲にしなければいけないという面もあると思いますけれども、そういういろいろな業種とか、それから東京都の中でもどこまで網をかけるかというようなことで実際の矛盾とか私権の侵害が出てくるんですね。そうすると、法律を扱う立場からそういったものをどういうふうに調和したらいいかという考え方がやはり最後は問われるのではないかと思いますが、その辺のお考えをちょっとお聞かせください。
【日本弁護士連合会】 ご指摘のとおり、当然この規制をやるということになれば、今言ったような営業の自由なり移動の自由が制限されるということになるんだろうと思いますが、そこをどう考えるかということなんですが、私は今の大気汚染裁判やあるいは公害裁判の一つの到達点はやはり健康影響だとか、人の健康だとか命にかかわる問題は、やはりそのことによって経済活動が制限をされたとしてもやはり基本的な人権の出発点の命、健康というところは優先しなければならないのではないかと言うのが今の基本的な司法の到達点ではなかと。
 それが一番進んだのがせんだっての尼崎の、単にお金を払って済ませるだけではだめだよと、事前に差し止めということまでしなければならないんだよというまで司法は判断をしたのではないかというふうに思っております。
 だから、それが一つの、この問題というのは、先ほども公害患者さんの話がありましたけれども、基本はそういう問題なんで、必ずしも経済活動、移動の自由というところと同レベルに比べられない人権の比較の問題で今問題が提起されているのではないかというふに私たちは考えております。
【委 員】 その場合に規制される側としてはやはり公平でなければいけないと思うんですね。そういう問題をちょっと指摘しておきたいわけです。
【日本弁護士連合会】 とりわけそこで一番問題になるのは、例えばトラック業者であれば個人の問題があると思います。やはり中小だとか零細のところについては同じ規制をかけてしまうと、それは大きいところが強くなって小さいところが弱いというのは、これは当然のことだと思いますので、そこはやはり何らかの補助なり、この競争が同レベルになるような、同条件になるような施策をあわせてやっていくという方向が考えられるのではないかなというふうに思っております。
【委 員】 今の話をお伺いしていて、そちらの資料の意見の趣旨という、この2のところがそれに関連するような話として出てきているんだろう思うんですが、今のお話を伺っている限りもう少し具体的に、排出量割当みたいなことをやったときに、総論として健康優先、福祉優先で全体像として見ればその私権の部分は制限されてもやむを得ないというのはわかりますし、公平性の今のような総体論もわかるんですけれども、具体的にここのところをやろうとするとどういう格好になるんでしょうかね。それをちょっとお聞かせ願いたいなと思って。
【日本弁護士連合会】 イメージ的なものですが、恐らくここの環境基準をこの地域で達成しようとしたら、やはり総量としてここまでやらなければならないという一つのありますよね、全体の。そのときに、ではそれのために事業所が使っている車からの排出を、個人の車もいろいろありますけれども、そうすると事業所で使っている車で許容できる部分はこのレベルですよということになった場合は、例えば車5台以上持っている事業所を対象にした場合に、ではA社は許容限度はここまで抑えるようにさまざまなオプションの中から計画を立ててください。こういう形でやっていくという、こういうことになっていくのではないかなというふうに、イメージ的にはですが、思っております。
【委 員】 よく排出権売買なんかも同じなんですが、ベースをどういうふうに設定するのと、現状行程の中で排出量の枠を設定していったら、これはやはり不公平だろうというふうになると思うんですね。その部分について何か不公平感が生まれないような方法論はできますかね。
【日本弁護士連合会】 なかなかそこまで言われると難しい問題があります。ただ、私もむしろ、先生が言われるように現在を基準すると不公平が出てくると思うんですね。しかし、今はかなり低公害車というのはそれを達成するための手段はいろいろ出ていると思いますので、やはり今の一定の到達点を前提にして、そこをベースに、これならだれでもが一定手段として選択をできる、それを前提にして基本はやはり自動車台数、それから業種によって若干違いが出てくると思いますけれども、そこを基準にして割り当てると、こういう方向なのかなというイメージは持っております。
【委員長】 きょうは時間が少なくて大変申しわけないのですが、きょう伺った限りでは皆様方の意見の開きというのは割に少ないと言いますか、やるべきだよというこういう点においては皆さんのご意見はかなり、例えば健康重視論だとかいろいろな意味で意見があったと思うんですが、ただ、これは大聖先生のご指摘にありましたように、いざ具体的に政策に落とす場合には物すごい利害関係が絡んできますので、これは現に鎌倉のロードプライシングでも商店街から猛烈な反対が出ておりますし、そういうことでいきますと、むしろ実行過程にこういう問題がたくさん潜んでいると思うんですね。これを説得して説得して実行に移していくというのは、よほど施策能力と言いますか、実証性もなければいけないというふうに思いますので、この辺でまたいろいろな角度から教えていただければというふうに私は思っておりますので、今後ともよろしくお願い申し上げます。どうもありがとうございました。
 それでは時間がちょっとオーバーしておりますが、最後にその他ということで残っておりますので、事務局の方からご説明お願いいたします。
【自動車一課長】 資料7をごらんいただきたいと思います。
 自動車NOx総量削減方策検討会報告書を公表した後、これについての意見募集をいたしました。ここに書いてありますように4月12日から約1月間ということで意見の総数163件、内訳で申しますとメール37件、ファクシミリ79件、あと郵送と。それから意見提出者の属性ということで男性・女性の内訳等を書いてございます。
 1枚めくっていただきまして、裏側に項目別意見数ということで大きく排ガス規制、車種規制も含めて単体に係るもの。それから交通量抑制に係るもの。それから税制その他、経済的措置の活用に関するもの。それからその他ということで大分類しております。およその項目を頭出しでここに書いてございまして、それぞれ意見の数として幾つあったかというのを右端に書いてございます。それで、この左側の番号に沿って次の1ページ以下、具体的な意見の内容を添付してございますので、また後ほどごらんいただければと思います。
 続きまして、今後の予定ということで資料8でございます。きょうでヒアリングは一巡したということで、次回以降は個別の検討課題につきましてご議論をいただくということで事務局で準備をしてお諮りをしたいと思っております。
 次回は7月14日、14時から16時。その後、第7回目になりますが、7月21日の14時から16時ということでよろしくお願いしたいと思います。
 以上です。
【岡田委員長】 どうもありがとうございました。以上のような運びで今後のスケジュールをご了承いただければありがたいと思います。
 本日、予定しておりました議題はすべて終了いたしました。
 これで閉会したいと思います。
 どうもありがとうございました。